戦場に響き渡る鏑矢の音。
それは混沌へと誘う戦の合図。
天下分け目の戦い2013、これより開幕!
●合戦場
「と つ げ き だ ー !」
開始直後、真っ先に敵陣へと突撃を始めたのは、何と西軍大将である瀬波 有火(
jb5278)。
「あたしが大将だー! …ふっ、カモーン」
大将が落ちたら負け? 知るか! かかってこいよ!
挑発ポーズでむしろ囮。
そこに現れたのは同じ脳筋(訂正線)元気娘の雪室 チルル(
ja0220)。
「やあやあ我こそは雪室 チルルなるぞー! あんたが大将ね! あたいと勝負よ!」
「望むところだ!」
開始五秒で早くも大将戦。
彼女達に作戦の二文字は無かった。
「初っぱなから全力よ!」
チルル、余裕でブリザードキャノンをぶっ放す。いくら魔具を装備していないとは言え、高威力の一撃は有火の身体をガードごと吹っ飛ばす。
やばいこれは開始十秒で戦い終了かと思われたが、有火の方も黙ってはいない。
「やったなー!こっちもお返しだよ!」
スパーン!といい音を響かせ薙ぎ払いを打ち込む。こっちもこっちで手加減無しの全力全開。
「いったーい!くそー負けないんだからー!」
チルルが次のキャノン砲を放とうとした、その時。
頭上で閃光が走った。
\ちゅどーん/
盛大に吹っ飛んでいくチルル。
「大将。あまり突撃しすぎませんように」
上空から落ち着いた声音が響く。ふよふよと飛びつつ微苦笑を浮かべたネイ・イスファル(
jb6321)だった。
さすがにこの時点で大将一騎打ちはまずい。
空気読んだ彼は、タイミングを見計らって手榴弾を投下したのだ。
「ありがとう、助かったよ!」
アフロ頭になった有火がネイに向かってサムズアップ。どう見ても若干巻き込まれているのだが、気にしてはいけない。
ちなみに「大将には当てないようにする。繰り返す。大将には当てないようにする」と書かれていたので、とりあえず誤射の範囲にしておきました☆
一難去った所で、次なる脅威が有火を襲う。
「げーむ?初めてだから楽しみなの、です。やるからには勝つの…」
「!?」
潜行でいつの間にか回り込んでいた華桜りりか(
jb6883)が、呪縛陣発動。
「えへへ…挨拶代わりなの、です」
桜色の袴姿で微笑むりりか。
かわいい顔してなかなかえげつない。側にいたネイごと巻き込んで大将を束縛へと持ち込む。
「しまった、あたし動けない!」
「くっ…まずいですね」
このままでは袋だたきの未来しか見えない。
二人が壮絶な爆死を覚悟したその時、突如上空に涼やかな声音が響き渡る。
「隠れていたのはあなただけじゃありませんよ♪」
直後、大量の手榴弾投が投下。
「きゃあああ!」
不意打ちにの爆撃に悲鳴と共に吹っ飛ぶりりか。現れたのは同じく潜行していたディアドラ(
jb7283)。
「さぁ、綺麗な血の花を咲かせてくださいな♪」
めっちゃ爽やかな笑顔で、再び手榴弾爆撃敢行。辺りの地表が吹っ飛び敵を寄せ付けない。
「あの…ありがたいのですが、私動けないんでもう少し控えめnぐはっ」
若干ネイも一緒に吹っ飛びながら、合戦場は瞬く間にカオス(訂正線)激戦の舞台へと変わっていく。
だが波乱は、まだ始まったばかりだ。
●西本陣
その頃、西本陣では副将の加倉 一臣(
ja5823)がひとり、膝を抱えていた。
始まりはゲーム開始前。
東兵糧庫の主を倒す気満々で、「やだ、これならミスター喜んでくれますよね//」などと黒猫の着ぐるみを選択したまでは良かったのだが。
「まさか副将(という名のデコイ)になるとは思いませんでしたよね!」
気がついたら本陣でぽつん。
黒猫のままぐすぐすと膝を抱える所に聞こえてくる足音。
「一臣さん、来たで!」
現れたのは恋人の小野友真(
ja6901)及び友人三名。あほ毛軍師・櫟 諏訪(
ja1215)、なぜか探偵服姿の雨宮 祈羅(
ja7600)、そして西橋旅人。
全員どう考えても死亡フラグしか見えない副将のために、全力ダッシュでやってきた。
「ふっ…一番に俺を守りに来るとは何という愛の深s」
「立って下さいデコイ仕事の時間です!」
デスヨネー
友真に弓矢でぐりぐりされた一臣、もはやヤケクソで立ち上がる。
「こうなりゃ意地でも勝ってやらぁ!」
二人揃って衣装切替ボタン押下!変ッ身ッ!
