※この記録は途中たびたび次元を超えた世界に逝っています。大変混沌とした状況となっておりますが、お察しください。
一歩踏み出せば、そこは秘密の舞踏会
誘うその手は秘めやかに
秘めたる熱は、仮面の下で
○
「One for all and all for one!」
高らかな誓いの言葉と共に、三銃士がひらり外套を翻す。
「おおっ凄い人なのにゃー!」
ポルトスに扮する大狗 のとう(
ja3056)は、華やかな会場に歓声を上げた。
羽根飾り付きの帽子に、銃士の正装。立派な髭を生やした仮面は凜々しさを示す。
「うにうに! お料理もいっぱいなんだよー!」
アラミスこと真野 縁(
ja3294)がお皿一杯の料理にご満悦。そのの隣では、アトスになりきった藤咲千尋(
ja8564)が胸を躍らせる。
「お揃いで仮装って何だかわくわくするよね…!」
恋人は一緒に来られなかったが、楽しんでおいでと送り出してくれた。
「だから、みんなでめいっぱい楽しむよ!」
ちなみに何を楽しむ事になるのかは※削除されました※。
「舞踏会は大人の雰囲気。今夜だけは私たちも大人よ、ベアト」
黒の軍服に軍帽姿のエヴァ・グライナー(
ja0784)は友人のベアトリーチェ・ヴォルピ(
jb9382)に向かってにっと笑んでみせる。
しかしその表情は全く見えない。なぜなら彼女、白のホッケーマスクをかぶっているから。
若干13日の金曜日にチェーンソー振り回しそうに見えなくもないが、気にしてはいけない。
「仮装舞踏会…凄く楽しみ…」
エヴァとは色違いの軍服に身を包んだベアトリーチェは、無表情をそう呟く。顔には出していないものの、内心では楽しみで仕方ない。
「エヴァ…二人羽織するの…」
「よしきた! これで身長の低さもバレないわ」
エヴァに肩車してもらったベアトリーチェは、上から大きなマントを羽織ると煌びやかなヴェネチアンマスクを装着。
これは133センチと138センチの二人が、大人のフリをするための秘策である。動きが怪しいのは気にしない。
「二人羽織で…レッツ悪戯…ゴーゴー…」
「お菓子をたくさん盗むわよ!」
マントの下でホッケーマスクがきらりと光った。
「仮装仮面舞踏会、ですか。また面白そうな試みですね」
リアン(
jb8788)は辺りを見渡しわずかに微笑する。
「では私は幽霊海賊船の船長とでも参りましょうか…」
ホールに踏み出す彼の衣装は、朽ちかけた海賊衣装。さび色の血糊が随所にこびりつく様は、仮装パーティーだからこその洒落の効いた出で立ちだ。
「パーティー…昔が懐かしいですね。あの頃がとても懐かしい」
仮面の下で、リアンは瞳を細める。かつて仕えた先での記憶。今は戻らぬ幸福の日々。
「お嬢は…今、何処にいらっしゃるのでしょうか…」
懐かしさでほんの少しこみ上げるものがあった。
同じ頃、アヴニール(
jb8821)も似たような想いを持ってホール内を見つめていた。
彼女の衣装は、アラビアンナイトをイメージしたもの。
紫紺の柔らかい布を纏い、仮面の代わりに口元をヴェールで覆う。彼女が動く度に、金の装飾がしゃらしゃらと音を立て。
「パーティーなど久しぶりなのじゃ… 両親や我付きの執事と一緒だった頃は、よく行ったがのう」
蒼い髪にすました微笑。自分たちだけには心を開いてくれていた。
「何だか懐かしく、楽しいの」
あの幸せな日々が戻って来たかのようで、心が温かくなる。
「さて、楽しみますか」
安瀬地 治翠(
jb5992)は艶やかな会場の雰囲気に瞳を細める。
召する衣装は燕尾服に淡緑のラインが入ったヴェネチアンマスク。シンプルながらも彼の雰囲気によく合っていて。
同じく燕尾服姿の時入 雪人(
jb5998)がぼそりと。
「人多い、帰りたい」
普段は引きこもりの彼、こう言う社交場はとても苦手だ。
「おや、でもその格好よく似合ってますよ」
雪人が身につける犬耳付きの仮面と、くるりと巻いた犬の尻尾はどこか小型犬をも思わせる。雪人はややばつが悪そうに。
「まあ、実家での集会よりは気楽だけど…」
ぶつぶつ言う姿に苦笑しつつ。治翠の視線先には、白の水干に狐面を身につけた恒河沙 那由汰(
jb6459)の姿。
「あー…だりぃ…」
面倒臭そうな那由汰の頭には、ぴこんと立つ狐耳。ふっさふさの尻尾を治翠はじっと見つめ。
「やる気が無い割りには随分本格的な仮装ですね…本物の耳と尻尾の様に見えますよ」
「あ? な…何言ってやがる…ほ…本物のわけねーだろ!」
明らかに動揺する様子に雪人が首を傾げ。
「なんで慌ててるんですか?」
「あ、慌ててなんかねーし!」
治翠がああ、とうなずく。
「稲荷いりますか? ないでしょうけれど」
「あ、俺ちょっと探してきましょうか?」
「そんなもん探さなくていいんだよ!」
そんな憎まれ口をたたき合いながらも、何となく心浮き立つものも感じてしまう。
「なるほど、何かの姿に扮せねばならぬのか」
ふむと頷いたギメ=ルサー=ダイ(
jb2663)は瞳を鋭く光らせた。
「全く人の世界は摩訶不思議よ。ではこういうのは、アリだろうか」
彼が選んだのはかの有名な――
天使ギ●ル・ツァダイ!
