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マスター:文ノ字律丸
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2013/05/30


みんなの思い出



オープニング

●銭湯へ行こう
「今日はいいお風呂日和だね!」
「こんな日には、特別なことしたくなるよねぇ」
 いつもの寮内浴場だけでは飽きてしまった二人の少女が、久遠が原学園の敷地内を歩いていた。
 並木道を通り過ぎ、裏路地に入って少し行くと、背の低い建物が乱立している住宅街のような場所に出る。
 猫が通れそうな裏道は存在するものの、普通に歩くならば、そこは一本道だ。
 そこに昭和の風情が漂う銭湯が建っていた。
 煙突から伸びた煙が、夜空に立ち上り、同化するように消えていく。
 すれ違う人々は銭湯の帰りなのだろう、シャンプーの匂いを纏っていた。
 立て付けの悪い引き戸をがらがらと開け、のれんをくぐると、「男」「女」と書かれた扉が左右に分かれて備えてある。
 分岐点の高台に、やる気のなさそうな少女が座っていた。
 見たところ、二人の少女と大差ない歳だろう。
 彼女は漫画雑誌に顔を伏せ、顔を上げようとしない。
「すみません、おいくらですか?」
「二五〇円」
「はい、じゃあ、二人で五百円っ」
「まいどどうも」
 第三次銭湯部という腕章をつけた少女は、お金を受け取ると、二人の少女にちらりと目を向けた。
「あんた達、今日初めて?」
「うん。いつもは、寮のお風呂だからね!」
「そっか。じゃあ、悪いことは言わない。帰る時は誰でも良いから男を捕まえて帰るか、大勢に混ざって帰りな」
「どうしてぇ?」
「どうしてもさ」
 それっきり番頭の少女は、漫画雑誌に戻って、話してくれなくなってしまった。

 風呂から上がった二人は、体から蒸気を上げて、ほんのりと肌をピンク色に染めていた。
 がらがら、引き戸を開けて、外に出る。
 夏の湿り気を匂わせる風が、髪を撫でつけていった。
「うーん、夜風が気持ちいい!」
「そうだねぇ」
「じゃあ帰ろうかっ」
「あれ、でも、さっきの女の子がみんなと一緒に帰れって」
「そうだっけ? ま、いいじゃん! 早くしないと門限だし」
「……いいのかなぁ」
 二人はそれから、他愛のない噂話やら、どっちが早く結婚するかやら、結論の出ない女子トークを繰り広げていた。
 その時だった。
「あれ? 今、光らなかった?」
「えぇ?」
「ほら、また!」
「ちょっとぉ、怖い話しぃ」
「違う違う。誰かに見られているような‥‥?」
 二人の少女は背後に何かいる気配を感じた。
 息を合わせて振り返る。
 すると、そこには、しのび装束を着た数人の男達が立っていたのだ。
「かっかっかっか、おぬしら、我らを見つけるとはたいした器よのう。だが、もう取れ高は十分じゃ。今回はこの辺で失礼する、さらば」
 その一人が高笑いを上げた後、意味不明なことを口走り、そして仲間達と共に闇へと消える。
「なんだったんだろぉ」
「あいつら‥‥、カメラ持ってなかった?」
「え! 写真撮られてたのぉ」
「乙女の風呂上がりの写真を撮るなんて許せない。金払え、このやろー!」

●斡旋所
 机に突っ伏して、いびきを掻いていた案内所の女性を、すみません、と言って起こした。
「ね、寝てませんよ! 寝てない寝てない。寝てた? 幻覚です」
 じゅるりと涎を拭くその女性は、あくまでも寝ていないと言い張る。
「はい。この依頼ですね。最近、巷で話題になっている風呂上がり激写忍軍です。授業や依頼にも出ずにひたすら風呂上がりの乙女達を撮影する技術を磨いているらしいんです。戦闘向けじゃないですよ、この人達。でも、逃げ足の速さは尋常じゃないですよ。依頼を受けますか?」
 受ける、と答えると、女性はうんうん頷く。
「風呂上がりなんて、化粧も剥がれて、一番無防備な時ですからね、そこを狙うなんて下劣極まりないです。こらしめてやってください。‥‥え? 涎? まだ出てますか?」


