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マスター:久生夕貴
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
形態:
参加人数:25人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/05/26


みんなの思い出



オープニング


 今宵は豊かな天満月

 春霞に包まれた山は、まるで幻の中に浮かぶ桃源郷のよう

 ねえ、きっと

 こんな夜は、月の虹に出会えるわ



●黒曜石

 四国・高知山間部。
 長い山道を抜けた先に現れる花園で、西橋旅人(jz0129)はゆっくりと深呼吸した。
「わあ……だいぶ空気がひんやりしているね」
 視線の先には今まさに満開を迎えた八重桜。
 聞けばここは標高800mを越える高原地帯のため、平地より半月ほど季節が遅れているのだという。
 周囲を囲む山々ではツツジや山藤が見頃を迎える中、集まった生徒達を前に旅人は切り出した。
「じゃあみんなこれから日暮れまでの間、清掃活動よろしくね」
 説明によれば、ここは地元の人ぞ知る花見スポットなのだという。今年は騎士団による大規模なゲートが近くで展開されていたこともあり、手入れをすることができなかったらしい。
 旅人は落ちてきた桜の花びらに目を細めながら、続ける。
「清掃が終わる夕方から、ここは花見会場に変わるんだ。地元の人たちが僕らのために準備してくれるらしいよ」
 それは恐らく、高知を守った生徒達に対するねぎらいの意味もあるのだろう。そう言ってから、思いだしたように。
「あ、そうそう。地元の人が言ってたんだけどね。今夜は『月虹』が見られるかもしれないって」
 聞けば満月の夜、夜霧や霧雨が月の光を反射した時にだけ現れるという。
「とても珍しい光景らしくて、色んな条件が重ならないと見られないらしいよ」
 それ故に、出会えた人には幸せが訪れると言われているのだとか。
 幽玄的で神秘的。見た者に幸福をもたらす幻の虹。
 一通りの説明を終えると、旅人は穏やかに微笑んだ。
「せっかくの機会だし、見られるといいね」


●白水晶

 夜。
 四国山脈中腹域であるこの地は、空気が平地よりもだいぶひんやりとしている。
 辺りは濃い春霞に包まれ、すべての輪郭がやわらかくにじんでいて。
 満月が淡く花々を照らす中、上空から一人の青年が舞い降りた。斜めに切り揃った白髪が、夜風を受け微かに揺れる。
「この先か……」
 朱の目張りの入った瞳が、稜線の彼方に向けられている。黒く染まった山々には、昼間の鮮やかな萌黄色はまったく映っていない。
「あれは……?」
 ふと見上げた月の下に、何かが浮かび上がっているのに気づく。よく見ると、それは夜空に浮かび上がる虹だった。
 昼間見るものよりもずっと淡く、まるで幻のように儚くて。
 青年はしばらくのあいだ、じっと月の虹を見つめていた。その表情は静かだが、光の加減かほんの少し寂しげでもあるだろうか。
 色々考えた末、ここにはひとりで来たのだけれど。

「……ぬ、何やら騒がしいな」
 人の気配を感じ、視線を地上へと移す。声が聞こえた方へ向かってみると、そこには見覚えのある制服姿の集団。
「なっ…奴らがどうしてここに!」
 青年は慌てて近くの木陰に身を隠す。予想外な相手との遭遇に、動揺の色を隠せないでいるようだった。
「何と言うことだ…深層対話(訳:もの思い)にふけるうちに、奴らの集団に紛れ込んでいたとはな……」
 青年は自身の失態を大いに恥じた。
「くっ…下手に動けば、俺様の白輝きの煌めき(スペクタクルオーラ)のせいでバレてしまう……! しかるべく妙案を講じねば」
 悩む必要の無いことを必死に考えつつ、青年は物陰から周囲を伺う。誰も近付いてこないところを見ると、どうやらまだ気づかれてはいない様子だ。
 大きく、一度息を吐き。
「……仕方ない。しばらくここで様子を見るか」
 今動き出せば、それこそ気づかれてしまう。
 翼の水晶飾りがしゃらり、と音を立てた。


●紫水晶

 ”今夜、高知でお花見があるそうですわよ”

 そんな報告をメイド仲間から受けたのは、つい昨日のこと。
 そうなんだ、とそっけなく返してはみたものの、気になっているのはお見通しだったのだろう。
「あの地は天界との戦いがあったばかりですわね。ちょっと様子を見にいってはどうかしら?」
 莞爾と微笑まれ、そのまま引き受けた。うまく乗せられた気がしないでもないけれど。

 満月の中、降り立った地は静かだった。
 甘い香りがどこからか漂い、淡い光の中で花々が浮かび上がる。
 いつもの世界にはない景色にしばし目を奪われてから、手にしていた籠をそっと開いてみる。
 中にはお気に入りの茶器セット。ビロードに包まれた白磁が月光の中で艶めく。
「何となく持ってきてみたけど、ね」
 今までの自分なら、使うかどうかわからないものを持ってくることなどありえない。じゃあ今日に限って何故、と聞かれたら――

 その時、ふと知った気配に気づき顔を上げる。
 数メートル先に立つのは樹齢200年は越えているだろうか、まさに今満開を迎えた桜の巨木。枝々を埋め尽くす花弁の中で、影が揺らめいた。
「帰ってたんだ」
 近づき声をかけた相手は、ゆっくりとこちらを見下ろした。夜色の髪の下で、猫のような瞳が細まる。
「……ああ、そっか。そろそろあの花が咲く頃だもんね」
「ええ」
 相手はそれだけ言うと月虹に視線を戻し、変わらずの微笑を浮かべている。
 命日だしね、とは口にしなかった。相手はそんな感傷など望んでいないことも知っているから。
「……じゃ、ボクはいくから」
 去ろうとする背にかけられる声。
「――あなたの」
「え?」
 振り向きざま、月の中で幻妖が浸る。

「欲しいものは見つかりましたか?」

 少女はその紫水晶の瞳に、しばらくの間月虹を映していた。
 やがて再び背を向けると、一言だけ告げる。

「わかってるくせに」

 歌うように笑う声が、夜風に溶け込んでいった。


●花朧の宴

 今宵は豊かな天満月。
 朧月夜に虹がかかり、しっとりとした夜風が頬をなでれば不思議と笑みがこぼれてしまう。
 藤の淡い芳香と、ひらひらと舞い落ちる桜の花びら。
 大気を彩る、鳥のさえずりのような話し声。

 さあ、少し遅い夜桜を楽しみませんか。



リプレイ本文

 今宵は豊かな天満月
 
 ねえ、きっと

 こんな夜は――


●ゆらゆらと

「月虹、ですかー…。折角ですし、見られるといいですねー?」
 ふんわりとアホ毛を揺らし、櫟 諏訪(ja1215)は月光に照らされた山間を見つめた。
 一時的に落ち着きを取り戻した四国。色々あったけれど、今夜はのんびりと季節を楽しみたくて来た。
 蛇蝎神 黒龍(jb3200)はカメラ片手に、花で彩られた広場を見渡し。
「ええ景色やなあ。恋人さんに見せたら、喜んでくれそうや」
 今夜の目的は、愛してやまない可愛らしい相方と、いつか来るための下調べ。もう一つ、気まぐれに持ってきた物もあるのだけれど。
「夜はやはり、冷えますねぇ…」
 深森 木葉(jb1711)はひんやりとした夜気に小さな身体を震わせる。
「長羽織を持ってくるべきでしたかぁ…」
 山間部の夜は思った以上に寒い。もう少し厚着してこればよかったと空を見上げた時、あちこちで歓声が上がった。

