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マスター:さとう綾子
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2012/12/31


みんなの思い出



オープニング

●大人気のサンタさん
 もうすぐクリスマス。
 とあるごくごく普通の幼稚園でもクリスマスの催し物を決めていた。
「じゃあ、サンタさんとトナカイさん、二人一組になってプレゼントを配りましょう」
 先生の言葉にわーっとはしゃぐ子ども達。
「ボク、サンタさんになりたいー」
「あたしもサンタさんー」
「僕もサンタさーん」
「あらあら、トナカイさんもいないとプレゼントが配れませんよ?」
「サンタさんがいいのー!」
 幼稚園のクラス、16人の子どもたちが声を揃えてサンタを希望。
 さすがに先生も困ってしまったのだった。

●トナカイの人気を取り戻せ
「……というわけで」
 事務の女性が経緯を説明し、続ける。
「カッコイイトナカイを是非演じてほしいとのことです」
 カッコイイトナカイ? と誰かが首をひねる。事務の女性は頷いた。
「サンタ役の子がトナカイ役をやりたい! と言い出すくらいカッコイイトナカイです。具体的にどうカッコイイかは皆様のアイディアにお任せ致します」
 そう言いながら事務の女性はメモを見せる。
「幼稚園にあるのはトナカイの気ぐるみ。これは持ち込みも可能だそうです。1人用のソリと2人用のソリ。それから滑り台になっている煙突と暖炉」
 トナカイは煙突には入らないが、そのあたりは工夫次第である。
「庭には滑り台、ジャングルジム、ブランコなどがあります。特にジャングルジムの高さは2階建て幼稚園と同じくらいの高さまであり、名物のひとつになっています。一番高いところに登れた子どもは他の子どもの羨望の眼差しを浴びるそうです」
 それから、と事務の女性は3枚の写真を取り出した。
「今回のクリスマス会の担当の先生です。色白和風美人ただし幼な人妻の春野先生、元気いっぱいまだ新米の夏川先生、筋肉隆々のマッチョなオカマの秋田先生。この3人がご協力くださるそうです。あまり無理すぎるお願いは聞けないと思いますが、子どもたちとの橋渡しにはなってくださるでしょう」
 写真を手渡しながら「くれぐれも」と女性は念を押す。
「幼稚園の子どもが相手です。あまり無理やケガをしそうなものは控えていただけますと幸いです。よろしくお願いします」
 そう締めくくると事務の女性は頭を下げたのだった。


リプレイ本文

●トナカイさんの登場です
 それは某幼稚園で。
 サンタさんに憧れる16人の子どもたちの前で春野先生が話す。
「みんなー、良い子にしてたかなー?」
 してたー!と声を揃える子どもたち。
「そんなみんなに、今日はトナカイさんたちが来てくれました」
 たちまち起こるブーイング。
 なんでサンタさんじゃないの、サンタさんがいい、という声の中、春野先生はにっこり笑った。
「ただのトナカイさんじゃありません。カッコイイトナカイさんたちです」
 ざわつく教室。
「じゃあ、先生はトナカイさんを呼んできますからね」
 春野先生が教室から退場する。
 途端に教室の電気が消え、ライトが入り口に照らされる。ふんわりと淡い光はどことなく神秘的だ。
 もちろん、ライトは氷雨 静(ja4221)のライトボールを使用したもの。
「じゃあ、みんなでトナカイさんを呼んでみましょう」
 春野先生の言葉に子どもたちは頷いた。
「せーの」
「「トナカイさーん!」」
 そこに入ってきた気ぐるみのトナカイは確かにすごかった。
 ソリに小柄ながらも女性の春野先生と夏川先生を乗せ、マッチョな秋田先生を背負って登場したのだ。
 安全のために身体固定用のベルトを2本持ち込んだ鳳 静矢(ja3856)トナカイだ。
 さすがに子どもたちから驚きの声が上がる。
(格好良いトナカイ…なかなか妙な依頼だな)
 そうは思っても子どもたちの前では顔色を変えない。
「やあ皆、トナカイはとっても力持ちなんだよ」
 わっと子どもたちが静矢に群がる。
 と、静矢の後からふんわりとやさしい香りが漂った。
 ちょっとおませな女の子が目ざとく叫ぶ。
「香水!」
(女の子向けのカワイイトナカイがいてもようございますよね)
 ライトボールをふわふわと手に載せて現れたのは氷雨 静(ja4221)。
 トナカイの気ぐるみにラメパウダー、赤いリボンを角に蝶結び、メイド服で飾り付け。
 子どもが好みそうな香水も着飾り、視覚と嗅覚で女の子の心をつかむ作戦だ。
「私は魔法使いのトナカイなのですよ」
 マジカルステッキをくるりんと回してみせると、幼稚園の女の子たちからきゃっきゃと嬉しそうな声があがった。
 この年頃の女の子は魔法使いとかわいいものが大好きだ。
「サンタのおじいさんと違いトナカイはお洒落も出来るのです」
 その言葉にぐらりと揺らぐ女の子が一人。
「そうだよね、あたしも、おひげはやだなあっておもってたの」
「かわいいトナカイになればようございますよ。トナカイはおひげがございません」
「うんうん! あたし、トナカイになるー!」
 早速トナカイへの陥落者1名。静はにっこりと微笑んだ。

