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マスター:稲田和夫
シナリオ形態:イベント
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/05/08


みんなの思い出



オープニング

「お嬢様、本当にあそこに戻られるのですか?」
「あそこはもう危ないですぅ……」
 冥界にある巨大な城の一室にて、数名の侍女が主であるリトルリッチを取り巻いて口々に訴えていた。
「大丈夫……二人を迎えに行くだけだから……」
 彼女の周囲の侍女たちは、いずれも遥か地球にあるリッチの、正確には彼女の配下が群馬県相馬原駐屯地跡に開いたゲートで彼女に仕えていた者たち。
 つまり群馬がアバドンの勢力に併呑された頃から彼女に仕えていた者たちが、そのほとんどはまだ冥魔としても若くそれほど戦闘能力の高くない者たちである。
 リッチの属するバロウワイズ家は、こうしてまだ未熟な者たちを「安全な」戦場に送り込んで訓練させることも多かった。
「……あなたたちは何も後の事は心配しなくて良いの……」
 いつものように、小さく、優しく微笑む主の姿に侍女たちは一斉に安堵し――それ故誰も主の真意を推し量ることが出来なかった。


 ――それが歪な、欺瞞と虚飾に満ちたものであっても。
 少女はこの、魂の収穫場としか看做されていなかった異世界で出会ったあの男の側に居たかった。
 あの戦いで父親を失ってからずっと彼女の心に空いていた穴を、埋めてくれ彼だけが埋めてくれたから。
 だからこそ、彼女は彼の本当の望みを知りながら、最後まで「騙された」ふりをして彼に歪な生命を与えた。
 だが、それは彼の望みではなく――、アバドン討伐の後もずるずると続いて来た偽りの安寧に終わりが訪れようとしていた。
 だから、彼女にはわかっていた。
 彼女に出来ることは、そして彼女がしなくてはいけないのは、それを最後まで聞届けることだけだと。

●2015年4月某日。
 特殊な術式により人々の意識から隠されていた群馬が2013年秋に冥魔の支配から解放されて以後も冥魔の支配領域としてゲートが残っていた相馬原自衛隊駐屯地跡に対して総攻撃の司令が下された。
 ゲート攻略部隊の司令官である陸上自衛隊所属の撃退士、櫟(いちい)葉月一尉は昨年の9月にゲートの攻略を開始して以来、数度に渡る小競り合いを通して情報を収集し、ゲートコアの位置と捕えられている人々の居場所を特定した。
「これで、終わるのだな……」
 総攻撃の直前、榛東村に設営された駐屯地攻略のための仮設拠点にある指揮官用テントの中でハヅキは一人物思いに耽っていた。
 元々、攻略そのものは時間の問題ではあった。既に群馬全体はこのような飛び地を幾つか残して人類に奪還されている。
 ゲートと、市民が捕らわれている収容所の正確な位置が分かれば、最大戦力を動員する理由としては十分だ。
 もはや、悩む時は過ぎていた。
 だが、ハヅキ自身は未だにどこか心の引っ掛かりを残している。
あのヴァニタスが、かつての上官であった犬養萩臣だという事は、去年の秋に起きた人質の救出作戦で確信していた。
 それは構わない。
 既に彼が悪魔に魂を売り渡している以上、彼を討つしかないのは理解していた。
 だが、あの姫塚小春と名乗る少女は何者なのか。
 中尉と、そのかつての部下であったディアボロたちの周囲に出現するあの少女は――。
「中禅寺湖、そして片品村……」
 報告書を握りしめるハヅキの手が震える。
 今までの関連資料を漁れば、思い当たる節は一つしかない。
 レザーレスハウンドとは対照的に、ほとんど人類の前に姿を現さない少女の姿をした悪魔。
 これ見よがしにディアボロのドッグタグを回収していたこと、そして前回の「姫塚小春」が呟いた言葉
「これが、彼の望みだから……だと!?」
 ハヅキは更に拳を強く握りしめ、ギリギリと悔しさに歯を食いしばった。
 そう、ヴァニタスとデビルということを考えればむしろ気付くのが遅すぎたといえる。
「お前が、たぶらかしたのか……っ!」

「一尉、そろそろ……」
 テントに入って来た部下はハヅキの凄まじい表情を見てたじろいだ。
「すまない。……陸尉のことを考えていた」
 それに気付いたハヅキが詫びた直後、テントに桜の花びらが舞い込んで来た。
「……そうか、もう春なのだな」
 テントの外に出たハヅキの眼前に、テントのすぐ側や周囲の野山に咲く桜が飛び込んでくる。
「一尉……」
士官学校で咲いていた桜を思い出す。その桜を共に眺めたあの人を思い出す。
 だが、全ては変わってしまった。
「行こう」
 ハヅキは全てを振り払うと指揮官としての表情に戻り、命令を下した。しかし、敬礼を返して立ち去る部下を見送ると、胸中でこう付け加える。
「許さない……! 陸尉を弄んだ悪魔……必ず落とし前はつけてやる!」


「ウザい……」
 妙に禍々しいデザインの日傘を差した、やや小柄なメイド服の少女が吐き捨てる。
「散っては咲いて、散っては咲いて……まるで人間共みたい……ねえ、あれ全部消して良い?」
 話しかけられた方のメイド、長身で野太刀のようにも見える剣を帯刀している侍女はぴしゃりと言い放った。
「お止めなさい。お嬢様が悲しみます」
「そうだ……お嬢様、リリスお嬢様はまだ帰らないの?」
「ええ、他の侍女を連れて帰るなんて……何をお考えなのか……」
 彼女たちの主であるリトルリッチが侍女のほとんどを連れてゲートから帰還したのは数日前の事だ。
 今現在、ここに残っている戦力はこの二人だけであった。この二人は単純な戦闘能力だけならリッチが引き連れていた侍女たちの中でも最強ではある。
 しかし、この数日の小康状態は来るべき激戦の前触れであり、それはリッチとて理解している筈であった。
「……何を考えているのか解らないのは、あの下種もですが」
 昨年の秋、領域近くの廃校で学園生と戦った後、レザーレスハウンドはリッチと侍女たちに、あるものを調達するよう要求した。
 時間は多少かかっても構わないから、とにかく数を揃えろと。
「あんなガラクタを何故今更用意させたのやら」
 野太刀を持った侍女が頭を捻った時――もう一人が忌々しそうに呟いた。
「来た……」
「人間共ですね?」
「それも、かなり多い……面白い。お嬢様のお手を汚すまでも無い」
「そして、あの下衆の力など必要ない、ですね。私はゲートの守りにつきます。ここの守りは任せましたよ」
 直後、銃声が大気を震わせた。



 「随分と長引いちまったなあ」
 闇の中レザーレスはゆっくりと振り向いた。
 その背後には、狼や犬の頭部を持った獣人型のディアボロたちが整列していた。
「これが、我々が連隊として行う最後の作戦である」
 我ながら、滑稽だった。
 どれだけ、装備や、敬礼などの見かけの動作を似せてみても、もう、自分も彼らも魂はそこにないのに。
 そして、もう一つの魂というべきものさえ、自分は自ら踏みにじって来たのだろう。
 脳裏に浮かぶのは、少女の姿をした悪魔の顔。
 彼女は今回だけは、彼女には何も教えていない。しかし、彼女の最近の動きを見ていると何かを感じているのはよく分かる。
 恐らく、これは報復という名の依存なのだろう。
 自分は、あのどんな仕打ちを受けても縋るような目で自分を見続けて来た少女に、結局は依存しているのに過ぎないのだ。
「男の腐ったような、か」
 ククッと喉を鳴らして、自嘲する。
 なら、せめてそれらしい終わりを迎えよう。
魂の終わりを。
 地上の戦闘の余波が、微かに天井を揺らした時、彼は始めた。
「総員乗車。状況を開始せよ」
 魂の終わりを始めた。


