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マスター:火乃寺
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2012/02/24


みんなの思い出



オープニング


クスクス――
 その音を聞きとめた警備員は、振り返った。そこには誰もいなかった筈だ。つい今しがた、自分が通ってきたのだから。だが、視線の先には確かにそれがいた。15歳くらいだろうか、緩いウェーブの掛かった緑色のロングヘアを靡かせ、微笑む少女の姿。
「ねえ、この鎧、格好いいね。私、欲しくなっちゃった」
「な、何だ君は。一体どこから入り込んだ?」
 ここは、ただの博物館だった。主に刀剣、甲冑を保存、展示し、来場者に公開するだけの。そして、彼はそこが委託した警備会社から常駐警備に派遣された警備員。職務に忠実な彼は、だから当然そう声を掛けた。本能が鳴らす警鐘を、無理矢理押さえつけて。
「どこから? へんな事を聞くのね、おじさん。どこからでもよ」
 とぼけるつもりなのか、要領を得ない言葉に彼は一層視線を厳しくし、少女の傍らに歩いて肩を掴んだ。否、掴もうとした。
「どうしたの、そんな驚いた顔をして?」
 少女が、艶然と彼を見上げる。『掴もうとしてすり抜けてしまった手』と少女を交互に見つめ、驚愕から恐怖へと変わっていく、その様を嗤いながら。
「ひっ?!」
 懐中電灯を取り落とし、後ずさり身を翻して全力で走り出す。
(「あれは人間じゃない、あれは、あれは・・・・っ」)
 幽霊、という陳腐なものよりも、もっと確実に現世に存在するもの。新聞やニュースでも、何度もその言葉が踊るのを目にしてきた。それをさす言葉は――
「どこへ行くの? お・じ・さ・ん♪」
 後ろにいる筈だった、自分は逃げてきた筈だった。目の前にいるはずのないものが、目の前にただ立って、こちらに無邪気な笑みを浮かべている。いや、無邪気なのではない。純粋な邪気のみで形成された笑みがあるとすれば、これが『そう』なのかもしれなかった。
「て、天魔っ!!?」
「正解♪ それじゃ、ご褒美をあげるね」
 絶叫が、夜の四十万に響き渡った。


「本日早朝、K県I市の博物館より、天魔出現の報告がありました」
 当直の警備員からの定時連絡がなく、不審に思った警備会社側が待機社員を向かわせた所、西館・西洋系展示ブースで動き回る一体の鎧姿を発見。当初、単なる泥棒か何かだと思った警備員四名が取り押さえようとして、結果二名が天魔により殺害されたという。
「生き残った警備員が各所に通報、今に至るという訳ですが。正直、なぜ生き残れたかの方が疑問ですね」
 一見、冷酷な事を言っているようにも見えるが、仮にそれが下級のサーヴァント・ディアボロであれば、目の前で動く物は全てが破壊対象だといっても過言ではない。彼らは、上位者に管理されない限り、本能のままに活動するのが常であったからだ。
「不確定ではありますが、報告の詳細を見るに、外に連絡をさせる為にわざと見逃したような節があります。可能性としては、その天魔はそれなりに知能を与えられたシュトラッサー・ヴァニタスであるか、あるいは――」
 近場に、それを管理する上位者がいる可能性。
「いずれにしても、まずは該当天魔の討伐を優先してください。天魔は、現在西館からは出ていない様子ですが、いつ外に出て活動するかも分かりません。迅速な対処をお願いします」


「賑やかになってきたわね。ああ、楽しみ」
 博物館の周囲を封鎖する各機関の車両や人員、それを屋上に腰掛けた少女が見下ろす。悪戯が成功したことに喜ぶ子供のように。
「正義の味方さん達は、いつ来るかしら。あの子とどういう風に遊んでくれるかしら。うふふ・・頑張って私を楽しませてくれたら、おじさんを返してあげる♪」」
 手のひらで弄ぶように、魂を一つ転がしながら。その姿は、誰の目にも映ってはいなかった。