 力持ちトナカイを男の子が、魔法使いトナカイを女の子がきらきらした目で囲んでいる間に、他のトナカイも入場していた。
(子供達に、夢と希望とトナカイを!)
 決意に燃えるのは鳳 優希(ja3762)。力持ちトナカイをきらきらした目で見てるのはたぶん、それが愛する夫だからだろう。
(あのトナカイのことは忘れましょう……)
 そっと自分の黒歴史から目をそらすのはRehni Nam(ja5283)。彼女はサンタの衣装に身を包んだトナカイの気ぐるみで静馬 源一(jb2368)の引っ張るソリに乗って登場。源一は指を印を切るときの形につくってトナカイ忍者の風情だ。
 そしてもう一人の忍者トナカイ、センティ・ヘヨカ(jb2613)。自分のトナカイの気ぐるみの尻尾にリボン、首に鈴をつけて雰囲気はかわいい。かわいいが。
「かっこよさなら忍者のそれに勝てるやつは中々いない! 俺は忍者トナカイなんだぞー!」
 にんにん、とポーズをつくれば、男の子たちが集まってくる。
「忍者トナカイって手裏剣とか投げれるの?」
「投げれるけど、プレゼントを配るときは危ないから持ち歩いていないんだ」
「すごーい。かっこいいー!」
 そう言われると悪い気はしないセンティである。
 こうして良い感じでトナカイ作戦は始まった。

●トナカイさんが空を走ります
 頃合いを見て優希が声をかける。
「ではここで忍者トナカイのカッコイイところをお見せするのですよー」
「にんにん!」
 源一が前に進み出た。
「では表に出るで御座る!」
 源一はソリに優希とRehniを乗せて表へと出る。目指すはジャングルジムだ。
 この幼稚園でジャングルジムのてっぺんに上るのは一つのステータス。
 だから子どもたちはきらきらした目で源一とソリの優希とRehniを見守る。
 静にくっついている女の子たちには、静は
「あちらをよーくご覧下さい」
 と三人に注目させる。
 よく見えずにぴょんぴょん飛び上がってる子にはセンティが近づき肩車をしてあげた。
 準備万端。
「トナカイ超特急! 只今発進で御座る!」
 源一は手を一切使うことなくジャングルジムを駆け登る!
 そこは忍者トナカイ、壁走りの応用だ。
 直角に目に止まらぬ速さでジャングルジムのてっぺん、空へと向かって走るトナカイ。
 トナカイの優希とRehniがソリに乗っていてもスピードが落ちることもない。
 むしろ源一が笑顔を見せて誰よりも楽しそうだ。
 優希とRehniは直角になるソリにしがみついて、落ちないようにするのに精一杯。もちろん、二人には源一がワイヤーを巻きつけておいた。安全第一。
 たどりつくのはジャングルジムのてっぺん。
 それは二階建ての幼稚園と同じくらいの高さだ。
「世界中の子供にプレゼントを配るサンタさん……彼を乗せて世界を駆け巡る我々トナカイにできぬことはないで御座る!」
 てっぺんで源一が言うと子どもたちはわーっと声をあげた。
「トナカイ、カッコイイ!」
「本当にカッコイイトナカイだー!」
「にんにん」
 源一もまんざらではない様子。
「ではトナカイは空を飛んでいくで御座るよ」
 源一は素早く幼稚園の屋根に向けてワイヤーを張る。
 その間に優希はソリから降りた。その優希にアウルの力で作った鎧をイメージし、着せるRehni。
「レフママトナカイ、ありがとうなのですよ」
 優希はこの後が本番なのだ。
 源一は張ったワイヤーの上をソリにRehniを乗せて走る。
 それはまるでジャングルジムから幼稚園の屋根まで空を飛んでいるかのよう。
 また子どもたちから歓声があがる。
「本物のトナカイだ!」
「トナカイが空を飛んでるー!」
 そして子どもたちの期待の視線が優希に集まる。
 優希は軽いステップを踏んでにっこりと笑うと、ジャングルジムのてっぺんから垂直落下で降りた!
 トナカイの奇跡を信じる子どもたちと悲鳴をあげる先生方。
 足元に蒼の鳳凰が現れ、優希はその上に着地した。鳳凰が大きく羽根を動かす。
「蒼のトナカイが出す、蒼の鳳凰、出陣!」
 わーっと歓声に包まれるジャングルジム。
 と、一人のわんぱくな男の子がトナカイに憧れたのだろう、ジャングルジムに登りはじめた。
「危ないで御座るよ、降りてくるで御座る」
 戻ってきた源一とRehniが心配そうにジャングルジムの下から見上げる。
 それを見た優希ははっと、静矢を振り返った。
「静矢さん、今こそ、静矢トナカイシールドを発動するのです!」
「よし」
 何をするかわかったのだろう。静矢は何も問わずに子どもの下へと四つん這いになった。
 優希が子どもを追いかけて登り、捕まえる。
「危ないから先生と一緒に今度上るんですよー」
 うん、と頷く男の子。優希はその子を抱いて、再び垂直落下。
 そして落下先には静矢が。
 見事なコンビネーションである。
 四つん這いの静矢の上に子どもを抱いた優希が落ち、優希は子どもを下ろすと静矢の上に四つん這いになった。
「「トナカイの上にトナカイが!」」
 いい夫婦である。