木ぐるみー
「じゃーん木ぐるみやで、木なだけに!」
「タビット、聞いて欲しい」
木ぐるみから顔だけを出し、一臣はぽかんとしている旅人に告げる。
「古来より日本の戦ではだな…(中略)つまり一緒に着ようよ友よ」
ちょっと記録者には何言ってるのかわからなかったのだが、旅人は真剣な顔で頷いた。
「なるほど、擬態潜伏は戦場において基本だからね…さすがはオミー君だ」
「いや褒められるとむしろ辛いかなって」
「わかった、僕もやろう(ぽち)」
木ぐるみー
その様子を諏訪と祈羅は生暖かい笑みを浮かべて見守っていた。
「どう見ても可哀想な人達にしか見えないのですよー…?」
「なんていうか…うん。三人とも病院に連れて行くべきかもしれない」
木()になった三人は組み体操の扇ポーズを取り始める。
「ふはは、三人のどれが副将かわかるまい!」
「完璧な作戦で敵の目を欺き、討つ!」
「どう見てもフラグにしか見えないのですよー…?」
「なんて言うか…うん。うちらは色々諦めるべきかもしれない」
本陣にそびえ立つ三本の木ぐるみ。
その姿を見て、諏訪と祈羅は考えることをやめた。
●対する東本陣
一陣の風が、荒野を吹き抜ける。
同時刻、東本陣でも副将の雫(
ja1894)が一人物憂げに呟いていた。
「如何にも攻められないのは、歯痒いですね…」
西と比べて東の副将はまとも…もとい、根っからの前衛タイプ。
本来であれば、今すぐにでも敵兵をボコりに行きたいくらいである。
「ですが…嘆いていても仕方ありませんね。やるからにはこの役目、果たして見せます」
身につけた藤色の袴が、砂埃舞う戦場を色鮮やかに彩る。
幼き戦姫の元に馳せ参じたのは二人の将。
やたらと哀愁漂う、いぶし銀の着流し。
彼方へ視線を馳せていた強羅 龍仁(
ja8161)が、ふ、と笑みを浮かべる。
「またこの舞台に戻ってきてしまったか…」
最初の時も副将をこの身で守り通した。
二回目の時は、仲間を逃がすための殿となった。
そして今回も。
龍仁はゆっくりと雫を振り向き、宣言する。
「安心しろ。俺がこの身を賭して護ってやる」
慌てず。
ひるまず。
フラグ立ては大人のマナー☆彡
「遊びなんだから全力で罠を仕掛けても問題無いわよね♪」
雫と同じ藤色の袴に身を包んだナナシ(
jb3008)が、くすりと笑みを浮かべる。
その姿は立っているだけで一瞬雫と見間違えるほど。
「(BU的にも)私が副将の影武者には最適だと思うの」
身長がやや違うとは言え、この上更に変化の術を使えば見破れる者は少ないだろう。
そんな無邪気な笑みを見せるナナシの手には、大量の手榴弾。
「今のうちに準備しておくわ!」
せっせと周囲に地雷を埋め込むナナシを見て、雫と龍仁は思った。
それ、ガチですやん……!
●再び戻って、合戦場
その頃、合戦場で仁王立ちになっている青年がいた。
身につけた深碧の甲冑が鈍い艶を放ち、額の長鉢巻が風にたなびく。
彼は敵軍をにらみ据えると、手にした竹刀を天へと掲げ叫ぶ!