リプレイ本文

 がさがさという物音を聞いた龍崎海(ja0565)は、そちらの方へ素早く魔導書を向けた。
「敵に遠距離攻撃の手段は乏しい筈。なら、これで!」
 人間の背丈ほどもある草を薙いで、岩の弾丸が飛ぶ。しかし、手応えはない。
「くそ、やはり草が……」
 海がそう呟いた時、今度は背後の草むらの中から、こっそり近づいていた蜥蜴男のようなディアボロがいきなり襲い掛かった。
「うわっ!」
 海は攻撃を受けながらも、何とか槍を構えなおすが、初手で受けた傷は大きく防戦を強いられていた。
 いや、防戦を強いられていたのは彼だけではない。
「駄目だ! 敵の位置が掴めない!」
「陣形を崩すな! 自衛隊を内周に!」
 陽動部隊は背の高い草を利用して近寄って来る冷血旅団に苦戦を強いられていた。ちが
「違う! そいつは囮だ!」
 企業撃退士の一人が悲鳴に近い叫びを上げる。班の注意が逸らされている隙に忍び寄っていたディアボロが、無防備になった自衛隊員の背後に迫っていた。
「全く。この期に及んで姑息な連中ですねえ。落ち着いて戦うことも出来ません」
 だが、前方から来る敵に対処していたエイルズレトラ マステリオ(ja2224)は後ろも見ないまま余裕の表情で呟く。
 その時には既に、エイルズレトラの召喚獣「ハート」が敵の顔面に纏わりついていた。
「ふふっ、後ろから来るなんて古い手ですね」
 その隙に、エイルズレトラの放った無数のトランプが鰐男に張り付いてその動きを封じる。直後、他の撃退士の集中攻撃を受けた鰐がゆっくりと崩れ落ちた。
「……とはいえ、このままではマズいですねえ。どうしたものか」
 溜息をつくエイルズレトラ。
「そうねぇ」
 通信で、エイルズレトラに同意を返したのは上空から戦場の状況に注意していた黒百合(ja0422)である。
「これじゃあ、空から見ても全っ然様子が分からないわぁ……どうしたものかしらねぇ?」
その答えを出したのは傍らで戦う鈴代 征治(ja1305)だった。
「纏めて、薙ぎ払います!」
 気合いと共に征治の槍の先端から、収束されたアウルが閃光と化して放たれた。アウルは射線上の冷血旅団を吹き飛ばすと共に、周辺の枯草をも根こそぎ消し飛ばす。
「なるほど……出し惜しみはなし、か。よし!」
 征治に続いて、海がその掌にアウルを集めヴァルキリージャベリンを生み出した。
 そして、投擲されたアウルの槍は身を伏せていた蛙のようなディアボロの頭部を抉り、その周囲の草むらを根こそぎ吹き飛ばしていく。
「広域焦土化術式を保持しているものは、学園生に続け!」
 ハヅキの指示の元、駐屯地周辺でアウルの閃光が次々と励起する。その派手な動きに釣られたのか、枯草が吹っ飛ばされた場所にひょこひょこと跳ねるように数体の蛙男が飛び出してきた。
 蛙男たちは前衛で範囲攻撃をぶっ放していた征治や海、そして撃退士たちに向けてぬめり光る。舌を伸ばして絡め取る。
「く、こんな遠くから!?」
 もがく撃退士たち。そこに氷柱の如く鋭い軌跡を残して飛来した矢が、蛙男の頭部を刺し貫いた。
 どうっと倒れる蛙男。その舌から解放される海。
「……当たった! やっぱり、あたしならクラスが違っても最強ね!」
 ガッツポーズを決める雪室 チルル(ja0220)。しかし、残る蛙男たちはぎろりとそちらを睨むと、手に持った槍を、投げつける。
「このまま、こちらの思惑通りに事が進めば良いのですが」
 一抹の不安を口にしつつも、とにかく敵を倒すべく雫(ja1894)も前に出た。
「今は、目の前の敵を討つのみ……道を開けなさい」
 雫の手が、大剣の柄に掛かった、と思った時には既に一匹の蛙が頭部を叩き潰されていた。
 何が起こったかも解らぬ二匹目の蛙の胴体が袈裟懸けに切断され、ようやく反応しようとした三匹目は腰の所で胴を横一線に切断された。
 その切断された胴体を目で追っていた撃退士たちの眼前に雑草の間からメイドの恰好をした悪魔、シグレ・ステュクスが現れた。
「……役立たず」
 悪魔は舌打ちすると、落下してきた上半身を日傘で無造作で弾き飛ばした。


