.


マスター:日方架音
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/07/06


みんなの思い出



オープニング

 梅雨も終わりかけ、夏の暑さが見え隠れする昼下がり。
 久しぶりの乾いた風が、梢を揺らし芝生の上を駆け抜ける。

「……おせぇ」

 子供達の楽しげな声がそこかしこから響く中、シンボルの大きな噴水前で腕組みをする男が一人。
 片手でトントンと忙しなくリズムを刻み、彷徨う視線で待ち人を探す。

 男の正体は、CM専門の監督。本日この公園で、市が進める街起こし計画の一環である、『緑と暮らす街PR』のCMを撮影する予定なのだが。肝心の、『緑あふれる多目的公園で楽しそうに過ごす家族』役で出演する役者達が、誰一人として来ないのだ。

「監督ぅうう!!!」
「どうした!連絡はついたのか!?」

 イライラのあまり何度か胸元の煙草に向かう手を押さえ付ける(全区域禁煙です)男の元に、スタッフが叫びながら転がり込んだ。

「それっ、が……その……」

 何とか息を整え、男の顔色を伺いながら口を開く。予定が大幅にオーバーしてイライラする気持ちはわかるが、八つ当たりは勘弁してほしい。

「役者をお願いしていた事務所が……食中毒で全滅だそうです!」
「はぁぁぁぁ!?」

 事務所の打ち上げで貸切にした居酒屋で、まさかの大当たりを引いたらしい。
 どうしようもない理由に男は頭を抱える。他所から代役を借りようにも、集めている間に残り少ない撮影時間が終わってしまう。市からの依頼のくせに、ここの撮影許可をとるのは物凄く骨が折れるのだ。
 血走った目で髪をかきむしる男に、スタッフはそーっと霊圧を消して後退り――

「そうだっ!!」
「ひぇえすんませんっ!!」
「何がだバカヤロウ!いいからさっさと皆を集めてこい!」

 飛び上がって残りのスタッフを呼びに行くノロマな姿に、フンッと鼻息荒く舌打ち。

「監督、全員揃いましたっ!」

 ほどなく、ビシッと整列したスタッフ全員。睨み付けるように前に立つと、男は高らかに宣言した。

「いいかてめぇら、今から公園中駆けずり回って、暇そうなヤツをかき集めて来い!」
「えっ?」
「うるせぇ時間がねえんだよ!最低でも父・母・子供だ。……なに、その通りのヤツを連れてくる必要はねえ、いましメイクでなんとでも誤魔化せんだからよ」

 顔を見合わせるスタッフ達。ザワザワと狼狽える彼らに、男はただでさえ磨り減っていた忍耐が粉々になるのを感じた。

「うるっせえええ!!いいから言う通りにしやがれ!!!」
「「「「「はいぃぃぃ!!!!」」」」」

 こうして、血相を変えたスタッフ達は公園中を駆けずり回るはめになったのであった。


リプレイ本文


 ある晴れた日の市民公園。の、片隅に。なるべく景観を損ねぬようたてられたテントを、幾人かが囲む。

「おや、きらら様も来てたんですね」
「エイルズは何してたですし?」

 休日を鬼気迫るスタッフにらt…依頼された者同士。首をかしげる鏡国川 煌爛々(jz0265)に、エイルズレトラ マステリオ(ja2224)は暫し考え、手招き。

「ふお!?」
「この良き日に」

 流れ落ちる金髪に手を伸ばし、耳をなぞるように朝露の薔薇を咲かせる。
 手品の練習に、と一礼するエイルズの後ろでテントが震え。

「母親役は私が一番適任ね。この私に任せなさい!」

 仁王立ちのアルベルト・レベッカ・ベッカー(jb9518)。だが確かに言うだけのことはある美女っぷり。

「僕知ってるよー、美魔女っていうんだよねー?」

 手を叩いて感心するフェイン・ティアラ(jb3994)の横で、末妹役のオブリオ・M・ファンタズマ(jb7188)は空を見上げる。

(母親…えっと、家族、なのです?)

