●\プールだー!/
メッチャ笑顔の棄棄が、白目を剥いている久我 常久(
ja7273)@縄でぐるぐる巻きをお姫様だっこでデェンと登場!
何でも、
水着を『着る』という事は『着替える』という行為が発生する
→ならば行かねばならない、それが男たる者の宿命
→遁甲の術&変化の術で女子に変身すれば何の問題も無く堂々と更衣室に入れる
→これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては大きな飛躍である
→さぁ、オープンザニューワールド!
→(//ワ´)<よう、俺だぜ
→あ、やっぱり先sアッー!
だそうです。
そんなこんなで水着に着替えた生徒達の眼前には、ビニールプールだ。
「ビニールプールなんて……小学校低学年のとき以来じゃないかな?」
「夏らしくていいですね」
スクール水着の六道 鈴音(
ja4192)がしげしげとプールを眺め、海水パンツにパーカー姿の安瀬地 治翠(
jb5992)が微笑ましく目を細める。
「拙者、冥界の故郷に居た頃は、毎日のように海で泳いでいたのでござるが、『ぷーる』というのは初めてなのでござる!」
「わー、私もプールって初めてですよーぅ」
やはり天魔にとってプールとは物珍しいようで。楽しみでござるよ〜♪とエイネ アクライア(
jb6014)は笑みを零し、ミーノ・T・ロース(
jb6191)もにこ〜っと応える。暑い日々が続いているので、こういう機会はとても嬉しい。
どっこい彼女等の恰好は中々にアレだった。エイネはフンドシ&サラシ、ミーノはそのドデカイ体には全力でサイズ不足の紐ビキニをゴリ押しで着用。
「今日はぁ、こ、これしか水着の準備が出来ないので……」
もじもじ。なんでも、特注サイズのスクール水着がまだ届いてなかったそうです。でも棄棄先生曰く「可愛いじゃん!」だそうです。
「俺も、この格好でよかったんだろうか……」
同じく気恥ずかしそうにしている崎宮玄太(
jb4471)。おろしたてのフンドシ一丁。こうやって遊ぶ事も初めてで、戦闘とは別の意味で緊張が。そして水着の女性達。じろじろ見るのも躊躇われるし、何より変な誤解は受けないように気を付けないと。
(とりあえず久我さんの方を見とけば問題ないよな……多分)
縋る様な眼。棄棄と彼にお姫様だっこされている常久へ。すると教師と目が合った。
「わー玄ちゃんかっわええ! フンドシ似合ってるぜ!」
俺の目に狂いはなかった。常久をぺいっとその辺にほっぽり、棄棄は玄太をもふもふもふもふ。可愛い可愛い。
「とても面白そうですね、わたしも仲間に加えてください」
皆が早速わいわい始めたそこへ、雪成 藤花(
ja0292)。チェック柄が可愛いAラインワンピタイプの水着の上にパーカー、軽く髪を束ねてその上に花飾り付きの麦藁帽。パーカーのジッパーをしっかり締めているのはやっぱりちょっぴり恥ずかしいからだ。
「うむ、お前もプールを堪能するが良い」
プールでばっしゃばっしゃしていたクリスティーナが振り返る。うん、と微笑み頷いて、藤花もプールへ。そろっと、踏み入れば爪先を濡らす冷たい感触。暑い日差しに丁度良い。わぁ、と心地よさに呟いた所で。ばしゃん。水をかけられる。
「はわっ!? 冷たっ」
「こうやって水を掛け合うべしと教師棄棄が言っていた」
真顔でクリスティーナが見ている。その間にも羽をわっさわっさして水をばっしゃばっしゃ。濡れたらどうなるんだろう、と藤花ちょっと気になっていた天使の翼は既にボットボトだ。濡れた羽をわさわさ&水を掬いあげるで黙々と藤花に水をかけまくっている。
「もう……!」
やったなー、と笑みを浮かべて。藤花も反撃開始。何だか楽しくって笑みが零れる。きらきら、水飛沫が輝いて奇麗だ。
