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マスター:久生夕貴
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
形態:
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/04


みんなの思い出



オープニング


「……これが、雪」
 舞い落ちてくる白い結晶を、少女は手で受けてみた。
 けれどそのひとひらはすぐに溶けてしまい、後には水の粒しか残らない。
 紫水晶の瞳が、雪化粧の街並みを映す。

 ここは、とても寒い。
 とても寒くて、とても綺麗だ。




 これは、数時間前の話。

 広島因島ゲート―『ダーティメイデン《淑女の接吻》』。
 メフィストフェレスが居を構える享楽の地で、悪魔リロ・ロロイは手にした書物に視線を落としていた。
 そこに書かれているのは、各メイドの名前と行動予定。銀の懐中時計片手に、今日の分を書き込んで行く。少女達のスケジュール管理は、リロの重要な役目の一つだ。
 一通り書き終え、何の気なしにぺらぺらと頁をめくる。そしてある項目に目を留めると、ぽつりと呟く。
「……ボクもちょっと行きたかった、かも」
 リゾートスパに行ったマリアンヌとヴィオレット。
 偵察を兼ねて人界のクリスマスを見てきたというルクーナ。
 彼女達の土産話は実に楽しそうで、羨ましい気持ちがなかったわけではない。
 ふと、誰かが近付く気配を感じ顔を上げる。そこに立っていたのはリロが面倒を見ているメイド見習いだった。
「どうかした?」
「いえ、先程お声をかけたのですが反応がありませんでしたので」
「ああそうなんだ、ごめん。何かな」
 彼女の用向きは大した事ではなかったため、数分で話を終える。しかし一向に退室しようとしないメイド見習いに、小首を傾げ。
「まだ何か用?」
「……リロ様。お休みを取って『外』へ行かれてはいかがです?」
「……え?」
 突然切り出された提案に、思わず目を瞬かせる。メイド見習いはにっこりと微笑んで。
「あちらは面白いものがたくさんあるのでしょう? 近々ここも慌ただしくなると聞いております。今のうちに羽根を伸ばしてこられたら、よろしいですわ」
「でも……どうして?」
「何だかお疲れのご様子でしたから」
 聞いたリロはやや驚いたように沈黙した後。
「……そんな風に見えたかな」
「ええ。ご自分でお気づきでないのかもしれませんけれど」
 その言葉に困ったように視線を落とす。
 普段任務でしか人界に赴かないリロにとって、仕事以外で『動機』を作るのはそう容易いことではない。
 行ってみたい『気持ち』と、自分を納得させるだけの『動機』はまた別の話。彼女自身、面倒臭い性質だとわかってはいるのだけれど。
「リロ様がいない間は、わたくし達が代役を務めますからご心配いりませんわ」
 メイド見習いは自信に満ちた表情で頷いてみせる。しかしそれでも彼女は迷っていた。
 好奇心と、戸惑いの狭間。
 今まで何かを強く望んだことがなかったリロにとって、それは恐れにも似た感情で。

 ――欲しいものがあるのなら、手に入れてみればいいのですよ。

 ふいに、道化の悪魔から言われた言葉が脳裏に浮かんだ。
 喪失も歓びも手に入れてみなければわからないと、彼は言った。確信めいたその笑みに、嫉妬しなかったと言えば多分、嘘になる。
(やっかいなことだ、ね)
 多くを識れば識るほど、心はどんどん複雑になっていく。その度出口を探し求め迷うとわかっていて、なお。
 リロは立ち上がると、こちらを見つめるメイド見習いへ向け淡々と告げる。

「……わかった。じゃ、ここのことはよろしくね」
 
 それだけ言い残し、部屋を出る。
 何が欲しいかと問われれば、わからない。けれどきっと、そう。

 これは性分なのだ。





「あれ、リロ様は?」
「人界に行かれましたわよ。休暇ですわ」
「ああ、そうなんだ。最近何となく元気なかったもんね」
「ええ。お務めに支障が出ても困りますもの」
「……そう言えばさ。リロ様、何だか少し変わったよね」
「あら貴女も気付いてらしたの」
「やっぱり、彼らのせい?」
「うふ。お帰りになられたら分かるかもしれませんわ」





 冬の終わりに降る雪は、どうしてこんなにも儚げなのだろう。

 早春の息吹が聞こえ始める二月。
 梅が咲き始め、ようやく寒さも峠を越したかと思ったら、突然寒の戻りがやってくる。
 春の訪れにはまだ早く、きんと冷えた冬の凜々しさは眠りにつき始め。
 どことなく不安定なこの季節に降る雪は、まるで冬を名残惜しむように見えるから不思議だ。

 その日、撃退士達はたまたまそこを訪れた。
 ちょっとした依頼の帰り道。雪化粧の街並みを眺めながら帰路に着こうとしていた矢先のこと。
 撃退士達の目に、見覚えのある少女の姿が映る。
 見た目は14,5才くらいだろうか。コートの上からでも分かる華奢な身体が、淡雪の降る橋の上で佇んでいる。
 桃色のボブヘアーがふわりと風になびいたと同時、少女は振り向いた。こちらを捉える紫水晶のような瞳を、一度だけ瞬かせ。

