.


マスター:さとう綾子
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:25人
サポート:5人
リプレイ完成日時:2013/05/07


みんなの思い出



オープニング


 冥魔の侵攻も気になる。
 でもやっぱり、世間はゴールデンウィーク。
 授業も休みとなったら遊んだり、デートしたりしたいわけで!
 そんな中、九州にあるとある遊園地が日頃のお礼をしたいと久遠ヶ原学園の生徒を無料で招待してくれることになった。
 定番のジェットコースターやお化け屋敷、プラネタリウム、観覧車などなど、およそ遊園地にあるだろうアトラクションは網羅している大きな遊園地だ。
 仲間でわいわいと遊ぶもよし、カップルでらぶらぶしながら遊ぶもよし。
 少しだけ、羽根を伸ばして遊んでみませんか?

 ジェットコースターは回転が売りのものと垂直落下が売りのもの、暗闇を疾走するものの三種類。
 お化け屋敷はいわゆるウォークスルータイプ。歩いていると次々怖いものが出てくるタイプだ。
 プラネタリウムはお馴染みのプラネタリウム。今は春の星についてのプログラムが上映中だ。
 観覧車は夜になるとライトアップ。1ゴンドラ4人乗りだが、勿論それ以下でも大丈夫。

 さあ、あの人を誘って、一時の夢の世界へ行こう!


リプレイ本文


(遊園地は久しぶり……)
 橋場 アトリアーナ(ja1403)はいつもの儀礼服を着用し思う。違うのはアイパッチをしていないことだ。
「……キョーヤ、遊園地でしか食べられない甘い物があるって聞いたの」
 私服姿の影野 恭弥(ja0018)をアトリアーナは寡黙ながらもぐいぐい引っ張っていく。
「スイーツか。んじゃまあとりあえずそこから行くか」
 恭弥とアトリアーナは甘味仲間の一面を持っている。もちろん、それ以前に同じチームの信頼できる仲間同士ということもあるが……。
 アトリアーナは寡黙に恭弥を引っ張って、二人で次々に甘味を食べていく。
「遊園地か……オリエンテーリングぶりだな」
 癸乃 紫翠(ja3832)はしみじみと呟く。妻であり、その際に迷子放送をされたという過去を持つミシェル・G・癸乃(ja0205)は隣ではしゃいでいた。
「遊園地はいつきてもワクワク楽しいのだし♪ ……迷子にはもうならないよ!」
(あの時は保護者だったんだよな)
「縁っていうのは分からないもんだ」
「ん?」
 きょとんと紫翠を見るミシェルの頭を「なんでもないよ」と撫でて「何に乗りたい?」と尋ねると。
「紫翠は?」
「一緒の時間を楽しみに来てるから、俺は何のアトラクションでも構わないんだ」
「じゃあ、ジェットコースター!」
 急降下のジェットコースターを両手を上げて乗る上級者、ミシェル。
「こうやってデートしてると、夫婦とかちょっとピンとこないかなぁ。変な感じっ」
 様々なアトラクションに紫翠の手を引きながら乗りつつも、学生のせいか『妻』という感覚が未だ追いついていない。
 ミシェルのそんな無邪気にはしゃぐ姿に紫翠は保護者に戻った気分を感じる。
(こういうところは変わらないな)
「遊園地やー♪ 楽しみやねぇっ」
 朝一番の観覧車に乗って亀山 淳紅(ja2261)は対面に座っているRehni Nam(ja5283)に笑いかけた。
(隣に座るのは恥ずかしいから……)
 Rehniが対面に座っているのはそんな理由。
 けれども、観覧車で今日の予定を話し合っているうちに近づく顔。
「隣、おいでや」
「う、うん……」
 Rehniが立ち上がり、淳紅の隣へと行こうとするとグラリと揺れるゴンドラ。
「きゃっ!?」
「わっ……とと!?」
 つんのめるようになったRehniを淳紅はしっかり受け止める。
 そのまま無事に座れば肩と肩が触れ合う。
(はうぅ)
 Rehniの顔は真っ赤になってしまう。
 それでも、Rehniはそっと淳紅に寄り添って、手を繋いで。
「ふふー、……さ、今日一日楽しんでいきまっしょい!やでっ」
 淳紅もその手を握りしめ、二人は観覧車を飛び出した。
「どうか俺にエスコートさせてね、お姫様」
 少し照れながら、胸に手を当てて桜木 真里(ja5827)がお辞儀をすれば、
「勿論。楽しませてね、王子様?」
 真里の照れ顔が可愛くて楽しげに茶化しながら手を差し出すのは嵯峨野 楓(ja8257)。
 その小さく柔らかい手を真里は大切に取る。
(楽しい一日になりますように)
「それでどこに連れて行ってくれるのかな、王子様?」
 手を繋いで、茶目っ気たっぷりに楓は問う。
(今日は真里に全部お任せ。どこ案内してくれるかな。一緒なら何処でも楽しいんだけど)
 真里は微笑んだ。
「まずはプラネタリウムなんてどうかな。遊園地にプラネタリウムは珍しいなと思って」
(楓が苦手な絶叫系とお化け屋敷はパスすると……)
 真里の小さな思いやりに楓はぱっと笑顔になった。
「プラネタリウムなんて久しぶりー!」
 上映プログラムは春の星について。
 プラネタリウムで並んで座れば、じきに夜の星の世界になる。
 真里は楓の様子が気になり少しだけ楓を見るが、夜空を見上げる楓の表情に見入ってしまう。
(春の星ってなんだっけ)
 そう思い、ちらっと楓は隣の真里を見る。
 目が合う。
 微笑む真里と少しだけ照れる楓。
 プラネタリウムを楽しむのは人間ばかりではない。
 颯(jb2675)と鴉女 絢(jb2708)の二人の悪魔も人の作った星空を真っ先に見に来ていた。
「人が星に物語を描いていくというのに、興味があって……」
 颯が言うと、うん、と絢は頷く。
(星の物語とか難しい事は分からないけど颯君が楽しそうなので満足)
 しばらくプラネタリウムのアナウンスを聞いていた二人だが、次第にあることに気づいた。
(……近い)
(ちょっと席近いね……)
 それぞれが同じことで内心慌てる。
 特に絢は見た目が同じ位の男の人とここまで近づくのは初めてだ。嬉しかったりちょっと怖かったりして動揺も激しい。
 結局、二人は席の近さばかり気にして、プラネタリウムを後にした。
「颯君、楽しかった?」
「……う、うん」
 どことなく気まずい颯。絢もつられそうになるが、笑顔を作ったのは英断だろう。
「じゃあ、次、どこへ行こうか」
 その後のアトラクションでは、颯も絢も気まずさが嘘のようにはしゃいだ。
「ぷらねたりうむ……」
 エルレーン・バルハザード(ja0889)は「春の星」という宣伝にひかれてふらふらとプラネタリウムの中へと入っていった。
 照明が落ちると広がるのは一面の春の夜空。
「……」
 その夜空を、繰り返し、繰り返し、エルレーンは眺める。
「……」
 夜空を見上げていると、彼女は思い出すのだ。
 自分を助けてくれた女戦士のことを。
 ――あれが、デネボラ。あれが、スピカ。あれがアークトゥルス。
 指差し星を教えてくれた、一緒に見上げた星空のことを。
 ……出会った季節は春だった。
 けれども、彼女はもういない。
(私を天魔からかばって、死んでしまったから)
 彼女の笑顔を思い出す。
「……っく……」
 ぽろぽろと、真っ暗な世界の中、エルレーンは涙を流す。
 誰もが笑顔の遊園地で。
 そうしてエルレーンはまた繰り返し、春の夜空を眺める。
 自分の中の記憶を、掘り起こすように。


