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マスター:十三番
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
形態:
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/08/15


みんなの思い出



オープニング

●炎天下の巡回

「ここは私たちに任せて」
 小日向千陰が腕であなたを制す。黒塗りの旋棍が夏の強い日差しを跳ね返していた。
 林道に横たわるのは巨大な白いサーバント。浅瀬に生息する軟体生物のような成りで、2本の剛腕と大きな瞳がひとつついている。それがぎろり、と動き、真顔の千陰を捕捉した。
「ちょっと本気で行かせてもらうわよ」
 指で招くと同時、剛腕が振り被られた。二車線の国道を覆うような腕が猛スピードで薙ぎ払われる――かと思われた。しかし特大の白い腕は道中でピタリ、と動きを止めてしまう。流れた一つ目に映ったのは腕に絡み付く深紅の鋼糸と、それを操りながら前面に滑り込んでくる五所川原合歓の姿だった。
 糸を振りほどこうと暴れるが、合歓の判断が先んじた。身を捩じりながら糸を引くと、腕は肘に相当する位置からバン、と割れて折れてしまう。
 怒りを原動力としてもう片腕が動き出す。これを、合歓の背を蹴って跳んだ千陰が迎撃した。気合一喝、全身全霊で振られたトンファーが根元から断ち割る。
 身悶えしながら叫ぶサーバント。その奥に着地した千陰が声を張った。
「参(サン)!」
「判ってる!」
 合歓が屈むと、三ツ矢つづりの射線を遮るものは無くなった。スナイパーライフルの照準は既に合わされている。
 スコープの中で一つ目が見開かれた。
 薄い十字の中央に瞳が収まる。
 トリガーを引き絞る。
 銃口から飛び出した黒と橙が複雑に絡み合う光弾は、サーバントの眼球を捉え、貫き、跡形も残さず消滅させた。



●リザルト

 広がる青空に、ボリューム感のある白い雲が一対そびえていた。頂上付近で輝く太陽もまた白く、大きく輝いている。燦々と照りつける陽が水面を宝石のように煌めかせ、白い砂浜をチリチリと焼いていた。
 見紛うことない夏の浜辺にありながら、しかしあずき色の着物に身を包んだ若女将の表情は冴えなかった。恐る恐るといった様子で、目の前にピンと背筋を伸ばして並ぶ3名の司書を見上げてくる。

「それで、あの、お化けは……」
「――「「はい! 掃討完了しました! もう大丈夫です! ご安心ください!!」」」
「本当、ですか? では、これで林道の交通止めも解消されるんですね?」
「――「「はい! 周囲の巡回も行いましたが、異常ありませんでした!!」」」
「……よかった。これで営業を再開できます。浜辺も賑わってくれることでしょう」

 本当にありがとうございました。若女将は目元を拭い、深々と頭を下げた。
 では、と笑顔が持ち上がる。

「斡旋所にお話させていただいたとおり、本日1日、この浜辺を皆様の貸し切りとさせていただきます」
 つづりが腰で組んだ手を握り締めた。
「海の家も全て解放させていただきます。なんでも好きなだけ召し上がってください」
 合歓がごくりと唾を呑む。
「お疲れのようでしたら、私どものホテルをご利用ください。
 設備は全  て  無  料  に  て  提供させていただきます」

 そのことなのですが、と千陰が小さく手を挙げる。

「斡旋所からも説明があったかと思いますが、お化け――敵性天魔を討伐するという事は私ども撃退士の本分です。
 そして、民間人の方々をお守りするのは私どもの本懐です。
 お気持ちは大変ありがたいのですが、いただくわけには――」

 いいんです。若女将は首を振る。

「常日頃から本分に勤しむ皆様のお力のお陰で、私たちは辛うじて平穏な生活を送ることができています。
 撃退士の方々に救われたのは一度や二度ではありません。その度に、何かお礼はできないか、と考えておりましたので。
 せっかくの夏です、どうか、満喫なさってください」

 千陰がやや目を伏せた。

「……では、お言葉に甘えさせていただきます。本当にありがとうございます」

 こちらこそ。若女将はもう一度頭を下げてから、海原を指し示して海岸を後にした。




●と、いうわけで

「きーたわね、みんな!
 久遠ヶ原のもうひとつの『本気』、存分に披露してあげましょうッッッ!!」

「おー!!!」
「――お、おー……!」

 率先して司書らが準備を整える。オレンジ色のシャツと黒いスカートを脱ぎ捨てたつづりは、既に橙色の水着を着用していた。隣で合歓も衣服を脱ぎ捨てる。白いTシャツはそのままだが、下には黒い水着が浮かびあがっていた。

「ねーねー、投げて投げてー!」
 言いながらつづりは砂浜へ仰向けに倒れる。はいはい、と千陰が両足を持ち、合歓があたふたしながら両手を握った。
「全力で行くわよ! 伍(ウー)、併せて!」
「――……わ、わかった……!」

 ←← い っ ←←  海

 →→ せ ー →→  海

 ←← の ー ←←  海

 →→ せっ! →→  海

 掛け声と同時に手を離す。
 その小さな身体に勢いを満載したつづりは、


「きゃーーーーーーーーー!!!」


 と、黄色い声を上げながら、ぽーーーん、と海面の上を飛んでいき、遠くへどっぱーんと着水した。
 友人より遥かに大きな水柱の所為か、足元を浚う波の所業か、或いは夏の強すぎる日差しの所為か。
「――私、も……!」
 合歓も仰向けに寝転んだ。
「……いいのね?」
「――うん……! 私も……!」
 ようがす。千陰は頷くと、合歓のひざ裏を抱え上げた。そしてぐるぐるぐるーと自身と共に回転させると、

「そぉい!!」

 寸前に一瞬だけ光を纏い、合歓を放り投げた。全力ということもあり、つづりよりは重量のある合歓が、単独でのそれに関わらずつづりと同じ距離まで飛んでいく。
「んWelcome!!!」
 と、立ち泳ぎで海面から手を振るつづりのすぐ横で水柱となった。局地的な高い波紋につづりは一旦呑まれるが、すぐに顔と声を出して合歓へ水を掛ける。合歓もすぐさま応戦した。

 小さな部下を眺めていた千陰は、「やっば、のっけから飛ばし過ぎたわ……」と腰を抑えて仰け反った。


「それじゃ、以下自由ってことで。夜にはホテルでお夕飯出してくださるそうだから、それまでには戻ってきてね」


 では、解散。
 言い残し、部下の衣服を回収した総責任者は戸を開けたばかりの海の家へ歩いて行った。


 あなたは額の汗を拭い、青が多い方角へ視線を向けた。
「――……んっ、んっ!」
「ちょ、伍! 溺れる、おーぼーれーる!!」
 これ以上ない晴天の下、司書2名を抱いた海は、キラキラと輝きながら、絶え間ない波であなたを招いている。


リプレイ本文



●たぶん第1回 阿修羅対抗司書遠投大会決勝


 三ツ矢つづりと五所川原合歓が砂浜に戻ると、準備を終えた生徒らが戻りつつあった。
 先陣を切るのは雪室 チルル(ja0220)。空を切り取ったようなセパレートの水着に装いを変え、海よりも青い髪を風に遊ばせながら砂浜を爆走する。