「区切りを付けるんだ、群馬の戦いに!」
 攻撃の口火を切ったのは山里赤薔薇(jb4090)だ。
 山里の放ったアウルの流星がシグレ、そして彼女に周囲に忽然と現れて浮遊する三体のボロ布を被ったてるてる坊主のようなディアボロを纏めて包み込む。
「ぬるい……」
 しかし、その炎はシグレの傘にあっさりと阻まれる。更にシグレが命じると、てるてる坊主のくちがばりばりと音を立てて破れ、中から鋭い牙を生やした悍ましい口が現れる。そして、ディアボロはそのまま撃退士たちに襲い掛かった。
「……!」
 眼前に迫るディアボロの牙に、咄嗟に反応出来ず山里が固まる。
「山里さんはボクが守る!」
 その山里を咄嗟に桐ケ作真亜子(jb7709)が庇う。山里を抱いたまま地面に倒れた真亜子の肩をディアボロの牙が切り裂いた。
「マアちゃん!」
「……そのまま死んじゃえ」
 冷たいシグレの声。残り二体のデイァボロが口を開く。
「そう急ぐなよ。俺が優しく相手をしてやるから、さ」
 影野 恭弥(ja0018)はそう言うと、山里たちに気を取られているシグレに真横から酸のようなアウルを帯びた弾丸を撃ち込んだ。
「……なに、これ?」
 嘲笑うように、微かに口元を歪めるシグレ。アシッドショットは確かにシグレの日傘に命中し、物質を腐食させるような煙を上げた。
 だが、傘の表面には傷一つ、ついていない。
「ちっ……!」
 舌打ちする恭弥。そこに三体のてるてる坊主が襲い掛かる。
「が……ぐっ……」
 呻く恭弥。しかし、彼の足元に赤い魔法陣が発生し、それが黒い犬のようなアウルを放出する。
「一旦、仕切り直させてもらうぜ……」
 恭弥の放った黒い魔犬と白いてるてる坊主がお互いを噛み合ってもつれ合う。その最中、ディアボロの表面を覆うボロ布が剥がされ腐敗した肉塊とゾンビのような顔が次第に顕になる。
「先ずは、あの趣味の悪いディアボロを止めるのが先決ね!」
 チルルが呪縛陣を発動させ、ディアボロを抑え込む。二体が呪縛陣に絡め取られるが、残る一体が更なる攻撃を加えんと牙を剥く。
「これ以上、お前たちの好きにはさせない……!」
 しかし、その一体がシグレと同一直線上に並んだ瞬間を狙って雫が剣に集中させたアウルを解放した。凄まじいエネルギーがディアボロを飲み込み、更にシグレにも直撃する。
「……効かないのに」
 しかし、シグレの傘がまたアウルを受け止め周囲に散らす。
「だけど、もうディアボロはいない筈よねぇ? きゃはァ……!」
 その声は頭上から響いて来た。上空から、槍を構えた黒百合が一直線に降下してきたのだ。
「……浅はか」
 嘲笑い、手をかざすシグレ。その手から黒い魔力がてるてる坊主に流れ込んだかと思うと、二体は瞬く間に呪縛から解き放たれ、上空の黒百合に向かって突進する。
「あらァ……?」
 一瞬驚く黒百合だが、すぐさま獰猛な笑みを浮かべると目標を変更。急加速してそのままディアボロの方をロンゴミニアトで突き刺し、大地に叩きつけた。
「これで、二匹目ェ……!」
 動かなくなったディアボロから槍を引き抜いた黒百合が笑う。
「だから……浅はか」
「そんな……!?」
 山里が目を見開く。
 先ほどと同じようにシグレが力を注いだ瞬間、まず雫の封砲が直撃した筈のディアボロがもぞもぞと動いて、再びその悍ましい相貌を撃退士たちに向ける。
 そればかりか、黒百合の攻撃を受けた方も同じように動き始めた。
「……愚か。下品。無駄。だから人間は嫌い……あのクソ犬も……揃いも揃ってお嬢様の寝所に汚い土足で踏み込んで……」
 恐らく圧倒的な耐久力か、シグレの魔力による回復なのだろう。このままでいけば、戦闘が長引くことは避けられないと撃退士たちは感じた。
 無論、陽動作戦である以上ある程度長引くことは望ましい。しかし、今回の作戦では敵の主戦力の動向と所在が不明、という不確定要素がある。
 味方の被害を抑えるためにも、司令塔を潰して、敵が駐屯地内に戻る事を防ぐためにも
シグレとの決着自体はつけなければなかった。
「それがどうした! 群馬に土足で踏み込んだのはあんたたちだっ!」
 真っ先に動いたのは真亜子だった。最早何も考えていないかのように、我武者羅にシグレへと切りかる。
「……煩い」
 シグレの傘は、そんな攻撃など難なく受け止める。
「このこのっ!」
 だがそれでも、真亜子は攻撃を止めない。
「……本当に、五月蠅い」
 恐らく、シグレは三体のてるてる坊主を他の撃退士に向かわせる心算だったのだろう。だが、余りの煩わしさに、まず真亜子を確実に始末する気になったのか、三体を全て真亜子に襲い掛からせた。
「マアちゃん!」
 悲痛な叫びを上げる山里の前で、全身を噛まれた真亜子が血をまき散らす。
「がっ……負けるもんかっ……ボクが、群馬を……その前に山里さんを守らないとっ……!」
「マアちゃんを放してっ!」
 怒りを顕にした山里がシグレに至近距離から火球を撃ち込む。
 だが、シグレの日傘はそれすらも受け止め霧散させる。だが。
「がら空きだな」
 突如、鳴り響く銃声。そして、シグレの傘で防御されていない部分に、輝く弾丸が命中した。
「ぐぎゃああああああ!」
 思わず耳を塞ぎたくなるような凄まじい悲鳴を上げながら、シグレは体をくの字に折り曲げて苦しんだ。
「お前……何でぇ……!」
シグレの視線の先で、白銀の退魔弾を放った恭弥がゆっくりとその姿を見せる。
「気配を消して、攻撃のチャンスを伺っていたんだよ。調子に乗ってディアボロをその子に集中させたのが仇になったな」
「マアちゃん……やったよ……頑張ったね……!」
 息も絶え絶えの真亜子を必死に解放する山里。
「えへへ……ボク、やったよ山里さん」
「痛い、痛いぃ……たす、助けて……!」
 ゲホゲホと吐血するシグレ。どうやら、自身の防御力はそれほどでもないらしく先の一撃が致命傷となったようであった。
「勝手な事を……散々群馬の人々を虐げておいて……っ」
「あらぁ……今更命乞いぃ? ……情けねぇな」
 冷たい視線の雫と黒百合が武器を構えてゆっくりと迫る。切り札の日傘は健在ではあるが、最早シグレに二人の攻撃を捌く余力は残っていないであろう。
「助けて……お嬢様、お嬢様ぁああ!」
 突如、三体のてるてる坊主が急にぶくぶくと膨れ上がったかと思うと、破裂して周囲に黒い霧のようなものを撒き散らす。
「これは、目潰しか……!」
ようやく追いついて来た海が呻く。その隙にシグレは全力で逃げ出した。
「全く、往生際の悪い事ですね。……もしもし、こちら陽動部隊。たった今、デビルが無様に逃げ出しました。ゲートか収容所に行く可能性が高いから注意してください」
 一方、エイルズレトラは霧が晴れると冷静に通信機で状況を仲間に伝えるのだった。


