●だからやっぱり日々無難に生きてる人とかは今日の彼女を見たらこう思うわけですよ。
え、なんでなの。って。
むしろ「えなんでなの」としか思えないわけですよ。「えなんで笹本 遥夏(
jb2056)さんそんな格好で鼻血垂らしてんの」と。
よく「相手の立場になって想像してみて下さい」なんて言葉があるけれど、いきなりピンクファーで作られた巨大なもっこもこ毛玉の着ぐるみ着て、顔と手足を出した格好でショッキングピンクの釘バッド持ってそっわそわされたらっていうか鼻血垂らしつつそっわそわされたら、そこに一体どんなドラマがあってこうなってるのかなんて規格外過ぎて人はもう想像する事すら放棄してしまうわけですよ。
だってなんか危険な匂いがするし。近寄ったら噛みつかれそうだし。あのそっわそわはどうも興奮してるからっぽいし。
猛獣ですよ。ぬかりなく迂闊に鼻血垂らしてる猛獣ですよ。尚且つそれに気づいてないくらい興奮してる猛獣ですよ。
でも大事なポイントは、そんな猛獣を「やだ怖いわ猛獣よやあねうふふ」なんつって怖がってんだか鼻つまみ者にしてんだか良く分からないようなリアクションをとってる人は今日は何処にもいないってことだった。
なんせ今日はみんな仲間だったのだ。みんなある種の猛獣仲間なのである。
ということでそれではここで、今日の撃退士さん達のラインナップクリンナップを簡単にご説明しておこうと思う。
本気の着ぐるみ×1
鼻血の着ぐるみ×1(←遥夏さんここ)
女装×1(ロリ)
エロかわ×1
女装(っていうかむしろ女性)×1
セレブ×1
天然×1
妖怪×1
みんな今日はKAWAIIを追及する猛獣だ。
何故なら敵が「自分も可愛いくせに可愛いものを見たり感じたりするだけで弱体化しちゃう、でも普通に戦っちゃうとちょっと魅了とかしてくるんで厄介な敵」だからだ。
つまり今回は可愛いことが大事なのである。それぞれが追及したこの「KAWAII」を全面に押し出し、交戦してしまう前に敵を弱体化させ、そして討伐してしまおうというのが今日の作戦。
だから、あの辺にそのディアボロ出没するらしいよという場所の近くで、それぞれはそれぞれの「KAWAII」をアピールし始めていた。
そう戦いは、もう既に始まっていたのである。
「とにかく! 外見に頼った可愛さなど、まやかしだと教えてあげるっすよ!」
柔らかさとまるみが、あーんかわいい抱きつきたいっ感満開のウサギの着ぐるみが言った。おかあさんウサギが鳴いてるよと思ったら、大谷 知夏(
ja0041)だった。握られたもこもこした拳が途方もなく可愛い中枢をズキュン。
「この、何をしてるわけでもないのにどういうわけか自然とお子様方の心を捉えちゃう知夏の力、見せてやるっす!」
つまり着ぐるみを着て歩いてるだけで、久遠ヶ原では「あ、ウサギだ! ウサギが歩いてるよ!」「狩れ! ウサギ狩れっ!」「レアだレアなウサギだ! 高く売れるやつだ狩れ!」って一部の人々の狩猟本能に火をつけちゃうウサギとして名高い彼女のその力を、今日ここで発揮してくれるというのである。これ題して「しゅりょカワ」って題したわりにそのままだった「しゅりょカワ」(くだらないので二度言いました)
凄そうである。
(ちなみに今日は、ディアボロの可愛いと戦う前に彼女が狩られてしまったら大変、ということで、付近で先生などが人止めを行っております)
で、凄いと言えば、女装が凄過ぎて、最早女装でも何でもない「マイルドな女性」になってしまってる人もいるのでご紹介しておこうと思う。
水城 要(
ja0355)。高等部1年69組、男性である。
これはもう可愛いとかキレイとかのレベルを超えて、超えてるんだけど超えちゃいけない一線を越えちゃってるもんだから、ちょっと人を落ち着かないそわそわした気分にさせちゃう題して「そわカワ」を実によく体現してくれている。
「男・水城 要。この否応が無く一様に姫方に見間違えられる外見を駆使せざるを得ない時が来たと言う訳ですか。不本意ですが……相手は敵。致し方ありますまい。過去の武将も女性の振りをして敵を下したとの逸話もあります故。ならば不肖の身なれど、男に……いえ女に磨きを掛けましょう」
要は凛として言っていた。多分そこは誠実に頑張ってくれたんだと思う。でも頑張り過ぎた結果、磨き掛け過ぎてもう、ただの女性になってしまっていた。ミニスカ、ニーハイ、ブーツをはいてるただの女優さんとかだった。
で、その隣でもじもじしてる小さい女子。ロリ夜爪 朗(
jb0697)。むしろロリロリロリ夜爪 朗(ロリ度が半端なかったので二回言いました)
「ひゅーう。姉さんらの可愛さで、これ成功間違いなしちゃうのー。って、僕一人まさかのおっちゃんやーん! ひゃーっ」
ってロリ子が一体何言ってんだか、そんなん言ったら本物のおじさん怒りますよって今日唯一の美形でもロリでも美少年でももちろん美少女でもウサギでもセレブでもない正真正銘のおじさまクリオン・アーク(
