.


マスター:久生夕貴
シナリオ形態:イベント
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:25人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/02/12


みんなの思い出



オープニング

●宵闇の彼方

「……これは、少々想定外でしたね」

 そのあどけない唇を、ゆっくりと綻ばせ。悪魔マッド・ザ・クラウン(jz0145)は、感心したように目を細める。
 帰ってきたばかりの冥界は、相変わらず仄暗く。

 どうしてこんなにも。
 人の子は自分を愉しませるのか――

「帰ってきていたのか、クラウン」
 呼びかけられた声に、道化の悪魔は首だけをわずかに振り向かせ返事をする。
「おや何か用ですか、ジャム」
「全く…この忙しいのに、どこをほっつき歩いていた。まあお前のことだから、また人間界にでも行っていたのだろうが」
 半ば呆れた口調のレディ・ジャムに対し、くすりと微笑み。
「ええ、少し気になることがありましてね。ちょうど貴女にお話ししようと思っていたのですよ」
「お前は本当に人間が好きだな。そろそろストーカーと呼ばれてもおかしくないと思うが」
 彼女の嫌みに反応することもなく、道化の悪魔はすまし顔で口を開く。
「太珀、と言う名に覚えはありませんか」
 それを聞いたジャムの顔が、ぴくりと反応を示す。
「聞いたことある名だな…確か、もう随分前に人間界へ下った奴のことだろう。それなりの地位に居た者のはずだが」
「ええ。貴女は知らないかもしれませんが、彼は今久遠ヶ原学園で教師をしているのです。この意味が、わかりますか」
 ジャムのアイスブルーの瞳が、クラウンを捕らえ。
「……もったいぶるな。何が言いたい」
 忌々しそうに長い金髪をかき上げるジャムに対し、道化の悪魔は何でもないように。

「人の子達が、勘付き始めたようですよ」

「……何?」
 一瞬何を言われたのかわからない、と言った様子でジャムは聞きかえす。
「人間が、だと? 冗談を言うな、クラウン」
「私がそんな冗談を言うと思いますか」
 つまらなそうに返す道化を、彼女は睨みながら黙り込む。
「まあ、まだ核心に至っているわけでは無いようですが。あの元同胞が人間に入れ知恵をしていても、おかしくはないでしょう」
「…根拠はあるのか」
「各地で人の子達の動きが、慌ただしくなってきていますからね」
 ジャムを覆うオーラに苛立ちの色が宿るのを、クラウンはどこか楽しそうに眺めていた。
 彼女は有能でかつ慎重な性格だ。例え人間のことを侮りながらも、警戒していなかったわけではない。

 自分たちの予測を、人が遙かに上回っただけのこと。

「――近いうちに」
 クラウンは静かな、しかし確信のこもった声音で告げる。
「彼らは必ず動き始めるでしょう」
 それを聞いたジャムは、低くつぶやく。 
「だが今さら計画を変更することはできん。お前もわかっているだろう」
 何も返さない道化の悪魔に対し、彼女はその赤い唇を引き結び。
「まさか天界側より先にとは思わなかったがな…いいだろう、この程度の障害を乗り越えられぬのなら、私とてたかが知れている」
 凛然と、微笑んで。
「予定に変更はない。邪魔が入れば、排除するだけだ」

●惰性との会話

「……で、俺に何の用だ」
 うんざりした様子でクラウンを見やる、ロングコート姿の男。横たえた身体を動かそうともせず、その深い緋色の瞳だけを向けている。
 悪魔ヴァンデュラム・シルバ(jz0168)を前に、いつも通りの微笑を称えたまま。
「ええ、貴方と少し話をしようと思いましてね」
「……ったく、いい加減にしてくれ。俺はここ最近、お前らの遊びに付き合ったせいで疲れてんだ。その上くだらないおしゃべりに、付き合わせるな」
「ふふ…そろそろ、『計画』が動き出すようですよ」
「お前…人の話を聞け。そもそも俺には関係ねえよ」
「そうでしょうか? 計画が始まれば貴方とてここで寝てばかりはいられないと思いますが」
 それを聞いたシルバは一旦黙り込み。気怠そうに身体を起こすと道化の悪魔を睨む。
「…どういう意味だ」
「そのままの意味ですよ」
 クラウンは手の倍以上の長さがある袖を、一振りし。
「今この四国には多くの同僚が集まってきていますからね。先日ミーシュラ家の者が四国入りしたのは聞いていますか」
「……あの入り婿だろ。面倒げも無くわざわざこんな所まで来るなんざ、よほど成り上がりてえんだろうよ。俺には全く理解できねえがな」
「ええ。貴方とはまるで正反対でしょうからね」
「つまり俺には関係ねえってことだろ」
 そう言って再び寝始めようとするシルバに向かって、クラウンは愉快そうに告げる。
「貴方より立場が上の悪魔が、動き始めているのですよ。ジャムがこのまま放っておいてくれると思いますか?」
 ぐ、と言った表情で固まるシルバ。
 敢えて昇進を蹴ったのは、面倒事を押しつけられたくない為ではあったものの。
「強者が爵位を得ないと言うことは、それなりの代償もあるということですからね」
「…それはお前も同じだろう」
 強さで言えばクラウンも無爵位で居る立場ではない。昇進を蹴っているのはこの道化とて同じ事。
「ふふ…私が爵位を得ないのは、自由に動くためですからね。貴方の知らないところで、それなりにやっているのですよ」
 当たり前のように返した後。
「人間界にしばらくいてはどうですか、シルバ」
「…何でだよ。お前、最近人間どもと遊びすぎて本当におかしくなっちまったんじゃないか」
「ふふ…そうかもしれませんね。でもこれは悪い話ではありませんよ。人間界にいればジャムの目は届きにくいですからね。面倒事を押しつけられることも無いでしょう」
 その言葉にシルバは確かに、とも思う。ここにいれば近いうちに、必ず上からの命令が来るだろう。そうなる前に目の届かない場所で楽な仕事をするのも悪くないかもしれない。

 ――どのみち、寝てばかりいられないのなら。

「…その顔は、何を企んでる」
「最近レックスにせがまられて、ちょっとした魔物を作りましてね。これを使って、少々派手に遊んでこようと思います」
「お前…本気か?」
 ここ数日クラウンが熱心に作っていた「あれ」をシルバも目にしていた。あんなものを連れて行けば、間違いなく目立つ。
 それこそ、天使・人間への宣戦布告と取られてもおかしくないほどに。
「つくづく何を考えているかわからなねえ奴だな…戦争でもふっかける気か」
「計画が動き出す前に、挨拶代わりにでもと思いましたね。これからあの場所は、最高の舞台となっていくのです。我々悪魔が中途半端では、むしろ失礼でしょう」
「…は、酔狂なこった」
 呆れかえりながら。
 これ以上クラウン達の遊びに巻き込まれないよう、祈るシルバなのだった。

●誘われし者達

「…まさかとは思っていたが」
 生徒から提出されたレポートを見て、太珀(jz0028)は小さく呟いていた。
 膨大な資料から抽出された要点、そこから導き出される懸案事項の全てに、頷きながら。
「全く…生徒達が気付かなければ、最悪の事態を迎えるところだ」
 太珀が学園側に働きかけたことにより、事は大きく動き出していた。既に調査隊を四国へ送り込む手はずは済んでいる。
 後は――