「これが月虹…綺麗…」
 ため息を漏らす天宮 葉月(jb7258)と黒羽 拓海(jb7256)の視線先。満開の八重桜の遥か向こうに淡い虹が架かっているのが見える。
「昼間に見る虹とは全然違うね。花も綺麗だし、幻想的で違う世界みたい…」
 夜空に浮かぶ月虹は、まるで幻のようで。
「先日の雪桜といい、今年は珍しい風景をよく見るな。しかし…」
「どうしたの? 拓海」
「見事な月と花に山間には月虹が掛かるとなれば、酒盛りにいい景色なんだが…まだ飲めんのが残念だ」
 むうと唸る恋人に、葉月はつい微笑んでしまう。
 マキナ(ja7016)とメリー(jb3287)の兄妹は、散歩しがてら月花を眺めていた。
「この光景は確かに幻想的だな…」
 月虹へ瞳を細める兄の隣で、メリーは頷き。
「きっとバルシークさんも好きだったと思うのです」
 群青色のリボンをきゅっと握りしめる妹を、兄はそっと見守る。
「へぇ、こんな夜にも、虹がかかるんだなぁ…」
 若杉 英斗(ja4230)は幻と呼ばれる光彩のアーチを見つめ。
「見た者に幸福をもたらすって噂だけど、これで俺もモテモテになったりするかなぁ」
 そんな事をしばし考えてみる。

「月夜のお花見お茶会とは、また風流ですね。月虹がまた綺麗で…」
 夜空を見上げ、Rehni Nam(ja5283)は小さく呟く。
「……ちゃんが、ここにいればなぁ」
 想いを馳せるのは大切な恋人。こんな夜を一緒に過ごせたらどんなに素敵だろうと思う。
 川澄文歌(jb7507)は、月を見てある悪魔に思い浮かべていた。
「こんな月夜の晩はあの温泉の日の事を思い出すね…」
 満天の星空の下、共に歌い合った穏やかな夜。
「今日また会える…そんな予感がするよ」

「きゃはァ、いい場所ねェ…夜桜見物と洒落込みましょうかァ♪」
 杯片手に黒百合(ja0422)は、既にほろ酔い気分でのんびりと過ごしている。そこをナナシ(jb3008)が通りがかり。
「あら、黒百合さんも来てたのね」
「あらァ、ナナシちゃんじゃない。一緒に飲みましょうよォ♪」
「いいわね」
 共に肩を並べ、しばし花宴を楽しむ。
「久々にみんなに会えてちょっとわくわくするね!」
 見知った面子に心躍らせているのは、雨宮 祈羅(ja7600)。久しぶりに遊んだりおしゃべりがしたくてやってきた。
「やっぱりお月見はいいね。探偵さん、今日も来られないとかドンマイすぎた(」
 大切な夫が一緒じゃないのは、ちょっと寂しいけれど。
「お花見と…お団子は…ジャスティス…」
 団子を大量ゲットしたベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)は、食べながら辺りを散策中。
「ふらふらと…食べ歩き…ゼータクな時間…」
 心地よい夜風が黒灰色の髪をふわりとなびかせる。

 ゼロ=シュバイツァー(jb7501)は桜の下で部隊面子と四国泥棒記念パーティを開いていた。
「いやー! まさかこんなもの手に入るとはなぁ〜♪」
 手にしているのは戦利品『Sith Note』。朗読用のマイクとスピーカーも準備済みである。
「これはそんなに重大なものだったの…ですね」
 黒歴史の塊を熟読する華桜りりか(jb6883)の隣で、矢野 胡桃(ja2617)は顔面蒼白でわなわなしている。
「まさかの朗読会とか、お前達正気か主に右腕ぇ!」
 何か気づいたら巻き込まれてた。
 そんな彼女達をカメラで撮影中なのは、シグネ=リンドベリ(jb8023)。
「お酒は…ダメ? 甘い物は苦手なのよねェ…」
 軽くぼやきつつレモン炭酸水を口にする。それでも、楽しそうな面子に自然と笑みが零れるのだった。


●めいめいに

 ヤナギ・エリューナク(ja0006)は恋人のセレス・ダリエ(ja0189)と辺りを散策していた。
「月虹…とても綺麗ですね…」
 セレスは夜空を見上げるとわずかに瞳を細める。
 月の光を反射する月虹はとても淡く、儚く――そして美しい。
「幻想的で…でも、何時かは消えてしまう…少しヤナギさんの様です」
「ああ…まるで消えないセレスのようだな。って俺?」
 意外な言葉にセレスを振り向くと、彼女はこくりと頷いてみせる。
「いやいや俺じゃねーだろ、儚くて、何処か透明で、美しい…」
 セレスのようだと言うより先に、届く声。
「まあ、月虹より、ヤナギさんの方が綺麗ですけれど…」
「って言うか、俺が月虹より綺麗トカ。そー言うのは、男が女に言うモンだっての!」
 思わず苦笑を漏らしながらセレスの髪を一撫でする。
「? そう言うのは男から女にですか…」
 セレスは考えるように視線を落とすと、再びヤナギを見つめ。
「まあ、本当の事ですから、女が言う事もあるのです」
 ヤナギは再び笑うと、今度は彼女をそっと抱き寄せる。肌寒い気候のせいか、今夜はいつもより相手の体温が伝わってきて。
「そだな…じゃあ、こうだ。俺よりセレスは綺麗だ。これならイイだろ?」
 桜の花弁が頭上から舞い降りてくる。穏やかな夜気が、二人を包み込んでゆく。

 月虹がよく見える開けた場所で、花見をする面々がいる。
「いい場所ですね」
「効率良く掃除した後は格別に気持ち良いよな!」
 夜来野 遥久(ja6843)が頭上の月に瞳を細めると、小野友真(ja6901)は花の香りを一杯に吸い込む。
 その隣では加倉 一臣(ja5823)が八重桜を眺めつつ、ぽつりと。
「…そろそろ咲く頃合いかな」
 多くは語らない。それでも案の定、西橋旅人(jz0129)が静かに頷いて。
「あれからもう2年か…」
「2年!? マジでかそんな経つっけ…最近の事のように思うのにな」
 驚く友真に続き、月居 愁也(ja6837)もしみじみと。
「あそこの花水木は、今年もきっと綺麗だよね」
 思い出の場所に想いを馳せつつ、満月に献杯。

「あの時はなぁ。誰かさんの無茶グセには、ほんとにもう」
「うっ…」
 旅人に向けた一臣の言葉に、愁也もそうそうと頷き。
「ほんと旅人さんは無茶ばっかりで!…って全員こっち見んな(」
 主に遥久の視線が怖い。
「わざとらしくボヤいてみたけど、ダメだこいつら全員この台詞に当てはまるわ」
「結局みんな似た者同士だよね」
 苦笑する一臣と旅人に友真がツッコむ。
「もちろん一臣さんもやで?」
「ふっ…俺の棚上げは既にパッシブスキr痛い友真の視線が痛い」
「あ、ちなみに俺はヒーローやから仕方ないですてへ」
「ふざけんな友真! それなら俺のだって頑張りすぎの結果d」
「愁也、俺の目を見てもう一度言ってみろ」
「ごめんなさい遥久」
 土下座する愁也に遥久はため息をつきつつ。
「全く…いつも無茶はするなとあれほど…」
 一臣の”お前もな”という視線は、笑顔で黙殺である。

