●ミッション・スタート!
「えー。てすてす。皆様お忙しいはずなのに、本日は賑々しくも‥‥。口上はいらへん? わーった、ほな開催やでー!」
と、口上もそこそこに舞台袖へと退場するのは辻村ティーナ(jz0044)。当日まで本気で案じてはいたのだが客の入りも食いつきも悪くはない感じ。
「ほな、文字通りで一丁行きますか?」
トップバッターで登場するは緋伝璃狗(
ja0014)。撃退士の格闘術を着衣無しで直に見る機会など久遠ヶ原に在住している人でもほとんどありません。最初「ふんどしー」と囃し立てていた子供らも、その演武の迫力に圧倒され魅入っている。寒気の中で立ち上る汗。
「このように激しい動きを行っても動きを阻害せず、脱げたりもしない。通気性が良いので汗による不快感も低い」
「ゴムが切れるような事も無く、長く愛用出来て経済的。何より気が引き締まる」
「最近は様々な色・柄が出てきているから、洒落として楽しむ事も可能だ」
日本文化を見直してみるも良いぞ、と璃狗さん。目線が合った女性らが「彼氏に」と早速お買上げです。
続いての登場は北島瑞鳳(
ja3365)さん。白の六尺ふんどしに白の鉢巻きで登場して観客に向かい一礼。すると黒の巨大な布に、白のペンキで文字を書き 始める。ころもへんに軍、の文字。そう、褌の文字。それを幟のように旗竿に通すと売り場の前に突き刺します。まさに圧巻のパフォーマンスです。
「男なら、背中で語るもんだろうが! なぁてめぇら!」
ざわめく場内を抑えるように声が通り、どんどんどん、という足音と共に現れたのは志堂暁(
ja2871)さん。
体に刻まれた数多の傷のひとつひとつに彼の歩んできた人生が感じられます。背中から香る侠気に撃たれ、感銘する男子多数。
始まるまではだるそうにしていたけど、触発されたように「よっ」と舞台に参上するのは御暁零斗(
ja0548)さんです。赤褐色の体に真っ白のふんどし は、とてもよく引き締まった体に合っていて、なんだか観客の女性陣の空気がざわざわ。そこですかさず零斗さん、一生懸命ふんどしの固定概念を変えるよう話 し続けます。一方男子には「リア充になるには、これだぜ。これが似合うように体を鍛える」とアピール。目の前でうっとりとしている女性を目にした男子たち は、もうこれは買って体を鍛えるしかないと一念発起する人が何人か出た模様です。
いわゆる「非リア」の心を鷲掴みにしたのはラグナ・グラウシード(
ja3538)さんでした。
「諸君!」
鍛えられた肉体に、叩き込まれた騎士道精神。それが語気の強さとして現れる。
「今こそ時は来た。2月14日を、その意義を塗り替えられる歴史的な日が来たのだ!」
でも、なぜでしょう。なんだかちょっとざんね‥‥。いえ、なんでもないです。
「カップルリア充どもが跳梁跋扈する日ではなく!凛々しさと肉体美を賛美する、褌の日に変えるのだ! ‥‥諸君らも褌を身に着け、リア充どもを粉砕しよう!」
応、とどよめきが後方で沸き上がる。でも商売的にはアリだったのかも。売店には26人の男子が駆け込んだ、とか。
ちょっと硬くなった雰囲気を、変えるように登場したのは土方 勇(
ja3751)さんです。
黒のフードを脱ぎ捨てると、底から現れるのは男らしくも真っ白に輝くふんどし。なんと髪は結ってポニーテールにし、ねじり鉢巻きに付けひげで雰囲気抜群。そしていつの間にか用意されていた大漁旗を振りながら、ここで演歌を熱唱です。
「漢の下着は、己の心の様に輝く白であるべきだ!」
最後に絶叫、そして沸き上がる拍手。それにしても。依頼主の若旦那、この大漁旗はどこから用意してきたんだろ?