「……あれ、キミ達」

 予想外な相手との遭遇に、撃退士達は一瞬唖然となる。
 大公爵メフィストに仕えるメイドにして、時を操る悪魔。
 リロ・ロロイがこちらを見つめていた。
「奇遇だね、こんなところで会うなんて」
 そう言って髪を軽く抑えるリロは、いつものメイド姿ではなかった。膝丈の黒いケープ付きワンピースコートに、縁にファーがあしらわれたショートブーツ。
 同じくファーに縁取られたフードには、うっすらと雪がかかっていて。
 どうしてここに、と問いかけるより早く少女は口を開く。
「心配しなくてもボクは今、休暇中だから」
 争うつもりもないと言いたいのだろう。いつも手にしている『本』も、今日は見えない。
 リロはわずかに首を傾げると、ただ、と言いおいて。
「本当のところ言うと、どこに行けばいいかわからなくて困ってたんだよね」
 聞けば休暇で何となくここにやってきたものの、特に行く当てもない。仕方がないので、その辺をしばらく見て回っていたのだと言う。そのせいでコートに雪が積もっていたのだ。
「マリー達と来られればよかったんだけど、ね」
 独り言のようにそう呟いてから、視線を街並みへと移す。
 彼女の白磁のような頬は、寒空の下でより白く見え。やがて視線を撃退士達へ戻すと、淡々と切り出した。
「あのさ。ボクがここにいるってことを、多分キミたちは放っておかないよね?」
 その言葉に撃退士達は顔を見合わせる。
 確かに、彼女の言う通りだった。
 休暇中らしいとは言え、未だ敵対勢力の悪魔と遭遇して放置しておくわけにもいかない。
 なら、とリロはわずかに微笑し。

「今日一日、ボクに付き合ってもらえないかな」

 早春の雪が、音もなく降り積もってゆく。
 ここはとても寒くて、とても綺麗だ。


リプレイ本文


●悪魔と久遠ヶ原

「お久しぶりですねー? お元気でしたかー?」
 開口一番、櫟 諏訪(ja1215)はリロに向かっていつもの人懐こい笑みを浮かべた。
「ちゃんと、また会えましたねー?」
 夢の中で会ったような気がしないでもないが、実際は四ヶ月ぶり。
 リロの休暇に付き合うという依頼に、諏訪と鷺谷 明(ja0776)、小野友真(ja6901)の三人は久遠ヶ原を選ぶことにしたのだ。
「一応こっそりになるからな。リロちゃん軽く変装でもしとこか!」
 友真の提案でリロは学園の女子制服に着替え、カモフラージュもばっちり。
「とりあえず、街をぶらついてみるかねえ」
「折角ですし、いっぱい遊んで楽しみましょー!」
 と言うわけで、一行は街中へ出掛けることに。
「ここは自分たちの学園外での日常が詰まってるんですよー? 放課後やお休みの日に来ることが多いですねー?」
 今日は雪が降っているせいか、いつもより人通りは若干少なめ。諏訪の説明を受けながら、リロは物珍しそうに周囲を眺めているようだった。ある店の前で、足を止め。
「あ、ここの揚げパン凄く美味しいんですよー! リロさんも食べてみますかー?」
 揚げたてのを包んでもらい、手渡す。
「熱いから気を付けてくださいねー?」
 リロは包み紙の中をじっと見つめてから、試しに一口。
「……美味しい」
「なんか安心する味なんよなー」
「うん。文句なしに美味いねえ」
 友真と明も食べる横で、諏訪はメニューを指して。
「でもこのお店って久遠ヶ原仕様というか、変わったメニューも多いんですよねー?」
 見れば確かにソーセージやチョコ入りの中に混じって、『死のソース10倍入り』とか『シュールストレミング入り』とか書いてある。明がああ、と言った様子で。
「どちらも美味かったよ。食う時涙が止まらないけど」
「ふうん。じゃ、ボクも食べてみようかな」
「リロちゃんキャラ的にあかんと思う(真剣)」
「じゃあ、お土産に買ってみましょうかー…?」
「諏訪君、それ絶対だめなやつな。犠牲者大体予測できるし!」
 飯テロ(別の意味で)は友真によって何とか阻止され、その後も四人は色んな店をぶらぶら。
 一通り商店街を回った後は、学園内へ。

