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マスター:カナモリ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/21


みんなの思い出



オープニング



●それはそうと久遠ヶ原学園に勤務する変人研究職員の成瀬先生の説明を映像にするとこういう事になります。

 永野の目の前には今、電信柱みたいなやつが四本、突っ立っていた。
 つまり、電信柱だとは言い切れないので「みたいなやつ」という言葉を使っているのだけれど、本当は「みたいなやつ」とか言ったら電信柱に怒られそうな具合で、何だったら電信柱と被ってるところと言ったら円柱ってとこしか、なかった。
 あとは色も材質もその存在理由も全く違う。
 電信柱といえば大体コンクリートで出来ていて、硬くて、灰色だ。
 けれどそいつは、茶色くて柔らかくてぷにぷにしている。
 永野はそれと今、向かい合っていた。
 傷だらけで向かい合っていた。
 実はこの何だかもう良く分からない物体の正体はサーバントなのである。
 サーバントといえば人類の敵なのでやっつけないといけないのだけれど、この円柱のやつは意外に強くて、叩けども叩けども全くダメージを受けていないように見える。
 むしろ、叩くたんびに先端から出る雷みたいな液体みたいな何だかもー全く良く分からない黄色いビリビリでビリビリーってされて、そのたんびに「はうんっ」ってなって、だからもう瀕死なのだった。
 対して敵はほぼ無傷状態でなんかもーぷるぷるしている。物凄い元気にぷるぷるしてる。元気の象徴みたいにぷるぷるしてる。コラーゲンのゼリー的な何かかってくらいプルプルしてる。
 だからもうそんなプルプル具合を瀕死の状態で見るのは腹が立つので、永野は武器を振りかぶり立ち向かっていくのだけれど、やっぱり攻撃はバインッて跳ね返されて、ビシュッピュオーンバリバリバリバリバリバリッッッってやり返されて、やっぱり結局床に「はうんっ」って倒れ込んだ。
 つまりこいつには通常の攻撃は効かない。
 こんなけやらないと気付かないのもどうかと思うけど、とにかく通常の攻撃もスキル攻撃もきかないどころか、やり返されてむしろこっちが瀕死になってしまう。
 ではどうすればこいつを倒せるのか。
「何でもいいけど、さっきから体力がどんどん奪われている気がする……」
 そこでいきなり、深刻な顔で述べ始める永野。
 まるで恋的な悩みに懊悩し胸を押さえる好青年みたいにそのままじっと身動きを止めた。
 そんな彼の身体の周りをぶわんぶわんと囲む、何かの波動みたいなやつ。
 それがしゅるしゅるとなんか漫画みたいにサーバントへと吸収されている。
 っていうその吸収されているやつを良く良くみてみると、というか拡大してみると、「真面目・常識・普通」とかいう文字で構成されているのが分かる。
 要するにこのサーバントは永野の身体から真面目や常識や普通を吸収しちゃってるんであるとか意味不明なのは百も承知なのである。
「そうか。真面目が吸収されてしまうとするなら……変なことをすれば……勝てる?!」
 終了時間間近だもんでちょっと巻きいかないといけないもんで登場人物にいろいろ都合良く理解させますみたいな、雑な作りの二時間ドラマ以上の物分かりの良さで諸々の事に気付いた永野は、そんな事を呟きカメラ目線になった。
「じゃあ……そうだ。ここで全裸に。いきなり全裸になって洗濯バサミで乳」