 鳳 蒼姫(ja3762)と鳳 静矢(ja3856)の夫妻は手作りのサンドイッチと紅茶を水筒に入れて遊ぶ気まんまんでやってきた。
「あれ乗る! あれ乗る!」
 早速蒼姫が選んだのは回転が売りのジェットコースター。静矢の手を引いて走りだす勢いだ。
 二人でシートに座って安全バーをしっかり固定して。
 出発すると勢いをつけて一回転、ついでにもう一回転!
「わああああい、くるくる廻るなのですよぅ。静矢さん、ほらほらなの〜☆」
「蒼姫、あんまりはしゃぐと後が……」
 静矢の悪い予感は的中した。
 降りると回転に蒼姫が酔ってしまっていたのだ。
「おえー、おえーなの、静矢さん、おえーなのー」
「言わんこっちゃ無い……」
 蒼姫の背をさすりながら、静矢は苦笑する。
「ちょっと待ってろ」
 蒼姫をベンチで安静にさせると、静矢は売店へと向かう。
 飲み物とアイスを購入して、ふと、ペアのブレスレットを売っているのを見つけた。色は青と紫だ。
「これは良いな……」
 手早くそれも買い足すと静矢はブレスレットはポケットに入れ、蒼姫の元に戻る。
「ほれ……気分転換にアイスでもどうだ?」
「アイスなのー」
 蒼姫はアイスを食べてだいぶ落ち着いたようだ。
 少し散歩して、すっかり調子も元通りになったところで昼食にすることにした。
 二人で並んでベンチに腰掛け、サンドイッチを食べる。
「静矢さん、どうかな〜? 美味しいかな?」
 首をかしげて蒼姫が聞くと静矢は笑みを浮かべる。
「美味い……腕をあげたな、蒼姫」
 照れくさそうに笑う蒼姫だった。
「遊園地!」
「遊園地!」
 初めての遊園地を堪能することになったのはリラローズ(jb3861)と御堂島流紗(jb3866)の悪魔と天使コンビ。
 二人とも目をきらきらと輝かせている。
「話には聞いてましたけど初めて来ましたの!」
 流紗がうっとりとジェットコースターを眺める。
「遊園地って、大きな公園みたいなものですか? 訪れた人達の楽しそうな声と笑顔を観ていますと、此方までわくわくしますね!」
 リラローズもうっとりしながら園内を見渡し、流紗を見た。
「流紗お姉様、絶叫ましーん、がお好きですか?」
「わざわざ絶叫しにいくとか究極のまったりだと思いますの」
 いつもまったりのんびりほのぼのしている流紗が言うと、何故か説得力がある。リラローズは大好きなお姉様の言うことだ、うんうんと頷いた。
「随分と勢いのつく乗り物なのですね」
 二人の目の前をびゅーんとジェットコースターが通り過ぎていく。
「風を切って駆ける乗り物なんて、楽しそうです♪」
 リラローズもすっかり乗り気だ。
「では、ジェットコースター3種制覇挑戦ですの」
「はい、お姉様!」
 二人は手をつないでジェットコースターへと駆け出していった。
 初めての遊園地に大興奮なのは緋野 慎(ja8541)だ。
「遊園地! 俺初めてだよ!」
 それをにっこりと受け止めるのは同行の九十九 遊紗(ja1048)。
「そっか、慎君は遊園地初めてなんだね。それじゃあ遊紗にまかせて! いっぱいあちこち回って遊ぼうね!」
 二人ははぐれないように手を繋ぐ。
「俺、あっち行ってみたい! あ、でも遊紗のほうが詳しいから、まずは遊紗に任せるよ!」
「うーんと、じゃあ、慎君が好きそうなの……」
 少し遊紗は迷ってから「こっち!」と勢い良く駆け出す。
 二人がたどり着いたのはジェットコースター。
(きっと慎君はジェットコースターとか好きそうだよね)
「おお、すっげー! これすっげー!」
 というわけで早速ジェットコースターへ乗り込む二人。慎は勿論大興奮続行中だ。
「すっげー!」
「遊紗もこういうの好きだよ。風がびゅーびゅーって気持ちいいね!」
 ぐるん、と一回転するたびに二人の歓声が上がる。
 ジェットコースターを制覇したら、次の場所へ。
「あれは?」
「あれはね、お化け屋敷だよ。入ってみる?」
 そう言ってから小さな声で遊紗は付け加えた。
「遊紗……ちょっと怖いかもだけど……でも慎君がいるから平気平気! 怖くないもん!」
「大丈夫、俺が遊紗を守るから!」
 頼もしい慎の言葉。そうして実際、出てくるお化けを牽制し、慎は遊紗を守りきったのだった。
 プラネタリウムに行っては、
「これはほんとの星じゃないんだよー」
「へぇ、どうなってるんだろう、不思議だね」
 観覧車に乗っては、
「ほら見て見てー! 高いねー!」
「すごい! 観覧車って遊園地を見渡せるんだね! おぉ、こうなってたんだー!」
 ぺたんと窓に張り付いて地面を見下ろしてから、改めて遊紗は慎を見た。
「今日は楽しかったね!」
「うん、俺もすっごく楽しかった」
「慎君、誘ってくれてほんとにありがとなの! 慎君大好き!」
「俺も遊紗の事、大好きだよ」
 純粋に無邪気に微笑み合う二人だった。
 さて、ここに遊園地を満喫しにきた悪魔が一人。蒸姫 ギア(jb4049)だ。
(べっ、別に楽しみに来たわけじゃないぞ、これも人界を詳しく知る為の手段なんだからなっ!)
 そう、手段だ、手段、と自分に言い聞かせる。人界の遊び場の調査なのだ。
「なかなか楽しそうな場所だな……ただ一点残念な点があるとすれば、蒸気機関が動力なら尚素晴らしいのに」
 ギアは蒸気機関の崇拝者であり、未だに万能だと信じている。ゆえにその点は不満らしい。
 不満を述べつつも、ギアは目についたコーヒーカップに早速乗り込んだ。
 ひとりぼっち? 気にしない! これは人界の遊び場の調査なのだ!
 周囲はカップルばかり? ギアはそこは気にしない。
 中央の円を持ってぐるぐる回す。ぐるぐる回るコーヒーカップ。
 これは面白いとばかりにぐるぐる、ぐるぐる。
 傍から見てもすっごいわくわくはしゃいだ後、
「って、べっ別にギア、楽しんでなんかないんだからなっ」
 コーヒーカップの他にもアトラクションを満喫し、はしゃいだ後にはっと我に返ることを繰り返す。
 そんな折、遊園地のマスコットぬいぐるみを発見したギア。
「これください」
 速攻で自分用に購入。「ご自宅用ですか?」と売り子さんに聞かれ、またはっと我に返る。
「ギアのじゃない、お土産なんだからなっ」