そんな二人に、更に水。「うわぁ」と同時に濡れた顔で見遣ってみれば、ドヤ顔で水鉄砲を構えた鈴音が。
「ふっ……、人間界の水遊びってやつを、その身体にたっぷり教えてあげますよ!」
言いながら、投げ渡すのは水鉄砲。
「抜きな。私は丸腰は撃たない主義だ」
きりり。さっきの不意打ちは気にしたら負けだ。天使は水鉄砲と鈴音を交互に見ている。そして、頷いた。
「面白い――受けて立とう。雪成、援護しろ!」
「えっ えっ えええっ!?」
「二対一ですか、上等! それじゃあ、いきますよっ!」
「覚悟ッ!」
「ええええええーーーっ!?」
猛然と始まる銃撃戦。羽も使って水を撒き散らすクリスティーナ。無駄にスタイリッシュに転がったりして引き金を引く鈴音。おろおろしている間にクリスティーナからも鈴音からも撃たれまくってボトボトになる藤花。
「〜♪」
そんな傍らで玄太は、水上歩行を応用して水上に寝そべっていた。ビーチボールを抱えて、太陽の当たる前面と水に浸かる背中の温度差が心地よい。
が。そんな折に、件の水鉄砲大戦の水がばしゃあ。うわぶっ。だが黙ってやられる玄太ではない。こんな時の為の護身用(?)水鉄砲!
「お返しです!」
玄太参戦。そして激化する水鉄砲大バトル。水の音とハシャぐ声。飛び散る飛沫に、虹が出来る――
の、一方で。エイネはのほほーんと爪先で水面を掻いて初めてのプールを満喫していた。
「泳ぐには物足りぬでござるが、これはこれで楽しいものでござるな」
ですねぇ、と傍らにてミーノが頷く。ちゃぷちゃぷ、揺れる水面に揺らぐ光。
そんな最中。エイネはきょろきょろと、周囲を確認する。良し。OK。準備完了。ぐっと身構えて。
「とりゃーーーっ!!」
ダイブ。後ろへ。ざっぱーーん。巻き起こる波。ぶわっしゃーん。それは傍に居たミーノはおろか、水鉄砲大戦を繰り広げていた者達までも全力で巻き込んで。
「はふぅー……気持ちいーのでござるぅ〜〜」
ほくほくご満悦。エイネは自身が起こした波にゆらゆら揺られて。そんな中、ふっと。周りを見てみる。うん、さっき確認したし被害はない、筈?
――向けられる水鉄砲の銃口。
「にょわーーーっ!!?」
ばしゅー。
嗚呼、とても楽しげだ。治翠は目を細めてそれらを見守っている。その横では、大きなパーカーのフードを目深にかぶりつつ時入 雪人(
jb5998)がダレていた。
「暑いし日差しが強い……」
そして想像以上に、教師や皆のテンションが高かった。いや、最低限の挨拶は出来たけれども。これでも一応当主なので。でも、ひきこもり体質にはちょっと厳しい、かも。なので分家の友人の背中にいつも通り、スススッと隠れようとしたが。
「雪人さん、逃げない様に」
ニコニコ、治翠に肩をやんわり掴まれて。
「これは修行です、学園の方々に慣れる為の。ほら、後ろに隠れない様に」
「分かったから……ハル、押さないで」
浅い溜息。返って来るのはやはり笑顔。ぽん、と少年の肩に優しく手が置かれる。
「いい天気ですよ、空、好きでしょう」
「空は好きだけど日差しが強いよ、溶ける……」
「それもまた一興、ですよ。楽しんでいきましょう」
はーい、と諦めたような雪人の返事。掌から生み出した氷で冷やした水に脚を入れればキンと冷たい。ばしゃり。それを揺らせば揺らぐ水面。ばしゃ、ばしゃ。そんな程度だけれども。何故か、心が躍るもので。
「人間界ではな、こういう高度な遊びがあるんだ。ただ遊び終わったらこの紐は解くモンだ。皆薄情者でワシの事無視していきやがったんだ!」
解いてくれないか? 簀巻き常久はクリスティーナへきれいなまなざしを。だがにょっきり現れたのは棄棄だ。俺だ。んもうしかたのないコねとかうふふしながら縄をハラリ。すると現れるのは虎柄のマンキニ装備のモッチリぼでぃ!