 広大な敷地を回りつつ、最初に訪れたのは部室棟だった。
「あれ、何?」
 リロが指さす先は鉄塔の上。頂上に生徒達が数名いるのが見える。
「ん? ああ、あれはワイヤレスバンジー部だ。度胸試しの一種らしい」
 明の説明によれば、要するに高所からただ飛び降りるという、クレイジー的なアレとのこと。
「撃退士なら冗句にできる。それが久遠ヶ原クオリティということさ」
 聞いたリロはしばらくの間じっと鉄塔を見つめていたが、やがて明を振り返って。
「ね、アクル。あれやろうよ」
 こちらを向く紫水晶に、好奇心が宿っているのがわかる。
「あ、自分はここで見守ってますよー?」
「ちゃんと写真撮るから任せてな!」
 諏訪と友真が華麗に回避(訂正線)辞退する中、明はではと鉄塔を見やり。
「せっかくだし、度胸試しといこうかねえ」

 そんなわけで、鉄塔の上。
「ははは。なかなか高いじゃないか」
 愉しそうに見下ろす明の隣で、リロは部員に向かって巨大バルーンを指さす。
「あれに向かって飛び降りればいいの?」
「そうです。あ、飛行係のスキルは使用禁止で。くれぐれも光纏を忘れずに!」
「わかった。じゃ、行くね」
「では私m」
「あ」
 言い終わる前に明は背中から落っこちていく。いつの間にかリロがコートの裾を掴んでいたことに気付いていなかったのだ。
「……なんか鷺谷さんヤバイ体勢で落ちていってへん?」
「あれはどう見ても、受け身が取れそうにないですねー…?」
 友真と諏訪がそっと合掌する中、二人は下で待ち受けるバルーンに向け盛大にダイブしていく。

 ぼっふん。
 ぼっふん。

 うまいこと着地したリロは、ほんの少し頬を上気させながら。
「……ふうん。結構面白い、かも」
 そして隣で頭から突っ込んでいる明に気づき、小首を傾げる。
「随分、斬新な着地だね?」

 生命力減りましたよね(真顔)。


●諏訪の理由

 その後学園のあちこちを巡り、諏訪が最後に案内したのは談話室だった。
「ここが自分の思い出の場所であり、好きな場所なんですよー?」
 今も複数の生徒達が、会話に花を咲かせている。彼らをにこにこと眺めつつ。
「奥さんと出会った場所もここなんですよねー?」
 一緒に色んな話をして、一緒に依頼に参加をして、いつの間にか恋人になっていた。
 聞いたリロは据えられたソファやテーブル一つ一つを見つめながら。
「キミと彼女にとって、大切な場所なんだね」
「そうですねー。自分が久遠ヶ原を選んだのは、ここがあるからと言うのもありますけど、それだけじゃないんですよー?」
「そうなんだ?」
「ここは愛する奥さんと、共に戦える友人と、そしていつか手を取り合えるであろう相手と巡り合えた場所なんですねー?」
 楽しい事や、悲しい事。その全てを大事な人たちと見つめ、乗り越えてきた場所。
 そしていつか、自分の夢を叶える場所でもあるから。
「自分は、この久遠ヶ原が大好きなんですねー!」
「ふうん…そっか」
 納得したように頷いてみせるリロに、問うてみる。
「あ、自分からも聞いていいですかー? リロさんにも、他に代えがたい大事な人たちはいますかー?」
 ほんの少し、考えて。
「マリー達がそうだよ。彼女達がいるから、ボクはボクでいられるんだし」
 ありのままを受け入れてくれる。一緒にいて、心地いい相手。
「ただ、キミ達を見ていて思うようになったことがあるよ。……大事なものっていうのは、たくさんあってもいいのかなって」
 その存在が多ければ多いほど、守る大変さも失う痛みも増えるのだろう。それでも、大切に想うものがたくさんある方が、きっと楽しい気がするのだ。
 諏訪は大きく頷いて。
「そうですねー、自分もそう思いますよー! リロさんにとっての宝物がこれから増えるといいなって思いますよー?」
 いつか彼女が大事に思う友人の一人に、自分もなれればいい。そんな想いを胸に、彼は告げるのだった。
「今度は奥さんとも一緒に遊べるといいですねー!」

