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マスター:神子月弓
シナリオ形態:シリーズ
難易度:非常に難しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/02/26


みんなの思い出



オープニング

●カナリア・1


 望むかどうかは、関係ありません。
 わたしは、この歌劇団の、看板歌姫でなければいけないのです。
 本当は歌うのが嫌い、だなんて言えません。
 わたしに、心はいりません。
 これからも、人形のように、従順に生きていきます。
 だって、団の皆さんは、そう望んでいらっしゃいますでしょう?

 わたしの望み? 皆さんが笑顔でいることですよ。
 だから歌います。
 それがわたしの役目、ですから。

 ‥‥死にたい、です。
 喉を潰して、顔を焼いて。
 でも、そんなことを言ったらいけないんです。
 考えるのもいけないんです。
 誰にも心配をかけてはいけないんです。

 大丈夫。
 舞台に立ちます。
 ちゃんと、笑顔で歌えます。

 ‥‥

 どうして声が詰まるんでしょう。
 頑張っているのに。
 まだ、頑張りが足りませんか。
 どこまで頑張れば、いいでしょうか。

 リハーサルで、また、クロウに心配をかけてしまったみたいです。
 わたしって、どうしてこうなんでしょうね。
 自分が情けないです。

 わたしの心なんて、消えてなくなればいいのです。


●ミルキーウェイ歌劇団


 黒い燕尾服の少年が、ソロパートのバイオリンを奏でる。
 中央に進み出た、高校生くらいの美少女が、涼やかで透き通った歌声を響かせる。

 ここは、学園内の音楽ホール。
 孤児を引き取って育てている「ミルキーウェイ歌劇団」が、撃退士たちの慰労公演として、数日前から訪れていた。
 演目は、華麗なダンスをふんだんに取り入れたミュージカル。
 ストーリーの佳境で、美貌の歌姫カナリアが登場し、歌声を披露したところだった。

 やがて幕が下りる。
 拍手喝采が音楽ホールを満たす。

 ごくごく普通の慰労公演。
 ただ、それだけ。

 の、はずだった――。


●深夜


 しとしとと冷たい雨が降る。
 ぱちゃ、ぱちゃ、水音をさせて、誰かが走ってくる。

 ずぶ濡れの少年クロウは、まだ窓に明かりの灯っている依頼斡旋所を見つけ、扉をノックした。


「姉さんを――カナリア姉さんを、あの歌劇団から、助けだして欲しいんです」

 掠れた声で、クロウは、時計を気にしながら早口で言った。
 燕尾服のバイオリニストの少年本人だとわかるまで、少し時間を要した。

「団長は、興行収入を全て自分たちの物にしているんです。ぼくたちは、一切もらえません。更に、カナリア姉さんは特別綺麗だから、何かあったらいけないからって、専用のキャンピングカーに幽閉されているんです。弟のぼくでも、なかなか会わせてもらえません」

 そこで息を継ぎ、クロウは続けた。

「舞台で久しぶりに、姉さんの表情を見ました。どんどん人形みたいになってきていて、ぞっとしました。本当はすごくやさしくて、明るい姉さんなんです。なのに、なんか‥‥今の姉さんは、壊れかけているような気がして。団長も団員のみんなも、暴力こそふるいませんけれど、言葉や態度ですごく追い詰めてくるんです」

 だから、どうか。
 カナリア姉さんを、自由の身にしてあげてください。
 お願いします。
 全て、ぼくの所為にしてもらって、構いませんから。
 姉さんの笑顔を取り戻せるなら、ぼくは、どうなってもいいんです。
 

 少年は、抜け出したことが誰にもバレないうちに、と、雨の中を急いで帰っていった。



●カナリア・2


 いつからでしょう。
 わたしは、頑張れない自分が、皆さんの期待にそえない自分が、許せなくなりました。

 最近の団長の言葉が刺さります。

『きみにはがっかりだよ』
『これ以上、私を失望させないでくれ』
『もっとうまくできるだろう? できるはずだ』

 頑張ります。
 もっと頑張ります。
 もっともっともっと。

 ひとつ成功するたびに、ハードルはあがっていきます。
 これくらい出来て当たり前、が、増えていきます。

 いつしか、誰にも、団長にも、褒めていただけなくなりました。
 団長を、皆さんを、失望させるだけの歌姫。
 歌うことしか取り柄がないのに、歌うことがどんどん嫌いになっていきます。

