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マスター:神子月弓
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2014/07/14


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは、「【宝狩】暗黒胃袋教師の冤罪」の後日談になりますが、該当シナリオをお読みでないかたでもご参加いただけます。尚、シリーズ依頼でもありません。





 がらがらと、店のシャッターを閉める。
 21歳の誕生日を間近にして、彼はフリーアルバイターから、書店店員に昇格した。
 竜田克己(たった・かつみ)は、店内清掃を済ませ、名札とエプロンを外した。
 「お疲れ様〜」と、パートのおばちゃんたちが、克己に声をかけ、裏口から出ていく。

 そうだ、今日はお祝いをしよう。
 ひとりだけの、ささやかなパーティ。

 克己は、アパートまでの帰り道にある、有名フライドチキン屋へ寄ることにした。

 そういえば。
 歩きながらふと考える。
 よく店に遊びに来ていた可愛らしい娘さん、最近見ないなあ。





 一方、フライドチキン屋さんにて。

 「好きなひと(※片思い)が出来た」というだけで、父に過剰な束縛を受け、家出を敢行したミチルという女性が、閉店までの深夜シフトで働いていた。

「そりゃあさ、ママが亡くなって悲しいのは、パパもあたしも同じだと思うけど」
 客足が少ない時間帯なのをいいことに、バイト仲間とよもやま話に花を咲かせる。
「でもさ、娘のあたしを監視するとか、まずありえねーって思わない?」

 ミチルは19歳。現在、家出真っ只中の、恋に恋する乙女である。
 見た目はマリカせんせーにそっくりで、見分けるポイントは泣きぼくろがあるかどうかだけだ。
 今では、長かった髪もバッサリと肩口まで切って、より見分けやすくなっている。

 ミチルが克己に惹かれたのは、たまたまファッション雑誌を立ち読みにいった時だった。
 新しく入ったばかりのバイト店員というオーラを発しながら、克己は不慣れに、しかし懸命に働いていた。
 その背中を、ミチルの目が追った。振り向かれると、どうしても目をそらしてしまうのに、気がつくと彼の姿をいつも視線で追っていた。

 それだけだ。
 ミチルは、克己の名前さえも、知らなかった。
 名札にある「竜田」という文字だけが、目の奥に焼きついていた。

 たったそれだけで、娘に甚だしく依存しているパパは、ぶち切れた。
「19歳で初恋なんて早すぎる!!」


 結果。

 ミチルは月3万の安アパートを借りて、昼間はファミレス、夜はフライドチキン屋でバイトをしていた。
 本当は、克己と同じ書店にバイトとして入りたかったのだが、求人のチラシをもじもじ見ている間に、チャンスを失っていた。


 いろいろな人から、告白の仕方を聞き回った。
 でも‥‥どの意見も、ミチルには、難しかった。

 相手は、名札の名前しか知らない書店店員。たった、それだけ。
 他に関わる要素がないのだ。
 出身校だけでも同じなら、あるいは、ご近所さんなら、それなりに友人づき合いもできただろう。
 そういう要素皆無で、いきなり「見かけて一目ぼれしました」とは、ミチルにはどうしても言えなかった。


「あらあらあら」
 そっくりさんということで、ミチルと仲良くなったマリカせんせー(jz0034)が、夜のフライドチキン屋に訪れた。

「結局、あれから進展はしてないのですー?」
「してない、です‥‥」

 絞りだすように言って、俯くミチル。
 ひょいひょいとフライドチキンを紙袋に移し入れていく。

 自動ドアが開いた。

「あ!」
 ミチルが慌てて目をそらす。マリカせんせーはキョトンとして、それから扉を見た。

「えーと、骨なしの夏限定パックをください。テイクアウトで」
 克己がそこに立っていて、当然ながら、客としてごく自然に注文した。
 真っ赤になって慌てふためくミチル。
 その様子に、鋭く感づくせんせー。

「これからお夕飯です〜? ここのフライドチキンは、ご飯が進みますのですー」
 せんせーは、克己に声をかけた。

「ああ、そうですね。美味しいと思います。時々、買いに来ているんですよ」
 克己はのんびりした声で、答えた。

 そして、カウンターの奥でわたわたと、テイクアウトの準備をしているミチルを目に留めた。
「ご姉妹ですか? よく似てらっしゃいますね」

 まあ、そう見えなくもない。

「よくお店にも遊びに来ていただいていたようで、有難うございます。夜遅いですし、お姉さんが妹さんを迎えに来た感じですか? いいなあ。俺は一人っ子なんで、そういう経験って無いんですよ」
「あらあら、じゃあこのパックは、ひとりで食べちゃうのですー?」
「はい。今日、いいことがあったんです。ひとりパーティですよ。たまの贅沢ですね」

