この記録は残しておくべきが、真剣に悩んだ。
――西橋旅人――
※注意:この報告書には、著しいメタ表現があります。
●砂浜はひどい
即座に散会した撃退士たちは、悪魔から逃れるために思い思いに逃走していた。
「……こ、これはこれで、とても怖いのですよぉ……」
混乱した様子で双眼鏡を握っているのは、月乃宮恋音(
jb1221)。
普段から戦闘自体を怖がっている彼女。今回戦闘は避けられたものの、危険性は去ったどころかむしろ増したとも言える。
前髪で顔を隠してはいるものの、その可憐な外見はヤツらに見つかったら間違いなくやばい。
とりあえず全力ダッシュで砂浜から離れた彼女は、ダイバーショップ内に避難。
店内からそっと、外の様子をうかがっていた。
「これは……ひどいですぅ……」
双眼鏡を通して見える、壮絶なる光景。
色んな意味でひどい。アレな意味でひどい。
砂浜では貞操を賭けた、死闘が始まろうとしていた。
「何というデラックス……なのなー」
目の前に現れた悪魔に、大狗のとう(
ja3056)は顔を引きつらせていた。
薄い布越しにわかる、豊満な身体。直視できないその感じ。
「な…ないすばでぃ……!」
ラックスを見て、サムズアップ。現実逃避に余念がない真野 縁(
ja3294)の隣で、青ざめているのは犬乃さんぽ(
ja1272)。
「あのおじ……」
カッ!
「おおおお姉さん怖い……」
危なかった、最後まで言っていたら重体どころじゃない。危うく勇者になるところであった。
「と、とにかくニンジャの力でラックスから逃げるよ!」
(一応)男の子の彼、のとうと縁の手を取り、勢いよく駆け出す!
ずさー
「わわ、真野ちゃんだいじょry」
べしゃー
「ぶはwwお約束www」
ぬこが近付く中、のとうは慌てて転んだ二人を助け起こし。
「おい、大丈夫か!?」
「のと…お花畑が見えるね……」
「くっ…やばいな。縁の精神防御値が、ゼロになりかけてる」
かくかくする縁を担いだのとうは宣言。
「さんぽ、とりあえず森に逃げるぞ!」
三人は何とか砂浜から離脱した。
●とりあえずひどい
「ぬこwええキャラしとんなwwあ、口調移った」
煌めく砂浜のど真ん中。いい笑顔で草を生やすのは、亀山淳紅(
ja2261)。
キャラデータを思わず二度見。まさかの称号『芸人』出発、もはや出オチってレベルじゃねえ!
そんな芸人の横で憤慨しているのは、恋人のRehni Nam(
ja5283)。
「ちょっ、ジュンちゃん以外の男に抱きつかれるとか冗談じゃないのですよ?!」
そりゃそうだよね、乙女だもん。嫌に決まってる、気持ちわかるよ!
>☆コメディ担当☆(プレより)
……(^ω^)
と言うわけで、当たり前のようにラックス達登場。波打ち際の追いかけっこ開始!
「あらぁ、かわいい子猫ちゃんたちねえ。こちらにいらっしゃ〜い♪」
「あはは、捕まえてごら〜ん!」
「うふふ、ほらこっちよー」
「おいwwこいつら頭まじやべぇwww」
ぬこが実は一番正常、わたし知ってた。
きゃっきゃうふふの鬼ごっこ。しかし和やかな時間など悪魔シナリオにおいて存在するはずもなく、ラックス余裕で本気出す。
「行くわよぉ〜!==( ^o^)」
「きゃあああ!」
襲われそうなレフニーを淳紅がさっそうと庇う!
「レフニーちゃんへの抱擁は許さん!!自分の彼女やから自分だけがしてもええんや!!(カッ」
淳紅男らしく、悪魔と対峙。放たれるはきらきらオーラ!
ふ、と流し目。
「代わりに、自分が代わりに愛を受け止めよう……おいで、子猫ちゃん……」
「よく言った、惚れた(カッ」
「えっうわマジで来たwwうわああwww」
ラックスの抱擁をあっさり受け、淳紅その場でスタン状態。それでも草を生やし続ける姿は、まさに芸人の極み。
だがしかし、貞操は絶体絶命のピンチだ!