一方、舞台袖では和菓子(
ja1142)さんが染め具を用意して見立ててます。
「よろしければ染色致しましょうか?何、サービスです。」
「藍色とはお目が高い。この色を濃くすればするほど高貴なお方の象徴なのですよ。」
「元気一杯の子には…そうですね、知性の青、なんてどうでしょう?」
次から次へと学生やお客さんをさばく和菓子さんは商売のセンスがあるのかも。
●久遠ヶ原モードコレクション
音響と共に【ファッションショー】が開催される。ステージをフルに活用してまず登壇したのは七海マナ(
ja3521)。パイレーツコートの裾からふんどしがのぞくたびに「おおお」と、どよめきが聞こえます。
「僕っぽいアピール、‥‥みてねっ!」
指で「BAN」と撃つ仕草に、打ち抜かれた人‥‥結構いますね。続き登場したのはレイラ(
ja0365)さん。
「立派なフンドシーゼになって褌の即売会を成功に導きます!」
っと、長身でモデル体型のレイラさんの胸周りは晒しで隠すのにはちょっと不自由かもで最低限の部分がようやく収まった、という感じ。ハイレグに結ったふん どしからはアウルの光翼が輝き、形の良い「ばでぃ」の躍動がよくわかります。ええ、ええ。そしてじー、っと集まる視線の数、数、数。最初は余裕だったレイ ラさん、思わずちょっと後ずさり。そして赤面。耐えられずばでぃを隠して脱兎です。
「Oh……これがHundoshi!」
大きな声をあげたアーレイ・バーグ(
ja0276)さんに視線が集中。特に胸周り付近へ。ちなみに「K」だそうです。何が?
Kが何かはさておき、「たゆんたゆん」な圧倒的な物量を前に、なんと晒が負けてます。
「ふんどし、買いまショー!」
ステージ袖にいるお爺ちゃん。両手を合せてアーレイさんを拝んでます。
「こう見えても、色気で誘惑するのは経験あったりするんだよ、っと」
レイラさん、アーレイさんの文字通り両巨頭の後を、臆さず進み出たのはソフィア・ヴァレッティ(
ja1133)さん。この日のために練習を重ねてくれたモ デルウォークは本当に堂に入っています。しなりを作りポーズ。ギリギリまで面積少なめの晒で覆った胸の谷間が覗くごとに会場からはどよめきが。
「おっと、次はボクの番かな‥‥、飯島カイリ、参上★」
写真を撮るのに夢中になっていた飯島カイリ(
ja3746)さんが颯爽とモデルウォークで登場です。イタリア人と日本人のハーフである彼女は自作(!?)のカメラで着用前のふんどしを撮影したり着用した姿を撮って貰ったりと帰還後も大忙し。
‥‥と、ここですかさず【商品紹介ステージ】になるのは、最近のファッションショーでの主流であります。遊間蓮(
ja5269)さんが堂々とステージ中央に進み、商品紹介を開始。
「ボクが紹介するのは越中褌っていう褌だよ〜。これは、大切な所が隠れてるから恥ずかしさも、激減!」
そして腰に手を当ててポーズ。
「着脱が簡単だから、実は介護にも適しているんだよぉ。介護が必要なご老人のいる家庭の皆様、患者と介護者両方の負担を減らす為にもお勧めですよ〜? 」
話を切り替え実用性をアピール、そして畳みかけるようにウィンクが見事に決まり、ふらふらーと奥様たちがご購入です。
「お、おぉー。意外とわたし決まってるかもしれない?」
更衣室で驚きの声を上げたのは氷月はくあ(
ja0811)さん。
「かっこいい方もいっぱいいるので是非見てってください」
襦袢を纏い舞台に参じ、ひとしきり説明をした後でぱっと襦袢を脱ぎ捨て、そのまま戦闘での射撃モードへシフトです。無駄のない所作に思わず息を呑む人多数。
登壇と退場を実況を交えながら商品の解説をするのは楯清十郎(
