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マスター:神子月弓
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/11/03


みんなの思い出



オープニング

●はじまり(PC情報)


 ぴんぽんぱんぽーん。
 学園併設の屋内プールに、事務員の声で、アナウンスが響く。

「最近、更衣室などでの窃盗が増えております。ロッカーには必ず鍵をかけ、貴重品は出来るだけ身につけておきましょう」

 ぴんぽんぱんぽーん。


 プールの女子更衣室にて。

「シキちゃん毎日ここに来ているの? すごいね、よく続くよねー」
 シャワールームから出てきたアリス・シキ(jz0058)に、水泳部の部員が声をかけた。

「どう、水泳部、入らない? 高等部1年の頃から、ほぼ毎日欠かさず泳ぎに来ているんでしょ? うちの部員にもなかなかそういう子はいないよ」

「考えておきますわ。わたくし、距離は泳げますが、泳ぐのが遅いんですもの」
 部員の勧誘をひらりと躱し、アリスは不意に泣き声に気づく。

「ど、どうされましたの?」

「うぐっ、ひくっ‥‥」
 泣いているのは、水泳部の新入部員、初等部2年のエリカちゃんだ。

 考えてみれば、先程から言動がおかしかった。
 プールへ行ったり、更衣室へ戻って来たり、ロッカーを開けたり、閉めたり、一連の動作を繰り返したり。

「消えちゃった‥‥エリカの、イヤーカフ」

 しゃくりあげながら、エリカはロッカーの下やすのこの下を探し回る。

「エリカの大事なヒヒイロカネなの‥‥」

 えっ、それは大変!
 水泳部の部員も集まり、アリスも交えて、更衣室を徹底的に探し回ることになった。


●真相(PL情報)


 少しだけ時間が遡る。

 相撲体型アイドルユニット「どす恋☆プロミネンス」の代表をつとめる佐村たかし(さむら・−)は、プールの更衣室前の廊下で、小さなイヤーカフを拾っていた。

「これ、どう見ても大事なものに見えるんだけど‥‥」

 きょろきょろと事務室を覗き込む。プールの管理事務員に拾得物として届けようと思ったのだ。
 だが、事務員は今は席を外しているようだった。「不在」と書かれた札がかかっている。

「どうしよう、誰に届けたらいいかな?」

 拾ったイヤーカフをまじまじと見る。男物とも、女物とも、わからない、シンプルなデザイン。
 わかるのは、ヒヒイロカネでできていて、多分魔具が収納されていると思われることだ。

「誰か探していないかな?」

 イヤーカフをなくさないよう、大事にパーカーのポケットに入れて、たかしは男子更衣室へ向かった。

 入れ違いに、エリカが更衣室から、水着にパーカーを羽織った状態で飛び出してきて、事務所へ向かい、やはり誰もいないことに気づいて肩を落とした。
 事務所には鍵がかかっていて、入れない。

 たかしが男子更衣室で持ち主を探している間に、エリカはまた、女子更衣室へ探しに戻った。


 すぐには持ち主が見つからず、やむなくたかしは、パーカーを脱いで、スクール水着姿でプールへと向かった。
 プールへの扉に手をかけた時、シャワールームから不審な人影が出てきた。

 たかしは日頃、バイトでヒーローもののアトラクションに出演している。
 学園に入学してからずっと続けているバイトだ。
 そこで培われた(?)正義の勘が、ぴきんと働いた。

 咄嗟に、プールへの出口付近に身を隠す。
 シャワールームから2人の男が出てきたところだった。

 狭い個室に2人も隠れているなんて、怪しい。

 たかしが覗いているのに気づかず、不審者2人は、ロッカーに近づく。
 1人は入口から人が来ないか見張っている。
 もう1人は、ロッカーの鍵をあけ、めぼしい物がないか漁り始めた。
 たかしのロッカーも開けられ、パーカーのポケットから、エリカのイヤーカフが転げ落ちる。

 他にも数点、装飾品を奪って、何事も無かったかのようにロッカーの戸を閉め、自分のウエストポーチに戦利品を詰める犯人。
 
「そこまでだ!」
 たかしは、体を押し込んでいた隙間からばっと姿を現し、窃盗団員に指を突きつけた。

「最近ロッカーを荒らしているのはお前らだな! この『どす恋☆プロミネンス』代表の佐村が、お前たちをふんじばって、皆の大事なものを取り戻してやる!」


●騒ぎの発生(PC情報)