 記憶も無く暖かな触れ合いにもあまり縁が無かったオブリオ。いきなり家族を演じろと言われてもよくわからないので、空をキャンバスにイメトレに勤しむ。

「僕達もメイクすればよかったねーヤンファ…あれー?」

 隣にいたはずの妹が、いつの間にかいない。キョロキョロと探すフェインを嘲笑うかのように、テントは再び震え。

「普段通り過ぎては面白く無いのですっ!」
「ヤンファ…?」

 仁王立ちの小悪魔系美少年に、ぽかーんとするフェイン。人生には常にスパイス的攻撃力が必要らしいです。フリーズする兄を余所に、ヤンファ・ティアラ(jb5831)は煌爛々にかけよると。

「どちらが兄をやるべきか!煌爛々様、判定おねがいしますのですっ!」

 ドゥラララ、とドラムロールの幻聴が響く中。目を閉じ腕組みした煌爛々はカッと目を見開き。

「何か面白いからヤンファですし!」

 わーぱちぱち。何だかよくわからない盛り上がりの隅で、テントが今度は控えめに震えて。

「何で俺が……」
「おぉぉ、恭弥じゃないみたいー」

 再起動したフェインの感嘆に、眉根を寄せる影野 恭弥(ja0018)。いつもより三割増しのシワが、落ち着いた深みを表情に刻む。

「うぷぷ、ちょ、ちょー似合ってるですしおと「演技とは言え家族なんだから間違ってもおとーとなんて呼ばないように」

 じろりと睨む父親の注意で、さあ、CM撮影の始まりです。




(家族、かぞくかぞく…えーっと)

 イメトレは上手く形にならないまま、噴水に向かう一同についていくオブリオ。当然だ、知らないモノは描きようが無い。
 ふと、周りを見渡す。小さな女の子が、両手をいっぱいに広げて――

(なるほどなのです)

 視線を戻す。揺れる金糸の髪の、先っちょを少し引っ張って。

「おねーちゃんにむぎゅー!なのです♪」

 振り向いた煌爛々に、抱き付いてみた。途端、絡み付いてくる金糸の手触り。

(あっ、結構髪のさわりごこちがいいのです)

 ふさふさ「ふおお!?」

(僕も髪の手入れは頑張っているのですが、キララのこれは自然体なのに落ち着いてる感じがするのです…)

 わしわし「ひええ!?」

 思い掛けない手触りを、無心で堪能する。遠くの方で何か聞こえる気がするけど、きっと気のせいだろう。

(…あっ、やりすぎたのです)

