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マスター:久生夕貴
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2014/01/16


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは初夢シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。

 ここは世界中で海戦が行われている、混沌の世界。
 巨大な二隻の戦艦が大海原を航行している。
 一方は白く塗られた船首楼が美しく、もう一方は漆黒に塗られた船尾楼が重厚な雰囲気を放っている。
 寄り添うように海面を走る様は、まるで双子のようだと謳われており。
 名をそれぞれ『白檀(びゃくだん)』『黒楓(こくふう』と言う。

「目標接近! 三時の方向に敵! 距離十キロ。護衛艦多数高速接近中!」
 
「ちっ……またか。全くしつこい奴らだ……」
 レーダーを睨みながら言い放つのは、黒楓の艦長である八塚 楓。
 その燃えるような紅い瞳は、身につけた漆黒の詰め襟軍服によく映えている。
「仕方ないよ、楓……。敵は私たちが狙いなんだから」
 そう呟いて画面越しに静かな眼差しを向けているのは、楓と同じ顔をした男。
 透き通るほどの碧い瞳に、白の詰め襟軍服。白に近い銀髪が、動きにあわせてなびく。
 白檀の艦長、八塚 檀だ。

「ですが兄さん……もうこれで何度目だと思っているんですが。奴らのしつこさは尋常じゃ無い」
「そうだね……それは私も感じてはいるよ。でもね、楓。ここで文句を言っても仕方が無いじゃないか」
 画面の向こうで苛立ちを隠そうともしない弟を見て、檀は吐息を漏らす。
 楓がああ言うのも無理は無い。
 敵艦隊が双子戦艦を追い回し始めたのはほんの数ヶ月前のこと。
 何度も迎撃するのたが全く懲りることが無い。それどころか日を追うごとに、艦隊規模がふくれあがっている。

「艦長! 敵艦隊が猛スピードで接近してきます!」
 レーダーを見つめていた檀は、その憂いを帯びた瞳をふっと細める。

「そろそろ……本気で殺る必要がありそうだね」

 ※※

 ――『黒楓艦内』――

 威嚇の砲撃が周囲で激しい水しぶきを上げる。
 敵の姿はもう視認出来るほどに近付いてきていた。

「敵艦『怒江霧』より入電!”黒楓に告ぐ。直ちに降伏せよ”」

「クソ共が、消え失せろと言っておけ!」
 楓の怒声が、艦内に響き渡る。
「敵艦より返答あり。”我々の世界ではご褒美です!”だそうです」
「ふざけるなあああああ」

 駄目だ全く勝てる気がしない。
 黒楓を執拗に追い続けている敵艦は、こちらが迎え撃てば撃つほどまるで悦んでいるかのように生き生きとし始める。
 これにはその攻撃性から「死神(ハデス)」とさえ呼ばれる黒楓もほとほと困り果てていた。
 楓は燃えるような瞳でレーダーを睨み、低く呟く。
「今度こそ奴らを討ち滅ぼしてくれる……!」
 直後、激しい爆撃音と共に振動が艦内を襲う。
「くっ……奴らめ、早くも仕掛けて来たな。総員戦闘配置につけ!」

 その時、白檀からの交信ランプが光った。

 ――『白檀艦内』――

「敵艦『保藻雄』より入電!”白檀に告ぐ。直ちに降伏せよ”」

「なるほど……ついに追い込みをかけてきたようだね」
 檀はほんの少し考えるように沈黙している。
「艦長、返信はどうしましょうか」
「そうだね……『私も楓も、そのつもりはないよ』と言っておこうか」
「了解!」
 檀は画面に映し出された楓に向かって、微笑んでみせる。
「楓、無事かい?」
「ええ。多少船尾に傷を負いましたが、問題ありません」
「そうかよかった。大丈夫だよ、万が一の時は私が君を護るから」
 白檀の護衛力は艦船随一と言われており、黒風の死神に対してこちらは「救世主(メシア)」の異名を取る。
 ただ――かなり過保護気味ではあるのだが。
「大丈夫ですよ、兄さん。こちらの砲弾数は十分ですし準備も万全d」
「何言ってるの、楓。君に傷一つつけさせやしない。それが私の使命なのだから」
「はあ……」
「それよりもね、楓。頼みがあるんだ」
 檀はにこやかに微笑みながら、告げる。