 女子更衣室をすみずみまで調べ終え、泣きながらエリカと部長はプールを探しに去っていった。
 アリスも後を追う。

 人気のなくなった女子更衣室でも、男子更衣室と同じことが、女性の窃盗団員達によって行われていた。
 そこへ、男子更衣室の騒ぎが発生した。
 慌てる女子団員にも、佐村はよく鍛えた徹る声で、プール側の扉を少しだけあけて、宣戦布告した。

「盗っ人達はプールへ全員出てこい! 逃げても隠れても無駄だぞ! お前たちの顔は見たし覚えた! この佐村たかし、喜んで相手になってやる!!」


リプレイ本文

●第1ターン(騒ぎに気づく)


 Rehni Nam(ja5283)は、ビニールバッグを持って、プールを利用しに来たところだった。
 外に繋がる廊下から、女子更衣室のドアを開けると、何やら中の様子がおかしい。
「?」

「いけない、誰か来たよ!」と小さな女子の囁き声。
 そこへ、更衣室の外、プール側から、佐村たかしの声が響いた。

「盗っ人達はプールへ全員出てこい! 逃げても隠れても無駄だぞ! お前たちの顔は見たし覚えた! この佐村たかし、喜んで相手になってやる!!」

「泳ぎに来てみれば、噂の窃盗団ですか?! 許せません!」
 レフニーは、ビニールバッグと靴をロッカーに押し込むと、水着に着替えずに私服のまま、プールへと向かった。

 プールサイドまで到達するには、自動シャワー室や消毒水槽を通り抜けなければいけない。
 あれよという間に、履いたままの靴下が、ずくずくに濡れそぼった。





「おいっちにーさんしっ」
 トレーニングのためにプールに来ていた仁良井 叶伊(ja0618)は、プールサイドで念入りに準備体操をしていた。

 そこへたかしの良く徹る声が響く。
 よく響くのだが、屋内プール内にほわんほわんと反響して、場所が特定出来ない。

 ざわざわと、プールを利用している大勢の学生たちが、周囲を見回している。

「撃退士になると、調子に乗る馬鹿共がいて困りますね‥‥」
 只でさえ、天魔との戦争や、能力者のテロとかでピリピリしているのに、何を考えているやら。

「個人的には、色々な意味で再起不能にしたいところですが、まあ、今回は捕まえるだけにしておきましょうか」

 叶伊はよく鍛えられた体を伸ばすと、たかしの声の出処を探った。
 目にとまったのは、プール内にも関わらず、服を着たままの女性(レフニー)だった。





「男子の方が着替えが早いから、僕はもうひと泳ぎしてからあがるよ」
 アリス・シキ(jz0058)の恋人である鈴代 征治(ja1305)は、そう言って彼女を更衣室に送り出した。
 直後にアリスは更衣室から、女子数名と一緒に戻ってきて、征治に「イヤーカフを見ませんでしたかしら?」と問うた。

「えっ、見なかったと思うけれど‥‥」

 そこへ、冒頭の、たかしの声が響き渡る。
(盗人とは穏やかじゃないですねえ。確かに最近、窃盗事件が起きていたような‥‥、なるほど)

「事務員さんは今いないみたいだし、アリスは召喚獣に乗って先生を呼んで来て! 僕は窃盗団をなんとかする!」
「はい、わかりましたわ!」

 見回すと、たかしの声に反応した学園生たちが、現場を見つけようとキョロキョロしている。
 征治は咄嗟に、近くの非常口の戸を開いた。





「‥‥泥棒か‥‥何を盗ったんだろう‥‥プールで盗みとか‥‥恥ずかしくないのか‥‥?」

 たかしの声に、御剣 正宗(jc1380)は、メイクを丁寧に直しながら呟いた。
「‥‥今日はメイクしているから、あまり濡れたくないな‥‥」

 愛用していたウォータープルーフのマスカラとチークが、切れていたのだ。濡れたりしたら、今の正宗はきっと恐ろしい顔になってしまう。男の娘として自分が許せないくらいに。