 克己が上機嫌なのは見て取れた。
 真っ赤になって俯きつつ、ミチルがテイクアウト紙袋を克己に渡し、しどろもどろに会計を済ませる。

「あ、そうですー! 明日、お時間ありますかー?」
 ぽんと手のひらを叩いて、マリカせんせーが提案した。
「ひとりでお祝いは、さみしーのですー。良かったら、明日、ぱーっと久遠ヶ原浜へ繰り出して、みんなでパーティするのもいいんじゃないかと思うのですー。お天気予報もバッチリ晴れマークなのです〜」

 カウンター奥であわあわしているミチルに軽くウインクを投げ、せんせーはにっこりと微笑んだ。


リプレイ本文




「はじめましてっ! 久遠ヶ原学園高等部三年の佐藤としお(ja2489)です。今日は目一杯楽しみましょう♪」
「ゆかり(jb8277)です、よろしくお願いしますね」
 克己に握手を求めたのは、刺青の入った見事な体を晒すとしおと、日本酒の匂いをぷんぷんさせているゆかり。

「ゆかりちゃんと、今年初めての海だぁ〜!」
 グラサージュ・ブリゼ(jb9587)はゆかりに抱きつき、そして、マリカせんせー(jz0034)に目を留めた。
「ん? せんせーの隣にいるのはもしかしてそっくりさんのミチルちゃん?‥‥ということは、そこにいるのは、もしかしなくとも例の本屋の‥‥モゴモゴっ」

 咄嗟にグラサージュの口を押さえたのは、何やら目がマジな歌音 テンペスト(jb5186)である。
「ねっ! せんせーとミチルちゃん、どっちが好みなのん!?」
 グラサージュを押さえたまま、歌音の脳裏に、壮絶な誤解が展開されていく。

(マリカせんせーがフライドチキン屋で、本屋男をナンパ‥‥だ‥‥と?!‥‥せんせー‥‥ナンパするほど、よっきゅーふまんだったのね、でも「せんせー×本屋男」は絶対に阻止するんだぴょん!!)
 めらめら。歌音は青い瞳に炎を宿して、ずいずいと克己に迫っていく。
「さああ〜答えるのよ、どっちが好みなのん!? どっち! どっち!?」

「そ、そう言われましても‥‥」
 克己、たじたじである。日焼けすらしていない、ひょろんとしたもやしっ子に見える。

「とりあえず落ち着こう、歌音さん。ね?」
 黄昏ひりょ(jb3452)が歌音をグラサージュから引き剥がした。
「だって‥‥だって‥‥(えぐえぐ」
 歌音は(本屋男にマリカせんせーは渡さないのん! あたし×マリカせんせー、これこそがジャスティス!)と、泣きながらひりょの胸を叩いた。

「ははぁ。海で遊びつつ、気になるアノ子とお近づきになりたいんやって? 隅に置けんな〜」
 黒神 未来(jb9907)がミチルの頬をぷにぷにする。
「よっしゃ、一肌脱いだろ! 協力できることがあったら、何でも言うたってや?」

「そうね、ここは共闘と行きましょう」
 立ち直り、歌音もミチルの手を取る。
(あなたが本屋男とくっついてくれれば、マリカせんせーはあたしのモノ決定なのねん!! ほら、双方とも利害一致だわ!! 頑張るのよミチルちゃんっ!!!)
 

「あ、あのー‥‥何か、雰囲気が変なんですけど?」
 皆の気合の入りように圧され、克己は、マリカせんせーに尋ねていた。
「そーですー? 皆さん良い人ばかりですしー、竜田さんを喜ばせたくて仕方がないんだと思うのです〜」





 浪風 悠人(ja3452)&浪風 威鈴(ja8371)夫妻は、BBQセットを組み上げ、何やらクーラーボックスを大事そうに持っていた。
 そこには、夫婦で手作りしたケーキが収められている。

「ああ、あなたがミチルさんですか。よろしくお願いしますね」
「これ‥‥食事のときの、サプライズ‥‥中、ケーキ、だから‥‥」
 悠人と威鈴が、クーラーボックスをミチルに預ける。


