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マスター:後醍醐
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/05/19


みんなの思い出



オープニング

 某所 山間部の村
 
 のどかな山間部の田舎――地形を利用した畑や棚田が広がっている。
 それは何処にでもある山間部の田舎の風景。
 機械でできない場所を耕している老人や中高年の人々――極希に若者らしき姿も見受けられる。
 畑や棚田で作っているのは売るためと言うよりも日々の生活の糧といった趣が強い。
 この村の主な収入源は――林業と出稼ぎといった2つの両輪により村が成り立っていた。
 ただ――つい最近、その生活が危うくなりそうな出来事が発生していた。
 それは、街へ向かう道を走っている車両に猿の姿をした何かに襲われるといったものだった。
 襲われた車は無事ではあったものの、一つ間違えば事故に繋がりかねなかった。
 その日を契機に――村の田畑が何者かに荒らされる様になったのは。
 獣避けの電流柵を使っても効果は芳しくなく、翌日には荒らされていた。
 猟友会が三交代で田畑を監視して退治しようとするが――。
 
 山間部西部 山林 前日
「そっちへ行ったぞ!」
 複数の猿らしきものが猟犬に追い立てられていた。
 ある猿は木々の枝を使い移動し、ある猿は駆けて追い立てられている。
 追い立てられる先には猟友会が猟銃を構えて獲物を狙っている。
 これで駆除出来れば平穏に戻るはずだったが――。
「よし、撃て!」
 追い立て役がいなくなった事を確認した猟師が猟銃の撃鉄を引く。
 放たれる散弾が容赦なく猿らしきものを襲うが――。
「ギャアア!」
 その銃撃は効かず、複数匹集まった猿から振り下ろされた爪により猟師は致命傷を受け絶命した。
 猟師たちは追い立てていたと思っていたが、実は猿が猟師を狙っていた結果であった。
 そう、人に対して向かっていく性質と複数匹で集中攻撃をする特性も持ち合わせていた。
「ば、化け物だ! に、逃げろぉ!」
 凄惨な光景を目の当たりにした人々は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
 こうして、一般人による駆除は失敗に終わった。
 
 猟銃による銃撃が効かない化け物がいる――そう報告を受けた村長が市へ相談したところ久遠ヶ原学園へ依頼を出すことになった。
 


リプレイ本文

 ●
 
 現地に到着した学園生達。
 現地に着くまで紆余曲折はあったものの、昼前に着くことが出来た。
 
 
 各々の役割をもって動き出す――。
 打って出るために村との境界線を越え山中へ向かう生徒達。
 山中ということで若干、暗い。
 各々が用意してきた装備は無駄にはならなかった。
 
「敵との戦闘は開けたところの方がいいと思う」
 礼野 智美(ja3600)が交戦場所について提案をする。
「村の方々の負担は、極力減らすに越したことはありませんわ」
 村から離れすぎず、近くもない場所であれば、という条件で賛同する桜井・L・瑞穂(ja0027)。
「頭上からの攻撃を極力避けるのにも開けた場所の方がいいわ」
 雁久良 霧依(jb0827)も礼野の意見に同調する。
「私も、そう思う」
 泉源寺 雷(ja7251)もまた、樹上からの攻撃に警戒している一人だった。
 そう、何も正面からの攻撃だけではない――木々を伝って上からの攻撃もあるのだから。
 結果としてこの判断は間違っていなかった。
 