 そこは、何とも奇妙な装飾のゲート内部であった。色彩を変える宇宙のような空間には階段や石畳に加え、巨大な石のモニュメントが無数に立ち並んでいる。
 地球のそれとは似ても似つかない様で、どこか面影のあるそれは一種の墓石を模したものらしかった。
 そう、このゲートは巨大な墓地のようにもとれる空間となっていた。その空間の彼方には、一際目立つ墓石が屹立し、どうやらそれがコアを納めたものらしい。
 何故なら、その墓石に通じる通路の入り口には鞘に納めた野太刀に良く似た刀を構えたデビルエリディア・アケロンが立ちはだかっている。
 そして、そのコアと撃退士たちの間の空間には、無数の亡霊やアンデッドを模したかのようなディアボロが蠢いていた。
 一見、困難にもみえる状況しかし、その最中にあってアスハ・A・R(ja8432)とマキナ・ベルヴェルク(ja0067)は微塵も戦意を失っていなかった。
「大人しく退いて貰えると助かりますが――まぁ、無理でしょうね」
 肩を竦めて見せるマキナ。それに対し、アスハは不敵に笑って見せる。
「――だろうな。さあ、終焉を撃ち込みに行こうか、偽神」
 その直後、アスハは前に出る。亡霊共が放つ怨霊のようなアウルの弾を受けつつもアスハはアウルを解放し一気に飛翔した。
「何を――」
 目を見開くエリディア。アスハはそちらに手をかざす。その全身がどこか禍々しさを感じさせる蒼いアウルに覆われていく。
「挨拶代りだ、受け取れ」
 直後、アスハの掌から蒼く輝く微細な魔法弾が数多放たれ、エリディアを中心とした広範囲に降り注ぐ。
「こ、れは……」
 ゲート内部の減衰効果を受けて、なお圧倒的なアウルにエリディアは驚愕する。高位の術者にさえ、一度の戦闘でただ一度しか許されぬ圧倒的な破壊の術。
 それはまるで、全てを飲み込む光の雨の如く冥魔を飲み込んで行く。エリディアの周囲に控えていたディアボロの多くはこれでほとんどが倒された。
 敵の司令塔が怯んだ隙に、他の撃退士たちも一斉に動き始める。
「悪いな、付き合わせちゃって」
 Zenobia Ackerson(jb6752)がそう頭をかくと、咲村 氷雅(jb0731)は薄く笑った。
「気にするな。久しぶりのゲート戦だ、折角だし楽しんでいくさ」
 直後、咲村は一直線に敵の群れの中へ飛び込んだ。亡霊が群がる。しかし、咲村の周囲から発生した氷の蔦が、次々と亡霊に絡みついていく。
 その激痛にディアボロ共は悍ましい悲鳴を上げる。
「……痛いか? なら眠れ。深く、永遠に」
 咲村の攻撃で亡霊師団の一部が昏倒する、だが、数が多いせいかなおも複数の亡霊が眠らず咲村を狙う。
「おっと、悪いけどそうはいかないよ」
 と、その中の一体の足元に光で構成された時計のようなものが現れ、ディアボロはぴたりと動きを止める。
「もうすぐ、この群馬の戦いも決着か……」
 青柳 翼(ja4246)も自身の弓で咲村を襲う亡霊を射抜く。
「そうですね。そろそろお帰り願いましょう」
 黒井 明斗(jb0525)も、青柳に同意すると、同様に矢を放つ。二人の矢を同時に受けた亡霊は、もがくようにしてのたうち、やがて動かなくなった。
 あらかた、咲村の周囲の敵が片付いた事を確認した明斗は紅香 忍(jb7811)に叫ぶ。
「忍さん!」
 「コア破壊……邪魔するのを殺せばいい? ……了解……」
 忍は跳躍すると、手にアウルから無数の黒い手裏剣を生み出し、たった今咲村たちが倒した群れの、更に奥の群れに向かってそれを連続で投げつけた。
 手裏剣の突き刺さった亡霊が絶叫する。
 しかし、群の中でも一際大型の亡霊が怒りの咆哮をあげ、魔力の衝撃波を撃退士たちにお見舞いした。
「こいつ……」
 吹き飛ばされた忍が苛立った声を上げた。
「――邪魔です」
 だが、そこにマキナが飛び出した。
 集中する魔法弾にわずかに顔を顰めつつも、大型の亡霊の前に辿り着いたマキナは正に鎧袖一触。その拳で只の一撃のもとに亡霊の胴体を撃ち抜いた。
「このままでは、押し切られるということでしょうか」
 エリディアの判断は迅速だった。
 野太刀の柄に手をかけたまま、手近なマキナの近くに跳ぶと、強烈な居合で周囲の空間を一閃。一薙ぎにした。
「――!」
 咄嗟にガードしたマキナはその威力に、僅かに目を丸くする。
 そして、エリディアの狙いはマキナだけでは無かった。
「汚い鼠がこそこそと、何をしておいでですか?」
「くそ……流石にそう甘くはないか……!」
 エリディアの狙いは、気配を消してコアへの接近を試みていたミハイル・エッカート(jb0544)だった。
 エッカートは咄嗟にシールドで攻撃を受けていたが。敵の斬撃は凄まじく彼の身体からは血が流れていた。
「ミハイルさん!」
 青柳が矢を放つ。狙いはエリディアの体では無く、その影だ。
「小賢しい真似を」
 エリディアは無造作にその矢を刀で弾く。しかし、それは彼女の唯一にして最大の武器を一時的に手放してしまうことになった。
「やはり、居合か」
 エリディアが愛刀を振り抜いた瞬間を狙ってアスハが瞬時に彼女の背後に移動していた。
「な……」
「なら、技の起点となるこの鞘を破壊すれば……どうなる?」
 アスハは愛用のパイルバンカーをエリディアの鞘に近付け、杭を打ち込んだ。
「くぅっ……!」
 鞘を通して伝わる衝撃にエリディアがうめく。
 だが、彼女もすかさず踏み止まると手首を返して刀を一閃。アスハの胸を切り裂いた。
「後は任せたぞ、偽神」
 しかし、血を吹きながらもアスハは不敵に笑う。
「しくじった……!? リリス様の筆頭家令たるこの私が……?」
 既に、マキナがエリディアの懐に入り込んでいた。
「その鞘、中々堅牢な様子。ならば、この諧謔――耐えて見せますか」
 マキナの拳に晒されたエリディアには、最早先程の一撃でヒビの入った鞘を盾にする事しか出来ず――当然ながらマキナの拳は容赦なくエリディアの鞘を砕き、そのまま彼女の腹部に深々と突き刺さった。