リプレイ本文

●銭湯
 夕焼けの向こう側から、夜風が吹き抜けて。
 銭湯帰りの少女達の肌を、優しく撫でる。

「んー、湯上りで火照っちゃって、ちょっと熱いねー」
「宮子、口の周りに、おヒゲができてますわ」
「さっきの牛乳だよー。えっと、‥‥取れたかな、瑞穂さん?」
「ええ、取れましたわ」
 のれんをくぐって銭湯の引き戸の前に立っていたのは、猫野・宮子(ja0024)と、桜井・L・瑞穂(ja0027)だ。
「それにしても、宮子は本当にお風呂が好きですわね。わたくしもですけど」
「うん」
 星が顔を覗かせ始めた空を見つめ、涼んでいる二人。
 二人の前には裏路地が伸びている。
 そこには、セラフィ・トールマン(jb2318)の姿があった。
「んー、良いお湯だった」
 言いながら、セラフィはにやりと笑ったのだった。

「「純白のワンピースから見える、幼げな肩‥‥。まだ湿り気の残る、黒髪の長髪‥‥。ローライズのパンツから伸びる、魅惑の太もも‥‥。銭湯帰りの美少女、撮り尽くしたい!」」
 影に潜む者達が、カメラのレンズ越しに獲物を捕捉し、いなないた。

●作戦決行
 月に背を向けて、蘇芳 更紗(ja8374)が四階建てのビルの屋上に、立っている。
「下賤の者どもめ、真の漢にはほど遠い俗物だ」
 ナイトビジョンを付け直すと、ケータイを手に取った。
「まったく‥‥」
 呼び出し音を聞きながら、軽くため息をつく。
 同胞として情けない限りだっ。
「もしもし、目標は、囮班に接近中です」

 更紗から連絡を受けたセラフィは、ケータイをしまい、さてと、と舌なめずりする。
「んー、気持ちいい風」
 おもむろに大きな伸び。
 両手を、バンザイの格好だ。
 アンダーウェアと見紛うほど薄手のシャツがたくし上げられる。
 へそがちらりと覗き、綺麗な腋が露わになってた。
 しかし、あられもない姿を披露しながら、セラフィは興奮していたのだ。
(きっと、見られている、見られているッ‥‥嘗め回すように!)
 セラフィは、紅潮した顔で、露出を極めていく。

(生命反応は左に8、2つは反対側にいる)
 瑞穂は、その気配の位置を見ずに確かめて、アイコンタクトで宮子に伝える。
 二人は歩きながら、肯き合った。
「なんだか暑いなー」
 呟いた宮子は、ぎこちない動作で手うちわをする。暑い暑い。
 ワンピースの胸部をつまみ上げ、風を送り込む。
 膨らみの勾配が見え‥‥そうになる。
「そうですわね、暑い。んふ」
 色気のある声を漏らしながら、瑞穂は髪をかき上げて、頭を傾けた。
 見る者を引き込んでしまうような、魔性のうなじが覗く。
「まぁ、撮られる分にはいいのですが、やり方が気に入りませんの‥‥」
 壁に接しない道の真ん中。
 弱い光を落としている外灯をスポットライトにして、その中に佇んだ瑞穂は、自らの鎖骨に触れる。その流れで、肩をはだけた。
「ふふふ、わたくし達が確りと惹きつけませんと、ね」
 肩に口を近づけて、舌を出した。
 ピンク色の舌は、上気した柔肌の、肩の丸みを這う。
 じとり。艶めかしく光り。糸を引いた。

「「‥‥と、撮らせろおおおおおおおおお」」
 月明かりに姿を現した盗撮集団の影。

 かかった!
 囮役の三人は、目を細めて笑った。

 集団の先頭にいた青年に腹パンをかましたセラフィは、関節を決めながら、用意しておいたロープで縛る。するするきゅきゅ。
 ――亀甲縛りのできあがりっ♪
 セラフィは一仕事終えたように、息をつく。
「ところで、写真なんか撮ってどーするつもりだったんですかぁ?」
 縛った青年を地面に転がせて、踏みつけながら、彼女は満面の笑みだ。
「恥ずかしくて言えないようなコトにでも、使うつもりだったんですかぁ? クスクス」