 それが今のわたし‥‥情けないわたし。

 ――いっそ、壊れてしまえば、楽になれるかしら。


リプレイ本文

●打ち合わせ


 依頼を受けた全員――鷺谷 明(ja0776)、天宮 佳槻(jb1989)、Robin redbreast(jb2203)、シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)、山里赤薔薇(jb4090)、歌音 テンペスト(jb5186)、ユウ(jb5639)、城里 千里(jb6410)――は、一度、作戦会議のため、斡旋所に集まっていた。
 明とシェリア、ユウと佳槻が、それぞれ作戦の打ち合わせを進める。

「私が気まぐれに受けた依頼だ、報酬は私から出させていただくよ」
 依頼斡旋所の所長はそう言うと、希望者に、慰労公演の有料チケットを配布した。
 そして、歌音の抱えた子豚の貯金箱や、赤薔薇が数えている札束、心付け用に現金を用意している明を見て、3人の肩をぽんぽんと軽く叩いて回った。
「金策は私に任せな。学生さんが自腹を切る必要はないさ。私が手を回すよ。ああ、ネットはここから使ってもらって構わないからな」

 シェリアと赤薔薇と千里は、公演鑑賞に出かけていった。
 ユウとロビンと佳槻は、パソコンに向かう。

 歌劇団の公式サイトは、非常にシンプルなものだった。
 団長が海外出身の有名な元音楽家であることと、非営利の慈善団体として認定されていることが、明記されていた。
 あとは、寄付と公演鑑賞の呼びかけが載っているだけだった。

 匿名掲示板に目を通してみると、歌姫カナリアの時代はもうじき終わり、15歳の歌姫ナイチンゲールが次に看板を担うのでは、という憶測が飛び交っていた。


●ファンなんです!


 公演は非常に素晴らしいものだった。
 終了後まもなく、赤薔薇は、楽屋へ向かう。

 学園の撃退士である、というだけで、あっさりと歌姫の楽屋へ案内された。

「とても素敵な歌声で感動しました。一瞬でファンになっちゃいました」
 赤薔薇の感想に、カナリアは「有難うございます」と、軽く頭を下げた。
「カナリアさんの歌声は素晴らしいけど、ひどく儚げで例えようのない悲しみに満ちている気がします。歌うことは、好きですか?」

 一瞬、カナリアの表情が消えた。が、すぐに微笑みが戻ってくる。

「そう感じていただけたなら嬉しいです。あの歌は、悲歌ですから‥‥」
 ああ、そういう意味ではないんですけれど、と赤薔薇が続けようとした時、団員が楽屋の扉を開け、歌姫を呼んだ。
「わたし、もう行かないと。わざわざ訪ねてきてくださって、有難うございます」
 カナリアは、ひんやりした冷たい手で、赤薔薇の両手を握った。小さな声で囁く。
「また、どこかでお話、したいです」


●団長・1


 キャンピングカー前に、出演した孤児たちが集まっていた。
「皆、よく頑張った。初舞台のものは緊張もしただろう。楽器や衣装の手入れをして、ゆっくり休め」
 団長が孤児たちに声をかける。そして、カナリアに目を留めた。
「‥‥半拍、歌い出しが遅れたな。舞台の上でくらい、集中できないのか」

 カナリアは黙って、俯いた。
 そんなこと、皆の前で注意しなくても、と、その場にやってきた全員が思った。
 続いて団長は、音が乱れた者を次々と名指しで注意した。

 舞台の反省会が終わると、孤児たちは自分の楽器やステージ衣装の手入れなどのため、散っていった。


 ずずいと明が団長に近づく。
「はじめまして。私は学内新聞の記者、鷺谷という者でね。団員達にインタヴューをしたいのだが、構わないだろうか?」
「おお、撃退士の皆さん、お集まりですな。多額の寄付金を有難うございました。‥‥インタヴューですか、構いませんとも」
「ではまず、あの歌姫殿から」
 団長は快諾し、カナリアを呼び止めた。