「あ……がぁっ……」
 何とかマキナと離れたものの、エリディアは既に限界であった。口からぼたぼたと血を垂らしつつ、必死になって刀で体を支える彼女の眼前で、ミハイルの放ったショットガンが、せめてコアを守ろうと群がった亡霊毎、コアを保護する墓石を削っていた。
「お止めなさい! それを壊したら……!」
「……悪いが、そちらにどんな事情あろうと俺には関係ない。コアを破壊するのが仕事だ」
 血塗れの手を伸ばすエリディアの眼前で、ミハイルは容赦なく引き金を引く。
 いまや墓石の下に隠れたコアそのものが顕わになりつつあった。
「やめなさい……!」
 最早、ゲート内部の亡霊たちは撃退士によって順当に掃討されつつあった。残っている亡霊をかき集めても、コアを守るには不足だろう。
 そして、居合のトリガーたる鞘を破壊され、深手を受けた彼女にもそれはもはや不可能であった。
 再び銃声が響く。今度はコアそのものに銃弾が浴びせられたのだ。
「止めて……それを壊したら、お嬢様が……!」
 エリディアが悲鳴のような声を上げた時だった。
「ああああああああ!」
 最早、悲鳴とも思えぬ獣のような呻り声を上げて飛び込んで来たシグレが日傘を構えてミハイルとコアの間に割って入った。直後、発射された弾丸を傘が相殺する。しかし、それで最早限界だったのか、そのまま膝をついてがくりと崩れ落ちた。
「え……エリディア……お嬢様……お嬢様はどこ……あいつら、あいつらを……」
「シグレ……貴女まで……何故、このような……お嬢様!」
 最早、冷静さを失ったエリディアが仲間を抱えて絶叫する。
「……」
 エッカートは無言でサングラスを押し上げると、コアを見る、今や、仲間の攻撃にも晒されたコアは破壊まであと僅かだった。
 そしてエッカートが弾丸を発射した瞬間であった。
 ゲートから湧き出した影がアウルの弾丸を飲み込んだのは。
「これは!?」
 驚愕するエッカート。
「ああ……」
「お嬢様が……」
 一方、二人の侍女は感極まった声を上げる。
 撃退士たちの眼には、最初ゲートの中から現れたのは不定形の黒い混沌の塊のように見えた。
「こいつは……一体?」
 ショットガンを連射するエッカート。だが、手応えは無い。やがて、その脈打つ闇がどうやら翼らしい形をとり、ゆっくりと左右に開き始める。
「お嬢様……良かった……え?」
 涙ぐんでいたエリディアの眉が顰められる。何故なら、翼の中から現れたのは間違いなく彼女の主であったが、その姿にわずかな違和感があったのだ。
 それは、冥魔の用いる特殊な変装術であった。
「小春、いや……リトルリッチと呼んだほうがいいのかな?」
 まず、そう言ったのはゼノヴィアだった。
「姫塚、か。久しぶりだな」
 続いて咲村も軽く挨拶する。
人間が、自分を「姫塚小春」と認識したことを見て取ったリトルリッチは変装を解除し、改めてリトルリッチとしての姿を現す。
「久しぶりだね……何だかずっと会えなくて……」
 続いて青柳が挨拶しようとする。
「口を慎みなさい……下郎!」
 そう一括したのは再び立ち上がったエリディアだった。どうやら気力が戻ったらしい。
「……ざまぁ見ろ。……戻った。お嬢様が戻られた! お前ら死ね、みんな、死ね! あは、あはははははは!」
 シグレまでもがゲラゲラと狂ったように笑う。
そして、リッチがゆっくりと前に出た。
「出来れば戦いたくないけど……が殺る気なら付き合うよ殺し愛は趣味じゃないんだけどね」
 ゼノヴィアが苦笑しつつ前に出る
「殺し合い……? お嬢様を前に何と傲慢な。さあ、分を弁えない家畜共を皆殺しに!」
意気揚々と刀で撃退士を指すエリディア。
 リッチは前に踏み出すと、両脇を固める侍女にゆっくりと語りかけた。
「……エリディア、シグレ。今までありがとう……そして、ごめんなさい……」
「……え?」
「……お嬢様?」
 素っ頓狂な声を上げる二人の侍女、直後リッチから湧き出した影が、ゆっくりと、優しく包み込むように二人の侍女を包み込んだ。
「お嬢様!? 何をなさいます……ああ、ああっ!」
「何で、お嬢様、……何でぇ!」
 二人のメイドは突然の事態に慌てて暴れるが、もはや振り解くことは叶わない。
「後の事は心配しなくて良い……何もかも、済ませてある。だから、あの子たちのことを、お願い……」
 そして、リッチは二人を魔界への転移ゲートへと放り込んだ。
 二人は悲鳴を上げる暇も無く、冥魔の世界へと送り返されていった。
「……どういうつもりだ」
 ようやく、事態を把握したミハイルがリッチに銃口を向ける。
「……」
 その銃口をじっと見つめるリッチ。しかし、次の瞬間にはリッチから伸びた影が細い触手となり、銃を握ったミハイルの腕に絡みつく。
「なっ……!」
 ミハイルは必死に抗うが、細い触手の力は予想外に強くミハイルは強引に銃口を逸らされてしまう。
 その銃口が向けられた先は――。
「撃って……。アレは、もうここには必要ないから……」
「何だと……!」
 相手の真意を測りかね、躊躇するミハイル。しかし、触手が今度は引き金に掛った指にまで這い寄るのを感じ、咄嗟に引き金を引く。
 リッチの魔力を上乗せされたミハイルの弾丸は、既に損傷を受けていたゲートコアを一撃で粉砕した。
「小春……どうして?」
 ゼノヴィアの問いに、リッチは答えない。
 一瞬の静寂の後、コアを失ったゲートは緩やかに崩壊を始める。
「……ここから出ないと……このままここに居たら……帰れなくなるから……」
 リッチの言い分は正しい。撃退士たちは急いでゲートから脱出する。
 こうして駐屯地の地下に戻った撃退士たちをまっていたのは――。
「この揺れは、一体!?」
 明斗が叫ぶ。
 続いて、ミハイルの光信機から緊急事態の発生を告げる声が響く。
「始まった……レザーレスハウンド……」
 リッチは悲しそうな表情で自らのヴァニタスの名を呼んだ。


