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マスター:神子月弓
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2015/06/16


みんなの思い出



オープニング




 朝から強めの雨が降り続いている。
 跳ね返る水しぶきがアスファルトを叩いている。

「蒸しますのですー」

 パタパタと扇子で自身を扇ぎながら、客席のマリカせんせー(jz0034)は窓の外を見つめた。
 ちゃんとエアコンの除湿が効いているはずなのに、喫茶部活「ねこかふぇ」店内は、やたらと蒸し暑い。
 せんせー用に、てんこ盛りに盛った冷たいパフェが、早回しの映像をみているように、みるみる溶けていく。

「こんな雨じゃ、誰も来なさそうですー」

 せんせーは「ねこかふぇ」店員の制服を着て、ウェイトレス要員として待機中だ。オレンジのロゴ入りシャツに黒い帽子と黒レギンス、黒いふりふりのミニエプロン。長い髪は片側にまとめて、お団子にしてある。

 しかしまあ、賢明な生徒なら、放課後は真っ直ぐに寮や家に帰る天気だろう。
 客が来る気配は全くない。

 それでも、誰がいつ来ても精一杯もてなせる様、部長と厨房係を務めるアリス・シキ(jz0058)は、灼熱の厨房で腕を振るっていた。
 各種メニューを下ごしらえまで終わらせて、粗熱をとり、冷凍し、冷蔵し、すぐに仕上げられるよう、準備をしておく。

 マリカせんせーがふと、客席から壁の湿度計を見ると、店内の湿度は90%を超えていた。
 除湿をガンガンにかけているのに、さすがにこれはないですーおかしいですー、とマリカせんせーが思った時、看板猫のミルク様が、みゃう、と低く鳴いた。

「はわあ?!」

 厨房からアリスの悲鳴が聞こえる。
 ミルク様は、厨房のほうを向いて全身の毛を逆立て、尻尾をたぬきのように太く膨らませていた。

 見えない何ものかが厨房から飛び出してきた。
 飛びかかったミルク様が、簡単に弾き飛ばされる。

「あらあらー?」

 マリカせんせーが席を立つと、不可視の物体が、立ち止まった。
 見えないけれど、気配を感じる。
 すごい湿度と熱と、鼻にツンとくる嫌な臭い。

「きゃー! せんせーのパフェがー!!!」

 不可視のものが近づいた途端、パフェだったはずのものは、すっかり液体と化し、更に色とりどりのカビに覆われていた。

「はわ〜!! 折角作りましたお料理もお菓子も、ダメになってしまいましたの〜!!」

 厨房から別の悲鳴が上がる。

「何で冷凍庫がカビだらけになってございますの!? 霜取りだってお掃除だって、毎日欠かさずしてございますのよ!? 今朝だって!」

「多分、このカビカビ星人のせいだと思うのですー!」

 マリカせんせーは、不可視の存在のいそうな場所を睨みつけた。
 ふー、ふーとミルク様が背を丸めて、見えない何かを威嚇している。

「カビカビ星人??」

 アリスが厨房から出てくると、確かに何かの気配を感じた。
 同時に、エアコンの除湿をガンガンにかけていて尚、尋常でない湿度の部室店内に気が付く。

「ふぎゃーお!」
 ミルク様は再びカビカビ星人(マリカせんせー命名)に飛びかかり、そして透明なガラス窓にぶつかって「ふぎゃっ」と悲鳴をあげた。
 どうやらカビカビ星人は、ガラス窓を<透過>ですり抜けて、外へ出ていったらしい。

「お待ちなさいませ!」
 アリスは三角巾とエプロンを外し、長く艶やかな黒髪をなびかせて、部室店内から、雨降り止まぬ外へと飛び出した。
 濡れた黒髪から水滴が滴り落ち、調理用の白衣が雨に透けて、べったりと肌にはりつく。
 そんなことを気にするゆとりもなく、アリスは<忍法『髪芝居』>を試みた。

