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マスター:文ノ字律丸
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:10人
サポート:5人
リプレイ完成日時:2013/06/24


みんなの思い出



オープニング

●青い髪のサラー 
 今日、まだ新人で最下級のわたしが地上に舞い降りたのは、直属の上司に命令されたからだ。
 ――地上にいる天使に派遣されてくれ。
 ――なんなら、少しゆっくりしてきたらどうだ?
 ――戻ってこなくても良いんだぞ。

 ‥‥‥‥。
 ‥‥‥‥。
 ‥‥‥‥。
「‥‥戻ってこなくていいって、どういうことだろう」
 いや、考えすぎだ。それはわたしの悪い癖だ。
 きっと、働き詰めだったわたしを心配して、ちょっと羽を休めてこいと言っているのだ。
 そうだ!
 きっと、そうだ。
 うん、理解した。
 べつに、いつも失敗ばかりしているわたしに愛想を尽かしたとか、そういうことではないのだろう。

 その赤い目をした天使は、とある湖の岸辺にいるという。
 わたしはすぐさま、そこへ急行し、湖畔に佇む人影を見つけた。
 フリル付きの日傘を差しながら、ただ一人、ぽつんと湖の水面を見つめていたのだ。
「セラツィ様、今回お手伝いをさせていただくことになりました、セラーです」
 背中側から挨拶をしたわたしに、頭をもたげながら振り返ったその人影。
 ルビーよりも真っ赤な瞳を持った、可憐な少女だった。
 女のわたしでも、見とれてしまう。
「あら、あなたなの? まさか、女の子が来るなんて」
「わ、わたしは、女でも‥‥でも、すごく役に立ちます!」
「頭の悪い受け答えね。ま、いいわ。あなた、人間のことはどれくらい知っているかしら?」
「えっと、二足歩行で歩く?」
「頭が悪いわね。――あなたには、わたしの作ったサーバントの監視をして欲しいの」
「サーバントの監視ですか? ゲートの設置とかは?」
「いいえ。ただ監視して、その顛末と、それから撃退士のことを報告して頂戴。それだけでいいの」
「‥‥はあ」
「期待しているわ」
 
●ネコミミ型サーバント登場!
 さすがはオタクの聖地と呼ばれるだけはある。
 A駅の中を散々迷ったあげく、やっとのこと抜け出した少年は、初めて見る光景に目を輝かせていた。
 改札口を抜けてすぐ、大きなポスターがある。
 今売り出し中の深夜アニメのキャラクターだった。
「すごいなぁ」
 少年はただ嘆息するばかりだった。
 駅から出ると、スマートフォンのナビゲーションシステムを手がかりに、左へ曲がりメインストリートへ移動する。
「あ、会館がない! 本当にないんだ!」
 無い、という事実だけで驚いてしまうほど、彼の気持ちは高揚していた。
 大きな道路の両端には、萌えキャラの絵が堂々と貼り出されていた。
「こんにちは、どうぞぉ」
「ほ、本当にメイドさんがチラシ配ってる」
 メイドさんとか、都市伝説の類いかと思っていたよ、すげえ。
 その時にはすでに、少年はすっかり町の虜になっていたのだった。

 それから、アニメショップを巡り終え、充実した空気と、満足な戦利品を得て「さて帰ろう」と踵を返した時だった。
 ふと、少年は足を止めた。
 目の前に、ネコミミを付けた少女がいたのだ。
 私服にネコミミカチューシャなんて、やっぱりこの町は面白いな。
 そんなことを思っていると、
「ミャオ?」
 僕が持つアニメショップのビニール袋を見つめて、少女はそんなことを言ったのだ。
「‥‥これなら、あっちのゲーマー達で売ってましたよ?」
「ミャアオ――――ン」
 本物の猫みたいだな、ちょっと可愛いかも。
 なんて油断したのがいけなかったのだ。
 その少女は一瞬屈んだかと思いきや、三メートルほど跳び上がったのだ。
 少年は唖然としてしまった。
 そして、気づいた時には、ビニール袋が無かった。
 ネコミミの少女も姿を消していた。