 一方、としおは早速、克己をサーフィンに連れ出していた。
 のんびりと波にゆられながら、克己と徐々に会話を弾ませていく。

「おおー、あの本屋の正社員になれたんですか! おめでとうございます! ほうほう、オーナーさんが後見人さんで、それでこの島に移住を? ああ‥‥ご家族を事故で‥‥親戚をたらい回しに‥‥そうですか、大変でしたね。そのタイミングで天魔に襲われたなんて、災難としか言いようがないですね。じゃあ、高校卒業までは島外だったんですねえ。お疲れ様です」

 まず自分の経歴を話し、そして相手の話に耳を傾けていく、としおの話術。

「それにしても、本屋のオーナーさんが後見人になってくれて、良かったですねえ。お仕事も順調のようですし、昇進がお誕生日とも重なったようで、いやぁ〜めでたいめでたい!」

 見た目は刺青もあり、ちょっと怖そうなとしおだったが、お喋り好きでよく話にも耳を傾けてくれるためか、克己は自然に打ち解けていた。


「2人とも気持ちよさそうだなあ」
 ひりょがとしおと克己を眺めながら、ビーチバレーの仕込みをしていた。
「せんせー、竜田さんのお誕生会を皆で祝うなんて、ナイスアイデアですよ。これで2人が少しでも仲良くなれたらいいですよね。‥‥あと、今日の水着も素敵です、似合ってますっ(ぐっ」
「あらあら、有難うですー」
 無邪気に笑いながら、せんせーはコートのライン引きを手伝っていた。

「一般人と撃退士では身体能力が違いすぎますから、ちょっとクジに細工をしましょう」
 未来とゆかりが、作業をしながら、楽しそうに微笑む。
「ふっふっふ、どのような引き方をしても、これでミチルさんと竜田さんは同じ組に決定ですよ」
「せやね。試合でも、ちゃあんと手加減せえへんとあかんで?」


「ミチルちゃん、本屋男をモノにするには、基本は色仕掛けよっ!」
 歌音は自慢のGカップを、ぎゅーとミチルの腕に押し付けた。
「ねー、あっち行ってみようよー、とか、こうやって甘えて男をめろめろにするの! お食事時の、はい、あ〜んも基本中の基本よ!!」

 マリカせんせーを奪られまいと、歌音、必死である。ミチルは真っ赤になって慌てふためいた。

「い、いろじかけってっ‥‥あた、あたしそんなムネないし!」
「ちっぱいにはちっぱいの魅力があるのん! とにかく腕ぎゅうは基本なのよ!」





 ビーチバレーは、見事に一般人チームと、撃退士チーム数組に分かれた。
 尚、一般人のせんせーは審判である。

「や〜ん、コワーイ!」
 と言いつつ、相手が撃退士の場合に限り、歌音、マジガチのスマッシュを決める。
「キャッ! 転んじゃった」
 Gカップをアピールしながら悩ましいポーズで転倒。

 見ているミチルのほうが、恥ずかしさに顔を覆っていた。

「はい、威鈴、トス!」
 悠人が愛妻にボールを送る。威鈴は手加減をしながら、克己に向かってかるーくスマッシュ。
「うわあ」
 それでも受けきれない克己。アウトドアは苦手だと、としおに語っていた。
 そこへ、俊足を活かして走り込み、何とかビーチボールを拾うミチル。

「すごいですね、ミチルさんは足が速いんですね」
 試合後、驚いたように克己がミチルに声をかけた。真っ赤になるミチル、「今よ! 腕ぎゅうよ!」と目で訴える歌音。(無理無理無理!!)と首を細かく振るミチル。


「やるからには優勝を目指しますよ、覚悟はいいですか!?」
 つるぺたを強調するような黒い三角ビキニで、ゆかりがグラサージュに勝利宣言をした。彼女のペアはとしおである。

「ゆかりちゃん相手なら、本気モードで相手するからねっ! ビーチバレーは自然を操ったもん勝ちよ♪」
 グラサージュの、体型カバー機能付きバンドゥビキニの、薄水色の水玉模様が、太陽光に照り返す。
(ゆかりクンには勝った気ぃすんのやけど、この学園て、ムネのおっきい娘が多すぎやなぁ‥‥)
 グラサージュのペアである未来は、Dカップを自慢にしていただけに、歌音のGカップにどうしても目が行ってしまうのであった。

 \ 大きさよりカタチで勝負♪ /

 未来の脳裏に、魔法の呪文がよぎった。





「お疲れ様! ちょっとミチルさん、いいですか?」
 ビーチバレーでしっかり遊んだあとは、海の家のテラスを借りて、BBQである。
 先に準備をしていたひりょが、そっとミチルを呼び出す。