●友真の理由

「あ、じゃあその話をする前に、一箇所付き合ってもらってええかな」
 案内したのは、学園内でも一番高い場所。ここからなら、島全体が一望できる。
 友真はまず、西方向を指し。
「さすがに見えへんけど、あっちが大阪。俺が生まれて、育った場所」
 熱々できたての粉モンがお勧めなんやで、と笑ってみせてから、次は別方向に指さす。
「向こうが今寮出て住んでる所。大事で愛しいと思う日々が集約されてる」
 最後は足下を指さして。
「で、ここ」
 学園。大事な人や仲間に出会った場所。
「俺な、最初は個人的な感情でヒーローになりたいって思ってたん」
 けれど様々な人間や天魔と出会い、少しずつ自分の中での気持ちが変化していった。
「ここは今の俺になった場所。でもな、さっき紹介した場所のどれか一つでも欠けたら、今の俺にはならん」
 ここから見える全てが自分の思い出であり、お気に入りであり、これから目指す場所。
 だから、ここを選んだ。
「一つを選べへんなら、全部見せたらいいやんって思って。どうよ俺賢くない?」
 えっへんと胸を張ってみせる友真の隣で、リロは西の空をじっと見つめている。
「……何だか、空が赤くなってきたね」
「俺の自慢は華麗にスルー! でも可愛いから許す(きり。これからな、夕焼けが始まるんやで」
 ゆっくりと陽が沈み、空が雲ごと赤く染まってゆく。リロは暮れゆく夕陽に瞳を細め。
「ここは一日の間に、どんどん景色がかわっていくんだね」
「うん。俺な、この黄昏時が好きなん」
 不安。
 儚さ。
 燃えるような美しさと、沈みゆく終わりの景色。
「ほんの少し寂しくなって、でも一日が終わったーって思えて。また明日もがんばろって思えるん」
「うん。ちょっと、わかる気がする」
 その言葉に満足そうに頷いてから、茜の空を見つめ。
「――あんな、リロちゃん」
「何?」
「色んなこと識ったらな。責任とか、選択とか、悩まないかんような事たくさん出てくるよな」
 こちらを見つめる瞳に向け、続ける。
「けど知る事で、自分のしたい事や選びたい事――大事な道が見えてくる。その方が大事だと、俺は思うん」
 識って傷つくことがあったとしても、識らないままではいたくない。
「だからな、お互いもっとたくさん知っていけるといいなぁて思うよ」
「……うん。そうだね」
 こくりと頷く彼女に、友真は笑ってみせる。
「次は一緒に朝焼けも見られたらええな!」

 ※

 帰り際。
「あ、その制服やけどな。悪用せんて約束してくれるならあげるよ」
 友真はそう言ってから、小指を立てる。
「はい、指切りげんまんな!」
「あ、これは約束の時にやるんですよー? リロさんも同じようにすればいいんですねー?」
 諏訪に言われた通り、リロも小指を差し出す。友真は彼女の指を取ると、上下に振ってみせ。
「これでばっちりな!」
 対するリロはしばらく自分の小指を見つめた後、彼らに視線を戻す。
「今日は、ありがとね」
「どういたしましてですよー? また遊びに来て下さいねー!」
「今度は友達連れてきてもええよ。あ、いつかリロちゃんのとっておきの場所も教えてな!」
 リロは桃色の髪を弾ませ、にっと笑んでみせた。
「考えておく」


●明の理由

「ここが私が知る中で一番夢を見ている場所だからさ」
「夢……?」
「生と死の極限状態でこそヒトの輝きは……あれ、なんか違うな。ほら、あれだ、一番未来を信じてる的な若人のあれ」
 そう言ってから、愉快そうに。
「まあ一番強欲とも言い換えられるがね」
「ふうん…じゃ、キミの夢って?」
「私の夢? もう半分以上叶っているんだけどねえ」
 笑みを浮かべて、続きを待つ瞳へ告げる。
「私は天魔と笑い合いたいのだよ。例え種が違っても、属する世界が違っても、それでも笑い合えると証明したいのさ」
 だからリロが欠片でも笑ってくれれば、彼的に大成功でもある。そこは敢えて口にしないけれど。
 明は一旦言葉を切ってから、再び降り出した雪を眺め。
「…実を言うとね。私はあの時の一言で、満たされたと思っていた」
 舞闘会での一幕。
 焦がれて、焦がれられる。この上ないものだと思うし、もうこれを超えて求めるようなものはないとも思っていた。けれど。
「事が終わって改めて考えてみると、欲があった」
「……どんな?」
「君が焦がれて良かった、と思ってくれる私でありたいという欲さ。私は私が思う以上に強欲であったよ」
 まあ心地良いからいいのだが、と明は笑う。対するリロは考え込むように視線を落とした後。
「……欲求とは際限のないものだって、クラウンは言ってたね」
「ああ。むしろ道化殿は、欲求こそが本質なのではないかね?」
 満たされることと追い求めることは、恐らく彼の中で同義なのだ。リロは頷いてから、明を見上げ。
「クラウンの気持ちは、よくわからない。…けどたぶん、ボクも同じだと思う」
「同じ?」
「キミに焦がれてよかった、って思ってもらいたい。考えてみたら、そういう結論だった」
 そう言って、やや気恥ずかしそうに微笑った。

 別れ際。
「機会があれば、また」
「うん、またね」
 その返事に冗談めいた調子で、念を押しておく。
「言質は取ったぞ。破ってくれるな」
「……破ったらどうなるの?」
「うん。私が悲しい」
 そう言い切ってから、享楽主義者的に悲しいはNGだったなと考えつつ。本音だからまあ、いっかとも思う。
 対するリロは意外そうに明を見つめていたが、やがてくすりと笑むとその手を伸ばす。差し出された小指に明は目を瞬かせ。
「……約束するときは、こうするって聞いたんだけど」
「ああ、いや、うん。その通りだ」
 触れた指先は冷たくて、けれど少女はちょっと楽しそうに告げる。
「じゃ、約束したよ」
 雪の中、明はリロの背をしばらく見送っていた。
「……あ、お土産渡すの忘れた」
 思わず苦笑。あれこれ考えているうちにすっかり忘れていた。
「まあ、今度渡せばいいか」
 またの機会を約束したのだ。その時まで、楽しみはとっておくことにしよう。