 カナリアがこちらに来るまでの間に、千里が、団長と目を合わせずに呟いた。
「‥‥団長さん、さっきの言葉、少し怖いです」
「?」
 団長は無自覚のようだった。

「こんにちは、カナリアちゃん」
 歌音はヒリュウと一緒に、挨拶をした。カナリアは舞台疲れで、ややぼうっとしている様子だった。

  歌劇団はどんな場所?――孤児院とは違う気がします。
  あなたにとって歌とは?――全て、なのではないでしょうか。
  公演中の歌劇の内容について――悲劇です。どこかの国の民話だそうです。

 明のインタヴューに応じたカナリアは、まるで他人事のように、淡々と答えた。

「折角来てくださった撃退士さん達に、その態度はないだろう。笑顔のひとつもないとは」
 チクリ。また、団長が、カナリアの心を刺した。
「すみません」
 カナリアは、急いで、張り付いたような笑みを浮かべる。

 決して声を荒らげているわけではない。団長の口ぶりは、穏やかと言っても過言ではない。
 しかし、その言葉が、カナリアの心に刺さっていることは、見て取れた。

「慰労公演を拝見して、わたくしカナリア様の大ファンになりましたっ! 団長さん、しばらくカナリア様とお話させてもらっても良いですか?」
 シェリアが進み出る。
「私も、お話、したいです」
 赤薔薇が、じっとカナリアを見つめて、続いた。

「うむむ‥‥」
 流石に団長も、カナリアのキャンピングカーに、部外者である撃退士を通すことには渋ったものの、「何も問題を起こさないという念書を作ります」という提案で、妥協した。


●カナリア


 キャンピングカーの中は、結構広かった。
 カナリアの世話人である女性団員が「どうぞ」とお茶を淹れてくれる。
 気がつくと、歌音のヒリュウも一緒に入り込んでいた。

 さて、この女性団員を、どうやって車外に追い出そうか。
 シェリアと赤薔薇が軽く悩んでいると、歌音がコンコンと車をノックして、入ってきた。

「団長認定、臨時ボランティアの、歌音・テンペスト参上ぴょーん! お茶くみはあたしに任せて、子供たちを見てあげて欲しいのん。ロビンちゃんの提案で、学園入学体験というのをしようとしたら、皆、教室とか廊下とかをはしゃいで走り回って、今めっちゃめちゃ大変なんだぴょん!」

 全て、事実である。
 女性団員は慌てて車から出て行った。

「きゅいー」
 ヒリュウがカナリアの気を引きつけ、あどけない仕草でお手紙を渡す。

『あたしは人を笑わせるのが大好きです。
 だから皆を笑顔にするカナリアちゃんと仲良くなりたいです。
 そして、カナリアちゃんも笑わせてみたいです。――歌音より』

 手紙を何度も読み返し、カナリアは顔をあげた。
「大丈夫です。何も、ご心配いらないです。わたしは笑えます。大丈夫です」

「もう一度お聞きします。歌うことは好きですか?」
 赤薔薇が畳み掛ける。
「大好きなことでも、誰かに強制されたりすれば嫌になってしまいます」
「強制はされていません。でも、歌しか取り柄がないのに、うまく歌えないんじゃ、駄目ですよね」
 カナリアは、他人事のように呟いた。
「前は、団長に褒めてもらえたみたいですけれど、段々それもなくなってきましたし。わたしがいなくなっても、ナイチンゲールがいます。団は、大丈夫です」
「そんな。あなたのことをひどく心配している人がいるんですよ。カナリアさんが歌えなくなると、悲しむ人が、ファンが、大勢いるんです。そのことを忘れないで」

 赤薔薇とカナリアのやり取りを聞いていたシェリアが、ぽつぽつと話し出した。

「誰かが期待するからそれに甘んじる‥‥わたくしも、少し前まではそうでした‥‥。ロンド家の名に恥じないように、そして父に褒めてもらうために。そのためなら、我慢して頑張れるって思い込もうとしていましたわ」
 シェリアは、かつての自身を思い出しながら、言葉を紡いだ。
「家を出る切欠となったのは、何より、一歩踏み出す勇気でした。カナリアさんを心配して、依頼してきた弟さんのために、そして、カナリアさんが心から笑えるようになるために、強い意思を持って、窮屈な鳥篭から羽ばたいてください。わたくし達は、そのお手伝いができればと思っています」