ja2990)さん。巧みな話術で越中、六尺、もっこ、黒猫ふんどしの解説を行います。
「そして暫く、暫くぅっ!」
一瞬で六尺にショートソードの姿に変わった清十郎さんが登壇です。刀に手を置いたまま睨みを利かせて大きく見得を切ると、会場からは拍手喝采。
●百花繚乱
「和の出番ならば俺も」
真宮寺神楽(
ja0036)さん、扇子を広げ舞台狭しと舞を演じます。
「アクロバティックな舞いを魅せましょう」
先刻までのきりりとした「男らしさ」が消えて、舞台には可憐に舞う花一輪。
続いての登場は東雲桃華(
ja0319)さん。観客からは「あれもふんどし?」との声が。何しろ衣装にも力が入っています。垂れは地面に付く程の長さ、お 尻はまるでレオタードのように括り、晒しの上からは羽衣を纏う出で立ちは艶やかの一言。そして舞は圧倒的なまでの肉体の美。音楽に合わせての跳躍、そして 終演。同時に漏れる感嘆の溜息と拍手。
「やるなあ‥‥」
3番手の天風静流(
ja0373)さんも触発されてか非常に高度な舞を披露です。片足を上げ激しく舞うたび揺れるは長い黒髪か、それともふんどしか。会場からは魅了された溜息が。
でもあまりに舞が激しすぎたようで「事故」が起きそう、なのにクールなままで舞う静流さん。残念ですけどここでチェンジです。
「恥ずかしいですけど‥‥」
ふんどしの素晴らしさを伝えるため頑張ります、とふんどしの上から巫女服を纏いて登場するのは神城朔耶(
ja5843)さん。「ひゅーひゅー」と囃し立て る若い子を、漆黒の瞳が静かに射貫き、「しゃん」と鳴るは涼やかな鈴の音。優雅に、そしてダイナミックな巫女舞に、さっきまで騒いでいた子らも魅入ってい ます。
「なんでわたし、こんな依頼を受けたんだろ‥‥」
と言いながらも外国人に声を掛けまくって客引きをしてくださったのはフレイヤ(
ja0715)さん。愛用の魔女帽子にマントを纏ってほんとの魔女ですが、その下が晒しとふんどしだけ、というこの状況が何とも心細いのです。
「これが最先端の魔女の正装、ってやつよ!」
マントからばさっ、と両手を上げてふんどしの良さをアピール。でもしっかりお尻が露出してしまった事、自分でもわかるわけで。青の瞳から熱い雫が一滴。でもプロだから負けません。
「よし、わたしも踊るよ!」
晒にパーカーを羽織り登場するは染舘羽(
ja3692)さん。ふんどし、というよりも「バンドルショーツ」の名がふさわしい赤の地に花が咲き蝶が舞う柄を纏っての登場です。
持ち込んだ音源に合わせてストリートダンスを披露。
「普通の下着みたくゴムの締め付けがないからすごく落ち着くかも」
「着物にはノーブラ・ノーパンがいいっていうけど、これなら着けてても型崩れしないしよさげっぽいよー?」
茶の髪を揺らしながら、歌を歌うように元気にアピールです。特に女性のイメージの払拭にはかなり、効果があったかも?
「私のようにパーフェクトボディには、バンドルショーツとさらしがよく栄える!」
と、有名メーカー製バンドルショーツ装着で飛び出ましたのは月子(
ja2648)さん。コスプレイヤーの素養が高い彼女にとっては絶好の舞台です。でもバ ンドルショーツと晒がおにk‥‥失礼、「ないすばでぃ」に食い込んで、なんだかマニア垂涎‥‥な雰囲気が。でも、張り切っていた月子さんもその空気を敏感 に察してしまうのは、何か思い当たるところが‥‥いえいえ、なんでもありません。
「ちょっとお餅が美味しかっただけじゃないか! いいじゃないか、お餅食べても!」
さっきまでの自信はどこへ行ったのか、月子さん、ちょっと涙声。
「デブって言うな、ぽっちゃりなだけだー! 泣くぞーーー!」
涙と共に月子さん、どこかへと消えてしまいましたがふんどしは結構売れたっぽい模様。