「海だー! 泳ぐぞー!」

 波打ち際で強く踏み切った。充分な推進力を抱えほぼ水平に跳躍、全身で着水する。立ち昇る水しぶきと水音は、戸蔵 悠市 (jb5251)の心を僅かに躍らせた。
「来い、ストレイシオン」
 青い鱗に身を包んだ竜が翼を広げて浮かび上がる。その能力故か、或いは庇うように作られた日陰の所為か、普段よりは調子が良いように思えた。
 悠市は黒いボクサーパンツのポケットから度入りのゴーグルを取り出すと、召喚獣を連れて海原へ向かった。自らを鼓舞するように胸を叩き、息を吸い込んで水の中へ挑んでいく。


「――監督とか、しなくて、いいの、かな……」
「あー……てか千陰どこだろ」
 辺りを見回していたつづりは、上司より先に友人を発見する。手を振ると振り返しながら駆け寄ってきた。自然と顔が綻ぶ。
 白を基調としたセパレートの水着には明るい橙と華やかな赤に彩られていた。健康的な身体も相まって、同性から見ても非の打ちどころがない。つづりは思わず息を呑み、感じたままを伝える。
「バッチリ似合ってる」
「ありがと」神喰 茜(ja0200)ははにかんだ。「参(サン)たちはもう休憩?」
 まさか、と肩を竦め、だよね、と笑った。
「さっきの楽しそうだったね」
「すっごい楽しかった!」
 両目を輝かせ鼻息を荒げ、擬音と身振りで説明するつづり。それを一通り聞いてから、茜はポン、と彼女の肩に手を置いた。
「投げてあげる」
「いいの!?」
「いいよー。投げましょう。投げてあげようじゃない」
 ふふふと笑って差し出された茜の手を、キラキラとした笑みを浮かべるつづりが掴む。
 その遣り取りを羨ましそうに見つめていた合歓の背に、マキナ(ja7016)が優しく声を投げた。
「しがない阿修羅の腕力で良ければ投げますよ?」
「――いい、の!?」
「ええ。妹の準備もまだで時間がありますから」
 高揚した合歓が砂浜に仰向けに寝転ぶ。体にぴったりと貼りついたシャツから目を逸らしつつ、マキナは合歓の両膝を裏から抱えた。
「――参……!」
「ん?」
「――どっち、が、飛ぶ、かな……!?」


 茜とマキナは暫し見つめ合った。


 『  ど  っ  ち  が  飛  ぶ  か  な  』


「少し待っていて下さい」
 言いながら腕を離すと、マキナは白いパーカーを浜辺に脱ぎ捨てた。

「ふっふっふ」
「……茜?」

 茜の足元から色濃い赤が浮かび上がるのと、マキナが炎の如き蒼い光を纏うのはほぼ同時だった。

 つづりは両手を前に出したまま硬直し、赤と蒼を交互に見遣っていた。その間、遠くに知った顔が映る。向こうもこちらに気付き、あくびを打ちながら手を挙げてきた。
「よう、司書娘」
「チス」
 久瀬 悠人(jb0684)は青いトランクスのポケットに両手を突っ込んだまま、小さく首を傾げた。
「何やってるんだ?」
「遊んでる、はず、です……」
「ふうん」
 悠人はつづりを観察し、静かに一度頷いた。
「立派な絶壁ですね」
「立派!? 立派って言いました!? 絶壁はまだしも立派って何スか!?」
 そこへ「悠人さんっ!」と地領院 夢(jb0762)が駆け付ける。
「また三ツ矢さんを苛めて……駄目ですよっ! 三ツ矢さんも気にしないでくださいね、とっても素敵ですよっ」
「わかった、わかったから引っ張るな。じゃあまたな、司書娘」
「……」
「お待たせしました」
 腹の底から息を吐き、マキナが再び合歓を『構える』。
「いつでもいいよ」
 茜が両手を取る。つづりは軽く泣いていた。

 腰を落とした茜の髪が金色に染まる。
 呼応するように蒼炎が燃え盛る。
 覚悟を決めたつづりが目を閉じ、合歓が頭の後ろで手を組む。

 全員の呼吸が一致した。

「ふっ……!」
「チェエエあストォおォオォぉォッ!」
「――んー……!」
「肩がーッ!」


 早くも上がりつつあった息を整えながら悠市が振り向いた。
「……何だ……?」
 まず浜辺で光纏した2人が目に映り、続いて空をかっ飛んでくる2人が目に入る。明らかにこちらへ飛んできていた。なけなしの体力と気力でその場を離れようとした時、チルルが勢いよく顔を出す。
「すごい! 海すっごい綺麗!」
「おい、そこは危険だ」
「なんで? あ! 飛んでる! あたいもや――」

 だっぱーーーん

 茜とマキナが身を乗り出して見守る中、ひとつめの水柱が上がる。激しく発生したそれは、特大の波紋でチルルを喜ばせ、悠市を呑み込んだ。
 その光景の奥へ、ぱーーーん、と、つづりが腹から落下する。

「やったー」
「くっ……!」
 茜が胸の前で手を握り、マキナが拳で砂を打つ。明暗を分けたのはつづりと合歓のウエイトと体格の差。
「……参りました」
「うん、いい勝負だったね」
 笑顔でそう言うと、茜は浮き輪を抱え、笑顔と歓声に揺れる海へ駆け入っていく。軽やかな足取りと弾む背を細めた眼で見送り、マキナは踵を返した。


 メリー(jb3287)が立っていた。


「遅かっ――」
「お兄ちゃんが……他の女の人と遊んでた……」
「……そ、そうだぞ。遊んでただけだ。だから光纏をしまうんだ」
「嘘! 胸の大きな人を寝かせて脚の方から覆い被さるようになって視線に困ってそっぽ向いたのメリー見てたよ!?」
「そこから見てたなら経緯も判るだろ!?」
「メリーっていう可愛い妹がいるのに……お兄ちゃんの……っ」
「ちょ、待てメリー俺の話を――」


「……お兄ちゃんのバカーーーーーーっ!!」


 ちゅどーーーん × 3



●海の家にて

 雪代 誠二郎(jb5808)は浮かぶ汗をハンカチで拭った。捲った袖から伸びる色の薄い腕は、夏の日差しで早くも僅かに赤らんでいる。

「主人、ビーチパラソルを借りるぞ」
「我もだ。そこなデッキチェアも持ってゆく」
「スイカと、棒ある?」
「じゃあ、しょうゆ味でお願いしますっ」
「あるならビールをいただいこうかな」
「俺ってばビーチボール探してるのなー!」

