●こちらのシナリオのジャンルは恋愛となっております。
静かな森の中に、突如として響き出す、大迫力大音量のサラウンド。
ダッダッダーンダダダダダーン。
発信源は森の奥に建つ、小さな山小屋からである。
ダッダッダーンダダダダダーン。
ズッチャカズッチャカドコッドコドッドコモキュスコッパコズッチャカ『オーウ、ウエ〜イファッ(ピー)モッヤーシイエローボォウイハアハア』ズッチャカズッチャカドコッドコドッドコ(以下エンドレス)
そしてはしゃぎ出す黒光りのマッスルボディ。
「さあ! おぬしらに逃げ場はない!」
サイドリラックスきめるマッチョ。
「ここは完全に包囲されている!」
マッチョがマッチョにサイドチェストにマッチョ。
「そこの青年を解放し」
ラットスプレッード! かつマッチョ。
「大人しく縛につこうとは思わんかね?」
ダブルバアアイセーップスッッ!!! アンドマッチョ。
「今ならば自首の付き添いで勘弁してやるぞ」
アーーブドミナルアンドサイッでマッチョ。
「さあ、決断されよーーーー!」
モーーーストバリアブルマスキュラーかーらーのオリヴァアアァァァァァーッッなるマッチョ。
の隣になんか分かんないけど並んでポージングし出す、ややマッチョ。
「おーっ! なんかわかんないけど面白そうだから俺も踊るぞーっ!」
そしてそんな光景を、お面の下でめっちゃ目をほっそーくして見つめる、強盗二人。
とかいうこちらは。
題して「頭にうさみみカチューシャつけたモヒカンマッチョのマクセル・オールウェル(
jb2672)が、ビキニ一丁で真冬のどっきん! 筋肉祭り! を開催し、天使を誘拐したという悪質な強盗達の視線を自らに集めるマッソウ作戦マッソウが、成功した瞬間の様子であるマッソウ。
あと、「真冬のどっきん! 筋肉祭り!」に思いっきりどっかやられたかなんかの彪姫 千代(
jb0742)が、絶対何かがバグったとしか思えない勢いでマクセルの隣に並び、一緒にポージングを取り始めた様子である。マッソウ。
ややマッチョの肉体をガチマッチョの隣に並べ、見よう見まねでサイドリラァァックス! サイドチェエエスト! ラットスプレッー……。
「ち、千代ちゃんっ! 大人しくしてなきゃ駄目でしょ、こらっ!」
そんな友人の奇行を止めるため慌てて飛び出てくる、神埼 累(
ja8133)。
「いや累、多分言っても無駄なんじゃない」
そしてそんな光景をわりと面倒臭そうな顔で眺める、龍騎(
jb0719)。
「いいかい千代。困った時はとりあえず服を脱ぐんだよ。そしたらきっと大丈夫だからね」
「うん分かったよ婆ちゃん! 俺脱ぐよ! 困ったらちゃんと脱ぐよありがとう!」
さらにここで唐突に差し込まれる、彪姫 千代、幼少の頃の記憶。
「うん……もう最悪何でもいいんだけどさ」
呆れたように腕を組み、龍騎が言った。
「怪盗捕まったんだし、あの踊りもういいんじゃないかな。っていうかこれ事件じゃなかったの。拉致監禁系とかじゃなかったの。なんでもうあっさり無事解決しちゃってんだよ。もっとド派手に格闘すんじゃなかったの、リュウはドカーンがスキなのに」
文句がすっかり「子供駄々捏ね」みたいになりつつあったけど、彼の言っていることはだいたい合っていて、確かにその指が示す方向を見れば、あんまりにもあんまりな光景になんかもう一歩も動けず、すっかり捕まっちゃった強盗二人の姿があった。
あと、強盗を捕まえるべく動いていたはずが、気付いたらいつの間にか強盗と同じ表情で隣に並んでた水鏡 響耶(
jb1151)とか。