 その頃、静かな場所で腰を落ち着けた木葉は、持参した包みを開けていた。
「月見と言えばお団子ですねぇ」
 はむっと頬張り温かいお茶をすすれば、寒さもだいぶ和らいでくる。
 空にはまるで、お団子のような満月。
「おおぉ〜。あれが月虹ですかぁ〜。きれいなのですぅ〜」
 しばらく見とれていると、大量の団子を抱えたベアトリーチェがやってきた。
「こんばんは…これ…食べる…?」
「おぉ…いいのですかぁ〜?」
「たくさん…あるから…」
 少女達は並んでもぐもぐ。誰かと一緒に食べると、より美味しく感じるから不思議だ。
 ふと、木陰に誰かがいるのに気が付く。
「…あれ…何してるんだろ…?」
「何だか怪しいですねぇ…」
 明らかな不審者に、二人はこっそり後ろにまわると観察開始。
「ノゾキをのぞく…これジャスティス…」

 五分経過。
 人影は動かない。

 十分経過。
 人影はもぞもぞしている。

 十五分経過。
 耐えきれなくなったのか、その場から動きだす。

「ぬわああ!? 貴様らいつからそこにいた!」
 人影は見た目15、6才程の青年だった。朱の目張りが入った三白眼が驚きに満ちている。
「初めましてなのですぅ〜深森木葉というのですぅ〜」
「…私は…ベアトリーチェ…」
「いきなり自己紹介とは調子狂うな貴様ら…ま、まあいい。名乗られた以上、名乗り返すのが従士としての務め」
 ふ、と笑みを浮かべた相手は、斜め前髪をなびかせ決めポーズを取る。
「我が名はシス=カルセドナ! 『凍てつく玻璃m」
「お団子…食べる…?」
「美味しいですよぉ〜」
「おい人の名乗りは最後まで聞け!」

 同じ頃、英斗と諏訪は見知った少女と遭遇していた。
「んっ!? アレは…」
 いつものメイド服に桃色のボブヘアー。紫水晶の瞳が微かに見開かれている。
「リロさんじゃん。久しぶり」
「この前のカモミールティーありがとうございましたよー? お元気でしたかー?」
 今夜のリロは本の代わりに、バスケットを抱えている。
「こんな場所でなにしてるんですか? お花見?」
 英斗の問いにやや迷った後、頷いて。
「うん。ボク花見したことないから…やってみようかなって」
 聞いた諏訪はじゃあ、と切り出す。
「せっかくですし、自分達と見て回りませんかー?」
「一人でいてもつまらないでしょ? よかったら一緒にどうです?」
 その誘いに、リロはほんの少し嬉しそうに頷いた。
「お誘い、ありがと」

 一方、ようやく出会えた月虹に黒龍はシャッターを切り続ける。思い出すのは、あの満月の夜。
「懐かしいなあ…」
 不思議な洋館での出会い。
 愛する人の手を取り、月の川を駆けた。
 あの時はまだ気持ちを伝えられずにいたけれど。
 今は、ずっと側に。
 そう恐れず告げられるようになったのは、いつからだったろうか。

 拓海と葉月は二人で穏やかな時間を過ごしている。
「なんだが…意識せずとも色々と考えてしまうのは場所柄か」
 ほんの少し前まで、騎士団と命懸けの攻防を繰り広げた地。
(今後の情勢、騎士団とツインバベルの次の出方、各地で動き出している悪魔のこと…考える事は多い)
 ついあれこれ思考する恋人を、葉月は少し心配そうに見守っている。
(今日はちょっとぼんやりしてるみたいだけど…拓海にとっては色々と因縁がある土地だからかな)
 それならばとケセランを召喚し。白いふかふかの毛並みで、拓海の頬をもふっとやる。
「…どうした?」
 きょとんとなる拓海に葉月はにっこりと微笑んで。
「和めるかなっておもって。あ、ご褒美は、私を甘えさせてくれるっていうのでいいよ?」
 彼女の気遣いに気づき、内心でしまったと思う。恋人が隣に居るのにすっかり上の空だった。
「……その、すまない」
 ばつが悪そうに葉月の髪を撫でる。
「いいよ。何か思う事があったんだろうし」
 そう言いつつも、一緒に居るのに自分を見てくれないのはやっぱり、寂しい。最近は独り占めできる時間が減って、余計に構って欲しい気持ちもあった。
 そんな彼女に気づいているのかいないのか、拓海は葉月とケセランをもふもふとやりながら。
「そう言えば、無事に戻ったらお願いを聞く約束だったな。何かして欲しいことはあるか?」
 対する葉月はほんの少し考えた後。
「言っても聞かないだろうけど…今後は大怪我しないようにね?」
「……それだけか?」
 意外そうな拓海に葉月はちょっとだけ真剣な表情で。
「私にとっては、一番のお願いだよ」
 その言葉に、拓海は何も言い返せない。

「散る桜、残る桜も、散る桜…来年もこの桜を見れるといいわねェ…」
 そう言って、黒百合はちょっとしんみりしながら花を見つめていた。
「あら黒百合さん、今日はどうしたの?」
 ナナシの問いをはぐらかし、彼女は金色の瞳を揺らめかせる。
「こうやってナナシちゃんと呑めればいいのよォ…」
 先の事はわからないから、とりあえず今を満たす。
 いずれは皆、散っていく桜であるのならと。
 木葉とベアトリーチェは、シスと団子を食べつつ月を見ていた。
 甘い花の香り。どこか刹那的な景色に、木葉は心に紡がれた調べを詠う。
「『ゆうげんの そらにたなびく はるがすみ のぞみのつきに かかるあめゆみ』」
「ほう…なかなか高尚な言霊を使うではないか、人間」
 感心するシスに、木葉は少しはにかんでみせる。
「お団子食べたら…あれ一緒に…もふもふしよ…?」
 ベアトリーチェが指す先には、誰かが連れて来た柴犬が寝そべっている。
「おぉ〜いいですねぇ…動物は好きですよぉ〜」
「ふん、貴様がどうしてもというなら仕方ないな」
 そんなわけで、皆で柴犬をもふもふ。
「もふわんこは正義なのですぅ〜」
「何だこの魔獣は…清廉無垢たる魔力で俺様を捕らえようというのか…っ」
「動物に『は』…好かれるんだね…」
「おい貴様一言多いぞ!」
 とか何とか言いつつ、楽しそうな三人である。

 英斗達はあちこちの景色を一通り見て回っていた。
「どうです。こないだの遊園地もだけど、この世界も捨てたもんじゃないでしょ!?」
 英斗の問いにリロは頷いて。
「うん。綺麗だった…凄く」
「月や花を見て綺麗だって思う心は、悪魔も人も変わらないですねー?」
 そう言ってにこにこする諏訪に、リロは桜をじっと見つめながら。
「…ほんのひとときしか見られないから、みんな桜に惹かれるのかな」
 もしそうであるなら。
 刹那を生きる人に魅せられた悪魔の気持ちも、少しだけわかる気がした。