 お土産用に包んでもらって、ちょっとバツの悪いギアなのだった。
(「きゃ〜」というのが乗る時のお作法なんですね)
 1本目の回転ジェットコースターに乗って流紗が出した結論だ。
 2本目の落下型ジェットコースターでは「きゃー」と叫んでみた。
(作法にのっとり叫んでいきますの、ちょっとわざとらしいの初心者だからです)
 3本目の暗闇型ジェットコースターでも「きゃー」に挑戦。
(本当の絶叫身に着ける事目指して……!)
 流紗は駆け足でもう一度乗ろうとしたときにふらふらしているリラローズに気づいた。
 そう、リラローズが「楽しそうです♪」と思っていたのは最初だけ。
 すごいスピードで上から下へ翻弄されて……。
(た、楽しい、のですが、揺さぶられてふらふらしますぅぅ〜〜)
「だ、大丈夫ですの?」
「流紗お姉様、元気いっぱいなのです!? さ、流石ですの……」
 くったりしてしまったリラローズを気遣い、二人はベンチへ。
 反省した流紗がリラローズに冷たいジュースを買ってきて渡す。
 それを飲んでリラローズが一息ついている間に流紗は決意をする。
(次は二人で楽しめる乗り物探しますの!)
 そんな流紗にリラローズはくすりと微笑んで。
「お供しますわ、お姉様。さあ行きましょう♪」
 二人の初遊園地の思い出はまだまだ続きそうだ。
 下妻笹緒(ja0544)。パンダのきぐるみを纏ったクールガイ。
 彼にとって遊園地で遊ぶといったら選択肢は一つだ。
 彼は入り口からまっすぐに目的地へと向かった。
 そこにはたくさんの動物の乗り物が置いてある。いわゆるハンドルがついた、コインを入れると電気でよちよちと歩き出すあれだ。
 ウサギや犬やクマなどが点在する中、彼の目に入るのはパンダマシンだけ。
(真新しいパンダちゃん。年季の入ったパンダちゃん。背中の赤いパンダちゃん。意外と珍しい青いおべべのパンダちゃん。いろいろいるから楽しいのだ)
 ざっとそこにいるパンダを確認する。確認は迅速に。
(よし、最初はこの味のある年季の入ったパンダちゃんだ)
 そして素早くパンダマシンにコインを投入。時間は無限ではないのだ。
 ひらりと軽やかにパンダマシンに跨るパンダ。パンダマシンは風を切って進む。
(このオトナの遊びに比べたら観覧車やジェットコースターなぞ、女子供の遊戯)
 鋭くパンダマシンでコーナーを攻める姿はまさにワイルド&クール。
 それをふと見つけたのは雀原 麦子(ja1553)だ。
 彼女は遊びにではなくバイトをしに来ていた。
(九州出身なので、天使の勢力圏の中で遊園地が賑わってる平和は嬉しいかぎり)
 ゆえに自らお客様を楽しませる側にまわった。そう、けしてビールの飲み過ぎで懐が寂しいわけではないのだ。
 遊園地のマスコットのきぐるみで子どもと遊んでいたときだった。
「そこのパンダのきぐるみ。ちょっとこっち来て手伝わない?」
「俺は忙しい」
 ドリフトしてコーナーを曲がるパンダマシン。
「忙しいって……」
 麦子の目にはよちよち歩きのパンダマシンに乗っているようにしか見えない。
「まだ、乗っていないパンダちゃんが3台もある」
「えーと……」
 勧誘は難しいらしい。
「が、がんばってね……」
 ふっとパンダの毛並みを風になびかせる笹緒。
 その後も麦子はお化け屋敷のアトラクションを手伝った。やるからには目一杯楽しんで、楽しませるように。
「あ……」
 でも、同じ年頃の女の子を見ると、行方不明の友人かもとつい目で追ってしまう。そして小さく溜め息をつくのだ。
 閉園間際。
 麦子が大人の遊園地、ビアガーデンで一汗かいた疲れを癒していると、遠く、まだパンダマシンに乗っている笹緒の姿が見えた。
 遊園地でデートという状況に嬉しくもちょっと気恥ずかしさもある許婚カップルは星杜 焔(ja5378)と雪成 藤花(ja0292)。
(ちょっぴりむず痒い……)
 藤花のふわふわの森ガール風もいつもより少し気合が入っている。
 手を繋いで二人が訪れたのはアミューズメント施設。
(中学の遠足でも一人でずっと……篭ってたんだ……。癖が……抜けない)
 というわけで、ここの選択は焔がしたもの。
 中に入ると藤花がまっさきに見つけたのはプリクラ。
「記念ですし、プリクラ撮りましょう?」
「プリクラ……」
 焔はあまり慣れていないものなので、ついびくびくしてしまう。
「無理に笑う必要とかないです、自然体で。そういう姿が一番わたしは嬉しいですから」
 藤花の言葉に後押しされ、二人はプリクラの中へ。
「こ、こう? かな? ……誰にも見えてないよね?」
 枠内に二人で収まるようにぴったりとくっついて。撮り終わった後にその距離の近さに気づいてちょっとお互い頬を赤らめる。
 次に通りがかったのはクレーンゲーム。
「あ……」
 かわいい兎のぬいぐるみが見え、つい足が止まってしまう藤花。
「いいな……」
「藤花ちゃんに特大ぬいぐるみを取ってあげよう」
「取ってくれるんですか? うわぁ、ありがとうございます」
 クレーンゲームは得意な焔はにっこりと微笑む。
「お友達を増やすために頑張ってきたからね」
 ちなみにお友達とはぬいぐるみたちのこと。
 大きな兎のぬいぐるみを藤花に、そしてマルチーズのぬいぐるみを自分用に器用に取ると焔は「はい」と兎のぬいぐるみを藤花に渡した。
「記念の品がまた増えましたね。そちらのマルチーズも可愛い……」
 嬉しそうな藤花と一緒に歩いていれば、焔の目に留まるのはガンシューティングゲーム。
(森ガールで散弾銃ヒャッハー……見たい……)
 ギャップ萌えというやつだろう。
「今日の藤花ちゃんとてもふわふわ可愛い……」
「どうしたんですか?」
「銃ぶっぱ姿見たい……」
「え……えっとわたしがやったほうがいいのかな」
(あっ、心の声漏れてた……!?)
 だが、これはチャンス!
「大丈夫! 教えるから!」
 幸せに浸りながら、藤花にやり方を説明する焔。藤花は試しにプレイしてみるも、けして上手ではない。けれども。
(ああ……夢がまた一つ叶ったよ……)
 嬉しそうに笑う焔に藤花も嬉しくて笑顔になる。
(喜んでくれるなら、悪くないかな)
 二人は顔を見合わせて、微笑みあった。