一方、こちらは舞台袖の更に下。
「あ、え、ぶ、部長?」
観客にふんどしのよさを勧めていたりとフォローに回っていた相楽空斗(
ja0104)さんは舞台から降りてきた桃華さんとばったり出会って目をぱちくり。思わず凝視、‥‥しそうになるのをぐっと堪えつつそっと目を伏せ。
「ぶ、部長‥‥中々刺激的な‥‥、い、いえ、あ、その、可憐さと凛々しさが両立して素敵ですよ、はい‥‥」
桃華さんも頑張っている空斗さんに、にっこり微笑んで応援です。
「使い易さ、着心地、そして元来の常識を大きく覆すファッション製豊かな新時代の褌です。是非ご覧になっていって下さい!」
応援を受けた空斗さん、屈託のない笑顔で頑張ってます。
●ヒーローのお時間です
ちびっ子達が大勢やってきました。そう、これからの時間はヒーローの時間なのです!「ヒーローショーはあちらになる。褌の魅力を堪能していってくれ」
会場の前で赤ふん一丁のまま案内を続けているのは或瀬院涅槃(
ja0828)さん。ふんどしに書かれている「道案内」の文字に男気を感じます。少しずつ混み始めた会場の中で迷子を見つけると優しく、そして力強くなだめます。
「心配するな。この赤褌が目立つ限り、お前の親は必ずここに来る」
子供らの目に映る涅槃さんもまた、ヒーローであるのです。
「この世に我らがある限り!」
ヒーローのお面を被って登場した、その声の主は海原満月(
ja1372)さんです。女性下着メーカー発のデザインを採り入れた、薄い水色を主体とした配色のふんどしがキュートです。
「リーダーの言う通りなのですぅ‥‥」
おずおずー、と緑色主体の配色で登場したのは三神美佳(
ja1395)さん。「萌えー」っと黄色い声が湧いたとか湧かないとか。観客席で一瞬で心を射貫かれた人多数。そんな状況の中。
(なんで依頼文をよく読まないで受けちゃったの、私の馬鹿‥‥)
内心の葛藤を克服し3人目のヒーローとして登場したのは雫(
ja1894)さんです。暗紅色ふんどしを纏い、ふんどし以上に真紅に頬を染めて。満月さん、 美佳さんの後ろに隠れながらもYESロリータNOタッチな「大きなお友達」の異常な盛り上がりに顔を向けると「フーッ!」
‥‥と、雫さん、怯えながらも威嚇してます。
「ふはははは」
「ぴぴぴぴぴ」
おーっと、ここで謎の怪人、と怪鳥の登場です。身長130センチくらいな怪人さんと、怪人さんに付き従う忠義の怪鳥(褌バージョン)の前にヒーローさん達は苦戦です。
「と、このようにふんどしは意外と乱れません。そしてみなさん、応援よろしくなのです」
客席まで飛ばされながらもバク宙を切って着地! な満月さんは子供らにお菓子を振るまいしっかりアピール。そして始まる剣戟の音。色とりどりのアウルの光が邂逅した末。怪人さんと怪鳥さんは遂に倒れました。
「(刃先のないケーンだけど)みねうちなのです」
「‥‥なのです」
「終わり、だよな?」
満月さん、美佳さん、雫さん。皆が怪人を諭してヒーローショーは終演です。それにしても怪人の正体は誰だったのでしょう?
と、その時‥‥。
●コンディション=レッド
「とおっ!」
ステージめがけて飛び込んでくる白い‥‥、もとい水玉の影。しかしてその正体とは。
「別天地みずたま、見参!」
華麗に着地を決めると、久遠ヶ原学園高等部女子制服のスカートがひらり、とめくれ、中からはみずたまのふんどしが。
「おおお」と、散々ふんどしを見てきたのにこれがチラリズム萌え、というものでしょうか。沸き上がる観客(の一部)に手を振るとみずたまさん、いきなりブレザーをぽい。
「別天地みずたま、脱ぎます!」
威勢の良い掛け声にブラウスがぷるんと、え、震えてます?