 丁度、先に開けた場所が見つかる――村からの距離にもそう遠くはない。
 
 生徒達は事前に打合せた陣形へと布陣する。
 
 それを待っていたかのように敵も現れる。
 
 
 ●打って出る前衛の戦い〜
 
「早めに討伐した方がいいだろうしね。魔法少女マジカル♪みゃーこ出動するのにゃ♪」
 猫耳尻尾をつけ、魔法少女に変身する猫野・宮子(ja0024)は普段とうって変わって元気な様子だ。
 ポーズを付けて【ニンジャヒーロー】を使う。
 無論、打って出たのは猫野だけではない。
「ここからは……行かせない」
 阻霊符を発動させつつ、【苦無】を構えて打って出る礼野。
 「私はただ、求められた仕事をするだけだ。……今期の野菜の収穫のためにもな」
 同じく、前衛の泉源寺も遅れることなく【烈光丸】を手に動き出す。
「誘い込んだつもりかもしれないけど……誘い出されたのはそっちだよ!」
 阻霊符を発動させ、【斑鳩】に手をかけて攻勢に出る一条 朝陽(jb0294)。
 
 正面突っ切る猫野と礼野、その側面からは泉源寺と一条。
 打って出た四人をみた猿ディアボロは速度を上げて向かう。
「それじゃあ僕の方に集めるにゃよ。援護よろしくにゃ♪ショーターイムなのにゃ♪」
 矢張りというか――何匹かは別に猫野に敵が殺到する。
 殺到する敵は猫野を包囲しようと集まるが――。
 だが、それを礼野・泉源寺・一条が迎え撃つ。
 それ以外にも、中衛からの援護射撃が飛んでくる。
「うに、いくらなんでも全部を食らうわけにはいかないにゃ!」
 早速、【疾風】を使い、回避を重視する猫野。
「通すものか!」
 【闘気解放】して【烈風突】【時雨】を織り交ぜるカウンター重視で向かってくる敵に臨む礼野。
「フォローします」
 敵側面や、援護が効かない敵背後に移動する泉源寺。
「ボクが行く。速さじゃ……負けない!!」
 同じく、敵の側面・後方に【縮地】で移動する一条。
「にゃ、にゃぁ!」
 だが、猫野に対する前衛三人の援護と中衛の援護があったとしても、多勢は無勢だ。
 1対多になりがちな猫野には回避優先と雖もダメージを食らう。
「遅いよ……ィヤァァァッ!!」
 だが、そんな猫野にチャンスとばりに襲いかかる敵を背後から袈裟斬りに斬下げて倒す一条。
「隙ありっ」
 【石火】を使い【烈光丸】で背後の敵を一閃して切り払う泉源寺。
「そこだっ!」
 向かってくる敵に対して【烈風突】の強烈な突きによってカウンターを浴びせて倒す礼野。
 無傷とはいかない4人だが、中衛からの回復を受けてダメージを回復させながら踏ん張っている。
「ギャ!」
 紫炎の体を持つ狐が礼野の死角にいた敵を吹き飛ばす。
「ギャギャ!?」
 飛んできた雷が敵に直撃する。
 中衛の支援が功を奏し、徐々にではあるが敵の数を減らしてきている。
 
 ●要の中衛〜
 敵の襲来。
 前衛目掛けて多数の敵が殺到する。
「さぁ、害獣駆除のお時間ですわ!」
 前衛を突破する敵を警戒しながら、回復役として援護に回る桜井。
「ふむ、おびき寄せるまでもなかったようじゃな……」
 狐珀(jb3243)は人の目を気にすることも無い為に表情が何時もより豊かな表情で中衛として前衛の攻撃・回復役として援護に回る。
「前衛と中衛が分断される。な、ことがないように気をつけないとね――後は、茂みからの奇襲に注意かしら」
 