「さて‥‥何処から声が聞こえているんだろう‥‥?」

 <陰陽の翼>でプールの真上に舞い上がる。人波を見下ろして、初めて、人垣の中で、相撲体型の男子(たかし)が1対4の乱戦状態で奮闘していることがわかった。

 場所は、更衣室を出てすぐの、自動シャワー室の中だ。





「ここがプールか。幾つもあるんだな。しかも広いぜ。すげーなー」

 学園にきたばかりのクロ・カニム(jc1854)は、普段着である、冥界時代の和服・軽鎧で、見学者用の窓からプールを見下ろしていた。
 全面ガラスは厚く、プールの中の喧騒は全く聞こえない。

「あいつら、何やってるんだ?」

 人垣に囲われた小さな乱戦を見つけ、興味を持ったクロは、更衣室を通ってプールの中へ見物に向かうことにした。





「うわー!」
 たかしが、自動シャワールームで、窃盗団員に投げ飛ばされる。
「お前ら、4人がかりは、卑怯‥‥だぞ‥‥」

 ぐったりしたたかしにワイヤーを巻きつけ、窃盗団員――スクール水着にパーカー姿の、よくある格好の4人は、「近づくな」と言いながら、じりじりと野次馬の輪を抜けようと試みていた。


●第2ターン(逃走開始1手目)


 雫(ja1894)は、ちょうどプールの建物のそばを通りがかったところだった。

 非常口が軋みながら開いたと思うと、濡れ髪のままのアリスが、水着にパーカー姿で出てくるところだった。

「どうしたんです?」

「窃盗団が出ましたの! 今、プールで暴れてございますようですわ! わたくし先生を呼んでまいりますの!」
 アリスはそう言うと、真っ白なスレイプニルを召喚し、<クライム>で飛び乗って、急いで駆けていった。

「水着狙いの変態の仕業と思い付いた私は、毒されているのでしょうか‥‥」
 十分、毒されていると思います。

 ともあれ、雫はアリスの出てきた非常口からプール内に侵入し、もう一つある筈の非常口をおさえることにした。





 レフニーは私服をびしょびしょに濡らしながら、<天翔金狐>で九尾の狐・ソラを呼び出した。
「走るのは怖いですが、靴下があれば素足よりもマシなはず‥‥」

 よく水を吸った靴下は、踏むたびにじゅわ〜と水がしみ出す。1歩ごとにぼちゃん、ぼちゃんと嫌な音を立てている。
 そんな状態だったため、床と足の間で滑り、更に足と靴下の間でも滑って、半脱げ状態になってしまった。

 つるん、びたん。
 
 プールサイドで転ぶと、本当に痛い。滑り止めのため、床全体がざらざらしているせいで、かなり痛い。
 痛みをこらえてゆっくり起き上がると、水を吸った洋服が重く鉛のように全身にのしかかってきた。





 そこへ。

 叶伊が<全力跳躍>で飛び込んできた。着地点には、乾いた足場を狙ったのだが、そんな場所はプール内には一切無い。どこもかしこも濡れて、てらてら光っている。
 ずるっと足を滑らしそうになるが、トレーニングの成果で、なんとか持ちこたえる。

「覚悟していただきましょう」
 アレスティングチェーンの手錠部分を、見るからに怪しい人物に引っ掛ける。

 そう、見るからに怪しい‥‥プール内なのに、服を着たまま入ってきた不審な人物に‥‥。

「違うのです、私は窃盗団ではないのですー! 騒ぎを聞きつけて駆けつけただけなのです!」
 手錠を外そうと抗うレフニー。ソラも「そうだそうだー」とばかりに加勢して鳴く。

「や、これは失敬しました。では窃盗団はどこに‥‥?」

 叶伊は慌てて手錠を外し、周囲をぐるりと見回した。プールサイドの向こうに、早足で逃げていく、それらしき人物たちの影がある。が、人数がどことなく減っている気がする。
 ウエストポーチが、誰かのパーカーの裾から、ちらりと見えた。





「よっこいしょ、と。ここまで上がれば大丈夫か?」

 クロは、<陰影の翼>で、足もとをキラキラしたアウルで包みこんで、吊り天井近くまであがっていた。
 プールが眼下に一望できる。
 皆、パーカーと水着、もしくは水着のみで、個人の見分けはつきにくいが、全体の動きを掴むには絶好の場所といえよう。