「天下に二つと強軍はいらねえ! 勝利は我が軍勢に!」
それは東軍大将である御空 誓(
jb6197)。
「東が首魁、御空とは俺のことだ! かかってくるがいい!」
そんなイケイケの大将を、やや離れた場所で見守っている人物がいる。
「ふ!天下の最強齧歯類とは俺のことだ…です! …っていうか東城随分とノリノリだな…」
ぱっと見は東城 夜刀彦(
ja6047)に見える美少年。実はこちらが本物の誓だったりする。
夜刀彦と見た目が被っているとのことで、衣装交換を了承したまではよかったのだが――
「どうしてこうなった」
気がつけばどういうわけか、メイド服。
しっかりハム耳までついている俺オワタ。
「おかしい、こんなのおかしいだろ!」
だってケモ耳付いた衣装がそれしかなかったんだもの!(画像一覧参照)
\夜刀彦グッジョブ/
と周囲の声が響く中、誓は涙目で戦場へと躍り出る。
「お…俺泣いてなんかねーし、役目はちゃんと果たすし!! 来いよ西軍、やってやる…です!」
「よっしゃ、わかった♪」
そこへ現れたのはセクシー和装に身を包んだ桃香 椿(
jb6036)。可愛い男の子を見つけたとばかりに襲いかかってくる。
「え、ちょまっtうわああああ」
椿に組み付かれ、ごろごろとそのまま転がっていく。
「うふふ、これはゲームやで、ゲームやから問題ないんやで」
どう見てもアブナイ目をした椿を見て、誓は本能的に察した。
やべえ、これヤられるわ。
「お、俺はまだ綺麗な身体でいてえから!」
顔真っ赤で必死に逃げようとする誓に襲いかかる欲望の塊。
「うふふ、待つんやで〜♪」
慣れないメイド服のせいでうまく逃げられない。
さらば俺の操…と誓が覚悟した時。
「おっと、そいつはヤらせねえぜ?」
現れたのは深紅の甲冑に身を包んだ小田切ルビィ(
ja0841)。
「やった、ここにも可愛い子発見やで♪(じゅる」
年下のイケメンに目が無い椿、ルビィに対しても襲う気満々。
「飛んで火に入る夏の虫…ってか?――ハッ、寄って来る奴ぁ薙ぎ払う迄…!!」
向かってくる椿に竹刀を構えたルビィ。ここで一気に形勢逆転かと誰もが思った時…!
「いや〜んしまったわ!」
「!」
ついうっかり椿の裾がはだけ、艶やかな太ももがあらわ。ついついうっかり目を奪われたルビィ、そのまま椿に組み付かれ物陰へと転がっていく!
※しばらくお待ち下さい※
「ふっ…俺の取材力()を舐めてもらっちゃ困るぜ…」
何の取材を終えたのは謎だが、椿の猛攻から無事生還。
色々捨て去っているルビィにとって、お色気&セクハラ攻撃ごときでひるむわけは無かったのだ…!
――まあとりあえず、鼻血拭こうか。
その頃、誓の姿をした夜刀彦は交戦真っ最中だった。
「面白そうなゲームがあったから…でも勝負は勝負! 参加するからには負けないんだからなっ!」
そう言って華麗なビームを放つのは、蒸姫 ギア(
jb4049)。夜刀彦を大将と思い込み、果敢に攻撃を仕掛けてくる。
「はっ望むところだ!俺はそんな簡単にやられはしない!大将なだけに!」
誓になりきってる夜刀彦、ノリノリで攻撃を回避しつつギアを引きつける。
しかし彼にはどうしても気になって仕方ないことがあった。
夜刀彦の視線を釘付けにするもの、それはギアの服装。
どういうわけか女性用の戦姫袴を身につけ、『大将(ちっちゃく影武者という文字も見える)』と書かれたたすきを掛けている。
あれはギャグなのか、ギャグであればツッコむのが礼儀では無いのか。
人の良い夜刀彦は真剣に悩んだ。しかしギアはちょう真面目な顔で向かってくるツライ!
しかしここで事件が起こる。
「おお、ここにも可愛い子が♪」
現れたのは今やセクハラの権化となった椿。夜刀彦とギアを交互に見つめると、にこっと笑む。
「もう敵でも味方でもどっちでもええわ♪」
彼らは全力で逃走した。
●西兵糧庫
※どう見てもここだけ別世界ですが、ご了承下さい※
その頃、西兵糧庫にはフレイヤ(
ja0715)とエルレーン・バルハザード(
ja0889)が向かっていた。
「負けられない戦いがそこにはある、キリッ」
「うん、┌(┌ ^o^)┐なら負けないっ!」
二人とも何と戦っているのか謎であるが、とにかく息はぴったり。やる気十分。
勢いよく兵糧庫へと突撃開始だ!
