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マスター:日方架音
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:4人
リプレイ完成日時:2013/07/21


みんなの思い出



オープニング


「しゃ、人数揃ったった」
 慣れた手付きでメールを一斉送信。
 スマホの画面に写り込むのは、大人に成りきらない少年の、我欲を隠しもしない歪んだ瞳。

「あのジジイ、ぶっ潰す」



『チョウさんか、今年も鯵が出てきたからよ、送るぜ』
「それは有り難い。魚介は、玄の網が一番だ」

 世辞は止せやい、と豪快に笑う声が、受話器越しに空気を震わせる。
 その直前に受話器を耳から遠く離す、無意識下の行動。それが脊髄反射になる程度には、ミハイル・チョウ(jz0025)と電話の相手、玄蔵との付き合いは長い。
 だから、流れのままに口をついた問いかけにも、深い意味などはなかったのだが。

「ああ、魚介といえば…今年も海の家はやるのかね?」
『もちのろんよ、ってえちょうどいい、聞いてくれるか!』

 苛立たしげに跳ね上がった語尾に、ミハイルは受話器を諦めてスピーカーにした。
 普段ならば用件のみであっさり終わる友ではあるが――こうなると、長い。
 ついでに休憩にするかと机の書類を纏めて横に退け、家人が置いていってくれたお茶菓子を広げる。

『――戸を開けたら、制服着た餓鬼が昼間っから転がってやがってよ、そんで――』

 見た目も涼やかな水羊羹は、黒文字で一口大に。裏切らない上品な甘さが、舌を慰める。
 懇意の老舗から暖簾分けした弟子の、夏の新作だったか。

『――ちくと怒鳴ったら向かってきたもんで、張り飛ばして――』

 一口毎に甘味を流し込むのは、淹れたての加賀棒茶。
 店を変えたのか、舌慣れない味がするが、これはこれで悪くはない。

『――逃げしなに口ばっか吠えやがる、情けねえったらねえ』

 もぐ、と最後の一切れを飲み込み、余韻に浸る。
 折良く、玄蔵の話も一段落したようで。口を挟む機を逃さぬよう、ミハイルは言葉を紡ぐ。

「災難だったな」
『捻りもねえ、覚えとけだかぬかしよるで、おぉここで待っとっちゃるわ鼻垂れが!てえ喝入れたったわ』

 ガッハッハ、と再びの豪快な笑い声と共に、何かが引っくり返る音が聞こえる。
 狼狽する呻きは恐らく、あとで細君に知られた時の事を思ってだろう。

「それで、掃除はどうした」
『あ?だからよ、みっちり灸据えてたらァ日が暮れちまったでよ。来週に持ち越しだァな』

 還暦も近いはずであるのに、少しも変わらない童心に苦笑を浮かべながら。
 平素と変わらぬ雰囲気のまま、ミハイルは何の気なしに問いかける。

「ところで、学生の体験実習を受け入れる気は無いか?」

 ――今考えた方便だとは、欠片も匂わせぬ口調で。



「古い馴染みが、海の家を営んでいてね」

 依頼というよりは個人的な都合に近いか、と前置いて。
 斡旋所の窓際、初夏の眩しさに細めた眼差しのまま、ミハイルは集まった生徒達を向く。

「体験実習を申し出たら、快く引き受けてくれた」

 口の端に履くのは、いつもの笑み。細く細く、更に目を眇めて、告げる。

「なに、然程難しい事は無いだろう。まずはちょっとした――『掃除』から、だ」


リプレイ本文


 抜けるような空の蒼さと、寄せ返す海の碧。
 深く息を吸い込めば、肺一杯に満ちる、濃厚な潮の香り。

「海っていいですね〜!あ、終わったらみんなでバーベキューしませんか?」
 道具も食材もばっちりです!と笑う高瀬 颯真(ja6220)と。
「仕事後の飲料も持ってきてあるぞ、冷やして早速取り掛かるとしよう」
 何故か自信に満ち溢れた仁王立ちで、眼鏡を押し上げる雪風 時雨(jb1445)。
「ちゃっかりしよる坊主共が!」
 冷蔵庫入れといちゃらぁ、と豪快に笑う玄蔵の掌が、彼らの頭をくしゃくしゃに撫でた。