の背後で淡々と、すっかり強盗達の両手を縛り終えた(女装姿の)鴉乃宮 歌音(
ja0427)とか。
と、それを手伝う「ねぐりじぇ姿」の水葉さくら(
ja9860)とか。
に、うっかり怪盗の一味と間違えられ、アレスティングチェーンで両手を縛られるインレ(
jb3056)とか。
の姿もある。
「はっ! 違う! 何をマイルドに縛られてるんだ僕は……僕は違う! 変身ヒーローだ! ノーカウ」
「……あぁぅ!? ゴ、ゴメンナサイです、つ、つい……」
とかいう光景に、益々目がほっそーくなる、強盗二人。
彼らは最早、ほっそーい目をする以外の身動きを封じられ、何これ、どういうことなの。どういうことなの、目の錯覚なのどういうことなの。変態なの変態が居るのマッスルボディなの変態なの緊急事態なの。と思考すら完全に奪われている。
それでもマクセルの筋肉祭りはまだまだ終わらない。むしろ始まったばかりで終わってたまるかマッソーウ。
「どうだもう何も言えまい! (サイドリラックス)この美しいマッソウを前におぬしらに言えることなど何もあるまい! (サイドチェスト)これでも逃げ切れると思うか否! やはりおぬしらに逃げ場などないのだ! (ラットスプレッド)大人しくそこの青年を解放し」以下筋肉祭りアブドミナルエンドレスアンドレスプライスレス。
一 体 ど う し て こ う な っ た。
龍騎は思った。
累だって思った。響耶も思った。
三人の共通の思いはこうだ。
「突入したすぐの時はまだもうちょっとましだったのに」
彼らはそれぞれ、その時の様子をちょっと思い出してみる。
●でも意外とそうでもなかった。
「それでは突入と行こうか。まずは私が注意を引く弓を放とう。その後、皆が突入してくれ」
まるで幼子のような見た目の歌音が、まるで声変わり前の子供のような声色で、いつものように冷静に、状況を見定め指示を出していた。
仲間達が頷くのを見るや、彼は、幻視望遠『観測手』(イメージホロスコープスポッター)を発動する。
淡々とした無表情で。何事にも動じない余裕の態度で(思いっきり女装で)、ヴィントクロスボウを構え小屋の壁を狙。
「え、いやちょっと待って。いいの。あの人の女装はいいの。あんな思いっきり女装なのに真剣な顔はスルーでいいの大丈夫なの……」
龍騎が思わず、口走る。
「大丈夫だ。インナーにスパッツをはいている」
「えっそこじゃないよね、問題なのそこじゃないよね」
『アレコレマジキョウ、ヘンタイカオスシカナイヨカン』
「ん? 今また何か変な声が聞こえたような……あの天使のテレパスだろうか。ふむ……」
「とにかく行きましょう。事態は一刻を争うかもしれないし」
累が落ち着いた顔で纏めるように言った。さすがいきなり脱ぎだしたりする友人を持つ彼女は違う。今更クールボーイがガールズファッションでも全然平気だ。もしくは、歌音のことをマイルドにただの美少女だと思ってるのかも知れない。
「一般人に毛が生えた程度の実力でありやんしょうから、手加減はかなり必要でんしょうねェ……」
孤月を片手にシニカルに微笑む響耶。
の隣で、そんなうさみみカチューシャモヒカンマッチョ姿で真面目な顔とかマクセル。
そして上半身裸状態の千代。
の背中でなんかぐたーってなってるロングコートの不審者。
「ヒーロー……ブラックラビット……参上……むにゃむにゃ」
「えっ! 千代ちゃん誰それ!」
「おーわかんないけどなんか寝てて危ないから連れてきたぞー!」
っていう後ろの奴を良く見てみると、森で寝ている最中に遭難者と間違われて連れて来られたにも関わらずまだ眠っているそれはインレだ。