●悪魔と女子会☆

 二日目。
「うちはね、リロちゃんを自宅に招待するよ!」
 そう宣言する雨宮 祈羅(ja7600)が準備したのは、大人しめなデザインのワンピース。目立たないようにとの配慮だ。
 リロに着替えてもらい、髪型もアレンジした後は記念撮影。
 寮を案内しながら、祈羅は説明をする。
「うちの探偵さんが寮長務めているんだけど、寮生さん皆フリーダム過ぎてね。ほとんどいないんだよね」
 見れば寮の名前は頭文字の『R』以外かすれて読み取れない。祈羅は自室である201号室へと招き入れると、切り出す。
「うちね、リロちゃんと一回のんびりお茶会したかったんだ」
「ボクもお茶会は好きだよ。マリー達ともよくやるし」
「ああ、メイドちゃんたち好きそうだもんね。あ、リロちゃん紅茶、緑茶、ハーブティ、どれが好き?」
 キッチンに立った祈羅はリロの好みを聞きながら、てきぱきとお茶の準備を始める。気付くと、隣にリロが立っていて。
「ボクも、手伝うよ」
「いいの?」
「うん。紅茶淹れるのは得意だから、ね」
 しばらくすると茶葉特有の芳しい香りが部屋いっぱいに広がってくる。テーブルの上にはマカロン、チョコパイ、クッキーなど、たくさんのお菓子が並べられ。
「準備完了!」
 女子会の始まりだ。

 二人はお茶やお菓子を楽しみながら、お喋りに花を咲かせる。
「ね、リロちゃんって普段何してるの?」
「閣下とメイド達のお世話、かな」
「お仕事していないときは?」
「本を読んだり、勉強したり…後はマリー達とお茶や、おしゃべりすることもあるよ」
「そっかー。じゃあ、うちらとあんまり変わらないんだね」
 興味深げにうなずく祈羅を見て、リロは不思議そうに問う。
「ボクの話なんて聞いて、楽しい?」
「うん、楽しいよっ。だってうち、リロちゃんのこともっと知りたいんだもん」
 意外そうな表情になる彼女に、にっこりと笑んでみせる。
「だって、きっとリロちゃんって面白いと思うし」
「ボクってそんなに面白かったっけ」
 瞳を瞬かせる彼女に、祈羅は自信を持って頷き返す。
「それにね、あの子達との昔話も聞いてみたいって思う」
「ああ、クラウンとレックスのこと?」
「そうそう。あの子達ってさ…昔からあんなだったの?」
 聞いたリロは少しおかしそうに瞳を細め。
「あんな…っていうのがどれを指すのかわからないけど。彼らは前からああだったよ」
「だよね…うん。そんな気はしてた」
 妙に納得した様子の祈羅を見て、リロは続ける。
「ボク、クラウンのこと正直苦手だったんだよ、ね」
「ああ、よーくわかる。わかるわ」
 さらにうんうんと頷く。
「ボクとは全然違う思想の持ち主だって思ってたし、話すとなんて言うか…面倒臭い」
 それを聞いた瞬間、思わず吹き出してしまう。
「……キラ、どうしたの?」
「いや、リロちゃんの感想が正直すぎてさ…!」
 堪えきれずひとしきり笑ってから、素直な感想を述べた。
「ほんと、あの子に聞かせてやりたいくらいだ」


>祈羅の理由

「この前会った時に、リロちゃん『今日はあの彼はいないのかな?』って言ってくれたじゃん」
「ああ、そうだったね」
「それでどこに連れて行こうって、考えた時にね。真っ先に旦那さんのこと思い出して、ここだーって決めた」
 自分にとって始まりであり、続いていく場所。
「ここは彼と一緒に時を刻む宝物の空間でね、帰るべき所なの。その宝物をリロちゃんに見せたいなぁって」
 言ってから、苦笑する。
「ま、一番の宝物は今日留守にしてるんだけどね。残念ながら」
 リロはかぶりを振ってから、瞳を細め。
「幸せなんだね、キラは」
 そしてもう一度室内をじっと見つめる。そんな彼女を見て、祈羅は問うてみる。
「ね、今リロちゃん幸せ?」
「……どうしてそんなこと聞くの?」
「何となくかな。聞いてみたかったから」
 問われたリロは考えた後、こくりと頷き。
「幸せだよ。仕事は好きだし、メイド仲間のことも好きだし…ただ、最近ちょっとだけ思う、かな」
「何を?」
「色んな幸せを識ってみたい…って」
 それは多分、この世界に住む彼らと出会ったことが大きい。聞いた祈羅は大きく頷き返して。
「うん。じゃあ次はもっと色んな幸せを、リロちゃんに教えてあげるね!」
「…うん。楽しみにしておく」
 だから女子会も、またやろう。


●悪魔とライブ!