「天呼ぶ地呼ぶ我が来る! お前は帰れと悲痛な叫び! だが我はかえr――あ、実在の人はNG?」
まさかの事務所からNG。
「あ、はい。では大人しく『ボディビルのポーズをする銅像』のコスプレをしておきますね」
人目につきにくい場所でポージング仁王立ち。
自慢の筋肉を惜しげも無く披露しつつ微動だにしない様は、まるで本物の銅像のよう――
「あの人どうして動かないのかしら」
「しっダメよ見ちゃ!」
そうでもなかった。
○
会場入りした招待客達は、思い思いに過ごし始めていた。
曲が始まったホールでは金髪の貴公子が優雅に踊る。
黒の燕尾服に銀のヴェネチアンマスクを身につけた、エルディン(
jb2504)だ。
「私、いつもは清廉潔白な神父ですが、今宵は身分を忘れて宴に浸りましょう」
場の雰囲気に合わせ、所作全ては紳士のそれで。
「私と一曲如何ですか?」
差し出すその手もスマートに、代わる代わる美女とのダンスを楽しんでいる。
――その後の大惨事など、知るよしもなく。
「にゃ!美味しそうな食べ物いっぱいですにゃ!(*゜∀゜*)!」
そう言って瞳をきらっきらさせているのは、真珠・ホワイトオデット(
jb9318)。
某不二子ちゃん的な黒のライダースーツに、大きめのサングラスを仮面代わりに装着。
ピッチリフィットのそれは、体の線がはっきり現れるハレンチ仕様である。
「むー…このお洋服おムネがきついですにゃ〜」
胸元のファスナーを一気に下ろすと、たわわな果実が見え隠れ。
「これでおっけーですにゃ! ゜*。:゜ (*´∀`*) ゜:。*」
全然おっけーじゃないぞ★
豪奢なシャンデリアを見上げながら、クアトロシリカ・グラム(
jb8124)はきょろきょろと辺りを見渡した。
「うわあ、色んな人がいるなあ」
彼女の衣装は、白雪姫をイメージしたビスチェタイプのショートドレスにオープントゥのヒール。パールホワイトのドレスや仮面を林檎があしらわれた装飾品が彩っていて。
「パーティーだしお淑やかに…って思ったけど……」
慣れない服装に段々と嫌気がさしてくる。
「あー、もう、まだるっこしいー! ヒールとか歩きにくいったらないわ…」
彼女は椅子の下にこっそりヒールを脱ぎ捨て。足をぷらぷらさせながら気ままに料理を食べていると、背後から聞き慣れた声がする。
「そこの白雪姫さん、林檎はいかがかしら?」
くすくすと微笑みながら近付いてくるのは、氷咲 冴雪(
jb9078)。
漆黒のゴシックドレスに同じく黒の仮面。頭上には金色のクラウンが煌めいていて。
手にしているのは、林檎が入った小さな籠。
「きゃうー! さ…じゃなかった魔女さん逢いたかったあ!」
白雪姫の魔女となった姿に、クアトロシリカは瞳を輝かせる。
「その黒ドレス似合ってるよう♪」
抱きついてきゃっきゃする唇に、そっと人差し指を押し当て。
「……クゥ。こういうパーティで騒ぐのははしたないですわ」
「むー…だって……」
ちょっぴりしょんぼりする姿に、冴雪は瞳を優美に細める。
「大人しくできたら、好きなものをご褒美に差し上げましてよ」
「え、本当?」
頬を優しく撫でられ、白雪姫の顔がぱっと明るくなる。
「ふふ、何がよろしいかしら?」
姫はほんの少し小首を傾げた後、魔女の唇を人差し指でふにっとやる。
「じゃあ、あたしは林檎よりこっちの紅いのがいいなぁ…?」
悪戯っぽい仕草に微笑んで。魔女はリンゴに軽く口づけすると、紅く艶めく唇を動かした。
「では、後のお楽しみですわね」
時同じくして小田切ルビィ(
ja0841)も周囲をきょろきょろ。
「緋月はどこだ…?」
彼の出で立ちはさながら黒騎士。漆黒の羽帽子に同じく黒を基調としたドルマン、深紅の腰布からは銀の剣がのぞいている。
ルビィはどこかにいるはずの緋月(
jb6091)を探していた。
「何の仮装して来るんだろーな?…やっぱお姫様系か?」
共に参加する事にしたものの、お互い何の仮装中かは教え合っていない。
その頃、当の緋月もルビィを探してホールを移動していた。
「ふわ…凄い…ルビィさん見つけられるかな…。何となく騎士っぽいけど…」
彼女の衣装は眠れる森の美女をイメージしたドレス。
淡いピンク色のオフショルダーが細身の彼女を優美に見せている。色とりどりの宝石がちりばめられたパピヨンマスクがどこか妖艶な輝きを放っていて。
「……あれ?」
辺りを見渡していた彼女の瞳が、あるものを捉える。
「あの人…どこかで見たことがあるような…」
そこには、しのびきれていないファラオの姿があった。
●出会う者たち
秘密の舞踏会に紛れ込む、さまざまな存在。
互いに正体を明かすことは無く、秘めやかに彼らは出会う。
「あ、あの…今晩は」
緋月が思いきって声をかけると、十秒ほど遅れて返事がある。
「む…私にだったか。すまない気付かなくて」
「いえ…!」
ツタンカーメンマスクのせいで顔は全く見えない。しかし隠し切れていないあのオーラに緋月はようやく気付く。
(そうだ、温泉で見たんだ!)