「先生ーッ!」

 突然部屋に飛び込んできた生徒に、太珀は視線を向けた。
「なんだ? 騒々しい」
 険しい表情をした生徒は、数枚のFAXを太珀に突きつけるようにして差し出す。
「巨大なディアボロが……双頭の竜が出ました! 四国です!」
 その言葉に太珀は眼差しを鋭くする。

「奴らめ…ついに動き出したか!」

 冥動の狂宴が、今四国で鳴り響く。


リプレイ本文

 信念

 僕は、このシンプルな言葉がとても好きだ。
 念ずる。
 救いを。
 勝利を。
 信じる。
 自分自身を。
 仲間を。

 それはいつしか、花開くから。



 ずん、と言う地響きと共に木々がなぎ倒される。
 暴食の徒が歩く。
 既にその胃には多くのものを収めながら。
 それでもまだ、人を喰らおうと。

「こちら左班。現在、双頭竜の南部に到着しました。敵までの距離は目視500メートル」

 地図を手にした九条 朔(ja8694)が、ハンズフリーマイクに向けて言葉を発した。右担当班との専任連絡役を務めている彼女は、この作戦の鍵を握っていると言ってもいい。
 イヤホンから聞こえる声を聞き逃さないように神経を集中する。報告によれば、どうやら右もほぼ同時に竜の北西部に到着した模様。
 この様子なら、ほぼ同時に戦闘を始められそうだ。
 朔は竜の動きを目で追いながら、淡々と伝える。
「現在全速力で竜へと接近中。接触次第、交戦開始します」
 到着した撃退士たちは次々に竜へ向けて移動を始める。

「すごくでかい! あんなのが街で暴れたら大変!」
 興奮気味にそう叫ぶのは、雪室チルル(ja0220)。
 いつも元気一杯の彼女、竜を前にしても全く怖じ気づいたところを見せない。
「さあ、ドラゴン狩りよ! 全軍突撃ー!」
 久しぶりの大物にテンションも最高値。
 緊迫したこの場で若干浮いている気がしないでも無いが、その天真爛漫さが救うものもある。
「ふふ…雪室さんはいつもお元気ですね」
 そう言って御堂・玲獅(ja0388)が微笑む。彼女のたおやかなまなざしが、チルルを捉え。
「ああ。こんな状況で大したもんだ」
 蒼桐遼布(jb2501)が苦笑しながらも賛同を示す。
「彼女の姿に、励まされる者も多いだろうな」
「ええ、本当に」
 そう、今の状況は最悪と言っていい。
 犠牲を免れるためには、全ての作戦を成功させなければならない。
 その難しさを重々に理解しているからこそ、ひたすら前を向くチルルの明るさを、玲獅は貴重だと思うのだ。
 ――そうです、私たちはやるしかないのです。
 ともすれば心折れそうなこの状況を打破するのは、やはり人の意志なのだから。
 彼女は深い決意を秘め。
 全てを守るために、竜へと立ち向かう。

 竜への距離、残り400m。
 
 双頭竜はまっすぐに西へと向かっていた。
 その先にあるのは、多くの人が住む街。
 既に撃退庁が避難の誘導をしてはいるものの、恐らくは間に合わないだろう。
 つまり、街へ到達する前に止めなければならないのである。

「胸糞悪い…その一言につきる」
 双頭竜を目の当たりにした戸次隆道(ja0550)が、吐き捨てるように呟いた。
 太珀から提供された情報によれば、あの双頭竜の中には多くの人間が生きたまま飲み込まれているという。
「同時撃破しなければ犠牲者が出る…ですか」
 眉をひそめるイアン・J・アルビス(ja0084)に、月影夕姫(jb1569)が静かに応え。
「ええ…それでも、生きているだけまだマシと言えるのかもしれませんが」
 現在進行形で歩き続ける暴徒、そしてその背後にいるであろうこの事件の黒幕。
「冥魔どもめ…思い通りにさせると思うなよ!」
 隆道の言葉に、夕姫も反応する。
 助けられる可能性が、あるのならば。
「…絶対に、救ってみせる」
 あの時と同じ失敗は繰り返さない。強くなると、決めたのだから。
 イアンも頷きながら、目前に迫る強大な敵を見据え。
 あの竜を。
 自分は止められるだろうか。
「…愚問ですね。そんなことわかりきっているのに」
 自分がやらなければ、誰がやるというのか。
 イアンは大きく息をつき。当たり前のように、宣言する。
「絶対に止めます。ええ、命を賭けてでもね」

 竜への距離、残り300m。

「四国で巨大ディアボロ…随分と派手な幕開けじゃないか 」
 銃を手に木々の合間を疾走するのは、加倉一臣(ja5823)。迫りつつある敵は、想像以上だ。
「これはもう…遊びの段階じゃない」
 数日前会議で推測されたことが、現実味を帯びつつある。
 その実感を誰より感じているのは、いつの間にか自分が深く関わってしまっていたからに他ならない。
「うん…なんとしても、倒さないとね」
 雨宮祈羅(ja7600)が決意のこもった声を出す。
 一臣と同様、この一連の事件に関わってきた。ここで食い止めなれば何の意味もない。
「あの会議を無駄にはできない。必ず、ここで止めなくちゃ」

「またアホな事しやがって…!」
 同じく全力疾走をしていた小野友真(ja6901)が、怒りを露わにした。
 この事件の裏に潜む存在。道化の悪魔が絡んでいると言う噂を聞き、この依頼に参加した。
 その隣で半ば呆然と双頭竜を見上げているのは、藤咲千尋(ja8564)。
「ゆーま…凄い、敵だね」
 こんな大きな敵と戦うのは、初めてのこと。自分は、ちゃんと戦えるだろうか。
 そう考えるだけで、足が震えそうになる。
「千尋ちゃん大丈夫か?」
 友真の気遣いを有り難く思いながらも、彼女は首を振り。
「うん、大丈夫」
 恋人の頑張りで判明した四国の事実。守ろうと戦う友人達。
「自分も、頑張りたいから…!」
 まっすぐに竜を見据える千尋を見て、友真もうなずく。 
「あいつを…いつか絶対ぶっ飛ばすって決めたんや」
 今はまだ、遙か高みにいる存在を。
 あの時自分は、必ず越えると決めたのだから。
「こんな所で立ち止まるわけにはいかん。誰一人死なせてたまるか」
 握りしめた拳を振るう、その時までは。

 竜への距離、残り200m。

「双頭竜…強力なディアボロみたいですね」
 鑑夜翠月(jb0681)が唇を引き結ぶ。
 黒猫をも思わせる、その容姿。
 いつもは穏やかな彼だが、今日は少し違う。その翠玉のような瞳には、決意の色が宿り。
「ええ。これ以上、冥魔の好きにさせるわけにはいきません」
 翠月の言葉に淡々と反応するのは、久遠冴弥(jb0754)。彼女の表情は、いつもと変わりなく。
「さすがは冴弥さん。落ち着いていますね」
「いえ。落ち着いてなど」
 翠月の言葉に、微かにかぶりを振る。
 大切な仲間に傷ついて欲しくない。救える命は必ず助けたい。
 そう思えば思うほど、彼女の口数は少なくなってしまう。
 親しい相手に対してならば、なおのこと。
 そんな冴弥を知ってか知らぬか、翠月はただ微笑んで。
「必ず、閉じこめられた方々を救出しましょう」
「ええ。…必ず」
 冴弥もただ、うなずいてみせ。