「竜田さんに、プレゼントしてあげてください。きっと喜んでくれますよ」
 綺麗にラッピングされた辞書を、そっと差し出すひりょ。
「有難う‥‥」
「前の騒ぎの時に、俺、ミチルさんに悩みがあれば、その解決のために力を貸すというような事、言いましたよね。あれ、その場限りのつもり、ないですから」

 ミチルは深くうなだれた。

「悩んでいること、いっぱいだよ‥‥色々‥‥」
「‥‥聞いてもいいですか?」

 BBQの準備が整うまで、ひりょはミチルの話を真剣に聞いた。


 ミチルの両親が学園関係者だったため、島外の高校に通いながらも、未成年のミチルはこの島に住むことが出来たこと。
 パパは、学園の購買部に関わる搬入業者で、克己の働く書店のそばに会社があること。
 出来れば、パパの会社か、どこか(希望は克己の書店)に正規雇用してもらい、島内居住資格を取りたいと思っていること。
 でも、もう19歳なので、残された時間があんまりないこと。

「パパはあたしを、自分の会社にバイト雇用してもらって、そっから正社員目指せって言うけど‥‥正直、パパの束縛がうざくって、家とか会社で顔を合わせたくない。でも、死んだママみたいに、学園の非常勤講師なんてあたしには無理。高卒だしアタマ良くないし、教員免許だってとれっこない。あたしは‥‥竜田さんのお店で一緒に働けたらいいな、とか、思っちゃってる。求人はあったのに、自分でそのチャンスを逃しといて、ほんとにバカだ‥‥あたし‥‥」

 うわー、と、遠くから声が上がる。
 突然のスコールが、大粒の雨が、ひりょとミチルを濡らし、ミチルの頬に伝ったものを隠した。
 ビーチパラソルをばしばしと叩く音がやがて弱まり、太陽が再び浜を照らしだす。

「聞いてくれてありがと、少しすっきりした。今のバイトも気に入らないわけじゃないし、あそこで正規雇用を狙っても構わないんだし。頑張ってみる。ありがとね」
 濡れた顔を拭って、ミチルはひりょに笑顔をみせた。





「よーし、焼けたよー! さあ、どんどん食べて!」
 悠人が焼いたバーベキューがいい匂いをさせている。海鮮焼き、焼きそばも完璧な仕上がりだ。
 威鈴が、夫の焼いた肉や野菜などを紙皿に盛り、割り箸と共に皆に配っている。

「せんせ〜‥‥せんせーはナンパなんてする人じゃないと信じてました!(えぐえぐ」
 歌音が涙にむせびながら、せんせーに「はい、あーん」を敢行する。
「あら、有難うですー、いただきまーす♪」
 照れもせずに、ぱくぱくいただくマリカせんせー。

 キロ単位で用意した肉が、せんせーの胃袋へ消えていくさまは、圧巻だった。

「ミチルさ〜ん、はい、ちーず♪」
 パシャリとゆかりのデジカメが光る。
「こうして見ても、本当にせんせーにそっくりね」
 グラサージュがもぐもぐしながら、感心したような視線を投げる。

(はい、あーん! はい、あーん!!)
 歌音が言葉に出さずに、身振り手振りでミチルにサインをだす。
(無理! 無理無理無理!!)
 真っ赤になってもじもじするミチル。

「そうそう、21歳のお誕生日でしたよね。おめでとうございます!」
 としおがパチパチと手を叩き、克己の紙皿に、デスソースをたらーりとサービスした。
「ちょ、これってすっごく辛いやつじゃないんですか?」
「美味しいですよ?」
 ちらっちらっ、と、としおはミチルに視線を投げる。
 ミチルのそばにはクーラーボックス。ケーキが入ったものだけではなく、冷たい缶ジュースも用意されている。

「か、か、からいですよー!!」
 悶絶する克己。としおの視線に気づき、冷たいジュースを克己に届けるミチル。
 ジュースを渡すときに、指と指が触れて、慌ててミチルは手を引っ込める。