 不可視の何かは、【束縛】を受けて、その場に止まったようだった。
 続いてアリスは<高速召喚術>でヒリュウを呼び出す。

「わたくしが、何とか拘束出来ておりますうちに、早く学園の皆さまに加勢をお願いいたしますの!」

 アリスの言葉に、マリカせんせーは慌てて店から飛び出し、偶然通りすがった皆さんに「た、た、助けてほしーのですー!」と、声をかけた。


リプレイ本文




 傘を雨が激しく叩く。
 マリカせんせー(jz0034)の嘆願に、足を止めてくれた6人の助っ人たち。


「フフフ‥‥今回のあたいには秘策がある!」
 ゴーグルを着用した雪室 チルル(ja0220)はそう言って、「どこかで蛍光塗料が手に入らないかな?」と尋ねた。

 相合傘で通りすがった、デート中カップル、浪風 悠人(ja3452)と浪風 威鈴(ja8371)は顔を見合わせた。
「部活棟の中なら、ペンキくらいあるんじゃないかな?」
「‥‥ああ‥‥うん‥‥出店の時に‥‥看板、つくるし‥‥」

(こんな日は普段慣れ親しんだ道が、別の道になったと錯覚する事はないだろうか)
 傘もささず、ずぶ濡れになって、別の世界へと迷い込んだような感覚を楽しみながら徘徊していた、アイリス・レイバルド(jb1510)は、「コンビニから防犯用カラーボールでも借りてぶつけるか? 私のこのずぶ濡れの格好では迷惑千万だがな」と提案した。

「コンビニまで、けっこう遠いのですー」

 せんせーの言葉に、礼野 智美(ja3600)が「阻霊符で<透過>を阻み、ハンカチに石を包んで、敵の上から投げてみるか?」と別の案を出す。

「ペンキを取ってくるなら、僕が行きましょうか?」
 レインコートに長靴、ゴーグル着用で自転車に乗っていた、鈴代 征治(ja1305)が言う。
「自転車なら、ほら、早く往復できますし」

 ちなみに、今月から、自転車の雨天走行中は傘差し運転が禁止になったため、征治のビニール傘はサドル下にきちんと差し込んである。

「助かるのですー! 部活棟共同倉庫まで、自転車なら1分もかからないのですー。お願いするのですー!」

 征治はせんせーの言葉に、急いで自転車を走らせた。





 アリス・シキ(jz0058)は濡れ鼠になりながら、不可視の物体を【束縛】し続けていた。
 ツンとした匂いと熱が、大雨の中でも伝わってくる。

 チルルが、戻ってくる自転車の音に気づいて、阻霊符を展開する。

「お待たせ、アリス! もう大丈夫だよ!」

 征治がそう言って自転車を下り、目標物の位置の見当をつけ、ペンキをぶちまける。
 雨の中に、中くらいのバランスボールくらいの大きさの、カビで出来た「まりも」状の何かが、ペンキまみれになって、浮かび上がった。
 地上1mくらいを、ふよふよしている。

「せ、征治〜! 有難うございます!」
 アリスの顔に安堵が広がる。

 そのまま全員で、ぐるりと敵を遠巻きに囲む。逃げられないようにするためだ。


「異端を暴いて晒すのが、私の生き様だからな」
 アイリスが<星の輝き>で、更に、球体の影を見やすくした。
「ペンキも効果的だが、影が薄ければ光を当てて浮き上がらせる、暴いて晒すと言っただろう」


「雨は好きだけど、カビはキラーしないとね! 皆、下がって、気をつけて!」
 悠人が<アンタレス>を放った。

 ペンキで上半分が見えている球体は、ふよふよと<アンタレス>を躱した。


 その間に、智美は<血界>を使用し、身体中に真っ赤な紋様を浮かび上がらせていた。
「喰らうが良い!」
 続けざまに<コメット>。無数の彗星が、カビカビ星人に降り注ぐ。

「こんなもん、はびこらせてたまるか」
 グロテスクなカビカビ星人の本体を改めて見て、吐き捨てるように智美は呟く。

「うっわぁ‥‥」

 カビカビ星人の本体を目撃した悠人は、一瞬、恐怖を覚えた。
 それほどまでに、禍々しい‥‥そして気色の悪い汚物であった。

(威鈴にあれを見せるわけにはいかない! 何とかして討伐しないと!!)
 デート気分が一気に吹き飛ぶ。モイスチャーメガネの奥の目に、本気の光が宿った。
(次の<アンタレス>は、絶対に外さないっ‥‥!!)