「ちょっと貴方、何してるのです…?」
突然包丁を手にしたレフニーが、ラックスの前に立ちはだかる。
「あれ、何かレフニーちゃん顔が怖いで……?」
どう見ても真顔の彼女。淳紅の言葉などもはや耳に入っていない。
「ジュンちゃんは私のもの。貴方なんかにひとかけらだって、分けてあげないのですよ!」
「ぶはwwwヤンデレ乙www」
ぬこのもっふるな毛玉により、攻撃はラックスへと届かない。
「そんな…」
がっくりとうなだれた後。包丁を手にしたまま、ふらふらと淳紅の側に行き。
「大丈夫、ジュンちゃんは…(吐息)…レフニーが守ってあげる……」
「え、あれ? レフニーちゃん、なんか目のハイライト消えとるで…?」
迫る包丁、虚ろな瞳。
「ジュンちゃん…すぐに楽に……」
「なんか別の意味でやばいwww草生やしとる場合やないwwwヘルプミーwww」
神 の 采 配
突然ラックスの頭上から振ってきた、紙。それを見た彼女は叫ぶ。
「あらやだ、今日って火曜日だったの? デビルスーパー五パーセントオフの日じゃない、行かなくちゃ!」
「ちょwww今日は月曜ですしおすしww」
そのままいなくなる二人。マジックと画用紙を手にした旅人が、青ざめた様子でその場を去った。
※
「大体において酷いな……」
砂浜の様子をうかがっていたグラルス・ガリアクルーズ(
ja0505)は、そっと目を逸らす。
散会後、とにかく身を隠すべく岩場へとやってきたのだが。
「いつまで見つからずにいられるかだな…」
どうやらあの猫っぽいヴァニタス、嗅覚が鋭いらしい。人間が隠れている場所を、簡単に見つけ出している。
「…うん? あれは……」
グラルスがそう呟いたとき、砂浜に悲鳴が響き渡る。
「ひ、ひぃっ!?」
戻ってきたラックスを前に、硬直している人物。
あどけなさの残る外見が初々しい、暮居 徨(
ja8097)だ。
「あらァ〜ウブな子ねぇ♪たまらないわァ〜( ^o^)」
純情少年にあの見た目はきつかった。衝撃が大きすぎた。
逃げなきゃヤられる。それなのに足が動かない!
「ち、ちかよらないでくださいっ!」
半泣きでぷるぷるする。そうだ、こんないたいけな子を、酷い目にあわせる訳にはいかない。
さあ君遠慮はいらない。声高に叫ぶんだあの合い言葉を!
>スタン状態歓迎
(;゜Д゜)ヤリヤガッタコイツ…
「ひゃああああっ!」
熱い肉圧的抱擁により、あっさりスタン状態。
もはや彼の貞操は絶望的。いいのか、本当に後悔しないのか。
周囲が騒然となる中、だがしかしここで救世主が現れた!
「くらえっ」
颯爽と現れたのはグラルス。ラックスへ向けて勢いよく海水を巻き上げる!
「いやぁん…しまったわァ!」
その隙に徨を抱え、砂浜を全力疾走。早々に離脱完了させる。
「あ…ありがとうございます…!」
礼を言う彼にグラルスは微笑を浮かべて、一言。
「さすがに中学生は、色々とまずいからね(MS生命的に)」
空気読んでくれてありがとう…!
そんな旅人の声が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
●勇者ひどい
「あ…あれ、ここ…砂浜?」
目の前に広がる光景に、さんぽは愕然となっていた。
自分たちは確かに森を目指していたはずなのに。縁を背負ったのとうも青ざめ。
「しまった。無我夢中で走っていたら、砂浜に戻ってしまったのにゃ!」
「ああ…白い砂浜、はじけるぼでぃ……海が、青いんだね…」
「しっかりしろ、縁! 遠い目をするんじゃない!」
縁を下ろして励ますのとう。
そこへお約束(訂正線)運悪く現れるラックスとぬこ!