「そこ、どいて。そいつ殺せない」

※※

「だめだ、あいつ完全に頭が血が上ってやがる……」
 交信を終えた楓は青ざめていた。
 恐らく先程の砲撃がいけなかったのだろう。傷ついたとうっかり言ってしまったのが失敗だった。
「とにかくだ……白檀が特攻する前にこっちで落としてしまえば問題無い」
 楓は隊員へと指令を飛ばす。

「総員、最速で艦隊『怒江霧』撃破を目指せ!」


リプレイ本文



「敵艦隊、接近。……楓艦長、どう動かれますか?」
 モニターを眺めていた楓が振り向くと、副官の綾羅・T・エルゼリオ(jb7475)がこちらを見つめている。
「お前はどう思う?」
 その声がやや気安い調子に聞こえるのは、二人が子供の頃からの幼なじみだからだろう。
「そうですね……」
 敵艦隊の配置を確認したエルゼリオは、楓へと視線を戻す。
「私は敵艦隊の進行方向を遮るような形で本艦と小型駆逐艦を配し、全火力を敵艦隊の先頭艦に集中。後に敵艦隊の各個撃破を狙う『丁字戦法』を具申致します」
「ふん…なるほど、悪くない」
 直後、黒楓通信手の春名 璃世(ja8279)が振り向く。

「艦長、敵戦艦から再び入電があります」
 楓は半ばうんざりした様子で。
「またか…何と言って来ている?」
「”さあ、早く我々を罵るがいい。いや罵ってください”」
 苛立ちを通り越しこめかみを押さえる楓を見て、璃世は密かに思う。

(ああ、悩む姿も素敵です楓艦長……)

 隠し切れない艦長ラブオーラ。ちなみに鈍い楓は全く気付いていない。
 そんな彼らをそっと見守る人物。

「……楓艦長も大変っすよね、色々と」
 黒楓メカニック担当の平賀 クロム(jb6178)だ。
 重度の戦艦オタクである彼は、双子戦艦の美しさに一目惚れ。以来整備士として日々熱心に働いている。
「『怒江霧』には美しさが無いんすよ。その点黒楓のフォルムと来たら…」
 ちなみに「黒楓萌え」を語らせたら右に出る者はいない。

 その頃、黒楓護衛の駆逐艦では迎撃準備が進められていた。

「ふむ…ティータイムに間に合うように決着をつけたいところだな」
 迫り来る敵艦を眺めながら、アンジェラ・アップルトン(ja9940)がその美しい瞳を細める。
 彼女は久遠方駆逐艦『津軽』艦長。英国で作られたそれは、「毒林檎姉妹の妹の方」と若干長い通称で呼ばれている。
 ちなみに双子姉は色々あってドックに赴いており、不在である。

 そんな津軽とは逆側で水面を走るのは、蒼く輝く久遠型駆逐艦『蒼樒(そうみつ)』。艦長の樒 和紗(jb6970)が落ち着いた物腰で呟く。
「楓様を襲う輩……生かしてはおけません」
 長い黒髪にアメジストのような瞳。アンジェラとはまた異なる美貌の持ち主である彼女は、モニターを冷ややかに見据えている。
 その冷酷にさえ見える姿から『蒼の氷将』の異名を持つ。

 敵艦『怒江霧』の禍々しい巨体は、すぐそこまで迫っていた。

●黒楓艦内

「敵艦隊、砲撃開始!」
 璃世の報告と同時、激しい爆撃音と衝撃が黒楓艦内を襲う。
「……相変わらず、全く躊躇する様子が無いですね」
 敵艦の勢いに眉をひそめるエルゼリオの隣で、楓は吐き捨てるように。
「一隻残らず沈めてやるよ、変態どもが……!」
「楓艦長…そんな顔でそんな事を言われたら、私…っ」
「いや、何でお前が反応している」
 つい本音が出た璃世の耳に、白檀からの通信が届く。