 その日の夕方、川澄文歌(jb7507)は二枚のチケットを片手に提案した。
「リロさん、私とライブに行きません?」
「ライブ?」
 小首を傾げるリロに、内容を説明。
「本当は友達と行く予定だったんですけれど、その子が急に行けなくなってしまって。とっても楽しいですよ♪」

 そんなわけで、ライブ会場。
「このグループは凄く人気があるんですよ」
 文歌は道中、スマホでメンバーの顔写真を見せながら、グループの紹介をしていた。
「彼女達は天魔に襲われて避難生活を余儀なくされている人達のとこへ、積極的な慰問ライブもしてるんです」
 言いながら、あるものをリロへ手渡す。
「……これは?」
 渡されたのは、ペンライトの束。
「ペンライトって言うんです。アイドルさん達が歌っているときに、これを振るんですよ」
 文歌はリロの前で振ってみせながら、説明を続ける。
「彼女達のイメージカラーに合わせて、こんな風に振るんです。みきポンが赤で、みこりんは青です。それから…」
 9人いるメンバー全員の愛称とイメージカラーを伝えていく。リロはまじまじとペンライトを見つめ。
「たくさんいるんだね。…覚えられるかな」
「最初は無理でも、周りの人に合わせればいいので大丈夫ですよ♪」
 準備が済んだところでライブ開始のアナウンス。
 会場の熱気もヒートアップし、光の洪水がステージを包み込んだ。
『みんな、今日は来てくれてありがとう!』
『一緒に楽しく歌おうね!』
 きらきらした衣装に身を包んだ少女達が、音楽に合わせて歌い踊る。客席も彼女達に合わせ、飛んだり跳ねたり、大盛り上がりだ。
「……凄いね」
 リロは当初、皆のテンションに圧倒されているようだった。しかし徐々に慣れてきたのだろう。
 文歌や周りの観客に合わせペンライトを振ってみたり、少女達の歌に合わせて口ずさんだりしているようだった。

>文歌の理由

「私はリロさんにライブを音で、光で、体感して貰いたかったんです」
 もしかすると、知識として識ってはいるかもしれない。でも、自分の目で見て、耳で聞いて、肌で感じてもらわなくては、本当の楽しさは伝わらないと思ったから。
「初めて体感するライブは鳥肌モノですからね♪」
「うん。最初はちょっとびっくりしたけど、楽しかったよ」
 頷くリロを見て、文歌も嬉しくなる。
「リロさん、前会ったときに、私の夢について少し話しましたよね」
「うん、覚えてるよ」
 歌でたくさんの人に元気をあげたい。文歌の言葉に「キミに向いていると思う」とリロは返したのだ。
「今日歌っていたあの子達はみんな、アウル能力を持たない普通の子達なんです。でも避難してる多くの人達を歌で励まして、それこそアウル能力者の私なんかより遥かに多くの人達を救っていて…」
 それに、と文歌はにっこりと微笑む。
「ウチの学園の天魔さん達の中にもたくさんファンがいるんですよ」
「……うん、ファンが多いっていうのは、何となくわかる」
 リロは使い終わったペンライトを見やる。
「ねえリロさん、歌の力ってすごいと思いませんか? 私、歌を通じてすべての天魔さん達と分かり合えるんじゃないか…って思うんです」
 例え種族が違っても、今は敵同士であったとしても。
 リロと一緒に歌ったときのように、同じ想いを共有することだってできるんじゃないかと思うのだ。
「だから私、これからも歌い続けます。自分の夢を叶える為に」
 あの場所は、いつか自分が目指す場所。
 彼女にも識っておいて欲しかったから。

 別れ際、デジカメで恒例のツーショット撮る。
「この写真をアイドル事務所に送ったら、きっとリロさんすぐデビューですね☆」
 聞いたリロはゆっくりとかぶりを振って。
「ボクは、キミみたいに笑ったりできないからね」
 そしてわずかに微笑を浮かべると、確信を持った響きで告げた。

「やっぱりキミの方が、向いてると思うよ」


●悪魔と遊園地

 三日目。
「俺はじゃあ、遊園地に誘ってみようかな」
 若杉 英斗(ja4230)がリロと訪れたのは、夢の国・ネズミーランド。
 人気のテーマパークゆえに入園料は若干お高めだが、彼には秘策があった。
「二人分の入園料だって…? ふふっ」
 こんな事もあろうかと!
「『みんなのお年玉【2015】』を持ってきておいたぜ!」
 足りない分はコイツでまかなうのだ(きりっ)。まさに準備万端である。
 園内に入ったリロは、物珍しそうに辺りを見渡していた。
「……変な格好したヒトたちが多いね?」
「ああ、あれはマスコットキャラクターって言うんですよ」
 ネズミっぽいナニカがぶんぶんと手を振ってくるので、振り返してみる。
 ちょっと楽しそうな彼女をデジカメでぱちり。英斗はキャストにお願いしてツーショットも撮ってもらう。