「あらぁ〜ん、かわいい子たちねぇ♪」
現れたのは、マツコデ●ックスもびっくりふくよかすぎる主の姿。
どう見てもキケンなかほりしかしない相手に向かって、エルレーンは躊躇無く突進!
「シンシゼメェ!キチクウケェ!」
などと意味不明(と言うことにしておく)の言葉を叫び、大量の┌(┌ ^o^)┐が出現。
主に向かって一気に攻める!
「やぁ〜ん、刺激的だわぁ( ^o^)」
防御力が高すぎるせいなのか、別の理由()のせいなのか、なぜかあまり効いているように見えない。
「くっ…なら精神攻撃ならいかがなものかしら!」
フレイヤがごそごそと懐から取り出したのは、若干端のよれた薄い本。
「さぁ私の攻撃を喰らいなさい! 秘技!黄昏の叡智(ルビ:じさくのうすいほんろうどく)!」
必殺の奥義を繰り出した!
…
……
…………
良子、それあかんやつや。
「あらやだ、興奮が抑えきれないわぁ〜♪♂♀※☆↑↑↑」
\(^o^)/
※自主規制※な内容により、主の力がパワーアップ。
なんかものっそまばゆい光が周囲を包み込む。エルレーンがはっとなり。
「これは…っ! 萌えがいっぱいまで登りつめた、あの力にちがいないのっ!」
「ちょ、あの力とか聞いてないですしおすし!」
「はううっ もえーっ! もえーっ!」
胸のときめきが抑え切れなかったエルレーン、いつの間にか自身もΞ┌(┌ ^o^)┐へと変化。
「こうなったら萌の高みへとたどりつくのっ!」
彼女達は主と一体となり、禁断の境地へと辿り着こうとしていた!
「ええい、もはやヤケクソなのだわ!」
\カッ/
その時、フレイヤ(ルビ:良子)の中では走馬燈が駆けめぐっていた。
冷静に考えるとですね
じさくのうすいほんろうどくとかですね
私の羞恥心がマッハなわけでして
うわああ!
うわああ!
うわぁ(
●西本陣決戦
西兵糧庫が異次元に旅立った頃、西本陣前で迎撃態勢を取っていた諏訪と祈羅は首を傾げていた。
「意外と敵が来ないのですよー…?」
アホ毛レーダーによる索敵を行ってはいるものの、東軍の姿を誰一人見ないのだ。
西軍大将の有火は最前線で戦っている以上、大将狙いは皆そちらに行っている可能性はあるもの。
「うん…でもあの人達が副将を放って置いてくれるとは思えないけどね」
振り返ればそこには相変わらず三本の木ぐるみが立っている。
そのあまりにもシュールな光景にむしろ自分が爆破したい衝動に駆られるが、そっと我慢。
「うちが思うにはさ、この静けさはいわゆる嵐の前の……」
「ようやく辿りついたわーー!」
どこからか響き渡る嬌声。
諏訪が見つけるよりも早く、姿を現したのはアフロ頭のチルル。
「爆発で吹っ飛ばされたから迷っちゃったけど、何とかなったわね!」
さすがは脳筋、隠れるなどという言葉は彼女の辞書には無い。
竹刀を手に突撃してくるチルルに、諏訪が弓矢を構え応戦。
「近付いてくる前に倒しますよー?」
矢尻に付けた手榴弾を撃ち放つ!
\またかよ!/
余裕で吹っ飛ばされたチルル。アフロが三倍くらいになっているが、それでも持ち前の生命力で生き残っている!
