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マスター:神子月弓
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2016/05/31


みんなの思い出



オープニング

●エンハンブレ(回想シーン:PL情報)


「待ちなさいよっこのロンゲ茶髪!」

 ジェルトリュード(jz0379)の喚き声が船を轟かせる。

「ヒエマリスちゃん、お願い、ちょっとそこの茶髪野郎を捕まえて頂戴!」
「ああもう、やっと傷が癒えて魔界に帰ろうって時に‥‥そこのあなた、面倒を増やさないで欲しいんじゃないの!」
「ちょ、何! やめて!」
 ヒエマリスの召喚獣、グリズリーの「ガンバール」とハゲワシの「ドジッター」に取り押さえられた青年、アルファール・ジルガイア(jz0383)は、仁王立ちしたジェルトリュードに、ずいっとモップを押し付けられた。

「そもそも、あんたがロウワンに贈りつけたお土産でしょう。贈り主たる者、当然、掃除の責任くらいとるべきよね?」
 そう、エンハンブレの中は、あちこちが荒くれカンガルーの糞尿で汚されていたのだ。

「しないんなら、ベリアルねーさまから、あんたをこの船から蹴り落とすご許可をいただ‥‥」
「わかった。今ジュルヌ呼ぶ」
 使い魔を呼び、自分の従者悪魔にすぐ来るように言いつけるアルファール。
「でもさ‥‥僕のせいじゃないし‥‥ロウワン君にあげたんだからもうロウワン君のものだし、そもそもお土産とか言い出したのジュルヌだし」
 ぶつぶつ言い訳しており見苦しい。

 ふと、処分したカンガルーの死体を、珍しくて、つぶさに検分したことを思い出し、ジェルトリュードは物思いに耽る。
「‥‥使える、かしらね」

 彼女の次なる狙いは、山あいのとある村。人口1万人弱の、農業で有名なリゾート地だ。


●PC情報


 冷涼な高原にて、高原野菜やキャベツを主として栽培している村がある。
 夏は、登山客や観光客でにぎわい、冬は、スキー客でにぎわう、穏やかな村だ。

 しかし。

 ある朝、住民が起きてみると、広大な畑が、全て壊滅状態にあった。
 そんなことをしでかした犯人は‥‥

 ‥‥やたらと気の荒い、数体のカンガルーであった。

 農業組合に所属する者たちは、すぐに役場に連絡を取り、近くの町の動物園に通報を試みた。
 自分たちでも、心を込めて育ててきた野菜の恨みを晴らすべく、手に手に農具を持ち、群をなしてカンガルーを追った。


 カンガルーは山の奥、夏場は閉鎖しているスキー場へと逃げていった。
 あとを追いかける住民たち。駐在所の警官。地元の消防団。役場職員。通報を受けて、別の町から来た動物園の飼育員。


 彼らはそのまま、神隠しにあった。


●PL情報


 深夜に男の子は、自宅のベッドで目を覚ました。
 おとうさんとおかあさんは、朝、畑を見に行ってから、帰ってきていない。
 ご飯は、学校の先生が、夕方、心配して家まで来てくれて、差し入れてくれたおにぎりだけだ。

 何となくカーテンを開けて、暗い窓から外を見た。

「かっけー!」

 スキー場の麓にある、夏は無人のはずの、村一番の大きなリゾート施設が、アニメの合体ロボのように、暗い夜空に向かって発進していた。
 UFOのようなものも、幾つか、チラチラと光っている。

 男の子はその様子を見守り終えると、再び寝入ってしまい、それが夢なのか本当だったのか、忘れてしまった。


 男の子の話を聞いて、学校の先生は、彼が、夜空を飛ぶのを見たというリゾート施設まで、歩いて確認しに行った。
 そして、変わらぬ姿で建っている建物を見るや、やっぱり夢だと決めつけた。

 男の子は、あれは夢じゃない、という自信が持てなかった。だから、うなだれて、ごめんなさいと先生に謝った。
 それっきり、大人や慣れない人の前で、夢の話はしなくなった。


●PC情報


「カンガルー、ですの?」
 斡旋所バイトのアリス シキ(jz0058)は、きょとんとした声で尋ね返した。

「ええ。何か失踪事件があれば学園に通報を、とニュースで見ましたもので。カンガルーが畑を荒らし、それを追った住民たちがごっそりと消えてしまったんです」
 通報者は学校の先生だ。