「‥‥デートの邪魔した‥‥まじおこ‥‥狩り取ってやる‥‥! 皆、どいて‥‥!」
 怒りに我を忘れた威鈴が、敵に近づき、直線状の攻撃<ダークブロウ>を放つ。
「雨‥‥綺麗だけど‥‥カビ‥‥は嫌」

「はわあ!」
 危うく威鈴の<ダークブロウ>がすぐ横を掠め、アリスが悲鳴を上げた。
「わあ、アリス大丈夫?」
 隣の征治が尋ね、「はい、驚いただけですの」と、震え声でアリスは答えた。


「カビカビ星人、早く退治されてください!」
 征治は聖獣のロザリオを掲げた。
 直線移動する無数の光の爪が生み出され、ガツンガツンと球体を削りにかかる。

 避けられた。

「ならば!」

 槍に換装し、素早く距離を詰めて<神速>で突き落としにかかる。
 目にもとまらぬ速さで、ペンキを頼りに、カビカビ星人へと鋭い攻撃を繰り出す。

 今度は命中!
 ペンキをかぶった、グロテスクな球体の様子が、ありありと見て取れた。


「うぷっ」
 傘をさし、心配そうに遠くで見ていたマリカせんせーが、見てはいけないものを見てしまった。
 あくまでも、せんせーは一般人である。
 カビカビ星人の正体を直視できるほどの、強靭な精神力はなかった。

 せんせーは快適になった店内に戻り、ミルク様を撫でて、平常心を取り戻すことに決めた。


「ほう。なかなか興味深い物体だな」
 アイリスはグロ耐性が高いため、動じることもなく、カビカビ星人を観察していた。

 構えたウォフ・マナフを振り下ろす。
 魔鎌の周囲に、魔法で金色の刃が形成され、カビカビ星人の本体に吸い込まれていった。





「なあ威鈴、何だか‥‥さっきよりもアレ、少し小さくなっていないか?」
 太陽剣ガラティンを手に、悠人は、不安そうに妻に話しかけた。

 威鈴とアイリスは目を細め、ペンキをかぶった球体を凝視する。

(もしやこれは‥‥!)

 危険を察知したアイリスが、素早く<シールゾーン>を展開する。
 今にも自爆して胞子を撒き散らそうとしていたカビカビ星人は、【封印】を受けて、攻撃の手段を失った。

 やむなく、今度はチルルの方向へ、体当たりを試みるカビカビ星人。
 堂々と進行方向に立ちはだかるチルル。
 その手にしているものは。

「カモン! 来なさい! あたいの火炎放射器V-07が火を吹くわよ!」

 カビカビ星人に、思う存分アウルの火を浴びせるチルル。この武器は、ヒャッハーという掛け声と共に使用すると、汚物を消毒できるらしい。

 改めて、ペンキまみれのカビカビ星人を見る。汚物以外の何ものでもない。

「汚物は消毒よー! これでも食らえー! ヒャッハー!」
 チルルは、魔法の言葉(「ヒャッハー」)を口にした。
 雨が降っても轟々と唸る炎に、気分はどこかのモヒカンのようだ。

 恐ろしい勢いで球体が燃え上がる。
 雨にも負けず、風にも負けず、アウルの熱と炎がひたすらに球体を焼き尽くす。

「よーし、こんがり上手に焼けましたー! ってこういう時に言うのよね!」

 多分違います。

 焦げ焦げになったディアボロの残骸が、アスファルトにひらひらと落ちていく。
 討伐任務、完了である。
 後片付けは、いつもどおり、専門の業者に頼むことにして、皆は自分たちの状態を確認した。