 海の家は大盛況だ。浮足立っている、と評してもいい。
 ぼんやりと海を眺める。ちょうどつづりと合歓が落下し、マキナが実妹の連続攻撃を受けているシーン。
「全く……元気なものだよ」
「……ああ、本当にな……」
 呟く誠二郎と同意するグリムロック・ハーヴェイ(jb5532)の間から、六道 鈴音(ja4192)が海辺を覗き込んで眉間を狭めた。
「えっ……あの砂浜は、元気で片付けていいんですか……」
 小日向千陰が這い出てきた。胸と畳の間には黒夜(jb0668)が挟まっている。その小さな頬を両手で忙しなくぺちぺちと日焼け止めを塗り、塗られながら、両者は視線を砂浜へ向け、あー、と頷いた。
「マキナと妹か」
 一応、とカメラを取り出した。誠二郎が上体を大きく傾ける。静かに感謝してシャッターを押し込んだ。
「だーいじょうぶよー、マキナ君タフだから」
(「ああ……小日向先生の自然な笑み♪」)
「おや、随分と増えたね」
 アニエス・ブランネージュ(ja8264)が戻ってくる。見事と言うより他ないプロポーションをサイドの開いた大胆なワンピース型の水着に包んでいた。遊ぶクリアブルーの長髪がまた眩しい。
 お待たせ、と運んできた飲み物を配っていく。鈴音と黒夜にラムネを、誠二郎にアイスコーヒーを、千陰に白を湛えた黄金色がなみなみと注がれたジョッキを渡し、自身もそれを携えたまま奥へ腰を降ろした。
「おい、酒は駄目だろ」
「私のはノンアルコールのやつだし。でしょ?」
「品ぞろえが豊富で好感が持てるね」
「最近ちょっとずつ練習もしてたりして」
(「ドヤ顔の小日向先生も素敵♪」)
「それじゃあ」
「ええ」
 掲げた大きなジョッキが同い年の2人の間で小さく鳴る。
 ごくごくと心地よさそうに、そして何より楽しそうに喉へ流し込まれてゆくそれを眺める鈴音の許へ、お待たせしました、と従業員がしょうゆラーメンを運んでくる。
「わあ……っ、いただきますっ」
「それぞれの夏、という感じかね」
「ああ……」
 応えるグリムロックの視線は、初めて見る造形の瓶に釘付けになっていた。



●愛の形

 裸足で歩くことを躊躇うほど熱くなった砂浜も、脚の長いチェア越しなら楽しむに値した。傾けて設けたパラソルが落とす影に、通り過ぎてゆく浜風が清々しい。つい微睡みそうになる度に、白蛇(jb0889)は色鮮やかなカクテルを手に取り、ストローを銜えた。
 人気のない場所を選んだので仲間の声は遠い。それでも絶えることなく誰かの笑い声が聞こえてくる。白蛇を筆頭として、誰も彼ものんびりとした時を過ごしていた。

(「……まあ、何処も彼処も、というわけではなさそうじゃが……」)

 大きなサングラスを鼻へずらす。



 マキナは無事でも大丈夫でもなかった。
 ほぼ零近距離から3連続で妹の攻撃に直撃を許した彼は、海水を含んで幾分固くなった浜辺に倒れ、寄せては返す波にされるがままにされていた。
 確固たる想いで繋ぎ止めていた意識が、フェードインしてくる足音を拾う。
 地領院 徒歩(ja0689)と黒名 明日診(jb4436)のものだった。

 混濁した意識のまま、マキナはごろん、と仰向けにされる。

「力を抜け、この海原の波の如く。何も心配は要らない」
 努めて明るく、強く言いながら、徒歩は懸命に左胸の打ち身へ光を注ぎ続ける。
「痛かったら言いなさいね。止めないけど」
 言いながら明日診はサンダルのヒールで患部を踏みつけた。初め、確かめるようだったそれは、次第に腰が入るようになり、やがて吐息混じりの笑みが零れ始めた。

 鞭で撫でられながら飴を叩きつけられるような、不思議な感覚がマキナを襲う。だが徐々に、しかし確実に意識の靄は晴れており、目が開くようになった頃には全身から痛みが消えていた。
「……っ」
 勢いよく起き上がる。徒歩は大業な安堵の息を落とし、明日診は物足りなさそうに紙巻きを銜えた。
「すいません、ありがとうございました」
 頭を下げ、マキナは砂浜を走っていく。林へ、海へと、忙しなく顔を向けながら。
「探し人は、過激な恋人かしら?」
「まさか。その程度のものであるはずがない」
 呼ばれて振り向いた。
「こんなところにいたのか。探したぞ、徒歩君」
「早く早くっ。せっかくのスイカがあったまっちゃうからっ」
 純白の砂浜と色濃い空の間から、最愛の姉と妹が手招いている。



●夏の決心

 悠市は浜辺に戻っていた。傍らには召喚獣が、反対側には合歓が連れ添っている。悠市が大丈夫だ、と何度伝えても心配そうな顔をして離れようとせず、漕ぐ足が砂を触り始めた頃には抗議する体力も無くなってしまっていた。
 波打ち際に置いていた荷物から眼鏡を取り出す。
「済まなかった。もう大丈夫だ」
 合歓は尚も不安げに見つめてくる。
「大丈夫だ、と言っている。これ以上の気遣いは無用だ」
 言葉は不意に強くなった。合歓は僅かに目を丸くしてから、頭を下げてその場を離れて行った。
「……お前も、少し休め」
 小さく頷き、ストレイシオンが姿を隠した。
 薄手のパーカーを羽織って歩き出す。落ちそうになる肩を懸命に持ち上げた。

「戸蔵」

 声は遠く、しかし力強かった。主君と定めた者の声を聞き違えるはずもなく、悠市はビーチパラソルへ向かい出す。
 僅かに軽やかになっていた足取りは、しかし、丸く色濃い影に踏み込む直前で止まった。

「難儀であったな」

 戯れるように首を傾けたフィオナ・ボールドウィン(ja2611)が片側の口角を吊り上げる。
 フィオナは水着姿でデッキチェアに腰を降ろしていた。黒い生地を赤で象ったデザインは品に溢れ、胸元に描かれた金のワンポイントはそのまま彼女の気高さを現しているようだった。正中線の中央と両脇で縛られた赤い紐は結び方も相まって全体の印象とは対照的に愛らしい。ラフな着こなしのデニム地のホットパンツ、右腕と左脚を彩るゴールドのアクセサリも手伝い、瑞々しいとさえ表現できる彼女の肢体を十二分に際立たせていた。

「……戸蔵?」
「――……ああ、済まない」
「まあよい、貴様もやれ」
 ん、と腕が動く。悠市はこの時、初めて突き出されていたグラスに気が付いた。氷が詰め込まれたそれには、色とりどりのアイスキャンデーが袋に入ったまま幾つも突き立てられている。
「有難く頂戴しよう」
「黄色か。パイン味であったぞ」
 薄いビニールを破り、口に運ぶ。冷えた甘みは疲れた身にすぐ染みた。
「泳がないのか」
「泳がぬ。ここで過ごすと、もう決めた」
 迷いなくソーダ味を手に取った。
「戸蔵は鍛錬の一環か」
「そんなところだ」
「良い事だ。出来る事が増えれば、それはそのまま選択肢という名の力になる。
 だが無理はするな。鍛錬は間違いなく応えるが、手心を加えることもせぬ」
 しゃく、と青の先端を齧り、現れた棒の先端で指す。
「次は召喚獣の力を借りる前に戻ってこい。折角の決意だ、水を差すような真似はせぬが、こうして疲れを癒してやることはできる」
「……肝に銘じよう」
「うむ。もう一本やれ」
「ああ、頂戴しよう」
「緑はメロン味だ」
 2本目を銜えた悠市の頬が綻ぶ。それは甘さの所為ではなかった。

 やはり、と。
 この魂に傅くと決めた自分の決意に間違いはなかった、と。

 更なる力を、せめて不要な気苦労を掛けぬ程度の力を――そして、この女性を正面から見つめ返せる程には免疫をつけておこう、と心に決め、悠市は早くも溶けつつあるアイスを頬張った。