●斡旋所
「なんとも、奇妙なサーバントだが」
 斡旋所の受付役である男性は、そう口火を切った。
 依頼を受けるために、詳細を求めた時のことだ。
「猫の耳を模したカチューシャのサーバントだ。近くにゲートがあるわけでは無いから、主を無くした野良だろうというのが、上の見解だ。特徴としては、寄生型のサーバントであると言うこと。人間に寄生し、その体を乗っ取ることで力を得る。確認された限りでは10体。我々は、このサーバントを暫定的に‥‥」
 男性は一端言葉を切って、動揺を見せた。
「‥‥ニャンニャン、と呼ぶことになった。笑うな! 私が決めたことでは無いのだ、くそ」
 我に返ったのか、こほん、と咳払いをしていた。
「奴らは本能を解放する力があるらしい。今は、アニメグッズなどを奪取しているだけだが、今後はどうなるかわからない。サーバントがこの町から出る前に、速やかに排除して欲しい。それでは健闘を祈るぞ」


リプレイ本文

●A駅前の六人
 ケータイのトランジスタ液晶ディスプレイを覗き込んでいた少女、エルレーン・バルハザード(ja0889)は、10人分の携帯アドレスを確認していた。
「よし‥‥登録完了。あれ、もうこれしかいないの?」

「皆さんはこれからどうするんですかー? 私は趣味天国に行きたいのです」
 エヴェリーン・フォングラネルト(ja1165)の幼い声が、輪の中に響く。

「エヴェリーンちゃん‥‥そのエプロンドレスかわいいねぇ〜☆ 大正浪漫ってやつかな?」
 ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)は、相変わらずの軽い発言。風船みたいに軽い。

「いい、ジェラルー。ナンパしないでよね? ぜーったい、ダメだよ?」
 藤沢薊(ja8947)が、継ぎ接ぎが目立つウサギの人形を突き出して、その横から睨む。

「ゆずも、めいんすとりーと、に行こうとおもうよー」
 小さく挙手していたのはウサギの耳を付けた少女(?)、天月 楪(ja4449)。
 パニエスカートのように裾が広がった形のワンピースドレスを纏っていた。

 お花を摘みに行って帰ってきたフレデリカ・V・ベルゲンハルト(jb2877)は、レトロな雰囲気が醸し出されている花柄のワンピースに着替えていた。頭には黒猫の耳がモチーフのヘアバンドを嵌めている。
「も、文句があるなら言えば良いじゃないっ」
 慣れないツンデレ口調を、たどたどしく発音している。
(正直死ぬほど恥ずかしいですが、無辜の人々を救う為にここは耐えないと‥‥!)
 
 この六人以外は、すでに町に繰り出してしまったらしい。
「猫耳カチューシャ型のサーバント、通称ニャンニャンの撃破が依頼内容ですね」
 エヴェリーンが代表して、依頼を繰り返す。
「ん、ん? ねこ型‥‥じゃなくって、かちゅーしゃがサーバントなの??」
「えと、そうですね」
(‥‥私、猫型だと思ってた‥‥よくわかんないけど、ちょうどお買いものしたかったし、いいや♪)
 エルレーンは小声で独り言を呟く。

 〜You got mail♪
『‥‥そっちに一匹現れたっぽいわ、確認お願い』
 後発組、六人のケータイ画面に表示されたのは、赤星鯉(jb5338)のメールだった。

●街中?
「喫茶店キャスリングですの〜。みなさん来てくださいですの〜」
 一切の黒を塗りつぶしたような純白のメイド服を着ていたのは、斉凛(ja6571)だった。
 凜は、頭に猫耳を付けた男性を見つけて、目を細めた。
「可愛い猫耳ですの。凜も付けたいですの」

 通りからわずかに外れた、裏路地に凜の姿があった。
「あら、気づかれたんですの? さっきまでニャアニャア言ってましたのに」
 足下には、ピクピク動く猫耳カチューシャ型のサーバント、ニャンニャンが踏みつけられている。
 凜の顔には、さっきまでの無邪気な笑みがなかった。代わりに浮かべていたのは、そのメイド服と対比できるほど真っ黒な笑みだった。
「猫耳などまがい物ですわ。猫はジャスティス。全愛猫派を代表して叩き潰させていただきます」
 釘バットが打ち下ろされる。
「チェックメイトですわ」
 カチューシャは、鈍い音を立てて二つに折れた。

「さて、チラシ配りに戻りますわ」
「倒した‥‥の‥‥?」
 通りに出た凜の前に現れたのは日比谷日向(jb5893)だ。
 いつもは隠している熊の耳を、取り繕いもせず露わにしている。
『この街な‥‥ら、私の姿も目立たないか‥‥も?』
 彼女にとって、それは驚きでもあったし、おかしくもあった。
「付いてきてと言ったら付いてきましたの」
「言葉が通じるなら、どうにかなりそ‥‥う」
「知能が高そうでないですね。どうするですか?」
「歌‥‥う‥‥」
 そう言って去って行く日向に、凜は「お気を付けてですの」と微笑みかけた。
 日向は振り返って、ただ頷いた。