●以上モルモットは永野君でお送りしました。
 バタンッ!!
 久遠ヶ原学園に勤務する数学教師の永野は、ポータブルDVDプレーヤーの画面を思いっきり力強く閉め、成瀬の顔をぼーっと見やった。
 そしたらいつもの覇気ない顔で成瀬がぼーっと見つめ返して来たので、二人してぼーっていやこれ見詰め合ってる感じとかじゃないですかとか途端に気持ち悪くなったので顔を背けた。
「いや何だろう成瀬さん」
「うん何だろう永野君」
「あのー毎回こんなの生徒達に見せてたんですか」
「うん俺あのーあんまり説明喋るのとか面倒臭いから、映像見せた方が早いでしょ。だからこういうビデオとあのあれ、簡単な解説書いた紙を配って、じゃあ討伐と死骸の回収よろしくねって言って。でも大丈夫これほぼCGだから。あとフィクションだってちゃんと最後に出してるから」
「いや暇ですかっていうか僕戦えないですしね、普通にただの数学教師ですしね、何で僕使うんですか」
「それは俺の趣味」
「知ってましたけど死んで下さい」
「なんで、はうんっとか言わせちゃったから?」
「それ以前の問題です」
「なんで裸にさせようとしたから? でも大丈夫だよ。これちゃんと服脱ぐ前に場面変わるよ。俺以外には裸見せないから誰にも」
「いや俺は見てるけどみたいな言い方やめて貰えますか気持ち悪いんで成瀬さんにも見せてないんで」
「んーそれはどうかな」
 とかわりと普通の顔して言ってるのが気持ち悪いを通り越してもう薄気味悪かった。もっと言えば死んでほしかった。
「とりあえずこのDVDは回収します」
「乳首に洗濯バサミとか言ってるから?」
「それ以前の問題です」
「まあそうね。いきなり全裸になって乳首に洗濯バサミ挟んだところであんまり面白くないし、さほど変でもないかもしれないし」
「いや変ですよそれは変ですよハードル上げないで下さいよ」
「一人だからなあ。やっぱり俺も出して掃除機で吸っ」
「いやもうビデオやめましょう。今回はちゃんと口で説明するようにして下さいよ」
「無理」
「しかもそんないきなりおかしいことやれって言われたって絶対無理ですよ、皆いろんな前提があるからこそボケれるわけですし」
「前提は自分だよ、自分の設定だよ、それプラスご自宅にあるものだよ。それで仲間か天が何とかしてくれるのを待つしかないよ」
「とりあえず普通の顔して意味不明な事言うのはやめて貰えますか」
「あとはもう……健全な肉体に健全な精神を宿した撃退士のみんなの……それぞれの中に眠る愉快なカオス創造力を信じて頑張って貰うしかないね……そうまずは装備から弄って貰ってだね」
 とかなんか、良く分からない事を話し始めた成瀬は無視することにして、永野はそっとDVDを鞄の中に回収することにした。





『おかし・い』

 1、笑いを誘われるようなさま。
   どこか不釣り合いで、嘲笑(ちょうしょう)したくなる感じ。ばかばかしい感じ。
   滑稽(こっけい)であったり、つい笑いたくなる感じである。


 2、普通とは違った格別の趣(おもむき)のあるさま。
   心ひかれる気がする。このましい感じである。面白く興味をそそられるさま。
   風情がある。風流だ。すぐれている。みごとだ。
   美しい。魅力がある。また、りっぱである。じょうずである。


 3、変だ。かわっている。いぶかしい。あやしい。
   普通とようすが違うのに気づいて疑わしく思うさま。
   普通ではないところが感じられる。変である。変わっている。
   言動や状況が不審である。いぶかしい。怪しい。
「成瀬先生ってやっぱあたま――・いよね」






リプレイ本文




●こんなふわっとした見切り発車の罰ゲームみたいなお仕事に立ち向かったマゾヒs……じゃなかったえー撃退士の皆様だって普段はちゃんとしてるんですちゃんと真面目に戦ったりも出来るんです出来るところをあえてふざけてらっしゃるんです本当です疲れた身体に鞭打ってあえてふざけてらっしゃるんです全力ですかわいらしいです不真面目の裏に潜む真面目です最早ロマンです。