「あっさりと引っかかったね? さて、変態さんはしっかりと捕まえてお説教しないと」
 宮子は、猫耳を取り出して頭に装着する。
「それじゃあ‥‥捕縛開始にゃ♪」
 猫のように機敏な動きで間合いを詰める。
 蒼い眼光が線を描き。
 一人の鳩尾に、一撃が決まる。
「皆ボクに見惚れるがいいのにゃ♪ そしたら‥‥捕まえて上げるにゃよー♪」
 宮子が纏う光。
 それに絡み取られた数人は、意思もなく引き寄せられていた。
「うにゅ、逃げるのがいるにゃね。あれはボクに任せるにゃ!」
 宮子は、逃亡者に目をつけて、垂直にそそり立つ壁に立つ。
「同じ忍者なら負けられないにゃよ! 僕に捕まってお仕置きされるにゃ♪」
 雷となって、なお走る。
 振られた腕から飛び出したのは、マグナムナックル。
 獲物を撃ち落とした。
「宮子、パンツ見えてますわ!」
 壁を走る宮子に、瑞穂の声は聞こえないみたいだ。
 こうなってしまった宮子は止められない。
 ため息をついてから、瑞穂はそれまで隠していた光纏のオーラを明らかにした。
「一人たりとも逃さなくてよ!」

(…足止めだからな!当てるなよ!絶対当てるなよ!)
 弓を握っていたのは、セラフィ。
「‥‥でも、当てちゃうかも♪」
 放たれた矢は、地面を逃げていく忍軍の足下を穿ち。
「ひぃいいい」
 狙われたターゲットは放心状態で、腰砕けになってしまった。

「被写体が攻撃してきた」
「罠だ!」
「に、逃げろ!」

 反応に遅れた者がいた。
 逃げの姿勢を取る。
 だが‥‥、
「止まれって言ったら、止まってくれる?」
 彼の影に立っていたのは桐原 雅(ja1822)だった。
「ひぃいいいい」
「やっぱり逃げるんだ?」
 闇に翳した手、その指は薄く陰った月に、キラリと光った。
 あらかじめ絡ませていたアイトラの糸が引っ張り、もがくように逃げようとした彼を転ばせる。
 そのまま蛇のように締め上げていった。
 首にまで至り、素肌に食い込む。
「動かないで。逃げようとすれば命は‥‥無い」
 雅が拳を握り込むと、糸がさらにその狂気を強めていく。
「少し眠っていて」
 振り下ろした足。
 ――うぐあっ!
 踏みつけられた彼は、白目をむいて気絶してしまった。
「じゃあ、これ頼むよ」
 雅は、近くいた瑞穂に青年を任せてから、大通りの方向へ逃げていく人影に目当てを付けた。
 壁を走って、屋根に上っている。
「無駄だよ」
 雅は、大剣を地面に突き立て、それを棒高跳びのようにして、跳び上がった。

「な、何があったというんだ」
 逃げ出した忍軍の一人は、すでに倒れて転がっている仲間を見つけて息をのんだ。
「‥‥おやすみ」
 不意に、彼の耳元で吐息をついたのは染井 桜花(ja4386)。
 影に紛れて、後ろを取っていたのだ。
 口をふさごうと腕を回した時、
「う、うわあああ」
 勘が働いたのか、その青年はがむしゃらに逃げ出した。
「‥‥逃げた」
 さして動揺もせずに、桜花は音もなく夜空に飛び上がり、逃げたターゲットの目の前に着地する。
「‥‥悪あがき」
「い、いやだああ」
 破れかぶれで攻撃を仕掛けてきた彼の攻撃を、桜花はいともたやすく避けた。
 振り上げた太刀の煌めきが、風を切る。
「‥‥峰打ち」
 悲鳴もなく崩れた青年の、両足と片腕を固める。力を強めていく。
「お、折れる!」
「‥‥折れない。‥‥外すだけ」
 一気に力を込める。
「‥‥絶技・枝折」
 声にもならない悲鳴が、宵闇に溶けた。
「‥‥動いたら。‥‥窒息」
 微妙な力加減で縛った縄の上から、鎖で補強し、外れないよう錠前をしたのだった。

 いくつもの網をかいくぐって逃げる忍軍の残党の前に、桜庭 ひなみ(jb2471)が立ちはだかった。
「ダメですぅ。とまってください!」
 深呼吸して覚悟を決めた彼女は、目を><にして、精一杯の表情。愛らしさは百点満点。
 しかし、両腕を広げたところで、彼女の体では壁にならなかった。
 残党は、彼女の脇を、次々と通り過ぎていく。
「い、いっちゃダメです」
 ほっぺたを膨らませた、ひなみはリボルバーを構える。
「とうさつはいけないのです!」
 構えられたリボルバーから放たれた弾丸は、最後尾の的を射貫いた。
 前のめりに倒れた青年のそばには、殺傷能力のない模擬弾の弾頭が転がっている。
 ひなみは、ロープで縛ったその青年を、よっこいしょ、と運んだ。
「染井先輩、つかまえました」
「‥‥よくやった」
 ひなみに次いでやってきたのは、雅に追いかけられていた激写忍軍だった。
 前門の虎、後門の狼。
「もう逃げ場はないよ」
 三人に挟み撃ちされたら、為す術もない。
 ここまで逃げてきたものの、その青年は諦めて地にひれ伏す。