雷霆の大天使。
何故こんな所にと思うものの、知らない振りをするのがここのルールだから。
「ええと…あ、飲み物でもとってきましょうか?」
「ああ、それなら私が取ってこよう」
緋月が止める間もなくファラオはウェイターからグラスを受け取ると差し出す。
「ありがとうございます…!」
見た目に反して妙に紳士的な対応に、緋月はつい微笑み。
「衣装似合ってますよ! その…夢に出て来そうな位に!」
「そ、そうか……」
精一杯の笑顔で褒めてみたのだが、何故かファラオの返事は消え入りそうであった。
鷺谷 明(
ja0776)はホールで出会う。
「おや、どこかで見たようなウサギ殿が」
「ふふ。どこかで見たような帽子屋がいるね」
桃色髪の時計ウサギと享楽家のマッドハッター。
大きなシルクハットには10シリング6ペンス、持つのは六時で止まった懐中時計。
「いかにも今の私は帽子屋さ。狂ってるかどうかは知らないよ」
彼女が首から提げた金時計を見やり。
「原典に従えば私はその時計を壊さねばならないのだろうが」
おどけたように肩をすくめてみせる。
「あいにく私は夢の国()ではなくドジスン教授のファンでして」
「ふふ。じゃあ言葉遊びでもしようか?」
ウサギの手を取り帽子屋は微笑う。
「そして意味も無く価値の無い話を」
二人がダンスを始めたホールに、二階から飛び降りてくる影がある。
「フハハハハ、私は怪人パンプキン!」
ひらりマントを翻すエイルズレトラ マステリオ(
ja2224)だ。
燕尾服にパンプキンヘッド、頭にはシルクハットという彼にとっては普段着の出で立ちだが、この会場ではやたらと輝いていて。
目に映るのは、自分と同じかぼちゃのコスプレをした猫…のような猫じゃないような。
「おや? これはこれは、私以外にカボチャの仲間がいようとは!」
「あ、ハイ。仲間ですねハイ」
完全に死んだ目をしているもふもふのソレに首を傾げ。
「ところで貴方猫さん…? いえ、せっかくのパーティーですし、深いことを考えるのはよしましょう。さあ、カボチャ同士楽しく踊ろうじゃないですか!」
「あ、ハイ。そっすねハイ」
さて、諸君。
お察しかとは思うが、そろそろ異次元跳躍が始まろうとしている。
この先心してかかって欲しい。
「ふふふ。妾はこの時を待っておったのじゃ!」
赤と黒のゴスロリワンピ姿のリザベート・ザヴィアー(
jb5765)は、蝶モチーフの仮面奥で瞳を怪しげに光らせた。
視線の先にいるのは、デラックスなシンデレラ( ^o^)。
隠し切れないアレやソレ。
「その表面積…さぞかしたっぷりのフリルとレースが飾り付けられようて。くくくくく楽しみじゃのう」
手にはなぜか大量のフリルレースと裁縫道具。彼女はシンデレラの背後に回ると、あろうことか突撃した!
「そんなものでは華やかさが足りぬわ! ええい、貸してみい!」
☆★かわいくな〜れ★☆
「えっ…これが…私…?///」
鏡を前にシンデレラは口元を抑え頬を染める。
体積が元の三倍くらいになる勢いで増されたフリルは、彼女()の見た目をさらに凶悪(訂正線)華やかに見せていた。
「うむ、やはり姫というからには、これ位豪華でなくてはの」
そう言い残しシンデレラからは【神の采配】でさっさと逃走。
\やり逃げとはさすがあくまきたないな/
彼女が去ったところで、運命的()に現れたのは月居 愁也(
ja6837)。
もこもこかぼちゃパンツの王子衣装。顔を覆うファンシーマスクが色んな意味で目に痛い。
互いの姿をみとめた二人は、はっとなり。
「あ、あなたは…もしかして…!」
「き、君はもしや…!」
姫と王子はしばしの間見つめ合う。
やがて王子は――彼女に向かって爽やかに告げた。
「む…迎えにきたよ、シンデレラ!」
愁也が颯爽と死亡フラグを立てた頃、親友の夜来野 遥久(
ja6843)は光藤 姫乃(
ja5394)をダンスに誘っていた。
「可愛らしい方、私と一曲如何ですか?」
燕尾服に銀と青のヴェネチアンマスク。完璧なる紳士の振るまいに、姫乃はゆるりと微笑んで。
「あら、嬉しいお誘いね」
姫乃の衣装は赤を基調としたゴシックドレス。上品なフリルが彼(語弊ではない)の長身に映える。
喉元にはベルベットのチョーカー、肩幅はショールで隠した完璧なオネェ…美女だ。
「思う存分、楽しみましょ」
遥久の手を取り、仮面の下で微笑する。
互いに知り合いだが、敢えて正体は明かさずに。
その頃、治翠は忍び切れていないファラオをじっと見つめていた。
「な…何か私に用だろうか」
「いえ、何故か散々動きを止め(スタンさせ)られた記憶が思い出されまして…」
その言葉に、ファラオの動きが止まる。
「き…気のせいだろう」
「いえ、失礼しました。そうですね、気のせいでしょう。まさかこの様な無駄に露出した派手な服装を好む様な方とも思えませんし」
告げる笑顔が妙に黒い(
声にならない呻き声を上げるファラオを、那由汰もまじまじと見つめ。
「余程筋肉に自信があんだな。人目も憚らずそんな格好になれんのはすげーな」
やめて、王の精神値はもうゼロよ!