「ピザのお届けに上がりあしゃあアアアアっっっッッ!!」
 絶対そんなアクション漫画の戦闘シーンで叫んでる人みたいな全力なピザ屋嫌だ、みたいな全力な声で叫んだ海城 恵神(jb2536)が、スクーターに乗って登場した。
 スクーターに乗って尚且つお庭に続く大きなガラス戸にバッキャアアアアンと激突し、しただけでは飽き足らず思いっきり打ち割って、リビングに乗り上げて、ズシャアアアアアアッとスクーターを横滑りさせながら、自らはその車輪の回転の力に弾き飛ばされるようにして押すなよ絶対押すなよ、みたいな押し出された人みたいにたたらを踏みつつへっぴり腰で登場した。
 にも関わらず、
「ピザ屋店員華麗に登場!」
 とかなんか言って言った勢いだけでへっぴり腰の自分をなかったことにしようとした。
 あってはならないことだった。本当のピザ屋だったら。
 へっぴり腰も含めてあってはならないことだった。本当のピザ屋だったら。
 でも片手にお盆のように乗せたピザだけは絶対にどんな状態でも落としてなかった。本当のピザ屋でもないのに。
「ご注文のミックスピザだしゃああああ!!! せいっ!!!」
 なのに最終的にはそんなけ守ったピザを思いっきりソファに座ってる天耀(jb4046)の前に投げつけた。
 あってはならないことだった。本当のピザ屋だったら。いや配達してきたピザ投げるて。
 でも天耀さんはとっても良い(美形の)お客さんだったので、「おーやっと来たかーピザー」とかなんか言って床にべっちゃーなったピザ無言で拾って、ガラステーブルの上に置いた。
 無言かつ真顔で置いた。で、「久しぶりに家でのんびりするのも悪くねえよなあ」とかなんか言いながら、キッチンの冷蔵庫に向かい歩いた。
 無言かつ真顔で。
 彼の今日の設定は「休日の家でのだらだら」だ。大抵人は普段は真顔で歩いてる。家で一人きりなのに変顔し続けてるなんていうアッパーな人はそうそういない。だからこれは正解だ。
 正解なのに、どうしてこんなにも見ている人を切ない気分にさせるのか。あのピザ屋との温度差どうしたらいいの何なの時空が違うの時空違うのに重なっちゃってる奇跡的瞬間を私は見てるのどうしたらいいの。とでもいうような居心地の悪い気分にさせるのか。
 それでも彼は頑なに「素」で冷蔵庫を目指す。
 最中にある、二本のそびえたつサーバント(茶色くてぷるぷるしてるやつ)
 の前で、無駄に攻撃してあえてビリビリしちゃってるなんか青い物体……いや、秋桜(jb4208)。
 からちょっと離れた場所には、地面から突き出してる二本の足。
 スカートが思いっきりめくれあがってるところからして多分女子で、ちゃんと黒のホットパンツはいてるから大丈夫っちゃ大丈夫だけど、そもそも地面から脚がにょきってなってる状態を見ることは日常の中でそう多くないので、それがなんかもう脚だけでとってもかんわいらしい気がする美脚だということも相俟って、前衛的な芸術オブジェみたいな様相を呈している。
 前を、平然と通り過ぎていく天耀。
 いや思いっきり脚生えているのにノーリアクションて。

 その間中も、秋桜はずっと、
「私共の業界では……ご褒美でつ……ふひひ……ふひひ」
 えっ何言ってんの聞こえない。
 ってやたら声大きい人は絶対キレ出してきそうな小ささでずっと、敵のびりびり攻撃受けながらぼそぼそ喋っていた。あんま何言ってんのか聞こえないけど(しかも笑い方おかしいけど)、どうやら嬉しがっているようだった(笑い方おかしいけど)。
 この依頼に入る前から彼女は、攻撃すると反撃してくるサーバントのこのビリビリに目をつけていて、とっても気持ち良さそうだ、と思っていたのだ。
 で、実際ビリビリされてみて、実際気持ち良かったようで笑っている。笑い方おかしいけど。
 というか探したのだ。一番気持ちの良い具合を。
 何処をどう叩けばどれくらいの量の電流が出て、一番身体にフィットしてくるのかを、傷を負いながら本気かつ真面目に探し出したのだ。飽くなき快楽への探究心。人間の本能でもある。彼女は悪魔だけど。
 だから是非この気持ち良さを友人のリコリス氏にも味わって頂きたいということで、近場から生えてる脚を掴みおすそ分けすることにした。
 つまりこれは、イタズラで小悪魔ちゃんなリコリス・ベイヤール(jb3867)ちゃんの脚だったということである。
 通りで脚からそこはかとなくかんわいらしさが滲み出していると思った。
「えい」
 ピュルビリビりビリンッ。