「初々しいですねえ。絡んじゃいますよ〜?」
 日本酒の香りを漂わせ、ゆかりがミチルに擦り寄った。「か、からかうなよっ」とミチルは真っ赤になった。

「せやったな。克己クン、21歳のお誕生日、おめでとうや! 盛大に祝ったるで!」
 未来がギターを弾き始める。

 ♪ハッピバースデー、トゥユー♪

 皆の声が徐々に集まり、合唱になる。
 ミチルは威鈴の合図を受けて、手作りのケーキを幾つか取り出し、克己の前に並べた。

「随分、ケーキが多いですね‥‥?」
「あ、こっちのはせんせー専用ですから」

 克己は目を剥いた。あれだけ食べて、まだこのせんせーは、余裕があるというのか。
「いただきま〜す♪」
 目の前でせんせーが、ぺろりとケーキを平らげる。

(撃退士ってすごい!)
 克己は誤解した。
 せんせーは、一般人です。


「デザートはこれ! スイカクラッシュ〜! 普通のスイカ割り? そんなの古い古ーい!」
 大玉のスイカを強制的に皆に配り、グラサージュがしきった。
「これを玉入れの要領で空へ投げあげて! 空中待機のゆかりちゃんが全部割る! これが、スイカクラッシュだぁー!」

 そして、にっこりとせんせーに微笑む。
「割れたスイカの後始末、よろしくお願いしま〜す♪」

「ちょ、グラさん待って!? <発勁>使うから、出来るだけ直線上に並ぶように投げて欲しいんですけど!?」
 ゆかりが慌てる。自分はラストに技をキメて終わる予定だったのだ。
「ん〜、努力しま〜す!」

 グラサージュは皆を一列に並ばせると、「せーの」でスイカを一斉に投げ上げた。
「もう、グラさん無茶ぶりがひどいですよー!」
 空へ飛び上がり、<発勁>でスイカを叩き割るゆかり。幾つかのスイカは垂直落下の衝撃で砕けた。

 砂を洗い落として、砕けたスイカをもぐもぐするせんせー。
 克己の顔が蒼白に見えるのは気のせいか。
 悠人のヒリュウが「きゅい?」と克己の顔を覗き込んだ。





 プレゼントを渡し、片付けをしているうちに日が暮れ、締めに、しっとりと花火を楽しむこととなった。

「うちの伴奏に合わせて、順番に、即興で歌を歌ってもらおうと思うねん。歌詞の内容は何でもええで? 今日の思い出でも、自分の夢でも、今思っている事でも。克己クンは詩を作るのが夢なんやろ! ならここでバーンとやってまおう!」
 調律を済ませ、ギターを構えて未来が促した。

♪海、さいこー!
 としおが先陣を切る。

♪楽しかったなあ
 ひりょは敢えて素直に言った。

♪せんせーはあたしの!
 歌音は主張する。

♪花火‥‥きれい‥‥
 威鈴が珍しげに手持ち花火を見つめている。

♪素敵なお祝いだったね
 悠人は愛妻の写真を含め、記念撮影に専念していた。

♪次はスイカに勝ちます!
 ゆかりは打ち上げ花火に追いかけられながら、空を飛び回っていた。

♪素敵な貝殻、拾ったよ
 大事な人へのお土産をそっと持って、グラサージュは目を閉じた。

♪良い思い出やな。さ、お2人さんの番やで!
 未来が、ミチルと克己に振る。


♪‥‥梅ならぬ、デスソースには、渇きを止め得ず
 克己にとって一番の思い出は、その味だったらしい‥‥。

 最後にミチルが、もじもじと何かを言った。

「何やて?」
 未来が聞き返す。

♪と、友達に、‥‥なって、ください

 グラサージュとゆかりが空へ舞い上がり、手持ち花火でハートを描いた。
 花火の灯りでミチルの顔色はわからない。
 きっと、真っ赤になって俯いているのだろう。

「「勿論!」」
 皆が、ミチルに手を伸ばした。少し遅れて、克己も微笑んで頷く。
 ミチルの瞳が、じんわりと潤んだ。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: ラーメン王・佐藤 としお(ja2489)
 来し方抱き、行く末見つめ・黄昏ひりょ(jb3452)
 とくと御覧よDカップ・黒神 未来(jb9907)
重体: −
面白かった!:5人

ラーメン王・
佐藤 としお(ja2489)

卒業 男 インフィルトレイター
おかん・
浪風 悠人(ja3452)

卒業 男 ルインズブレイド
白銀のそよ風・
浪風 威鈴(ja8371)

卒業 女 ナイトウォーカー
来し方抱き、行く末見つめ・
黄昏ひりょ(jb3452)

卒業 男 陰陽師
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
そいつはケセランだ!・
ゆかり(jb8277)

大学部2年264組 女 阿修羅
『楽園』華茶会・
グラサージュ・ブリゼ(jb9587)

大学部2年6組 女 アカシックレコーダー:タイプB
とくと御覧よDカップ・
黒神 未来(jb9907)

大学部4年234組 女 ナイトウォーカー