「このはちきれんばかりの水着堪らんだろう? ふふふプールに着たからには泳がねばなるまい!」
「ポロリはありますか?」
「ぬおぉ! やめろずらそうとするな! あ、意外とこの水着脱げ易い……!?」
「しかたのないコね」
棄棄に肩紐部分を指で抓まれものっそいギリギリ上げてからパッチーーンされました。からのぽんもち。常久ちゃんすきよ。
「……ふぅ。今日はこれぐらいにしておいてあげるわ」
水鉄砲大戦が一段落し、鈴音は息を吐く。だが、メインはこれから。常久をぽんもちしている棄棄へ視線を向け。
「先生、覚悟っ!!」
真の目的へ、水鉄砲発射!
「しかし残念、常久バリアーーーッ!」
「グワーッ!」
「ふ、流石……やりますね棄棄先生。どちらが屋上最強のガンマンか、はっきりさせましょう」
先程と同様、棄棄へ水鉄砲を渡しつキリッと鈴音は言い放つ。ルールは簡単。背中合わせから3歩、早撃ち勝負。いいぜ、かかって来い。怪人は不敵に笑んでそれに応えた。
1、2、3――
「もらった!!」
「玄ちゃんバリアー!」
「「えぇーっ!?」」
そんなこんなで玄太を盾にした棄棄は鈴音のほっぺむに。もふもふ。水鉄砲びちゃー。
「くっ……弾切れみたいね。命拾いしたわね、棄棄先生!」
そして鈴音のこの捨て台詞である。
棄棄はケラケラ笑っていた。そんな彼を、藤花は見。目を細める。背中を除き、その肌の彼方此方に刻まれた傷。鉤爪で引き裂かれたのだろうか。魔法で焼かれたのだろうか。弾丸に貫かれたのであろうか。エトセトラ。きっとわたしなど足元に及ばぬ経験を積んでいるのだろうな――改めるのは尊敬と憧れ。
あと、それから。
「UVケアは大切ですよ……! 日焼けは火傷と同じだから、ちゃんと対策や処置をしないとなんですよっ」
白い棄棄の肌を見ていてつい。取り出す日焼け止め。気をつけて下さいね、とそれを手渡した。なんて良い子なのかしら。棄棄はそんな彼女をイイコイイコなでなでなで。
●\スイカ割りだー!/
ころころ。二つの大きなスイカ。プールで良く冷えた緑に黒縞。
「よく冷えましたし、おやつにしましょう」
折角だし、西瓜割もいいかも? そんな藤花の提案、は満場一致で賛成。
とゆ訳で、ジャンケンポンで順番を決めて。
「こういう時、右とか左ってよく分からなくなりますよね」
何故か俺が、と思いながら。雪人の手には棒。目には布。
「右です、あぁ、もう少し左で……頑張って下さい雪人さん、交流です、大事です」
「ハル、もう交流とかそのレベルじゃないよコレ」
治翠のナビに右往左往。そしてプールに蹴躓いてダボーン。治翠にバスタオルでふきふきされる羽目に。
二番手、クリスティーナ。
「せやァッ!」
心の目で見るのだ云々言いだして本当に割りおった。
「西瓜がいっぱいあるな……?」
そんな女子達の様子を常久はガン見している。超ガン見。あっいけないコめ。棄棄先生の鮮やかなモンゴリアンチョップ。腹を揉んでおきました(//ゝ´)b
三番手、玄太。
「真っ直ぐでござ、ちが、もう少し左! 後ちょっと、一歩分! 行き過ぎでござる、少し戻って!」
エイネの応援にはわはわなう。騙す等せず正しく! とエイネは一生懸命応援している。どっこい、玄太ははわはわしすぎて見当違いの場所を叩いてしまったそうな。
「ぬぅ! ここは拙者が!」
四番手、エイネ。興味津々。わくわくそわそわ。目隠し装着。そして何故か始まる棒を軸にぐるぐる回る大回転! バットでよくやるアレ!