 2本目を頬張る悠市を見て踵を返した合歓は
「よう、伍(ウー)」
 と、渾名を呼ばれて振り向いた。
「――……あ……」
 月詠 神削(ja5265)はいつもと変わらぬ様子で手を挙げていた。
「海の家でのんびりしようと思ってたんだけど、伍は?」
「――あ、うん……」
「よし、じゃあ行くか」
 食べ過ぎるなよ、と軽口を叩いて歩き始めたのに、早い段階でつい転びそうになった。
 咄嗟に合歓が受け止める。
「――へ、いき……!?」
「……ああ、悪い」
 と、そこへ。


「危ないですよー?」


 聞き覚えのある声に振り向けば、太陽が黒い影に覆い隠されていた。


 時間は少し遡る――




●不動

「俺ってばビーチボール借りてきたのなー!」

 天真爛漫、という言葉をそのまま貼りつけたような笑顔の大狗 のとう(ja3056)とは対照的に、彼女の到着を浜辺で待っていた真野 縁(ja3294)と藤咲千尋(ja8564)の目は光を失っていた。

「おやおや、どうしてボールを3つも持っていらしたのでしょうね(ちぎぎ)」
「ちょっと空気入れ過ぎじゃありません? ご覧になって、あの揺れ様(ぐぎぎ)」

「……おん?」
 首を傾げたのとうは、やがて意図を察し、ああ! とビーチボールを頭上へ投擲、頭の上でキャッチした。
「大丈夫! 揉まれたらでかくなると地元の友達が言っていた!」
「ええ、勿論存じておりますよ」
 縁が笑う。ちぎぎぎぎ。
「試していないとお思いですか?」
 そこへ千尋のぐぎぎが混ざりそうになった瞬間、櫟 諏訪(ja1215)が一気に踏み込んだ。千尋の背後から両肩に手を置き、お待たせしましたよー? と顔を寄せる。
「千尋ちゃん、水着似合っていて可愛いですよー?」
「す、すわくん! でも……」
 俯き、慎ましい胸を隠す千尋。その頭をぽふぽふと撫でてやる。
「千尋ちゃんが一番ですから、気にしなくてもいいのですよー?」
「!! す、すわくんってば!!!」
「お、やっといつもの千尋に戻ったのにゃ」
 優しい微笑みを湛える諏訪と首まで真っ赤になった千尋、そしてのとうの屈託のない笑みを改めて確認し、縁の毒気もすぅ、と抜けてゆく。台頭したのは満面の笑みだった。



 一同は波打ち際から2歩ほど海側へ移動、膝の下まで海を味わいながら円陣を組んだ。
「いくのなー!」
「いっぱい続けるんだよー!」
「変なところに飛ばさないように注意しましょうねー?」
「のと姉ー! こっちこっちー!」
 のとうのサーブから朗らかなビーチバレーが始まる。レシーブを繋ぐだけが暗黙のルールの穏やかなものだ。
 海に浸った髪を翻した縁が押し返し、少し遠くへ飛んでしまったボールを諏訪が脚を伸ばして拾う。柔らかく上がったそれを千尋が難なく打ち上げ、そこへのとうが跳躍した。

「唸れ俺の右腕よ!! アタァァァック!!」

 2順目にして早くも放たれた攻撃的なそれを諏訪が滑り込むようにして拾った。
 縁の視線は、上がったボールではなく、のとうに注がれる。豊満なそれはたゆゆゆんと揺れを長引かせていた。背後の真っ平らな水平線と聳える対の入道雲も何かのメタファーのように思える。
「――ちぎぎ」
(「戻っちゃいましたねー?」)
 腰を落として距離を取る諏訪に影が落ちる。跳んだ千尋のものだった。


「胸囲の格差社会よ――等しく灰に還るが良い」


 渾身の力で打ち降ろされたボールが軌跡さえ残さず水辺に肉薄する。のとうはこれを、手を組んだ腕で笑いながら弾いた。が、方向を定めるまでには至らない。ボールは忙しなく回転しながら明後日の方角へ飛んでいく。
 備えていた諏訪だから動けた。腕とあほ毛を振りながら走り、なんとか追いつくと、後ろ向きのまま円陣側へボールを大きく弾き飛ばす。
 角度、高さ、速度。
 全てがのとうにとって絶好だった。


「よーし、もいっちょ行くぞーっ!」
「来い、富める者よ」


 本気で構える千尋目掛けて、本気も本気でのとうが右腕を振り降ろした。

 バシィッ!!

 痛烈な音が上がり、しかし千尋は構えを解いた。
 諏訪が見上げる。
 音が鳴りそうなほど高速で回転してボールは明々後日に飛んでいく。落下地点と思しき場所には神削と合歓の姿が。


「危ないですよー?」


 声を投げた時には、合歓は既に動いていた。その場で、助走らしい動きも見せず、側転のような動作でボールをものの見事に蹴り返す。


「わー! 戻ってきたんだよー!」
「すごーい!!」


 再び笑顔を取り戻した友人と恋人に目を細め、諏訪が丁寧にレシーブする。今度こそゆったりとした時を皆で過ごせるよう祈りながら。
 思いは通じた。縁が飛び跳ねるようになりながら両手でボールを弾ませる。

 ぴょん → ぽーん → すたっ

 千尋もそれに倣った。

 ぴょん → ぽーん → すたっ

 ボールは再びのとうの許へ。

 ぴょん → ぽーん → すたっ → どたぷーん


「ちぎぎぎぎー!!」


 縁、飛翔す。


「パパウ! パウパウ! バレーカッター!」


 超鋭角に放たれたそれに、のとうはなんとか反応した。対応、というよりは反射という形になり、腕の側面に当たったボールは急激にスピンしながら来年の方向へ飛んでいく。
 水を蹴りながら諏訪が全力で疾走する。頭から飛び込み、懸命に伸ばした腕が、辛うじてボールを打ち返す。
 角度、高さ、速度。
 全てがのとうにとって絶好だった。


「今度こそ決めるのなーっ!」


 バシーッ!!


 のとうは確かにアタックの仕草を行った。にも関わらず、ボールは空を触る程高らかと上がり、複雑なスピンを繰り返しながら海の上を飛んでいく。

「……あ? 何か間違ってたか……?」
「ボールがなくなっちゃったんだよ……」
「取りにいこっか!!」

「その前に、ちょっと、休憩しませんかー?」

 両膝に手を置き、肩で息をしながら、諏訪はいつもと変わらぬ笑顔でそう提案した。




●地領院兄姉妹と愉快な仲間達/夢ちゃん大忙し編

「黒名さん、すっごいセクシーです! 素敵っ!」
「そう? ありがと」
 微かに笑う明日診の水着は黒。隠すべきところは隠し、出すべきところは際立たせている。挑発的な居住まいながら確かな気品もあり、セクシーという表現がこれ以上なくしっくり来ていた。
「ナースちゃんもセクシーだけど、夢ちゃんは流石にすごく可愛いな」
 地領院 恋(ja8071)が目を細めて見つめる先で、夢は頬を赤らめて両手を振った。その仕草に合わせて、明るい色合いの短いパレオがひらひらと揺れる。
「お姉ちゃんの水着もすっごく可愛いよ♪」
「いや、夢ちゃんの方が遥かに可愛い」
 言いながら恋が、短い髪と似た色のトップスとデニムのホットパンツの位置を直す。その頬に、ほのかに朱が差しているのを明日診は見逃さなかった。
「もう少しセクシーにしてもいいんじゃない? せっかくの水着なんだから」
「あっ、いいと思うなっ。今度挑戦してみようよっ」
「からかうなよ、2人とも……」

