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マスター:日方架音
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
参加人数:6人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/03/30


みんなの思い出



オープニング

 気管が、震える――肺の軋む、音がする。
 押し出される空気は、行き場を求め、幼き身を駆け巡り。
 頑なに閉ざす唇を、抉じ開けんと苛む。

 柔肌に吸い付くように上等な、薄絹のシーツ。
 頭まで潜り込み、抑えきれない空咳を幾度も、小さく吐く。
 こほ、こほ、と、鳴り止まぬ空気の振動。
 隣に響かぬよう、痩せた肢体を、さらに小さく丸めた。

 ふいに――こつ、こつ、と。控えめながらも、確りと耳に届く音。
 怖ず怖ずと覗かせた顔、滲む視界の向こう、揺れるカーテンの狭間に。
 満ちた月明りが優しく、窓辺に置かれた化身を、そっと照らしていた――



 お手数をおかけして申し訳ありません――柔らかな哀しみを孕んだ声で、女性は頭を下げた。
 淡雪色のまとめ髪を彩る、瑪瑙の簪が目を引く。
 手入れの行き届いた上品な留袖から、ふわり、焚き染められた香が薫った。

「花を一つ、採って頂きたいのです」

 張り替えたばかりの青々しさを魅せる畳の上、広げられた一枚の地図。
 年輪の刻まれた指先が、優雅な所作で滑る。示されたのは、連なる渓谷、とある山の中腹。

「此処に、木々に囲まれた、開けた場所があります。どのような巡り合わせかは存じませんが――」

 その場所でしか見ること能わぬ、満月の照らす間のみ、咲き誇る花があるのだとか。
 ただし、と、さらに指先は地図を滑る。麓までを細く繋ぐ、一筋の線を辿るように。
 其れは、登山道と呼ぶのも躊躇われる、獣道。二人並べれば、御の字であろう。
 追いかける複数の視線の先、ある一点で、指先が止まる。躊躇いがちに何度か、開いては閉ざされる唇。

「――先だって、記録的な豪雨が降った、と、聞き及んでおります」

 重々しい吐息ごと吐き出されたのは、覆し様の無い事実。泥濘んだ道は、どうにか乾いたものの。
 両側を切り立った崖に挟まれた一箇所、落石が、いまだ止まらないのだという。
 左右から間断なく零れ落ちる礫は、大小様々、短くは無い距離を埋めようとしている。
 この道が閉ざされてしまえばもう、彼の場所は、誰の手も届かぬ箱庭に。

「冥魔の手先も、幾体か見受けられたとか。なればいっそ、その方が宜しいのでしょう。
 けれど、叶いますならば――その前に」

 すっ、と正対する身体。真っ直ぐと、個々に交わされる視線。
 巡る時代を焼き付けてきた瞳が刹那、凪いだ眼差しに狂おしき激情を乗せる。

「今一度、この眼に、あの想い出の色を――どうか」

 麓で、お待ちしております、と。
 閉まる障子の、最後の一瞬まで。――深く揺れる瑪瑙が、終ぞ、上がることは無く。


リプレイ本文


 足早に、陽が沈んでいく。宵の明星の導きを受け、歩いて行く二つの影の、その両手にはビニール袋。
「この時間に開いているのかと思うたが…忙しない世になったものじゃ」
 何処か呆れた声音で、白蛇(jb0889)が息を吐くと。
「便利だよねぇ――あ、懐中電灯も買っておいたよ」
 念の為ね、と御伽 炯々(ja1693)が片手の袋を揺する。その行く道の少し先の角から、ふらりと現れる人影一つ。
「土壌はわかった」
 簡潔な一言は、誰かに向けたものではないのだろう。
 疑問顔に構う事無く、〆垣 侘助(ja4323)は迷いのない足取りで、集合場所へ歩いて行く。

「条件が揃わないと咲かない花か。何だか素敵だね」
 依頼人の逗留する宿の先、買い出し組に手を振りながら、桜木 真里(ja5827)が柔らかく微笑む隣で。
「うに!絶対にお花取って帰るんだよ!」
 拳を振り上げ、真野 縁(ja3294)が、決意に緑を瞬かせる。
 ――憂いに閉じる月下美人に、笑顔の花を咲かせられるよう。