 地上陽動部隊が戦闘を開始したころ、駐屯地内部にある収容所の周辺には川澄文歌(jb7507)の歌声が響いていた。
「マホウ☆ノコトバを唱えよう……きっと大丈夫 一言言えたらまた言えるよ 貴方に伝えたい想いを胸に♪」
「いい感じに漲って来たぜ。さあ、神は神速を貴ぶ、だ」
 歌声を通して流れ込む文歌のアウルが自身の速度を高めた事を感じたラファル A ユーティライネン(jb4620)はそう周囲を激励すると、収容所を守るためにわらわらと湧き出して来た亡霊師団のど真ん中に、ラファルの放った彗星が降り注いだ。
「人質の救出……絶対成功させないと」
 続いてRehni Nam(ja5283)もダメ押しとばかり、コメットを放つ。
 だが、亡霊共も遠距離からの魔法弾で反撃しつつ、即座に防衛線に空いた穴を後続が埋める。そう簡単には突破させぬ心づもりのようであった。
「……隙が無いなら突き崩させてもらう!」
 それまで、攻撃の機会を伺って身を潜めていた水無瀬 快晴(jb0745)は味方に向かって魔法弾を連射する亡霊の背後に肉薄すると、一刀でそれを切り伏せた。
 他のディアボロが慌てて快晴の方に顔を向けるが、既に快晴は別のディアボロの頭上に刃を振り降ろしていた。
 こうして、あたかも踊る様な動きで次から次へと敵を切り倒す快晴の姿は、まるで文歌の歌に合わせて踊っているようにも見える。
「……止めだ!」
 最後に、何とか立ち上がろうともがいていたディアボロの背中を改正が突き刺すと、二人の攻撃で敵が動揺した今がチャンスと見た白蛇(jb0889)は自身の召喚したフェンリルの背に跨った。
「ゆけ、雪禍!」
 雪禍は呻り声を上げると、凄まじい速度でディアボロを吹き飛ばしながら、収容所への道を突き進んで行く。
「わっはっはっ! 道を開けよ! 白蛇様のお通りじゃ!」
 腕を組んで大笑いする白蛇。
 だが、全ての亡霊が吹っ飛ばされたわけではなく、浮遊していたものが周囲からから雪禍に追い縋る。
「邪魔だ亡者共、黙ってそこを退いてもらおうか」
 だが、文 銀海(jb0005)もそそうはさせまいと彗星を敵の一団に放ち、白蛇を援護した。
「さあ、今じゃ!」
 遂に、無骨な門で守られた収容所の前に辿り着いた白蛇が叫ぶ。
「よし、行くぞ! 市民を保護する!」
 これを好機と見た救出部隊の撃退士たちも、自衛隊を伴って収容所を目指し始める。
 しかし、異変は部隊が冥界の素材で作られた異様に固い門の破壊に手間取っている隙に起きた。
「うわあああ!」
 後方にいた撃退士が悲鳴を上げる。突如、味方の背後に大量の亡霊が出現したのだ。これらの亡霊は、その姿に相応しく気配を消す能力があったらしい。
「きゃあっ」
 同様に、文歌も悲鳴を上げた。彼女は味方の速攻を支援した後、自らは気配を隠して収容所への突入口を探っていたが、そこを警戒していた亡霊に発見されてしまったのである。
 咄嗟の事で反応し切れない文歌を鋭い爪が襲う。
「文歌っ!」
 間一髪、間に合った快晴が横合いから鋭い一撃を叩き込む。
「カイっ!」
 嬉しそうに叫ぶ文歌。
「二人とも、大丈夫か!?」
 続いて飛び込んで来た銀海が怯んだ亡霊の胴体に、限界まで集中させたアウルを撃ち込んだ。苦手とする天界の力を注ぎこまれた亡霊は叫び声を上げて絶命する。
「ええい、小賢しいマネを!」
 一方の白蛇も、突破直後に大量の敵に囲まれ苦戦していた。既に雪禍も満身創痍である。だが、召喚獣を入れ替えようにも敵の攻撃が激しくその暇がない。
 白蛇が歯噛みした瞬間、その耳にレフニーの声が届いた。
「道を開けます。避けて!」
 レフニーから放たれたのは、アウルで作られた七尺もの長さの針だった。
 一直線に飛ぶそれは、青い薔薇の花弁を渦巻かせながら進路上の亡霊を貫いていく。
「かたじけない! こっちじゃ、我に掴まれ!」
 この間に、召喚獣をスレイプニル「翼」に入れ替えた白蛇が叫ぶ。その声に反応した文歌、快晴、銀海の三人はそれぞれ、翼に騎乗した白蛇の両脇と背中に支えられ何とか味方の方へ合流した。
 一方、混乱した味方の中で誰よりも早く敵の狙いに気付いたのは只野黒子(ja0049)であった。
「敵は壁を使っての包囲を狙っています。味方は横一列になって対抗を。自衛隊をなるべく内側に」
 この声で体勢を立て直した学園生と撃退士たちは、必死に敵の攻勢を押し返す。幸い、味方の後の収容所の内部から敵が現れることは無く、両軍は一進一退の攻防を繰り返す。
 だが、このままでは埒が明かない。
「クソ悪魔共……人の故郷で好き勝手しやがって」
 この状況の中、ラファルは獰猛な笑みを浮かべ、愛用のライフルを構えた。その名前が示す通り、彼女は他国の出身ではあったが、育ったのはこの地方らしい。
 あるいは、この地方が冥魔に襲われて脱出する際に失われ、機械へと置き換えられた身体の疼きが教えたのだろうか、彼女はこの状況を打破する最適解を導き出そうとしていた。
 スコープがスライドし、獲物を探す。
 いた。
 他のディアボロがひたすらに数に任せて突撃する中、一体だけ他よりもやや小さなそのディアボロだけが、敵の群れのただ中で、此方に攻撃していなかった。
 ラファルは躊躇なく引き金を引く。
 スコープの中で、ディアボロの上半身が爆ぜる。
 直後、それまで曲りなりにも統制の取れていた群れに、明らかな混乱が生じ始めた。
「頭は潰したぞ! お前ら、グズグズすんな!」
 瞬く間に、味方の魔法と銃の一斉射撃によって亡霊たちが押され始める。
「もう一息です。アウルをコメットに」
 唐突に黒子が言う。恐らく全員のコメットで敵を掃討しようと言いたかった筈が、咄嗟のはずみでこのような言い方になってしまっただけで決して他意はあるまい。
「いいですとも!」
 よって、レフニー咄嗟にこう応じてしまったことにも、深い意味はないのだ。
 とにかく黒子とレフニーのダブル……いや、銀海の気圧も含めたトリプルコメットが統制を失った亡霊を蹂躙し、趨勢は完全に決した。
 学園生たちは、脱出ルートの確保に成功したのである。
 そして、駐屯地一帯を包んでいた重苦しい空気が砕けるように失われた事で、コアの破壊を撃退士たちが知ったのもこの時であり、この瞬間学園生も撃退士部隊も救出の成功を確信した。
 だが、直後に地鳴りと共に収容所の建物が崩して出現した巨大な迷彩模様のディアボロを見た人間たちは、息を飲んだ。
「デビル……キャリアー……?!」
 それは、かつて東北地方を襲ったザハーク・オルスの生み出した人間の捕獲と運搬に特化したディアボロの亜種であった。
 その体表は、軍隊が使う迷彩模様の様な皮膚に覆われている。
 蠢く触手に絡め取られているのは、勿論それまで結界内に捕えられていた市民たち、そしてこちらに向けて銃を構えた獣人型のディアボロたち。
 この光景に呆然とする人間たちの前で、最初に出現したデビルキャリアー(以下DCと表記)は、見せつけるように気絶した人々を口の中に放り込むと、恐るべき速度で走り始めた。 
 

「状況を報告せよ!」
 光信機にハヅキが怒鳴る。
 駐屯地は大混乱に陥っていた。
 収容所地下から出現したDCの群れは、四方八方に向かって逃げ出していた。
 人間たちは、人質がDCの体内にいるせいで思うように攻撃出来ず苦戦を強いられていた。
「一体、どうすればっ……」
 唇を噛むハヅキ。
「一尉! デビルキャリアーが接近して来ます!」
「何だと!?」
 部下の言う通り、獣人を触手で固定して砲撃手とした一体のDCが疾走して来ていた。
「伏せろ!」
 咄嗟に部下を庇おうとするハヅキを容赦なく軍人犬の銃口が狙う。
――間に合わない。
葉月がそう感じた瞬間、彼女の背後から黒子の猛射が軍人犬とDCを襲う。そして、敵が怯んだ隙にチルルの発動させた呪縛陣が辛うじてDCの脚を止めた。
「折角ゲートを破壊したのに、人質だけ持ち逃げなんてさせないんだから!」
「二人とも、すまない……撃て! 胴体には当てるな!」
 体勢を立て直した葉月と部下の一斉射撃で、軍人犬は絶命した。
 だが、人質を気遣ったせいでDCは逃走してしまう。
「くそっ!」
 悔しそうに叫ぶ葉月。
「今は、部隊の立て直しと、既に救出した市民の安全に注力すべきです……助けられる人を助けましょう」
 黒子のいう事は正しかった。ここまでの戦闘で部隊が疲弊している以上、今は被害を減らす事を最優先とすべきだ。
 葉月は無言で頭を下げると、冷静な口調で命令を伝え始めた。


「私たちは英雄になりたいんじゃない! 目の前の人を助けたい、それだけなんですっ」
 絶対に、逃がす訳にはいかない。
 その決意と共に、文歌は前方のDCの脚を狙ってスタンエッジを放った。雷の刃は、正に地上に出ようとしていたDCに着弾、その足の動きを一瞬だが止めることに成功する。
「やった……!」
 どさりと崩れ落ちるDC。
 そこに、スーツをプラチナへと変化させた千葉 真一(ja0070)が肉薄する。
「行かせるか! 囚われの人々を一人でも多く、いや全員救うんだ!」
 咄嗟に蛇腹剣のワイヤーを伸ばす真一。
 だが、距離が空き過ぎていたせいかDCは再び脚を起こして疾走を再開する。
 この僅かなタイミングのずれで真一の攻撃は空しく空を切った――かに見えた。
「囚われの人々を一人でも多く、いや全員救うんだ!」
 真一は、諦めず、尚もワイヤーを繰り、遂にDCの脚を絡め取った。しかし、DCに掴まっていた軍人犬は怒りの呻り声を上げ、銃を乱射する。元々、軍人乾自体が強力なディアボロであることに加え、今の撃退士たちは疲弊している。
「く……そ……」
 千葉は必死にワイヤーを手繰るが、弾丸に全身を貫かれ力が緩んでいく。
「まさか、こんな奥の手を隠していたとはな」
 その時、地上に出たDCを挟み込むようにして海が現れた。
「あの傷……不味い」
「これは……!?」
 真一は、海が現れた瞬間再び力が戻って来るのを感じた。海の術式が今一度彼に力を与えていたのだ。
「うおおおおおお! 天・拳・絶・闘、ゴウライガぁっ!」
 最後の力を振り絞り、真一は蛇腹剣を引き寄せる。遂にその脚を切断され、DCが凄まじい悲鳴を上げた。
 DCが動きを封じられたことを理解した軍人犬は咄嗟にナイフを引き抜いて、真一に襲い掛かろうとする。
「これで何体目か、もう解らなくなっちゃったけど……」
 その横から、両手にそれぞれ闇と光のオーラを宿らせた征治が突っ込んで来た。
「これでも食らえ!」
 征治は敵の突き出したナイフに貫かれながらも、混沌の一撃を相手の身体に叩き込んだ。
 混沌が内包する光の力に身を焼かれたディアボロが凄まじい咆哮と共に、絶命する。
「後は、止めを刺すだけだな」
 怪我人を治療しながら、脚を失って空しくもがくDCを見て海は呟く。
 こうして、このDCに捕らわれていた人々は無事救出された。
 しかし、全てのDCを倒して、飲み込まれた人々を全員救出する余力は海たち陽動班にも、真一たち救出班にも残ってはいなかったのである。