「見つけたわァ〜♪」
「うわー!これを喰らえっ!」
のとうはソニックブームを放つも、ぬこの毛玉に吸収されてしまう。
「くっ…だめか…!」
ここはさんぽと縁だけでも逃がしたい。二人にむかってのとうは叫ぶ!
「二人とも、俺を置いて先に逃げるのにゃー!」
しかし縁は足が遅かった。
「ちょwwテラ鈍足www」
逃がす間もなくあっさり追いつかれ、絶体絶命。
先に走り出していたさんぽは慌てて振り向く。
「あれ、二人がいない? ってあわわわわ!!」
のとうと縁を挟み撃ちするように、悪魔たちが迫る。
「ううっ…こうなったら、最終奥義だよ!!」
さんぽは決心すると、空へ向かってあの言葉を叫んだ!
髪 の 栽 培
(゜д゜)
旅人がずさーと転ぶ近くで、さんぽは泣きそうに辺りを見渡す。
「……あれ? 何も起こらないよ? わわわ、間違えた【神の采配】!」
だがしかし、この呪文は唱えた本人にしか効果がない。
目を覆いたくなる過酷な現実が、彼らの目前に迫っていた!
「あっ…!や、やだっ。来るなぁ……!」
縁を抱き締め、後ずさるのとう。
「うふふ、追い詰めたわよォ」
近くで見るともっとやばいラックスを見て、縁はぷるぷるしながら笑顔で首を傾げ。
「や…やさしくしてね?…なんだよー…」
「さぁ、かわいい子猫ちゃんたち。私の胸に飛び込んできなさァい♪」
迫る肉圧、はじけるボディ。
二人は覚悟した。
我こそは、この地に降り立ちし勇者。
全ての崇高なる願いを込めて、犠牲となry
\ッアー!/
※蔵倫により削除※
※蔵倫により削除※
これが後に語り継がれる、伝説の勇者たちの物語である。
●住宅地もひどい
「……こいつはヤベぇ。( ゜д゜ )」
砂浜の惨状報告を受けながら、並木坂・マオ(
ja0317)は呟いた。
――ハッ。思わずストリート訛りが出ちゃった。
とにかく逃げないとヤべぇ。
訛りなんて気にしてる場合じゃねぇ。
「全力で逃げるよ、猫まっしぐらー!」
この人数で戦えるかとかそう言うレベルじゃなく、「アレ」に近づくのは断じて避けたい。
「ええ……何が何でも、捕まるわけにはいけません」
同じく顔面蒼白で逃げるのは、御堂・玲獅(
ja0388)。
思いっきりクラウンが来ると信じていた。
まさかの展開に動揺を隠せない。と言うか何故自分がここにいるのか、各方面に問いかけたい。
「と…とりあえず。皆さんによる現在地報告を手がかりに、全力で逃げ切りましょう」
そんな彼女達を守るように並走するのが、イケメン腐男子神父エルディン(
jb2504)@10年前に堕天。
「私の貞操は神に捧げるのです。悪魔にヤられるわけにはいきません!」
もの凄い属性持ちな気がするが、彼ノーマルなんですって奥さん!
