●アーユーレディ?
「ニンジャヒーロー!? NINJAに憧れてはるばる日本に渡ってきた僕にそれをやれとは、さすがは棄棄先生、素敵過ぎる! そこに痺れる憧れるぅ!」
「ニンジャヒーロー!常々羨ましいと思ってたスキルなんだよネ♪」
「ふ、つまり私のシリアスかっこよさをあっぴぃるしろ、という事だな……?」
ガタッと反応したエイルズレトラ マステリオ(
ja2224)に、きゃっきゃとハシャぐフェルルッチョ・ヴォルペ(
ja9326)、不敵に笑む七種 戒(
ja1267)。「センセーの為だ、いっちょはっちゃけますか!」
「やるからには頑張らなきゃね」
麻生 遊夜(
ja1838)と来崎 麻夜(
jb0905)も同時に頷き、やる気満々だ。
「見せてやろう、かつてのニンジャ好きの子供の力を!」
良い大人の本気。男はいつだって少年なのだ。すっげえわくわく。でも矢野 古代(
jb1679)は節度も守る紳士なのだ。
「ニンジャヒーロー……ニンジャ……忍者といったらあれかなぁ」
「たのしみなのー! ヒーローやるのー!ピンクとか白とか……あ。いいこと思いついたのー!」
「……忍者に対していろいろと偏見があるみたいですけど、せっかくですから楽しませ貰いますね」
あまね(
ja1985)、土方 勇(
ja3751)がそれぞれにニンジャを思い浮かべる中、楊 玲花(
ja0249)は苦笑を浮かべるも浮き立つ場の空気を楽しんでいた。が、一方で東 冬弥(
jb1539)はキョドり顔だ。
「うわおー……どうして俺ちゃんこの場に居合わせちゃったんだろー」
この見知らぬ大勢の前で一発やらかせとかマジ無理ゲーじゃね? と。元重度のひっきーニートには辛い雰囲気である。
「これだからリアルは困るわぁ……いやまぁはい、がんばりまっす……」
冬弥と秋月 玄太郎(
ja3789)の溜息が重なる。
「ニンジャヒーローって……確かに忍軍のスキルにはあるんだが……明らかに、明らかに間違っている。何もかもを間違えているスキルだろこれ」
第一、忍者が目立ってどうする。目立ちたいなら最初から忍軍以外になれよ、と。
「あーわかったわかった……だったら、半裸に頭巾でうぉぉぉぉぉぉぉっ!! とか雄たけび上げてみたらどうだ? 俺はやらないけどな」
「空気は吸うものだけど読むものでもあるんだよ生徒秋月!」
そんな棄棄の笑顔がありーの波乱がありーの。
「みんな、ニンジャヒーローやりたいかー! 罰ゲームは怖くないかー!」
マイク片手の酒井・瑞樹(
ja0375)の声にわぁーっと湧く教室。皆がどんな技を魅せるのか、楽しみだ。そんな期待の色を浮かべる彼女に対し、北条 秀一(
ja4438)は何故この様な事態になった、と頭を抱える。忍ぶ事をしないニンジャの群れをみて、若干自身の忍者に対する概念が揺らぎ始めているが……気を取り直して。彼らが示す『ニンジャ』をいうものを観察していこう。
何故なら瑞樹と秀一は解説担当なのだから――そして裏方担当はテト・シュタイナー(
ja9202)、『寧ろやらせろ』な勢いでやる気十分。
「爆発は芸術だぜ。ってことで、シミュレートなら俺様に任せな!」
持ち込んだノートパソコンには爆発や発光等を計算する為のソフト、その場でシミュレート。爆発系演出で建物が破損しないよう天井や壁を防火シートで保護するなど完璧だ。
「いいねぇ、爆発こそ芸術ってもんよ。んじゃ、実践といこうぜ」
「オーケィ、そんじゃいっちょ始めようぜ! レッツニンジャヒーローッ」
解説二人の横にちゃっかり座った棄棄の合図で、はじまりはじまり。
●桐生 水面(
jb1590)のターン
「フフフ……こういう時こそ賑やかし担当のうちの出番やな!」
一番手。切り込み隊長。派手にやってやろうじゃないか。そう言う訳で、手に持つのは手榴弾――を、皆へと投擲する。見開かれる皆の目、空中のそれは大量の煙幕を発生させて一体を真っ白に染め上げてしまった。
何も見えない視界――彼女は何処に? 煙が晴れたそこには居ない。
「ハッハッハッ! うちはこっちやで!」
快活な声。振り返ってみれば一番後ろ、机の上に立ち流麗な緑髪を靡かせる水面の姿が。彼女はハイドアンドシークを用いて密かに机の上へ移動していたのだ。ちゃんと靴を脱いで机の上に立っている辺りがCOOOLである。晴れ晴れと高笑い。
「そして、忍者と言えば……なんといってもド派手な忍術や! 見よ! 忍法、火遁!!」
バッと両手を広げる。刹那、天井付近に幾重もの炎が花開く――ファイアワークス、色鮮やかに。
が、生徒達は気が付いた。いつの間にか水面の高笑いが聞こえない。見遣ってみれば、先の机の上にも居ない。
彼女は何処に?