「神隠しにあわれた人数は、おわかりになります?」
「正確にはわかりません。が、村が空っぽになったみたいで‥‥役場のかたも農家さんも、皆さん消えてしまわれて‥‥」

「わかりましたわ。現地を調査いたします」
 アリスはそう言うと、失踪事件カテゴリの依頼ネットに、緊急招集メールを流した。


●現地で判明し得るPL情報


「おとうさんもおかあさんも、ちっとも帰ってこないや」
 男の子は、荒らされた自分ちの畑を見て回っていた。
「やっぱりあれは夢だったんだ、よね?」

「うちも、親が帰ってこないのよ」
「ぼくんちも」
「あたしんとこもよ」

 数少ない学友たちは、男の子の見た夢について、信じてくれた。
 皆、親が農業を営んでいるものや、役場の関係者など、親が失踪した者たちばかりだ。

「きっと建物ごと宇宙人にさらわれたのよ」
「その建物、先生が見てもおかしいとこ無かったんだよね? なら行ってみようよ」
「おかあさんたち、見つかるかも」

 子供たちは、子供探偵団気取りで、放課後に集まると、夕暮れに染まるリゾート施設に向かって歩き出していた。


 がさがさ。
 藪に隠れて、カンガルーの影が数体、リゾート施設の入り口で、近づいてくる子供達を見つめていた。


リプレイ本文




「そういうわけですので、現地で失踪事件を調査してくださいませ。近隣の動物園から、6体ものカンガルーが脱走したという報告は、入ってきてございませんわ」

 斡旋所バイトのアリス・シキ(iz0058)が、集まった撃退士たちに任務内容を告げた。
 この時点では、まだ子供たちが危ないという情報は、わかっていない。


 詠代 涼介(jb5343)はふむと考え込んだ。
「そのカンガルーが、ただの動物だと言われても、納得する方が難しいな。それだけの人数をさらっていくなら、それなりの輸送手段が要るはずだ」
(例えば‥‥あのクジラのような‥‥)

「皆様のご武運をお祈りいたしますわ」
 撃退士メンバーに顔を向けて、アリスは頭を下げた。
「何かございましたら、連絡をくださいませ。全力でサポートいたします」





 転移直後、撃退士たちは、村が騒然としていることに気が付いた。

「子供たちがいないのです!」

 親が失踪した子供たちの様子を見に、学校の先生が夕食を持って各自の家を訪れたところ、多くの家が留守であることに気付いたというのだ。

 しかし、塾があるわけでもないし、この時間に子供たちが家に帰っていないのはおかしい。
 きっと興味本位で、カンガルーを探しに行ったのだ、と先生は考えた。
 だが、男の子の夢の話を信じていなかったため、その話はすっかり忘れ、先生には子供たちの行き先がわからなかった。
 サガ=リーヴァレスト(jb0805)が尋ねても、夢の話は出てこなかった。


 時刻は日没頃。赤い日差しが、人の、建物の、電柱の影を長く地面に伸ばしている。
 じきに周囲は真っ暗になるだろう。
 山あいの村ゆえに、平地よりも暗くなるのが早いはずだ。
 周囲を囲む高い山々が、太陽を早く隠してしまうのだ。


 はたと撃退士たちは気が付いた。やがて訪れる暗闇に対する備えを、用意してきただろうか。

「俺が充電の済んだソーラーランタンを持っている。10時間くらいなら照らせるぜ」
 千葉 真一(ja0070)が名乗り出た。

 鈴代 征治(ja1305)、そしてRobin redbreast(jb2203)は、4時間灯せるフラッシュライトを装備していた。
 だがほかの者は、来たる暗闇に備えていなかった。

 行方不明の子供たちが危ない。
 下手をうてば、このまま神隠しに遭うかもしれない。
 一刻の猶予もない、と、撃退士の勘がそう告げている。

「懐中電灯を調達していく時間はないな。早く子供たちを探そう、急ぐぞ!」
 雪ノ下・正太郎(ja0343)が駆け出す。


 その頃、15人の子供たちは、6体のカンガルーに追い回され、徐々に村一番の大きなリゾート施設に近づきながら、散り散りに逃げまどっていた。
 カンガルーたちは襲ってはこない。だが、歯をむき出しにされたり、威嚇されると、意外と恐ろしかった。子供たちにとってはカンガルーの大きさも、十分脅威に思えた。
 怖くて泣き出す子供たち。失踪した親に助けを求め、何度も何度も、声を上げる。

 おかあさぁん。おとうさぁん。助けてー!