 最初に辿り着いたのは、お化け屋敷だった。
「これが我々の世界の『お化け屋敷』というアトラクションです」
 真剣な表情で、リロに説明。
「この建物の中には、いわゆる化物に扮したアクターや人形がいます。化物に出会ったペアは、女の子が男に抱き付いたりしてスキンシップを楽しむんですよ」
「ふうん、変わった建物だね」
 若干誇張されている部分がある気もするが、たぶん嘘は言ってない。
「さぁ、はりきって行きましょー」
 いざ中へ。
「……真っ暗だね」
 不気味な音楽やら笑い声やらが聞こえる中、二人は順路を進んでいく。
 数メートル程歩いた時、突然誰かが目の前に飛び出してきた。

『ヴァーー』

「……?」
 リロは出てきたゾンビに近づき、まじまじと見つめている。
「このヒト何やってるのかな」
『ヴァ!?』
「リロさん、それ以上近付いたらゾンビさんが困ります! ここです、ここで抱きつくんですよ!(きりっ」
「あ、そうだった」
 言われた通り、リロは英斗の胴部をがっちりホールド。
「これでいいの?」
「そうです…って、痛ててて」
 あれ、なんか背骨がみしみし言ってる……。
 どうやらリロは何かの儀式と勘違いしたらしく、本気で英斗の身体を締め上げてくる。
(う…嬉しいんけど、このままではサバ折りになりかねない)
「り…リロさん、もうちょっと加減して…」

 意識失うところでした(真顔)。

 一通りアトラクションで遊んだ後は、夜のパレード。
 英斗は開始時間より先に行き、よい場所を確保する。
「もうちょっとつきあってね。あと少ししたらパレードがはじまるからさ」
 しばらくすると、軽快な音楽と共にパレード開始の花火が上がった。
「ほら、はじまりましたよ」
 光の洪水と共に、華やかな衣装を身に纏ったダンサー達が現れる。音楽に合わせ踊り歌うさまは、何度見ても飽きないものだ。
「どうですか? 悪くないでしょ」
 何も言わずパレードに魅入っているリロに、問いかけてみる。
「……うん。綺麗」
 紫水晶の瞳には、色とりどりの光を映し出されている。
「夜まで待った甲斐が、あったね」


>英斗の理由

「俺とリロさんとの思い出はこれからはじまるわけだから、最初の一歩はこのへんが無難かなぁ、と思って」
 まぁ、戦場では前にも会った事あるけどね、と英斗は笑う。
「ふうん、そういうものなんだ」
 リロにとっては、ちょっとした風習も新鮮に感じるのだろう。再度辺りを見渡して。
「ここに来ている人たちが、みんな楽しそうなのはわかるよ」
 入ってくる人は皆、期待に満ちた目をしているし、帰る人たちは満足げな表情に変わっている。
「きっとここは、人間にとっていつもとは違う気分にさせてくれる場所なんだね」
「うん、間違ってないんじゃないかな」
 英斗の返事に、リロも満足そうに言った。
「キミ達と同じように楽しめて、よかった」

「コレ、よかったらいつも持ってる本に使ってください」
 帰り際、差し出されたのは一枚の栞。今日の記念にと、英斗が途中でこっそり購入していたのだ。
 受け取ったリロは栞をじっと見つめた後、嬉しそうに。
「……ありがと。使ってみるね」
「またよかったら遊びにいきましょう」
「うん」
 今度は水族館もいいかもしれない。


●悪魔と北の大地

 その日の夕方。
「ちょっと遠いけど、お付き合いよろしく!」
 そう宣言して月居 愁也(ja6837)が案内をしたのは、なんと北海道。
 目指すは道東、雪原の大地をレンタカーで走り抜ける。窓から外を眺めていたリロは、少し驚いたように。
「……凄い雪だね」
「まあねー。こっちはまだまだ冬真っ盛りだから」
 何時間もかけて辿り着いたのは、東の果てにある岬。辺りは既に深夜で真っ暗だ。
 漆黒の海を見つめるリロに、愁也は声をかける。
「見せたいものがここから見えるんだけど…もう少し待たなきゃなんだ、ごめんね」
「いいよ」
「寒くない?」
「うん、平気」
 気温が低いせいで、今夜はとても空気が澄んでいる。雲の合間から時々見える星や海がたゆたう音を聞きながら、二人は夜が明けるのを待っていた。
「あ、寒いからこれ食べながら話そう」
 愁也が持ってきたチョコレートとホットコーヒーを手に、たわいのない会話で時間を潰す。
 やがて東の空が白々とし始め、次第に辺りがぼんやりと明るくなってくる。
「もうすぐ、太陽が昇ってくるよ」