 御神島 夜羽(jb5977)が、歌のステージを探している日向とすれ違ったことに気づかなかったのは、怒りで視界が狭くなっていたからだった。
 なにをそんなに怒っているのか。
 彼の格好を見れば明白だ。
 片方が中で折れたウサミミカチューシャと、女性用のワンピース。
 それは彼の所属している『ユニット』の、正体不明のボスから餞別として渡されたものだった。
「あんのクソヘンタイヤロー、いつか見つけ出して蹴り殺してやる‥‥!」
 今に見てやがれという思いで舌打ちをした時、目の前に大柄な男が立ちはだかったのだ。
 見上げれば、その頭には生物としか思えない毛を逆立たせた猫耳のカチューシャ。
(こいつが‥‥ニャンニャンか‥‥?)
「お前が欲しいニャン」
 野太い猫なで声とは‥‥背筋が凍る。
「おいおい、正気かよ‥‥男だぜ俺」
 ジュルリ。猫耳男は、目を輝かせていた。
「ひぃ」
 思わず出てしまった悲鳴。
 慌てて、我に返る。
(落ち着け‥‥この格好で恐らく、奴の本能は刺激した‥‥キングの野郎、役に立つってこのことかよクソッ)
 男は、どんどん距離を詰めてくる。
 夜羽は後ろに下がり、下がり、人通りのない業務員口が両側に付いているような極狭の道に入った。
 猫耳男は、その道へ今にも入ろうとしていた。
(さぁ〜て、テメェのせいでこんなクソくだらねェ格好する事になったんだ。ちっとばっかし痛い目見てもらうぜェオイ!)
 夜羽は指先を伸ばし、そこに電流を這わせた。
 ふと、依頼内容が頭をよぎった。
 ――待てよ。鳴神じゃ、怪我させちまうか?
 ‥‥‥‥。
 ‥‥‥‥‥‥。
(おいおい、ピンチじゃねえか‥‥)


 夜羽が追い込まれる少し前のことだ。
 ビルの上からニャンニャンを探していた鯉は、ケータイを二台駆使して、町の噂の情報収集をしていた。
「大した情報がないわね。SNS作戦は失敗だったかも」 
〈――猫耳ガチムチktkr〉
 落胆しかけた時、接続していたSNSにその文言が入ってきた。
「なんでktkrなのさ?」
 呆れながらも、鯉はその情報を元に深く探っていく。
「‥‥裏路地に消えた?」
 一般人が狙われていなければいいのだが、という希望的観測に立ちながら、情報にあった方角を皿の目で探した。
「いた!」
 追いかけられているのは誰かと思えば、さっき駅で別れた夜羽だ。
「‥‥こっちに近づいてきてる」
 すぐ下に来た。
 あそこなら、被害も出さずに狙える。
「私の陰陽スナイピングは遠く離れた硬貨すら貫くわ」

 上空から、光の矢が打ち放たれた。
 さすがの反射神経で避けたニャンニャンだったが、夜羽はそれを見逃さなかった。
 片手を伸ばして、ニャンニャン本体を引っこ抜き、それを放り投げる。
 中空に舞ったそのカチューシャに、雷撃を帯びた手刀をたたき込んだ。
 宿主の男は倒れた。

「オイ、起きろよ」
「‥‥うう、君は誰だ?」
「ふんっ、魔法少女って記憶しときゃいい思い出になんだろ? じゃあな」
 夜羽は、矢継ぎ早に繰り出してその場を後にした。

●街中?
 同人誌ショップから数メートルのところで、エルレーンはニャンニャンと対峙していた。
 ちょうど、この辺りの捜索が手薄だと聞き、注目を集めるよう仕向けていた直後だった。
 宿主は女の子。
 エルレーンの持っていた、BL本に食いついて寄ってきたのだ。
 彼女もまた腐女子ということだろう。
 エルレーンは忍び足で、少女の背後に回り、縄で拘束したのだ。
 懐から取り出したのは阻霊符だ。それで少女の体に触れると、いとも簡単にニャンニャンが弾かれた。
「ふんっ‥‥ただしいヲタクをりよーしようなんて、うすぎたない天魔めっ!」
 まぶしく輝く剣戟で、カチューシャを粉砕した。
「正義は勝つ」
 手には、BL本が握られていた。
 撃破の報告をするためケータイを開いていると、
「な、な、なんですか〜これー」
 ご当地バッヂを買った後、偶然通りかかったエヴェリーンが、エルレーンがニャンニャンの餌にしていたBL同人誌を拾って、中を開いていた。
と、たちまちの内に顔を真っ赤にする。
「‥‥エヴァリーンちゃん、それ過激なやつ」
「ワタシ、ナニモミナカッター!」
「わぁー、ま、待って〜」
 逃げていくエヴェリーンを、エルレーンは追いかけた。