●トナカイさんが歌います
 カッコイイトナカイを園児たちの前で見せたところで、六人は挨拶代わりに横一列に並んだ。
 みんなで歌い始める。歌が非常に上手い静から楽しく歌えればいいというセンティまで、六人のトナカイの大合唱だ。
「戦士なトナカイ〜♪ シズヤっ♪」
 両手両足を広げ、大の字を作り、自信満々の表情を作る静矢。
 そんな彼が実は、
(こんな感じでいいのだろうか?)
 と内心悩んでいることは内緒である。
「魔法使いなトナカイ〜♪ ユキ&セイっ♪」
 にっこりと笑ってピースサインを頭の上に持って来ながら、ポーズを決める優希と、ライトボールで注目を誘いながら笑顔でスカートをつまみ、メイドらしくお辞儀をする静。
「忍者なトナカイ〜♪ シズマ&センティっ♪」
 源一とセンティは二人で指を印を切る形に合わせ、にんにん、とポーズ。
「僧侶なトナカイ〜♪ レフニー♪」
 Rehniは指を組み、祈りのポーズを作るとアウルの力で鎧を作り、柔らかな風を漂わせる。
「「世界の煙突は僕らの煙突ー♪
 僕らにたどり着けない煙突は無いー♪
 さんたさん乗っけてどこまでもー♪
 プレゼントを持ってどこまでもー♪」」
 六人の作った歌は大好評。わーっと子どもたちが拍手を送った。

 その後は各自トナカイPRタイム。
 しんみりとトナカイの身の上話をするのはRehniだ。
「サンタは、空を走れなくなった老齢のトナカイの第2の人生なのです。今日は、本当はサンタさんも来るはずだったですけど、腰を痛めちゃって……。それで、私が代理なのです」
 サンタさん、トナカイさんだったの?と目を丸くする子どもたち。
「トナカイがサンタになる時には、角も尻尾も切っちゃうのです。そこまでして、やっとサンタになれる……。サンタになるトナカイって、凄いですよね……」
 トナカイさん、尻尾切っちゃわないでーと泣き出す子まで。
 慌てて、
「大丈夫です、私はまだまだ現役のトナカイですから!」
 とフォローするRehniだった。
 主に女の子をソリに乗せて引っ張りながら話すのは静。
「トナカイはカワイイのですよ。猫ちゃんやワンちゃんも可愛らしいですが、クリスマスはトナカイです」
 うんうん、と頷く女の子たち。現に目の前に可愛い静トナカイがいるのだから。
「皆さんもカワイイトナカイになってみませんか?」
 可愛いものが大好きな女の子たちは声を揃えて「トナカイになるー!」と言い、静はにっこりと笑った。
 忍者トナカイに興味を持ってくれた子たちを中心にソリを引くのはセンティだ。
 常にゆっくり、安全運転を心がけながら、突然分身して子どもを驚かせてみたり。
「トナカイっていうのはこういうことも出来るんだよー? どう、カッコいいでしょ!」
 カッコイイー!と子どもたちは大喜びだ。
 一方で困っていたのは源一。
 自分もソリに乗せてジャングルジムの上まで行ってほしいという子がいっぱい集まってしまったのだ。
「乗り手にも過酷な訓練が必要なので御座る」
 あれは確かに危険な行為。断るのは正しい判断だ。
 それを見ていた静矢が進み出る。
「よろしい、トナカイの本気を見せようではないか」
 子どもの足と背中の上のほうを持ち込んだベルトでしっかり固定して、ジャングルジムの上まで全力跳躍で一気に飛び上がる!
 源一は子どもたちをソリに乗せ幼稚園の庭を走り回る。
「トナカイ特急発進で御座る!」
 きゃーきゃー言う園児たちもさることながら源一も充分に楽しんだのだった。