リプレイ本文



 転移にて現地に到着した撃退士達は、それぞれアウルを活性化させ魔具・魔装を具現化していく。その中で、小柄な身体でちょろちょろと動き回っていたのは天羽 マヤ(ja0134)だ。
「さまよう鎧・・、中身とかどうなってるんでしょう。やっぱり空洞なんですかねー?」
 現地で新たな情報が無いか、封鎖をしていた警官などに聞き込んでいた。
「ああ、生き残りの警備員? 悪いが病院のほうに送っちまったよ。怪我はしてないんだがショックが大きすぎてな。ま、目の前で人死に見ちまったんだ、しょうがねぇさ」
 そう応えたのは、現場指揮を執っていた中年の警官。一般人である彼らは博物館に近寄れない為、目新しい情報も無いのだという。
「あんたらには期待してるよ。早く天魔の野郎をぶっ潰してくれや。まだ中に仏さんが二人、ほったらかしになってんだ」
「ほとけさん?・・あ」
 天魔に殺されたという、二人の警備員の事だと思い至る。他にこれといった収穫もなく、現状確認として他のメンバーに伝える事にした。
 博物館を外から眺めるエリス・K・マクミラン(ja0016)。こんな場所で暴れる天魔もだが、それ以上に何かに釣りだされたような雰囲気が気に入らない。黒に身を包み、顔をマスクで隠す彼女。それだけに靡くの金の髪が良く映えていた。
 同様にしていた橘 和美(ja2826)は、
「博物館・・私が好きなスポットの一つよっ。天魔に荒らさせて堪るものですかっ!」
 素直で真っ直ぐな性格のままに憤る。彼女のポニーを結わう大きな白いリボンが動作にあわせて揺れる。
「外に連絡させる為にわざと見逃しただと・・?ふざけてる」
 拳を握り締め忌々しげに呟く君田 夢野(ja0561)は、普段の柔らかさは為りを潜め、嫌悪する天魔に対する怒りを露にしていた。
 傍らでそんな彼らを見つめる雨宮 歩(ja3810)は、気怠い様子で口元に皮肉の笑みを浮かべているだけだ。今回の依頼、彼にとっては天魔より自身の内面を確かめる意味合いが強い。
 その少し離れた場所で異様を放つ猪狩 みなと(ja0595)。メンバー内でもっとも小柄な彼女が長大な戦斧を軽々と扱う様に、近場に居た警官が「中学生があんなものを・・」と呟く。
「誰が中学生です」
 耳ざとく聞きつけた彼女は携帯していた免許証をなれた動作で相手に見せた。相手は警官なので口調は礼儀正しい。
 ――のはいいのだが、その前の一瞬で突きつけた斧刃退けてあげてください。
「・・何か、気に入らないんだよね」
 斧を退き(警官は慌てて距離をとった、全力で)、そう呟くみなと。アホ毛(センサー?)が幽かに反応しているようなのだ。彼女以外にも多少感知に長けた者達は博物館周辺に妙な感覚を覚える。だが、何にしても中に入らなければ始まらない。各々覚悟を定め、虎口の入口へと踏み出していく。


「ふふ・・、ようやくお出ましね。さあ、開幕のベルを鳴らしましょう、舞台に上る主役達に幸運を♪」
 屋上の床に触れる事無く、ふわふわと浮かぶ少女の体。その表情は、喜悦と嘲笑に満ちていた。