 和気藹々とした情景から少し距離を取り、独り佇むイシュタル(jb2619)。
 冷めた眼差しは、興味無げに月を仰いで――その色に、ふと。
『お花を撮って欲しいんだよ…お願い』
 真摯に下げられた頭、流れる金糸の滝を思い返して。桃の瞳が刹那、戸惑いに揺れる。
「…全く…私も丸くなったものね…」
 白い指が、知らず、カメラを握り締めた。



 月明りも届かぬ、鬱蒼と茂る山道を駆け上る。
 ナイトビジョン越しの視界、先頭を走る炯々にとっては、昼間と同じことで。
「あそこ、頭上に注意だからね」
 行く先のポイントを、後ろのメンバーに告げていく。数メートル先、道に迫り出した大きな枝が懐中電灯に照らしだされた。
「あ、じゃあ散らしておこうか」
 復路を考え、提案する真里。そのまま手に魔法書を具現化させ、枝に視線を向けた――その眼前に、突き付けられるバトルシザーズ。
「何を…!」
「植物を傷付けるな。関係無いからと、手折られる謂れはないだろう」
 向けた抗議の眼差しは、引かぬ声音に断固とはね返される。侘助の静謐な瞳の奥、揺れる狂気じみた焔に気付きながらも。
「…僕等が逃げ遅れるだけ、もっと多くの植物が傷付いても?」
 真里は声を荒げるで無く、理性的に現実を返す。自分達が素早く引ければ、山鯨もむやみに荒らすことはないだろう、と。
 交差する黒と緑が、互いの想いを何よりも雄弁に語る。己の譲れない部分と相手の言の是を、刹那、探り合って。
「ん…一理ある、か。なら俺が剪定する、邪魔にならなければいいんだろう」
「その方がいいかな、お願いするね」
 手早く処置をする侘助に、柔らかく頭を下げる真里。想いは同じ、守りたいのは、この場所ごと。



 行く手から、月光が差し込む。鬱蒼とした木々の切れ目、その先が可視域に入る前に。
 カラリ、から、ドシン、まで。――間断無く耳に届く轟音が、落石地帯を告げる。
「結構埋まってるかも…足元、気を付けてね」
 油断ならない状況に、鋭い目付きをさらに細めて。はっきりと見えているのは己だけ――炯々は気を引き締める。
「かつては舗装されてなどなかった故、これが普通であったがの」
「先、行くわよ」
 懐かしげに、足裏の感触を確かめる白蛇。その横をするりと――文字通り、すり抜けていくイシュタル。降り注ぐ礫も、足元に転がる岩も物ともせず、蒼銀の残像だけを残し遠ざかっていく。
 

「邪魔なんだよ!」
 縁の霊符が岩を砕き、炯々の矢が礫を弾く。足元を注視しようとして、上から落ちる礫も気にしなくてはならない。
 自然、進むスピードは遅くなり――それは、遭遇率の上昇を意味していた。
「――右じゃ!」
 鋭い呼気が、清らかな白い靄を纏い吐き出される。ほぼ同時にブレる、白蛇の――千里眼の視界。仲間にぶつかる前に、と滑り込ませた小さな体躯は、間一髪で間に合ったようで。
 すり抜けて来た崖の向こう、行く手を阻まれるなど、思いもしなかったのだろう。共有した視覚越し、戸惑った様に蹈鞴を踏む山鯨の姿が見える。
「お出でなすったね…!」
 矢をつがえ、援護体勢を取る炯々。駆け寄ろうとする仲間達を、しかし挙げた片手で制すと。
「時が惜しい――わし独りで、充分じゃ」
 傍らに顕現する千里翔翼。僅か振り返った蛇の目が、尊大なる自信を以って嗤った。