 山あいに、子供たちの泣き叫ぶ声が響く。その悲鳴が、やがて撃退士たちの耳に届いた。





 最高時速60km/hのカンガルー6体に、絶妙に追い回され、15人の子供たちはすっかり息を切らしていた。
 暗くなりゆく悪路を、それでも必死に走る。

 逃げなくちゃ。逃げなくちゃ。ああ、カンガルーが追ってくる。まだまだ、走らなくちゃ。
 息が切れる。心臓がばくばくして、口から飛び出してきそうだよ。

 目の前に、明かりを灯した、村一番の大きなリゾート施設が見えた時、子供たちは、あの中に入れば、カンガルーから逃れられると思った。

 その施設が、自分たちを中に入れたまま、まるごと空を飛ぶかもしれないということは、すっかり酸欠になった頭には、思い浮かばなかった。


「子供たちです! カンガルーもいます!」
 フラッシュライトを点灯し、全力で追いついた征治が、声を上げる。
 すかさず涼介が阻霊符を展開する。

「目の前に大きな施設がありますね。避難場所として適当か判別しますので、子供さんたちは少し待っていてください!」
 征治はそう言って、施設に入ろうとする子供たちを制止した。

「あたしがみんなを護るから、みんな、ちょっとだけ待っていてね。悪いカンガルーはひーろーのお兄さんたちがお仕置きしてくれるよ」
 ロビンもフラッシュライトで照らしながら、逃げ回る子供たちを手際よく集めていく。


「誰がここの電気をつけたんだろう? 誰か中にいるんですかー?」
 征治は施設の扉を開き、中へと入り込んだ。広々とした板張りの空間が見えたと思った瞬間、征治は施設の外へ放り出されていた。

「な? 何が起こったんです!?」

「今、確かに、施設のドアが勝手に動いたように見えた。‥‥これ自体が天魔か?」
 サガの言葉に、征治は一瞬の動揺から我に返り、確認のため<中立者>を使用した。

 ――施設のカオスレートは−1だ。

「この中に入ってはダメです! これは、この施設そのものが、天魔です!」

 征治の言葉に、サガが「やはり、な」と、ツヴァイハンダーSBを振りかぶる。
 刀身を深い黒に染め直された大剣は、日没後の暗がりに溶けてしまい、良く見えない。しかし振りぬく際には、刀身の端が薄く白色に煌めき、暗闇に白い残影を刻んだ。

 施設ディアボロは運搬専用なのか、戦闘能力がないらしく、一切反撃をしてこない。
 サガがひとしきり大剣を振るった後には、施設に見えていたものの死骸が残されていた。

 慣れ親しんできたリゾート施設が、どんどんと明かりを消していき、最後には真っ暗になり、ぐんにゃりとした肉塊に変わっていく。
 暗がりに紛れて、末期の姿が良く見えないのは、子供たちにとっては、幸運だったかもしれない。





 それでも、カンガルーに囲まれた気配に、子供たちは身を震わせる。
 ライトを持ち、皆を護ると宣言したロビンに、抱きついて泣きじゃくる小さな子もいる。

「「変・身っ!」」
 真一と正太郎の声がハモった。

「天・拳・絶・闘、ゴウライガぁっ!!」
「我・龍・転・成、リュウセイガーっ!!」

「「参上!!」」

 息ぴったりに2人の変身ヒーローは、背を合わせてポーズをとる。

「「カンガルーの皮を被った悪魔め。これ以上は俺たちが許さん!」」

 涼介が、預かったソーラーランタンで、2人のヒーローを闇に浮かび上がらせる。
 英雄の兜を装備しているリュウセイガ―と征治は、暗闇の中でもうっすらと光り輝いていた。

 カンガルーたちは、2人のヒーローと、うっすら光る征治に躍りかかった。
 征治はすかさず距離を取り、聖獣のロザリオから無数の光の爪を生み出して、カンガルーに攻撃した。
 だがカンガルーは素早く身を躱してしまう。
 涼介のティアマットが援護に入った。


「ゴウライパァァンチ!」

 ゴウライガーの重たい拳がカンガルーの胴を打ち据える。
 しかし、カンガルーも負けてはいない。両腕でゴウライガーを抱え込み、尻尾でバランスを取りながら、両足キックをお見舞いする。