 ロビーにて、和美は陽動班と念入りに打ち合わせ、エリスと君田は西館出入口から死角となる物陰に身を潜める。みなとは受付のカウンターを乗り越え身を隠す(ワンポイント・隠密行動が必要な依頼ではオウル覚醒効果が派手な人は注意です。難易度によってはそれであっさり察知されます、私の依頼の場合)。不測の事態を想定、警戒を怠る事無く配置を済ませた後、囮を任された歩とマヤは気配を殺して慎重に西館へと侵入した。
(「いたいたぁ」)
 重々しい金属質の音を響かせ、一体の大型鎧が通路を歩き回っていた。身長にして二メートル位、西洋剣と凧盾を携えるそれ、基本的には人型だが、あちこち歪に変形して尖り、やたら威圧感を振りまいている。
 二人は頷き合うと、丁度角を曲がって背を向けたそれに、まずは雨宮が仕掛ける。
ギィインッ
「へぇ、硬いねぇ」
 完全に不意を突いた一撃。違わず命中するが、打刀から腕に伝わる敵の硬度に唇を歪め、天魔の払うような盾の一撃を咄嗟に避け飛び退る。
「えー、と。・・わー、とても強そうな敵ですねー。急いで逃げなきゃですねー」
 内容に問題はないマヤの台詞だが、ゆるい口調と棒読み感も相まっていまいち危機感はない。その間も天魔の弱点を見出せないかと視線を巡らせる。
「よしっ、我ながら完璧な演技ですっ」
 と言葉に出してガッツポーズまでとらなければ、きっと完璧だったろう。多分。
(「・・・・あれ?」)
 視線を巡らしたマヤは、一瞬何かに違和感を覚える。だが、その正体が掴めない。
 ともかく一撃を与え、後はロビーへと誘導する為に後退する二人。その背中に天魔は剣を大きく振り上げた。
「何か仕掛けてくるぞ、気をつけなぁ」
 歩の警告に違わず、刀身が霞むほどの勢いで打ち下ろされた剣先から放たれる風の刃が、ぎりぎりで横跳びに回避するマヤの頭髪が僅かに宙を舞う。
「ひやー」
 直進の通路を後退しながらだった事も幸いし、周囲の展示物にも被害は無い。今の攻撃で予備動作と射程も把握でき、二人は最適な距離をとって天魔の誘導に努め、果たして彷徨う鎧は撃退士達が望む戦場へと無警戒に釣りだされた。


 吹き抜けのロビー。広い空間に誘い出した事により、周囲の被害に対する懸念が軽くなった撃退士達の一気呵成な攻勢が始まった。
「そこだッ!」
 飛び出してきた天魔の左手より、機を逃さず振るわれる夢野のカトラス。
ガヂィッ!!
 金属を削る音を立て、本来なら受けにくい角度から繰り出された攻撃は天魔の凧盾で受けられる。人ならばありえない角度に肘の関節を曲げることによって。
「そうくるかよ!」
 骨格も筋肉も無い無機物故の合理性が、この天魔の特質。だが半ば受け止められる事も予想内だった夢野にそれ程動揺は無い。それに、一度見てしまえば種の割れた手品と同じ。
「西洋剣と大太刀の鍔迫り合いってのも乙なものよねっ!」
ギィイインッ
 台詞と共に打ち下ろされる和美の太刀が長剣と打ち合い、軋みあう。その一撃は我流なれど、故にこそ外連がない。
 ルインズに両側を押さえられたそこに、背後から黒影が金色を残して疾駆する。天魔の後背より繰り出される鉤爪の一撃。エリスだ。防御も回避も出来ず喰らう鎧の巨体が衝撃に震える。だが鎧の強度が、その威力を大きく減衰させる。
「その盾、貰いー!」
 振り払われるように三人が後退し、その間隙にカウンターから飛び出したみなとが踏み込み、振りかぶったブロードアックスが渾身の斬打を叩き込む。盾で受け止めはしたものの、衝撃に天魔は後ろに弾かれ具足がロビーの床を削り滑る。
「ありゃ、失敗かな」
 しかし今の一撃で彼女を脅威とみなしたのか、天魔は攻撃をみなとへと集中させ始めた。
「もっとボクとも遊ぼうよぉ」
 注意を惹きつけようと歩が打刀で背後から斬り掛かり、マヤのピストルが銃弾を装甲にめり込ませるが、鎧は自身の防御力に任せ、それらを無視して猛攻を仕掛ける。
「くっ、あぅっ」
 戦斧を構え、何とか受凌ぐみなとだが、その手足に浅くは無い傷を負わされ、自らの鮮血が彼女を赤く染めていった。
「この、野郎ッ!!」
「みなとさん!」
「させません」
 夢野のカトラスが鎧の脚部を打ち、跳躍から叩き込まれる和美の唐竹割りの一閃、脇に突き入れられるエリスの爪撃。三人の連携にようやく攻撃の手が緩まり、みなとは一旦距離をとることができた。
「あまり無茶は出来ませんが・・」
 夢野、和美の攻撃後の隙を埋める様にエリスは距離を詰め、剣を持つ右手甲へと繰り返し一撃を加える。
「いじめはー、だめ、ですよー?」
 注意の薄い側面に入り込み近接戦を仕掛けるマヤも、複数あるサバイバルナイフを活かした間接狙いの攻撃を組み込む。一本が左肘関節へ運よく食い込み、その可動を大きく阻害する事に成功した。
「やってくれたじゃない。これはお返しだよ!」
 応急で血止めだけを施し、戦線に復帰したみなとの強烈なフルスイングが、ついに天魔の盾を、その左腕ごともぎ取るように千切り飛ばした。能動防御手段の片方を失った天魔に、撃退士全員の猛攻を防ぐ余裕は無くなり、これで一気に勝負はつくかと思われた。
 天上から観劇を楽しむ、彼女という存在さえいなければ。