「そうですよ。辛いことや心配事があるなら、どうか話していただけませんか? 私もあなたに、歌を忘れたカナリアにはなって欲しくないです」
 赤薔薇もやさしく声をかけ、心情を吐露し始めたカナリアに近づいた。
 オーラを隠して光纏し、<シンパシー>を使うべく、彼女の額に触れる。

『あの子は、カナリアは、いないものと思って欲しい』
 カナリアの記憶の中。遠くから団長の声が聞こえてくる。
『それでもこの団を維持しなければならん。公演の質も落とせない。皆、頑張ってくれ』‥‥


●孤児たち


 わーい、わーいとはしゃぎまわり、初めて見る教室に、廊下に驚き、探検し、仲間をロッカーに閉じ込め、掃除道具でチャンバラを繰り広げる。
 孤児たちは文字通り「校舎内野放し」状態であった。

(慰労公演のお礼に、1日学校体験を持ちかけてみようかなって、思ったんだけど‥‥)
 あれれー、という表情で、おっとりとロビンは首をかしげた。
(みんなでお行儀よく、学園長先生にお願いしに行こうねって話だったような‥‥?)

 学園長先生にお願いするどころではない。
 団員たちが、右往左往して、孤児たちを集めようと頑張っている。

(多分、1時限も、机にじっとしていられない、かも?)

 自分は言いつけを守る人形として育った。
 だから、はじめて学校に来た時も、先生の言いつけをきちんと守った。
 そんなロビンには、理解しがたい状況だった。

「団長の目の届かない所へ連れてくると、こうなるのでは、と思ったんですよ‥‥」
 女性団員が、疲れた表情で走り回っている。
「集合、しゅーごーっ!! 集まらない子には、お夕飯、セロリとにんじんとピーマンの炒め物しか食べさせませんよ!!」

 その言葉が伝わると、みるみる孤児たちの表情が変わり、素直に団員たちの言うことを聞くようになった。

「私もお手伝いします。まだ校舎内に残っている子もいるかもしれませんし」
 ユウが、人懐こい笑顔を子供たちに向けた。
 彼女が悪魔であることは、団長の判断で、孤児たちには伏せられていた。


●団長・2


 明の取材は続いていた。
 ひと通り団員にインタヴューを済ませ、最後に、団長のキャンピングカーに移動し、そこで話をする。

  劇団創立の切欠とその歴史は?――設立してそう長くはない。切欠は、私の音楽家としての人生が終わったことだ。
  慈善事業は素晴らしいが、金の心配は無いか?――大変言いにくいが、経済的には苦しい状態にある。

(音楽家としての人生‥‥か)
 千里は、団長の手に残る傷跡に気づいていた。

「劇団の維持は大変でしょう。楽器は高いですし、ステージ衣装も安いとは言えません」
 淡々とした佳槻の言葉に、団長は深く頷いた。
「‥‥でも、舞台はすごかったです。歌も踊りも演奏も、とても同じ年くらいには思えなかったです」
 千里が珍しく団長の目を見て、感動したことを伝える。
「きっと収益もすごいと思うのですが‥‥経済的に苦しい、ですか?」
 佳槻は更に突っ込んだ。

 うむ、と団長は頷いた。

「収益はみな、孤児たちの養育費などに消えてしまうのだよ。残った分は、実は、彼らの自立資金として貯金させてもらっている。いつまでもここで面倒をみられるわけではないからな」
 内密に願うぞ、と、団長は重い口を開いた。
「私たち団構成員の給与として、孤児たちの収益を利用する訳にはいかない。あれは彼らのものだ。従って、ほぼボランティア状態で、団員たちは働いてくれている。団を維持するには、寄付金などに頼らざるを得ない部分が大きいのは事実だ‥‥」