 その時、後方で声が上がる。

「あれ、リロさんじゃないですか」
 かけられた声に振り向くと、そこには文歌とレフニーの姿。
「また会えましたね。前に紅茶を送ってくれて、ありがとうございます♪ あ、こっちはお友だちのレフニーちゃんです」
「初めましてです」
 レフニーが自己紹介をする中、文歌はリロが抱えるバスケットに気づく。
「その手に持っているのは…」
「あ、これは茶器だよ。何となく持ってきてみたんだけど」
 ちょっと恥ずかしそうなリロに、文歌は閃いたように全員を見やる。
「私達今からお茶会をするんです。よかったらご一緒しませんか?」
「いいですねー? 他の人たちも誘ってやりましょうかー!」
「じゃあ俺も準備を手伝おうかな」
 諏訪と英斗の言葉に、レフニーはそれならばと。
「ほむ。お茶のお供なら、お菓子部部長代理の私に任せて下さい」
 こうしてメンバーはお茶会の準備を始めた。

 その頃、一頻り飲んで食べたゼロ達は朗読会を始めていた。
「さーて、お待ちかねの『シスノート朗読会』の開催やで!」
「読むな。読まないで。読むんじゃありませんよハウス!」
 胡桃の懸命な抗議は無慈悲にスルー。しかしいざ読み上げようとした所で無慈悲な妨害発生。
「りんりん…あとは…任せたで…」
 華麗に気絶したゼロの後を継ぎ、りりかはマイク前に立つ。
「あ、あー……これでお話しをするの、です?」
 実の所彼女は黒歴史が何たるかは、よくわかっていない。
「でも任せられたからには、責任持って読むの…」
「そんな責任感い・ら・な・い・の、よ!」
 もはやキャラ崩壊中の胡桃には、チョコを口に放り込んでにっこり。
「甘いもので落ち着きましょう、です」
 シグネは被害者()達を眺めながら、桜餅をぱくり。
「楽しそうねェ…」
 炭酸水ずずー。
「では…いきます、です」
 りりかのよく通る声が、夜風に乗って響き渡った。


 9月2日 今日は蒼閃霆公から思考読み取り訓練を受けた。明日から試すが透眼(クリスタルビュー)持ちの俺様ならば余裕だろう。

 9月3日 エルで試したら兄さんうざいからあっち行ってと言われた。解せぬ。

 9月4日 ソールで試したら噛みつかれた。解せぬ。


「やめて最近のところは特に読むんじゃありません間違っても自分に付けられた二つ名だけは」
 胡桃がむぎゃおーした時だった。

「ほう…感心だな、人間」

 どこからともなく現れたのは、やたら白い天使。斜めな前髪を夜風になびかせ、不敵な笑みを浮かべている。
「俺様の黙示録(訳:日記)をどうやって手に入れたのかはわからんが、啓蒙に努めるとは感心だ」
 ちょっと何言ってるかわからない中、呪わしげな声が上がる。

「見つけた、わよ。赤パン……!」

「なっ…貴様何故それを! …ぬ?」
 胡桃に気づいたシスは、合点した様子で。
「誰かと思えば、貴様は『桃銀の絶対狙撃少女(ピーチトリガーハッピー)』dふががおい何をする!」
 シスの両頬をぐいと引っ張った胡桃は、黒い微笑で。
「二つ名というものは、ね。どこにも書き記さず、各々の心の中に留めておくもの、よ」
「何だと、貴様何もわかっていないようだなぴーちt」
「だからみんなの前で呼ぶな!」
「痛い痛い痛いわかったから離せ!」
 解放されたシスはダッシュで木陰へと避難。涙目で頬をさすりつつも笑みを浮かべ。

「くく…恥ずかしがる必要はないぞ、人間」

「貴様等の本音など我が透眼(クリスタルビュー)の前では、さらけ出したも同然。どうやら、俺様に会いたくて仕方なかったようdおい石を投げるのはやめろ!」
「あら、ごめんなさいねェ。投げろって天啓があったものだから」
 ほほほと笑うシグネの隣で、ゼロが声をかける。
「お前がシスか。初めましてやなぁ、陛下が世話んなったそうで」
「ぬ、誰だ貴様は」
「俺か? 俺は【桜鴉門】の部隊長やってるもんや。お前の日記、悪いけど預からせてもらってんで」
 残念厨二脳な天使は、ゼロの発言をもの凄く斜め前向きに解釈した。
「ほう…貴様はわかっているようだな。俺様の黙示録に秘められし混沌のフォースを!」
 全員目が点になる中、ふははとゼロを見やり。

「ならば貴様には真名を与えよう、『滅光せし冒涜の黙示者(シン=アポカリプス)』よ!」

 その瞬間、ゼロは胡桃の「仲間を見る視線」を思いっきり感じた。


 同じ頃、遥久と別れた愁也達は諏訪に誘われお茶会へと参加していた。
「お〜リロちゃんも来てたか! 可愛い子には桜吹雪が似合うねぇ」
 嬉しそうな友真の隣で、愁也はいそいそとあるものを取り出す。
「あのさ、リロちゃん。もらった紅茶、大事に飲んでるけど減ってくのすげえ惜しくてさあ」
 なんとなく会える気がして持ってきてた桜ダージリン。ここぞとばかりに差し出す。
「ということで美味しい紅茶が飲みたいな!」
「うん、いいよ」
 うきうき顔で待つ愁也を見て、一臣は笑いながら。
「持ってきた甲斐があったな」
「うん。愁也ちゃん、すっごい嬉しそうだね」
 同じくお茶会に参加した祈羅も、にまにましながら見守っている。

「ねえねえリロちゃん、それ何やってんの?」
 愁也の問いに、空のティーポットに湯を注ぐリロは応える。
「茶器を温めてるんだよ。温度が下がらないようにね」
 今夜のリロはいつもより少しだけ、饒舌だった。恐らくは好きな事を話しているせいだろう。
「お茶はね、茶葉によって最適な温度も抽出時間も違う。どれだけいい塩梅で入れられるかが、難しいんだけど」
 慣れた手つきで沸騰したての湯をポットに注げば、茶葉が踊りだす。
 きっかり一分。
 カップに注がれた琥珀色の液体からは、優しい桜の香りが広がった。
「はい」
「わーいありがとリロちゃん!」
「何これめっちゃええ香りやん…!」
 愁也と友真が至福の表情を浮かべる横で、一臣と祈羅も感心した様子で。
「すごいな、全然苦くも渋くもない。同じ紅茶とは思えないな…」
「うん。うちも紅茶好きだけど、これは格別…!」

 次にリロは別の茶筒を取り出した。今度は諏訪が興味津々で問う。
「これは何のお茶ですかー?」
「キミ達の世界で言う烏龍茶。これはこっちの茶器で淹れるね」
 出してきたのは白磁の蓋付き椀。英斗が意外そうに。
「へえ、こういうのでも淹れられるんだ」
 温めた茶器に小さく丸まった茶葉と湯を入れると、すぐに注ぎ出す。そうやって洗茶をしてから再び湯を満たせば、椀の中で茶葉がゆっくりと開いてゆく。
 五十秒後。注がれたお茶からは、甘い蜜のような香りがいっぱいに広がる。
「うわ…烏龍茶ってこんなにいい香りがするんだ…」
 驚く英斗の隣で諏訪も頷いて。
「それに…何だか甘いですよー?」
 こっくりとした飲み心地は、今まで飲んだものとはまるで違う。
 皆でたっぷり時間をかけて飲んでから、祈羅はリロに切り出す。
「ねえ、リロちゃん。うちにも淹れ方教えてくれる? 探偵さんに飲ませてあげたくって」
「うん、いいよ」
 祈羅がリロに淹れ方を教わる中、レフニーと文歌は食べ物を振る舞う。