『ヤッパリコレハヘンタイマツリダッタンダネソウダッタンダネ』
「やっぱり何か聞こえるな……」
「……むっ」
そこで突然、がばああっと千代の背中の変質s……じゃなかったインレが目覚め、自分の状況に関しては一切触れずに、「……呼ばれた。助けを求める声が聞こえる。助けを求められたならば、助けない理由はない。何故なら僕はヒーローだからだ。黒い兎のヒーロー、ブラックラビット」
とかなんか完全に、寝起きとか寝起きじゃないとかいう次元じゃなくて、人として若干崩壊してるっぽい事を言った。
「あ、じゃあお兄ちゃんありがとね。わしそろそろ降りるね、ありがとうね」
いそいそと千代の背中から降り始めるインレの傍らで。
歌音がクロスボウの弓を放っている。
バシィィッと小屋の壁に撃ち込まれる弓矢。
何事だ! とそこに強盗二人が気を取られている隙に、
「残念だったな。こんな扉など、悪魔の僕の前では存在しないも同然!」
ってなんかいかにも、物質透過とかしてきましたみたいなドヤ顔で、扉思いっきりぶっ壊し侵入してきた不審s……いや、うさ耳のついたコートのフードを目深に被り鼻下マフラーで釘バット持ったインr……いやもういいか不審者で。
「邪魔するぞ、通りすがりのヒーローだ。む……ピエロに、ウサギに、縛られた男、だと?! くそっ……予想以上に怪しい奴らめ、覚悟しろ!」
「いやお前にだけは言われたくねえよ!」
「しかも縛られてる奴カウントしちゃ駄目だから! そいつ明らか救出対象の天使だから!」
強盗の声に被り、思わず指摘する龍騎。もうハイドアンドシークしとく、なんて場合じゃなかった。
「わーな、ななな何もんだよ、お前ら!」
「通りすがりの悪役ですが何か」
ズサーっと遅れて飛び込んで来た歌音が歌うように口ずさみながら、拳銃を持った強盗へ突進していく。踊るような身のこなしで強盗(兎)に脚払いをかけたと思うと、倒れ込んだその鳩尾に激しいパンチを繰りだした。最後に股間を思い切り蹴り上げられ、強盗(兎)は悶絶。
ナイフ片手におたおたする怪盗(ピエロ)へは、響耶が向かっていた。
鞘に収めた状態のままの孤月で、ピエロの肩、背中、ひざ裏を連続してびっしびしと叩き、自分の前に跪かせた。なんかエロかった。
「殺さない程度には緩めてやりやんした」
と。そんな緊迫した(笑)戦いの最中。
突如として響き渡る、かあいらしー女子の声。
「ふぁ……なんだかさわがしいですぅ……」
こちらは、「散歩してたら少し眠くなっちゃったので、通りがかった山小屋でお昼寝をしてました事故」により、初期配置がロフトのベッドの上となっていたさくら(13歳・巨乳候補)さんです。完全に、「え?」ってなってる皆の視線を余所に、魅惑のねぐりじぇ姿で梯子を降りてきます。そしてとんと地面に足をつけると欠伸と共に気だるげに背筋をダブルバイセップス。そのちょっとプルプルする体が蠱惑的なセクシータイムアンドチェストボヨオンですっかり悩殺力をディバインナイト。
「うおーーーーまぶしーーーっ」
「あれ? ……これは一体……」
そしてやっとそこに広がる光景を認識した彼女は、小首を傾げそれからおずおずと。
「え、えと、よく分かりませんけれど。穏便に、平和的に解決しましょう」
などと可愛らしー声で言いながら、ナインテイルを取り出した。
ナインテイルを取り出した。
何度見てもその手にあるのは、1本の柄に9つの細い革紐がとりつけられたばら鞭、ナインテイルである。
バシィッバシィッ!!
「平和的に穏便に」
バシィッバシィッ!!
「解決しましょう……ね?」
バシィッバシィッ!!