 月下の静寂を、夜風が渡っていく。
「綺麗ね」
 飾り気の無い賛辞は、何よりも率直に感動を綴って。イシュタルは、カメラを草原に向ける。
 これは、頼まれていないけれど。――切り取られた情景を、あの人間は、どう思うだろうか。
「…本当に、丸く…」
 僅か、きつく瞳を閉じて。再び開いた時にはもう、変わらぬ静謐さが冷徹に周囲を見分する。時間が無い、花は何処。
 急くように彷徨う途中、地響きが、イシュタルの足を止める。鼻息荒く敵意を向ける山鯨、その後方、踏み散らされた花に眉を顰める。
「これだから天魔は嫌いなのよ」
 侵略し殺戮し蹂躙を繰り返す――それしか、存在価値が無いかのように。嫌悪も顕に睨みつけながらも、本来の目的が脳裏を掠める。
 相手取る時間は無い、だが無視するには、余りにも敵意が鋭い。覚悟を決め、二振りの燃え盛る炎を喚ぼうとした瞬間。

 空間を切り裂くように迸る電撃が、山鯨の四肢を絡めとり縛り付ける。
 はっと振り返るイシュタルに、柔らかな一瞥を寄越すと。真里は己に、一巡りだけ周囲を見回すことを許した。
 鬱蒼とした山道、砂埃立つ落石地帯を経て辿り着いた、月光色に染まる風景。
 例えもう誰も此処に辿り着けないとしても。これからもきっと、変わることは無いだろうから。
「――それ以上、荒らすのは止めてくれるかな」

 掲げる魔法書越し、強い意思を秘めた眼差しが、電撃以上の鋭さで山鯨に突き刺さる。



「うに!こっちなんだよ!」
 わざと声を上げ、縁はその存在を誇示する。花の無い場所へと、誘いながら。
 そのまま草蔓を淡く揺らめかせ――胸に抱くのは、出掛けに訪ねた依頼人の、想い。

『幼い時分は、身体が弱くて』

 草原の端、森との境目でくるりと振り返る。己が定めし領分を侵され、怒り心頭に唸る、二頭の山鯨。
 互いの瞳の奥、譲れないモノを賭けて、しばし睨み合う。

『毎晩の様に、発作で苦しみました』

 地と戯れる金の毛先を、夜がふいに、吹き散らす。張り詰めた均衡さえも、一息に霧散させて。
 鼻息も荒く走り来る一頭へ、細い腕を掲げると。舞い踊る金糸に紛れ、聖なる鎖が疾走る。

『皆、嫌な顔一つせず優しくて――だからこそ、申し訳無く』

 悲鳴を上げる猶予も無く、四肢を震わせ倒れ込む山鯨。
 その傍らを、頓着もせず避け来るもう一頭。上がるもう片方の腕、掌から翻る鈍い灰色。

『シーツを被り、息を殺し、早く、疾く、ただ朝が来るように、と』

 捉えた体躯は、その鋭さを以ってしても、容易く切り裂けはせず。――だが、それでいい。
 藻掻く程に食い込む絡め糸、抜け出すことは最早、出来はしないのだから。

『大嫌いだった独り寝の夜に、終わりの無い昏闇に――彩りを、くれたのです』

 行動不能に陥った目前の敵。油断はせぬまま、ひとつ息を吐き、満ちた月を仰ぐ。
 微笑みを形作りながらも、寂しさを拭えない表情が。此処に無い今も、縁をちくりと刺して苛む。

「おばーちゃん……」

 重なるのは、懐かしき愛しき過去の。だからお願い、どうぞ笑って――



 枝を接ぎ、華を慈しみ、葉を整えて――庭を、守り継ぐ。侘助の身の内に、連綿と流れる血脈。
 由緒正しき庭師の眼が、執着と言える程の情が、狂しき冷静さを以って草原を見分する。
 強い香り、白い花びら、上を向く蕾。持てる知識を総動員する視界に、敵影の入り込む余地は無く。
「ん…見つけた、これに間違いないだろう」
 草花を傷付けない無造作で、草原を彷徨い歩き。慕わしげに月を望む香り高い一輪へ、恭しい丁寧さで手を伸ばすと。
「この大きさなら運べるか」
 ガラス細工を扱うような――否、それ以上の繊細さで以って。根を周囲の土壌ごと、掘り起こす。