そんな声がどこからか聞こえてくる中、人見知りの雪人は少し離れた所から様子を窺う。
「なんだかあのファラオさんもの凄い冷や汗かいてるように見えるけれど…」
ぴこぴこと耳を動かして。
「…うん、気にしないでおこう。これ美味しい」
手にした苺たっぷりのケーキにご満悦。尻尾を振るのも忘れずに。
明とウサギはくるくる踊る。
交す言葉はとりとめもなく。
「ヒトは楽しもうと思えばなんだって楽しめるものさ」
「そう言えばキミは悲しめないのだったかな」
全てを楽しむのが私だからね、と帽子屋は笑う。
「悲しめないから楽しめる?」
「そうとも限らないさ。楽しめるから悲しめないわけじゃないだろう?」
「うん。ボクは楽しめるし悲しめるよ」
「君は何が悲しいかね?」
ウサギはほんの少し考えた後。
「――忘れられるのが」
帽子屋はウサギを見つめる。桃色の髪がふわりと弾む。
「役目が終われば、きっと魔法は解けてしまう」
そうすれば、きっとキミは。
紫水晶がほんの少しかげり、ピジョンブラッドを映す。
「最近ちょっと思うよね。キミがもつその時計のように――」
キミ達との時間が。
「止まってしまえばいいのにって、ね」
気付けばウサギは姿を消していた。
懐中時計が余韻を刻む遙か後方では、エイルズレトラがかぼちゃと談笑中。
「……ああ、それってカボチャの馬車のコスプレなんですか?」
まじまじと眺めつつ。
「カボチャの馬車と言えば、ネズミが御者をしてたはずですが。…そうか、あなたが食べちゃったんですね!」
「ちげーよwww俺ネズミとか食わねーしwww
鬱だ死のう」
「まあまあ、人生長いんですからもっと楽しくいきましょうよ。そうだ、スイカ食べますか?」
パンプキンの言葉に、死んだ魚の目にほんの少し光が灯った。
「実は、さっきまでカボチャマスクにするか、スイカマスクにするか迷ってたんです」
まるで手品のようにスイカを取り出すと差し出す。
「さあ、遠慮はいりませんよ!」
「いやいやまたそんな都合のいい話があるわけねーだろってほんとにスイカあったし一体どこに隠し持っていたのかは多分突っ込んじゃいけない部分ですよねサーセンwwww」
彼らの隣では給仕を手伝っていたリアンが、ある少女と出会っていた。
執事の端くれとして声をかけたのは、アラビアンナイト風の少女。
「いらっしゃいませ。何かお飲みになりますか?」
少女は並べられたグラスを、ヴェールの奥でじっと見つめ。
「そうじゃな、我はジュースをもらおうかの」
「どうぞこちらを。よい夜を」
渡し終えてからふと気付く。
「今の方は――」
あの声、あの仕草。もしかしてと、つい淡い期待を抱いてしまう。
「…いや。まさか、そんなことは」
ありえるはずがないと、かぶりを振る。
時同じくしてアヴニールも、手にしたグラスを見つめ首を傾げていた。
「…然し、何だか見覚えがある気のする御人じゃった…」
声も聞き馴染みがあるような。あの仮面のしたの微笑みを、自分は知っているかのような感覚を覚えるのだ。
「然し、こんな所に我の家族がいる訳ないじゃろう」
考えを振り払うように、目を伏せる。期待して落胆するのなど、もう何度も繰り返してきたのだからと心に言い聞かせ。
その頃、冴雪はクアトロシリカの口元にリンゴのタルトを運んでいた。
「毒入りかもしれませんけどね?」
仮面の下で妖艶に笑む魔女に、白雪姫はぱくりと。
「綺麗な魔女さん相手なら、毒入りでも美味しくいただいちゃうよっ♪」
だって、君がくれる毒なら、きっと甘くてとろけちゃうに違いないから。
「うーんこのタルト美味しい!」
仮面の上からでも分かるほどの至福の表情。魔女は白雪姫の口端をそっと人差し指でなぞると微笑んだ。
「クリームがついてますわよ、私の可愛い白雪姫」
「ふむ…これはこれで、楽しそうだな」
同じ頃、ディザイア・シーカー(
jb5989)は二階席で偶然見かけた時計ウサギに声をかけていた。
「やぁウサギさん、私と一曲如何ですか?」
彼の姿を見たウサギは、ややおかしそうな口調で。
「ふふ。今夜は帽子屋が多いね」
ディザイアの衣装は燕尾服に水玉模様のネクタイ。値札付きのシルクハットに目元を隠すのは黒羽があしらわれた仮面。
「どこかで会ったかな?」
「さあどうだろうな?」
冗談めいて手を差し出すディザイアに、リロはくすりと彼の手を取る。
「リードはよろしく、黒の帽子屋さん」
「では、狂ったお茶会のように楽しいダンスを」
エヴァとベアトリーチェは二人羽織状態でダンス。
身長の割に歩幅が狭いため明らかに動きが不自然なのだが、他にも動きづらそうな衣装の人が多いせいなのか、案外バレずにいる。
ベアトリーチェはかぼちゃを着た猫っぽい何かを見つけると、声をかけてみる。
「今晩は…その猫の着ぐるみ…かわいいの…」
「これ着ぐるみじゃねえしwwサーセンwww」
「もふもふ…したい…」
「ちょww照れるからやめろし///」
ベアトリーチェがぬこをもふっている間に、エヴァはマントからこっそり手を出してお菓子をゲット。二人が訪れたテーブルからはいつの間にかお菓子が消えていていく。
ホールは曲の盛りあがりと共にますます熱を帯びてゆく。
遥久と姫乃は曲に合わせて優雅にダンスを楽しんでいる。
「さすがのお手並みです」
「ええ、このくらいは淑女の嗜みよ。それに貴方もとってもお上手だわ♪」
「そのドレスも可愛らしいですね、良くお似合いです」
「ふふ、ありがとう」
時同じくして、王子こと愁也とシンデレラ(笑)もダンスを楽しんでいた。
「だ、ダンス上手いんだね」
「あらぁん、このくらいは淑女の嗜みよぉ♪ 貴方もなかなかねぇ」
「そ…そのドレスもか…可愛いよ!」
「あら嬉しいわぁ!」
抱き締められた王子がスタンになったところで、ダンスを終えたディザイアとウサギは二階席に移っていた。
「おお、ここからでも花火が見えるんだな」
アーチ状の大きな窓の向こうには、色とりどりの光が明滅している。
しばし二人で眺めていると、見上げるウサギからぽつりと漏れる呟き。
「――何だか、人間みたいだよね」
「……それはどういう意味だ?」
「キミもそう思った事ない?」
ディザイアは一旦沈黙した後。
「…まぁな。でもだからこそ気になって仕方ない。そうだろ?」
綺麗で、儚くて、力強くて。
その言葉にウサギはそうかもしれないね、と微笑してみせた。
●更に出会う者たち
その頃、オフホワイトのタキシードを召した影野 恭弥(
ja0018)は、しばしダンスホールを眺めていた。
金色の仮面の奥で同じ金の瞳が捉えたのは、ぴょこんと立つ真っ白な耳。
(……うさぎ)
何となく興味を惹かれた、ダンスを申し込んでみる。
「私と一曲踊っていただけませんか?」
差し出された手を見て、紫水晶の瞳が瞬くのがわかる。
「……ボクでいいの?」
「ええ。ここで出会ったのも何かの縁ということで」
丁寧な言葉づかいも普段は浮かべない微笑も、この場に相応しくあるために。聞いたウサギは恭弥の手を取ると、ドレスの裾をひらりとはためかせた。
「ふふ。お誘いありがと」
二人がホールへ歩み入った後方で、かぼちゃの馬車は見られていた。
(´・ω・`)じーっ
ミ ゜д゜ミ
真珠はかぼちゃをまじまじと見つめてから、首を傾げ。
「かぼちゃさんがうごいてるですにゃ。食べられるですかにゃ?」
「ちょwwフォークでつんつんすんなしwww」
「( ゜д゜)ハッ!着ぐるみですにゃ!?」
突然しゃべり出したかぼちゃにびっくりしたものの。生き物だと気付いた彼女は、お皿にてんこ盛りになったフルーツを差し出し。
「これかぼちゃさんに差し入れですにゃ! スイカあーん☆」
「えwwwあーんとか無理無理無理無理wwwいやほんとまじで勘弁俺こういうのどうしていいかわかんないしさっきからなんか目のやり場に困るって言うかもうどんな拷問だよくぁwせdrftgyふじこlp」
かぼちゃの精神防御値がゼロになりかけているが、真珠はきょとんとして。
「かぼちゃさんよくわからないことしゃべってるですにゃ。何だかかわいいですにゃ♪」
ぎゅーっと抱き締めると、胸の谷間にもふもふが挟まってくすぐったい。
「くすぐったいですにゃ〜…はにゃ!?」
※かぼちゃの心象風景※
バルスバルスバルスバ
ル 俺 ル
スバルスバルスバルス
「目がああ目があああ」
かぼちゃはにげだした!