 そんな彼らの前方を走るのが、サガ=リーヴァレスト(jb0805)と華成希沙良(ja7204)。
「悪趣味な張りぼてだな…」
 竜を見上げ、サガは顔をしかめる。
 これを作った者の趣味なのか。禍々しさを隠そうともしない竜の外見は、嫌悪感さえ覚える。
「……上手く…行く事…を…願って…… 」 
 希沙良がつっかえながらも、何とか言葉を絞り出す。
 人見知りの強い彼女だが、ひたすら作戦の成功を願っているようだ。
「……どうか、無事…で…」
 消え入りそうなその声を、サガは聞き逃さない。
 不安と決意が入り乱れるその視線に、そっと微笑みかけ。
 きっぱりと、告げる。
「ああ。必ず、皆で生きて帰ろう」

 竜への距離、残り100m

「双頭竜ナニソレおもろい…て純粋に楽しませてくれたらイイんでな?」
 アサルトライフルを手にすべるような疾走を見せるのは、七種 戒(ja1267)。
 空を切るごとに、彼女の黒く長い髪が背に向かって流れる。
「この人数でドラゴン退治なんて、まるでどっかのゲームみたい…か」
 戒の口元には微かに笑みが浮かぶ。このゲームを仕掛けた犯人は、なかなかに底意地が悪い。
 全ては、自分たちを試しているかのようで。
 そんな戒にぴったりと並走しているのが、神埼 晶(ja8085)。
「閉じこめられた人達を助けなくちゃ!」
 勝ち気な声が戦場に響く。
 尊敬する従姉と共に戦場に立った彼女。いつも以上にやる気に満ちあふれている。
「戒姉! 死角は私がカバーするから、思いっきりやっちゃって!」
「ありがと晶」
 可愛がっている従妹と共に立つ戦場は、いつもより幾分熱を帯びるだろうか。
 戒は無意識のうちに呟く。
「…まあ、興じるからには勝たせてもらうんでな」

 竜への距離、残り50m 

「不思議だな、遙久。俺今、全然負ける気がしねえよ」
 間近に迫った竜を見上げながら、月居愁也(ja6837)が呟いていた。
 前高6mの迫力は伊達じゃない。
 歩みを進める度に振動が腹の奥に伝わり、どれほど自分が小さな存在であるかを思い知らされる。
 それでも。
「だって、お前がいるからな!」 
 掛け値無しの信頼。それだけで、自分はいつだって戦える。
「相変わらずだな、お前は」
 夜来野遥久(ja6843)が、微かに笑む。
 撃退士の存在に気付いた竜は、凄まじい咆哮をあげた。
 闘気を纏った愁也の瞳が、より一層の光を帯び。
 そんな彼にアウルの鎧を与えながら、遙久は告げる。
「…勝つぞ、必ず」 
 信じているからこそ、敢えて多くは語らない。
 
 だからせめてもの護りを、その背に。

 竜への距離、残り0m

●邂逅

「敵と遭遇。襲撃開始します!」
 朔の号令と同時に、撃退士達は一斉に行動を開始する。

「さてェ、ドラゴン退治の御時間だわァ」
 竜を前に妖しい笑みを浮かべるのは、黒百合(ja0422)。
 手にした漆黒の大鎌を振りかざし、半ば嬌声に満ちた声を上げる。
「ぶち殺し、決定ェ」
 鍛え上げられた武器から放たれる、恐ろしいほどの一閃。
 苦痛の叫びと友に、硬い鱗を削り取るような音が響き渡る。
「あはァ、まだまだ楽しませてもらうわよォ」
 金色の瞳に帯びる、爛々とした光。
 それはまるで、ゲームに興じるかのように。

 撃退士達は、次々に攻撃態勢に入っていった。

 竜の頭部へ強烈な銃撃を浴びせた風鳥 暦(ja1672)が呟く。
「生まれ故郷を荒らされるのは気に食いませんからね…」
 彼女を纏う白いオーラと共に、黒い火花が舞い散る。
 いつもよりも激しく見えるのは、内なる闘志が高まっているせいだろうか。
 表面上は冷静に見える彼女。しかし、内心では自身の大切な場所を壊されそうなことに、強い怒りを抱いてる。
「…許しません」
 懐かしい景色を失うことは、自分の一部を無くすこと。
 それがどれほど哀しいことかは、わかっているつもりだ。

 双頭竜はダメージを受けつつも、確実に歩を進めている。
 首から頭部にかけてを落とすのが今回の目的とは言え、足止めをしないわけにはいかない。
 進めば進むほど、先に待つのは人が住む街なのだから。
 今回のメンバーは、そのこともきちんと視野に入れていた。

「さてさて…ズイブンと派手なデカブツだな」
 竜の死角から動きを観察しているのは、狗月暁良(ja8545)。
 近接武器しか所持していない彼女は、射程的に首には届かない。
 ならば出来ることは一つ。
「ここなら届くだろっ」
 彼女の狙いは、その足下。
 オーラを纏った拳が、竜の爪目がけて叩き込まれる。
 そう、胴体に攻撃が通らないのであれば、それ以外を攻撃すればいい。

「ナイス足止めです!」
 歩みが一瞬止まったところを、久遠寺 渚(jb0685)の銃弾が襲う。
 狙うのは、竜の瞳。
「私の攻撃力は大したことありません…けれど、ここならば!」
 少しでも、攻撃が通りそうな所を狙う。
 少しでも、戦局が有利になるよう行動する。
 頭を使い、今の自分に出来ることを、全力でやる。
 戦場においてこれがどれほど大切なことか、彼女は理解しているのだ。

 その頃、補助班も行動を開始していた。
「大きな猫にまたがる道化…っすか」
 報告で聞いていた悪魔のことを、ニオ・ハスラー(ja9093)は思い出していた。
 どこかで会った気がしないでもないが、きっと気のせいだろう。
「まあ、いいっす。そんなことを考えている場合では無いっす」
 ニオは前衛に立つ数名に向けて、アウルの衣を発動させる。
 透明なヴェールが彼らを包み込み。彼らの防御力が上がっていく。
「これが少しでも役に立てば…いいっすね」
 今回の敵は魔法攻撃力が強力だと聞いている。
 彼女は無意識のうちに祈る。
 どうかこの加護が、皆を護らんことを。

 見事な連携で次々に攻撃が繰り出される中、後衛でひたすら竜を観察している人物がいた。
「息づかい、生体音…見た目だけじゃなく、音から気づけることもあるはずだ」
 鋭敏聴覚を発動させながら、青空・アルベール(ja0732)は呟いていた。
 体内の人を救いたい。もう二度と、目の前で消える命を見たくない。
 そう思えば思うほど、焦燥感でどうにかなりそうになる。
 ――落ち着け。
 彼は必死に、自分に言い聞かせる。
「タイミングさえ見誤らなければ、皆となら、全員救えるんだから」
 冷静さを失うな。不敵に笑え。
 仲間を絶対に惑わせるな。
 判断力を失えば、この戦いは終わりなのだから。
 青空は、敢えてゆっくりと瞬きをする。
 再び視線を上げたときには、口元に笑みが戻っていて。

 時同じくして、朔も木の上から全体の状況を観察し続けていた。
「撃ち抜くのではなく、見抜く。いつもとは違うけど…出来なくはない」
 手にしているのは、友真から借りたホイッスル。
 この音が、全てを決める。
 心なしか手が震えるように感じるのは、やはり課された責任が重すぎるからだろうか。
「失敗は、許されない」
 きゅっと瞳を細め。
 息を殺し、全神経を耳と目に集中。
 その時が来るまで、朔は静かに待ち続ける。 