「凄いたくさんのお菓子ですよー?」
 諏訪はレフニーが準備したお菓子の数々に驚きの声を上げる。
 チョコやクッキーに色とりどりのマカロン。
「やっぱりケーキは、季節のフルーツを乗せたタルトがいいですよねぇ…というわけで、完成したのがこちらです」
 どーんと出されたのは、ベリーたっぷりの甘酸っぱいタルト。一口食べた友真の瞳が輝く。
「これ美味しいなー!」
「スコーンもどうです? 丁度、良いジャムが手元にありますし」
 聞けばブランド苺のC級品を伝手で手に入れ、ジャムにしたらしい。
「みなさん、カツサンドもありますよ」
 いつの間にかメイド服に着替えた文歌も、得意料理を振る舞う。ちなみに何故か青いリボン(訳:例の紐)を二の腕から胸の下にかけて巻き付けている。
「リロさんもこのリボンどうぞ♪」
「…これ、どうやって付けるの?」
 小首を傾げる彼女に、文歌は手慣れた様子で結んでやる。
「できました、似合ってますよ♪」
 リロはつるぺたな自分の胸元と、文歌の胸元をじっと見比べて、一言。
「…何か致命的な格差()を感じるのは、気のせいかな」
「あ、リロさん、でしたっけ。マリーさんはお元気です?」
 レフニーの問いに彼女は頷き。
「うん、元気だよ。今頃こっちに来たくて、うずうずしてるんじゃないかな」
 言いながらタルトを一口。ちょっと驚いたように瞬きをして。
「…これ、美味しい。どうやって作るのかな」
「ほんとですか? 気に入ってもらえたのなら嬉しいのですよ」
 今度はレフニーがリロに作り方を教えていく。


「ふ…俺もついに真名を手に入れる日が来たか…」
 一方、シスに同族()認定されたゼロは大変前向きだった。胡桃が真顔で。
「もっと恥ずかしがってもいいの、よ? と言うか恥ずかしがりなさい」
「へーか目がマジやから」
 りりかがふと。
「あの…シスさん…聞いていい、です?」
「何だ」
「このノートに、たくさん出てくる『ソール』さんとは…仲良しなの、です?」
 その瞬間、シスの表情が固まるのがわかる。
「い、いや奴とは別に仲が良いわけではない。まあ…実力は認めてやらんでもないが」
「あらァ、何だか歯切れが悪いわねェ」
 目ざとく気づいたシグネが、笑顔で追求。
「ほんとは結構意識してるんじゃないのォ?」
「ぐふぅっ」
 痛い所を突かれるも、シスは必死に否定する。
「俺様はべべ別に奴をライバル視しているわけではない」
「よし、じゃあソールのところを重点的に読もうか、りんりん!」
 ぽんと手を打つゼロに、りりかはこくりと頷く。
「い、いや貴様等それはやめろ」
 慌ててノートを取り返そうとするシスを、彼女はひらりと避ける。
「ゼロさんに、”止めて”は”して”だと、教わったの…」
「おいその解釈はおかしいぞ!」
 無自覚無慈悲()な彼女への妨害は、シグネが華麗に阻止。
「ふふ…おいたはダメよォ…?」
 涙目のシスを見る表情は至福のそれだ。
「ごめんなさいねェ…うちの隊長がどうしてもって言うからァ…?」
「貴様その笑顔は何だ!」

 ついに耐えきれず、シスはおもむろに翼を広げる。
「か…邂逅者達よ、俺様はもう行かねばならない。今宵の啓蒙はこれまでにしておくのだな」
「同感、ね?」
 胡桃の目が全然笑っていない。
「ふ…貴様ともいずれ再びまみえが日もくるだろう。それまではさらばだ『桃銀の絶対狙撃少女』よ!」
 胡桃の目に殺意が宿るのと同時、シスは速攻で逃げ(訂正線)飛び去った。

「私が今ダアトでよかったわね……?」

 そんな恐ろしい声が響いたとか響かなかったとか。

 ※

 朗読会から逃れたシスは、静かな場所に降り立った。ほっとした、その時。
「あれ、シス? ここで何してるの?」
「ぬ!?」
 思いっきり武器を構えるRobin redbreast(jb2203)に慌てた様子で。
「か、勘違いするな! 俺様はただ死者の追悼に来ただけだ」
「…追悼? ふーん」
 じゃあ今回は交戦はなしだね、と武器を収める彼女に胸をなで下ろす。
「人間も天使も花見が好きなひと多いね。あたしは機会だったから楽しさがよくわからないけど…あ、これ食べる?」
「ぬ…」
 ロビンが差し出したお菓子やジュースを受け取る。二人はその場で、しばしの間取り留めのない話を始めた。
 アンパンを囓りながら桜を見つめるシスに、ロビンは問う。
「シスは花を見て、死んだ人を思い出すの?」
「何?」
「誰かを追悼してたんでしょ?」
「いや、そういうわけでは…」
「じゃあ何してたの?」
「ぐ……」
 言葉に詰まったシスはぶつぶつと呟いていたが、諦めたように。
「まあ…散りゆく花々に故人を重ねたという趣も…ないわけでは…ない」
「ふうん、そうなんだ」
 ロビンはしばらく黙った後、再び問う。

「シスは仲間を殺した撃退士のことが憎い?」
「な……」
 単刀直入に訊かれシスは面食らった様子だった。しかしやがて、かぶりを振り。
「…色々思う所はあるが、逝った者達は貴様等を憎んではいなかった。だから俺様も、この件で貴様等を憎むつもりはない」
「ふうん、そうなんだ」
 ロビンはそれだけ言うと、ジュースをこくんと飲む。

「……おい」
「なに?」
「言うことはそれだけか」
「え?」
 きょとんとなるロビンに対し、シスはじれったそうに。
「貴様この俺に散々質問しておいて、他に言うことはないのかと訊いている!」
「ないよ?」
「何だと!? じゃあなぜそんな質問をしてくるのだ」
「何となくだよ」
「何だと!?」

 彼女の質問に特別の意味はない。ただ不思議だから訊いたのだ。
 特に追悼の意義を理解できない彼女にとって、シスの行動は不可解に見えたのだろう。
 ロビンはほんの少し考えてから。

「戦ったり、一緒に花見したり、シスって不思議だね」
「いやちょっと待て貴様ほどじゃないぞ」
「え?」
 こちらを見つめる瞳に、困ったように返す。
「俺様には貴様の方がよほど不思議だ」
「……どうして?」
 その問いにシスは答えようとはしなかった。