「大通りに逃げるのは鉄則だ。九人とも向こうに逃げた。追っ手はこちらに手を回している余裕はない。俺一人だけでも逃げ延びてやる。ふはははは!」
「不埒な上に、下劣な者め。仲間を囮にするとは、見下げ果てた下郎だっ」
「だ、誰だ!」
 まるで流星のごとく。
 夜空に翼を広げた更紗は、滑空し、声の主を探してキョロキョロしている青年を、背中から襲った。
 後頭部を押さえつけて、引き倒す。
「言い訳があるなら言ってみよ。美の追求とかそれっぽい言い訳で、お茶を濁そうとするなら死刑に処す」
「湯上がりこそ至高! だから、盗撮するのだ!」
「やはり、情けは無用だな。婦女子を盗撮する等不届き千万、恥を知れ恥を、同姓として貴様らの行動は看過出来ん」
「同性って何を言っている? ‥‥お前は女だろ」
「なに!? この真の漢を目指している、わたくしが女だと」
 うつぶせに倒れている青年の上半身を起こし、腕を回して首を固めて決める。
「聞き捨てならない、謝れッ!」
「お、おお、お、おっぱいが当たって」
「謝れと言っているんだ!」
「ご、ごめんなさ‥‥うぐ‥‥」
「ん? 落ちたか。これではタウントを使うまでもなかったな」

 激写忍軍は、この時点で、九人捕まっていた。
 残すは、あと一人だ。

 大通りの手前に、二人の忍装束が壁を走っていた。
 地面に降り立ち、止まって、背後を振り返る。
「逃げられたのは、俺とお前だけか。‥‥ん‥‥お前、誰だ?」
 傍にいたのが、自分の仲間ではないことに青年は気づく。
 変化の術を解いて現れたのは、下妻ユーカリ(ja0593)。
 光となって消える黒百合の花びらを背景にして、快活そうに微笑んだ。
「きみたちを捕まえに来た人だよ」
「な、敵? い、いつの間に」
「きみたちが撮影に夢中になってる時に、遁甲の術で紛れ込んだんだー」
 走り出そうとした青年に先回りしたユーカリは、強引に押し倒すと、カメラと学生証を没収する。
「盗撮してたんだってね。被害に遭った女の子がかわいそうだとは思わないの?」
 ユーカリは、デジタルカメラのデータを確認していた。
 見事に盗撮写真しかない。
「だいたいね、カメラってところがまずダメだよ」
 確認し終わったユーカリは、青年を見下ろして諭す口だ。
「本当に、心の底から、女の子のお風呂上がり姿が好きなのなら、網膜に焼き付けなきゃ嘘。あとから撮影したものを見ればいい、その甘えた心が技術の向上を妨げているんだ!」
 青年は、何も話す気力がないようで、地面にへたり込んだまま、顔を上げようともしない。
「まあ、お説教タイムは、みんなで一緒に受けてもらおうかな」
 ユーカリは、青年を立たせて、裏道の真ん中に連れて行った。