 各々がそれぞれの思いを抱き、挑む戦場。
 右班含め総勢五十人の撃退士が到達するのは、救いか惨劇か。
 道化の悪魔が微笑む。
「さあ、人の子達よ。あなた方の『選択』、見せていただきましょう」

 そして竜による最初の一撃が、放たれた。



「この任務、成功率は正直言って五割以下。重体者を出さずにとなれば、三割を切ると思う」
 
 出発前、集まった撃退士に斡旋所スタッフの西橋旅人(jz0129)はそう告げた。
 その現実を一臣は今、まざまざと感じている。
「なんて威力だ、まったく…」
 竜が放った広範囲魔法攻撃は、前衛の多くを巻き込み閃光を放った。
 その直後、凄まじい爆風と共に氷結の嵐が巻き起こり。
 後に残ったのは、その場に倒れ伏す仲間の姿。
「あれもう一度くらったら…やばいんちゃう?」
 友真が微かに声を上ずらせる。
 特に状態が酷いのは、魔法防御力の低い阿修羅とナイトウォーカー。
 補助班が優先的に防御上昇スキルをかけたことによって、かろうじて一撃死は免れているものの。
 既に生命力が尽きかけている者も多い。
「回復が追いつく前に次が来たら、終わりですね……」
 暦も眉をひそめながら頷く。

「負傷者、集めてください!」
 玲獅の呼びかけにより、撃退士たちは一斉に動き出していた。
 瀕死の状態に陥っているのは三人。暁良を夕姫が、サガを希沙良が、そして遼布を冴弥が背負い離脱する。
 それぞれ、自身も深傷を負った者達だ。
 即座に癒しの風を発動させながら、遙久が指示を出す。
「まとめて回復させるぞ…!」
 集まったアストラルヴァンガード達は、次々に回復スキルをかけていく。
 次の攻撃が来るまでに、何としても負傷者の数を減らしておかなければならない。
「…どう…して……」
 自分をかばって瀕死状態に陥ったサガに、希沙良は唇を噛みしめながら問いかける。
「私が…サガ様の…盾に…と…決めて…いた…のに…」
「……すまない、つい」
 身体中に受けた傷で呼吸困難に陥りながら、サガはなんとか謝る。
 防御力で考えれば馬鹿げたことをしたのは、わかっている。けれどあの攻撃を受けようとする彼女を、放っておけなかった。
 死ぬかもしれない、とか。
 合理的でない、とか。
 そんなことを考える余裕が無かったことに、驚いているのはむしろ自分の方で。
「悪ぃ…ヘマしたな」
 苦しそうに顔をしかめる暁良に、ニオがかぶりを振る。
「何言ってるっすか! 前線で戦ってくれる人がいるから、あたしたちが守られてるっす」
 そう、今回後衛に全く被害が及ばなかったのは、足止めに徹した者が多かったからに他ならない。
 後ろにまで攻撃が及んでいれば、被害はこの程度では済まなかったのだから。

 回復班が前線を離れている間、残りの前衛と後衛は足止めをメインに攻撃を続けていた。
「喰らえっ!」
 勢いよく叫びながら、晶がリボルバーの引き金を引く。鋭い一撃が竜の頭部を直撃し。
 そこをチルルの大剣が襲う。
「これ以上先へはあたいが行かせない!」
 がぎん、と言う鈍い音と共に、巨大な爪の一部が欠ける。
 さすがは攻防優れたルインズブレイド。最前線にいながらも、敵の攻撃をいなしつつ確実に爪への攻撃を当てていく。
 動きを邪魔されたことに怒った竜が、叫ぶように口を開けた直後。
 放たれるのは黄金に輝く金属糸と、蛇を象った幻影。
「ここならば…鱗に覆われたお前でも防げまい」
「この時を待っていました!」
 金属糸を繰る隆道と、銃を構えた渚だった。口内への攻撃の瞬間を狙っていたのだ。
 強烈な一撃を食らい痛みに苦しむ竜は、暴れ出す。巨体が動く度にずしんと地響きが鳴り、周囲の木々がなぎ倒され。

 その様子を見守っていた青空が呟く。
「竜の体力は確実に減っている。……けれど」
 損傷度、動き、息づかい、全てに神経を研ぎ澄ませながら。
「まだだ…まだ、足りない」
 呼吸の乱れも、弱い。何より目の光が、失われてはいない。
 首を落とすには、まだ至らない。
「ええ…右も同じのようです」
 朔の報告に、青空は眉をひそめる。
「まずいね…首を落とす前に恐らくはもう一度、『あれ』が来る」
 
 その頃、前衛の惨劇を目の当たりにした愁也は考えていた。
「これ…やばいよな…」
 かろうじて自分は耐えたものの。
 ダアトが多い右と違い、左の前衛は圧倒的に攻撃特化型が多い。その分魔法攻撃の被害が大きくなるのは避けられない。
 イアンが眉をひそめながら応える。
「ええ…もしこのまま前衛の多くが落ちれば、一斉攻撃の際左右に戦力差が出てしまいますね」
 それは同時撃破の失敗をも意味する。
「何とか…しねえと」
 迷っている時間は無い。戦場では常に最善の策を瞬時に考えられなければ、生き残れない。
 考えろ。
 愁也は自分に言い聞かせる。
 こんな時、親友なら何と言うだろうか。しかし彼は今、必死に負傷者の治療に当たっているのだ。
 振り返りたい衝動を抑え込みながら、必死に頭を巡らせ。
「あーわかんねえ。とりあえず、今やれることをやるしかねえよ! アルビスくんちょっと手伝って!」
「え? ちょ、ちょっと月居さん」
 暴走して走り出そうとする竜へ、愁也は突進を始める。イアンも彼に付いて走り。
「そっちには行かせねえよ! ほら、こっちだ!」
 愁也はわざと大声を出して頭部への攻撃を仕掛ける。元々タウントを発動させていたイアンを連れている事もあり、竜の意識をこちらに向けることに成功し。
 鋭い咆哮を上げた後、竜の鋭い牙が愁也を襲う。
「うわっと」
 ぎりぎりの所で回避。それを見たイアンが呆れたように言う。
「全く…無茶しますね」
「はは…少しでも時間稼ぎできればと思って」
 イアンはくすりと微笑み。
「まあ…仮に月居さんが攻撃受けても僕が護りますから、問題ありませんけれどね」
 その揺るぎない自信は、盾として徹底的に鍛えあげた証。

 愁也達の囮作戦が功を奏し、竜の歩みは更に遅くなっていた。 
 その間にも攻撃は続けられ、順調に竜の体力は削られている。
 このまま上手く落とせるかと誰もが思い始めていたのだが。
 やはり敵もそこまで甘くはない。

 翠月が額に汗を滲ませながら、口を開く。
「……その身が危うくなれば、誰しもなりふり構っていられなくなります」
 彼の猫の様な瞳には、動きが鈍くなりつつある竜の姿が映っている。
 野生動物に数多く接してきた彼、こういったものには人一倍敏感だ。
「――恐らく」
 押さえるのは、そろそろ限界。

 時同じくして、一臣は旅人が言ったことを思い出していた。
 共に戦えぬ事に苦悩を浮かべながらも、友は言った。
「それでも…僕は、みんなを信じている」
 その信頼に応えたい。いや、応えなければならない。
 ――ああ。誰一人、犠牲を出すつもりはない。
 次の攻撃は、何としても。
 銃を構え、一臣は宣言する。
「いいだろう。食い止め、全て救い出す」