「さ、手を抜かず綺麗に片付けましょう」
 ビーチサンダルで降り立った砂浜を、白く照り付ける容赦の無い日差しに目を細めながら。
 牧野 穂鳥(ja2029)はサイドテールの首筋に、日焼け止めを重ねて塗った。

「気持ちよく過ごせる場所になるように――遺恨も、残らないように」


 昔ながらの葦簀張りの屋根が、陽を柔らかく受け止める。
「今回は体験学習なので、ご指導を頂けると嬉しいです」
「おう、自慢の我が子よ!とっくり世話してやってくんねえ」
 見上げるウィズレー・ブルー(jb2685)の微笑のその奥、蒼い瞳に輝く好奇心に。玄蔵は上機嫌で扉を開けた。
 座れる高さの床板の上に、簡素な木のテーブルが幾つか。奥に見えるのが調理場だろうか。

「子供の頃を思い出すなあ…」
 扉の向こうに広がる、亡き父母との想い出。胸に去来する、暖かさと幾許かの痛みを綯い交ぜにした想い。
 頭を一つ振って散らすと、星杜 焔(ja5378)は箒を手に取り、手順を反芻する。
「どこからやろうか〜」
「窓掃除には、新聞紙」
「ほんとだ〜綺麗になるね〜」
 きりりとした顔で窓の桟を見詰めるダッシュ・アナザー(jb3147)。
 隅々まで丁寧に黙々と拭いていく姿に感心しながら、役割分担、と焔は床を掃く。その上で。

「ここで人は遊んだり食事をしたりするのですね」
 舞う埃が、真っ白な翼に触れるのも厭わずに。
 人の身では届かぬ高所を丁寧に拭きながら、ウィズレーはしみじみと柱に手を這わす。
「最近のなまっちょろいモンと一緒にされちゃあ困るでよ、嬢ちゃん見えっか、そこが――」
「資料では見た事があります…これがそうなんですね」
 見るモノ全てが興味深い。そんな様子に、玄蔵の我が子自慢にもついつい熱が入り。
「老朽化してる場所…あったら、教えて」
 見上げるダッシュの声は、果たして届いているのやら。


「俺、こっち側のゴミを拾いますね〜」
「なら、私はあちら側を」
 ジリジリ灼けつく砂浜の上。開始地点の右と左、颯真と穂鳥はゴミ袋を片手に頷き合う。
「雪風さんは、どう――」
 されます?という語尾が、吸い込んだ空気とぶつかり、喉奥で爆ぜる。
 振り向いた穂鳥の目の前、海パン一丁で海と向き合う時雨。いつ着替えたんですか。
 唖然と見詰める他無い二人を置き去りに、時雨は天高く腕を掲げると。

「来い、雷!」

 振り下ろされた腕。同時に顕現せしは、その巨躯に古傷を刻むストレイシオン。
 ひらりと飛び乗り、ふと、時雨は顔だけを不思議そうに下へ向ける。
「む?我の事は気にしなくてもいいぞ」

 色んな意味で気になります。

 ド派手な水飛沫を上げ海中に突入していく一人と一匹。
 降りかかる余波が濡らした服が、夏の日差しで乾かされるだけの時間が過ぎ、漸く。

「…俺達も行きましょうか」
「…そうですね」

 形容し難い想いに蓋をして。二人はそれぞれの担当区域へと、足を進めたのだった。


「こちらです」
「了解だよ〜」
 ふわりと浮かぶウィズレーの指示に従い、焔は脚立を担いでうろうろと。
 バイト経験を遺憾無く発揮し、見事に修繕していく。
「散らかったものも…お片づけ、しないと」
 ダッシュも次の仕事を探すべく。巡らせた視線の先には、山と積まれたガラクタ達。
 空缶からおおきなおともだちが喜びそうなアレまで――海の家にそぐわない、おそらくコレが。
「餓鬼の置き土産よ、うざってえ」
 視線の先を合わせ、玄蔵は忌々し気に吐き捨てる。と同時に。