 何故かぐったりしている煌爛々の、雀の巣になった頭を見て目を彷徨わせるオブリオ。

「あらあら、大変ね」

 やんちゃな末娘に、レベッカは声を上げて笑う。取り出した櫛で傷めないようにそっと髪を梳る姿は、堂に入ったもの。

「はい、お揃いよ。ほら」
「わぁ…」

 金と銀の髪がシンメトリーに編み込まれ、空色のリボンが毛先を飾る。手渡された手鏡に、言葉もなく見入るオブリオ。違和感ばかりだけど、ほんの少しくすぐったい。

「ありがとですしれべ…おおおかあさんん?」

 こちらも満更でもなさそうな煌爛々は、しかし役柄を思い出し途端に顔が引きつる。

「ほら、何処へ行きたい?」
「えええと」

 父親スマイルの恭弥の問いも、認識できているかどうか。

「(仕方無いですね)あっおねえちゃん、あっち!」
「うええ!?」

 片腕を強く引く力に、身体は自然と着いて行く。常の飄々とした振る舞いからは想像もつかない笑顔で、エイルズは煌爛々を噴水前へと誘う。

「ふおおアレどーなってるですし!?」

 大道芸人が思い思いに練習する風景に、演技も忘れはしゃぐ煌爛々。

「ぼくもできるんだからね!」

 大好きな姉の視線を取り戻したかったのか、エイルズは少しヤキモチ焼きな強さで叫ぶと。

「ふわあ…」

 カラーボールが、三色、五色、虹色へと。手の上で増え踊る。

「おねえちゃん、はい」
「うええ!?」

 口を半開きにして見とれる煌爛々にくすりと笑って、まずは一つ、ボールを投げる。

「こっちに投げてよ、大丈夫、ちゃんと受け取るから。ほら、次いくよ!」
「わわっ!?」

 テンポよく飛んでくるボールを必死に返す煌爛々。こぼれ球は、いつの間にか召喚獣がアシストして。
 どうやらカメラのことは忘れられたようです。

「まぁ、すごいわねあなた」
「そうだな…(おいもうちょっと離れろ)」
「煌爛々ちゃんも上手ね(い☆や☆よ)」

 仲良く腕を組む夫婦が脇腹の抓り合いをする後ろで、スタッフが召喚獣にバツのついたプラカードを必死に掲げる。
 折よく横道から現れた兄弟に、カメラはズームアップ。

「ここがー、公園の中央なんだよねー。大きい噴水が目玉で、だいどぅ…大道芸人さんもいっぱいいるんだよねー」
「色んな家族が遊びに来ていますね。あぁ、大道芸人さんの技が凄いですよ」

 煌爛々に劣らぬ緊張ぶりのフェインの手を引き、ヤンファは堂々とエイルズの元へ。

「いつもここで練習されてるんですか?」
「そうだよ、ここは広くて練習しやすいからね」
「まさに芸は一日にしてならずですね」

 感心した風に頷くヤンファに、フェインはぽかーんとせざるをえない。

「えっと…ヤンファ…?」
「どうしましたか、フェイン様。大人なヤンファを見直しましたか?」

 ドヤ顔ならぬドヤオーラを纏うヤンファ。けれど、澄まし顔もどうやらここまで。

「あそこのオープンカフェからいいにおいがするのです、おねーちゃん一緒にピッツァを食べに行くのです!」
「よしきたですし!」

 一陣の風が、咲き誇る薔薇の香りと共に芳ばしい匂いも運んで。煌爛々の手をひっつかむと、オブリオは匂いの元へと一直線に駆け出す。

「ほんとなのですよっ、あっちの方から美味しそうな匂いがしますのですっ!ほら、おにいちゃんじゃなかったフェイン様行きますですよっ」
「ヤンファまってよー!…よかったー、いつものヤンファなんだよー…」