 追いかけっこをする二人の姿を見つけて、楪は助けを求めようとしたのだが、声をかけ損ねてしまった。
「楪ちゃん、こっち向いて」
「ポーズください!」
 楪はその魔法少女の格好が受けて、カメラ小僧に囲まれてしまっていたのだ。
「ゆずは、おとこの子だよ?」
「「男の娘萌え〜」」
 この集団には何を言っても、無駄らしい‥‥。
 さっきニャンニャンを撃破する時に、イベントに見せかけるため、
『まほーしょうじょ、ロジカル楪さんじょうです!』
 なんて言ってしまったのだ。後の祭りだ。
「楪さん、決めポーズ!」
 もはや諦めるしかないらしい。
「ねこみみ怪人をみつけても、あぶないからちかづいちゃだめだよー。ねこみみ怪人みつけた!ってさけんでくれたら、ゆずかゆずの仲間のひとがやっつけにいくからねー」
 そんなことを言いながら、適当なポーズを取った。

 その喧噪の横でフレデリカは、猫耳を付けた男に当たり屋をしていた。
「あ、あんた、どこに目を付けてるのよ! あたしを誰だと思ってるのよ!」
「ごめんだニャン」
「謝って済むと思ってるの? まぁ、あんたが誠意を見せてくれるって言うなら、許してあげても良いけど」
「ニャン?」
「つまり、こういうことよッ!」
 フレデリカは手を伸ばし、ニャンニャン本体を引きはがそうとしたが、避けられてしまう。
 だが、瞬間的に背中に生やした翼で、空中で宙返りして背後に回り込み、ニャンニャンを捕まえて引きはがした。
「か、感謝しなさいよねッ」
 宿主の男は、そのデレた横顔を見ながら、幸せそうに倒れた。

「今、撃破数6? じゃあ、あと4体だね。どこにいるのかな?」
 薊は、おもむろにケータイを消灯させた。
「お嬢ちゃん、かわいいね、ちょっとおじさん達と一緒に来ない?」
「眼帯なんて良い趣味してるじゃん」
 一人で歩く少女の雰囲気を故意に出していたとはいえ、薊は一瞬呆気にとられてしまい、ついぞなんだかヤバそうな集団に絡まれていることに気づいたのだった。
「え、えーとあの……あ、向こうに可愛い子が!」
 苦笑から一気に転じて、逃げ出す。
 人混みに巻いた先で、悲鳴らしきものを聞いた。
 ――もっとはっきり聞きたい。
 意識を集中させ、『λ Andromedae』を思い描き、第六感を研ぎ澄ませた。
「‥‥泥棒? ‥‥猫耳? こっちから聞こえる!」
 現場に走った薊は、そこで紙袋を漁る猫耳を付けたスーツの女性を見つけた。
 ケータイを取りだして、着信履歴をプッシュする。
「ターゲット発見♪」
 と、その女性は逃げ出してしまう。
「あっ! 逃げやがった。ターゲットは、ウーデーエクス方向に逃走。追いかけます」

 薊の報告を受けて、現場へ駆けつけた楪は、高層ビルをぐるりと回っていた。
 超聴覚錠10というラムネ錠を、舌の上で転がしながら、悲鳴を探す。
 索敵していると、着物姿のクマミミ少女を発見したのだった。
「日比谷おねぇさん?」
「歌で誘き出‥‥す‥‥。今はアニ‥‥ソン‥‥。演歌の方がい‥‥い?」
「んー、ゆずにはわからないです」
 すると、その歌を聴いていたらしい老獪そうな男性が拍手をしながら、日向に歩み寄ってきた。握手を求めてきたのだ。
「感動したよ」
「どう‥‥も‥‥」
「素晴らしかった、ニャン」
「「あ」」
 楪と、日向はその男性の頭を見た。猫耳が付いている。
「確‥‥保」
「ニャン?」
 その時、背後でまばゆい輝きが放たれた。
 楪は咄嗟に、先ほどの連絡があったやつだ、と走り出す。
 そこには、光に目を眩ませているスーツ姿の女性がいた。
 スライディングで、その足に飛びつき転ばせる。
「えいっ」
「ふニャ!」
 そこに駆け寄ってきた影は二つだった。エヴェリーンと、薊だ。
「捕獲ー」
 薊の手の中には、ニャンニャンの本体がある。
「ニャンニャンは、踏むべきかな?んー、撃つか」
 その言葉の後、銃声が響いた。