「すいません〜。大きなゴミがあるので、ちょっと手伝ってもらってもいいですか〜?」
 外から、颯真の間延びした声が、好戦的な色で響いた。


 にやにやと嗤いながら、得物をチラつかせる人影。その数、二桁は下らない。
「こんにちは…手伝いに、来てくれたの?」
 薄く笑みを浮かべ、ダッシュは相対する。己が至上の存在の言葉通り、まずは誠意を込めて。
「あ?何言ってんだてめえ」
「ッハ、ガキはすっこんでろよ!」
 ゲラゲラと嗤い声が上がる、その間隙を縫って、進み出るのは穂鳥。
「そう変わらないとお見受けしますが。それに、我々は撃退士です」
 勝算はおありですか?と静かに問いかける。一瞬の沈黙、が。
「冗談キツイっつの、女かなよっちいのばっかじゃねえかよ」
 上がるのは、先程よりも派手に響く哄笑。

「撃退士ったぁガキの遊びじゃね?」

「…あんにゃろ」
 奥歯を噛み締める音に、ウィズレーはすっと玄蔵の前に立つ。
「いけません」
「だがよ…!」
 大将は後方にどんと構えるべき、と事前に諭されていたものの。
 玄蔵は知っている、友の生き様を。撃退士が、どれだけ過酷な戦いをしているのか――それを。
「なんつった餓鬼共が…!」
 引き止める細腕を振り払おうとした、直前。

「…へえ?」
 ふわりと、風が若草に染まる。其処だけ春が舞い戻ったかのような。
 纏う優しい空気を斬り裂いて、颯真の片手には昏き大鎌。後ろ手にとどまるよう合図すると、数歩、前に出る。
「ならどうぞ、かかって来てもいいですよ〜?」
 武器は怖いが、所詮は子供一人。なのに不良達は動けない。背に走る、この言い知れない悪寒は。
「どうしたんですか、まさかビビっちゃったとか〜?」
 邪気の無い笑みが、軽視出来ない威圧感を以ってのしかかる。
「俺相手にビビっちゃうとか、かっこ悪いな〜。そんなんじゃ天魔がきたら一瞬で殺されちゃいますね〜」
 立ち止まる。片腕で、羽のように軽く大鎌を振り上げ。颯真は、微笑う。

「――こんなふうに?」

 疾走る残像と、砂浜に穿たれた一閃の傷跡。その深さは、そのまま、彼の怒りの現れ。
 自分より幼い撃退士さえ、戦場で命をかけて戦ってるのに。自分でさえ、力無いこの身を歯痒く感じているのに。
 こいつらは何を粋がって、何の権利があって――
 黙した笑顔のまま、憤りに僅か震える肩に、穂鳥の白い手が柔らかく添えられる。

「さあ、やる気がおありならお相手いたします」

 誰かの大切なモノ、真摯な想い。それを蔑ろにするのなら、情け容赦は無用、と。
 静謐な眼差しで不良達を見据え、蝋梅の黄色い花弁を開く。書に浮かぶは緋き種。
 高く、放り上げると。初夏の熱を取り込み芽吹き、蒼い空の苗床で、蔓を伸ばし絡み合う。
 それは、芸術的なまでに緻密な、炎の鞠籠。

「これから浜に見えるお客様方より一足早く、こんがりと仕上げて差し上げますよ」

 苛烈な静けさを失わぬまま、穂鳥は花弁ごと書を閉じる。
 振られた腕に合わせ、海上に踊る鞠遊び。碧き海の苗床目掛け、鞠籠は火種を撒き散らす。
 轟音を響かせ高く上がる水柱は、そのまま、高温の飛沫となりて海面を覆い隠し――

「ふははは、我の出番だな!」

 黒き鋼の体躯を持つ龍と、それに騎乗する海パン男を召喚した!


 愛龍の上、遥か高みから睥睨し。時雨は、我が意を得たりと言い放つ。
「ふん、さては玄蔵殿を殺害しこの砂浜に埋めるつもりであったな?我のお婆様がお爺様を埋めた様に!」

 いえ違います。

 満場一致の総ツッコミは、惜しいかな心の声であったためか、時雨には届かず。
 ポカンと口を開けたまま見詰める一同の前、口上は続く。

「役員会議を放置して新人のメイドさんと遊びに行ったのを、お婆様は気に喰わなかったらしい…」

 遠い目をして時雨が語り出す内容に、何故か震える玄蔵。似たような身に覚えがあるらしい。
 閑話休題。頭を振って回想を振り切ると、一人と一匹は睨みつける眼差しのまま、すうと息を吸い込み。