jb2917)を見たら、彼は、「はっはっは」と微笑ましいですなあと言わんばかりに身体中で笑っていた。
なんで笑ってんだか全然分からないけどとにかく笑っていた。
チューリップとかかんわいいひよことか描かれたエプロン姿で。
はい出ました。
これこそが妖怪「息子の育児中を思い出して保父さんきどるおじー」です。
皆さんもご存じの通り、この「息子の育児中を思い出して保父さんきどるおじー」とは、そこはかとなくダンディズムすら感じさせる哀愁と切なさと力強さとあとは大人の余裕を醸し出しつつ、とにかくそのしっかくい顔と南米的な匂いがそこはかとなく漂う毛の濃さとむっきむきの身体にふりふりではなくあえて業務的なエプロン。っていう、なんかこう出オチ気味なそのインパクトあるビジュアルだけで押してくる妖怪のことなんである、ええご存じの通り。
「でも僕は、僕よりもヒリュウの可愛さをアピールするつもりやで〜よろしく頼むわ〜!」
で、そんな最中にもロリ子さんは、またとっても分かりやすくボケている。
いやボケてないかも知れないけど、どっからどう見ても「いやふりふり着せられた朗くんの方が可愛いに決まってるやろ! ばしッ」ってツッコミ待ってるようにしか見えへんわ可愛いわーむしろふざけて自分の女装の恥ずかしさ紛らわしてはるわー可愛いわーこの辺りが8歳の少年ですわーって感じだった。
というわけでこちらも、女優とかモデルと化している要と同様、どっからどう見ても完璧なロリ女子なので、うっかりとときめいてしまったりして「え何おま男だったのかよ!」ってあるわけあらへんよーな錯覚から始まる恋をしてしまう人がいないように言っておくけど、彼は男子である。
小等部4年2組の男子である。
今日は、おかんとか何故か三男なのに姉ちゃんとか呼ばれてるご家族の方からの依頼デビュー祝いを使用し、愛しのヒリュウ君と共にこんなふっりふりふわきゅんな格好になってしまっているけれど、普段は元気いっぱいの普通の少年なのだ……きっと。
でちなみに妖k……じゃなかったえークリオンさんの方は、大学部1年52組らしい。
いやあんなビジュアルで大学部1年て。さすが久遠ヶ原学園、アッパーである。
「っていうかなんか、KAWAII大会をするってゆってたから来てみたんだけどーえーなんでモデルさんとかおじさまとか居るのー。一般の撃退士だけで大会するんじゃなかったのー」
っていやそもそも大会のくだりから勘違いだったし一般の撃退士って何を指してるのかふわっとし過ぎて良く分からなかったのだけど、(頭が)ゆるふわ天使のココ・チェシャ(
jb4530)が言うことなのでどうかここは雰囲気で理解してあげて欲しい。
あとマイルドに要とか朗とかをさしてモデルさんとか言っちゃったのは、本当に彼らが女性にしか見えないので勘弁してあげて欲しい。
ただおじさまに引っ掛かったのはふわっと分かる気がする。
クリオンさんのあれはKWAIIというより最早ハンサムなのだ。ハンサムという言葉に付き纏う何処か時代錯誤な感じ。あと切なさ。残念感。
それら全てを今のクリオンは完璧に体現している。きらりと光る歯。濃い顔。穏やかさとダンディズム。哀愁と切なさと大人の余裕で。
これはこれでとても驚異的な事なのだけれど、KAWAII大会では受賞出来ないのだ。惜しいけれど。とっても惜しいけれど。なんせだいたい大会が違う。大会のジャンルが違うっていうかそもそも大会じゃないやもういいかこの話。
とにかくそんなセレブココって言ったらなんか何かのブランドの名前みたいでびっくりしたんだけども、とにかくセレブココはセレブ感を満開に出しながら、というのは一体どこから出てるのかと言えば、金髪ヘアーね。あとまつ毛バッシバシの緑の瞳ね。それからそれを覆ってる薄い茶色とかゴールドとかっぽいサングラスね。更に連れてるヒリュウ。完全にセレブチワワの乗りで、スワロでデコりまくったフリルワンピとデコられた首輪つけてるヒリュウのこのセレブ感ね。
っていう「セレカワ」を感を惜しみなく放出しながら、ココは、「商品はリスの毛皮だっけー。モデルさんには正直勝てるかどうか分かんないけどー。まー来ちゃったからには頑張るわね。ヒリューのワンピに昨日頑張ってスワロ縫い付けたのよ。この分削られた睡眠時間は無駄にはさせないわよ」とか、一切頑張り感なく言った。
で、遠く遥夏の方を見る。
「ところで、えーと遥夏? だっけ? あの人さっきから大変そーだけどだいじょーぶなの?」
とかココがのんびり言うので全然緊迫感がなかったけれど、もちろん遥夏は全然大丈夫じゃなかった。
可愛い物スキーの衝動が体内で暴れ狂い、結果鼻血として体外に排出されてしまうくらい興奮してるんだから、大丈夫なわけなかった。
●ですからディアボロに魅了されるとこうなるわけです。
「か弱い物、可愛い物を守るのがヒーローの義務! 愛ゆえにあんた等を倒すー!!」
この時既に遥夏、ショッキングピンクのバッドを思いきって振り回していた。
誰に向かって?