 勿論、全員ずぶ濡れである。
 レインコートの奥まで、雨水が染み込んできている。
 シャワーを浴びたかのように、髪から雨水がぼとぼと絞り取れる。


「それにしても凄い雨ね‥‥替えの服を持って来ればよかったわ」
 チルルは小さくくしゃみをした。


「お疲れ様。僕達が来るまでよく一人で戦ったね」
 征治がアリスをねぎらう。

 何となく言いにくそうに、智美がタオルを持って近づいてきた。

「あのぅ‥‥とりあえずシキさんは、胸と腰に巻いた方が良いかと‥‥」
「ひあ!?」

 智美にタオルを渡されて、アリスははじめて、自分の調理用白衣が透けて、肌にぺったりと張り付いていることに気がついた。

 真っ赤になってタオルを受け取るアリス。

「‥‥か、風邪を引かないように、早く着替えたほうがいいんじゃないかな‥‥!」

 征治の声が僅かに裏返る。濡れそぼったアリスから、頑張って目をそらす。
 アリスの長い髪に隠されて、服が透けていることに気づかなかった。

「タオルが足りなかったら、いっぱいあるからね。言ってね」
「あああ、有難うございます‥‥」

 何となくぎくしゃくと会話をする2人。


「と、とりあえず、皆様、ずぶ濡れですし、部室に戻りまして、お着替えをいたしましょう。ねこかふぇには制服が常備されてございますの、お貸し出しいたしますわ」

 部長として、アリスは皆を部室に招いた。





 レインコートとレインブーツで完全武装していた智美以外は、見事に濡れ鼠だった。
 智美も濡れ髪をタオルで包んで巻き上げ状態にしている。


 奥に設置されている、狭いシャワールームを、順番に使う。
 濡れた服やタオルなどは、アリスが集めて色分けし、バックヤードの洗濯乾燥機にかけた。

「黒い服はないのか?」
 何故かわなわなと震えながら、無表情でアイリスは尋ねた。

「Tシャツはオレンジですー、でも帽子もレギンスもギャルソンエプロンも黒なのですー」

 マリカせんせーがにっこりとアイリスに着替えを渡す。
「ほら、そのままじゃ寒いでしょう? 早くシャワーを浴びて、着替えてくださいですー。服は乾いたらお返しするですー」

「い、いや寒くはないぞ? 時折雨宿りして体温を戻していたからな」

 わなわなと微妙に震えながら、黒いTシャツをしつこく探すアイリス。
 結局、せんせーに更衣室へ連れて行かれ、濡れた服を引っペがされて、隣接するシャワールームに放り込まれた。

「あの、黒服がどうしても良いということでしたら、わたくしのゴシックドレスをお貸しいたしますが‥‥?」

 既にシャワーを済ませ、予備の調理師白衣に着替えたアリスが、気遣って、アイリスに声をかけた。
「頼む!」
 シャワールームの中から、アイリスは即答した。


「‥‥まさか、ここって、女性用の制服しかないってこと、ありませんよね?」

 別の意味でわなわなしているものがいた。悠人と征治である。

「確かに男性用の制服もあったはずですー。ええと、どこへ仕舞っちゃったんでしょうー?」
 ねこかふぇのバックヤードをひたすら探すせんせー。
「あ、ありましたー! でも1つだけですねー、女子制服はいっぱいあるんですけれど‥‥」

「「貸してください!」」

 2人の声がハモった。そして、「あ、じゃあ、どうぞ」「いえいえ、どうぞ」と譲り合いが始まる。

「調理師用の白衣は、わたくしサイズですので、お2人にはきついと思いますの‥‥」
 困り顔でアリスが解決策を考える。

 暫く考え込み、マジ顔で悠人が顔を上げた。

「威鈴、俺、女子用でもいいかな? シキさん、せんせーも、気色悪くないなら、どうでしょう?」

「わたくしは構いませんけれど‥‥」
「大丈夫ですー、浪風の旦那さんなら、きっと似合うのですー」

 威鈴は、ねこかふぇ店員2人の反応を見て、自分が着ている服を見て、「‥‥お揃い?」と小首を傾げた。
「そうだね、お揃いだね」

「ああ‥‥なんかすみません、譲っていただいて」
 征治が頭を掻く。

 かくして悠人は、女子制服を着ることになった。





「紅茶のシフォンケーキでございます」

 調理師姿に三角巾、調理用エプロンをしたアリスが、皆に手製のケーキを振舞う。
 ケーキにはホイップクリームが添えられ、ミントリーフが飾られていた。

 配膳されたあたたかい紅茶に口をつけて、皆ほっと息をつく。
 快適な湿度と温度の空間って、すごく幸せ。

「添え物ですが、メレンゲをどうぞ」
 女子用制服を着こなした悠人が、手作りのメレンゲを配って歩く。威鈴も配膳を手伝う。

「卵白をしっかりと泡立てて砂糖を加え、バニラ味・ミント味に分けて、低温でじっくりと焼き上げた、さくっと軽い焼き菓子です。クッキーより簡単だし、ほろっとした口溶けのよさもいいんですよ」