 アトラクションで遊んだ後は、お昼だ。
 森浦 萌々佳(ja0835)と青空・アルベール(ja0732)のカップルと宇田川 千鶴(ja1613)と石田 神楽(ja4485)は待ち合わせて、一緒にお弁当を食べることにしていた。
 萌々佳は重箱三段のお弁当。
 千鶴と神楽は二人でお弁当を作ってきていた。
「やっぱり、この時期が気温的にも良いねぇ」
 千鶴がお弁当を広げればそれをてきぱきと手伝いながら神楽が頷く。
「そうですね。寒いのは嫌ですし」
「わー! すごいなー!」
 青空は萌々佳の作ってきたお弁当に感心しきりだ。
(こんなにたくさん大変だったろうに)
 けれども、それにはわけがあった。
「ちょっと聞いてくださいよ〜すーちゃんになにが食べたい?って聞いたら、萌の作るの全部おいしそうだからな〜って言うんですよ〜? もうどうしていいかわかんなくて色々作ってきたらこうなっちゃったんですよ〜?」
 千鶴と神楽に力説する萌々佳。ちなみにすーちゃんとは青空のこと。
「ちょ、萌別にいまそれ言わなくても……!」
 あたふたと慌てる青空だが、表情は嬉しそうだ。
(手料理食べられるって、家族っぽいからな、嬉しい)
 青空は所狭しと並んだ具材を目にし、まず定番の唐揚げから口に運んだ。
「……実際全部美味しいのだから、仕方ないのだ」
 それは食べると青空の中で事実として認識された。
「はい、すーちゃん。あ〜ん?」
 萌々佳のお箸が口元に運ばれ、青空は目を見開く。
「そういうのは、やっぱ少し照れる……な!」
「え〜、食べてくれないの〜?」
「そりゃ嬉しいけれども」
 結局、青空はぱくり。
「うん、うん。萌の料理はいつも美味しい」
「じゃあ、今度はこっち。あ〜ん?」
「アルベールさんは幸せもんやねぇ」
「仲良いですね〜。そして自然体です」
 千鶴と神楽は仲睦まじい二人を見て、微笑ましく思う。
「ちぃちゃんと石田さんはあーんってしないんですか?」
 萌々佳の言葉に千鶴と神楽は顔を見合わせた。
「いや、せんよ」
「……私がしますか?」
「えぇって」
「というか萌は食べてるの? これとか、私好きだな」
 青空は萌々佳に何の気なしに玉子焼きをつまんであーんとお箸を差し出す。
「え、じゃあ、あ〜ん」
「自然とああした行為が出来るのは良い事ですね」
 結局自分でお弁当を食べながら神楽は目を細めた。