「ぬお!? ふんっ、その程度か‥‥まだまだぁ!!」
 しかし、さしたるダメージではない。ゴウライガは、更に鉄拳を打ち込んだ。


「リュウセイガー卍固め!」

 襲い来るカンガルーに無理やり足を絡み付け、ぐいとねじ伏せて関節を極めるリュウセイガー。
 なかなか人型でない相手ゆえ、思うように技が決まらない。

 するりと抜けられてしまい、リュウセイガーは逆に首を押さえられ、カンガルーに手痛い両足キックをお見舞いされた。両足キックは綺麗に決まり、リュウセイガーは蹴られた腹を思わず折り曲げる。


 ティアマットは直線状に<サンダーボルト>を放った。
 カンガルーたちが、野生の勘のようなものを働かせ、見事に攻撃を躱してゆく。
 1体のカンガルーがティアマットにとりつき、両足キックをお見舞いした。

「くっ!」
 召喚者である涼介に、ダメージが飛んでくる。かすり傷とはいえ痛い。
 手にしていたランタンが揺れる。

 光が揺れ、影が揺れて、子供たちの不安が募る。


「ひーろーのお兄さんたち、かっこいいね」
 ロビンはおっとりと、しかし積極的に子供たちに話しかけ、疲労と恐怖を取り除こうと試みていた。

「近づくと危ないから、こっちで一緒に見ようよ。いいこにしてたら、あとで握手してくれるって言ってたよ。楽しみだね」

 じりじりと戦場から遠ざかりながら、子供たちが散り散りになってしまわないように注意して、ひーろーしょーを一緒に楽しむロビン。
 女の子には、<パサラン召喚>をして、心が落ち着くまで、もふもふしていてもらうつもりだ。


 光源が乏しいこともあり、ひーろー達は苦戦していた。
 カンガルーたちは夜目もきくのか、正確に攻撃をあててくる。1回のダメージは大したことは無いが、蓄積すると結構、痛い。

 反撃されない射程位置から攻撃できる征治と、近づかれない様に子供たちを庇いながら、細心の注意を払って位置どりしているロビン、そして施設の討伐に専念していたサガだけが、今のところ、無傷だった。





 上空高く、ヘルくじらの背に乗って、超望遠片眼鏡で様子を見ていたジェルトリュード(jz0379)は、にやりとほくそ笑んだ。

「害虫(=撃退士)って意外と頭が足りないのね。全員夜目が利くのかと思っていたけれど、あたしの思い違いだったみたい。ほら、闇の中で不自由しながら戦うがいいわ、カンガルーは結構手応えあるわよ」

 暗闇装備が乏しく、苦戦している撃退士たちの戦いをのんびり観察してから、ジェルトリュードは考える。

「退屈ね‥‥そうだわ、今のうちに、あだで村人をさらえるんじゃないかしら。邪魔者の注意はそれているワケだし。あだ、家畜(=一般人)をいっぱい吸引して戻ってらっしゃい」

 それまでカンガルー戦の上空に潜んでいた、あだ5体は、村の中心部へと進路を変えた。


 撃退士たちとカンガルーの戦闘は泥仕合にもつれ込んでいた。





(狙いを定めるのが厄介だな‥‥)

 施設ディアボロを討伐し終え、<ハイドアンドシーク>で【潜行】していたサガが、どうにかしてカンガルーたちの動きを止められないかと画策していた。

 ひーろー達も、仲間たちも、頑張っている。
 ロビンは、上手に子供たちを守り通している。

 しかし、暗闇戦闘の備えが足りず、戦況は撃退士たちにとって不利であった。

(さて‥‥まずは動きを止めさせてもらおうか)

 征治の十字架攻撃、涼介のティアマットの攻撃を避ける、カンガルーたちの動きをよく見て、味方や子供たちを巻き込まない様に注意を払いつつ、<ダークハンド>で【束縛】を試みるサガ。