「ダンスお上手なんですね」
恭弥がそう告げると、ウサギは桃色の髪をふわりと弾ませる。
「そういうキミも上手だよ?」
二人は音楽に合わせて軽やかにステップを踏む。恭弥が右へ左へとリードすればウサギも流れるように動きを重ねる。
その様は思わず周囲が魅入ってしまう程の華やかさを描いていて。
ふと窓外に視線を向けると、花火が上がっているのが見える。
「バルコニーの方で花火が見えるそうですよ。後で見に行きませんか?」
「うん。少し夜風に当たるのもいいかな」
そう話す二人の隣では、二階から降りてきたアヴニールが、先刻の海賊船長に声をかけていた。
「おお、其方は先ほどの」
「おや、またお会いしましたね」
何だか嬉しくなった彼女は微笑んで。。
「ここで出逢おうたのも何かの縁。折角じゃ、一緒にダンスは如何じゃ?」
「ええ、私で良ければ喜んで」
リアンは彼女の手を取ると、慣れた手つきでエスコート。軽やかにホール内を彩ってゆく。
その巧さにアヴニールは思わず。
「ダンスも完璧な御仁じゃな♪」
「ええ、貴女もとてもお上手で」
不思議なほどに息が合うのは、魔法にかかっているからなのか。
「あら、また合ったわねかぼちゃさん!」
エヴァに声をかけられたかぼちゃは、姿を見るなりミ ゜Д゜ミな顔になる。
「あれwwさっきと髪色とか違うんですけどwww」
「ふふっ。きっと気のせいよ」
「おまwww声まで変わってwww」
種明かしは、ベアトリーチェと上下を交換したから。相手が仮面の奥で目を白黒させる中、ベアトリーチェはこっそりマントから手を伸ばす。
「お菓子…取るの…」
その時、うっかりマントの裾を踏んづける。
「あ…」
「きゃあああ」
上に乗っていたエヴァの体が、ぐらりと大きく揺れて落ちてしまう。
「ちょwww体が真っ二つになってますしおすしwww
え、あれやばくね? モザイクかかる感じじゃね?(滝汗)」
「まずいバレたわ。にっげろー!」
二人はダッシュでその場を逃げ出す。
時同じくして、ファラオはボディビル銅像と見つめ合っていた。
「何故だろうか…他人とは思えないな…」
そこはかとなく感じられる筋肉天使的な何か。
(ぬうう何と立派な筋肉よ…!)
ギメの視線はファラオの露出された上腕二頭筋やら、見事に六つ割れした腹筋に釘付け。
(我にひけを取らぬとは、なかなかの見どころあり…!)
もの凄いガン見されている事に気付かないというか本物の銅像だと思い込んでいるファラオは、ギメの胴部をじっと見つめ。
脇腹をつんつん。
「ふむ…随分精巧な出来だな」
(ちょ、くすぐったいですからやめろください)
つんつん。
「心なしか汗を掻いているようにも見えるな…?」
つんつん。
(無理無理むりむりいいいいいい)
ギメの脇腹耐久値が限界を迎えた瞬間、救世主が現れる。
姫乃と踊り終わった遥久が、ホールの隅っこでやたら目立つ存在に気付いてしまったのだ。
「あれは……」
見覚えある雷的なあれそれ。そっと近付き声をかけてみる。
「――はるばるエジプトからようこそ」
「む…お前は……」
「こんな所で奇遇ですね」
真顔で言うも堪えきれず肩が震える相手に、ツタンカーメンの下で冷や汗が浮かぶのが容易にわかる。
「な…なぜ私だと」
「忍びきれないオーラでしょうか。まさか貴殿の御趣味では…ありませんね」
「騎士の誇りにかけて違うと言っておこう」
即答に遥久は微笑しながら頷いて。
「失礼しました、ではお詫びに私も着替えてきましょう」
「む? それはどういう…」
ファラオが止める間もなく、遥久はどこかに姿を消す。
数分後、戻って来た遥久を見てファラオの動きが硬直した。
「お待たせしました」
絶句する視線の先。シャンデリアの下で輝く――
全身黄金タイツの遥久がいた。
「スフィンクスのスーです、どうぞよしなに(真顔」
記録者がプレ三度見した程度の衝撃。スフィンクスマスクの輝きにファラオの仮面がぱーんしそうになるが何とか耐え。
「やく…じゃなかったスー!」
「お呼びでございましょうか、王」
「いや…うむ、その、もう少し自分を大切にしてm」
「目も光りますよ<○><○>」
「まさかの」
「スフィンクス座りもできます(しゅた)」
「お前に何があったんだ…!」
ファラオのSAN値が崩壊しかけた頃。
本当の混沌が始まろうとしていた。
●今年も華麗に逝こう
その頃、姫乃は男女両パートをこなしながら、踊り慣れていない子を優しく手ほどきしていた。
「一つでいいの、覚えて帰れば、次からはもっと楽しめるわ」
相手がイケメンの場合は、教え方にも熱が入る。ちなみに仮面をつけていてもイケメンはわかる。らしい。
「あら、そっちは危険よ。私と踊りましょう?」
シンデレラ()ゾーンに彼らがうっかり足を踏み入れないよう、さりげなくガード。
そんな彼女の目に、今まさに秘境へ連れ込まれようとしている王子(愁也)が映った。
「ふふ、アタシとこれからもっと楽しみましょぉ♪」
「あ、うん、でもそっちは暗いからやだなっていうか」
「あらぁん、どぉして?」
「ほ、ほらシンデレラ! 12時が来たら魔法が解けちゃうし」
「その前に連れ込めばいいんだよ(まがお)」
「いやシンデレラってそういう話じゃnGYAAAAA」
「待ちなさい! そこの×××(ピー)野郎!!」
姫乃のドスの利いた怒声にシンデレラがきょとんと。
「あらぁ、アタシの事ぉ?」