「汚名を返上するなら男らしく単騎で来ぬか、何なら我が相手だ!」

 打ち据える啖呵と高らかな咆哮が、不良達に叩き付けられた。


 数瞬とも長いともとれる間の後。
「…お、俺は降りっからな!」
「俺も!」
 凍り付いた空気を破り、耐えかねた幾人かが、踵を返して走り出す。
 この場合、逃げ出せるだけ根性があるとみるべきか、だが。

「目には目を…とも言ってた、から」
 走る彼らの後ろから、ねっとりと湿気を含んだ風に乗って、悪魔の囁き(注:文字通り)が追いかけて来る。
「ちょっとだけ…お仕置き、だね」
 次いで、どさりと何かが倒れる音と、断末魔の悲鳴と――減っていく、周囲の足音。
「そう…痛い方が、好み…なの?」
 クスクスと微笑う声から逃れるように、ただひたすらに足を前へ。

 あんなヤツらいるなんて聞いてねえ、だがそのうち帰るだろ、そしたらジジイだけだぜ覚えてやがれ。

 ――そう、思っていた時期もありました。
 堤防へと繋がる、解放への階。その手前に、ゆらり、と焔。

「お掃除大変なんだよ〜」

 柔らかな笑顔で、一歩。

「こういう大きなゴミとかあってね〜」

 片手には、人の頭サイズの、金属塊。

「沢山あるから…手伝って、くれるよね〜?」

 ゴスッ、ガスッ、メキョッ、グシャッ。

 すいません謝るので帰らせてください。目の前の微笑みを浮かべる青年に、そう言えたなら。
 涙目で首を上下に振りながら、彼らの心は一つになった。


 借りてきた猫のように大人しくなった不良達を前に。
「ゴミは幾らでもありますから」
 砂浜では、穂鳥がきびきびと指示を出しながらゴミを分別していく。

「玄蔵さん、この流木はどうしましょうか」
「そりゃ向こうだで、纏めといてくんな」

 判断のつかねる物は、玄蔵に指示を仰ぎ。

「あら、お手隙ですか?でしたら――」

 バギッ。

「――これ、運んで頂けます?」
「はいィイ!!」

 怠ける者には(凍て付く)笑顔で優しく(教育的)指導を施す。
 効果はてきめん、不良達は皆、背筋を伸ばしきびきび働いて。だが。

「もっと生ゴミを見るように冷たく!!」

 一部、別の方向に教育された者が見受けられたとか。


 一方の海の家。どこから取り出したか、大きなスケッチブックを掲げる時雨。

『兄弟姉妹は殺人犯の身内と学校で苛めからのリストカット
 父親は職場で敬遠されリストラ、母親はご近所から村八分
 ネットに自宅を晒され実家を頼るが門前払いで一家離散、公園で解散!』

「この転落人生がありえたかもしれん貴様達の未来だぞ!清掃の方がマシと思え、汚した分働いて貰おうか」
 キラリと眼鏡を光らせたところへ、つんつん、と。
「こうした方が…伝わる、よ?」
 どこから以下略新しいスケッチブックを差し出すダッシュ。
 そこには、やたら写実的な転落人生の絵が。いつ描いたんですか。
 兎にも角にも、それは妙なリアルさをもって不良達の精神に訴えかけ。其処彼処から啜り泣きが上がる。
「汚した場所は、綺麗に…だよ?」
 壁の落書きを擦らせながら、ダッシュと時雨はしたり顔で頷き合った。


 掃除も終わりに近付いた頃。
「もうちょっと右でお願いします〜」
 不良達とバーベキューセットを組み立てながら、颯真は額の汗を拭う。
 想定以上の人数だ、人手はあるが準備も容易では無い。それでも。

(一緒に掃除してバーベキューすれば、皆仲良くなれるよね〜)

 わだかまりを残したままじゃ、勿体無いから。
 想い出は出来るだけ、楽しくを沢山、皆で。

「楽しそうですね」
 一休憩、と棒キャンディーを差し出す颯真と、微妙な顔をする不良達。
 無邪気な子犬の瞳に見詰められては、些か分が悪いようだ。
 切り分けた食材を運びながら、じゃれ合う彼らを眺め、ウィズレーは蒼を和ませる。
 その背を追って、調理場から、美味しそうな匂いと焔の声が届いた。
「みんな、出来たよ〜」