「神よ、私を守りたまえ。主に精神面と貞操部分を…!」
だがしかし彼、大体のネタOKが出ているひどさ。
「なんというか……酷いな」
各地で繰り広げられる悲惨な光景に、生暖かい笑みを浮かべるのは宇田川千鶴(
ja1613)。その横で、石田神楽(
ja4485)もいつも通りの微笑で頷き。
「ええ…酷いですね、色んな意味で……」
彼らの目前では、月居愁也(
ja6837)が虚ろな笑顔で手を振っている。
「きゃーラックスちゃーん(棒」
「マッド…あの道化悪魔の親戚か兄弟か?」
まがお()で呟く夜来野遥久(
ja6843)に、即座にツッコミを入れる小野友真(
ja6901)。
「いやあれで兄弟やったら神秘の存在過ぎるし!」
同じく加倉一臣(
ja5823)が、あり得ないと言った様子で頷き。
「ミスターと奴を一緒にしないでもらおうか」
やたら真剣な表情で、力強く宣言する。
「ミスターはもっと小さくて背負えるサイズで袖ふりふりでだな…あんなでかいシロモノじゃねんだよ!(カッ」
「とりあえず、さっさと逃げるぞ」
「おい聞いてください」
一臣の熱弁を完全無視した遙久の呼びかけで、逃走開始。
「何て言うか…沢山の子の期待を裏切った、って事にも苛つくけど」
皆と走りながらおもむろに呟くのは、肉食女子(♂)光藤姫乃(
ja5394)。
「それより何より、あの、ボディが! ムカつくわ!」
真顔で憤慨。同類(?)として、美を極めない姿が彼女(※誤植ではない)にとって許せないのだ。
「おおう、姫ちゃん怒り心頭やな…?」
友真の問いかけに姫乃は微笑み。
「大丈夫よ。もし誰かが捕まっちゃったら、うちのイケメンにブヨブヨの手で触ってんじゃねぇぞこの豚○○!!てめぇは大人しく食物繊維タンパク質炭水化物の順番で飯でも食って出直してこいやこの●●●!!って殴りに行っちゃうかもしれないけど、それだけよふふ」
目が全く笑っていない姫乃に友真が震えた時。
「くっ…見つかったか」
遙久の呟きと共に、奴らは現れた。
●言うまでもなくひどい
「あらァ、いい男ねえ♪」
遙久を見たラックス、嬉しそうな声を上げる。
「貴方とは一度手合わせお願いしたいわァ」
この人数で事を荒げたくはない。
遙久はわざと落ち着いた素振りで、悪魔と向き合い。
「ええ、悪くない提案ですが…今は任務の途中ですので」
放たれるは、(背景が黒い)無敵の紳士スマイル。
「もう一度お会いした、その時にでも」
「あらふふ、焦らすのね…いいわ、燃えるじゃない」
意外と紳士に弱いラックス、あっさりと手を引く。しかしそこへ飛び出すのは、怒り狂った阿修羅の姿!
「俺 の 遥 久 に手ぇ出してんじゃねえぞゴラァ!」
「ねーよwwwもう話終わってるしwww」
まるで躊躇することなく、華麗にラックスへと突撃していく。
「おい遙久、止めてくれてもいいのよ!?」
つっこむ一臣と友真を無視し、遙久は一言。
「そこは固有名詞でなく『親友』にしておけ、愁也」
「待って、『俺の』にはつっこまないのね?」
「姫ちゃんそう言う問題ちゃう!はよ愁也さん助けんと!」
「まあ…あれが本望なんやろうし……」
「ちーちゃんある意味正論やな!?」
「(にこにこにこにこ)」
「何か言うてください神楽さん!(ぶわっ」
まるでツッコミが追いつかない中、当然のごとくラックスの熱い抱擁を受ける愁也。
「遙久の貞操は俺が守rあるぇえええええ」
何だかんだで絶体絶命(※仕様です)。
「愁也君危ない!」
自主的に現れた旅人が、迫るラックスの口にメントスコーラを投げ込む!
「ちょwwナイスピッチングwwww」
口元を抑えて走り出すラックスとそれを追うぬこ。スタン状態の愁也を遙久が背負い離脱。何だかんだでちゃんと助ける親友愛(※仕様です)。
「遙…久……」
「なんだ?」
瀕死の愁也、親友の背で途切れ途切れに言葉を紡ぐ
「俺…ラックスちゃんと…メル友になりたい」
だめだこの阿修羅、頭打ったに違いない。
遙久容赦なく、愁也を背負い投げ。
多分二十メートルは飛んだと思う(旅人談)。
※
「ただ逃げ回るだけよりも、さらわれた島民の居場所くらいは見つけておきたいですね…」
その頃、住宅街を逃げ回っていたエルディン達は、学校近くにやってきていた。
「ええ…私の生命探知に反応が無いか、試してみます」
玲獅もマオと共にさらわれた人間達の捜索を行っていた。
だがしかし、そんな空気読まずに現れるのが奴ら。
「お約束よォ〜♪」
でらっくすな効果音と共に、その巨体が脈絡無く登☆場!