「このやろー!そっちがその気ならあたいだって!」
やり返すと言わんばかりに、手榴弾を投げ始める。
「こっちはうちに任せて!」
竹刀を手にした祈羅が、いい笑顔で手榴弾を打ち返す。
「ちょ、こら!一対多数とかずるい!」
返ってきた手榴弾を必死に避けながら。
「くそー…それならこっちも奥の手よ!」
必殺技ブリザードキャノンをお見舞いしようとした時だった。
どんっと言う衝撃音が辺りに響く。
直後、チルルの身体がどさりと崩れ落ちる。
「あはァ…奇襲は基本中の基本よねェ♪」
妖しく煌めく金色の瞳。
立っていたのは、黒百合(
ja0422)だった。
「こんにちはァ…あらァ? もう逝っちゃったのかしらァ♪(はぁーと」
彼女が放ったのは背面ゼロ距離からの高威力砲撃。
高威力のそれは防御を一切無視した貫通ダメージを与え、一撃でチルルを葬り去った。
容赦ねえ……!(戦慄
「さすが黒百合さんやんな…」
本陣奥から見ていた友真は震え上がっていた。一臣も頷き。
「ま、まあとりあえずみんなのおかげで危機は去った…」
「と思ったか!」
「!?」
突然聞こえた声に木ぐるみ達が反応するよりも早く、手榴弾が投げ込まれる。
\ぽいぽーい/
「ではでは〜、ロックンロール♪」
軽快なかけ声と共に次々に爆ぜる地表。凄まじい爆煙で周囲はあっという間に真っ白。
「うわ、なにこれ何も見えん!」
「くっ…奇襲か!友真、タビット大丈夫か!」
慌てふためく木ぐるみたち。だがしかし木なだけに全然動けない。
「あれ、これ全然動けな…ぐはっ」
「え、旅人さんどないしtうわあああ」
がすっごろごろごろ
友真と旅人が盛大に転がってどこかに消えていった直後、煙幕の中から白い影が飛び出す!
「どっせぇ!」
現れたのは白の忍者宇田川 千鶴(
ja1613)。手榴弾片手に華麗なジャンプ。
「くっ…やはり俺を狙って来たか!」
対する一臣も弓矢構えて迎撃態勢。
「ふっ…千鶴ちゃん。弓の名手の俺に投擲とは生ぬるい。全て撃ち落としt」
「と思ったか!」
どごおっっっ
それはまさにスローモーション。
友真と旅人の絶叫が響く中、手榴弾でおもいっくそ殴られた一臣は鮮やかに後方へと吹っ飛んでいく。
手榴弾(物理)とか予想外すぎますから…!ミ´;ω;
薄れ行く視界に映る、簀巻き状態にされた丸太もとい恋人と友の姿。
側に君臨するのは黒の微笑。
「この機を窺った甲斐がありましたね」
手榴弾を手にした石田 神楽(
ja4485)がにこにこと立っていた。
二人の狙いは最初から副将の首。しかし西本陣は守りが堅いため、他に気を取られる隙を狙っていたのだ。
「さすがは千鶴さん。いい右ストレートでしたよ♪」
「神楽さんの煙幕も手慣れたもんやったで」
煙幕モザイクなどお手のもの。神楽、笑顔で追い打ちの手榴弾を副将へ向けてぽーい。
「首、置いてきなさい(にこにこ)」
再び爆ぜながら、一臣は唐突に理解した。
あ、俺死んだわ。
「おー見事なもんやなあ…」
派手に吹っ飛んでいく一臣を見て、千鶴は弓を構える。
「じゃあ私もせーのっ\ホームラン!/」
空に上げた手榴弾を弓で当て飛ばし、とどめの一撃。
一臣は文字通りお空のお星様になった。
「くっ…一臣さんの敵は必ず…!」
再び辺りが真っ白になる中、友真は脱出しようとしていた。
何とか木ぐるみを抜け出し、このまま逃げ切れるかと思ったのだが。
「逃がさない、の」
扇を手にしたりりかが、いつの間にか目前に立っていた。
合戦場から吹き飛ばされた彼女、再び潜行をして本陣を目指していたのだ。
「小野さん覚悟、なの」
りりかは楽しそうにくるりとと舞う。
にこやかに放たれたのは、全く手加減無しの桃色ビーム!