●ひらひらと

 月夜は静かに、穏やかにふけてゆく。

 ロビンと別れたシスは、ひとり木陰でぼんやりとしていた。
「あれ、シスさんなのです…?」
「お前こんなところで何してるんだ?」
 顔を上げると、そこにはマキナとメリーの姿。
「き、貴様等こそ何をしている」
「俺たちは気分転換で散歩してたんだよ」
 マキナはそう返してから、呟くように。
「あの戦い以来か…」
 その言葉にメリーとシスがぴくりと反応する。マキナは軽く息を吐いた後、天使へと向き合い。
「言っておくが、俺は自分がやれる最善を尽くしたから謝らないぞ」
「…ふん。そんな必要はない」
「なんだ、物わかりがいいじゃねぇか」
 聞いたシスは一旦黙り込んだ後、いつもとは違った調子で口を開く。

「貴様等に対して何も思うところがないのかと言えば、それは嘘になる。…だが俺様は、蒼閃霆公や皓獅子公の選択を受け入れると決めたのだ」

 怪我で戦いに出られない間、散々悩んで出した結論。
 理解なんて簡単にはできない。
 納得出来るほど自分は達観などしていない。
 ――けれど。

「それが後を継ぐ者としての道理と結論づけた。だから貴様に謝られる筋合いなどない」
「お前……」
 その時、メリーがシスに駆け寄りぎゅっと抱き締めた。
「ぬわああ!?ななな何をする貴様!」
「…きっと今はこうした方が良いって思ったのです」
「!?!?!?」
 突然抱き締められ狼狽しまくるシスに、マキナがやれやれと肩をすくめ。
「妹を貸してやるのは今回だけだからな。じゃあな」
「ちょっ…おい待て!」
 後ろ手を振って去るマキナを呼び止めるも既に遅し。なおも離れようとしないメリーに途方に暮れた様子で。
「おい貴様一体どういうつもり…」

「泣きたい時は泣いていいのです」

 その言葉に動きが止まる。
「大人とか天使とか関係無いのです、じゃないと辛いのです」
 沈黙。
 ひらりと花びらが舞い、シスの香水の香りが夜風にまぎれる。
 しばらくした後、ぽつりと声が返ってきた。

「……俺は男だから泣かん」

 メリーが顔を上げると、シスは月を見ていた。その表情は何かを堪えているかのようで。
「迷惑だったのです…?」
「い、いやそうではない」
 不安げなメリーの頭をぽんとやると、恥ずかしそうに目を逸らし。
「貴様の気遣いは受け取っておく。…だが『凍てつく玻璃滅士』たる俺様に近寄れば、貴様の身に厄災が及ぶからな(訳:もう大丈夫ありがとう)」
 聞いたメリーはこくりと頷いて。
「…メリーもまだ気持ちの整理は出来ていないのです。でも前へ歩いて行くと決めたから…シスさんともまたお話ししたいのです」
「き、貴様がそう言うのならば仕方ないな」
「約束なのです!」
 にっこりと笑う彼女に、シスはたじたじながらも頷いてみせた。

 辺りを散策中のヤナギとセレスが見つけたのは、山藤が咲く一帯。
 淡い紫の花弁が夜風に揺れ、藤独特の上品な香りにしばし酔いしれる。
 ふと。
「…ヤナギさん、山藤の花言葉、知ってますか?」
 囁くようなセレスの声に、ヤナギはゆっくりと視線を向け。
「…山藤の花言葉? 俺は花言葉よりも目にしたモノの感想しか抱かねェからな。どんな花言葉なンだ?」

「”決して離れない”と言うんです。少し、怖いでしょう?」

 浮かべた微笑は、月光のせいかどこか妖艶にも見えるだろうか。
「”決して離れない”か……」
「…でも、それが今の私の気持ち…これでも私も結構、怖いのです」
 こちらを見上げる青に、吸い込まれそうになる。
「…セレス。お前ェのそのサファイアのような瞳に捕まるンなら…そうだな、離れないと言わせる所か」
「……これからも、ずっと、近くで…彼方が消えてしまわない様にと…」
 自分だけにむけられる、熱を秘めたまなざし。独占できる幸福を手放したくなくて。
「確り、私が捕まえておきますから、覚悟して下さい…ね…」
 再び微笑するセレスをヤナギは抱き締め、彼女にしか聞こえない声で囁く。

「さ、覚悟すンのはどっちだろうな」

 そっと耳朶にキスを寄せ、妖艶に笑んでみせる。
「こっちこそ、離してなンかやらねェゼ?」
 甘やかな声が、セレスの耳に溶けてゆく。
 それはまるで心地よい、蜜のようで。

 一方、メリーと別れたシスは新たな面々と遭遇していた。
「えっと…貴方学園の生徒…じゃないよね?」
 散歩中だった葉月と拓海がきょとんとした表情でこちらを見ている。
「いや俺様はその…」
 斜めな前髪、白と瑠璃の水晶がはめ込まれたピアス。特徴ある風貌に拓海はぴんとくる。
「…もしかして従士シスか?」
「…ぬ。俺様を知っているとは、貴様何者だ」
「蒼閃霆公と刃を交えたことがある、と言えばわかるか。こっちはその…連れだ」
 拓海は葉月の紹介を一通り行った後、思いきって切り出してみる。
「ここで会ったのも何かの縁だ。少し話せるか」
「…何だ?」
「その…逝った騎士の好物とやらはわかるか。供え物にしようと思ってな」
 その問いにシスは意外そうな表情をしていたが、思案する表情になり。
「蒼閃霆公ならば…酒も好きだがああ見えて茶が好きだった」
 聞けば酒も茶も長い間熟成されたものを特に好んでいたという。
「成る程。何と言うか…らしいな」
 そこで拓海は目前の三白眼がわずかに翳っているのに気づく。
「…すまない。何か思い出させてしまったか」
「い…いや貴様の勘違いだ。用が済んだのなら俺様は行くぞ」
 そのまま去ろうとする背を、思わず呼び止める。
「…まだ何か用か」
「俺は蒼閃霆公から託された願いを実現してみせる。だからいつか…お前とも酒を酌み交わせればいいと思う」
 シスはしばらく沈黙していたが、やがて夜風に紛れるように呟きが返ってきた。

「考えておく」

 同じ頃、友真はリロへ切り出していた。
「あっリロちゃん桂花茶! めちゃありがと、大事に飲んでる。手ぇ込んだことしてくれて凄い嬉しかった」
「そっか。ならよかった」
「そんでさ…もし曲解してたら嫌やし、あのお茶の意味を聞けたら嬉しいな〜なんて思うんやけど…」
 聞いたリロはほんの少し考えた後。
「ユウマは夕暮れが好きだって、言ってたから」
 桂花とは金木犀のこと。
「秋に咲く花だって聞いたよ。なんとなく…秋って夕暮れみたいだな、って」
 去年見た晩秋の景色。
 初夏にはあんなに瑞々しかった葉が色づき、終わってゆく風景。どことなく郷愁を感じさせる甘い香りも、合ってると思ったから。
「なるほどな〜…確かに凄いええ香りがした。うん、答えてくれてありがと!」
 お茶を飲んでいた愁也は、にこにこしつつリロに告げる。
「俺ねえ、リロちゃん大好きだよ」
「え?」
「だから次の機会も本気で、ね。楽しませるよ」
 その言葉にリロは瞳を瞬かせた後、ほんの少し恥ずかしげに視線を落とす。
「シュウヤと話すと楽しいよ。なんか…」
 胸の辺りに手をやり。
「この辺がわくわくする。うまくいえない、けど」
 次はどんな世界を見せてくれるのか、いつの間にか楽しみにしているのも確かで。