 準備を済ませてきた徒歩と悠人が戻ってくる。

「終わったぞ」
「ありがとうございますっ」
 と言いかけて、設置されたスイカを見た夢が息を呑んだ。
「キィィィ!!」
「スイカの隣にチビちゃん埋まってますよ!?」
「最前席で見たいらしい」
「キィィィ!?」
「すっごい首降ってますよ!? 残像出てますよっ!?」

「何も、何処にも、問題など無い」

 小脇に金属バットを挟み、両手で白い鉢巻を張った徒歩が不敵に笑う。

「見えなきものを視て、目標を撃破することに関して、この魔眼使いの右に出るものはおるまい!」

 揚々と語る兄の言葉に、夢は半身であごを引くと、寄せた眉の下で両目を半分閉じて徒歩を見据えた。
「……魔眼? 何言ってるの……?」
 並の手合いなら撃ち砕きそうな視線を受け、しかし徒歩は尚も笑みを絶やさない。可愛い家族のそれだから耐えられた。
「とにかく、兄さんがやるのね」
「コツは常に冷静さを失わないことだな。頑張れ、徒歩君」
「ちゃんと割らないと承知しないんだから」
「杞憂というものだ」
 目元に鉢巻きを結び、バットを構える。


「目隠ししてたら魔眼関係ないんじゃない?」


 心に亀裂が入った徒歩が歩き出す。方向はショックで見失ってしまった。耳に入る声だけを頼りに、進む。

「もうちょっと右だ」
「む……?」
「逆ぎゃく、右みぎー」
「キィィィ!」
「チビ、声出すな」
「兄さん、行き過ぎ」
「――そう、そこだ」

 短く息を吐き、勢いよくバットを振り降ろす。


 サッ


「キィィ!!」
「お、避けた」
「当たる事前提だったんですかっ!?」
 とにかく無事でよかった。夢は、涙目のチビに「はぁー……」と安堵の溜息を漏らし、チビとスイカの間にバットを振り降ろした徒歩の背へ「……はぁぁーーー……」と肩と溜息を落とした。

「ふ、ふむ……初っ端から割れてしまっては面白くないだろう? そういうことだ」
「兄さん……」
 項垂れる夢の隣から、腕を組んだ悠人が神妙な面持ちで口を動かした。


「徒歩よ――感じるな、目で見ろ」


「や、目で見たらスイカ割りじゃねえだろ」
(「兄さんが素のツッコミを!?」)
「さて、次は誰が行く? ナースちゃん?」
「遠慮しておくわ、叩いてもスイカは悲鳴上げないし」
「……え……っと……?」
「じゃ、アタシがやらせてもらおうかな」
「お姉ちゃん頑張ってー♪」
 両手を挙げて声援を送る夢の隣で、悠人が徒歩に視線を送る。変わらぬ笑みを少しだけ俯かせながら恋へ道具を渡そうとしているところだった。

「スイカ割りか……」
 まず鉢巻を受け取り、
「さっきも言ったとおり、コツは」
 バットを受け取った。
「一気に近づいてブッ叩いてやりゃいいんだよッ!
 スイカだろうがッ! 天魔だろうがッ!
 敵になった以上は叩き割ってやらぁッ!」

「お姉ちゃんカッコいいー♪」
「見てな、アタシが一発で粉々にしてやるッ!」

 できれば一口サイズがいい。悠人が見守る先、恋が迷いなく大股で距離を詰めていく。対してチビは、どこか達観した表情で仰け反っていた。
 誰の指示もなかった。かける暇さえなかった。恋はぴったりとスイカへ接近、腹の底から咆えながら、かかとに付きそうなほどバットを振り被る。


「恋のほうが魔眼持ってるんじゃない?」


 徒歩が目元を抑えると同時、全力でバットが振り降ろされた。


 パァァァン!!!(キュィィィー!!)


「どうだ!!」
 音も、手ごたえも、充分だった。
 四散したスイカはちょうど両手で持てるサイズとなりそれぞれの手に落下する。
「すっごーい!
 どうですか悠人さんっ、私のお姉ちゃんかっこいいでしょっ?」
 夢が見上げる悠人の顔には、

「キィィィ……」

 スイカ塗れになって目を回したチビが張り付いていた。




●Re:海の家にて

「雪代さんは泳がないんですか?」
「まさか。濡れるのは嫌いだし、そんな歳でもないんでね」
 見れば見る程不思議な形をしている。口には丸いガラス玉が引っかかっており、それを待ち受けるように並ぶ丸い窪みもまた、不可解だった。
 疑問符を浮かべるグリムロックの隣に、鈴音が腰を滑らせてくる。彼女は口の中のもろこしを呑み込んでから、ずいと顔を前に出した。
「まだビー玉外してないんですね」
「ビー玉……?」
「上のピンクを叩いて外すんですよ」
「ほう……?」
 グリムロックは尚も首を傾げながら畳の上に瓶を置いた。隣で様子を窺っていた誠二郎は何も言わない。彼と鈴音が見守る中、グリムロックは、スナップを効かせて桃色を叩いた。

 ポン、という軽い音の後、しゅわわわぁ、とラムネが泡となって溢れ出てくる。

「何……!?」

 狼狽するグリムロックを余所にラムネは出続け、治まる頃には大半が無くなってしまっていた。
「強過ぎです……」
「落ち込むほどのことじゃあないさ。微笑ましい夏の一幕だよ」
「勿体ないことをしてしまったな」
 せめて残りは、と煽ろうとする。だが瓶の口にビー玉が引っかかってしまい、思うように飲めない。
 こうやるんですよ、と鈴音が自分の瓶を傾ける。とくとくとラムネは彼女の口へ流れて行った。
「この凹みにビー玉を引っかけるんです」
「勢い良く傾けるとビー玉で蓋ができる、と」
「なるほど……奥が深いな」
 黒いパーカーの裾で軽く瓶を拭き、言われたとおりに傾けてみる。ようやっと喉へ向かえることができたラムネは気の抜けた味気ないものだったが、グリムロックの胸と心に良く沁みわたった。
 そこへ合歓と神削がやってくる。
「――ラムネ……!」
「伍も飲むか?」
「――うん、もらって、くる……月詠、は?」
「じゃあ、ひとつ頼む」
「済まない、ついでに1本頼めるだろうか?」
「私のもっ」
「――わかった!」

 カウンターへ向かう合歓を見送り、神削はテーブルに腰を降ろす。正面には、カキ氷を少しずつ食べ進む黒夜、こちらを見るなり手を挙げてきた千陰、赤ら顔のアニエスが並んでいた。
「もう泳いできた?」
(「少しずつノンアルコールを飲み進める小日向先生……♪」)
「いや、今日はちょっと休憩しようと思って。それに――波も静かだし」
 言いながら海を見る。海は変わらず穏やかで、サーファーである神削の目にはほんの少し退屈に映ってしまう。
「へえ、どの海でもいいわけじゃないのねー」
(「小日向先生の頬杖……♪」)
「黒夜さんは? 泳がないの?」
「……ウチは泳げねー。泳げない撃退士とかマズイとは思ってるけどさ……」
「そんなことないわよ、いろんな戦場があるんだから」
(「生徒の頭をポンポンする小日向先生♪」)
「せっかくだから練習してみる?」
「……いや、いい」
 黒夜は首を振り、海の家の外へ視線を向けた。