「へえー、やるやるぅ♪ 仲間の危機も脱したし、あの子の盾も潰すなんて。思っていたよりも楽しませてくれるのね」
 ここまでの展開には少女も満足だった。だが、どうせならあと一波乱くらいあったほうがより面白い。
 いつの間にか、少女の手元には可愛らしい黒のハンドベルが握られていた。一般的には使用人を呼んだりする為に使われるものだ。
「さあ、クライマックスよ。最後までがんばって頂戴、正義の味方さん♪」
リィーン――・・・・
 澄んだ音が、しかし人の耳には決して届かないその音が、少女の見下ろす戦場に新たな変化を齎す。


「ん、なんだい?」
 最初にそれを察知したのは、いくらか鎧から距離をとっていた歩だった。撃退士達が一気に勝負を決めようとした矢先、空間を波打たせて滲み出してくる者が二体。
「気をつけなぁ、皆。どうやら、追加注文みたいだぁ」
 警告を発しながら、彼は一番手近にいた一体に目標を変え魔具を構える。内から沸き上がる感情を確かめながら。
「ホント、なんでこんなに愉しいんだろうねぇ」
 状況の変化に動揺したのは一瞬、他の者達も不測の事態、伏兵の予測は最初から立てていた。
「こっちは私に任せて!」
 少し離れた位置に現れた別の一体へと走る和美。疾走から身を低くして逆袈裟に斬り上げる。その一撃は、受け止められると予測し、次の反撃にも備えたものだったが。
「あれ?」
 新たな鎧天魔は、確かに長剣で彼女を攻撃を凌いだ。だが、最初の鎧ほどの手ごたえもなければ、その反撃に鋭さが無いのだ。
「おやおやぁ?」
 歩が相対した一体も同様に。忍軍の回避力を持ってすれば、その攻撃はとまって見えるほどに遅い。容易く、楽しむ余裕さえ持って紙一重で避けれもするし、面白いように攻撃があたった。
 ここで一つ、ディアボロには発生手段により大きく二種類に分けられる。一つはゲートや悪魔手ずからに生きたまま魂を抜き取られて生み出されるモノ。これは相応の手間は掛かるが、例外なく強い力を得るし、悪魔が力を分け与えればそれ以上の存在となる。そしてもう一つが、殺すことによって魂を奪い変化させたモノ。抜き取る手間が掛からない分弱いが短期間に増産する場合には容易く、言わば粗製濫造法と言った所だ。
 あとから出現した二体は、言うまでも無くこれに該当した。つまり、ただの雑魚である。
「なんだ、これじゃつまらないなぁ」
 ゆるゆると雑魚鎧の攻撃を避けながら歩は呟く。とは言え、一般人とは比べ物にならない能力ではあるのだ。風刃の一撃が僅かに彼の頬を裂き、その血を滲ませる。
「つまらない・・かぁ。やっぱり、ボクは殺し合いを愉しむモノなんだなぁ」
 そして、これ以上つまらない相手に付き合うつもりも無い。背後を取った一撃が、雑魚鎧の胴に大きく罅を走らせた。
「これなら、一人でも十分!」
 和美の方も優位に戦闘を進めている。二体の討滅は時間の問題だった。