「うわああ容赦ねええ」
もろに喰らい後方へ吹っ飛ぶ。そこで待ち構えるのは神楽と千鶴。
「逃がしませんよ♪」
三人に囲まれ、絶体絶命。※ちなみに旅人は簀巻き状態
「くっ…ピンチか!こうなったら…!」
「友真君まさか…!」
青ざめる旅人にウィンクしてみせ、最後の手段に出る。
「ふはは俺には最強の呪文があるんや!」
空高くに響くその言葉。
「行くで最強魔法! ラックスちゃぁぁん!何でもするから助けてぇぇえ!」
「あらぁ〜呼んだかしらぁ( ^o^)」
友真はメガ●テを唱えた。
☆彡 ★彡
焼け野原になった本陣を見て、祈羅と諏訪は微笑んでいた。
「…うん、予想はしてた」
「近寄らなくて正解だったのですよー…?」
奇襲の時点で色々諦めた二人は、自分たちが生き残る方を選んでいた。
これも勝利のためには仕方ない。そう、仕方ないのだ。(ちなみに黒百合はとっくに離脱済み)
祈羅はいい笑顔で言い切る。
「とりあえず副将のオチは楽しめたから問題無い♪」
西本陣、生存者二名。
●星になる人々
再び戻って、合戦場。
西本陣が消し炭になった頃、この混沌の中で出逢ってしまった二人がいた。
「リタ…」
「トラ…」
荒野で見つめ合うリタ(
jb6245)とカノエ・ムシュフシュ(
jb5433)。
砂煙舞う荒野の中、互いに姿を探し求めさまよっていた。
「敵…なんだな」
ようやく巡り会えた相手に、カノエが苦悩するように微かに視線を落とす。
「仕方ないだろーが…」
対するリタはどこか悟ったように笑んでみせ。
「オレ達は初めからこうなる運命だった」
わかってる、と一言つぶやきカノエは決心したように竹刀を構える。
「リタ。お前のことは大事で。今でも目を閉じれば――」
そう、駆けめぐるのは数々の愛しい思い出。
「俺は忘れないぜ、お前の女装とか女装とか女s」
「おいやめてそれはむしろ忘れて!」
カノエはひらりと飛行しリタへ襲いかかる!
「さーリタ楽しもうぜガチバトフハハハー!」
「くそっ…防ぎきってやるよ!『騎士の盾』の名は伊達じゃry」
\ちゅどーん/
「きゃー! 上から手榴弾とか危ないだろ! ポイしなさいポイ!」
飛行中のカノエ、リタに向かって手榴弾を投げまくる。
「俺の溢れる攻撃力を喰らえ−!」
「ってお前! オレが飛べないの知っててひでーだろ! あくまー!このあくまー!」
必死に手榴弾を竹刀で打ち返すリタ、それを見て笑うカノエ。
「天使も堕ちたな、空も飛べねぇなんてなー!」
「ちょ、うわ! 自分で打ち上げたのも落ちてきた! 仲間避けて!ゴメGYAAAAA」
\ちゅどーん/
この殺し愛(笑)どう見てもリタに勝ちが見えない――と誰もが思った時。
「ばーん! ギア、西軍大将なんだからなっ!」
現れたのは、大将たすきを掛けたギア。椿の魔の手から逃れ、戦場をさまよっていた。
彼はぽかんとしているカノエとリタへ向けて、きりっと決めポーズ。
「人界では影武者とか、黒幕って言うってギア聞いた」
「お、おう」
「つまりギア黒幕ってことで助太刀するんだからなっ。行くぞ、西軍大将参る!」
「やべぇ、何言ってるかわかんねー!!」
もはやどこからつっこんで良いかわからず、カノエのゲシュタルト崩壊。そこをギアが放ついいビームが襲う!
「くらえっ、蒸気ビーム!」
「いってえええええ」
あっという間の形勢逆転にリタ、大喜び。
「やーいやーい! オレをいじめた罪だっつのー!」
大変大人げない天使、どさくさに紛れて手榴弾を投げつける。
「ちょ、リタ二対一とか卑怯だろてめー!」
「知るか!戦争は無慈悲で残酷なんだよ!」
「ギア、大将だからって手加減しないんだからなっ」
「だからてめー大将じゃねーだrGYAAAAA」
盛大に爆破されたカノエ、このままじゃゲームオーバー。
「くっ……こうなったら…!」
最終手段、手榴弾を手に突撃!