「くっ…お二人は先に逃げてください!」
心優しき神父、女性を逃がすのは当たり前。
エルディンがラックスを足止めする隙に、マオと玲獅は逃走開始。
「逃げるよ…ってうわっ!?」
「いけません、追いつかれました!」
「うはwww俺テラ俊足www」
意外と素早いぬこ、あっさりと二人を追い詰める。
「うう……こうなったら…!」
マオは勇気を振り絞り、突然振り返る。
「ね、ねえ! きみ悪魔にアゴで使われてて不満たまってたりしない?」
「えwwなんなの急にwww」
「あたしたちの仲間になりなよ。うちはブラックじゃないし、ボーナスもあるよ!」
こんな顔 ミ* ゜Д゜ミ をしているぬこに対し。
マオはあるものを突き付け勢いよく叫ぶ!
「月々の報酬は、なんとこの絶品ネコ缶!」
「すまんwww俺の好物スイカwwww」
勧 誘 失 敗
「あなたはよく頑張りました…!」
玲獅に慰められながら、マオは悲痛な声で願う。
「ひいいい色んなところを無事なままで、生きて帰らせて!」
マオ達が捕まる寸前、間にすべりこんできたのはイケメン神父。
「ここは私が何とかします!」
二人を逃がし、気合い一発アレに立ち向かう!
「さあ、かかってきなさい!」
=====┌(┌ ^o^)┐むっはー
「すみません、やっぱり無理です!(号泣)」
迫るホモォ、風前の貞操。
ここで出るのか【神の采配】!
>貞操は記録係さんの采配にお任せ!
┐(´ー`)┌
「GYAAAAAAAA」
悲壮なる叫びが、蒼穹に響き渡った。
「う……お婿に行けないです」
ああ、諸君。お任せした結果は実に痛ましい。
ラックスの※検閲により削除※により、エルディンの※削除※は※削除※なことに。
さらに※削除※された彼は、あえなく※削除※で※削除※なことになってしまった…!
「さ…さすがの腐男子の私でも」
顔を覆い、神に向かって叫ぶ。
「自身を薄い本のネタにする気力にはなれません!(ぶわっ」
「エルディン神父…あなたの勇気は忘れません」
玲獅が涙をぬぐいながら、祈りをささげ。マオも青ざめながら敬礼をする。
「なんていうか…うん。これはひどい」
ここにも一人、崇高なる殉教者が誕生した。
●ひどいしか言葉が出ない
「くっ…ついに見つかっちまったな…」
向き合いたくない現実に、一臣は悲壮な表情を浮かべていた。
「あらァ〜やっぱりここはイケメンが勢揃いねェ♪」
再び現れたラックス。先程は遙久のおかげで何とか乗り切ったものの、これ以上はごまかし切れそうもない。
状況を見た神楽が、落ち着いた声音で呟く。
「まあ、ここで殺りあうのも悪くは無いんですが…」
「神楽君、そんなことを言ってる場合じゃない。今すぐ逃げないと大変なこt」
「おや、生暖かな盾がここに♪」
「え」
間違いなくこっち見てるね…?
まるで磯野野球しようぜ的な気軽さに、一臣は肩をすくめ。
「ふ…神楽君、心外だな」
にこにこにこ
「依頼でケツを撫でられた経験がある俺が怯むとでも…」
にこにこにこにこ
「ゴメンやっぱ限界あったね!待った神楽くん盾なら遥久にやらせr」
黒い笑顔で投射toラックス!
「スーパーリッチいいいいいい!」
さすがは凄まじい命中力。
まったくこれっぽっちも一ミリたりとも容赦されることなく、正確な位置(=ラックスの胸)へと撃ち込まれる!
「いらっしゃ〜い( ^o^)」
こうなるって(全員)知ってた……!