「ミルク様には、あたいが、おやつ煮干をあげるわね!」
 無事だった猫餌パックから、猫のおやつを取り出し、チルルはミルク様にご褒美をあげた。
「一番最初に気づいたの、ミルク様って聞いたわよ。偉い偉い! いい猫ね」

「なお〜ん♪」
 甘えた声を出して、ミルク様はチルルに擦り寄った。





(日付も近いし、覚えていてくれているかな‥‥?)
 濡れないようにビニールで覆った荷物をこっそりと見遣り、征治はそわそわしていた。

「征治、遅くなりましたが、お誕生日とおつきあい記念日、おめでとうございます」
 調理師姿のアリスは、そう言って、小さな包みを2つ、手渡した。

「よかった‥‥忘れられているかと思ったよ。有難う」
 征治は2つの包みを受け取った。

 ラッピングを解き、開けてみると、1つは「身体安全祈願」と刺繍のされているお守りだった。手作りの小さな袋に入っており、首から下げて身につけることが出来るようになっている。

 もう1つは、月の意匠の施されたネクタイピンとカフスのセットだった。6月の誕生石ムーンストーンがさり気なくはめ込まれていて、儀礼服に合う、シンプルでスマートなデザインのものである。

「わあ、有難う、嬉しいよ。僕からも記念日のプレゼントだよ、受け取って欲しいな」

 征治からアリスへ渡されたプレゼントは、どことなく誰かに似せて作られた天使の銅像と、可愛らしくて実用性にも優れた、メイドの靴だった。

「有難うございます、大切にいたします」
 嬉しそうにアリスは、プレゼントを抱きしめた。


「何の記念日なの? あたいたちも一緒にお祝いするわよ!」
 チルルに問われて、征治は照れながら「おつきあいを始めた記念日なんですよ」と説明した。

「そうなのか。めでたいな。これからも仲良くするといい」
「同感だ」
 アイリスが無表情で紅茶を口に運び、智美も頷く。

「そんな時にこんな事件に遭遇しちゃうなんて、災難でしたね。でもおめでとうございます」
 悠人に続いて、威鈴も小声で言った。
「‥‥2人とも‥‥おめでとう、なの‥‥」





 洗濯乾燥機も止まり、めいめい順番に更衣室へ入り、自前の服に着替える。
 智美の髪もすっかり乾き、ドライヤーで丁寧に整えた。


「今日は助かりましたー。皆さんありがとーですー」
 制服を脱いだせんせーが、完全防雨装備で、皆に頭を下げた。

 ねこかふぇの営業中の札が裏返され、ミルク様がペット用キャリーバッグに収まる。

「また何かあったら、呼ぶといい。幾らでも手を貸すぞ」
 智美が言う。

 アイリスがぼそりと呟いた。
「着替え用黒服は、常時携帯しておかなければ‥‥うむ。ひとつ学んだ」

 結構、小柄なアリスのゴシックドレスは、アイリスにはきつかったらしい。


「さあ、アリス行こうか。せんせー、自転車ここに置かせてもらいますね」
 征治はレインコートを着たアリスに、傘をさしかけ、相合傘で帰っていった。


「俺たちも行こうか。威鈴、今日も有難うね」
「‥‥うん」
 悠人と威鈴も相合傘で、少し遅くなったデートの続きを楽しむことにした。


 強い雨は、まだ止む気配がない。
 薄暗くなっていく学園内を、ぽつりぽつりと点りだした街灯が、照らし始めていた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 伝説の撃退士・雪室 チルル(ja0220)
 おかん・浪風 悠人(ja3452)
重体: −
面白かった!:7人

伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
白銀のそよ風・
浪風 威鈴(ja8371)

卒業 女 ナイトウォーカー
深淵を開くもの・
アイリス・レイバルド(jb1510)

大学部4年147組 女 アストラルヴァンガード