●邂逅

(「小日向先生、なんとお優しい方なのでしょう……やはりわたくしの目に狂いはありませんでしたわ!」)

 シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)は日傘の柄を握り締める。自由時間が始まってから此の方、日傘と、誠二郎がさりげなく差し入れた飲み物だけを頼りに、時折向けられる怪訝げな視線を物ともせず、ずーっと千陰を見守っていた。
 そんな彼女には懸念があった。千陰の隣を離れようとしない黒夜の存在である。

(「小日向先生――いいえ、千陰様、と呼ばせて頂きます。
 千陰様のお誘いにそっぽを向いて答えるなんて……!」)

 やがて黒夜が目線を送ってきた。あからさまに怪しんでいるそれを、しかしシェリアは鼻で笑い飛ばす。

(「これを見ても、まだその眼差しをわたくしへ向けられまして?」)

 胸を張ってシェリアが取り出した手のひらサイズのカードには、『小日向千陰FC名誉会員証』と刻印されている。

「……」
(「ご理解いただけましたか? わたくしが千陰様を見守るのはもはや必然なのです!
 ……あら、わたくしとしたことが。FCの存在は千陰様に知られてはならない掟。あまりお見せするわけには――」)

 したり顔を浮かべていたシェリアは、次の瞬間、目を剥いた。
 こちらへ向けられた黒夜の手には、全く同じデザインのカードが握られていたのだ。


(「なんですってええええええええ!?」)
(「騒ぐなよ。FCの掟忘れるな」)



 黒夜の珍しいドヤ顔を追った千陰は、ようやくシェリアの存在に気付いた。
「こっちで一緒に涼みましょうよ」
「え!? あの、その……よろしいのですか!?」
「もちろんよ。黒夜さん、ちょっと詰められる?」
「ん」
「はい、いらっしゃいな」
「喜んで、千陰様!」



●Re2:海の家にて

 合歓が戻ってきた。ラムネを配り、席についた彼女の前に大盛りのラーメンがふたつ運ばれてくる。箸を構え、いただきます、と啜り始める彼女を心配そうに見つめる神削の視線に、アニエスは気付いていた。
 大変な事があったのは聞き及んでいた。こうして肩を並べていることが奇跡と呼べる程の事であったとも。
 尋ねれば答えてくれるだろう。尋ねなかったのは、答える千陰の表情を想像してしまったからだ。
 間が開いてしまったにも関わらず、なんのてらいもなくこうして隣で付き合ってくれている。それで充分であり、自分もまたそうありたいと思い、そう意識するのを止めるように小さく頭を振った。
 熱くなった顔を手に任せる。視線は神削へ。

「少し、目線が下過ぎないかな?」
「食べてる伍は無防備なんだからね!」

 アニエスと千陰の戯れに、しかし神削は鼻の頭を掻くに留まる。様子がおかしいことに気付いた2人が首を傾けると同時、意を決した神削が合歓に問いかけた。




「なあ、こんな事訊くのも悪いけど……――ちゃんと下着、持ってきたか?」




 静寂。

 のち、爆笑。



「いやー、神削君面白いわー」
(「目元を拭う千陰様♪」)
「いや、だって服の下に水着だったしさ!?」
「のんびりしているとは思うけれど、さすがにそこまでは――」
 と、アニエスが視線を伸ばした先で、合歓は硬直していた。


 ごちそうさまでした、と鈴音は両手を合わせた。頬に当たった潮風に導かれて海を見遣る。水着は持ってきていたし、楽しみにもしていた……が、少々食べ過ぎてしまった。
「ホテルにお風呂あるんでしたっけ。そっちにしようかなっ」
「――私、も、行く!!」
 大急ぎで2杯を平らげた合歓に押されるようにして、鈴音はホテルへ向かっていった。
 彼女らと入れ違うようにやってきたのはアイスキャンデーを銜えたカイン 大澤 (ja8514)。
「多いな」
「この陽気ではね」
 確かに、とカインは海の家を見渡す。


「中にいるのは正解だな。紫外線に因る老化は凄まじいからな」


 今度はアニエスと千陰が硬直した。


「ここ日陰だし大丈夫よねアニエスさん」
「そうだね。間違いないよ」
「私たちまだまだ平気よねアニエスさん」
「全くもって正論だと思うよ」
「あ、飲み物が無いわよアニエスさん」
「すいません、ビールをピッチャーで」
「私も同じので!」


「何だ?」
「君ね……いや、構わないが……」
 首を傾げ、カインは海の家を後にする。
 眉間を抑える誠二郎に、ラムネを飲みきったグリムロックが微笑みかける。
「この、ビー玉は取れるのだろうか?」
「構わないんじゃあないか。間違っても割って取ろうとしないでくれ給えよ」
 溜息を空へ送る。白い雲は極めてのんびりと空を流れていた。



 少し離れたテーブルにて、諏訪、のとう、縁、千尋は休憩を取っていた。一同がスイカを粗方食べ終え、縁が大盛り焼きそばを8割ほど食べ進めた頃、スタッフが冷奴を運んでくる。
「お、豆腐かー!」
「お豆腐だー!」
「豆腐ですねー……?」
 誰ともなく箸を動かした。焼きそばについてきた刻み海苔をトッピングしていく。やがて豆腐には簡素な顔が出来上がった。のとうがケチャップで涙をこしらえて、完成。そうそうこんな顔をしていた、と頷き合い、撮影した千尋がその画像を本人へ送信する。
「つづりちゃんにも見せたいなー」
「そういえば姿を見ませんねー?」





「レモン味は大澤に渡したものが最後であったか」
 顔を上げた先、海から知った顔が物凄い勢いで走ってくる。
「雪室か。貴様も一本やれ」
「いいの!? ありがと!」
 受け取るなり、チルルは素早くビニールを剥がし、アイスを頬張った。
「何処へ行く?」
「海は満喫したから、次のとこ!」
 青い瞳は、林を従えて佇む真白い壁のホテルに注がれている。





 寝返りの間隔が短くなっていることを、白蛇は自覚していた。
「ふむ……」
 服を肌に滑らせながら腰を上げる。

「堅鱗壁よ、傍に」

 純白の司を従え、純白のスク水に身を包んだ白蛇が、背筋を伸ばして海を目指す。





 スイカを楽しんだ地領院兄姉妹と愉快な仲間達。次の標的は雄大な海原。
 悠人が呼び出した四つ翼の賢竜――エルダーを見上げ、明日診は静かに息をつく。
「可愛い子ね? いじめがいがありそう」
 まさか本当に手は出すまい。悠人は額に手を添えて人を探した。何故か見つからなかった夢は、振り向いた先で早くもエルダーの背に乗り、笑みを転がしていた。
「悠人さん、早く早くっ」
「ああ。
 黒名さんも如何?」
 どうしようかしら。思わせぶりな笑みを傾け、明日診は煙草に火をつける。
 砂に腰を降ろしていた徒歩が顔を向けてきた。
「行って来い。俺達は此処で、帰る場所を知らせる標と成ろう」
 そういうことなら。跨ろうとした悠人に、背後から恋が肩を組む。
「夢ちゃんのこと――よ ろ し く な ?」
「……はい」
 悠人は深く頭を下げた。