実はみずたまさん、ちょっと細工をして、大事な部分は手ぬぐいやらで隠し、晒しがずれているように見せかけているのですけど、そうとは知らない男性陣はどきどきどき。
「あ、なんか絵的に美味しいかも?」
舞台袖で様子を見つめていた七種戒(
ja1267)さん。ここで参加です。画期的なふんどしの活用法を思い付いたという戒さん。舞台中央付近で身に付けて いたローブを脱ぎます。そして顕わになったのは。ふんどしに晒し、ではなくふんどしとエプロンを纏って登場でした。そしてお玉をふりふり。
「おかえりなさい、あなた。ご飯にする? それともわ・た・し?」
わたし、の部分でくるっとターン。ふんどしの宣伝も忘れていません。ちなみに会場の何人かが「ぶー」っとはなぢの噴水が。
ちょっとカオスになりかけた舞台。でもご安心召され。
「きゃはははは★カグラにーぃ、おまかせぇ〜っ♪」
戦国KAGURAでふんどし着用の主人公、カグラになりきっての登場はエルレーン・バルハザード(
ja0889)さんです。ちなみにカグラのコスプレですが。朱い手甲と足甲、頭には鉢がね、なのに、さらしと褌、そしてアクセントの首飾り、という、えーっと?
「とりあえず。みんな一緒に!」
3人のヒロインがコスプレ(?)を競い合う展開になり。みずたまさん、戒さんはやりきったいい顔で退場。後でコスプレを解き素に戻ったエルレーンさんはカグラに比べて胸の装甲の薄さが気になったりで乙女心がちくちくと痛んだり。
「なんだか舞台がカオスになった気が‥‥?」
舞台から離れた所でふんどしと一緒になぜか山葵まんじゅうも薦めているのは高野晃司(
ja2733)さんではありませんか。舞台のカオス化は一応、気にしないことにして舞台を指さしながらふんどしが恥ずかしいと言う人にその認識を改めるよう一生懸命です。
「ま、要するに、別に気にする人は少ないって訳です。無理にとは言いません。しかし、履きたいと思うなら是非…買っていってください‥‥ついでに山葵饅頭も!」
一緒に食べてくれるのならふんどしも買うよ、とまるでロシアンルーレット状態になった山葵まんじゅうを前に、なんだか嫌な予感がしつつ、お約束のように当ててしまうのが晃司さんなのでありました。でも、お陰でふんどしは28枚も売れました、よ?
●ザ・演武
会場の出店を行ったり来たりしているべべドア・バト・ミルマ(
ja4149)はおおきなぬいぐるみのマルさんと一緒に、なぜか、大きな棺桶? らしき物体を背負いながら、笛を吹き吹き散策中。
「ヒトがいっぱいで面白そう‥‥。そういえばイライだった」
アピール! と意気込んでハッピにふんどしの出で立ちで、人に薦めて回っています。
「わあ、かわいい!」
年上のお姉さん達に囲まれたベベトアさん、頭から湯気を出してフリーズ。そのまま背中の棺桶の中に逃げ込んでしまいます。
「大丈夫?」
心配そうなお姉さん達はずっと見守ってくれました。ベベトアさんもそっと様子を伺いながら外へと一歩。
そんな事もあったりしましたが、舞台の上では魔もなく鳳月威織(
ja0339)さんの演武が始まります。
実践的な剣術ではなく、敢えて大きく動きを見せるような殺陣を意識しての演武に、その一挙一動がアウルの光輝を纏い空気を裂くごとに会場からは「おー」の声が。
「久遠ヶ原学園は柳津半奈です。本日は空手の形を、ご披露致します」
続く柳津半奈(
ja0535)さんが静かに前に進み出ます。晒越しでもわかる大きな胸よりも、無駄が一切ない肉体美に皆、心奪われた模様ですが徒手を一閃。「抜砦(バッサイ)」の銘を持つ技を披露してくれた半奈さんは、最後まで居住まい正しく。
「お粗末様で、ございました」
愛用の越中ふんどしに身を包んだ中津謳華(
ja4212)さんの演舞は瓦割り。それも普通のではなく‥‥。大きく広げた布の上に積まれた10枚の瓦。それ を声も出さずに肘が一閃。一気に割れた瓦に呆然とする観客をよそに謳華さん、それを蹴り上げると空中で全てを粉砕してしまいました。腕を組んだままで、し かも足の甲や踵が触れると同時に粉砕される瓦‥‥。何事もなかったように着地を決めた謳華さんは一礼です。
次から次へと魅せられる演武への期待が益々高まる会場を見回しながら好機と思った方達が2名。
「じゃあ、私らも行くかね」
派手に傾奇いた着物を羽織り黒の晒に黒のふんどし、木刀を持った雀原麦子(
ja1553)さんが駆け出すと、向こうから来るはトンファー装備、越中ふんど しの桂木桜(
ja0479)さん。そして重なるふたつの武器の音。アウルの火花が炸裂し、否応も無しに舞台の上の2人へと視線が集中する。桜さんのがトン ファーを振りターンを決めるごとに「ぶるん」と上下左右する胸にも視線が集まったのも否めない。
と、その時。体も火照ってきた麦子さん、いきなり剣を虚空に放ると黒の晒とふんどしをはらりと脱ぎ捨てる!