『楓…今、攻撃受けなかった?』

 画面の向こうの檀は笑みを浮かべたまま(瞳は笑っていない)、手には何故か藁人形を握りしめている。
「いえ、多少受けましたが大した損害ではn」
 ガスン、と言う音と共に打ち込まれる五寸釘。
 これアカンやつやと皆が思う中、エルゼリオが冷静に提案する。
「このままでは白檀が特攻をしかねません。まずはこちらが優勢であると、示しましょう」
「そ…そうだな。『津軽』、『蒼樒』頼めるか」

『『御意』』

 返答に頷くと、楓はきびすを返す。
「損傷を受けた船尾の様子を見てくる。ここは任せたぞ、エルゼリオ」

 ※※

「32区画、障壁による封鎖完了を確認っと」
 その頃、黒楓内で通信機を手にケイ・フレイザー(jb6707)は「報告」をしていた。
「ここら辺のシステムはうちと大差ないみたいだぜ」
 実は彼、新米乗組員…のフリをした怒江霧側の工作員。内部から損害を与えるために潜入してきている。
「さて…CICの様子はっ…おっと」

「何をしている?」

 かけられた声に振り向くと、立っているのは黒楓艦長・八塚楓。
(おやおや、いきなり本命のお出ましとはな)
 内心でほくそ笑みながらも、表情は慌てた様子で。
「あのっ…ボク、この間入ったばかりで迷子になってしまって…」
「ああ、この船は広いからな。今から船尾に行くがお前も来るか?」
「あ、ありがとうございます!」
 楓を追うケイの顔には、不敵な笑みが浮かぶ。

「くそっ…俺の黒楓たんに傷が…っ」
 時同じくして、船尾ではクロムが必死に修復作業を行っていた。まだ軽微とは言え、傷を負ったことで彼の怒りは最高潮。既にぷっつん秒読み状態である。
「クロム、状況はどうだ」
「か、艦長? 何でここに」
「気になったから見に来たまでだ」
 ぶっきらぼうに返す様子に、苦笑しながら。
「大丈夫っすよ。黒楓は俺の誇りにかけてでも、直してみせますから」
 クロムの言葉に頷いた楓は戻っていく。その後ろにいる少年を見て、彼は首を傾げた。

「あんな隊員いたっすかね…?」


●駆逐艦

「楓様に降伏しろなど…天地も許さなければ私も許しません」
 蒼樒艦内に響く静かな声。艦長の和紗の氷のような表情に、怒りの色が映る。
「そもそも楓様は決してドSな訳ではなく、私達にその優しさを見せて下さる部下思いの微笑ましいツンデレさん」
『異論はありません、樒艦長』
 黒楓からの間髪入れぬ通信(璃世)に、和紗はこほんと咳払いをし。
「失礼、つい本音が声に出てしまいました。我が同志」
 主に楓様は私の嫁的な意味で。
「ここは私達にお任せください。檀様が特攻される前に必ずや沈めてみせます」
 そう言うなり和紗は、敵駆逐艦の正面へ容赦無く砲弾を浴びせ。
「怒江霧及び護衛艦隊に告ぐ。黒楓への攻撃を止めねば、海の藻屑よりも木端微塵に、いや――」
 放つのは鋭く冷え切った声音。

「原子レベルにまですりつぶして差し上げます、この豚野郎」

 蒼樒がどSプレイ(訂正線)猛攻を続ける中、津軽も行動に移っていた。
「敵を喜ばせるべきか絶望に叩き落すべきか…」
 津軽が撃ち込むのは、鞭がしなるかのような軌跡を描く魚雷。その名も『女王様のお仕置き(クィーンウィップ)』
「ふ…どれほど耐えられるか、試してみよう」
 どM大好きアンジェラは、次々にお仕置きを撃ち込むと通信マイクに向けて言い放つ。