 前衛への攻撃が始まる――。
 どうやら――一番目立った猫野が集中攻撃を浴びているがここからでもハッキリと分かる。
「わたくしが居る限り、そう簡単に倒れさせはしませんわ!」
 多勢に無勢でダメージを受ける猫野。
 それに動いたのは桜井――【霊光花片】を発動――放たれたアウルの光が様々な花弁の形状となり、まるで花吹雪のように舞う。
「数を減らす必要もあるわね」
 無論、回復も重要だが――前衛の回復をしつつも其のダメージ元となる敵の排除に【雷鳴の魔法書】で攻撃する雁久良。
 スキルの使用も有限なのだから。
「猿の癖に中々良い連携じゃな……、だがそれもこれまでじゃ」
 狐珀は連携して動く敵に感心しつつも、その連携を乱すために【狐火〜幻惑〜】を発動――周囲に幻惑の属性を持つ橙色の狐火を複数発現させて撃ちだす。
 前衛による敵の足止めと排除と中衛によるその援護。
 剣戟の音が、花が舞い、狐火が飛び、雷が飛ぶ。
 時折、雁久良の【ライトヒール】の光が、桜井の【霊光花園】の花吹雪状の光が前衛を癒す。
 ただ、やはり前衛と対峙している山側の方に誤射の可能性もあり、はなかなか援護の攻撃は出来ずにいた。
「逆包囲、という手もあるのじゃが……」
 狐珀は前衛と連携して敵を包囲しようと考えるが――。
「じゃが、嫌な予感がするのぅ……」
 中衛と前衛が包囲した場合、残るのは後衛のただ一人。
 突破されて、村に向かわれるリスクもあった。
「とりあえずは、眼前の敵をどうにかしてからじゃな」
 狐珀は【狐火〜業火〜】を放つ――橙色の狐火を複数発現して敵に向かう。
「少しは、減ってきたようね」
「そうですわね。後、ひと押しという所ですわね……」
 完全支援の桜井と攻撃しつつ支援する雁久良は互いに誰を回復させるか連携している。
「そちらを頼むのじゃ」
「了解ね。じゃあ、私はこっちを」
 後、ひと押しとばかりに、雁久良と狐珀は継続して連携し、前衛の誤射に気をつけながら攻撃を続ける。
 
 敵の数も少なくなったその時――。
 
「にゅふ、いい頃合いにゃ。僕の周りに固まったら良い的なのにゃ♪ 皆、巻き込まれないようにしてにゃよ!」
 猫野は礼野達に距離をとるように言う。
「いくにゃよ!」
 退避したことを確認し、掛け声と同時に――。
 猫野の【土遁】が発動――爆発的にアウルで作られた土が辺りを舞う!
「大分数が減ったにゃね。此処からは僕も反撃するにゃよ! 僕のパンチを食らうにゃ! 猫ロケットパーンチにゃー!」
 【マグナムナックル】で攻撃に転じる猫野。
「これで終わりだ!」
「いざ」
「いっくよー」
 礼野、泉源寺、一条達も攻勢を強める。
 前衛と中衛の協同の元、敵を倒したと思ったが――。
 茂みに隠れていた敵が、前衛と交戦している敵に火力を集中している隙に突破を図ろうとする。
「くっ、抜かれましたわ。お願いしますわね……!」
 中衛を抜け後衛と向かう敵。
 それを追う、桜井、一条。
 
 ●後衛の戦い
 少し遡る――
 グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)は敵の突破を危惧して後衛として布陣していた。
 位置取りとしては――田畑の様子と前衛を目指できる位置だ。
 程なく、前衛組との戦闘が開始される。
「農家にとって今が一番大事な時期のはず。美味しい野菜を作ってもらうためにも、ここは頑張らないとね」
 遠距離攻撃できるスキルは有限だ。
 囲まれる形になりそうな猫野、それを援護する他の前衛。
 直ぐ様、中衛が前衛の援護を開始する。
「……出番はなければいいですが――」
 現状、前・中衛と敵の交戦は厳しいながらも善戦しているのが見て取れる。
 だが、何が起こるかわからない――。
 ふと、猫野の周りから前衛が後退する――。
 刹那、爆発的な土の巻き上がりが起こる。
 それが合図のように、反攻を強める前衛。
「――倒した? ん?」
 だが――。
 攻撃の隙を突いたのか、茂みに隠れていた敵がこっちへと向かってくる。
「くっ、抜かれましたわ。お願いしますわね……!」
 抜かれたことを知らせられる桜井の声だ。
「確かに素早いね。でも、簡単に通すわけにはいかないよ」
「貫け、電気石の矢よ」
 グラルスは向かってくる敵に対して【トルマリン・アロー】を放つ――先端が矢じりのように尖り雷を纏った結晶が放たれる。
 敵は油断していたいのだろう――グラルスの放った攻撃の直撃を受ける。
 間髪をいれず、更に【トルマリン・アロー】を放つグラルス。
「僕を狙っても無駄だよ。……これでどうだ!」
 続けて【ジェット・ヴォーテクス】を発動――激しく巻き起こる漆黒の風の渦に巻き込まれる敵。
 