 直後、撃退士たちを牽制していた竜の頭が、一瞬動きを止めた。
 ゆっくりとこうべを垂れる動作。
 先程も見た動きに翠月が、叫ぶ。
「来ます!」

 氷結の息吹が、閃光と共に放たれた。


●思いは、一つ

 ――死を意識したのは、これで何度目だろうか。
 
 一度目は、天使を助けたとき。
 悪魔としてあり得ない行動をとったことで粛正されかけた。
 あの時自分を拾ってくれた人間がいなければ、今の自分は無かっただろう。
 二度目は、再び悪魔から襲われた時。
 あの時のことをきっかけに、この学園に入った。
 そして――

 まぶたを上げた遼布は、一瞬自分がどこにいるのかがわからなかった。
「生きて…いる…?」
 直撃だと思った。
 傷が完全に癒えていない状態だ。良くて重体、下手すれば――
 そんな彼の目に映るのは、防御陣を展開させた夕姫の姿。
「大丈夫?」
 夕姫の呼びかけに、遼布は途切れがちに返す。
「ああ…すまない。助かった」
 すると夕姫は何でもないように微笑み。
「お礼なんて必要ないわ。あなた達が躊躇無く戦えるようにするのが、私の役目だもの」

「何という…こと」
 状況観察に徹していた朔が、思わず言葉を漏らした。
 彼女の目前にあるのは、先程とは打って変わった光景。
 誰一人欠けることなく、立っている撃退士たちの姿。
「信じられない…全員、耐えきった」
 そう、防御力の高いものはその場で耐え、もしくは誰かを護り。
 そして護り切れなかった者は――

「さすがにこの人数は伊達じゃなかったね」
 ほっとした様子で青空が笑みを浮かべる。前方に見えるのは、全て攻撃を避けきった仲間達の姿。
「当たり前や。俺の目の黒いうちは、絶対に攻撃は行かせへん!」
 友真がガッツポーズで叫ぶ。
 攻撃の直後、発生したのは思わず目を疑うほどの、回避射撃の嵐。
 インフィルトレイター勢の一斉射撃は、全ての前衛をカバーすることに成功し。
「まさかここまで行動が一致するとはね…さすがに俺も驚いた」
 苦笑する一臣に向かって、友真は口を尖らせる。
「何いうてんの。全員で帰るって決めたんや。一番前で戦ってくれてる人を、助けるに決まってるやろ」
 友真の言葉に、千尋も力強くうなずく。
「もう誰も…傷ついて欲しくないから!」  

 彼らの意思統一は見事なものだった。
 誰一人欠けることなく。
 そこへ向けての行動は、まさに賞賛に値すべきことであり。

「戒姉、お見事!」
 同じく回避射撃を成功させた戒に向かって、晶がサムズアップする。
 あまりに素直な彼女の反応に、戒は思わず笑みを漏らし。
「あまり熱くなる方でも無いんだがな」
 共に戦う者の意志が同じ方を向いている。
 ある意味で当たり前のことが、ここまで心地よいと感じたことがあっただろうか。
「ふ…こう言うのも悪くなry」
「戒姉、危ない!」
 突き飛ばされ、後方へ吹っ飛ぶ。
 いつの間にか竜の攻撃範囲内に入っていたのを、晶が察したらしい。
「あ…ありがと、晶。でももーちょいソフトでもイイのよ」
「さあ、どんどんやっちゃってよ、戒姉。遠慮はいらないからね!」
 聞いちゃいねえ。
 しかしいつも以上に彼女のテンションが高いのも、恐らくこの戦場の空気のせいだろう。
 戒はにやりと口の端をあげると、銃を手にする。
「目の前で…ってのも寝覚めがわるいか」
 救ってやろう、全てを。
 後悔するのは柄じゃない。
「私に関わりがなくても、きっと誰かの大事な人だろうからな」

 全員が猛攻を続ける中、渚は一人前線へと移動していた。
「これを…!」
 防御上昇が切れそうな仲間に、乾坤網を発動させる。
 網のように広がったアウルが、対象者たちの身体を包み込み。
 それを見ていた玲獅がにっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。私たちだけでは手が足りなかったので、とても助かります」
「え…そ、そうですか…?」
 お礼を言われ、真っ赤になる渚。まさか自分が誉められるとは思ってもみなかった。
 回復補助はアスヴァン程の威力はないにせよ、陰陽師の立ち回りの良さは下を巻くものがある。
 特に今回は魔法攻撃の強い敵であったこともあり、魔防が高く攻撃、回復、補助までこなす彼女のような存在は貴重だ。
 この戦いは偏りこそあれ、全てのジョブが参加していたことは大きい。
 それぞれが各自の役割をどう果たすか、一つの答えがこの場で示せたことは後の戦いに少なからず影響を及ぼすことだろう。
  
「右班より連絡あり! 頭部損傷状態から見て、次が一斉攻撃のタイミングとのこと」
 朔の言葉に、青空が反応する。
「ちょうどいいね。左もそろそろだって思っていたところだ」
 竜の目からは明らかに力が失われつつある。何より、呼吸の荒さが顕著だ。 
「一斉攻撃、入ります! 第一波準備を開始してください!」
「右とのタイミングを合わせるぞ!」

 その号令に、攻撃特化型ジョブの闘気が最高潮まで登りつめる。

 隆道の目が更に赤く、燃えるような光を宿し。
 武器を構えてゆっくりと呟く。
「阿修羅の力、舐めないでもらいですね」
「ナイトウォーカーもな」
 同じく手甲を構えたサガのオーラも、威圧感を増す。
 彼らを取りまくオーラが、刃の鋭さを放つ。
 研鑽を極めたその姿は、まさに修羅のごとし。

 他のジョブたちも負けてはいない。
「あたいだって、全力よ!」
 ルインズのチルルが叫び、
「あはァ、攻撃力なら負けないわよォ…」
 鬼道忍軍の黒百合が不敵に微笑み、
「魔法攻撃ならうちに任せて!」
 ダアトの祈羅が魔法書を構え
「…必ず、落とします」
 バハムートテイマーの冴弥が召喚獣と共に攻撃態勢を取る。

 そして彼らの攻撃にディバインナイトとアスヴァン勢が加わり。

「連携、入ります! カウントスタート!」

 戦場に高らかな最初の笛が鳴る。

 ブレの無い笛の音は、西の南に分かれているとは思えないほどの同一音。

 三。

 最初の一撃を担う前衛が己のすべてをかけて技を編み始める。

 二。

 次の一撃を担う後衛が自らの力を解き放ち。

 一。

 竜が危機を察したようにそれぞれの頭部を互いの敵へと向ける。
 だが、もう遅い── 

 響く攻撃合図と共に、

 渾身の

 全身全霊を賭けた

 運命の一撃が叩き込まれた。




 一瞬、時が止まったかのようだった。

 いや、時間にするとほんの数秒のことだったかもしれない。
 しかしその時間は陳腐な言い方をすれば、永遠とも取れるほど長く、もどかしく。

 全員が息を殺し、見守る中。

 同時攻撃を受けた双頭竜は、その動きを停止していた。
 倒れることもなく、ただ微動だにせず。
 
「やった…のでしょうか…?」
 後衛で様子を見守っていた渚は銃を構えたまま、言葉を漏らす。
「わかりませんね…」
 銃の引き金に手をかけたままの暦が、淡々と応える。
 他の後衛陣も誰一人動くことが出来ないでいる。いつでも第二波の攻撃が撃てるようにだ。