「私の鞭で悦びたい者は前に出ろ!」

 駆逐艦、殺到。
 
「しまった悦ばせすぎたか……」
 ついいつもの癖が出ちゃったアンジェラは、猛歓喜しまくる敵艦を眺め思案。
「やつらの目的が、楓艦長からごほうびを頂戴する事にあるならば…」
 黒楓と通信開始し、提案。
「楓艦長お願いがありますわ。敵艦隊に対しどMになりきって頂けません?」
 その瞳には、めっちゃ期待の色が宿っていた。

●黒楓艦内

「――と津軽艦長が申しておりますが」

 エルゼリオの視線を受け、楓は額に冷や汗を浮かべたまま沈黙している。
「艦長、聞いておられましたか」
「き、聞いていたに決まっている」
「彼女達の進言、理有りと私は判断致します」
「いやしかし…別に俺じゃなくてm」
「いえ。艦長自らがなさることに意味があるのです」
 有無を言わさぬエルゼリオの物言いに、璃世も賛同。
「副官のおっしゃる通りです! 敵の狙いは楓艦長なんですから…!」
 二人の熱い視線を受け、楓は逡巡するように再び黙り込んだ後。

 通信マイクを前に、口を開いた。

「……俺を罵ってくれ」

「報告します! 敵艦隊に多大なるダメージ発生!」
「その調子です。どんどん行きましょう」
 楓はエルゼリオと璃世が紙に書き出した『台詞』を読み上げて行く。
「お…俺はお前の下僕だ」
「駆逐艦一隻撃破!」
 声が上ずり、微かに震える。荒くなった息づかいが、マイクを通し怒江霧艦内に響き渡る。※本人はただ必死なだけ
「さあ、楓艦長もう少しです!」
 璃世が示す台詞を楓は半ば涙目でなぞる。
「どうか俺を…は、辱めてくだs」
「ああ、艦長可愛い…私もう我慢できない…!」
 がたん、と言う振動(決して襲ったわけでは無く璃世が椅子から落ちた音)が彼らに伝わったとき、楓は思い出していた。

 ――そういや、白檀との通信切って無かった気が…。

「うわああ白檀から黒炎が噴き出しているううううう」

 色々アカンかった。

 ※※

●船尾

 その頃クロムは、安堵の息を吐いていた。
「一時はどうなることかと思ったすけど…何とかなりそうっすね」
 彼の一心不乱な修復作業により、黒楓の船尾は応急措置なりに回復を見せていた。
「このまま何も無ければ…ってうわっ!?」
 一瞬船体が大きくぐらつく。何とか体制を保つクロムの目に、信じられない光景が映っていた。
「な…なんで、黒楓が白檀に砲弾を撃ち込んでるっすか…?」
 敵を自動追尾する機銃が、白檀へ放たれている。あり得ない光景に思わず叫ぶ。
「やばいっす(檀艦長的な意味で)早く何とかしないと…!」
 速攻で管制室に向かうと、そこで誰かとぶつかった。

「おっと、見つかっちまったかな」

「あんたはさっきの…ぐはっ」
 クロムのみぞおちに一撃入れつつ、ケイがくすりと笑む。
「さて…艦長の面白い映像も撮れたことだし、もう少し楽しませてもらおうかな」
 去って行く背中を睨みながら、クロムは何とか意識を保つ。

「くっ…黒楓たんは…俺が護るっす…!」


 時同じくして、ブリッジでも混乱が巻き起こっていた。
「黒楓からの砲弾、白檀へと着弾! 損傷を与えています」
「くそっ一体何が起きている!」
 敵艦への攻撃が弱まり、怒江霧からの砲撃が勢いを増す。爆撃音と共にブリッジの一部が破損。
「大丈夫か!楓…ッ!!」
 楓を襲う装甲破片に向かって、飛び出す影。
「おい何をする、エルゼリオ!」
「この身盾にしてでも、お前は俺が護る…!」