●お説教タイムスターーートっ!
 裏路地の真ん中辺りには、すでに捕まっていた十人全員が集められていた。
 その横では、捕まった十人が、固い地面に正座の折檻中だ。
 地面に正座は痛い?
 痛いから折檻って言うんです。
 彼らは、泣くことも、呻くことも、許されない。
 こんな折檻を受けたら、二度と盗撮なんて使用とは思わないだろう。
「さて、変態さん達。お待ちかねの説教の時間だにゃ♪ 正座、崩さない!」
「そんなに、お風呂上がりの女の子の写真が撮りたいんでしたら、モデルさんにでも協力してもらえば良かったんじゃありませんの? そういう方向でしたら、モデルを引き受けても宜しくてよ」
 鬼教官宮子の言葉を引き継いだのは、甘く芳しい花の幻惑を乗せた風で、負傷者の傷を癒やしている瑞穂だった。
 おーっほっほっほ♪
 なんて、目立ちたがり特有の高笑い。
 本人はすでにその気になっているようだ。
「いちいち記録に残さなくちゃならないなんて、真剣に取り組んでいない証拠だよ」
 うんうん、とうなづいているユーカリ。
 この二人は、どこか論点がずれているような‥‥。
 その時、隙を見て逃げ出した影があった。
 逃亡者の背中に、目にも留まらぬ一撃を食らわせたのは雅だった。
「撮って良いのは、撮られる覚悟のあるやつだけだよ。無防備な日常の写真を撮ってばら撒くぞ」
 彼女の暗い目は、予想以上の効果があったようだ。
 全員、がくがくと震えだした。
 ところで、正座をしていたのは八人だ。
 さきほど雅の一撃によって気絶をしている一人をいれても、九人。
 もう一人は‥‥?
「もう‥‥勘弁、してくださ、い」
「あれ、なんか空耳が聞こえたなぁ、なんですかねぇ」
「もう‥‥しません」
「あれー? イスが喋るはずないですよねぇ」
 セラフィのイスになっていたのが、もう一人だった。
「‥‥全員。‥‥動くな」
 注目とでも言うように、手を挙げた桜花の手には、キュウリと、リンゴが二個握られている。
 桜花は、一人の男性の股間付近を指さした。
 男性陣は、それが意味するものを理解し、そして嫌な予感が迸る。
「‥‥次したら」
 リンゴが二個、地面に落ちた。ぐしゃり。踏みつぶされた。
「ひい」
 キュウリがポキッと折られて、かみ砕かれる。
「ぎゃあッ」
 それは、あまりにも残忍な光景。
 激写忍軍は顔を青ざめさせた。
「‥‥こうなる」
 対して、桜花は冷笑をたたえ、キュウリをムシャムシャしている。
 殺される。
 喰われる。
 確信した忍軍は、逃げだそうと地面を這ったが、そこにはひなみの姿があった。
「おとなしくしてくださいね〜」
 今は何より、その笑顔が胸に刺さる盗撮集団だった。
「お、来た」
 更紗が呼んだのは、月の光で輝くブーメランパンツ一丁の、見事な筋肉の方々だった。
「我が部の撮影会をご希望なのは、あんた達か、んんっ?」
「この筋肉を撮影させてくれって、んんっ」
「存分に撮らせてやろう、んんっ」
 一言一言、全力のポーズを繰り出すお兄さん方。
「撮影会だ。よかったな」
 更紗の言葉に、泡を吹く激写忍軍。
 連行されていくその姿には、生気のかけらもなかった。

●ご褒美お風呂♪
 依頼を成功させた八人は、銭湯に漬かっていた。
「何回入ってもいいなー、お風呂って」
「うふふ、宮子はお風呂大好きですわね」
「良いお湯ですね、染井先輩」
「‥‥うん」
「ふー、極楽極楽だねっ。美容効果とかあるのかな?」
「日本のお風呂は最高だよっ」
 その時、男風呂から、ひどい騒ぎが聞こえた。
「な、なんで、お、女がこんなところに!」
「なにを言う? わたくしは真の漢を目指す、歴とした男。さ、同性同士、仲良くしよう」
「きゃああああ、えっちいいい」
 女風呂の七人は、逆だろ普通、という男の叫声にも動じていなかった。
 
 ――なににせよ、お風呂は、最高だ。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 無念の褌大名・猫野・宮子(ja0024)
 ラッキースケベの現人神・桜井・L・瑞穂(ja0027)
 無敵のFinal☆ファザコン・セラフィ・トールマン(jb2318)
重体: −
面白かった!:9人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
みんなのアイドル・
下妻ユーカリ(ja0593)

卒業 女 鬼道忍軍
戦場を駆けし光翼の戦乙女・
桐原 雅(ja1822)

大学部3年286組 女 阿修羅
花々に勝る華やかさ・
染井 桜花(ja4386)

大学部4年6組 女 ルインズブレイド
屍人を憎悪する者・
蘇芳 更紗(ja8374)

大学部7年163組 女 ディバインナイト
無敵のFinal☆ファザコン・
セラフィ・トールマン(jb2318)

高等部3年10組 女 アストラルヴァンガード
雷蜘蛛を払いしモノ・
桜庭 ひなみ(jb2471)

高等部2年1組 女 インフィルトレイター