 時同じくして朔は瞬きすら出来ず、竜を見据えていた。
 成功か、失敗か。
 笛を握りしめる手に汗が滲む。
 ほんのわずかでも生命力が残っていれば、それはすなわち失敗を意味する。せめて失敗が左右両方であればいいが、片方だけなら――
 右班からの連絡も無い。どうなっているのか、判断が付かない。
 二回目の笛を吹くべきか、全ては自分にかかっている。
 彼女のこめかみを、一滴の汗が流れたとき――
 
 左の頭部が、落ちた。

「――っ」
 全員の視線が右頭部へと向けられる。しかし右は…まだ落ちていない! 
 息が止まりそうになる。
 五十人の顔から一瞬にして血の気が引いた。
 失敗か、事故殺を恐れて攻撃を分けたのが間違いだったのか。救えると思ったのは、幻想だったのか!
 底知れぬ絶望が場を支配しようとした、
 その時。
 
 右の首が、

 ゆっくりと――落ちた。

●大罪破りし氷結の竜滅士

 歓声が、まるで音の塊のように空へと突き上がる。
 朔はホイッスルを強く握りしめながら、言葉を絞り出す。
「右頭部も陥落の報告有り。同時撃破、成功です!」
 その声には涙がにじむ。こみ上げるものを押さえることができない。
「どうやら…成功したようですね」
 安堵のため息を漏らす玲獅の横で、ニオが歓喜の声を上げる。
「やったっす! 第一関門突破っすよ!!」
「……よか……たっ……」
 希沙良がへなへなとその場に座りこみそうになるのを、サガがそっと支え。
「冷や冷やしたぜ…」
 暁良がハンチング帽をかぶり直す。

 しかしまだ終わりではない。太珀によれば、首と落とした竜は形を変えると言う。
 この後に出てくるのは――

 …ずじゅり

 得体の知れない音が、竜の身体から発せられた。液体と柔らかな物質を混ぜたような不快な音。
 そう……例えば、肉を割って出てくるかのような。
「あれが…第二形態……!」
 眉をひそめる遙久の前方に、ソレが抉れるようにして落ちた竜の首の付け根あたりから現れる。深い海をも思わせる、青光の球形魔法生命体。

 核(コア)が戦場に出現した。
 
「障壁らしきもの消滅! 胃袋出ました……!」
 核が出現すると同時、弛緩するかのようにずるりと鱗ごと皮が剥ける。同時に何か生臭く暖かい臭気が漂ってきた。
 もしかすると結界めいたものが今まで張られていたのかもしれない。ならば、それが胴体を守っているとされていた【障壁】だろう。
 剥けた皮の向こう、血肉らしきものの合間から見えるのは鳴動する巨大な胃袋。胴体のほとんどがその胃袋で占められているらしい。 わずか薄皮一枚と表現するにふさわしい外側と、

 その中に収められた人間の、姿。

「あれを直接破って中の人を救い出すのは…難しそうねェ…」
 黒百合が露わになった胃袋を見て、呟く。
 胃袋は、薄い膜のようなものだった。ぴっちりと張り付くそれのおかげで、内側に閉じこめられている人間の姿が浮き彫りになっているのだ。
「攻撃で胃袋は破れないが、中の人間は即死する」
 確かに、充分にあり得る話だ。

 核が鈍い発光を繰り返しながら、ゆるゆると上昇を始める。
 その高さ、およそ四メートル。

 冴弥は浮遊する核を複雑な思いで見つめていた。
「あの竜にも…意思はあるのでしょうか」
 見るに耐えないその姿。
 冴弥は悪魔の使役である竜が、何故か召喚獣と重なって見えていた。
「…馬鹿げたことを」
 かぶりを振る。
 召喚獣とディアボロでは、そもそもの成り立ちが違う。何故こんなことを急に考えたのか、自分でもわからない。
 それでも、聞いてみたいと思った。
(天羽々斬…あなたは、どうですか)
 命を賭けて戦うのは、命令されたからなのか、その意思からなのか。
 返事は無い。
 けれどそんな彼女の思いに呼応するかのように、黒銀の竜は咆哮をあげる。
 馬鹿げたことを聞くんじゃない、とでも言わんばかりに――

「さあ、第二波攻撃開始だ」
 アサルトライフルを構えた一臣が、指示を飛ばす。
「言うまでも無いけど、胃袋には当てないように!」
「どんどん行くで、インフィルの命中率なめんといてや!」
「外すわけにはいかない!」
 友真と晶の宣言と共に、インフィル勢が一斉射撃を開始する。
「僕も負けませんよ!」
 翠月が、命中と威力を極限まで高めた魔法攻撃を放ち。
「これを……くらいなさい!!」
 暦と渚のライフルが、脅威の一撃を見せ。
「全て…護りきる!」
 遙久放つ信念の矢が、核中央を射貫く。

「着弾確認! 右も一斉攻撃に成功したとのこと!」
 あまりの衝撃にぐらついた核は、それでも体制を取り戻すと一気にその身体を発光させる。
「核の攻撃、来ます!」
「後衛、気を付けて!」
 青の閃光と共に、凄まじい音波が周囲を襲う。
「痛い……っでも、さっきと比べたらマシよ!」
 とっさに割り込んだチルルが、顔をしかめながらも力強く言い切る。
「被害は?」
 同じく立ちはだかったイアンが夕姫に聞く。
「大したことない。いけるわ!」
「回復班、動きます!」
 玲獅がスキルを展開させる。
「さてェ、私たちはアレを胃袋から離しましょうかァ…」
 黒百合が胃袋の近くを浮遊する核を指す。
「あの状態なら、上手くやれば吹っ飛ばせるんじゃないかしらァ」
 彼女の持つ大鎌は強力だ。確かにその攻撃力で殴打すればあるいは――
「そうですね。成功すれば、胃袋から離す事が出来るかもしれません。やってみる価値はあるでしょう」
 糸を手にした隆道が賛同する。
「私が糸で絡め取り、誘導を促してみます。そこを同じ角度に向けて殴打してもらえれば」
「いいな。やってみよう」
 同じく大鎌を手にした遼布がうなずき。
「じゃあ、行くわよォ…!」
 黒百合が合図を出し、隆道が核に突撃を開始する。
「くらえっ……!」
 手から放たれた金糸は核の体躯を見事捕らえ。全身で力を込めながら反動をつける。
「今です!」
 かけ声と同時、黒百合と遼布の大鎌が同時に核側面から水平に振り抜かれる。その瞬間、隆道は糸を解き放ち。
 真横から殴りつけられた核は、勢いよく胃袋の南西側へと飛ばされる。
「やったわァ」
「よし、これで誤爆の可能性は減ったな!」

 直後、核も攻撃態勢に入る。

「危ねえ!」
 愁也が、勢いよく突進してきた核の前に立ちはだかる。その瞬間、鈍い音と共に衝撃が身体を襲い。
「おい、愁也。無茶は…」
 後方からかけられた親友の声を、遮るように。
「遙久!」
 愁也は流れる血をぬぐいながら。思いの外、落ち着いた声音で言う。 
「俺は絶対に振り返らねえよ」
 その言葉に、遙久は踏み出そうとした足を押しとどめる。
 傷だらけで囮に徹し、後ろを信じ、前だけを見続けるその姿を。
 ああ、あいつはいつの間に。
 こんなにも――
 遙久はその背に向けて、ただ一言伝える。
「安心しろ、お前は死なせない」
 その言葉を聞いた愁也は、何の迷いもなく、躊躇いもなく、当たり前のように。
 核へ向けて突撃した。