「無理心中しようぜ、リィータァー☆フゥハハハー!」
「ちょ、トラ何持って こっちくn…うわああ大将()助けてー!」
「え、それはギア困r」
\ちゅどーん/
三人は☆になった。
●東本陣はガチ
既に半数が落ちていく中、東本陣に辿り着いていた一人の将がいた。
「どうやら辿り着いたみたいだね」
縮地で移動力を上げ、ひたすら合戦場を突破。
たった一人でここまで辿り付いた 神喰 茜(
ja0200)だった。彼女の目に、本陣奥に立つ雫の姿が目に映る。
「…ねえ、あなた副将だよね」
「ええ、いかにも」
くすりと微笑む雫に、茜は竹刀を構え微笑み返す。
「そう。じゃあ悪いけどここで死んでもらうよ!」
剣鬼が勢いよく地を蹴ったその時!
凄まじい爆音と共に走る閃光。
大量の連鎖爆撃が、入口もろとも茜を吹き飛ばした。
「あら、まだ生きてるのね」
煙幕が晴れる中響く、意外そうな声。雫の姿をしたナナシである。
「はっ…やるじゃない」
息も絶え絶えに茜は笑んでみせる。彼女が突撃しようとした瞬間、ナナシが設置していた手榴弾が一斉爆破したのだ。
持ち前の防御力で何とか生き残ったものの、耐えられるのは恐らくあとわずか。
「…まあ、いいよ。どのみち退路なんて考えてないし」
茜は立ちふさがるナナシを見据えると、竹刀を低く構え。
捨て身の突撃を開始する!
「死なばもろとも、覚悟しなっ!」
茜が放つ凄まじい猛撃。複数回繰り出されるそれは、ナナシの生命力を一気に削る。
「くっ…なんて威力なの…!」
しかしナナシもそう簡単にやられはしない。回避をしながら弓矢で応戦。それでも茜の勢いは凄まじく、やむを得ず後退。
死を覚悟した兵は何より強い。
「これで終わりだよ!」
大きく振りかぶった茜が渾身の一撃を放った時だった!
「させん!」
激しい衝突音と共に茜の竹刀が止まる。
受け止めたのは、シールドを展開した龍仁。
「良く耐えたな、ナナシ。ここは俺に任せて下がっていろ」
「でも」
「俺が落ちたら副将を護るのはお前しかいない」
そう言い切った龍仁の目には、茜と共に背後に映る黒い影を捉えていた。
「あはァ…待たせたかしらァ♪」
音も無く現れたもう一人の狂。
黒百合の登場だった。
「……もうこれは、隠れている場合ではありませんね」
現れた少女を見て、茜が微笑む。
「ついに現れたわね、副将!」
東軍副将の雫が、弓矢を手に立っている。
「このままお二人に戦いを任せて隠れているなんて、私にはできません」
きっと前方をにらみ据え、凜と宣言。
「東軍副将、雫。ただいまより参戦します!」
「じゃあ早速逝ってちょうだいねェ♪」
最初に動いたのは黒百合だった。最速の動きで龍仁の懐へと飛び込み、凄まじい威力の破軍砲を放つ!
「ぐうっ…!」
体内を貫通する衝撃に膝を付きそうになるが何とか耐え。
「まだだ…まだ俺は倒れん」
自身の回復など後回し。傷ついたナナシを癒しながら、龍仁は叫ぶ。
「例え此の身が朽ちようとも副将はやらせはせん!やらせはせんぞおお!!」
「いいねそう来なくっちゃ!」
続く茜の攻撃を龍仁はことごとくその身で受ける。
「このまま討ち取ってあげるよ!」
「させません!」
「雫! 危険だから下がっているんだ!」
「いやです!」
彼女は龍仁を庇うように弓を構える。
「皆を放っておくくらいなら、死んだほうがましです!」
直後放つ全力攻撃が茜に襲いかかる!
「くっ…どうやらここまでみたいだね」
雫の猛攻に茜がここで力尽きる。しかしまだ黒百合の強攻は止んでいない。
「じゃあ次はあなたよォ、ナナシちゃん♪」
「ふっ…あなたとやることになるとはね、黒百合さん」
にらみ合う忍軍。ちなみに二人は親友だったりもする。
互いに武器を構え距離を取り――
ほぼ同時に攻撃を放つ!