 お昼はRehniが作ってきた手作りのお弁当を芝生にレジャーシートを敷いて食べ。
 食後は膝枕でお昼寝。眠っている淳紅の頬と額にそっとRehniが唇を落としたのは、彼女だけの秘密。
 そして夕方、夕焼けの見える観覧車に二人は再び乗った。
 一日の終わりを優しく包むように、柔らかな光が広がっている。
「お姫様、お手を……なんてね」
 淳紅がエスコートして今度はちゃんと横並びだ。
 Rehniは瞳を潤ませて淳紅の顔を見つめる。二人だけの無言の時間。
「今はこれだけ、ねー」
 淳紅の顔の赤みは消え、大人の声が響く。ふわりと笑うと、Rehniの長い髪を一房取り口付けた。
 Rehniはそっと淳紅の首筋に顔を埋める。
「一日ありがとうでした」
 淳紅はゆるりと首を振る。
 髪に口付けた、隠した意味は「思慕」。唇は束縛の意味を込めてしまうから。
 それはいつかくるかもしれない別れを恐れた、臆病な口付けだったことは淳紅だけの秘密だ。
 恭弥とアトリアーナは、今日のことを思い出しながら観覧車からの景色を楽しむ。
「見てみろよ。景色が綺麗だぞ」
 窓の外を見ていた恭弥は、アトリアーナが自分をじっと見ているのに気づいた。
「どうした。俺の顔に何か付いてたか?」
 何気ない問いかけにアトリアーナは首を振る。
 これから始まる激しい戦い。そこに赴く前に穏やかなひとときを過ごしたくて、今日は一緒に来た。
 気持ちは「気になる甘味仲間」以上のものを既に抱いている。けれども、告白したりとか恋人になるとかではなくて。
(キョーヤを守りたいから守ろう)
「……んー。なんにもない、の」
 そう言うと恭弥の手が伸びてきた。アトリアーナを撫でる。
「……今日は楽しかったよ。ありがとな」
 最後に乗った観覧車で、ミシェルは満足気な笑顔だった。
 その笑顔を見て紫翠はにこりと笑みを浮かべて言う。
「……今度来る時は、もう1人増えてるかもな」
 ミシェルはしばらくきょとんとしていたが、意味がわかったのだろう、わたわたと赤面した。
「もう一人……そか、夫婦だし……。家族……増えたらいいな……」
 『家族』。それは二人にとって大きな意味を持つ。
 二人とも、それぞれ天魔に家族を殺された過去を持つのだ。
 だからこそ、紫翠はミシェルを引き寄せ、二人だけの空を眺める。
 ミシェルはそのぬくもりを感じながら、また少し、夫婦の自覚が芽生えてそっと紫翠に寄り添った。