 二人の優勢に、残る四人も勝負に打って出た。
「フーガで仕掛ける!」
 足元や下半身を中心に、深く踏み込む夢野の斬撃。盾で受け止められる事がなくなったため、小回りの利くカトラスの命中率は格段に跳ね上がる。
 それでもひるむ事もない鎧天魔は、己を害する撃退士に対して機械のように反撃を行い、彼らもまた相応の傷を負う。
「いきますよーっ」
「終わらせましょう」
 距離をとって撃ち込まれるマヤの銃弾が鎧のひび割れを加速させ、手甲へと攻撃を集約させ続けたエリスの爪が、とうとうその半分を砕くに至って、それまでダメージに動じる事がなかった鎧天魔も地に膝をつく時が訪れた。
 その瞬間、鎧天魔の冑から覗くうつろの闇に宿ったのは、初めてにして最期の感情だったかもしれない。
『恐怖』という名の。
 脳天から叩き込まれるみなとの戦斧。胴の半ばまで達した損傷に、左右からカトラスと爪が止めとなって、ここに天魔は砕け散った。


 三体の天魔討滅を確認し、ようやく一息をつく撃退士達。
「ああー、そっか」
 ぽふっと、援軍として現れた方の天魔の残骸を見ていたマヤが手を叩く。囮のときに感じた違和感の正体。西館に放置されているはずの死体が見当たらなかったせいだと。
「さっきの援軍といい、こいつが操り人形だとしたら繰り手がどっかで笑ってるかもしれないねぇ」
 歩の言葉にみなとも同意見なのか、傷ついた体を押して警戒を解いてはいない。
 周囲の被害を確認していたエリスも、戻ってきて頷く。
「試されたみたいで気に食わないですね。一体何の意図があって・・・・」
 彼ら・彼女らに対して、声・・いや、一方的な『思念』が送られて来たのは、そのときだった。


『ふふ、あははは♪ お疲れ様、正義の味方さん達。十分以上の楽しませて貰ったわ♪』
 精神や魂を抜き取られる事に対しては高い抵抗力を持つ撃退士だが、送り込まれる場合はまた別の話だ。特にその力量がかけ離れていればなおさらに。
 正義の味方、と自身を含めて称されたことに、エリスは僅かに表情をこわばらせる。
「ぐっ・・、天魔かッ」
「な、なにこれ!? く、うぅ・・・っ」
 どことも知れぬ相手に夢野、和美が驚きの声を上げ、呻く。思念と共に襲い掛かってきた強烈な霊威。その重圧に彼らは動きを封じられ、それぞれ魔具を支えに耐えるしかないほどだ。
『そうね、彼方達人間はそう呼んでいるみたいだけれど。天使と一括りにされるのはいい気分しないわね』
 くすくすと含み笑いをする思念の主。言葉とは裏腹に、そこには特に不機嫌さも怒りも感じられない。あるのは人間に対する嘲笑と嘲弄の感情のみ。
『何はともあれ、彼方達は私が用意したゲームでの勝者。そして勝者には、ちゃんとご褒美が用意してあるわ』
 ロビーの天井をすり抜け、小さな光の玉が降り下りてくる。それは最初の天魔の残骸に吸い込まれ、再び人の形と、命の鼓動を取り戻していた。
『もし私の事が知りたければ、おじさんに聞いてみてね。大して教えていないけれど。ふふ・・、次に会う事があれば名前を聞いてあげる♪』
 その思念を最後に、重圧は消え去った。
「くそッ」
 博物館の床にカトラスを突き立て、夢野が憎悪の込めて叫ぶ。
「畜生がッ、ゲームだと?!お前らは人の命を何だと思っているんだよッ!」
それが決して届かぬと知りながらも。





依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 堅忍不抜・猪狩 みなと(ja0595)
重体: −
面白かった!:7人

BlackBurst・
エリス・K・マクミラン(ja0016)

大学部5年2組 女 阿修羅
影の王冠・
天羽 マヤ(ja0134)

大学部5年298組 女 鬼道忍軍
Blue Sphere Ballad・
君田 夢野(ja0561)

卒業 男 ルインズブレイド
堅忍不抜・
猪狩 みなと(ja0595)

大学部7年296組 女 阿修羅
焔魔と刃交えし者・
橘 和美(ja2868)

大学部5年105組 女 ルインズブレイド
撃退士・
雨宮 歩(ja3810)

卒業 男 鬼道忍軍