 撃退士たちの猛攻は凄まじかった。
 素早く落とさねば、核が胃袋を攻撃する可能性だってある。
「あたいの力受けてみろー!」
 チルルがその大剣を勢いよく振り抜き、
「ゼンリョクでぶっ潰すぜ?」
 暁良の重い一撃が叩き込まれ、
「もたもたはしてられん!」
 サガの放つ矢が貫く。
「ここで落とさねば…何の意味もありません!」
 暦が威力を高めた強烈な弾丸を放つ。
 生まれ故郷を惨劇の血で汚しはしない。
 自分が観る四国の景色は、いつだって、美しく、気高いのだから。

「愁也さん、危ない!!」
 叫び声と共に放たれた一矢。
 まっすぐに放たれたそれは核を襲い、わずかに狙いが逸れる。
「やった!」
 紙一重で攻撃をかわした愁也が、ぎりぎりの状態でそこに立っていた。
 回避射撃を成功させた千尋が、ほっとした表情を見せる。

 彼らの意志は強く、強く、そして一つだった。
 全てを、救いたい。
 誰一人、犠牲を出さない。
 最後まで途切れることのない信念は、まるで生き物のように動き、抗い、絶望を打破する。

「そろそろ……か」
 青空が、核の動きを見ながら呟く。
 核は明らかに、動きのキレを失いつつあった。加えて、浮遊高度が落ちてきている。
「朔、右班に連絡してくれるかな。一斉攻撃の準備に入ろう」
「了解」
 右との話し合いの結果、今度は全員同時に攻撃をすることになった。
 もう二回に分ける必要もないだろうと言う判断である。

「カウントダウン、始めます!」

 ピーッ!

 笛の音が響いた。あの時と同じように。

 イアン、夕姫、遼布がいち早くその武器を構え、
 チルルが大剣の切っ先にエネルギーを収束させ、
 黒百合が深い闇をその身に纏い、
 隆道、愁也、暁良が闘気を極限まで高める。

 ピッ

 サガがアウルの弾丸を発現させ、
 ニオ、翠月、祈羅の頭上を光が覆い、
 希沙良、渚、暦がその銃に祈りを込め、
 玲獅が生み出すのは、無数の光の矢。

 ピッ

 青空の全身を青い紋様が覆い、
 一臣と友真がその弾丸にアウルを集中させ、
 戒、晶、冴弥が狙い定め、
 千尋と遙久がその矢に全てを込める。

 これが本当に、最後の一撃。

 救おう、命を。

 祈ろう、勝利を。

 そして信じよう、

 全てを。
 
 朔が響かせる音の直後、

 五十人が放つ閃光が、凄まじい音と共に大地を震わせた。


●奏者は終幕と開幕を告げる

「お見事です」
 幼い道化の姿をした悪魔マッド・ザ・クラウン(jz0145)は満足そうに呟いた。
 その小柄な体が跨る巨大な友は、ぺちょんと地面に沈んでいる。
「目標は達しましたよ、レックス。……泣かなくてもいいでしょう?」
「……我輩、いろいろと全滅である……」
 巨大化した子猫にしか見えない悪魔フェーレース・レックス(jz0146)は、大きな緑の瞳からこれまた大粒の涙をこぼしながら鼻をすんすん鳴らした。
「結局一度も勝てなかったであるぞ……」
「ふふふ。一度ぐらい撃退士に賭けてみるべきでしたね」
 こりこりと頭を掻いてやりながら、クラウンは微笑む。
 二人はしばしの会話を成した後。
 既に立ち直ったレックスがふいに仰向いた。
「ところでクラウン。計画のハジマリは、成ったであるな?」
 深い色を宿すその表情に、クラウンは笑みを深める。
「ええ。私たちが担った役目は完了しました。……撃退士達も、天界も、そろそろ感づいていることでしょう」
 始まりは何だっただろうか。
 地上に降り立ち、友と戯れる最中に持ち込まれた計画。むしろ自分達の特徴こそうってつけであるかのようなそれに、加担しようと思ったのはそれが楽しそうだったから。
「覚えていますか、レックス。かつて私が言った言葉を」
「? 我輩、クラウンの言葉は全て覚えているであるぞ?」
「そうですね。貴方はいつもそうでしたね」
 長い年月を共に過ごしてきた友。
 今ではもう共に在らなかった日々のほうが思い出せないほど。互いを縛る気はまるでなく、わりと好き勝手やっている方だというのに、気が付くと一緒にいる相手。
 だから、この始まりの終わりの舞台もまた、ふたりで作り、見届けたのだ。

「「やがて来る時」」

 かつて告げたその言葉。

「「来たる場所で」」

 この後に生み出される全ての光景を予知して。

「「私達は最高の舞台を見るのです」」

 その時は、もう、すぐそこに。

「さぁ、参りましょう。これより始まる、終焉の幕開けを眺めに」
 巨大な猫は小さな道化師を乗せて駆ける。その背後に喜劇の終幕を残して。



 学園と現場の通信管理を行っていた旅人は、その報告を審判を受ける思いで聞いていた。
「死者、戦闘不能者ゼロ。全員無事です」
 ああ、と声が漏れた。
 握りしめた拳が、まだ微かに震えている。
 右班、左班、あわせて五十人総出の作業で助け出された人々は、のべ二百人にも上ったという。
「ありがとう…みんな…」
 うつむくその頬には、涙が伝う。
 通信を終えた旅人は、隣で同じく報告を聞いていた鎹雅(jz0140)に視線を向ける。
 すると彼女も声を殺しむせび泣いていて。
 旅人はそっと歩み寄ると、その肩に手を添える。
 雅が顔を上げる。
 互いにくしゃくしゃな顔で、涙を流して、

 二人、全開の笑顔で肩をたたき合った。


●念ずれば、花開く

 時は少し遡る。
 それは道化と猫の知らない物語。

 閃光と轟音が静まって後、撃退士達はそこに光を失い、ぼろぼろと欠片を零すかつて球体であったものの姿を見た。
 バキンっ、と一際大きな音をたてて核が斜めに罅割れ、地に落ちる。
 朔の瞳には、既に涙が溢れていた。
 抑えることが出来ない。今すぐ、走り出したい。
 それでもまだ、自分にはやり残したことがある。
 ホイッスルを持つ手を下ろし、朔は声を絞り出す。
 戦場の片側を担った仲間と、同じタイミングで。

「青核消滅、です」

 同時に、

「赤核消滅」

 そして

「「全員無事です。生きてます!」」

 熱いものがこみ上げる。
 生きている。
 ただその一言が、これ程重いと感じたことがあっただろうか。
 救えた。
 唇が、声が、震える。
 やり遂げた。
 涙が、こぼれ落ちる。
 溢れんばかりの喝采と共に。

 歓喜の花が、咲き乱れた。


「よかった…本当によかったっすよ……」
 中の人たちの生存を確認しながら、ニオと祈羅がぼろぼろと涙をこぼす。
「……眠って…る…だけ……」
「安心しました…」
 希沙良と玲獅が脈拍を確認しながらうなずき。
 名簿を見ながら、友真が嬉しそうに。
「…うん、事前に調べてた人数に間違いない。全員、助けられたんや!」
 友真による迅速な手はずで、救助された人間達はすぐさま応急手当が施され、病院へと送られた。
 安堵した途端、腰が抜けそうになる。そこを一臣が笑いながら支え。
「お疲れさん。よく頑張った」
「一臣さんもな。格好良かったで、ちょっと見直したわ」
「えっ、もっと言ってくれていいのryぐはっ」  
 容赦なく飛ぶ、安定の腹ぱん。 