 そんなリロ達を微笑ましく見守りながら、一臣は思う。
(彼女に訊いてみたいことはあるけれど…ま、わかってる答えを確認するようなものか)
 なんせマイペースなあの悪魔のこと。
 確かめずとも、命を謳歌しているのだけは間違いないから。
 桜を見ていた祈羅がぽつりと呟く。
「あの花が咲く季節になると、あの子を思い出すよね…」
 元気にしているといいと思いながら、まぁ元気だろうなとも思う。
「考える事は皆同じだな」
 思わず笑みを漏らす一臣に、祈羅もうんうんと頷いて。
「またどこかでこっそりうちらを観察して、ニヤニヤしてるんだろうね」
「違いない」
 そう言って夜空を見上げ、思う事。

 きっとあの人も、その花をどこかで見るだろう。
 理由を探さなくても、なぜか迷わず確信できてしまう。

「あ、そうだちょうどよかった」
 英斗は持参していたいちごサンドをリロに差し出した。
「お茶を淹れてもらったお礼に。食べますか?」
「ありがと」
 受け取ったリロはぱくりと食べると、「美味しい」と口にし。
「あ、この間の栞使ってるよ」
「お、そうなんだ。使ってもらえたならよかった」
 英斗の返しに、ほんの少し微笑ってみせる。
「リロさん、よかったら今夜も一緒に歌いませんか?」
 文歌の誘いにリロはにっと笑んで。
「いいよ」
「私も一緒に歌うのです」
 レフニーも参加し三人で歌い上げるのは、去年の温泉で歌った曲。
 文歌の澄んだ歌声とリロの伸びやかな高音に、レフニーが絶妙なハーモニーを重ねていく。
「へぇ、みんな歌が上手いんだなあ」
 感心した様子の英斗に、諏訪も頷いて。
「聞いてるだけで、何だか幸せな気持ちになってきますねー?」
 それは自身が望む”かたち”を映しているからだろうか。
 人と悪魔の歌声は、夜風に乗って広がってゆく。

 どこからか響く歌声に耳を傾けながら、黒龍はあるものを取り出していた。
「匂う花香はひとつふたつ…香らぬ花が1つ」
 桜の老木の下、手にしているのは花水木の花枝。手芸として造ったものだ。
 それを持ってきた三つのぬいぐるみにそれぞれ持たせる。

 老年の執事には白を。
 若い執事には紅を。

 そして小さな道化師にはトランプを持たせて、リボンで纏める。
 選んだスートは、あの時送られたハートの2。
 残りのトランプは背負わせたリュックに入れておく。

「いつでも帰っておいで」

 どこへともなく声をかけ、ぬいぐるみは木の根元へ。
 元気でやっているといい。
 でもこんな夜は、ほんの少しキミを思い出してしまうから。

 同じく賑やかな一帯に目を細めていた遥久は、知った気配に忍び寄る。
「傷は癒えましたか、シス殿」
「! ……貴様は…」
 相手を認めた天使は、やや気まずそうに口ごもる。遥久は良い夜ですね、と微笑みながらビールを差し出し。
「どうぞ、よく冷えていますよ」
「ぬ……」
 缶を手渡すと、少し離れて座る。その場で迷っていたシスも腰を降ろし、二人は静かに話を始めた。

 遥久と話すシスは妙に大人しく、歯切れが悪かった。
 その様子が気になりつつも、遥久はバルシークから受け取った『魂』について切り出す。
「あの日受け取った彼の人の『魂』は、美しいまま在ります」
 時折話に行くことなどを伝えると、シスはわずかに頷き。
「そうか……」
 それだけ言うと、黙り込んでしまう。その表情は何事か考えているようだったが、遥久も敢えては触れない。

「志も、魂も、我々が継いだものに違いはないと思っています」

 こちらを向く天使の耳には、白水晶と瑠璃が並んではめ込まれている。
 しばしの沈黙の後。

「……貴様を見ていると、蒼閃霆公を思い出す」

「私が…ですか?」
 つい問い返すと、シスは逡巡しつつも頷いて。
「貴様がそれだけのものを継いだということなのだろう」
 そのせいで何となく気後れしてしまうとは、口が裂けても言わないけれど。
 遥久はしばらく言葉を飲み込んでいたが、やがて”同志”に告げる。
「シス殿」
「何だ」
「私はシス殿だけでなく、ソール殿やリネリア嬢とも改めて対話を望んでいます。……公が望んだ未来を実現させるためにも」
 聞いたシスは再び黙り込んだ後。
「奴らがどう考えているか俺様にはわからん。だが…」
 頭をがりがりとやりながら、口を開く。
「俺様は誰のためでもなく、俺様自身のために新たな時代を創ると決めた。如何なる体裁であれ、いずれ貴様等とも決着はつけるつもりだ」
 聞いた遥久は頷き。
「ええ。共に未来を見られるまで、私も諦めるつもりはありません」
 向けられた微笑に、シスもぎこちないながら笑みを返してみせるのだった。


 そして。


 遥久と別れたシスが帰路につこうとした時、それは起こった。

「捕まえたわよ」

「なっ…刺客か!?」
 突然腕を掴まれたシスがぎょっとなる視線先。気配を消したナナシがため息をついている。
「はぁ…ここで貴方と出会ったのも運命かしらね。ちょっと顔を貸しなさい」
「お、おい」
 ナナシは有無を言わさずシスを引っ張ると、物陰に入る。
「良い? これから喋る事は私の独り言だから。貴方は偶然聞こえただけだから質問とか禁止よ?」
「……? よくわからんが、喋りたいなら勝手に喋るがいい」
 怪訝そうな従士に向け、ナナシは先日起きたオグン関連の出来事をすべて話して聞かせた。
 話が進むうちに、シスの表情が驚愕に変わるのがわかる。

「貴様…それは本気で言っているのか」
 信じられない様子の相手に、ナナシは淡々と答える。
「いきなりで驚いたでしょうけど全て本気よ。絶対に誰にも喋っちゃダメよ? オグン自身の望みでもあるし、まだどんな風に話が転ぶか判らないんだから」
「言えるわけがないだろう、団長の命がかかっているのだぞ!」
「しっ!声が大きいわ」
 事の重大さに、シスの額には冷や汗が浮かんでいる。声を押し殺しつつ問う。
「何故こんな重要なことを俺様に話した。貴様自身にも危険が及ぶかもしれないのだぞ…!」
「心配してくれてありがとう。でも私は近い将来の大きな流れに抵抗するために、布石を打ちたいの」
 ナナシのまなざしは既に先を捉えている。
「この件はたぶん私達だけじゃ解決できない。それが話した理由よ」

 すべては、自分の信じる未来のために。

 いきなり突き付けられた現実に、シスは混乱を隠せないでいるようだった。
 黙り込んだまま呆然と立ち尽くす相手に、ナナシは懐から予備のスマホを取り出す。
「私のアドレスとかが入ってるわ。あげるから持っていきなさい」
 対するシスは躊躇ったまま、なかなか受け取ろうとはしない。しかしやがて決心したように視線を上げると、ナナシを見据え。
「……俺様はどうすればいい」
「今は何もしなくていいわ。機が来ればきっと…動かざるを得ないでしょうから」
 彼女の言葉にシスは再び黙り込んだ後、諦めたようにスマホを受け取る。それを見たナナシは一度頷いてから、凜と微笑んでみせた。