「そうよこの※削除されました※!! 大体あんたがシンデレラ? はっ、大人しく痩せてから出直して来なさいな●▽×※@!」
火花を飛び散らせる姫乃に、シンデレラはなぜだか頬を染める。
「やだわァ…アタシ、そういうプレイも好きよぉ///」
「しまった、悦ばせたわ(まがお)」
姫乃が鮮やかに盛り上げたところで、親友の危機を一応察知したスー(遥久)が登場。
「ファラオ、お願いします」
「うむ」
ばりばりばり ギャー
凄まじい稲妻が降り注ぎ、王子の頭は壮絶なアフロになっている上に服が焼け焦げて半裸。
「やだわ、雷のせいでドレスが…っ」
シンデレラも絶妙な位置で裂けたドレスから※禁則事項です※があらわ。
余裕の蔵倫モザイク発動である(しろめ)。
王子様の半裸に姫乃が心のシャッターを切る隣で、スーは神妙に頷き。
「ファラオの呪い、さすがですね」
「そこのスフィンクスさすがじゃねえええええ」
王子の絶叫がホール内にこだまする。
時同じくして、リザベートはカボチャっぽい何かを発見していた。
「ほう、これはまた悪くない逸材! 妾が可愛くしてやろう!」
「えwwwちょwwやめwwww」
☆★かわいくな〜れ★☆
かぼちゃはヤリ逃げされた。
そんなフリルかぼちゃと出会ったのは、ウサギと別れたディザイア。
「…おう。清々しいほどの悲壮感だな」
そっと肩ぽんすると、手にしたグラスを差し出す。
「まぁ、何だ…人生こういうときもあるさ」
「うはwwwこれスイカじゃねwww俺の好み知りすぎ乙wwwww
あれ…なんだろこの気持ち…///」
かぼちゃが人知れず胸キュンしたところで、ルビィはメテオ級の間違いを犯す。
「…おっ、姫発見!ダンスを一曲――ゲッ!?」
「あらぁん、姫だなんて照れちゃうわぁ♪」
緋月と勘違いして声をかけた相手に絶句。というかどうやったら間違えるのかが、当依頼最大の謎であり議論が待たれるところである。
マスクでは隠し切れないあれやこれに、ルビィの額には汗が浮かぶ。
「――クソッ!俺とした事が…。体の傷()は癒えても、心の傷()は未だ癒えちゃいなかったって訳かい…」
一年前の惨事。
蘇るトラウマ()。
「は…!あのシンデレラはルビィさんを大人()にした…!」
この時、緋月も偶然現場に出くわしていた。再びルビィに迫る危機を前にはっとなり。
「あのドレス…似合ってます…! この前お会いした時より、数倍輝いてる気がします!」
緋月は天然だった。
「ハッ! 貞操の1つや2つが何だってんだ…ッ」
ルビィは逃げ出すどころかシンデレラに手を差し出すと、笑みを浮かべてその言葉を口にした。
「一曲如何ですか? レディ」
あんたやっぱり勇者だよ…!
貞操は記録者にお任せしてはいけない。
貞操は記録者にお任せしてはいけない。※大事なことなので以下略
ルビィが華麗に※禁則事項です※された直後、この危険エリアに足を踏み入れた者がいる。
「…おぃ、あれ見ろよ。西瓜が南瓜に乗ってるぞ!」
那由汰の視線先に人外のナニカが二つ。
「あら、いらっしゃい♪ ( ^o^)」
「こいつとスイカ一緒にすんじゃねーwww」
あまりの視覚テロに那由汰はあさってな事を呟く。
「なんだ同じ瓜科で戦争…」
「やだ、あなたの尻尾素敵ねえ♪」
「おい!そこはやめryぁー……」
尻尾をむんずと掴まれ、その場で力なく倒れる。
「あらぁ、どうしちゃったの?」
実は尻尾が弱点な那由汰に、シンデレラはつぶらな瞳をぱちくり。
「きっと、アタシの魅力にやられちゃったのねぇ♪」
「ww大ピンチ乙www」
那由汰がどう見てもこれオワタな状況に陥る中、ダークマターをいち早く察した治翠は、雪人の視界を遮る。
「ん、何かあったの?」
「しっ、見てはいけません」
保護者センサー発動。雪人の肩を掴んで回れ右させると速攻で退避。対する雪人は何が起きたのかがわからず、犬耳をピコピコ動かしながら素直に回れ右をする。
「あれ、そう言えばご…狐さんは?」
「あの方は身を呈して私たちを逃がそうとしてくれています。彼の遺志を汲みましょう」
「おいお前らちょっと待っtぁー…」
尻尾掴まれたまま迫りくるシンデレラを見て、那由汰は思った。
あ、俺死んだわ。
彼が死()を覚悟した直後、雪人を安全地帯へ送り届けた治翠が戻って来る。
「おや、あんな所に凄絶に美しい殿方が…!」
「えっどこどこぉ?」
シンデレラがうっかりよそ見をした隙に那由汰を担いで逃走。大惨事を免れたところで、不運にも現れたのはエルディン。
「あらぁ、ほんとに素敵なイケメンがいるわぁ♪」
「……え、何かのオブジェですか?」
ふりふり(※三倍増し)に身を包んだデラックス的なアレ。
「シンデレラ? いやアレはガラスの靴を粉砕しそう継母と義姉をしばき倒すに違いない」
自分でも何言ってるかわからないけど、本能的に危険を感じる。
とりあえず、叫ぶ。
「いや、あれはほとんど視覚的暴力!!」
逃げたい。
しかし足がすくんで動けない。
「はっ…まさかこれは…罠!」
「あらうふふ緊張してるのね、かわいいわぁ( ^o^)」
気分は重圧ときどき束縛♪
ロマンティック(スタン)が止まらない★
※彼の意識は現在ブラックホールに飲み込まれております※
「い、いえ私はあれぇええええええ」
体をわしづかみされ完全スタン状態。ぶんぶん振り回されるようにダンスを踊る。
このままではヤられる。でも大丈夫、僕らには例の合い言葉あるよ!