「ええ、これぞ鰹節の采配」
やり切った表情の神楽、凄惨な現場を隠すために発煙筒噴射。
よい子に見せてはいけません。
疑似モザイクの中から、悲壮な声が響いてくる。
「ヤダー! 今日は勝負パンツじゃないのにィ……」
普通に通りがかった旅人が、涙を流しながら呟く。
「オミー君……君の遺言はちゃんと…」
「すみません、これ遺言じゃないです」
「記録しておくから、何も心配は…」
「やめて下さい遺言じゃないです。記録とかまじでやめて下さGYAAAAA!!!」
悲鳴と共に響き渡るのは、恐ろしいほどの銃声の嵐。
ラ●ボーのごとく炎の鬼神と化した友真がそこに立っていた。
「相手が何やろうとつい、な」
浮かべるは氷の微笑。恋人に抱きつくとかまじ許せん。
その恋人を余裕で巻き込んだ気がしないでもないが、些細なことである。
「さすがはかずおみどうみてもふるぼっこですね」
敬礼する愁也の隣で、遙久も至極冷静に。
「業界随一は伊達じゃないと言うことだ」
とは言え、危険は未だ去っていない。
次に狙われたのは千鶴と姫乃の女子二人(※誤植ではない)。
「うわっ挟まれたわ…!」
「きゃーこわーい(棒」
ラックスとぬこが迫る中、何故か始まるBGM!
じゃーんじゃじゃーん
「女の子守ってこそのヒーロー!(きり」
SE付でローリング割り込みをしたのは、友真。
ラックスを前にし、勢いよく宣言する!
「ふっ…この程度、ヤンキーやった昔を思い出せb」
「わかった、ヒーローに全て任せるわ」
「え? ちょっと待ってごめんやっぱ無理怖いはよ逃げてぇぇ!?」
セ ル フ 神 の 采 配
千鶴は即座に友真の首根っこを掴み、ラックスへ向けて躊躇無く投擲。
「らめえええええええ」
「犠牲は忘れん、多分恐らく」
そっと目を逸らす優しさ装備(コスト0)、千鶴は軽やかに逃走。
「ゆ…友真は俺が助けごめんやっぱ無理らめえええええ」
「友真ちゃん、オミちゃん!ちょっ…あたしの大事なイケメン達に手ぇ出してんじゃねぇぞ!!やんでもちょっと混ざりたいかも!」
「あ、もう一度モザイク作っておきますね(にこにこ)」
「おいまともな奴ここにおらんのかwwww」
※しばらくお待ち下さい※
煙幕が晴れた頃、転がりたるは死屍累々。
目を覆う惨状に、千鶴はぽつり一言。
「…自分で回避できた気するな」
終わったことは気にしない。
●森も当然ひどい
「さあ、最後の狩り場はここよォ〜♪」
「俺もう帰りたいんですけどwwww」
森に現れたラックス達を見て、レイル=ティアリー(
ja9968)は眉をひそめた。
「ついに魔の手は、ここにまで及んだようですね…」
ディバインナイトの彼、普段なら喜んで盾役を引き受けるところなのだが。
改めて奴らを見て、一言。
「アレは無理ですお断りします(断言)」
デスヨネー
「危険だからと言って逃げるだけでは、ここへ来た意味がありませんが……」
久遠冴弥(
jb0754)がため息をつく横で、番場論子(
jb2861)も頷く。
「アレとは戦えません。いろんな意味で」
「ええ。準備不足過ぎますね、いろんな意味で」
結論:いろんな意味でアレとは戦うのは無理。
全員完璧なお察しぶりで、逃走開始。
そんな中、恐ろしく無防備さを晒している人物がいる。
「なんだか…状況がよく飲み込めないうちに、始まってしまったみたいですね」
周囲をのんびりと見渡しているのは、藤宮睦月(
ja0035)。
とりあえず皆について森にきたものの、何が起こっているのかよくわかっていない。
「あのぬこさんと言う方…ぜひ撫でてみたいです。捜してみましょうか」
隣の忌まわしい存在のことは忘れ、まさかのもふもふを求めて彷徨う。何というハイレベルマイペースひどい。
そんな睦月を、影から観察している存在。
「古来より、鬼ごっこは相手の後ろをつける方が見つかりにくいのよ!」
あろうことか、スキルを駆使しラックスを尾行していたアリス・シンデレラ(
jb1128)だ。
「…次は何が起こるのかしら(じー)」
皆の不幸を興味津々で観察するGEDOUぶりひどい。今後の成長がたのしみである。
そしてアリスが見守る中、ついに彼女達は出逢ってしまう。
「あらァ、かわいいコ見つけたわよォ〜♪」
ラックスが嬌声を上げる中、睦月の視線はぬこだけに釘付け。スルースキルぱねぇ。
「ああ、ぬこさん…!」
それはまるで、恋する乙女のように。
「会いたかった、捜しましたよ」
潤んだ瞳の彼女、いきなりぬこに向かって駆け出す!