「わーっ!」
観客もびっくり。なんと、一瞬の間に麦子さんは桜色の晒とふんどしを着用しているじゃありませんか。そして落ちてくる刀を受け取り、最後は互いの蹴りを寸 止めしてフィニッシュ。沸き上がる盛大な拍手を桜さんと共に受けた麦子さんは、冷やしておいたビールをぷしゅっと開けるのでした。
演武もこれで終わりかな、と思った矢先。天空から声が降って来ます。
「皆の者!妾は天狗姫・八塚小萩である!
「本日は褌の素晴らしさを伝えるべくはるばる榛名山より罷り越した!」
「刮目するがよい!」
白褌と白晒に結袈裟。頭には赤い頭襟。背中に黒い着け羽高下駄を履き。まさにまさに、褌姿の天狗そのものの姿で登場したのは八塚小萩(
ja0676)さん です。ばっとガウンを脱ぎ捨てて、舞台狭しとハイキック、跳び蹴り、回し蹴りを披露。きつくお尻に食い込んだふんどしは、むしろ愛らしくて声援が飛びま す。それに応えて団扇をくるくると回転させ、まるで新体操のような演武です。
「何を隠そう天狗の神通力は褌より生まれるのじゃ」
息も切らさず演じきった小萩さんに降る拍手の雨。
●荒行とカオス
「商店街の繁栄を祈念してー!」
「これからの戦いに向けて、己の体に水を掛け、今年一年良い年になることを願掛けしようじゃないか」
「むーびょう!そーくさい!」
「てーんま!ちょうーぶく!」
やおら始まったのは水垢離の荒行。白い褌の崔北斗(
ja0263)さん、方や「三倍」と書かれた赤い褌の神凪宗(
ja0435)さん‥‥が互いに水を掛け合います。
「心構えは出来ている。いつでも、来い!」
北斗さんからの水を仁王立ちで受け止める宗さん。
「北斗殿、覚悟されたし!」
と、その時。
「あのね、えっと、褌!褌はカッコイイし、強いから、皆も履くと良いよ!」
舞台袖で好調にふんどしを販売していたNicolas huit(
ja2921)さん。ほんとは男の中の男のアイテムとして売ろうとしたのに集まってくるのは女性たち、と、ちょっと予想とは違う男性陣。具体的にどんな感じとは言わないけど。
そのユイットさんにも、あろうことか水垢離の水がばしゃり。水を被る前から、半被の中からちちらと覗くユイットさんの肌の色香にくらくらしていた女性陣ですが、さらに水も滴るいい男になって。しかも水を被ったユイットさんたら涙目な訳で。
「泣かないで、ユイット君!」
ずっきゅーんっと心を撃ち抜かれてしまった女性たちが、あっという間にお買い上げです。
●まつりの、おわり。
グループ【太鼓】の演奏が始まる前の舞台裏。
「へー。褌ってそうやって着ればいいのね?」
興味津々なのは雪室チルル(
ja0220)さん。
「おいらは365日年中無休で六尺褌だぞ!」
受ける獅子堂虎鉄(
ja1375)さんが快活に笑っています。虎鉄さんの傍には権現堂幸桜(
ja3264)さんがおずおずと。幸桜さんを見た人は、顔を見 て晒をみて、また顔を見てと繰り返すので頬を染めてしまう幸桜さん。でも、しっかりとセールスは忘れません。何しろこれが依頼です。
それを見て、「本当は肌の露出を嫌う幸桜の、この勇気に拍手を!」とは虎鉄さんの言。でもいよいよ出番の時が参ります。
「頑張りましょう!粗相があってはいけません」
太鼓のばちを握りしめながら黒瓜ソラ(
ja4311)は気合いを入れるために念押しをする。
「罰が中りますよっ。バチなだけにっ!」
一瞬、何かが凍り付いた気がしたけど、多分気のせい。でもすかさず璃狗さんが、熱い甘酒を持参し駆け回っているから。何かは凍った、のかも?