「ぐおおうああああ」

 洞窟の奥でドラゴンが鳴いてるみたいな、くぐもった凄い音が鳴った。地面の下からだった。つまりリコリスの悲鳴だった。
 やがてにゅるっぽんっ!! ってなんか出て来た。と思ったらリコリスだった。やっとここでリコリスの小悪魔ちゃんフェイスが視聴者の方にも分かる形でお目見えするのである。
 もちろん顔は映ってなかったけれどちゃんとふきかえなしで彼女はこのアクションに挑んでいた。闇の翼で無駄に飛翔した状態から物質透過を使っての屋内ダイヴーかつ地面……のんめり込ミッ!!! 
 した結果、彼女の一発ギャグ「THESUKEKIOォォウ」(ホラー的な声で)は完成する。
 これを一切スタントマンを使わず実行した彼女の「イタズラ悪魔魂」には感服せずにはいられない。
 彼女は言う。
「ふっ、おっかしーことすれば倒せるサーバント……私の前ではゴミ以下の存在だ。なんせ素直なんかとは全く正反対な私だからねッっ!! スタントマン? そんなもん使ってたまるかっ! スタントマン使うのは、悪魔としての優れた知識をフル回転して悪戯に励む勤勉さが許さないからねっ!」と。
 そう述べていただけのことはある。悪魔としてのスキルを無駄に総動員したこのザッツMUDA芸。
 ロマンであるこれはもはやロマンである情熱である情熱大r……。


●ところで伝え忘れていましたが、この間中、坊主がなんか物凄い胡散臭い顔で「おかしい事なら任せろ」と言わんばかりのドヤ顔して横長のチェストみたいな本棚の上に立ってらっしゃいました。この彼の胡散臭さは、スクーターに乗ってる坊主を見た時のあのなんかちょっとした裏切られ感に匹敵します。

「待てぇええいっ!」
 一体誰に何を待てというのか、そこで唐突に坊主、或瀬院 涅槃(ja0828)が叫んだ。
 腕組みして、逆光を浴びて叫んだ。
 そのタイミングに、そろそろ場の空気暖まってきましたか俺の出番ですかカオスの上塗りいいですか出ますよいいですか、みたいな姑息さが見え隠れした。
「常識という皮をかなぐり捨て、あるがままの姿を晒す者達。幾重にも重なる不条理、そして甘美なる悦楽……人、それを混沌と言う!」
 とーう、と、涅槃はジャンプした。
 身振りは完全に昭和のヒーローだったけれど、飛距離が砂遊びに飽きた子供たちの遊びだった。
「見た目は坊主、頭脳は怪盗。セクシー坊主世界チャンピオンの男、涅槃三世とは俺のことだ! 覚えとけぇえい!」
 覚えておいて別段得な事もない気もするけれど、この勢いで言われたらなんか覚えなきゃいけないような気になるから不思議だった。あと、決めポーズが無駄にスタイリッシュ過ぎたことも「絶対覚えなきゃいけない度」というかむしろ、「覚えなきゃこの無駄にスタイリッシュなポーズを夢に見てうなされそうな呪いにかかる予感度」に拍車をかけていた。