「そうやって掘るんだねぇ…なるほど、ためになった」
 感心した声音で、屈みこむ侘助の手元を覗き込む炯々。
 流れる作業を眺めながらも、意識は広く周囲に拡散させ、警戒を怠らない。
「綺麗なものは嫌いじゃないからねぇ…っと、出番かな」
 些事を片付ける気安さで数歩、花から距離を取る。向けた視線、つがえた矢の先、吠え猛る山鯨。
 突進する体躯目掛け、限界まで引き絞られた弓から、矢が鋭く飛んだ。

 派手に引き付ける炯々に紛れるように。曇り無き鏡の水面の如く、イシュタルが侘助の傍らに立つ。
「問題ないなら、貰うわよ」
 冷淡な物言いとは裏腹、受け取り抱える手付きは、まるで赤子を抱くよう。
 一目だけ振り返り、情景を眼裏に灼き付けると。イシュタルは今度こそ、脇目も振らずに走り去る。世界との境界を、曖昧にして。

 中天に座す月が、追い掛けるようにじわりと、降っていく。



「それが想い出の花かの」
 落石地帯の入口、己が翼たる司の影から、視線を向ける白蛇。翼の素早さに翻弄され、荒い息に疲労の色を混ぜる山鯨から、意識を離すことは無く。
「…通れるかしら?」
「無論じゃ」
 交わす言葉は最低限度、余分な装飾は必要無い。高く嘶くように大きく仰け反った翼が、振り下ろす前脚の勢いのままに周囲を薙ぎ払う。過たず吹き飛ばされ、叩き付けられる敵。通るスペースは充分に。
「行くわ」
 躊躇いもせず、降り頻る礫に身を投じるイシュタル。礫はこの身をすり抜け、敵の追撃は阻まれると、わかっているから。

 蒼銀揺らめく背を見送った数瞬後、駆け来たる複数の気配に再び振り返る。
「おぬしらも来たか」
「花は?」
 簡潔な、急いた問いに苦笑を零し。慈しむべき人の子へ、眼差しで答えを示す。落石の、その先に、と。
 流石に頷く勢いのまま、花を追い飛び込む訳にはいかず。タイミングを見極める一同、その背に、追い縋る幾つかの気配。
「ちぎぎ、しつこい敵なんだよ!」
「落石と重なるとやっかいだね」
 若干の焦りを滲ませ、各々の得物を掲げる。阻霊符が使えない今、落石地帯で側面から奇襲される危険性は、往路で嫌という程に。そしてそれは、単身先を行く、イシュタルにも同じ事。
 仲間の身と花の無事、迫る刻限――焦燥は、余裕を奪い、判断を鈍らせる。逡巡漂う空間に、楔を打ち込んだのは。
「冥魔の手先に邪魔立てはさせぬ…行くが良い」
 黒き穢れを纏いし体躯が、幼き見目に不釣り合いな傲岸不遜さで扇を翻す。千里翔ける翼の代わり、喚び出したのは堅牢強固なる白き壁。あちらとこちらを閉ざす、不可侵の盾。

 駆け去る仲間の背、己を越えられずば、追わせはしないと。蛇の目が不敵に睨み据えた。



 花を散らさぬ全速で、イシュタルは落石地帯を駆け抜ける。
 降り注ぐ礫も、石の転がる足場の悪さも関わりの無いこと。ただひとつ、気にするべきは。
「邪魔ね…」
 行く先に屯する、一頭の山鯨。未だ、こちらに気付いてはいないようだが、それも時間の問題であろう。
 花が無ければ押し通るのに。守るべきモノは、往々にして枷となる、けれど。
 それが無ければ私は、殺戮の天使のままだったのだろうか。――懐のカメラが、ふいに重みを増した気がした。