それは、教室の外。
「任務完了……なんてな♪」
ハイドアンドシーク。ニコッと口角を持ち上げた。
「一番手、見事なニンジャヒーローでしたね。ナイトウォーカーの技能を忍術にした素晴らしい構成でした。靴脱いで机に立った点もGOOODです」
棄棄曰く、だそうです。
●レナ(
ja5022)のターン
まだ修得していない技能だけれど、いつかきっとニンジャヒーロー!
「レナちゃんも凄いニンジャヒーローやってみるのだ!」
と。そう考えていた時期が私にもありました。
(……目立つってなんなのだ?)
考えるな、感じろ!
(あと、みんなきっと危ないネタいっぱいなのだ!! レナちゃんも危ないネタだからきっとそうなのだ!)
キリッ。
「レナレナざえもん、救いのヒーロー!」
デデーン!
「ニンジャのニンジャによるニンジャのためのスキル! イッツ! ニンジャヒーロー!」
ドドドドド……
ズキュゥウウン!
「や、やったッ!」
「流石レナ、俺達に出来ない事を平然とやってのけるッ!」
「そこに痺れる!」
「憧れるゥ!」
瑞樹・秀一の熱くなる実況。因みに秀一は某ゲリオンの某指令の様にテーブルの上に肘を乗せて手を組んだポーズ。ずっとこれでいくそうです。そして瑞樹はその背後に立ち、
「これが死海文書に記された鬼道忍軍補完計画……」
そんな意味深(?)な合の手。
話を戻してレナのソレを具体的に説明すると、取り敢えず爆発しました。
「やっぱ、実際にやると迫力が違うな、こりゃ」
テトのサムズアップ。一方のレナは爆発コント状態(コゲコゲ顔にボロボロ服にアフロヘア)になって、「けふん」と煙を口から出していた。
「芸術は爆発、そんな言葉がピッタリなニンジャヒーローでしたね。それじゃ次いってみよ〜!」
●あまねのターン
「にんじゃー!」
彼女が身に纏っているのは、ヒーローっぽさを演出したミニ丈着物ドレス。すっきりしたデザインでありつつもリボンやフリルで飾り入り、勿論ひらひら成分を忘れずに、尚且つニンジャっぽく手甲脚絆も忘れずに。
「これは可愛らしいニンジャヒーローだな」
「ですね。何でも、『古き良き少女英雄モノの系列をひきつつ』がコンセプトだそうです」
「ひらひらと布が踊るのが可愛いですねー」
棄棄と実況二人が見守る中、少女はふわふわしたロングヘアを靡かせてくるくる、くるくる。
そこからぴたりと止まれば、ひらひらがふんわり落ちる。そのタイミングできりっとポーズ!
「にんじゃひーろー、さんじょーなのー!!」
くるんと回って、ぴょんっとジャンプ! アクション系の人が多いと予想した故に、可愛さで勝負。実際可愛らしい。
「これが『可愛いは正義』とやらですね先生」
「可愛らしいニンジャヒーローでしたね〜。これを上回る可愛らしさは登場するのでしょーか!」
棄棄のその声に、ガタッと立ち上がる者が一人――
●ヒロインこと森浦 萌々佳(
ja0835)のターン
可愛いと聞いて。
可愛い……それはつまりヒロインの出番!
「最近ヒロインって所がないのでここでヒーロー……ではなくヒロインになりますよ〜!」
今日こそヒロイン、狙っていきますよ〜!
そう言う訳で萌々佳はその背に小天使の翼を生やし、周囲の注目を集めるオーラ『タウント』を発し――にこにこ、その手に掲げるのは使い込まれた釘バット。
ザッ、と。退いた。彼女の周りから人が。得も言われぬ悪寒……というか本能的危機感の為に。
「流石萌々佳ちゃん……神々しいぜ! 色んな意味で!」
ゴクリと息を飲む素敵を始め皆が見守る中、ヒロインはえ〜いと窓から飛び立った。ふわふわひらり、羽がぱたぱたとってもファンシー☆ だが釘バットだ。そのままそのヒロイン☆鈍器を大上段に構えるや――急降下!
「あの技は……!」
「知っているのか北条さん」
「ヒロインのみに許される秘儀、ヒロイン急降下!」
そんな解説もありーので、萌々佳は重力に乗ってぐんぐん速度を上げる。因みにこの間もずっと笑顔です。その視線の先、グラウンドには南瓜が一つ。それ目掛けて萌々佳は釘バットを振り下ろす!