 一日の終わりにルナジョーカー(jb2309)は同行の落月 咲(jb3943)を観覧車に誘った。
 二人は咲曰く「オトモダチ」同士。ルナにとってはそうでないところが悲しいところ。
「夜景が綺麗だからな? たまには上から見下ろすのもいいだろう?」
 ゆっくりと観覧車は上空へと登っていく。
「ん〜、まったり和むねぇ……」
「ふふふ〜、戦っている方が好きですが、こういう時間も必要ですかねぇ」
 ルナは夜景をまったりと眺めているが、咲は物足りなさそうにぼーっと外を眺めている。おそらくはスリルがないからだろう。
(二人で夜景をバックに写真でも撮ろうかな)
 ルナはそわそわと咲を見るが、咲はぼーっとしたまま。
(さすがに二人きりだと少しは緊張するぜ?)
 変な沈黙が降り、ルナは慌てて口を開いた。
「この綺麗な夜景、護って行こうじゃないか。思う存分戦ってな?」
(……もう二度と同じ過ちは繰り返したくないからな……)
 しんみりしかけたルナに対して、やっぱり物足りなさそうに咲が答える。
「こういう綺麗な景色とか……ブチ壊したくなりますよねぇ。……冗談ですよぅ」
 どうにも上手くいかない二人である。
「チョコでも食べるか? 咲?」
「ありがとうございますぅ」
 食べ物には素直に反応する咲。ルナの差し出したチョコを口に入れる。
 そうこうしているうちに次第に地面が近づいてくる。
「ん、そろそろ降りるか」
「のんびり帰りましょ〜」
 さっさと降りる準備を始める咲の背にルナは声をかけた。
「明日からもまた頑張ろう。咲のおかげで元気出たし。お互い、剣と刀を握ってな?」
 咲は振り返る。
「スリルのあるほうが、好きですからねぇ」
 咲は戦闘のことを思い出し目を鋭く細める。ルナはそれに気づいて小さく苦笑した。
 さて、こちらは初々しい二人。
 袋井 雅人(jb1469)は月乃宮 恋音(jb1221)を遊園地に誘う際に緊張して何度も噛んだらしい。
 恥ずかしがり屋の恋音からOKが取れたときにはさぞかしほっとしただろう。
 恋音は遊園地に来ること自体初めてで、人の多さと自分への視線を恥ずかしがり、一見怯えているように雅人には見えたため、色々説明しながら絶叫系アトラクションとお化け屋敷を外してできるだけ人気のないところを選んで歩いた。
 結果、恋音は怯えてはいたが、目に映る新鮮な景色を内心楽しんだ。
 そうして日が暮れて夜になる。雅人は恋音を観覧車に誘った。
「あのぉ……これ……」
 観覧車に乗ると、そおっと恋音が差し出したのは生ハム等のサンドイッチ。
「え? これ、僕も食べていいんですか?」
「はい……い、一緒に食べようと思って、作ってきましたぁ……」
 内心感動に打ち震える雅人。
「じゃ、じゃあ、いただきますね」
 サンドイッチを口に運ぶ。
「美味しい。美味しいですね、恋音さん!」
「あ、ありがとうございますぅ……」
 恋音は真っ赤になって上目遣いで雅人を見る。
「……と、とても、楽しかったですぅ……。……お、お誘いいただき、有り難う御座いましたぁ……」
「恋音さんが楽しかったならよかったです」
 雅人はほっとしたように微笑む。
「また一緒に遊園地に遊びに来ましょうね!」
「……は、はい、私などでよければ、いつでもお誘い下さい……」
 ふんわりと微笑む恋音。その笑顔にドキッとしてしまう雅人。
(こ、この雰囲気はキスをしていいのか、迷いますね……)
 とは言え、恋音に雅人に対する恋愛感情があるのか、微妙にわからない。
(ここはあえて我慢して……)
 諦めてサンドイッチを手にしようとしたとき。
「あっ」
「……ぁ……」
 同じサンドイッチを取ろうとして手が触れ合った。雅人はそっとその手を握りしめる。恋音は真っ赤になって俯く。静かに観覧車は巡っていく。
 千鶴と神楽も夜の観覧車に乗った。
 萌々佳と青空は先に夕方に乗っていて、会ったときに「と〜ってもよかったです〜!」と嬉しそうに笑っていた。
「流石、でかい遊園地やし夜景も凄いな」
 デジカメで夜景を撮影する千鶴。同じように夜景を眺めながら神楽も微笑む。
「良い景色ですね。落ち着きます」
 何気なく千鶴の頭を撫でる神楽。不思議そうに神楽を見る千鶴。
「これも落ち着きます。何故かは分かりませんけどね」
 にこにこと撫で続ける神楽に千鶴は首をかしげるばかりだ。
(なんか知らんが落ち着くらしいし、まぁ、えぇか)
「神楽さんならここからでも狙撃できるん?」
 冗談めいて千鶴が問うと、
「狙撃? 出来ると思いますが……やってみましょうか?」
 やはり冗談めいて答える神楽。二人で顔を見合わせてふふっと笑う。
 ライトアップされた観覧車に楓をエスコートしてきた真里。
「良かったら乗ってみない?」
「うん」
 二人はゴンドラに乗り込み、夜空の旅へ。
「クリスマスの時思い出すねー」
「うん、そうだね」
 二人の思い出は同じ。パーティを抜けだして、観覧車から花火を見た。
(今思い出すと結構恥ずかしい)
 照れてそわそわする楓を愛おしく見る真里。
(あの時も楓が好きだったけど……)
 前より大きくなった想いに苦笑する。楓の頬に真里はそっと触れた。
「目、閉じて」
「? ん、」
 何だろと楓は緩く瞬きをした後、瞼を伏せる。
 近づく顔と吐息。そして真里は楓の髪、瞼、頬、最後に唇にそっと唇を落とした。
 キスが降るたび、頬が朱色に染まっていくのがわかり、楓は落ち着かない。
 最後に真里が楓を抱きしめると「わっ」と声をあげてしまったのは、らしくもなく緊張してしまったせいだろう。
「ありがとう」
(一緒の時間が本当に幸せだよ)
 真里が優しく楓を包む。小さく肩を揺らした楓はそのまま胸に顔を埋めて。
「……もう少し、このままで」
 幸せの温度が二人を包み込んでいく。