 だが、この状況下でも先のメンバーがそうであったように、他の学園生たちも諦めてはいなかった。
「あいつは……どこに……!」
 シグレとの戦いで重体となった真亜子を自衛隊の衛生兵らに預けた山里は混乱の中、必死に敵の姿を求めていた。
「レザーレス……!」
 この混乱の張本人であろうヴァニタスを思い出して歯噛みする山里。その彼女の前方に、土煙を上げて疾走するDCが迫って来た。
 既に、葉月の指示は山里にも届いている。本来なら撤退すべきなのだろう。だが、あるいは本能なのか山里はそこに敵がいると接敵前に感じたかのようにそれを待ち受けた。
「おやおやぁ? どこかで見たJCがいるぜぇ? ク、相変わらず詰まんねえ体してやがる!」
 下劣な声が響く。丁度ジープくらいの大きさのDCに悠々と腰かけるレザーレスハウンドの姿がそこにあった。
「逃がさない……! 今度こそ、根は絶つ、必ず!」
 レザーレスと、DCの触手に運ばれている部下を纏めて攻撃するべくファイヤーブレイクの発射体勢に入る山里。
「ク、遅いんだよ」
 しかし、一瞬早くレザーレスらの火器が山里を狙う。既に、先の戦いで傷を受けている山里にとっては致命傷になりかねない。
「つまらないJCの体でごめんね。……でも、あの時の私じゃないよ!」
 山里は咄嗟にシールドで弾丸を受けるが、その威力は凄まじい。
「あっ……くっ……」
 必死に攻撃に耐える山里だが、じわじわと生命を削られていく。
「なるほど? 喘ぎ声は色っぽくなったってことかぁ?」
 ゲラゲラと笑い火線を集中させようとするレザーレス。
「全く、どこまでも気持ちの悪い男ですねぇ。山里さん、お手柄です。いい加減ここで退場していただくとしましょう……さあ、ショウ・タイム!」
 スポットライトに、比喩ではなくアウルで作り出したマジもんのスポットライトの光に照らされて。エイルズレトラが宙を舞う。
「何だァ? 部隊の慰問にマジシャンを依頼した覚えはないぜぇ?」
 むしろ、白けた表情でエイルズレトラを横目に見るだけのレザーレスハウンド。しかし、ディアボロたちの方は一斉にそちらに気を取られ、銃口をそちらに向ける。
 だが、エイルズレトラに銃弾が命中したと思った瞬間、その体はトランプと化して崩れ去る。
 その軌跡にトランプを舞わせながらひらりと着地したエイルズレトラは気取った仕草で一礼した。
「楽しんでいただけましたか?」
「ちぃ……そういやここ暫くお楽しみが少なかったからなぁ!」
 苦笑したレザーレスは、ようやくDCの上で立ち上がる。
「……どちらを狙うの?」
「まず、デビルキャリアーを仕留めましょう。あれにも人が捕えられているかもしれません。その後、取り巻を片づけなければ」
「……了解」
 それは、ゲート内から脱出して地上に戻っていた明斗と忍である。
「ああ? 何だお前ら……くノ一か?」
 忍はレザーレスに蔑むような視線を向けると、無数の黒い手裏剣をDCとディアボロたちに向って投げ放つ。
 無数の手裏剣が突き刺さったDCと軍人犬が悲鳴を上げる。
「今だ!」
 忍が叫ぶ。
「この期に及んで……卑怯な真似を!」
 怒りと共に突き出した明斗の槍が、DCの脚を切り飛ばした。
「まだです! ……これが、絆の力です!」
 明斗は槍を横薙ぎに振るい、再度DCの脚を纏めて切断する。
「やりやがったなぁ!」
 車両を破壊されたレザーレス歯を剥き出して笑いながらは手榴弾を放り投げた、通常のそれとは違い転がって目標を追跡するそれは、忍の方へと不自然な動きで転がって行く。
「そんなもの……なっ!?」
 咄嗟に空蝉で回避を試みた忍だったが、爆風までは避けきれず吹き飛ばされる。
「仕方ねえ、もう少し遊んでやるか……お?」
 DCから降りたレザーレスは愛用の鉄球を構える。しかし、レザーレスの注意が忍に向けられたその隙に、レザーレスの背後にいつのまにか咲村が接近していた。
「ようやく会えたな、軍犬」
「……てめェは……」
 レザーレスが何か言うより早く、咲村は至近距離で弾丸を発射した。
「ぐはっ……」
 流石によろめくレザーレス。
「言ったはずだよ……あの時の私じゃないって!」
 そこに肉薄する、両手に炎を宿した山里。その炎が一つの火球に収縮し、爆発する。
「こいつはキくぜええええええ!」
 衝撃で吹き飛ばされるレザーレス。だが、その体を真横から伸びて来た、別の無傷のDCの触手が捕える。
「しまった……!」
 明斗が叫ぶ、この時には既に軍人犬もキャリアーの触手に掴まってロケットランチャーを発射。
 撃退士たちを牽制する様にロケット弾が炸裂し、撃退士たちはそれ以上の追跡を断念するしかなかった。
「陸尉……!」
 それでも、このタイミングでこの戦場に到着した青柳は、眼前を横切るレザーレスに叫ばずにはいられなかった。
「陸尉、貴方は撃退士達を鍛える為にこんなことをしているのですかっ!?」
 レザーレスは答えなかった。
 だが、青柳は見る見るうちに遠ざかるレザーレスの目が一瞬細まったのを確かに見たのだった。