 追いかけて来た、桜井、一条も攻撃に参加する。
 挟撃する形となり、突破を図ろうとした敵を全て倒すことに成功した。
「これで、終わりかにゃ?」
「だと、良いが……」
「また出てこないよな」
 猫野、泉源寺、礼野は辺りの茂みに敵が残っていないか警戒しながら索敵する。
「私達も探しましょう」
「そうじゃな」
 雁久良と狐珀とポジションを維持しつつ索敵に当たる。
 だが、敵の姿は見当たらなかった。
「念のためじゃ。体力回復しておいたほうが良いじゃろう」
 狐珀の【癒しの尻尾】<治癒膏>で、もふもふしながら体を癒す前衛だった。
 
 ●戦闘終わって
 桜井と共にいる猫野。
 どうやら、桜井は囮となった猫野を労っている様子だ。
「ふぅ、なんとか無事に終わってよかったかな?これで田畑も……ふぇ?……ぁ、きゃぁ!?」
「宮子!?」
 ダメージを受け続けていたせいか、服が脱げ落ちてしまった猫野。
 其の様子に驚く桜井。
 ある意味、変身が解けてしまった状態になったので普段通りの猫野に戻った。
「これ。良かったら、使って」
 惨状を目にした礼野が【軽量男子制服】を猫野に貸す。
「……ありがとう」
 身長が170cm礼野と140cm猫野の差のため、多少ダボ付く形だが男子制服を着た猫野であった。
 
 ハプニングをはさみつつ、一行は念の為に田畑の確認へ向かう。
「何とか守れたね。この分だと、今年も期待してよさそうだ」
 荒らされた様子がない田畑の様子を見たグラルスは安心した様子だ。
 依頼が完了した旨を連絡した為か、退避した村人も一部戻ってきているようだ。
「おお、お稲荷さまじゃ」
 狐珀を見て手を合わせて拝む老女。
 いつもの様に、着ぐるみだと誤魔化す一場面も。
 泉源寺はどうやら幾つかの野菜を購入しているようだ。
 まさに、今守った畑から収穫できそうな野菜を渡す村人。
「うん。悪は滅んだ。守れてよかったよ」
 そんな様子を見ていた一条も守れた実感から戦闘からはうって変わって笑顔だった。
「木々も無事……畑も無事。良かった」
 男勝りな礼野の表情に安堵の表情が映る。
 
 こうして、山間の村を襲った猿ディアボロは学園生達の働きによって殲滅された。
 各々のポジションを全うした勝利とも言える。
 
 襲われる田畑 Fin


依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
ラッキースケベの現人神・
桜井・L・瑞穂(ja0027)

卒業 女 アストラルヴァンガード
雷よりも速い風・
グラルス・ガリアクルーズ(ja0505)

大学部5年101組 男 ダアト
凛刃の戦巫女・
礼野 智美(ja3600)

大学部2年7組 女 阿修羅
命を繋ぐ者・
泉源寺 雷(ja7251)

大学部4年240組 男 阿修羅
特攻斬天・
一条 朝陽(jb0294)

大学部3年109組 女 阿修羅
群馬の旗を蒼天に掲げ・
雁久良 霧依(jb0827)

卒業 女 アストラルヴァンガード
久遠ヶ原のお洒落白鈴蘭・
狐珀(jb3243)

大学部6年270組 女 陰陽師