●最後はトナカイパーティ!
 ひと通り遊び終えたところで、トナカイたちは持ってきたプレゼントを子どもたちにプレゼントすることにした。
 優希はソーダを子どもたちに配り、静もコーラと手作りのデコレーションケーキを、Rehniもクッキーと七面鳥にケーキとなると、先生も加えて簡単なパーティが開けそうだった。
「トナカイはケーキも作れるようになるのですよ? 美味しいですか?」
 静はケーキを切り分けながら子どもたちの笑顔を見守る。
 ただ、問題は。
「ほら、さんたさんの人形で御座るよ」
「やだー、これ、怖いー」
「ほしくないー」
 源一が必死になって集めたさんたさん(?)1/10フィギュア。その姿はご存知の人も多いだろう。
 マッチョで半裸。下は黒いスパッツ、両胸に★。手には縄跳び。長い黒髪、白い付け髭、赤い帽子。
 さすがに怖がって泣きだしてしまう子まで出てきた。
 しょんぼりとしてしまう源一とRehniに春野先生が「これは幼稚園のほうでいただきますね」とフォローを入れてくれる始末。
 美味しいね、とジュースを飲んだりケーキを食べている子どもたち。
 その中で一人、隅っこのほうでぽつんとこちらを見ている女の子がいた。
 センティは誰もその子を見ていないのを確認すると、そっと近づく。
「ね、見て」
 センティの声に女の子が顔をあげる。
 センティの背には悪魔の羽根があった。
「俺はね、本当はトナカイの中でも凄く変わり者なんだ」
 じっとセンティを見つめる女の子。
「最初は俺もこんな翼があるし仲間に入るのが怖かったけど……今はこうやって皆の仲間なんだ」
 センティは翼をしまって女の子をまっすぐに見た。
「切欠なんて、少し前に踏み出すだけなんだ。カッコいい忍者トナカイが言うことだから間違いなし。キミも一緒に楽しもう?」
 女の子に手を差し出すセンティ。その子はおずおずとセンティの手を握った。
「翼、カッコイイ、よ」
 女の子は微笑む。センティもありがとう、と嬉しそうに微笑んだ。

 持ってきたデジカメを春野先生にあずけて、園児やトナカイ全員と写真を撮る優希。
「皆、トナカイと良い思い出は作れたかな?」
 ウィンクをして、その写真を子どもたちに配る。
「良い子にしていたらまた来年遊びに来るぞ」
 とは静矢の弁。
「どうですか、カッコイイトナカイさんに来年も来て欲しいですか?」
 春野先生が言うと子どもたちは「はーい!」と満場一致。
「じゃあトナカイさんになりたいですか?」
 どきどきの質問にも、「はーい!」と元気に答える子が大勢。
「来年はカッコイイサンタさんの依頼が来るかもね」
 Rehniが笑顔で言うと優希も笑って頷いた。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 正義の忍者・静馬 源一(jb2368)
重体: −
面白かった!:4人

蒼の絶対防壁・
鳳 蒼姫(ja3762)

卒業 女 ダアト
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
世界でただ1人の貴方へ・
氷雨 静(ja4221)

大学部4年62組 女 ダアト
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
正義の忍者・
静馬 源一(jb2368)

高等部2年30組 男 鬼道忍軍
優しき翼・
センティ・ヘヨカ(jb2613)

大学部1年100組 男 鬼道忍軍