 その物思いの刹那に、俄に興奮する山鯨。フゴフゴと蠢く鼻は、此処に在る筈の無い香りを訝しく探しているようで。
 或る場所にしか咲かない花の、強く甘い香りは、つまり異質。ましてや嗅覚の強い相手には――気付かれるのも、道理。
「…ッ!」
 紙一重で、躱す。大切なモノを預かる身、戦闘だけは、避けなければならない。
 駆けて来た距離をじりじりと後退させられる。崖に沈みかけた一瞬の惑いを、詰められそうになる刹那。
「間に合った…!」
 異界から伸びる無数の腕が、山鯨を拘束する。
 既視感のままに振り返った先、魔法書を掲げる真里。その無防備な姿を、炯々の矢が礫から防いで。
 礫の洗礼も後少し、張り詰めた糸がほんの少し緩んだ。
「…危ない!」
 叫んだ声は、誰のモノ。一際大きな礫が、花目掛け落ちたとわかったのは、侘助の額から流れる血の故に。
「ん…花を失わせる訳にはいかないだろう」
 問題無い、と無造作に拭い身を起こす。我が身の痛みなんて瑣末なことより。
「鉢が割れた、処置が要るな」
 落石地帯を抜けるやいなや、応急手当を施す。天魔の透過は、己の所持品まで。当たっていれば、鉢ではすまなかっただろう。
 

 東に煌くは明けの明星。麓はもう、すぐ其処に――



 祈るような諦観を、閉じた瞳に仕舞いこんで。部屋に独り、静寂に揺蕩う。
 こほり、治ったはずの咳が、伸びた背を丸く縮こまらせた。――依頼の所為だろうか、こんなにも、過去を踏襲するのは。
 止まらない咳の僅かな切れ間、こつこつ、と窓が鳴る。滲む視界のその向こう、揺れるカーテンの狭間に。
「ただいま、なんだよー!」
 金糸を揺らめかせる月の化身。差し出す花に、驚いたはずみか咳は止んで。眦から頬を伝う雫――込み上げるままに、笑顔が咲いた。

「俺の私情だが」
 簡潔な前置きと共に、差し出されるメモの束。世話の仕方について、アドバイスがびっしりと。
 咲かずとも育つなら、いつかまた道が繋がった時、植え直すことも出来る。
「次も咲かせるために、元気でいてね!なんだよー!」
 いつまでも長生きして欲しい、全身で表す縁に譲り、口を閉ざす。伝えたいことは全て、メモの中に。
 何よりも優先すべきは花、ただ、それだけ。――己の抱く想いは、一種の不義であると、理解しているから。

「夜のお散歩もいいものだね」
 独り残った白蛇を、迎えに行った帰り道。
「御伽にも白蛇さんにも助けられたね」
「俺も色々、ためになったよ」
 記憶の褪せぬ内にと、繰り広げられる反省会が一段落した山の出口で。数歩先を行く白蛇が、ふいにくるりと振り返る。
「どうじゃ、呼び方をかえる気にはなったかの?…いや、今聞くのも無粋じゃ」
 虚を突かれた顔の二人に向け、静かに笑って首を振ると。
「また見える時を楽しみにしていよう」
 ――廻る人生は、合縁奇縁。

 暁闇が、東の空を染める。隠れ行く月を嘆くように、地を向き萎れる花。アドバイス通りに植え替えたものの、次に咲くかはわからない。
 折り合いを付けるのには、慣れていますから――淡く微笑む依頼人の、その笑顔に何故か苛立って。
「手、出して。…いいから」
 おずおずと差し出された掌に、押し付けるようにカメラを落とすと。興味を失った風情で、背を向け歩き出す。
 数歩離れた辺りで、有難うございます、と礼の言葉が追い掛ける。万感の想いが込められた泣きそうな声――振り返らずともわかる、簪の瑪瑙が、深く揺れたままであろうこと。
「…私じゃないわ」
 零れ落ちた呟きを、風が蒼銀ごと浚っていった。


 希望の朝は、すぐそこに。 


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: あなたの縁に歓びを・真野 縁(ja3294)
 庭師・〆垣 侘助(ja4323)
重体: −
面白かった!:7人

孤独のバンダナ隊長・
御伽 炯々(ja1693)

大学部4年239組 男 インフィルトレイター
あなたの縁に歓びを・
真野 縁(ja3294)

卒業 女 アストラルヴァンガード
庭師・
〆垣 侘助(ja4323)

大学部6年52組 男 阿修羅
真ごころを君に・
桜木 真里(ja5827)

卒業 男 ダアト
慈し見守る白き母・
白蛇(jb0889)

大学部7年6組 女 バハムートテイマー
誓いの槍・
イシュタル(jb2619)

大学部4年275組 女 陰陽師