「えwwwなにこの展開超照れるんですけど////」
絶 体 絶 命
しかしここで、予想外の展開発生。
「仕方ないわねェ。そのコはぬこにあげるわァ」
「えwwどういうことww」
なんとラックス。まさかの器の広さを見せつける。
「そもそもあたし、独り占めするするつもりは無いのよォ♪」
「ちょww無理無理無理www正直困るからwww
…だってどう接していいかわからないし…//」
だめだこいつら早くなんとかしないと。
見かねたアリス、ぬこをもふり続ける睦月を捕まえ後方に投げ飛ばす。
「さすがにケモノはやばいわよ!」
何だかんだで、いい人ツンデレ。でも今度は君が危険だ!
「ふっふっふ。わたくしには秘策があるのよ」
ばばーんとラックスの前に仁王立ち!
「アリスは参加者中最年少の10歳! いたいけな10歳のか弱い女の子に何かする描写を書こう物なら、発禁になるのは必至!」
きっと外側を睨み付け。
「MS生命を失ってもいいのなら、アリスを好きにすると良いわっ!(ばーん」
「ちょwww何という最強奥義わろたwww」
_|\○_ <申し訳ございませんでした
この瞬間、あの力が働き悪魔は強制退去。
彼女達の貞操は、問答無用で守られたのだった。
●そろそろ気付いた全部ひどい
「あらァ…ここはどこかしら?」
強制移動させられたラックスは、辺りを見渡す。
目に入ったのは、純白の衣服に身を包んだ少女。
「やあ、綺麗な方……僕と楽しい会話でもどうだい?」
中性的な容姿が印象的なカエリー(
jb4315)だ。
「あらやだ…くどかれちゃったわァ//」
頬を染め、恥ずかしがるおっさん(訂正線)悪魔。そんなラックスに彼女は微笑んでみせ。
「君は全てを愛すると言ったね…僕と通じるものがあるよ」
「あら…あなたもそうなの?」
優美に頷く。
「全てを愛するのが、僕だ。愛とは能動的なものだからね」
「ふふ…わかってるじゃない。あなたとは良い関係が築けそうよ…」
「…奇跡的に会話が成り立ってますね」
樹上から二人を観察していた論子が、ごくりと息を呑む。
「ええ。素晴らしいコミュニケーション力です」
同じく樹上に避難していたレイルも頷き。
「そもそもアレと会話しようとする時点で、賞賛に値しますから」
全く否定できねえ。
冴弥が注意深く辺りを見ながら、呟く。
「とにかく、今の内に逃げま…ひいっ!?」
「あwww見つけたったwww」
さぼろうと樹上にやってきたぬこと運悪く遭遇。
珍しく焦った冴弥、高速召喚で竜を呼び出す!