>愁也の理由

「俺が久遠ヶ原に放り込まれるのが決まった時ね、相方とものすげー喧嘩してさ」
 お互いぼこぼこになるくらい殴り合ったんだよね、と苦笑しつつ。
「んでその後ここ来たんだ」
 それが三年前の元旦。
「撃退士になっても悩んだり、落ち込んだりいろいろあるけどさ。東の端のここから昇る、あの日見た太陽を思い出せば気合が入るっていうか」
 水平線から、光が溢れる。
「明けない夜はないんだって、ちゃんと思えるんだよね」
 昇り始めた太陽に、二人は思わず目を細める。
 期待。
 力強さ。
 世界を明るく照らす、始まりの景色。
「おすすめの場所はいっぱいあるけど、俺の原点はここにあって。だからリロちゃんにも見せたいなーって思ってさ」
 朝焼けの空をじっと見つめたまま、リロは口を開く。
「一昨日、夕焼けを見たんだ」
「お、そうなんだ?」
「……人間ってさ。毎日、始まりと終わりの景色を見ているんだね」
 それはまるで、生と死が巡っていくように。愁也も頷きながら。
「そうだね。人間は寿命が短いぶん、より命や時間を意識しているのかもしれないなー」
「うん。両方見られて、よかった」
 そう言って、リロは穏やかに微笑った。
 しばらくの間二人で日の出を堪能してから、愁也は振り返り。
「リロちゃんまだ遊ぶ元気ある?」
「うん、大丈夫だよ」
「じゃあさ、せっかく雪国に来たんだしスキー場へ行こうぜ!」

 そんなわけでやってきたのは、ナイター設備の整ったスキー場。
「こっちはスケートが主流なんだけどねー」
 愁也はそう言いながらも、浮き浮き後でプラスチックソリを抱えている。
「やっぱ冬山は全力で楽しむべきじゃね?」
「それ、何に使うの?」
「頂上行ったらわかるよ」
 そう言って斜面のてっぺんまでまっしぐら。周りで滑るスキーヤー達を、リロは好奇心を映した瞳で見つめている。
「よし、じゃあ俺たちも滑ろう。はい、リロちゃん後ろに乗って!」
「わかった」
「じゃあ行くぜ−! いざスタート!」
 二人を乗せたソリは、勢いよく飛び出していく。尋常じゃないスピードで斜面を滑走する様に、周囲の視線は釘付け。
「うおおおおめっちゃはえええええうわっ!!」
「あ」
 途中起伏が大きい斜面で、思いっきり大ジャンプ。そのまま二人ともゲレンデに放り出されていく。
「り…リロちゃん大丈夫?」
 雪が柔らかかったせいで愁也は半分埋もれている。対するリロは、身体が軽いせいでだいぶ遠くまで飛ばされていた。
「……これ、結構楽しいね」
「ぇ」
 雪まみれのまま、いつになくリロの表情は生き生きしている。

 この後、二十回くらい滑りましたよね(真顔)。

「あーよく遊んだ。リロちゃん北海道はどうだった?」
「面白かったよ。雪が多くて、ちょっとびっくりしたけど」
 その感想に笑いながら。
「ここは久遠ヶ原よりずっと冬が長いしね。でもどこよりも遅いけど、春はちゃんと来るんだよ」
 明けない夜が、ないように。
「ここの春も、きっと綺麗なんだろうね」
「もちろん! あ、今度はお花見とかしたいね」
「お花見?」
「みんなで花見ながら食べたり遊んだりすんの。きっと楽しいからさ、またおいでよ!」
「…うん、わかった」
 最後は雪まみれのまま、ツーショット撮影。
 陽はすっかり、高く昇っていた。


●時魔の贈り物

 別れ際、リロに贈られたのは愁也考案のミニブック。
 中身は各自で撮ったリロとのツーショットと、全員での集合写真、そして各地で撮ったスナップ写真も入れられている。
 それぞれの写真には、皆が書き込んだメッセージが添えられていて。
 受け取ったリロは、嬉しさとはにかみが入り混じった笑みを浮かべて言った。
「ありがと。大切にする、ね」

 そして後日。
 皆の元に、缶入りの茶が届いた。一つ一つ種類が異なるのは、恐らく送り主が選んだからなのだろう。

 明:ラベンダーアールグレイ
 諏訪:カモミールティー
 友真:桂花茶
 祈羅:ミモザフレーバード
 文歌:ジャスミン茶
 英斗:ホワイトティー
 愁也:桜ダージリン

 メッセージカードには一言、

 ”この間はありがとね”

 と書かれていたという。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

紫水晶に魅入り魅入られし・
鷺谷 明(ja0776)

大学部5年116組 男 鬼道忍軍
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
ブレイブハート・
若杉 英斗(ja4230)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
真愛しきすべてをこの手に・
小野友真(ja6901)

卒業 男 インフィルトレイター
撃退士・
雨宮 祈羅(ja7600)

卒業 女 ダアト
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師