「はれ〜 真っ暗 なのに 世界が 回って るで ござ〜〜〜」
ばたんきゅーざっぱーん。プールIN二人目。
んもう仕方ないわね諸君は。五番手、棄棄。
「たくえつしたぎのうをもつるいんずぶれいどれべるいっせんまんすきる 『西瓜切断波』!!」
ぱこーん。
そんなこんなでスイカも割れたら、おやつタイム。
持参したカキ氷機で氷を削り始めた玄太を、エイネはじっと見。
「かき氷……で、ござるか……これ、使えるでござるか?」
ぴきん。能力を使い、掌に生み出す氷の塊。
「いいですね、面白そうです」
「おぉ! どんどん作るでござるよ!」
そんなこんなで作られる、氷スイカとかき氷。回を重ねる毎に、エイネも氷を生み出すのが上手くなり。
「あ、美味しいですね作って貰った氷で作ったかき氷」
「良しッ……拙者、天然氷を目指すのでござる!」
天に拳を突き出しつつ、何故か明後日の方向に決意する悪魔なのであった。そんな彼女に苦笑しつつ、玄太は年長者の常久から順にかき氷と氷スイカを配っていった。
「首等に当てると気持ちいいですよ」
エイネと同じ能力で、治翠は作った氷をタオルに包み皆に渡してゆく。ついでに、クーラーボックスで良く冷やしたドリンクも。
氷スイカを種も残さず一気にかき込んでいるいる玄太の傍ら、鈴音はアイスキャンディーを食べていた。
「プールで食べるアイスは最高ね。棄棄先生やクリスさんも食べますか?」
「頂くぜー」
「アイス……か 嫌いではない」
もぐもぐ。座ってアイスキャンディーを食べているクリスティーナ。その傍らに、藤花はちょこんと座り。
「たまにはこういう水遊びも楽しいですね」
「うむ。実に有意義だ。鍛錬も必要だが、息抜きもまた不可欠」
天使の横顔はいつも引き締められているが。でも、どこか嬉しそうで。楽しんでいるなら何よりだ。藤花も釣られる様に微笑んだ。
「カーティスさんはとても楽しそうですね。天使、気になりますか?」
治翠は雪人に目線を送る。一瞬の沈黙。ふいにこっちを見るクリスティーナ。
「あ、天使さんですか。初めまして、時入雪人です」
「クリスティーナ・カーティスだ。宜しく頼む」
「カーティスさん、天界には海とかプールってないんですか?」
「おそらく、探せばあるのだろうが。こうやって『遊んだ』のは今日が初めてだ」
うむ、と頷きアイスをもぐもぐ。見守っていた治翠が雪人に言う。
「棄棄先生といい、この学園には人に天魔に問わず色々な方がいますね。……楽しくなりそうです、ね、雪人さん」
「うん、楽しくなりそう。……でもまだ引き篭っていたいかも」
夏は暑いし。見上げた太陽。ギラギラ、夏の気配。青い空。
そうして楽しい時間はしばし続く。
因みに、常久がまた覗きをやらかそうとして……
「フハハ! 二度目があるとは思うまい!! ワシの勝ちだ! 第二部完! 届け、ワシの思い……!」
「きゃっ、つねひさくんのえっちぃ☆」
「ゲゲーッ棄棄先sアッー!」
とかなってたのは、また別のお話。
『了』