「天羽々斬、頑張って」
「ちょww人身御供ですねわかりますwww」
「ヴォーーー(ひどくね!?)」
尊い犠牲と引き替えに、三人は速攻離脱。
全速力で、森の中を駆け抜ける。
「ところで…抱擁の前にデートにでも行かないかい? 一緒に釣りをするのも、ロマンがある」
カエリーの提案に、ラックスはくすりと笑み。
「随分と急かすのねェ…ふふ。そう言う激しさ、嫌いじゃないわ」
そして流し目(のようなもの)をしてみせると、甘ったるい(と本人は思っている)声を出す。
「でもね、あたしはそんなに安い女じゃないの。あなたが追うなら、逃げてみせる」
そろそろ書いていて殴りたい気分だが、カエリーは残念そうに肩をすくめ。
「つれないお人だ…けれど諦めないよ。僕の愛はいつだって、能動的だからね」
「ふふ…いいわ、あたしを捕まえてみせるのね。せっかちな子猫ちゃん」
ウィンクをして去るラックス。とりあえずたわしを全力で投げつけても許されるレベルだが、見送るカエリーはそっと微笑んだ。
「なかなか、かわいい人だ」
これが後の、新世界の神である。
●君が優勝ひどい
さて、お気づきの方もいるかもしれないが、ここまで出てきていない者が一人だけいる。
その人物こそが今回のMVPにして、これはひどいの優勝者。
あまたの勇者達の頂点に立つ姿を、その目でしっかりと焼き付けてほしい。
森林の中を逃げ回っていたレイル、論子、冴弥は、異様な光景を前に思わず立ち止まっていた。
「僕は木、僕は木……」
ぶつぶつと呟きながら、木々の合間で震えている。
佐藤としお(
ja2489)の姿がそこにあった。
「あれは…声をかけてもいいんでしょうか」
論子の言葉に、レイルはかぶりを振り。
「いや…そっとしてあげるべきでしょう」
としおの身体は震え続けている。
なぜなら、今は冬。問答無用の寒さが、島内に満ちているからだ。
冴弥は真剣な表情でとしおを見つめ。
そしてそっと目を逸らす。
直視できない、仕方ない。
だって彼、
ふ ん ど し 一 丁 なんだもの…!(号泣)
「やぁ〜ん、目のやり場に困るわぁ( ^o^)」
「これはwwwひどいwww」
想像してみてほしい。
あのホモォを前に褌とか、漢らしいにも程がある。半裸どころかもう色んな所出過ぎ。
その状態で全身ペイント。枝木を持って偽装という凄まじい選択。
なんていうかもうとにかく、どうしてそれを選んだのか小一時間問い詰めたいほどひどい。ひどすぎて直視できないひどい。
「あれ? なんか…バレてる?」
不安そうにきょろきょろするとしおを見て、レイルは躊躇無く。
「とりあえず、彼には心おきなく犠牲になってもらいましょう」
追いついたラックス達に、タウント発動。付与対象は言うまでもなくとしお一択ひどい。
「ちょwwwこの状態で注目とかレベル高すぎんだろwww」
(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)(゜д゜)
「な、なんでバレたんだぁぁぁ!!」
皆の熱い視線を受け、としお愕然。と言うか、本気でバレないと思っていた所がまたひどい。
「佐藤さん素晴らしい囮でした」
「あなたの勇姿は忘れません」
論子と冴弥が颯爽と逃げる中、レイルはとしおに微笑みかけ。
「大丈夫です、骨は拾ってあげますから」
としお容赦なく置き去り。
「誰かぁぁぁぁ助けてぇ〜〜!!」
悲壮な叫びと共に、余裕のスタン状態。これはどう見ても貞操オワタ。
誰もがそう覚悟した時。
奇跡の救いが鳴り響いた。
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「船が…来ましたぁ……」
灯台に移動していた恋音は、助けの船がやってきたのを発見していた。
すぐさま全員の連絡先に、メール。
恋音の迅速な行動により、としおは何とか貞操死守に成功したのだった。
「見つからなくて…よかったのですよぉ……」
安堵のため息。
ちなみに彼女、25人中唯一アレに見つからずに済んだ猛者でもある。
帰りの船の中は、異様な空気に満ちていた。
慰める者、慰められる者。
疲れ切っている者、笑顔のままの者。
メモリーカードを破壊される者、ほんとに悪魔のメアド聞き出した者。
しかしあれだけ酷い目に遭いながらも、さすがは撃退士と言うべきか。
過酷な状況の中、執念の捜索によりさらわれた人たちの居場所を突き止めてもいたのである。
結果的に後の任務で全員助け出されたところを見ると、彼らの犠牲は決して無駄ではなかったのだ。
決して。
いや、多分。
……だって、そう思わないとやってられないからね!(ぶわっ
潮騒が響く中。
旅人は甲板で一人、水平線へと視線を馳せていた。
太平洋はどこまでも広く、眩しいほどに水面は煌めいている。
彼はこの島で起こった全てを思い出し。
万感の思いでただ一言、呟いた。
「ひどい」