「おかえりなさいませ‥‥お嬢様♪ 今日のお召し物もよくお似合いです☆」
 執事服に身を包んだジェラルドは、一日貸与の間借りスペースに執事喫茶を開いていた。
 カウンターの向こうで紅茶を淹れている彼の元に、また一人、誘われる。
 それは学生風の男性だった。
「おかえりなさいませ‥‥ご主人様‥‥私が恋しくなりましたか?」
 蠱惑的な笑みを浮かべながら、その男性の頭の上にある猫耳をしっかりと確認していた。
「ご主人様‥‥かわいらしい猫耳ですね?」
「ニャ?」
 間違いないニャンニャンだ。
 ジェラルドは、その男性に近づきお辞儀をした。
 その瞬間、胸元から阻霊符を取り出して、腕を伸ばす。
 気配に気づいたのだろう。男性は、人間らしからぬ動きで、跳ねて避けた。
「おっと、逃がさないよ♪」
 その着地点を瞬時に割り出して移動し、男性の胸ぐらを掴むと、組み倒した。
「さらばだ‥‥にゃん‥‥」
 本体を外して、つまみ上げると粉砕したのだった。


 これで残りは一体になった。
 しかし、その一体が見つからないのだ。
 しびれを切らしたジェラルドが行きつけの服飾店に出向き、
「‥‥率直に聞こう‥‥何が僕らには足りない?」
 真剣に事情を話し、アドバイスをもらってきた。
 そして、辿り着いた結論は、ずばりスク水!
 それから始まったスク水大行進作戦だったが、効果なしだった。
「三大欲求は‥‥色気、眠気、食い気だ!」
 店頭販売に参加して、そこを張っていたのだが、そこにも現れない。
「あれ? 眠気? ‥‥‥‥昼寝してるやつ居そうだねぇ?」
 上空索敵班の協力を仰ぎ、ひなたぼっこ出来る場所をしらみつぶしにしていった。
 その時だった。
『目標発見。足止めをしています』
 地上を捜索していたエヴェリーンからの報告が、全員に伝わった。
 彼女の姿は、ひさしの間から注ぐ日の光でひだまりになった、そこにあった。
 傍に、少年の姿があったのだ。頭には猫耳が揺れている。
「にゃあにゃあですか?」
「ニャア」
 エヴェリーンは、でたらめな猫語で談笑していたのだった。


 十人は再び改札前に集まり、10体のニャンニャン撃破という報告を済ませていた。
「せっかく来たんだから、もっと買い物したいのっ」
「ワールドに行きませんか? スマカラカフェにも行こうと思っているんですー」
「いいねっ。テーマカフェで、超時空のロボットがやってるんだよねー」
 エルレーンと、エヴェリーンはすでにこの後の遊びの予定を立てている。
 みんなも、このまま帰るのはもったいないと、夕暮れの近づいた町に繰り出す算段を付けていた。
「ね、みんな写真撮らない? へ、変な意味はないよ?……な、何となくだもの。ジェラルーも」
 薊の提案で、十人全員が、カメラの前に集まった。
 撮影者は、たまたま通りかかった、通行人だ。
 ひどく変わった格好の多いメンバーだが、この町を背景とするなら、それはちょうど良いのかもしれない。
 


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 八部衆・マッドドクター・藤沢薊(ja8947)
 ドS白狐・ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)
 忘れられない笑顔・フレデリカ・V・ベルゲンハルト(jb2877)
 花唄撫子・赤星鯉(jb5338)
重体: −
面白かった!:10人

┌(┌ ^o^)┐<背徳王・
エルレーン・バルハザード(ja0889)

大学部5年242組 女 鬼道忍軍
For Memorabilia・
エヴェリーン・フォングラネルト(ja1165)

大学部1年239組 女 アストラルヴァンガード
うさ耳はんたー・
天月 楪(ja4449)

中等部1年7組 男 インフィルトレイター
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
八部衆・マッドドクター・
藤沢薊(ja8947)

中等部1年6組 男 ダアト
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
忘れられない笑顔・
フレデリカ・V・ベルゲンハルト(jb2877)

大学部3年138組 女 アーティスト
花唄撫子・
赤星鯉(jb5338)

大学部1年279組 女 陰陽師
撃退士・
日比谷日向(jb5893)

大学部4年261組 女 陰陽師
能力者・
御神島 夜羽(jb5977)

大学部8年18組 男 アカシックレコーダー:タイプB