 さあ、汗水垂らし働いた後は、美味しい物を食べましょう。


「鯵のなめろうだよ〜」
 今朝獲れたての新鮮な鯵が、焔の手により、様々な料理に様変わり。

「何だこれうめえええ!!」
「素材がいいからね〜」
「謙遜すんねえ、坊主の腕だでや!」

 照れ隠しか、バシンと焔の背を叩く玄蔵。そこは撃退士、よろける事もなかったが。
 微笑んだ貌のまま、戸惑いが僅か浮かび――次いで、微かな深みが加わる。自身も気付かない程の。
 更に張り切る焔に順調に餌付けされる不良達に、料理を運ぶウィズレーは悪戯っぽい笑みを浮かべ。
「バイトに来たらいかがでしょうか。素材は味わえますよ」
 ですよね?と玄蔵に首を傾げてみせる。
 レジャー道具を前に首を傾げていた時、あっさりと片付けてくれた彼らならば戦力としても十分であろう。
「おお、賄いで出しちゃるわ!」
 ドン、と胸を叩く玄蔵に、不良達から歓声が上がった。

「ところで召喚獣って、乗らないと操れないんです〜?」
 興味深げに鯵をやたらひっくり返す時雨の横で野菜を焼きながら、ふと颯真が疑問を投げかける。
 今後の参考に、と向けられる颯真の視線に、しかし時雨は首を振ると。
「いや、悪党どもを見下ろしながら成敗するのが格好良いからだ」
 何処か得意気に鯵をひっくり返し、玄蔵殿もどうであるか?と隣に誘いをかける。
「お、おう」
 何処と無くそわそわする玄蔵。幾人かの不良達も、何故かチラチラと視線を向けている。
「…幾つになっても、男は少年の心を失わないものだと聞いたことがありますが」
 あまり無茶はしてほしくないですね、と苦笑しながら飲物を配る穂鳥。
「元気なのは、良い事だけど…あまり、無茶したら…ダメだよ?」
 人の老いは早いのだから、と皿を差し出しながら諭すダッシュ。
 孫くらいの少女達に言われるのは弱いらしく、罰が悪そうな顔で視線を泳がせる玄蔵に。
(たぶん、年上だけど…ね)
 言わぬが花、とダッシュは薄く微笑んだ。


 色んな掃除を終え、帰路に着く時間。
 夕焼けが、空と大地と海を、一緒くたに紅く染め上げる。

「腐れ縁の友がいるんです」
 そう言って、ウィズレーはシャッターを切る。
 同じ夕陽に照らされているのに、全てが同じ紅では無く。さらに刻々と色を変える。
 この得も言われぬ風景を、感動を、彼の人とも分かち合えたなら。
「なら…一緒に、見るといい…よ」
 しめやかな空間を壊さぬよう、言葉が、密やかにダッシュの口から溢れる。
 手向けた先は、隣の仲間か、それとも己か。
 蒼穹と黒曜石、二対の視線の見守る中、夕陽が水平線に溶けていく。
 眼差しに乗せる色は違えど、無二の存在を慈しむ想いは、同じ。

 海の家の窓辺にて、夕陽に光る素朴な硝子の花瓶。
 周囲に組んだ流木のように、想い出も編んでいけたなら。
 今度は花を持ってこよう――叶うなら、大切な人と。
 己の作品に願を掛けると、焔はゆっくり堤防を上がっていった。


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: カワイイ・ボーイ・高瀬 颯真(ja6220)
重体: −
面白かった!:8人

喪色の沙羅双樹・
牧野 穂鳥(ja2029)

大学部4年145組 女 ダアト
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

卒業 男 ディバインナイト
カワイイ・ボーイ・
高瀬 颯真(ja6220)

大学部1年46組 男 ルインズブレイド
戦場を駆けし俊足の蒼竜・
雪風 時雨(jb1445)

大学部3年134組 男 バハムートテイマー
セーレの友だち・
ウィズレー・ブルー(jb2685)

大学部8年7組 女 アストラルヴァンガード
静かな働き者・
ダッシュ・アナザー(jb3147)

大学部2年270組 女 鬼道忍軍