「ああ、いるな。あそこに、‥‥2人」

 プールサイドを移動する2名を確認する。
 2人は滑りやすいプールサイドを、ちょこちょこと早足で移動している。人質は、散歩を嫌がる犬のように、いやいやついていく感じだ。何かひも状のもので繋がれているのだろう。

 気が逸る。どうにか人質を解放してあげたいが、今はまだその時ではない。
 クロはじっくりと機を窺った。





 征治は非常口からアリスを送り出したあと、聖獣のロザリオを構え、阻霊符を発動し、窃盗団が非常口目指して逃げ込んでくるのを待った。
 周囲をよく観察し、誰が窃盗団の一味であるかを、見極めようとする。

 人垣に阻まれたのもあり、残念ながら窃盗団員の顔までは、よく見えなかったし、覚えていない。
 そして窃盗団は水着にパーカー姿である。ウエストポーチをつけているくらいしか、モブ学園生と見分けがつかない。

「‥‥プールサイドはよく滑るので‥‥走るのは‥‥やめて欲しい‥‥」
 正宗が、<陰陽の翼>でプールサイドを低空飛行しながら、呼びかけて回る。
「走っている人がいたら‥‥窃盗団と誤解するかも‥‥だから、攻撃するかも‥‥だよ」

「あの早足の2人は、犯人たちでしょうか?」
 征治は反対側のプールサイドに目を凝らした。

「ん‥‥ボクの言葉に従わないなら‥‥そうかもしれない‥‥」
 コクリと正宗も頷いた。


●第3ターン(逃走2手目)


 2人に減った(ようにみえる)窃盗団員が、征治と正宗の待ち構えるレーンに入ってきた。
 滑らない程度の早足で近づいてくる。


「よし、今が好機だ!」
 空中から、そうっと窃盗団員に近づいたクロは、奇襲の蹴りをお見舞いした。

「ぶふぉおおぉぉっ!!」
 吹き飛んだのは、人質のたかし。
 そして、窃盗団員に<スマッシュ>を放とうと近づいていた、正宗だった。

 どばーん、どばーんと、2つの水柱が上がる。

「あ、あれ? 狙いがそれちまったか?」
 慌てるクロ。

「うああああ‥‥ボクのメイクが‥‥」
 水面に浮かび上がり、顔を覆って、絶望に身を投じる正宗。
 流れたメイクで、顔が無残なことになっているのは、明白だった。

「あ‥‥そうだ‥‥泳げる‥‥?」
 正宗は、浮いてこないたかしに気づき、急いで、縛られたままのワイヤーを取り外しにかかった。





 征治が守っている非常口の戸が開いて、雫が入ってきた。

「事情はシキさんから聞きました。もうひとつの非常口を確保します」

 <神威>で全身に禍々しいアウルを纏わせながら、「で、犯人はどこにいるんです?」と、征治に尋ねる雫。

「多分ですが、あの早足の人たちだと思い‥‥ます?」

 征治はそう言って、きょろきょろとプールサイドを見回した。

 居ない。
 4人とも、消え失せてしまっていた。





 からくりはこうだ。

 前のターンでナイウォの2名は<ハイドアンドシーク>で『潜行』し、現ターンでインフィの2名に<ダークフィリア>をかけて、4人とも『潜行』状態になっていたのである。
 更にインフィ2名は<侵入>で自身の足音を消している。

 インフィ男子は、たかしを捕まえていたワイヤーをぽいと放し、人ごみに紛れるようにして、プールの出口を目指していた。

 通常、無理をしてまで、非常口から出ようとするものは居ない。濡れ水着のまま建物から出れば、却って目立ってしまう。
 だから、窃盗団員は、人に紛れ、更衣室を抜けて出て行くという、ごく普通のルートを選択していたのだ。

 『潜行』状態を維持したまま、早足で征治の守る非常口を通過し、続いて雫の守る非常口を静かに通り過ぎる。ナイウォ2人の足音は微かに聞こえていたが、水音に紛れてしまっていた。





「スズシロさんと、シズクさんが、非常口をおさえてくれているみたいですね」
 レフニーは、ずっしりと重いぐしょぬれの体を起こし、スカートの裾をぎゅうぎゅう絞りながら、叶伊に、ここ、更衣室方面を共に守るよう提案した。