「聞けぇい、そこのサーバント共」
 涅槃はどん、と背後に背負っていたそれを地面に下ろした。
「俺は大変な物を盗んできました。お前達の弟です」
 その正体は、『弟』と書かれたサンドバックだった。つまり彼はサンドバックを背負いつつ本棚から砂遊びに飽きた子供たちの遊びみたいなジャンプをして、無駄にスタイリッシュ過ぎるポーズをとっていたのであるサンドバック背負って。
「弟を助けて欲しくばそこで大人しくしていろ。さもなくばこいつが……酷い目にあうぞ?」
 サーバント無言。むしろぷるぷる。
「大人しくしていろと言ったのが聞こえなかったようだなぁ!!! ならこうしてやるー!! こうだーーーー」
 弟(仮)に(油性)マジックで落書き(アホの人みたいな顔の)。弟(仮)のあちこちを洗濯バサミでファンタスティックOh Yeah。弟(仮)を名状し難い縛り方でロープでハードストロングOh Yeah。してたら勢い余って隣の青い髪の少女もOh Yeah……しちゃう? はいおいしいことになりそうなら私やります大丈夫です事務所的にも全然大丈夫です縛られます! って食い気味に縛られるピザ屋店員の制服来た青い髪の天使エンジェル。
「ふう。どうだ。これで手も足も出せまい!」
 汗をぬぐいながらサムズアップして坊主いい笑顔。
 横ですっかり縛られてる海城 恵神。
「人類よ恐れおののけぇぇぇぇぇぇぇ! 私がこの国の王じゃーあああああああ!」
 まず間違いなく手も足も出せなくなった上に、女子として致命傷を負った格好の恵神が、天井からつられながら叫んだ。
「世界を我が物にぃぃいい!」

「ハーイ! televisionの前のミナサーンコンニチハーデースネー。アラユル人々から惜しまれつつ銀幕の世界から引退した大スター拙者デース☆」
 と、そんな恵神の前にうっさん臭い外人さんが出て来た。
 でもテレビの発音だけは、うっさんくさいけど外人さんだった。マイケル=アンジェルズ(jb2200)である。
「今日ご紹介する品は海城恵神デース☆」
 ☆なんて場合じゃ全然ないのだけれど、うっさん臭い外人さんの口調で言われるとなんかこう商品として成り立ってる予感がしてしまうこの不思議。これが、銀幕の世界から「惜しまれつつ」引退した(という妄想何その本気のポジティブこあい)という外人の持つ力なのか。

「まわるー時代が、世界が廻る〜」
(※天井につられた格好でくるくると回る恵神さんが切ない声で歌う歌です)

「これ画期的デース。スイッチを入れなくても歌ってくれマース。自動再生デース自分発進デース。あとつっついても歌いマース。さびしい夜でもこれ見てるとすっかり元気になれマース。うんこいつよりマシ! って元気になれマース。それでその後ちょっと苛っとできマース! いや何こいつ何で天井からぶら下がってんの歌ってんの。って元気になれマース! 更にその後、こいつよりマシって思って元気になった俺って……こんな物としか比べられない俺って……とかだいぶメランコリーな気分になれマース! 一台三役デース! 一回に一台、是非オススメデーース!」
 マイケルは、全部本気でちゃんと実演付きで演じてくれました。
 一つ一つのエピソードが見ている人にもとっても分かりやすいです。
「続いての商品は、あちらの脚二本地面から突き出してる感じのobjectデース。リコリス仕様デース☆」

「いやもうこんなカオスなところに居られるか!! 俺は部屋に篭ンぞ!」
 と、その通販番組の最中にマクシミオ・アレクサンダー(ja2145)が言った。満を持して言った。満を持し過ぎて言った。
 で、コンビニ弁当とペットボトルの無糖紅茶持ってどっかの部屋に消えてった。
 どっからどうみても「赤い髪したチョイ悪な美形」の彼が部屋に籠ればやっぱりベースとか弾き出すんかしら、という勝手な妄想をよそに、彼は地味にこっくりさんを始めた。
 静かだった。外の喧騒が嘘のようだった。そしたら全く力込めてないのに五円玉が動いてめっさビビり出した。
 怖くなったので一人で携帯から「ぼっちなう」とか呟いた。反応ないので新聞紙切って正方形にして無駄に小さい折り鶴折ってみたりしちゃった。手元にあるペンとか割り箸とかでジェンガ作ってみたりしちゃった。
 つまり身体とか耳とかピアスだらけで刺青だらけなのにやってること凄い可愛かった。
 こんな彼の姿にむねきゅんした父性ある男性は「実母に虐待された経験から若干女性嫌いの気があり、恋愛対象は男性」で尚且つ「2年前に一方的に別れを告げられた恋人を未だに待ち続けている一途な一面もあったり」なんかしちゃう彼に、アタックしてみてはどうでしょうか。結果は一切保証しませんけども。