もちろん、仲間に向かって。
ついさっき、「い、い、一番乗りはウチやー!!」とか勢い勇んでリスディアボロに突撃してらっしゃいましたが、それだって実はリスに抱き付き頬ずりするのが一番の目的! みたいなやましい動機なのでこういうことになっちゃうわけですよ。
「うわっちゃーあれ完全に魅了されてはるわ」
「そうですね」
解説席では朗と要が遥夏の状態をシンプルに述べる。
「あと今日、ほとんど動きを見せていないセレス・ダリエ(
ja0189)さんの動向も気になるところです」
要が言った。なんかもう美人女子アナみたいだった。
ところでそのセレスさんであるが、彼女は今日も、いつも通り観葉植物のような静な佇まいで、エプロン姿で可愛い幼児向けダンスを繰り広げているクリオンさんをじっとガン見していた。
おしりふりふりクリオン、顔を覆ってバアッて変顔怖すぎるだろクリオン。のくだりを一切ノーリアクでガン見していた。
このノーリアクで無表情なのに大きな目でじっとガン見しているという女子というのは、そこに漂う「ああ多分思いっきり興味あるんだろうな」感が相まってとってもなんか胸きゅんなのである。これこそが彼女の気付いていない彼女のKAWAIIと言っても過言ではなかった。
「恐らくこれは、皆さんの方が十二分に可愛いに状態……ええきっとクリオンさんのあのインパクトに比べればこんな小動物など大したことはありません。早々にやっつけてしまいましょう……」
なんて、勝手なナレーションを視聴者が心の中でつけたくなるような動きで、徐にリスを見やったセレスは魔法書を取り出し、開いた。
魔法書開けて何してるかって? 勿論攻撃態勢です。
何故皆の方を見ているかって? ええ勿論攻撃態勢です。
「えあれ思いっきり魅了されてんちゃん?」
「はいされてますね」
解説駅では朗と要がセレスの状態をシンプルに述べる。
つまりセレスは今、無表情に従容と無防備に魅了されちゃってる女子になっていた。
で、なっているにも関わらずあの「魅了? まさかされていません。全く平気です。大丈夫です。ですからこうして攻撃態勢をとり、攻撃する訳です。誰をってそれはまあ、リス以外を。という事になりますね。ええ」みたいな平然としたドヤ顔見て下さい。なんであんなに完全に間違ってるのに従容としてるのか。
天然物であるが故の、胸が締め付けられるようなこの可愛さ。
とかいう間にも、セレスの口がエナジーアロー。と微かに動く。
「わーちょちょちょ、ちょっと待つっす!」
知夏がセレスに走り込み、クリアランスを発動。
している背後では真正面から「エロかわ」披露しちゃって、つまり王道に誰もがもう「ズン」ってなっちゃうような長いワイシャツ一枚&黒二―ソックス姿で、「正直あまり気が進まないのですが…」なんて言ってたのが嘘みたいに、風がふいたりすればあざとく服の裾を押さえて上目使いしたりーの、胸元強調して体くねらせーの。
したわりに結局リスディアボロに魅了されちゃってたソフィー・オルコット(
jb1987)が、若干既に皆の可愛い攻撃で弱体しつつあるリスに抵抗されつつも負けじと抱きつき。
抱きつき、抱きつき、抱きついた結果、ドS化していた。
「ふふふ……私がこれだけ愛でているのだから感謝してくださいね。ほら、感謝の言葉はどうしたのですか?(ぐさぐさ)人間の言葉で喋ってくれないと分かりませんよ?(ぐさぐさ)ああ……可愛いですね……」
ドS化していた。(大事なので二度言いました)
「ふーんつまり、あいつらを見ないで、あいつらにKAWAII見せつければ勝ちなのね。それなら私にまかせなさいよね」
そこでココが、全てを理解しました! みたいに登場した。
ソフィーに苛められ、皆の可愛いを見せつけられもはや虫の息となりつつあるリス達が見える位置に立ち、セレブ感満開だったサングラスを今、取る。
どーん!
目を閉じた瞼の上に描かれた、少女マンガ風うるうる目ペイントどーんっ!
「こればっちでし……あれ、リスがいるのってどっちの方向? こっち?」
そんなペイントの格好のままふわふわしている彼女の拭いきれない間抜け感。
可愛かった。
つまり間抜けと可愛いは切っても切れない。間抜けは可愛い。可愛いには迂闊さが必要なのだ。
と、この日、リスディアボロは、悟った。
かどうかは分からないけれども、とにかく敵はこうして皆の様々な可愛いによりしっかりと弱体化され、討伐され、姿を消したのだった。
ちなみに皆が負った諸々の(体の)傷は、知夏がきちんとヒールで癒してくれた。
良かったね。
おしまい