「貴方のこと信じてるわよ、シス」


●月虹ゆらめく花朧の宴

 月の虹もいつしか消え、宵の宴も終わりが近付いてくる。
 帰路につく面々の想いもさまざまに。

「いや〜愉快な夜やったな」
 満足げなゼロの隣で胡桃はため息をつきつつ。
「まあ…シスと話せたのはよかったのかしら、ね」
 ほんの少し心配する気持ちもあったから。
「皆さん楽しそうで、よかったの…」
 りりかの言葉にシグネも笑ってみせる。
「次はお酒が飲めるようになりたいものだわァ」
 ベアトリーチェと木葉はお腹いっぱいに団子を食べ、満足の表情。
「楽しかったのですぅ〜」
「友だち増えた…楽しかった…」

「さてぇ、終わった後はお掃除ねェ」
 意外としっかり者な黒百合、ゴミを残さないようにと徹底して後片付け中。
 もう一度桜を振り返り、そっと瞳に焼き付けておく。
 ロビンも掃除を手伝いながら、シスに言われた事を少しだけ考えていた。
(あたしが機械だから不思議なのかな?)
 今度会ったら聞いてみてもいい。
「綺麗…でしたね…」
「ああ。景色もセレスも、な」
 そう言って笑ってから、ヤナギはセレスの肩を引き寄せる。
 決して離れない。
 互いに口にした誓いは、いつしか永遠になると願って。
 二人の時間をたっぷり過ごした拓海と葉月も、帰路につく。
「いい夜だったな」
「うん、いつもと逆で私が甘えちゃったけど、たまにはいいよね」
 拓海に寄り添いながら、ふと葉月は思う。
(あれ? 私、四国に来た時って大体掃除と観光してるだけな気が…)
「ま、いいか。気にしないでおこう」
 今はただ、恋人の側にいる幸せを感じていたいから。

「賽は投げられたわ…後はどうなるかしらね」
 ナナシが月を見つめる後方では、メリーとマキナがかの騎士に想いを馳せている。
「あのねお兄ちゃん…」
「ん」
「メリーね、あの人がねパパみたいだなって思ったの。似てないのに変だよね?」
 聞いたマキナはかぶりを振ってみせ。
「あの人は父性と芯があったからな。すこし分かるよ」
「まだね…このリボンを見ると悲しくなって…きちゃう…の……もっとお話したかったなって…あの人はずるいの…」
 ゲート戦直後から思えば、妹は随分明るくなった。けれどまだ15才。大切な相手の死をそう簡単に割り切れないでいるのだろう。
「俺は結局話すことすらできなかったけども…メリーの言葉は届いたと思うぞ」
 マキナは優しくそう告げ、しばらくの間彼女の頭をぽふぽふと撫でてやる。

 リロと別れたお茶会メンバーは、銘々余韻を楽しんでいた。
「あ、遥久いたいたー!」
 遥久を見つけた愁也は、駆け寄りながら問う。
「どこ行ってたんだよ?」
「秘密だ」
「何それ前にも聞いたし!」
 ぷんすかする愁也に遥久は笑いながら、今度は三人で話すのも面白そうだと思う。
 レフニーと文歌は後片付けをしつつ、お喋りに花を咲かせる。
「お菓子喜んでもらえてよかったのです。腕を振るった甲斐がありました」
「凄く美味しかったです♪ リロさんともまた歌えるといいですね」
 リロを見送った英斗は、ふと本音をぽつり。
「できればリロさんとは、このまま戦う事がなければありがたいけどなぁ」
 彼女はどう思っているのだろう。今度聞いてみようかとも思う。
 桜を眺めていた諏訪は、穏やかに微笑みながら。
「花を見て天使も悪魔も等しく綺麗だと思えて、同じことを想えるのであれば…未来はきっと…なんて思いましたよー?」
「うん…そうだね。うちもそう思うよ」
 祈羅と旅人が頷く隣で、一臣は皆を見渡して。
「じゃあ、最後に改めて乾杯でもしよっか」
「賛成ー!」
 見事な満月に杯を掲げ、積み重ねてきたものへ乾杯する。

 その時、ざあっと風が吹き桜の花びらが一斉に舞い上がった。
 降りしきるほどの花吹雪に、しばし全員その場で魅入る。
 風に混じって香る気配は、どこか懐かしさを感じさせて。

「…相変わらずですね」
 一臣が苦笑する側で、祈羅も彼方へ向けて声を張る。
「やっぱりずるいー!」
 降りしきる花びらに友真は笑いながら思う。

 一種の憧憬なのかもしれない。
 満ち足りたあの瞬間。
 自分も欲求のままに生きれば――悩み事はなくなるのだろうか。
「またいつか、seesawGameしよな?」
 幸せそうなあの瞳が、もう二度と翳らなければいい。
 そう願って、コーラを掲げる。

 夢も現実も過去も未来も。
 全ての愛しいものに乾杯を。

 花吹雪に目を細め、黒龍も彼方へ告げた。
(まだ、絵札は残っているよ)

 だからまた、ボクらと遊ぼう。

 ほらこんなにも、この世界は綺麗だから。




依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:27人

Eternal Flame・
ヤナギ・エリューナク(ja0006)

大学部7年2組 男 鬼道忍軍
撃退士・
セレス・ダリエ(ja0189)

大学部4年120組 女 ダアト
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
ヴェズルフェルニルの姫君・
矢野 胡桃(ja2617)

卒業 女 ダアト
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
蒼閃霆公の魂を継ぎし者・
夜来野 遥久(ja6843)

卒業 男 アストラルヴァンガード
真愛しきすべてをこの手に・
小野友真(ja6901)

卒業 男 インフィルトレイター
BlueFire・
マキナ(ja7016)

卒業 男 阿修羅
撃退士・
雨宮 祈羅(ja7600)

卒業 女 ダアト
ねこのは・
深森 木葉(jb1711)

小等部1年1組 女 陰陽師
籠の扉のその先へ・
Robin redbreast(jb2203)

大学部1年3組 女 ナイトウォーカー
誓いを胸に・
ナナシ(jb3008)

卒業 女 鬼道忍軍
By Your Side・
蛇蝎神 黒龍(jb3200)

大学部6年4組 男 ナイトウォーカー
蒼閃霆公の心を継ぎし者・
メリー(jb3287)

高等部3年26組 女 ディバインナイト
Cherry Blossom・
華桜りりか(jb6883)

卒業 女 陰陽師
シスのソウルメイト(仮)・
黒羽 拓海(jb7256)

大学部3年217組 男 阿修羅
この想いいつまでも・
天宮 葉月(jb7258)

大学部3年2組 女 アストラルヴァンガード
縛られない風へ・
ゼロ=シュバイツァー(jb7501)

卒業 男 阿修羅
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
撃退士・
シグネ=リンドベリ(jb8023)

大学部3年319組 女 インフィルトレイター
揺籃少女・
ベアトリーチェ・ヴォルピ(jb9382)

高等部1年1組 女 バハムートテイマー