●砂浜の果てで

「あ」

 確かな手ごたえを感じ、田村 ケイ(ja0582)は熊手を深く突き刺した。そのままざくざくと砂をかき分けてゆく。
 姿を現したのは桜色の平たい貝殻。日に透かしてみると宝石のように煌めいた。菜園の傍に飾っても面白いかもしれない、とビニール袋に確保する。仲間と合流した桜色がカランと鳴った。
 傍らには剥き出しの巻貝があった。スコップですくってみると、穴からヤドカリが顔を出した。あら、と呟き、海水を薄く張ったバケツの中へ案内する。こちらはまだ単独で、やや手持無沙汰のように映った。
 この驚きや喜びを共有できる者は、残念ながらこの場にはいなかった。
 カインは離れた位置でマテ貝採りに勤しんでいる。それらしい穴を見つけては塩を零して周っていた。様子は真剣そのもので、ケイが獲得を知らせても一瞥と頷きを返すのみだった。
 麦わら帽子を抑えながら立ち上がる。ケイが敷いたシートに座る少女は先程から顔を上げようとしない。白いフードを目深に被ったまま膝を抱える様子は宛ら貝のよう。

「そろそろ何かすれば? 自由時間終わるわよ」
「だって……せっかく今日の為に、新しい水着買ったのに……」
「楽しみにしてたんじゃない」

 ケイはパーカーのポケットに手を入れて軽く身を反った。下に着た、学園指定の水着はまだ濡れていない。
 メリーは小さく頷いた。

「……お兄ちゃんのバカ……」
「ああ、相手お兄さんなの。なら、ぶっ飛ばしてあげればいいんじゃない?」

 頷く。ぶっ飛ばしていた。

 会話は途切れてしまう。話題を探すも見つからず、ケイがヤドカリ探しを再開した、その直後だった。

「……お兄ちゃん?」

 泣きはらした顔が上がる。
 耳をすませば、なるほど、名前を呼ぶ声が耳に入ってきた。

「メリー!」
「お兄ちゃん!!」

 林から転がり出てきたマキナに、メリーはノーモーションで跳躍して飛び付いた。勢い、転びそうになる兄の大胸筋に両目を線にして頬をすりすりする。

「ようやく見つけた……捜すに大変だったんだぞ……」
「お兄ちゃん……やっぱりメリーのことが大事で……!(すりすり)」
「当たり前だろう。もう遠くに行くなよ」
「……お兄ちゃんー!!(すりすりすりすり)」
「さ、行くぞ。ロスした分を取り戻さないとな」
「うん!!!」
 パーカーを脱ぎ捨てる。新品の花柄の水着は、ようやく日の目を浴びた。
「良く似合ってるぞ」
 とうとう聴けた一言に、メリーは更に笑顔を強める。その頭を優しく何度も撫でながら、マキナは妹を抱えて海へ飛び入っていった。



 呆然と様子を眺めていたケイにカインが歩み寄る。
「いたぞ」
 差し出されたのは小柄なヤドカリ。
「ああ、うん、ありがと」
 ケイはそれを受け取ると、バケツの中に入れ、
「あなたたちも遊んでらっしゃい」
 まるで兄妹のような2匹を、勢いよく、思いっきり海へ向かって送り出した。




●海中戯画

 茜は浮き輪の穴に腰を任せ、ぷっかぷっかと漂っていた。隣では、つづりが砂浜から飛んできたビーチボールにしがみついている。会話は時折だったが、沈黙の比率はそのまま絆の深さの現れであった。
「そういえばさー」
 投げられた言葉の影に水音を聞いた。仰け反るように振り返り、茜は全てを理解する。
「参ー」
「んー?」
 笑みを残し、茜は海の中に消える。
 次の瞬間、彼女の陰に迫っていた縁が、

「えいやーなんだよー!」

 と、両手で思いっきり水を掻き上げてきた。
 局地的な大波に襲われ、つづりは海上でひっくり返った。頼りにしていたビーチボールを見失い、それでもなんとか顔を出す。背後には千尋が備えていた。

「つづりちゃん捕まえたー!!」


 バストの計測を狙いとして滑らせた両手は、


 さっ


 何も捉えられないままつづりの脇に至る。つづりの胸部には、トップとアンダーという概念が無かった。


 ぎちぎちとつづりが振り返る。


 千尋は沈痛な面持ちで俯いていた。


 顔を真っ赤にしたつづりを、茜が海中から強く引っ張った。攻撃でなく誘いであることは明らかで、きょとん、として顔を向ける。
 茜が指さす先には白鱗の翼竜がいた。主である白蛇に翼を掴まれたまま、海中を自在に飛び回っている。
「(わぁー……!)」
「(ね。なんかいいよね)」
 この眼差しに気付いた白蛇が、目を閉じて微笑み、手を離した。
 放たれたストレイシオンはくい、と海中で旋回し、茜らの許へ向かう。顔を見合わせた2人は、目の前を通り過ぎる白い翼に手を伸ばした。
「(おー……!)」
「(わぁー!!)」
 全身で水を切っていく感覚。漂うだけでは味わえず、泳いでいる時とは全く違うそれは、新鮮で、驚きと感動に満ち切っていた。
 縦横無尽に泳ぎ回るそれは、傍目にも充分魅力的で。
「(楽しそーなんだよー!)」
「(いいなー! いいなー!!)」
 金色の視線が流れてきた。白蛇は苦笑する。
 踵を返したストレイシオンが空いている翼を動かした。縁と千尋の口から、笑い声の代わりに泡が零れる。
 そこへ
「(お兄ちゃん!!)」
「(よろしければ、俺達もお願いできますか)」
 ネクセデゥス兄妹が訪れ、
「(皆さんお揃いですねっ)」
「(お、ちゃんと楽しんでるな、司書娘)」
 エルダーに跨った夢と悠人が合流する。蒼い賢竜は、まるで張り合うように堅鱗壁の傍を飛び回った。

(「やれやれ、随分と騒がしくなったものよの」)

 だが、悪くはない。
 白蛇は肩を竦めると、海底を蹴り、仲間達の許へと静かに浮かび上がっていった。




●お風呂なう

「売店に下着があってよかったですねっ」
「――……帰れ、る……」
 鈴音と合歓が浴室の扉を開けると、湯気の中から

「えいやー!」

 威勢のいい掛け声と派手な水音が聞こえてきた。
 呆気にとられる2人に、湯船から顔を出したチルルが手を振る。どちらも控えめに振り返した。

 隅々まで洗い終え、浴槽へ。鈴音は、んー、と大きく伸びをうち、っぱぁ、と全身の力を抜いた。
「いやー、広いお風呂は気持ちいいわっ」
 振り向けば広い海を一望できた。あれほど青かった空は少しだけ色褪せ始めていて、それが返って風情を感じさせる。
「ほんとね! 凄い!」
 程近い位置でチルルも湯と景色を楽しんでいた。
 だが、これは長く続かない。チルルはひたすらのんびりする鈴音を尻目にそわそわし始める。やがて潜ったり泳いだりし出し、それにも飽きると湯船を飛び出して木製の壁に歩み寄った。
 鈴音が眺めていると、チルルはぺたぺたとそれを触った後、よじ登り始めた。
「え、ちょ……っ」
 制止の言葉が出るより早く、頂上に到達してしまう。