「絢さん。僕は」
 ふと颯が口を滑らせた。
「初めてなんですよ、誰かの手を離したくないと、思ったのは。そうしても、いいですか?」
 思えば、初対面のとき。
 颯は絢を「綺麗な黒」と見惚れ、一目惚れ。
 けれども、実年齢では颯のほうが上なのに、外見年齢は逆なので、それを気にしてしまって。
 ホワイトデーで指輪を渡したけれども、想いは告げていないまま。
 じっとこちらを見つめる颯とその言葉に絢は一瞬きょとんとする。
 けれども、言葉を噛み含めれば、すぐにその表情は笑顔に変わった。
「うん! この手、離さないで居てくれると私嬉しいな!」
 そうして絢は颯の手を取った。
 そっと繋ぎ合う手。
 結ばれたのはきっと、手だけではない。
 帰る間際、来園記念の備え付けのスタンプがあることを発見した蒼姫と静矢。
「記念のスタンプなのですよ〜☆」
 蒼姫はぺったんと静矢の手にスタンプを押して。その手を静矢は握りしめた。
 きょとんとする蒼姫に静矢は買っておいたブレスレットの片方を手渡す。
「蒼姫には青を……私が紫を持とうか」
 嬉しさに満面の笑みになる蒼姫に静矢は目を細める。
「また遊びに来ような」