「さあみんな!気合入れていくわよ!」
何事もなかったように、チルルさんが気合いを入れ直します。
「では、いざ参ろうか。王虎雷纏ッ!」
どどどどど、と地を撃つ雨のような太鼓が鳴り響きます。
「商店街で中邑屋主催学園生有志による褌アピール、即売会やってますです。又最後にはバレンタイン盆踊りありますです。良かったら来て下さいです」
大きな声で呼びかけするのは謎の怪人‥‥じゃなくてクリーメル(
ja2297)さんと愛鳥のぷ〜さんです。2人ともふんどしをしっかり締めてしっかりアピールしていた所でしたが、太鼓の音にいよいよ終演の時を悟っていそいそと帰参です。
「一緒に、盆踊りですよー」
「ぴぴぴー」
祭のリズムを聴いてしまったら、ふんどししない人でも乗らない訳にはなりません。結構たくさん売れたみたいで。
「景気づけにはしご乗りを!」
と、高梯子に乗るのは羽生沙希(
ja3918)さん。高梯子は商店街の男性陣が鳶口(とびぐち)という柄の長い鎌のような道具で押さえてくれています。登る人の技量も必要ですが信頼感が大事。一気に駆け上がると脚一本、あるいは腕一つで体を支え360度、見えるように演技を行います。
「さすが撃退士さん、筋が良いね」と褒める商店街の皆さんに、沙希さんはお礼を述べて。
「次もやらないっすか?」
さて。長かったようで短かった出し物もいよいよラストになりました。【太鼓】組の面々が鼓動を刻むと大漁旗にふんどしの文字の幟が風を切ります。激しいビートは盆踊りと言うよりも‥‥。
「四国が誇る阿波踊りを、力の限り踊るのです!」
清清 清(
ja3434)さんが躍り出て、阿波踊りのスタートです。手ぬぐいを頭に巻き足袋を履き、団扇持参の清さんが躍るのは阿波踊りの「男踊り」。女性に見間違われる清さんですが、れっきとした男性であることが踊りの躍動感からも伝わってきます。
笛の音も混じりお囃子も鳴り、次第に大きくなる踊りの輪が、そこにはありました。気が付けば、みな熱狂したように踊っています。まさにまさに、踊らにゃ損損、なのでありました。
「いやあ、お蔭で売れましたよー」
すべてが終わり。未だ熱気の余韻が残る会場で依頼主の中邑さんがにこにこと笑い。ティーナの手を握っています。
「四桁、1231枚も売れたんですよー!」
それには撃退士の皆さんもちょっとびっくり。一日でこれだけ売れたのだったらどうやら追加が必要な雰囲気です。
そんな中村さんに同じく老舗の息子さんである清さんは「ぜひ業務を提携しません?」、虎鉄さんも「次はふんどしの世界進出を!」と声を掛けていたりするのですが、その結果は、また今度の時にでも。
「‥‥はい、お疲れ。終了です」
あれ? 実はもう一人。長身と割れた腹筋に似合うセクシーなふんどし姿で、女性陣を魅了しまくって、かなりの売り上げに貢献された人物がいらっしゃいました。グラン(
ja1111)さんです。
「ティーナ君にも後で渡すね。DVD『くーる・くおんがはら』を」
「ふ、ふえ?」
実はグランさん、今までずっとビデオを回し続けていたのです。
「い、いつのまに」と言いかけたティーナは、グランさんのDVDのほかにもカイリさんの撮った全員といる場面での(隠し撮り)写真にも驚くわけですが。これで本当に‥‥。だれもほかに、何もしてません、よね?
【了】