「こんにちは!」


 男湯に浸かっていた悠市は振り返らずに眉を顰めた。眼鏡が無いので何も見えない。が、振り向かぬ方が良い気がした。

「声が近いな。何をしている」
「壁の上からあいさつよ!」
「何をしている……騒ぎになる前に戻れ」
「少し話しましょ!」
「戻れ」


(「――前にも、こんな、こと、あっ、た……?」)
 隅っこで小さくなっていた合歓は、かくん、と首を傾げた。






 つつがなく夕食を終えた一同はホテルのロビーに集結していた。


「食い過ぎだ」
「美味しかったんだもん……」
(「ぐったりしている千陰様♪」)
 夕食前に海の家でピッチャー2杯とカインが取ってきたマテ貝をたらふく頂戴した千陰は、ぽっこりと丸くなった腹部を抱えて動けなくなっていた。隣には、ややペースが速くなり、顔を赤くして浅く微睡むアニエスの姿が。


「なにやってんだか……」
 牛乳を嗜んでいたつづりの背に千尋が激突する。ごほごほと咽るつづりを余所に、千尋はにこにこと携帯の画面を突き出した。
「見て見てー!!」
「ん、何?」
 液晶に浮かぶ、血の涙を流した豆腐を見た瞬間、つづりの鼻から牛乳が噴出した。


 帰島の時間は確実に迫っていた。
 躊躇っている時間はない。
 黒夜は小走りで千陰に駆け寄った。
「……な、なぁ……」





「あたいに続けー!!」
「きれーなのなー!!」
 両手に花火を持ったチルルとのとうが紺色の砂浜を駆けていく。その後ろを、縁と鈴音が光の軌跡で円を描きながら追いかけた。遠くから見守る諏訪の隣で、うっとりと火花を見つめていた千尋が呟く。
「きれー……」
「千尋ちゃんの方が綺麗ですよー?」
「す、すわくん!!!!」

「はい、悠人さんっ」
「眠い」
 あくびを打ってそっぽを向く。頬を膨らませる夢が突き出した花火を、チビが高い声で鳴きながら受け取った。表情を綻ばせる彼女の許へ明日診が赴き、飾り紙にライターを近づけた。
 灯りに照らされる妹の笑みを見て、徒歩と恋が歩み寄る。
「アタシのもあげるよ」
「お姉ちゃんも一緒にやろうよっ」
「俺のも使え」
「……兄さんの少し湿ってるんだけど……落としたの……?」
 あの子は相変わらずね。明日診は煙草に火をつける。同じタイミングでケイが紫煙を吐き出した。
「やらないの?」
「やらないわ」ケイは口元に手を添える。「見てるだけで充分綺麗じゃない」
 この言葉に黙して同意していた悠市は、名前を呼ばれて振り向き、息を呑んだ。やや輪を離れた所で、フィオナとカインが静かに花火を見つめている。
「悪いものではないぞ。貴様もやれ」
 突き出された手持ちの花火を、悠市は眉を曲げて受け取った。

「……よかったのか?」
「花火代くらい安いもんよ。せっかくなら皆で楽しみたいじゃない?」
「素敵です、千陰様♪」
「あまり揺らすと、早々に落ちてしまうよ」
 小規模の円を作るアニエス、黒夜、シェリア、千陰。それぞれの手から提げられた細い紙の下で、赤々と膨らんだ火種が細かい火花を絶えず打ち出している。

「次は、これなどどうじゃ?」
 白蛇が取り出したのは円筒状の噴き上げ花火。
「これも面白そうなのです!」
 メリーが掲げるのはのっぽな四角柱。
「並べて一緒にやってみるとか?」
「――いい、と、思う……!」
「さんせーい」
 茜、つづり、合歓の声を受け、並べてやってみることに。充分な距離を開けて設置したそれに、ライターを持った神削とマキナが向かう。
「それじゃあ、行くぞ」
「いつでも」
 火を灯す。シュウ、という音を確認して即時撤退。振り向き、固唾を飲み、暫しの間を置いてから、特大の光が立ち昇り、辺りを煌々と照らし出した。

「昼間あれだけ騒いでいたというのに」
「……若いというのは素晴らしいな」
 グリムロックがラムネの瓶を傾けると同時、辺りに味気ない光が差し込む。林の中から大型バスが顔を出した。
 やがて方向を定め、停車、ブザーと共に扉が畳まれ、運転手が降りてくる。お迎えにあがりました。
 誠二郎がすっと手を挙げる。
「済まないが、もう少しだけ待ってやってくれないか。あの手際だ、そう時間はかからないだろうさ」
 指でさされた浜辺を見遣り、判りました、と運転手は笑顔で戻っていく。

 バスのライトが消え、砂浜には再び夜が戻ってくる。

 その静けさを吹き飛ばす笑い声と光は、寄せては返す波のように、いつまでも、いつまでも続いていた。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:17人

血花繚乱・
神喰 茜(ja0200)

大学部2年45組 女 阿修羅
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
cordierite・
田村 ケイ(ja0582)

大学部6年320組 女 インフィルトレイター
遥かな高みを目指す者・
地領院 徒歩(ja0689)

大学部4年7組 男 アストラルヴァンガード
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
絆を紡ぐ手・
大狗 のとう(ja3056)

卒業 女 ルインズブレイド
あなたの縁に歓びを・
真野 縁(ja3294)

卒業 女 アストラルヴァンガード
闇の戦慄(自称)・
六道 鈴音(ja4192)

大学部5年7組 女 ダアト
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
BlueFire・
マキナ(ja7016)

卒業 男 阿修羅
女子力(物理)・
地領院 恋(ja8071)

卒業 女 アストラルヴァンガード
冷静なる識・
アニエス・ブランネージュ(ja8264)

大学部9年317組 女 インフィルトレイター
無傷のドラゴンスレイヤー・
カイン=A=アルタイル(ja8514)

高等部1年16組 男 ルインズブレイド
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
撃退士・
黒夜(jb0668)

高等部1年1組 女 ナイトウォーカー
絆紡ぐ召喚騎士・
久瀬 悠人(jb0684)

卒業 男 バハムートテイマー
絶望に舞うは夢の欠片・
地領院 夢(jb0762)

大学部1年281組 女 ナイトウォーカー
慈し見守る白き母・
白蛇(jb0889)

大学部7年6組 女 バハムートテイマー
蒼閃霆公の心を継ぎし者・
メリー(jb3287)

高等部3年26組 女 ディバインナイト
絆は距離を超えて・
シェリア・ロウ・ド・ロンド(jb3671)

大学部2年6組 女 ダアト
撃退士・
黒名 明日診(jb4436)

卒業 女 アストラルヴァンガード
剣想を伝えし者・
戸蔵 悠市 (jb5251)

卒業 男 バハムートテイマー
心重ねて奇蹟を祈る・
グリムロック・ハーヴェイ(jb5532)

大学部7年171組 男 ディバインナイト
撃退士・
雪代 誠二郎(jb5808)

卒業 男 インフィルトレイター