 続けて、<クロスグラビティ>で攻撃する。闇色に染まった逆十字架がどすどすと空から降ってきて、カンガルーたちに僅かながらもダメージを与えていく。

「ちっ、【重圧】にもならないとは」

 サガは呟き、大剣を振りかぶる。白く光る刀身に、カンガルーが寄ってきた。


「ゴウライソード、ビュートモードだ。喰らえっ!」
「リュウセイガー胴締めスリーパー! か・ら・の、ギロチンチョークだっ! 止めにドラゴンスピンを喰らえっ!」

 距離を少し取って、蛇腹剣でカンガルーに挑むゴウライガ。
 組み技を駆使しつつ、必死にカンガルーに絡みつくリュウセイガー。

 <天の力>を使用して、<サンダーボルト>と<インパクトブロウ>を使い分け、応戦する涼介。
 

 敵に有利な暗闇の中、かなり時間はかかったものの、一行はカンガルーたちの撃退に成功した。
 その代わり、撃退士たちも蓄積ダメージをそこそこ貰ってしまった。

「怪我はないか、君たち。でもどうしてこんな所まで来ていたんだ?」

 ゴウライガが真っ先に、子供たちに声をかける。
 躊躇する子供たちに、ニッと笑ってみせるゴウライガ。

「君たちは俺たちに嘘をつく気か? 違うだろう。なら信じない理由はないな」


 それぞれ、手持ちの回復スキルを活性化させ、征治とロビンがまず子供たちの怪我を癒してから、互いの傷を、或いは自身の傷を癒す。正義のひーろーゴウライガ――いや真一、そして征治、涼介の持ち込んだ救急箱も、大活躍した。


 ふと、暗い空に目を向けると、何か光るものが飛んでいくのが見えた。
 あだだ。
 見る見るうちに、村のほうに姿を消してしまう。

「黒幕はやつ、か‥‥あの方向は‥‥?」
 サガは小憎らしい悪魔小娘を思い出し、嫌な予感にぎりりと唇を噛んだ。





「学園に避難施設の手配を頼みたい。子供たちの護送はこちらでやる」
 正太郎はアリスに連絡を取っていた。

 涼介はその後、電話を替わってもらい、行方不明になった人たちの身内に、幼い子供、高齢者、怪我人など、自力で生活できない人がいるなら、急ぎ保護してもらうよう、手配を頼んでいた。

 同様に、子供たちの新しい避難場所の確保の為、征治は市役所と連絡を取っている。
 しかし電話は繋がらない。時間が遅くなってしまった所為だろうか? 


「みんなはカンガルー好き? カンガルーを見に来たのかな」

 ロビンは、地面に倒れてぴくりともしないカンガルーたちが、闇に紛れて見えないことに安堵していた。きっと、ひどい光景だろう。子供には見せないほうがいい。まだ、大きくなるまでは。

「カンガルー怖いよ」
 子供たちはロビンにくっついていた。
「すごく速く追いかけてくるの。逃げても逃げても、ずっとよ」

「そうなんだね。じゃあ、カンガルーをやっつけた、ひーろーのお兄さんたち、カッコよかったね。みんなはどんなカッコいいのが好きなのかな。空飛ぶロボットとかかな」

「空飛ぶロボットは好きだよ! 空中で合体とかするんだ! こう、ガシャーンって」
 男の子が元気を取り戻し、ロビンの周囲をくるくる回った。

「それにしても、真っ暗になっちゃったね。こんなに遅くまで遊んでたら、怒られない? 一緒におうちに帰る?」

「おかあさんも、おとうさんも、いないもの‥‥帰ってこないの」

 そう言って小さな女の子が泣きだした。
 そしていつしか、子供たちはロビンを取りあうように、話し始めていた。

 ある日、畑を見に行った両親が、そのまま消えてしまったこと。役所勤めの親も、農協の関係者である親も、みんな神隠しにあってしまったこと。

 今まさに、お腹がすいてたまらないこと。

 男の子のひとりが、空飛ぶリゾート施設を夢に見たこと。


「家族や村の人たちは、俺たちが助けると約束するよ」
 電話を終え、涼介が子供たち全員と、指切りげんまんをした。





 村の中央に帰った一行は、唖然としていた。殆どの建物が真っ暗だった。村全体が停電でもしているかのように。

 カンガルー討伐に撃退士たちが手間取っている隙に、あだが、村の人々をさらっていったのだ。
 推定1500人の追加被害だ。
 視界不良の戦闘が泥仕合となったため、本来阻止できたはずの被害が発生してしまった。

 全員、悔しさに唇を噛んだ。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:0人

天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
蒼き覇者リュウセイガー・
雪ノ下・正太郎(ja0343)

大学部2年1組 男 阿修羅
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
影に潜みて・
サガ=リーヴァレスト(jb0805)

卒業 男 ナイトウォーカー
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
セーレの大好き・
詠代 涼介(jb5343)

大学部4年2組 男 バハムートテイマー