というその、上目遣いでおどおどとした彼女のか弱い手から繰り出される、激しい鞭捌きとのギャップに、強盗達はすっかり。
「うおおおおお!」
「これで明日から生きていけますありがとーーーう!」
生きる気力を取り戻したのだった。
「えー! 逆に元気になってるー!」
「あぅ……え、と。ご、ごめんなさい……?」
「とそんなピンチに俺登場ー! 闇鷹するぞー! 観念するんだぞー!」
そこで、スキル「隠虎」で身を隠していた千代が、アンヨウと名付けられた技を繰り出しながら飛び出して来て、闇に抱かれし漆黒の鷹を強盗二人に向け、ここぞとばかりに勢い良くぶつけた。
「くそおお、前が見えねえ!」
「っていうか、結局ヒーローなのか悪役なのかどっちなんだよおおお!」
暴れ回る強盗が、床に転がった拳銃を蹴る。
「はっ。今蹴ったやつ拾え拾え!」
「またれぇぇーい!」
そこに轟く、大迫力の低音ヴォイス。
振り向く一同。
マッチョである。
ラジカセ持ったマッチョである。
どおーーん。
と、彼はわりと可愛らしい感じのラジカセを床に重そうに置き、再生のスイッチをポチっとした。
「き・ん・に・く・ま・つ・り・じゃー!」
●そして今、天使は電波を伝搬しております。
こうして強盗達を捕まえた撃退士達は、後は天使を学園に送り届けようとしていた。
その最中。
「な、何かしら……何でこんな変な映像が、次々に頭の中に浮かんでくるのかしら!」
いつもはわりとクールな累が、慌てたように叫び出し、千代と龍騎の方をガン見していた。
その理由はこれからさくらがアナウンスしてくれる。
聞いてみよう。
「えと……千代さんがぁ。龍騎さんをォ、突然壁にドンッって押しつけて、凄い真面目な渋めの声(笑)で「リュウ…今日はいつもの俺じゃないんだぞ」とか言っちゃったりして、やめろよ、はなせよ、とかなんか龍騎さんが言ってぇ、そしたらまたなんか、千代さんが渋めの声(笑)で「余り俺を怒らせるなよ」とかなんか、超至近距離で囁いてぇ、そしたら龍騎さんが嫌がってもがいてかーらーの、封じマッソーウ! 龍騎の顎を持って唇近づけマッソーウ! それともこっちの方がいいのか? なんて言っちゃったりなんかしてマッソーウ! って映像が見えるんですけど……これ、何でしょう。実話ですか?」
「いや……いや待って何考えてんのあの天使イミわかんないキモイ。キモイしばく。絶対しばく絶対しばひいいい。や、ややややめろ、やめろ! 伝搬するなやめろ! やめ……こンの野郎ーー! ブチ抜いてやるぅぅぅ!」
「いやいやまあまあ、そうカリカリせずに、落ち着きやんしょう旦那」
と、ダークブロウ放とうとして響耶に止められる龍騎。
の横で「ふむふむ」とか冷静な顔で(女装して)「思考解読」とか呟いてる歌音。の後でとりあえずなんか笑ってる千代。
の腕を引っ張り叫ぶ累。
「ちょおめはあっちさ行ってでけるんでたるんでどるんであるんでもるんで!」(←以上、天使的体感でお送りました。実際は「もう千代ちゃんはとりあえずあっち行ってなさい!」的意味の秋田弁です)
そんな暴走する仲間達を見て、インレはそっと考える。
こんな時に、とは言わない。
妄想するな、とも言わない。
だがそれを垂れ流すのならぼっこぼこにされる覚悟くらいはしておいた方がいいと思うよ、少年。
チーン。
そしてインレは、静かに合掌をした。
横で、無駄にラットスプレッド体勢で強盗達を見張っているマクセルマッソーウはもういいよ!
●以上、こちらのシナリオジャンルは恋愛。でお送りしました。
こうして。優秀で個性的な変z……撃退士達の力により、強盗は捕まえられ、天使ともども無事学園にぶちこまれたのだった。
おしまい。