 兄の仮面をかなぐり捨ててダッシュするヤンファを追いかけながら、フェインはほっと一息。


 薔薇の小道を抜けた先、お洒落なカフェが空腹を擽る。

「ちゃんと窯焼きピッツァなのです、これはたのしみなのです」
「釜焼きピザですし?」
「釜焼きピ・ッ・ツ・ァ、なのです!そもそもピッツァとは(以下略)」

 並々ならぬ愛着は、発音さえ許せぬほど。そのまま煌爛々にピザの素晴らしさを語るオブリオに、エイルズはムッとして。

「おねーちゃん、あっちに綺麗なお花が咲いてたよ!」

 ぐいっ

「ちょっとー、お姉ちゃんは僕と一緒にカフェでピッツァを食べるのです!」

 ぐいぐいっ

「えっえっ」

 右手にエイルズ、左手にオブリオ。真っ赤な顔で引っ張り合う二人に、煌爛々はどうしてよいかわからない。あと割りと痛いので、必死に踏ん張っていると。

「コラ」
「いたっ!」
「いたいのです!」

 エイルズにゴツン、オブリオにコツンと。恭弥パパから拳骨がおとされる。思わず手を離して踞る二人。

「ふおおっ、と?」
「ふふ、二人ともお姉ちゃんが大好きね」

 たたらを踏む煌爛々は、レベッカママが優しく抱き止めて。

「私も大好きよ…あら?」

 特殊メイクは顔だけではありません。ぎゅーっと押し付けられるたわわな果実に、白目を向いてぶっ倒れる煌爛々でした。




「ちょうどいい、そろそろ昼飯にするぞ」

 包んで貰ったピザを片手に、芝生の広場へ。恭弥が抜かりなく用意していた昼飯が、ブルーシートの上に広げられた。

「ぼくこれー!」
「僕もなのです!」
「ジャンケンですし!!」

 好物を取り合う子供達を横目に、恭弥はのんびり腰をおろし。

「母さん、お茶をくれないか」
「はい、あなた」
「これは…(おいこれはやりすぎだろ!)」
「オホホ、カフェに売ってたのよ(面白…ラブラブっぽいでしょ☆)」

 中央でハートを形作る、いわゆるラブラブストローで差し出されたお茶。恭弥は笑顔で受けとると、カメラの死角で握り潰してそっぽを向いて。

「…キララ、ご飯粒付いてるぞ」
「むぐぐ?」

 そこには、おにぎりをむさぼる煌爛々。の、頬についた米粒に微笑み、そっと手を伸ばし拭いとる。

「学校は面白いか?」
「ともだちいっぱいできたですし!」
「そうか、それは何よりだ」

 嬉しそうに話す煌爛々に、手はそのまま頭へと。金糸を鋤き、目を細めて相槌を打つ。
 ――使徒になる前、煌爛々にも家族がいたのだろうか。そんなこと、聞けるはずもない。だから嘘でも今だけは、父親代わりに。


「むむ、そっちもおいしそーですし、オブリオはんぶんこするですし!」

 好きなピザを選んだけれど、他の人のも美味しく見えるものです。良い案だと己のピザを差し出す煌爛々に、オブリオは一瞬戸惑って。

「はんぶんこ…?別に、構わないのです」
「ぼくのもあげるよおねーちゃん!」
「やったですし!さんぶんこ!」

 エイルズのピザにかぶりつく煌爛々を、ぼんやりと眺める。わけあいっこ。量は変わらないはずなのに、心は何倍も暖かい、ような。

(これが家族の触れ合い、なのです?)

 だとしたら、ちょっといいものなのかもしれない。




 食後はしっかり運動しましょう。

「おねーちゃん、いくよー!」
「こいですし!」

 何故か複数浮かぶフリスビーが、ほぼ同時に煌爛々に射出される。

「個性的な投げ方だな…?」
「ピッツァ生地と同じなのです!」

 真ん中に人差し指を立てて器用に飛ばすオブリオを、恭弥が呆れた瞳で見る。


 少し離れた小高い丘の東屋で。

「少し休憩しましょうなのですよっ公園が一望だし風が気持ちいいのですっ」
「あー、煌爛々たちが見えるよー!」

 ちょっと行儀悪いけど、窓枠の上に並んで座って。仲良し家族の様子がよく見える。

「おかーさんとおとーさん元気かなぁー…」

 楽しそうに遊ぶ姿に、フェインのホームシックの虫が騒ぐ。でも。

(お兄ちゃんだし、ヤンファに心配かけちゃいけないよね)

 妹の手をぎゅっと握り、寂しさを紛らわす。
 落ち込んでても仕方無い、土産話をたくさん集めるんだ――と、ふいに強く握り返される手。

「おにーちゃん、いつも有難うなのですよっ」

 前を見たまま、ヤンファは手に力を込める。堕天した世界には、楽しい事もつらい事もあって。でもどんな時も、兄として守ってくれていた。だから、今日くらいは。

「たまには、おにいちゃんがヤンファに甘えて欲しいのです」

 寂しさも、二人なら半分こ出来るから。

「ヤンファ…ってうしろーっ!」

 言葉にひたる暇もなく。妹を押しのけ、飛んでくるフリスビーを慌ててキャッチ。

「どうしたのですってあぶないのですおにいちゃんっ!」
「うわわーっ!?」

 どしーーん!