 その時、白檀から檀の震える声が響く。

『楓…一体、どうしたの?』

 映る檀の目は完全に虚ろ。
「檀艦長、これは何かの間違いです。お気を確かに!」
『ねえ、僕が嫌いになっちゃったの? それが君の望みなら僕はこの身を灼こう…』

『こちら蒼樒。白檀が自爆しています』
『こちら津軽。白檀が沈みかけています』


 あ、これ駄目かもしんない^p^


 止むことの無い砲撃。
 諦観的空気が艦内に満ちる中――突然低い声が響き渡った。

「……クソが。いい気になるなよ」

 敵艦を見据えた楓だった。
 急旋回で怒江霧の船尾へと回り込むと、手動で集中砲撃を開始。猛攻に敵艦がひるむ中、それでも手を緩めることは無く。
「どうした。もう音を上げたか?」
 薄笑いを浮かべ冷えた声で告げる。
「ああ、お前らの世界ではご褒美だったか。だが俺にはそんなもの関係無い」

 その紅い瞳には、心火の炎が宿る。

「お前等のような能なし共に、俺の部下と兄さんをくれてやるつもりは無いんだよ」


●総攻撃

「黒楓の攻撃で怒江霧がひるんだ、今のうちだ!」
 アンジェラが津軽を急旋回。怒江霧の砲弾や動力源を狙い、お仕置きの集中砲火を浴びせる。
「まだまだ、お楽しみはこれからだ変態ども」
 かつん、とピンヒールで床を蹴り、隊員へと命じる。

「これ以上じらしてやる必要も無いだろう。総員、怒江霧を駆逐せよ!」

 津軽が女王様ぶりを発揮すれば、その反対側では蒼樒が魚雷を発射。
「楓様の屈辱、晴らします」
 和紗が通信でどSプレイで引きつけた所に、砲弾を撃ち込む。
「通信途中で攻撃してはいけないと、誰が決めました? その無様な姿、あなた方にはお似合いですよ豚野郎」
 魚雷や機銃全てを駆使し、敵艦隊を壊滅に追い込む。

 黒楓艦内でも、猛攻が続いていた。
「ド変態の癖に楓艦長にご褒美をもらうなんて許せない…」
 あらぬ方向で怒りをあらわにする璃世は、お茶会用のお菓子から洋酒入りを取り出し口に入れる。途端に目の色が変わり。
「酷いこと言われて嬉しいんだ? ふふ…私の言う通りにしたら、もっとすごいご褒美をあげるよ」
 怒江霧に向けて、女王様口調で告げる。

「ご褒美が欲しかったら…撃ち合いなさい♪」

 時同じくして、システム復旧させたクロムはついにぶち切れていた。
「怒江霧め…絶対許さねえ!」
 俺の黒楓たんの優美なラインが崩れた。これは万死に値すべきだろ常識的に考えて!
 クロムは磁場形成でも使ったかのような超特急で操縦室に駆け込み、砲撃手から操作を奪い取る。
「いい加減にしろよ、このクソ×××野郎どもがぁっ!!」
 放送出来ない叫びを連発し、予測攻撃でも使ってるのかって集中力で敵に砲弾をぶち込んでいく。
「手前ぇら全員●●を×△にして□◎を※禁則事項です※してやる!!」

 全員一丸となった総攻撃に、ついに怒江霧艦隊は終わりの時を迎える。
「気持ち良くなれるなら味方も撃てちゃうんだね。キミ達って本当に…最低」
 璃世はくすくすと笑いながら、両者に全砲撃発射。

 沈みゆく艦隊に「ご褒美よ」と最後の言葉を告げた。


●ティータイム

 静かに凪いだ、大海の水面。

 給仕姿のエルゼリオが楓に問う。
「艦長、本日のお茶はどちらがよろしいですか?」
「お前の勧めるものでいい」
 いつも通りの返しに、ふっと笑み。
「では、アッサムでミルクティーに致しましょう」