「はい、それでは、仕上げです」
 田村 ケイ(ja0582)が言った。
 この話のことではないし彼女を忘れていたわけでも一切ない事をここに陳述しておく。
 彼女は家にある材料と、ケイさんの農場から持ち寄ったキノコを使ってあっという間に出来上がりケイさんの簡単クッキングを行っていた。ずっとだ。ずっと黙々とマイペースに行っていた。
 さすがケイさんだ。基本自分の好きなように生きるけどその結果起こる全ての責任をとる覚悟は常に持ってるケイさんだ。
 スクーターが突進してこようがそれを美形が無視しようがSUKEKIYOが決まろうが仲間がビリビリされてようが坊主が飛ぼうが天使が縛られようが通販番組が始まろうがぼっちなうと呟かれようが、彼女はとにかくケイさん農場から採取してきたキノコ(蛍光ピンクに淡く発光しています)と石(その辺に落ちてるやつ)でシチューを作っていたのだ。
 絶対食べられる代物じゃない。
 石て。蛍光ピンクに光ってるキノコて。絶対食べられる代物じゃない。けれど彼女は黙々と本気で作り、きちんと完成させた。完成が最早どの地点を目指しているかも分からない代物だけど完成させた。

「さあ、おあがりよ」
 無表情にサーバントへとそれを突き出すケイさん。
 むしろ、皆のカオス力でぐずぐずになってもうデロンなってる(つまり瀕死)のサーバントを見下ろし突き出すケイさん。
「ふはははは! さらば弟(仮)! マスター棒、暁に死す!」
 横で何言ってんのかもう全然分かんないけどとにかく笑ってる坊主。
 と、「なお、返品受付はしてないデース☆ さあレッツ・ダンシーン☆ HAHAHA!」踊るマイケル。
「しゃー!」
 私が倒しましたと言わんばかりのドヤ顔で両腕ガッツポーズしたいけど出来ないので気分だけ味わいつつ叫んでる恵神さん。
 の下でSUKEKIYO決めてるリコリス。
「欲しいかったわぁ、一家に一台欲しいかったわぁ」
 聞き取れない声で呟いてる秋桜。
 とかが居るにも関わらず、素知らぬ顔でゲームしてる天耀。


 もちろんサーバントは、このカオスに耐えきれず完全に死滅した。

 あとには。
「あれっ、みんなは」
 ぼっち遊びに飽きて眠りこけた結果置いてかれちゃったマクシミオだけが残っていただけという。





おしまい







依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 涅槃三世・或瀬院 涅槃(ja0828)
 アメリカン☆ドリーム・マイケル=アンジェルズ(jb2200)
 常識は飛び越えるもの・海城 恵神(jb2536)
重体: −
面白かった!:8人

cordierite・
田村 ケイ(ja0582)

大学部6年320組 女 インフィルトレイター
涅槃三世・
或瀬院 涅槃(ja0828)

大学部4年234組 男 インフィルトレイター
澪に映す憧憬の夜明け・
マクシミオ・アレクサンダー(ja2145)

卒業 男 ディバインナイト
アメリカン☆ドリーム・
マイケル=アンジェルズ(jb2200)

大学部2年257組 男 ディバインナイト
常識は飛び越えるもの・
海城 恵神(jb2536)

高等部3年5組 女 ルインズブレイド
彩り豊かな世界を共に・
リコリス・ベイヤール(jb3867)

中等部2年9組 女 ダアト
Man of Devil Fist・
天耀(jb4046)

大学部4年158組 男 ナイトウォーカー
エロ動画(未遂)・
秋桜(jb4208)

大学部7年105組 女 ナイトウォーカー