「あの2人が守っている限り、あちらから出るのは困難でしょう」

「プールサイドを1周ぐるりと回って、ここへ戻ってくるということでしょうか?」
 叶伊の問いに、「ええ、恐らく」と頷くレフニー。

 目を凝らして見ても、先程まで早足で歩いていた4人組の姿は、人波にかき消えていた。
 相手のジョブはまだ分からないが、何らかのスキルで『潜行』されて、学園生に紛れられては、逃げられかねないと、レフニーは危機感を抱いた。

 しかし、水柱が2本立ったのは見えた。あの付近を窃盗団員は移動しているに違いない。
 空中から奇襲をかけた、見慣れない軽鎧の者がいたのは見た。

 位置関係があっているとすれば、窃盗団員はこちらに向かってきているハズ!


 叶伊は男子更衣室入口の前に、レフニーは女子更衣室入口前に立ちはだかった。
 召喚獣・ソラを中央に配置して、叶伊は<挑発>を発動させた。

 プールを利用していた学園生たちの視線が、一斉に叶伊に集中する。

「ソラ、サムラさんをお願いします!」
 レフニーは召喚獣に、プールに叩き落とされたたかしを救出するよう、指示を出した。


●第4ターン(逃走3手目)


 ナイウォの足音が消える。<サイレントウォーク>だ。
 このターンで更衣室に入られてしまえば、窃盗団員の勝ちだ。
 彼らは堂々と着替えて、逃げのびるだろう。





 レフニーはたかしをソラにくわえさせ、自身の待機する場所まで、ずるずると連行した。
「怪我はないですか?」

 ぷよぷよの脂肪系相撲体型のたかしには、ワイヤーのくい込んだ跡が痛々しく残っていた。
 水に叩き落とされた際に、鼻に水が入ったのか、やたらと痛がっている。

 レフニーは<生命の芽>でたかしの治療に当たった。
 そして「サムラさん、犯人の顔は見て覚えていますよね? 見分けが付きますか?」と尋ねた。

 皆、叶伊に『注目』して、こちらを向いている。
 たかしはじっくりと学園生を見つめると、「こいつらだ!」と4人、指さした。

 レフニーはたかしの示した相手をよくよく見る。
 確かに、ウエストポーチをつけていた。





 人の流れを見て、雫と征治は非常口を離れ、大勢でごったがえすプール出口まで移動していた。

「この4人が、犯人に間違いないのですね?」
 雫はたかしに念を押した。たかしは頷いた。
「顔はばっちり覚えているよ、間違いない!」

「危ないですから、関係のない人は離れてください!」
 征治が野次馬に距離を取らせる。

「さて、申し開きや言い訳は、取りあえず鎮圧してからゆっくりと聞くとしましょうか」
 雫は<ダークハンド>で4人を狙った。

「ボクを‥‥こんな顔にしたこと‥‥気絶するまで許さない‥‥」
 メイクが流れて恐ろしい顔になった正宗が、鎌で<スマッシュ>を見舞う。

 征治も槍で、野次馬との距離を配慮しながら、窃盗団員の足元をすくうように攻撃した。
 <手加減>したため、傷を負わせることなく、1人を転倒させる。

「神妙にお縄につきなさい!」
 叶伊は素手で団員の関節を極め、激痛を与えて反省を促す。
 アレスティングチェーンの手錠を使って、窃盗団員を拘束する。

「おっと、ここは今、通行止めだ」
 雫の<ダークハンド>をかいくぐって逃げようとした最後の一人に、クロが奇襲の蹴りを見舞う。

 こうして4人は確保され、プールサイド追走劇は幕を閉じた。





 ウエストポーチの中を改め、エリカにイヤーカフを返す。
 窃盗団員と盗品は、アリスに呼ばれて駆けつけた先生に託すことにした。

 エリカは「皆さん有難うございました」と頭を下げた。

「よかったね、イヤーカフ、大事にしなくちゃね」
 征治がエリカに微笑みかける。

 そして寒さに震える恋人アリスに上着を着せかけて労い、抱きしめた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:2人

撃退士・
仁良井 叶伊(ja0618)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
『AT序章』MVP・
御剣 正宗(jc1380)

卒業 男 ルインズブレイド
撃退士・
クロ・カニム(jc1854)

大学部2年196組 男 ナイトウォーカー