「大役、お疲れ様だったね」
 青空が、右班の連絡役と挨拶を交わし終えた朔をねぎらう。彼女はわずかにかぶりを振り。
「ここまでやれたのは…皆の、おかげです。あなたの観察力、素晴らしかった」
 その言葉に、青空も嬉しそうに笑んでみせ。
 二人同時に、その言葉を発する。
「「ありがとう」」

「それにしても、あんなに沢山人間を飲み込んでいたとは…」
「ええ…あの胃の中はどんな状態になっていたのでしょうね」
 呆れるイアンと隆道の向こうで、サガと暁良が互いの健闘を称える。
「何とか生きて帰れそうだな」
「ああ。なかなかのスリルだったぜ」
 そんな彼らを眺めながら黒百合が呟く。
「あはァ…何だかビールが飲みたいわねェ…」
 ちなみに彼女、脅威の回避力により前衛にして奇跡の無傷である。
「あたい、お腹空いた! 右の人達と一緒にお祝いしようよ!」
「いいですね、私もやりたいです!」
 チルルと渚が明るい陽差しのような笑顔を見せる。
 だって今日は、いつも以上に気分がいいのだから。

「こう言うのも…たまにはいいもんだな」
「ええ。何だか…とても大きなものを得た気がするわ」
 遼布がと夕姫が呟く隣で、暦がとろんとした目つきになっている。
「ほっとしたら…何だか眠くなってきました…」
 そんな睡眠大好き少女を見て、翠月が微笑む。
「僕も帰ったら…のんびりしたいですね」
 ふだんはぼんやりしている事が多い分、緊張しすぎたのだろう。
「あら、でもこれからみんなでお祝いでしょ?」
 冴弥がややいたずらっぽく応える。そんな彼女の表情は、いつになく晴れやかで。

「やべー…結構くらった」
 苦笑する愁也に、遙久が肩を貸す。
「ああ。でも、生きている」
「だな。それで、充分だ」
 そう言って笑い合う二人を見て、戒が呟く。
「ふ…私に肩を貸してくれるイケメンは…ごふうっ」
「戒姉! やったね!」
 駆け寄ってきたかわいい従妹が、タックル☆
 そんな四人を見て笑う千尋に、遙久が歩み寄り。
「藤咲さん、先程はありがとうございました」
「えっ…わたし何かしましたか?」
「愁也が深傷を負わなかったのは、藤咲さんのおかげですよ」
「そんな……」
「ありがとな」
 そう言って微笑む愁也と遙久を見て、千尋は思わず頭を下げる。
「こちらこそ…愁也さんには以前助けてもらったから…!!」
 あの悔しい思いをした日から、ずっとずっと、頑張ってきた。
 もう二度と、自分のせいで誰かが傷ついて欲しくなかったから。
 今度は自分が。

 二人の背を見送りながら、千尋は呟く。 
「ねえ、すわくん……わたし、みんなの役に立てたかな」
 あのお日様のような笑顔に、早く会いたい。
 今日のことを話したら、誉めてくれるだろうか。
 いつもみたいに、頭をなでてくれるだろうか。
 そんなことを考えていたら、ちょっとだけ心がゆるんで。
 ふいに涙が、こぼれ落ちた。


●宵闇の彼方

 仄暗い闇の中。
 レックスの背で眠っていたクラウンは、自分の名を呼ぶ声に目を覚ました。
「クラウン、クラウン」
「…どうしました、レックス」
「疲れているのに、起こしてすまないである。我輩、クラウンに聞きたいであるよー」
「おや、なんですか」
「我輩人間にいつも負けるのは、彼らが撃退士だからだと考えているであるよ。でもクラウンは違うであるな? 我輩ずっとそれが気になっているである」
「ああ」
 クラウンは、くすりと笑み。
「欲望に負けるのも人の意志であり、欲望を越えるのも人の意志だからですよ」
 そこに力の有無は、関係無いのだから。
 レックスは耳をぱたぱたと振った後。
「ふむん、クラウンの言うことはいつも難しいであるな」
 それを聞いた道化の悪魔は、何故か満足そうに微笑んだ。

「その答えは、いずれ示されるでしょう」

 決戦の時は、すぐそこに。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: サンドイッチ神・御堂・玲獅(ja0388)
 dear HERO・青空・アルベール(ja0732)
 あんまんマイスター・七種 戒(ja1267)
 JOKER of JOKER・加倉 一臣(ja5823)
 輝く未来を月夜は渡る・月居 愁也(ja6837)
 蒼閃霆公の魂を継ぎし者・夜来野 遥久(ja6843)
 真愛しきすべてをこの手に・小野友真(ja6901)
 輝く未来の訪れ願う・櫟 千尋(ja8564)
 迫撃の狙撃手・九条 朔(ja8694)
重体: −
面白かった!:47人

守護司る魂の解放者・
イアン・J・アルビス(ja0084)

大学部4年4組 男 ディバインナイト
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
サンドイッチ神・
御堂・玲獅(ja0388)

卒業 女 アストラルヴァンガード
赫華Noir・
黒百合(ja0422)

高等部3年21組 女 鬼道忍軍
修羅・
戸次 隆道(ja0550)

大学部9年274組 男 阿修羅
dear HERO・
青空・アルベール(ja0732)

大学部4年3組 男 インフィルトレイター
あんまんマイスター・
七種 戒(ja1267)

大学部3年1組 女 インフィルトレイター
撃退士・
風鳥 暦(ja1672)

大学部6年317組 女 阿修羅
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
輝く未来を月夜は渡る・
月居 愁也(ja6837)

卒業 男 阿修羅
蒼閃霆公の魂を継ぎし者・
夜来野 遥久(ja6843)

卒業 男 アストラルヴァンガード
真愛しきすべてをこの手に・
小野友真(ja6901)

卒業 男 インフィルトレイター
薄紅の記憶を胸に・
キサラ=リーヴァレスト(ja7204)

卒業 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
雨宮 祈羅(ja7600)

卒業 女 ダアト
STRAIGHT BULLET・
神埼 晶(ja8085)

卒業 女 インフィルトレイター
暁の先へ・
狗月 暁良(ja8545)

卒業 女 阿修羅
輝く未来の訪れ願う・
櫟 千尋(ja8564)

大学部4年228組 女 インフィルトレイター
迫撃の狙撃手・
九条 朔(ja8694)

大学部2年87組 女 インフィルトレイター
闇鍋に身を捧げし者・
ニオ・ハスラー(ja9093)

大学部1年74組 女 アストラルヴァンガード
夜を紡ぎし翠闇の魔人・
鑑夜 翠月(jb0681)

大学部3年267組 男 ナイトウォーカー
未到の結界士・
久遠寺 渚(jb0685)

卒業 女 陰陽師
凍魔竜公の寵を受けし者・
久遠 冴弥(jb0754)

大学部3年15組 女 バハムートテイマー
影に潜みて・
サガ=リーヴァレスト(jb0805)

卒業 男 ナイトウォーカー
Heavy armored Gunship・
月影 夕姫(jb1569)

卒業 女 ディバインナイト
闇を斬り裂く龍牙・
蒼桐 遼布(jb2501)

大学部5年230組 男 阿修羅