走る閃光、爆ぜ飛ぶ地表。
彼女達の決闘は誰も入り込めないほどで。
この時を待っていたかのようにその命を燃やし合う。
「本気で戦えてよかったわ、黒百合さん!」
「あはァ…私もよぉナナシちゃん♪」
二人はそのままほぼ同時に地に伏せる。
残ったのは――
「強羅さん大丈夫ですか…!」
駈け寄る雫に、龍仁はゆっくりと笑みを浮かべる。しかしもう、その力は残ってはなさそうだった。
「気にするな…俺はどのみちもう長くは無い」
唇を噛む雫の頭を撫で。
「俺は…お前を守れて満足だ」
そのまま力尽きた龍仁に雫は小さく「ありがとう」と呟く。
フラグ回収も大人のマナー。
東本陣、残ったのは副将雫ただ一人だった。
●最終決戦
各陣での決戦が終わった頃、合戦場でも最終決戦が行われようとしていた。
「あたしは西軍大将瀬波有火。君が本物の大将だね!」
有火が竹刀をすっと掲げ、不敵に笑む。対する誓も同じように竹刀を掲げ。
「ああ…今さら逃げも隠れもしねえ。俺が本物の東軍大将、御空 誓だ!」
互いににらみ合う両陣営。
西は突撃大将有火を中心に護衛のネイと椿が(色んな意味で)攻める。対する東はハムメイド大将誓を中心に護衛のルビィと夜刀彦が迎え撃つ。
攻めの西と、防の東。
勝利するのは一体どちらか。
「いざ、尋常に勝負!」
最初に動いたのは有火。竹刀を手に誓へと強襲!
「散っていったみんなのためにも、あたしは勝つ!」
繰り出される阿修羅の猛攻。対する誓も負けてない。
「俺だってそれは同じだ! 絶対に負けねえ!」
両軍の勢いは凄まじいものがあった。
ネイが氷を空からばらまけば夜刀彦が矢を放ち、ルビィが封砲を放てば椿がビームを乱射。
互いに持ちうる全ての技を出し切り、意地の打ち合い。
削り、削られ、命のやり取りをする様は、これがゲームであることを思わず忘れさせる。
鈍い衝突音と共に、椿とルビィが微笑み合う。
「うちは…可愛い子と死ねるなら本望や♪」
「ああ…俺もどうせなら、あんたのような女にやられるのも悪くねぇな」
直後同時に放つ渾身の一閃。ぶつかるオーラが鮮やかに燃え上がる。
「「いい、一撃だった」」
二人は折り重なるようにその場に伏す。
その隣では有火の攻撃を夜刀彦が受け、誓の攻撃をネイが受ける。
どちらが先に落ちてもおかしくない中、最初に膝を付いたのはネイ。
「くっ…どうやらここまでのようです」
有火が慌てて駈け寄る。
「ネイ君ごめん…無理させちゃった…」
涙を浮かべる有火に、ネイはそっと笑み。
「いいえ、それが臣と言うものですから。大将、最後までお守りできず…申し訳ありませんでした」
そのまま地に伏すと同時、夜刀彦も膝を付く。
「俺も…ここまでです、大将」
「東城!…苦労かけた…」
起こそうとする誓にかぶりを振り。
「いいえ、俺。御空さんの元で戦えてよかった…」
そして夜刀彦は最後の力を振り絞り。
蒼天へ向けて最期の手榴弾を撃ち放った。
「東軍に栄えあれ!」
●終幕
煙幕が晴れる中。
荒野の上空に、ファンファーレが鳴り響く。
『西本陣陥落により、東軍勝利!』
皆の激戦をモニタで見ていた三星民高は、感嘆のため息を漏らした。
最終結果は両軍大将は残ったものの、僅差で西軍本陣が先に陥落し東軍の勝利。
とは言え両軍の戦いは(色んな意味で)素晴らしいもので。
「いいものを見せてもらった」
余韻に浸りながらも、民高はふと。
「そう言えば、東兵糧庫ってどうなったんだっけ…」
誰も訪れていないはずの場所に画面を切り替えると、そこには主と共にのんびりとくつろぐディアドラの姿があった。
「ふふ…なるほど。あなたもここで高みの見物と言うわけですか」
「ええ、人生は舞台だもの。楽しんだほうが勝ちよ♪」
途中から抜け出し悠々と観戦モード。
ある意味で、彼女こそが本物の勝利者だったのかもしれない。