 ナイスキャッチに安堵したのも束の間、フリスビーを追いかけてきた煌爛々が、止まりきれずに二人を巻き込んでダイブ。

「あらあら煌爛々ちゃんったら」

 追いかけてきたレベッカは、口元に手をあて首を傾げると。目を回す煌爛々に優しく膝枕して、兄妹を、強く繋がれた手を見る。

「仲が良いのね?」
「ともだちぃーですしぃーむにゃむにゃ」

 繋がるようでそうでもない煌爛々の寝言に、柔らかな眼差しで髪を撫でると。

「煌爛々ちゃんが起きたら、一緒に遊びましょう?」

 笑顔で頷いたのは、兄妹同時に。
 それから、楽しそうな笑い声が日が暮れるまで響いていた。



「今日はありがとうございました!」

 スタッフの誘導で順番にメイクを落とす中、その必要が無いオブリオはふと、傍らの煌爛々を見上げる。
 彼女にも、きっと家族がいた。理不尽に離されたそれを、どう思っているのだろう。

「そういえば、キララには家族がいたのです…?」

 気が付けば言葉が口をついていた。もう、取り消せない。向けられる視線を、真っ向から受け止める。

「家族、ですし?」

 耳に届いた言葉を、煌爛々はゆっくりと咀嚼する。思い出すのは、薄汚れた白い壁と、古着を着た幼子達。孤児院の、記憶。

「いない、のか…?」

 きょとんとした様子に、まさか、と恭弥が問う。煌爛々は何でもないことのように、こくりと頷いて。

「そんなのいな――」

 刹那、視界を覆った薄暗い紫色が、言葉を断ち切る。丸まった背中、ブツブツと呟く陰気臭い声。
 存在さえ知らなかった奥底の箱が震える。蓋が、開く――?

「おい!」
「……え?」

肩を強く掴まれる感触に、煌爛々は目を瞬く。

「どーしたですしおとーと?あ、終わったみたいですし、いくですし!」

 手を振るヤンファに向け、駆け去る後ろ姿。抜け落ちた表情は、一瞬の気のせい…?
 擦り抜けたナニカを、掌ごと握り締める恭弥。その横で、オブリオは瞳を揺らす。微かに動いた煌爛々の唇は、こう呟いていなかったか。

『…ッチーノ…』

知らず引き上げられたケープマントの襟から、結んだままのリボンが零れ落ちた。



「メイクすごいですし、ヤンファ、フェインとそっくりでしたし!」
「ふっふっふ、おにいちゃんとはアピールポイントが違うのですよっ!」

 すっかり元通りのヤンファの頬を、煌爛々はしげしげとつつく。

「何のアピールなのかなー…?」
「私は何でしょうね」

 終わったと見て近付いて来た二人の声に、煌爛々は弾かれたように顔を上げ。

「あっエイルズー!さっきのまたやるですし!!」
「おや、お気に召しましたか」

 どうやら一緒にやったジャグリングが気に入った様子。次回の約束を取り付けるのを、フェインは微笑ましげに見ながら。

「ヤンファ」

 呼ぶ声に見上げる妹へ、とびきりの笑顔を贈る。一生懸命に自分のことを考えてくれた、感謝を。

「…今日はありがと、なんだよー!」


「きーららちゃんっ」
「うひょえ!?…レベッカ!!」

 後ろからの目隠し攻撃。振り向きざまに飛んでくる手刀を、レベッカははっしと受け止めて。

「今日の家族ごっこは楽しかったわね。けど」

 くるりん。恭しく掲げる。咄嗟に引かれる手を、だが逃しはしない。

「……私はこっちの方が、ね」

 吐息が届きそうな距離。熱を含んだ視線が貫く――前に。閉じられた片目蓋が、全てを覆い隠す。
 一瞬の出来事に、煌爛々には違和感がわからない。けれど。

「むぉおおお!!!」

 腕をぶん回して取り戻す。だがすでに伝わった熱は、頬を赤く染め。
 沈んだ箱を、更に奥底へと――


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:4人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
奇術士・
エイルズレトラ マステリオ(ja2224)

卒業 男 鬼道忍軍
桜花の護り・
フェイン・ティアラ(jb3994)

卒業 男 バハムートテイマー
撃退士・
ヤンファ・ティアラ(jb5831)

中等部3年10組 女 陰陽師
アツアツピッツァで笑顔を・
オブリオ・M・ファンタズマ(jb7188)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプB
風を呼びし狙撃手・
アルベルト・レベッカ・ベッカー(jb9518)

大学部6年7組 男 インフィルトレイター