その天啓にエルディンは、必死にあの言葉を口にしようとする。
「か、神…神の采…あれ、何でしたっけ?」
エルディンの記憶は陰謀により抹消された。
「いや、ちょっ、まっ…あ゛ーーーっ」
ホール内に響き渡る断末魔は、今年も記録者達を心穏やかにさせてくれる。
そう、彼の犠牲に比べれば、何もかもがちっぽけな悩み。
今年もありがとう!
エルディンが尊き殉死を遂げたたところで――
今世紀最大の犠牲者トリオが火を噴きはじめた。
三銃士はダンスもそこそこに料理を楽しんでいた。
「んん、これ美味しいな! アラミスも食うk…って、ちょ、もう皿が空っぽじゃないか!!」
「もぐもぐどれも美味しいんだよー! 腹が減っては戦はできぬ! なんだね!」
ポルトス(のとう)とアラミス(縁)が舌鼓を打つ隣で、アトス(千尋)がふと、何かの気配に気付いていた。
「……何だか草の気配がする……」
ここで残る二人も闇に潜む気配を察知。
「ハッ…!! な、何だか寒気が…!?」
「うや、これはまさか……!」
「あらぁ、どこかで見たかわいい子たち発★見♪」
「ていうかお前ら毎回来てんじゃねーよwwww」
現れたシンデレラ(笑)とかぼちゃっぽい何か。運命的出会いにアラミスは警戒の反復横跳びを開始。
「おっと、野じゅ…うや、ふとまs…うやや、これはうつくしいしんでれら! 南瓜の馬車とお散歩ですか?なんて!」
「ちょwwその動き何なのwwww」
千尋は颯爽とシンデレラの前に立ちはだかってみせる!
「ふっ…草の気配は貴君であったか。わたしは、三銃士が一人、アトス!」
アトス:理知的な性格、バツイチが黒歴史@ネット大百科 ※テロップ
「えええ、黒歴史なんてありませんし!!ありませんし!!」
「去年のアレは黒歴史じゃねーのかよwwww」
「ちょwwそういう意味じゃないですしおすしwwww」
だめだアトスは既に口調が侵され始めている。のとうが慌てて口を挟み。
「やややっ、麗しい姫君のお相手だなんて、身に余るのだ!」
「あらそんな事ないわぁ♪ 複数プレイは慣れてるから大・丈・夫」
ダメだどう見ても生き残れる気がしない。
ここでポルトスは非情な決断に出た。
「一人は皆のために、皆は一人のために…ってことで、そぉい!!」
目の前にいるアラミス(縁)をシンデレラに向けて投げた!
「いらっしゃ〜い( ^o^)」
\アッー!同士の裏切り/
「ちぎいいいいおのれ裏切ったなあああポルトス! きさまランスロットだったかあああ!」
シンデレラに抱き締められ、スタン状態。
「アトス! アラミスの犠牲を無駄にしてはいけないッ…! 俺たちは逃げるのにゃー!」
だがしかしアトスは、何故か虚空へと剣を掲げていた。
「…ア、アトスーー!?」
「困ったときはこれだよね」
我らは銃士!
\ひとりはみんなのために!/
掲げた剣が燦然と輝く!