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:16人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
ラッキーガール・
ミシェル・G・癸乃(ja0205)

大学部4年130組 女 阿修羅
思い繋ぎし紫光の藤姫・
星杜 藤花(ja0292)

卒業 女 アストラルヴァンガード
パンダヶ原学園長・
下妻笹緒(ja0544)

卒業 男 ダアト
仁義なき天使の微笑み・
森浦 萌々佳(ja0835)

卒業 女 ディバインナイト
┌(┌ ^o^)┐<背徳王・
エルレーン・バルハザード(ja0889)

大学部5年242組 女 鬼道忍軍
夜のへべれけお姉さん・
雀原 麦子(ja1553)

大学部3年80組 女 阿修羅
黄金の愛娘・
宇田川 千鶴(ja1613)

卒業 女 鬼道忍軍
歌謡い・
亀山 淳紅(ja2261)

卒業 男 ダアト
蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
愛妻家・
癸乃 紫翠(ja3832)

大学部7年107組 男 阿修羅
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
黒の微笑・
石田 神楽(ja4485)

卒業 男 インフィルトレイター
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
思い繋ぎし翠光の焔・
星杜 焔(ja5378)

卒業 男 ディバインナイト
真ごころを君に・
桜木 真里(ja5827)

卒業 男 ダアト
怠惰なるデート・
嵯峨野 楓(ja8257)

大学部6年261組 女 陰陽師
駆けし風・
緋野 慎(ja8541)

高等部2年12組 男 鬼道忍軍
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
撃退士・
ルナ・ジョーカー・御影(jb2309)

卒業 男 ナイトウォーカー
撃退士・
颯(jb2675)

大学部1年96組 男 ルインズブレイド
子鴉の悪魔・
鴉女 絢(jb2708)

大学部2年117組 女 ナイトウォーカー
砂糖漬けの死と不可能の青・
リラローズ(jb3861)

高等部2年7組 女 ナイトウォーカー
ドォルと共にハロウィンを・
御堂島流紗(jb3866)

大学部2年31組 女 陰陽師
ツンデレ刑事・
蒸姫 ギア(jb4049)

大学部2年152組 男 陰陽師