 無事平穏を取り戻した黒楓では、三時のお茶会が始まっていた。
 会場には他の駆逐艦艦長も集って来ている。
「皆、よくやってくれた」
「い…いえ、私の任務ですから。檀様と楓様のお役に立てて何よりです」
 そう言って顔を紅くするデレモード和紗の隣では、アンジェラが手製のアフタヌーンティーセットを持参。
 サンドイッチやスコーンの数々を楓に差し出しながら、にこりと。
「スコーンはクロテッドクリームとアップルジャムを乗せてお召し上がりくださいませ」
 まじまじとスコーンを見つめる楓に、くすりと笑む。
「ふふ、毒など入っていませんわ」
「い、いや、そんなつもりは…想像以上の出来に驚いていただけだ」
 照れた様子で食べる楓を見て、今度は璃世が差し出す。
「こちらのクッキーも皆さんでいかがですか?」
 言いながら自分もつまむ。アンジェラやエルゼリオもそれに続く中、楓も口に入れた直後――

 突然、楓の瞳に涙が溢れる。

「皆…こんな俺を慕ってくれて…ありがとう…」
「か、楓様いきなりどうなさいました?」
 次々に涙をこぼす楓を見て、和紗の動悸がノンストップ。アンジェラが母性溢れた手つきで楓の頭を撫で。
「大丈夫ですわ、泣かなくていいんですのよ」
「お前達がいなければ…」
 ぐすぐすと泣き続ける楓に、璃世がとろんとした表情で頬に触れ。
「艦長は私たちに愛でさせてくれればいいんですから…うふ…可愛い…」
 エルゼリオが呆れたように額にデコピンを放つ。
「部下に涙を見せるな。これ以上泣くなら、お前の恥ずかしい過去をばらすぞ?」
「それだけは止めてっ……」
 
 ちなみにクッキーの缶には『性格豹変効果有り』と注意書きが記されていた。

 ※※

「――そう言えばクロムはどうした?」
 元に戻った楓に、エルゼリオが応える。
「先程、半泣きで船首の修復作業をしているのを見ましたね」
「またか。仕事熱心なのはいいが、少しは息抜きもしろと言っているのに」
 楓は席を立つとクロムに差し入れるお菓子を持って、船首へと向かう。
 甲板を一人歩いていると、突然背後から羽交い締めにされる。
「なっ…誰だ!」
「あんた…実にいじめたくなる顔だ」
 薄い笑みを浮かべたケイが、耳元で囁く。
「その気になれば戦艦どころか軍隊そのものすら手に入れられる素質があるのに…惜しいな」
「な…何の話だ、離せ!」
 抵抗する楓の耳たぶを甘噛みし、くすりと。

「また会おうぜ、かわいい楓ちゃん」

 次の瞬間には、その姿は消えていた。

 ※

 こうして、長き戦いはひとまずの終止符を打った。

 先に起こる波乱の予感を、微かに潮風へ宿しながら。













 ――そんな幸せで切ない、夢の話。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 祈りの心盾・春名 璃世(ja8279)
 久遠の風を指し示す者・ケイ・フレイザー(jb6707)
重体: −
面白かった!:6人

祈りの心盾・
春名 璃世(ja8279)

大学部5年289組 女 ディバインナイト
華麗に参上!・
アンジェラ・アップルトン(ja9940)

卒業 女 ルインズブレイド
種に灯る送り火・
平賀 クロム(jb6178)

大学部3年5組 男 アカシックレコーダー:タイプB
久遠の風を指し示す者・
ケイ・フレイザー(jb6707)

大学部3年202組 男 アカシックレコーダー:タイプB
光至ル瑞獣・
和紗・S・ルフトハイト(jb6970)

大学部3年4組 女 インフィルトレイター
撃退士・
綾羅・T・エルゼリオ(jb7475)

卒業 男 アカシックレコーダー:タイプB