\みんなはひとりのアッーーーーーーーー/
※アトス(千尋)の精神は現在成層圏の彼方へと旅だっております※
「我らのwww誓いはww海より深いwww」
「おいいいしっかりするのにゃ! アトス!」
「ふ……アトスの言う通りなんだね。一人は皆の…皆は一人のために…なんだよ」
「ちょ、アラミス俺の足を掴むのはやめるのにゃ!」
「えn・・・私の尻を犠牲にしようなど! 千年早いわ!逃がさん!なんだね!」
「尻だけはwww尻だけは勘弁をwww」
「ちょおおお待て! 待つのだぎゃわーー!」
\みんなでゆっくりしていってね/
そして――
だれもいなくなった。
※その後はお察しください※
●つわものどもが夢のあと
「う…私は一体何を…」
意識を取り戻したエルディンは、自分の衣装がとんでもない事になっているのに気付いた。
「なんでこんなことに…!」
至るところが破けて大惨事。
ふと横を見ると、同じく衣装がぼろぼろな上に頭がアフロになっている愁也がorz←こうなっている。
「ああ、あなたも犠牲s」
「なってないよなってないよ!」
必死で否定する王子の背後で、声が上がる。
「ほう、お主ら困っておるようじゃの」
この声、まさか――
\ゴスロリBBAの登場だよ/
「その衣装、妾が直してやろう。遠慮はいらぬ!」
「え、ちょ、待っt」
☆★かわいくな〜れ★☆
そこには、全身フリルな紳士とゴスロリ王子の姿が残されていた。
「アレにヤられた上に女装とか鬼畜の所行と言わざるを得ません!(号泣)」
「うん、これ王子っていうよりむしろ姫だよね(しろめ)」
リザベートの犠牲者が増えた所で、クアトロシリカと冴雪は思い思いにホール内を回遊していた。
ふと、魔女は白雪姫をカーテンの裏へと誘い込み。
「クゥ、いい子に出来ましたわね。ご所望のものを差し上げますわ」
唇に触れる、柔らかな感触。魔女のキスはとろけるように甘く。
「はにゃにゃん〜v」
昇天しそうな白雪姫を見て、魔女はくすりと微笑う。
「ご満足かしら?」
「うん…幸せ! あ、でも続きも…」
「続き? そうですわね」
上目遣いでじっと見つめる白雪姫に、考える素振りを見せた後。
魔女は耳元に唇を寄せ、そっとささやいた。
「クゥがもっといい子に出来たら考えてあげても宜しくてよ」
時同じくしてエイルズレトラはかぼちゃの悩みを聞いていた。
「俺さwwぶっちゃけ上司と相性合ってないと思うんwwこれハロワ行くべきww」
「そんなリアルな相談されても返答に困りますね」
「即答つれえwww」
その頃、人気の無いバルコニーでは、恭弥とウサギが穏やかな時間を過ごしていた。
心地よい風と夜空を彩る大輪の花火で淡く照らし出されている。
「たまにはこういうのも良いですね」
夜空を見上げた恭弥が微笑むと、ウサギは花火を見つめたままわずかに頷いて。
「ヒトの世界は鮮やかだね」
「どうしてそう思うんです?」
「色がたくさんあるから」
たくさんありすぎて、時々眩しく見えてしまうくらい。
仮面の下で、ウサギも微笑むのがわかる。明滅する花火の下、恭弥は手にしたグラスを掲げてみせた。
「一夜の遊戯に」
ベアトリーチェとエヴァも、戦利品のお菓子を食べつつ二人で花火を眺める。
「綺麗だね…」
友だちと眺める花火はやっぱりちょっと特別で。
「さて、舞踏会が終わったら私の部屋で二次会するわよ!」
エヴァの弾んだ声に、ベアトリーチェもこくりと頷き。
「うん…お菓子もいっぱい…楽しみ…」
食べきるまでは寝られないとでも、言わんばかりに。
一夜の夢もそろそろ終わりが近付いてくる。
彼らは名残惜しむように、時を楽しむ。
「ようやく見つけたぜ、お姫様」
「探しましたよー!」
様々な困難()を乗り越え再会を果たせたルビィと緋月。ルビィは口端に笑みを浮かべ。
「ってな訳で俺と踊ってくれますか? お姫様」
「喜んで…!」
差し出すその手を緋月は嬉しそうに取る。熱くなる頬と鼓動は、仮面の下で秘めやかに。
「何だかんだで、楽しかったですね」
優雅に微笑む治翠に、雪人もわずかに頷いて。
「うん…まあ、ケーキ美味しかったし」
「俺は散々な目に遭ったけどな……」
那由汰のうんざりした声に笑いをこらえつつ。
「せっかくですし、最後は皆さんで踊りましょうか」
にこにこと微笑む治翠にやれやれと。
「しょうがねえな…ああ、女役はやってやるよ」
「えっできるんですか?」
雪人の言葉に怠そうに返す。
「昔取った杵柄ってやつだよ」
「楽しい一夜をありがとうございました」
スーがファラオに礼を告げると、仮面の奥から苦笑めいた声が届く。
「ああ、こちらもだ」
「やあウサギさん、女王様のご機嫌はいかが?」
ゴスロリになった王子を見て、時計ウサギは瞳をぱちくりとさせる。
「それ、キミの趣味…」
「じゃないよ!(涙目)」
ウサギがくすりと笑った所で三銃士が乱入。
「其処の可愛い兎さん、ダンスはいかがですか?なんて!」
「ふふ。じゃ、皆で踊ろうか」
縁の誘いにウサギが頷けば、姫乃とエルディンも合流。
「あら、私もご一緒してもいい?」
「こんな格好ですが踊りは得意ですよ」
最後は揃ってマスカレイド。
のとうと千尋はくるくると歌い踊る。
「マスカレイド! ここは仮面の洪水!」
「飛び交う視線、微笑む黄金、めくるめく銀細工!」
華やかに秘めやかに、高揚に身を任せよう。
「お腹いっぱい幸せにゃー」
真珠が幸せそうにうとうとする隣では、ディザイアがのんびりと酒を飲みつつ踊り明かす彼らを見守っている。
曲が終わり、一夜の夢は終わる。
夢から醒めた参加者たちは、めいめいに舞台を後にする。
最後まで銅像として過ごしたギメは、達成感に酔いしれていた。
「ふ…我の肉体美、十分に堪能させてやったわ」
誰も見てないときにポーズをこっそり変更したりと、涙ぐましい努力をした。
実は通報されて何度か連行されかけたとかないですからいやまじで。
怪人パンプキンはかぼちゃの馬車に手を振って。
「楽しかったですよ! いい就職先が見つかるといいですね!」
「ちょwwお前、案外いい奴だな///」
アヴニールは最後に海賊船長へ告げる。
「ふふ、楽しかったぞ。今度は仮面無しで会いたいモノじゃ」
「ええ、私もいつか」
別れた後、リアンは鼓動が早くなるのを感じずにはいられない。
ダンスの癖までそっくりだった。
「やはりまさか…今日出逢ったのは…」
夢なら醒めないで欲しいと、願うほどに。
そして。
ふと感じた気配に、明は視線を上げた。
満月を背に、いつの間にか少女のシルエットが浮かび上がっている。
「この世界は綺麗だね」
影が漏らした言葉に、当たり前のように返す。
「ああそうとも、この世界は美しい」
どんな淀みも濁りも、全て全てが。
影は告げる。
「ボクはここへ来たこと、きっと忘れないと思う」
たとえ千年の中の一日だとしても。
去り行く影を見つめる表情はやっぱり笑っていて。
人知れず呟いた言葉は、何だったのか。
今宵は蒼白い月が輝く、神秘的な夜。
夢の続きは、仮面を外したその先で。