 そんな中、カナリアが18歳となり、勉強(家庭教師)でも舞台でも、十分な実力を現しつつある。
 団長は、彼女を海外留学させ、本格的に声楽を学ばせてやりたいのだ、と、打ち明けた。
 時折、あちこちへ連れ回して芸術に触れさせてきたのも、彼女の才能を信じたからこそ。

「提案があります」
 佳槻がノートを取り出した。
「学生撃退士との交流イベントとして、共同で舞台を作るのはどうでしょうか。年若い撃退士との共演ともなれば、今以上に歌劇団は注目されるでしょう。そうなれば収益アップも見込めますよ」


●企画


 佳槻の考えた歌劇は、こんな筋書きだった。
 やや喜劇仕立てで、二羽の小鳥が主人公。

 籠の中で王様や貴族の為に歌い続けてきた鳥と、空を自由に飛ぶ鳥。
 籠の鳥は、窓辺にいながら、王様や貴族の顔しか見えない。
 自由な鳥に目をつけ、捕らえて飼おうとする王様や貴族達。
 以前ほど構われなくなった籠の鳥は虚しさを歌い、目の前で窓が開いて、自由な鳥は飛び立っていく。
 籠の鳥は、初めて窓の外に空が広がっているのを見、ラストで驚きを歌い上げる。

 筋書きを見た団長は、乗り気だった。
 撃退士と共演出来るメリットもあっただろうが、それ以上に、純粋に興味を持ったようにも見えた。
「こちらでも仲間を募り、打ち合わせをしたいと思います。構いませんか」
 佳槻の提案は受け入れられ、実力派の孤児たちと撃退士たちが一堂に会することとなった。
 筋書きから、どんな曲をあてるか、演奏者や役者の選抜は、など、佳槻が団長の気を引いている間に、皆は機会をみて、依頼人であるクロウに接触していた。

 それは、水を飲みにクロウが席を外した、数分のこと。

「忘れないで下さい、カナリアさんにとって貴方は『家族』であるということを。クロウさんが犠牲になれば、カナリアさんの笑顔を取り戻すことは出来ないと思います。どうかそのことだけは心にとどめて下さい」
 ユウが、声を殺して伝えた。
「貴方の依頼を受けた身として、私たちも精一杯、調査を進めていますから」

「姉を救いたい心は理解しました‥‥ただ、外の世界は、野垂れ死ぬ自由とも隣合わせですよ。彼女が、本当に外に出たいと言うなら、助けることはやぶさかではないですが‥‥」
「歌劇団が潰れれば万事うまくゆく、そんな妄想は捨てたまえ。まあ、歌姫殿が笑顔にはなるかもしれんがね。笑顔のまま路頭に迷い、飢えと渇きに苛まれ、凍え死ぬだろうよ」
 千里に続き、明が厳しい意見を告げる。

 クロウは、はっと顔を上げ、そして俯いた。
 自身の考えの甘さを突かれた、そんな様子であった。


 その頃ロビンは、車外へ出てきたカナリアとの接触に、密かに成功していた。

「あたしはロビン。何も望まず、何も願わない、従順なコマドリよ。あなたの願いを叶えるのがあたしの役目。さあ、あなたの願いを教えて?」

「わたしは――」
 何かを言いかけて、声の届く範囲に団員や孤児たちがいることに気づき、カナリアは微笑を浮かべた。
「――団長に褒めてもらえるように、頑張ります。もっともっともっと、頑張ります」

 一歩を踏み出す勇気。
 シェリアの教えたそれが、具体的にどういう行動なのか、歌姫はまだ、捉えかねていた。


 <続>


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

紫水晶に魅入り魅入られし・
鷺谷 明(ja0776)

大学部5年116組 男 鬼道忍軍
陰のレイゾンデイト・
天宮 佳槻(jb1989)

大学部1年1組 男 陰陽師
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
絆は距離を超えて・
シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)

大学部2年6組 女 ダアト
絶望を踏み越えしもの・
山里赤薔薇(jb4090)

高等部3年1組 女 ダアト
主食は脱ぎたての生パンツ・
歌音 テンペスト(jb5186)

大学部3年1組 女 バハムートテイマー
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
Survived・
城里 千里(jb6410)

大学部3年2組 男 インフィルトレイター