 リトルリッチは夕暮れが迫る中、朽ち果てた駐屯地の正門に一人佇んでいた。
 既に、駐屯地での戦闘はほぼ集結しており、残ったディアボロが掃討されるのも時間の問題である。
「ようやく、話しが出来るね。小春、いや……リトルリッチと呼んだほうがいいのかな?」
 ゼノヴィアが優しく呼びかける。
 ゆっくりと振り向く少女の顔は、既に「姫塚小春」のものではなく、リトルリッチのものであった。
「リリス……」
「ん?」
「リリス・バロウワイズ・プロセルピナ……それが、私の本当の名前だから……ぜの」
「覚えていてくれたんだな……取りあえず、戦う気が無さそうで安心したよ」
「……どうして」
 首を傾げるリッチ。ゼノヴィアはこほん、と一つ咳払いをすると照れたように、だが視線を逸らさずはっきりとした声で告げた。
「俺は小春と友達になりたい」
 その瞬間、ゼノヴィアは一瞬リッチの口元が微かに綻んだように感じた。しかし、それは直ぐに消え去りリッチは悲壮な表情のまま言う。
「そんなことが出来ると、思うの……?」
「出来るよ。敵対していても仲良くなれるのは最近も証明できたしな。だからさ、何時か一緒に温泉にでも……」
「ふざけるな!」
 しかし、ここで葉月が声を張り上げた。
「そいつは陸尉を、陸尉を……」
「待ってください、一尉。駐屯地のゲートを破壊したのは彼女自身です」
 青柳が説得する。
「青柳の言っていることは本当だ。俺の連れが話したがっているんでね。少し、時間をくれないか」
 咲村もやんわりと葉月を牽制した。
「……理由を、聞かせてもらいたい」
 葉月は、少し落ち着いた様子でリッチに質問した。
「私も聞きたい」
 銀海もそう尋ねる。
「何故だ? 何故君は何度も私たちの前に現れて、何度も助けてくれたんだ?」
 リッチはそっと目を閉じると、小さなしかしはっきりとした声で撃退士たちに語り始めた。
「わたしは……彼を、犬養萩臣を、ヴァニタス・レザーラスハウンドへと作り変えた……」
「……!」
 薄々感づいていたとはいえ、改めて突き付けられた真実に葉月の顔色が変わる。
「萩臣は……わたしたちがここを支配下に置いた時、部下と一緒に私たちに抵抗した。敵わないと……撃退士でなければ、私たちに触れることすらできないと知っていながら……部下も、それを解って彼と一緒に……」
 学園生たちの間に沈黙が流れる。彼らは改めて思い出していたのだ。
 かつて、この地が【群レナス魔】の支配下に置かれ、人々の意識からさえ隠されていたことを。
 魂の収奪が目的であったとは言え、その過程でいかなる惨劇が起きたかは想像に難くない。
「わたしは……エリディアたちに……殺させた……」
「き……きさ、まっ……」
 拳を握りしめる葉月。それを銀海が窘めリッチに先を促す。
「生き残った萩臣は私たちに命乞いをした……ヴァニタスにしてくれるなら、まだ私たち悪魔に見つかっていないニンゲンたちが隠れている場所を教える……エリディアたちは反対したけれど、わたしは彼を治療してその場所まで案内させた……」
「……」
 沈黙の中、ごくりとハヅキは唾を飲み込んだ。
「そこでは、彼の部隊の残りが、わたしたちを待ち伏せしていた。全部、萩臣は計算していた……そうやって、時間を稼いで……離れたところに隠れていた自衛隊ではないニンゲンたちを逃がそうとした……」
「え……」
 尊敬する自分の元教官が、いかにして同胞を売り渡したかを聞く覚悟をしていた葉月は思わず顔を上げた。
「……やっぱり」
 どこか納得したように、青柳も呟く。
「わかっていた……萩臣は、あの時のお父様と同じ目をしていたから……」
「お父さん?」
 ゼノヴィアが口を挟む。
「お父様は天使との戦争で死んだ……部隊が追い詰められて、配下やわたしを逃がすために囮になって……萩臣だけじゃない……! あの「おんせん」がサーヴァントに襲われた時もそう……! あの時の父親もお父様と同じ目で……!」
 何時の間にか、リッチの両目からはとめどなく涙が溢れていた。
「小春……」
 ゼノヴィアは、そっとリッチの頭を抱いた。
「だからっ……わたしは萩臣をヴァニタスにしてしまった……あの時の萩臣の目がお父様と同じだったから……! 萩臣は、本当はそんなことを望んでいないと知っていたのに!」
 リッチはようやくゼノヴィアの胸から顔を離し、言葉を続けた。
「おんせんで、あの父親が教えてくれた……天魔も人間も同じ……大切なものを守ろうとする時には嘘をつく……だから、わたしはもうあなたたちから……奪いたくない。だけど、萩臣はまだ続けようとしている……萩臣が自分に相応しいと考える終わりを……」
「やっぱり、陸尉は俺達撃退士を……?」
 と青柳
「そうだとしても、許されることではない。そうだね?」
 銀海の言葉にリッチは静かに頷く。
「そう、だから――」
「小春っ!」
 リッチが身をもぎ放した瞬間、ゼノヴィアが叫ぶ。だが、リッチは即座に翼を広げ飛翔した。
「私は萩臣を……そして、彼の部下であったモノたちの行き先を見届けて、一緒にそこへ……それがどんな終わりでも……」
 そう言い残して、リッチは飛び去った。
「ずるい……そんなのずるいよ……」
 後に残された葉月が嗚咽する。
「陸尉は……私の教官だ……お前のお父さんなんかじゃ、ない……」
 こうして、意外な形で相馬原駐屯地一帯は人類に奪還された。
 だが、中心人物とも言うべきヴァニタスの真意は未だ不明である。
 関東一帯に散った敵部隊への追討司令が出されたのは、数時間後の事であった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: God of Snipe・影野 恭弥(ja0018)
 蒼を継ぐ魔術師・アスハ・A・R(ja8432)
 絶望を踏み越えしもの・山里赤薔薇(jb4090)
 ペンギン帽子の・ラファル A ユーティライネン(jb4620)
 外交官ママドル・水無瀬 文歌(jb7507)
 暴将怖れじ・桐ケ作真亜子(jb7709)
重体: 暴将怖れじ・桐ケ作真亜子(jb7709)
   <我武者羅な攻撃で勝機を導き、反撃された>という理由により『重体』となる
面白かった!:12人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
新世界への扉・
只野黒子(ja0049)

高等部1年1組 女 ルインズブレイド
撃退士・
マキナ・ベルヴェルク(ja0067)

卒業 女 阿修羅
天拳絶闘ゴウライガ・
千葉 真一(ja0070)

大学部4年3組 男 阿修羅
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
歴戦勇士・
龍崎海(ja0565)

大学部9年1組 男 アストラルヴァンガード
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
『力』を持つ者・
青柳 翼(ja4246)

大学部5年3組 男 鬼道忍軍
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
蒼を継ぐ魔術師・
アスハ・A・R(ja8432)

卒業 男 ダアト
男だから(威圧)・
文 銀海(jb0005)

卒業 男 アストラルヴァンガード
鉄壁の守護者達・
黒井 明斗(jb0525)

高等部3年1組 男 アストラルヴァンガード
Eternal Wing・
ミハイル・エッカート(jb0544)

卒業 男 インフィルトレイター
新たなるエリュシオンへ・
咲村 氷雅(jb0731)

卒業 男 ナイトウォーカー
紡ぎゆく奏の絆 ・
水無瀬 快晴(jb0745)

卒業 男 ナイトウォーカー
慈し見守る白き母・
白蛇(jb0889)

大学部7年6組 女 バハムートテイマー
絶望を踏み越えしもの・
山里赤薔薇(jb4090)

高等部3年1組 女 ダアト
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
拳と踊る曲芸師・
Zenobia Ackerson(jb6752)

卒業 女 阿修羅
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
暴将怖れじ・
桐ケ作真亜子(jb7709)

高等部1年28組 女 ディバインナイト
Lightning Eater・
紅香 忍(jb7811)

中等部3年7組 男 鬼道忍軍