「撲殺天使ブッコロコロアターック☆」
ボグシャァ!(とてもぐろてすくな音
南瓜無惨。粉砕玉砕大喝采。
「とてもいい笑顔でしたね。本人は『天使的ヒロインアターック!』と言いたかったそうですが、どう思いますか先生」
「そうですね瑞樹ちゃん、どうやら萌々佳ちゃんの本能が勝っちゃったみたいです。先生が思うに、萌々佳ちゃんは久遠ヶ原でトップクラスの釘バットを使いだと思うの。
っていうか、装備武器が『ドラグーンハルバード、鉄パイプ、釘バット』で戦慄の様な物を覚えた先生です!萌々佳ちゃんは可愛いですね、マジヒロインですね! にこ!」
※南瓜はあとでスタッフが美味しく頂きました。
●勇のターン
粉砕玉砕大喝采に南瓜の残骸がぶちまけられた運動場――その地面の下に、勇は潜んでいた。
(あと少し南瓜の位置がずれていたら死んでいた……!)
発動させていた鋭敏聴覚に『撲殺天使ブッコロコロアターック☆』と『ボグシャァ!』がダイレクトアタックでした。南瓜の真下に潜らなくって良かったね!
それはさておき自分の出番だ。気を取り直して深呼吸一つ。
この世を切る影の台詞の後に地面より飛び出し空中で一回転――三連星の鉢金付き頭巾を被り、六尺手拭で鼻と口を覆った全身黒装束の出で立ちだ――着地の直後、決めポーズと共に言い放つ!
「……天魔覆滅!」
言下、背後にズドーンと大きな火柱。
(演出としては地味かも……)
でも反省も後悔も無い。渾身のドヤ顔。顔覆ってるけど。
が、何だか教室から自分を見ている人がざわついている。あれ燃えてね? 燃えてるんじゃね? と。
「?」
何の事だと思って――そういやなんか焦げくさいな――振り返ってみれば、お尻に火が点いているではないか!
「あっつ!? あちゃちゃ、ひ、火がぁ!?」
ごろんごろん。幸い一大事にはなりませんでした!
「やっぱヒーローは背後爆発だよね! お尻の火事的にも注目度はグレートだったと思います」
●ネピカ(
jb0614)とエイルズレトラのターン
「…………」
鏡に映っていたのは――首から下のピンクの全身タイツ、その上に丸に『忍』の文字の腹掛け、蹼のあるピンクの手袋と足袋、膝下から足首までは包帯、首には緑色マフラー、頭に紙皿、顔に黄色の付けクチバシ、背中には緑色の甲羅型リュック。
(うむ。『イタズラ河童忍者モモラッパー(桃乱破)』完成じゃ♪)
無表情のまま力強く頷いたネピカは遂に本番の為に戦地へと赴いた――ガララッと戸を勢いよく開ける。
「こ、これは……!?」
「ピンクで混沌として名状し難いカッパの様なサムシングだな」
実況の瑞樹と秀一、他の生徒が見守る中、ネピカが取り出したのはカラースプレー。黒板にブシュー。
『NヨPIKA』
「あぁ〜っと! Eが! Eが逆だぁ〜っ!」
「黒板に堂々とカラースプレーとは……侮れん!」
実況の面々、そんな事より黒板が! 取り敢えず掃除押し付けられるのが嫌なのでネピカはコミカルな無声演技でトンズラばびゅーん。
が、その前に高笑いと共に立ち塞がるのは――カボチャマスクに黒いマント、シルクハット、タキシードを纏ったエイルズレトラ! トランプがブワッサァァァと舞う!
「我が名は怪盗パンプキン――ゴフゥッ」
どっこいネピカの石頭による頭突きがめり込む! そして謎の爆発! ふっとぶカボチャマスク、窓から落ちる怪盗パンプキン。
「怪盗パンプキン……一体何者なんだ」
でもチャッカリ教室にいましたとさ。そして再度石頭がメコンッ……
「凄い個人的な事だけど、ネピカちゃんのオリスキ名が石頭ばっかで腹筋崩壊した先生でした」
石頭<サイドステップ>がお気に入りです。
●兎吊 卯月(
jb1131)のターン
「しかし困ったな、黒板に『NヨPIKA』ってあるが」
「そんな時は私にお任せ!」
棄棄の困った声に大きな返事を返すと共に窓をバーンと開けたのは僕らのウサたんだった。
「小学校の檻の中の兎は世を忍ぶ仮の姿! ニンジャ兎ここに見参! です!」
てれってー。モップ片手にニンジャ兎参上。謎の効果音と共にモノホンのウサギ達と乗り込めうおおー! でも窓は律儀にきちんと閉めます。
しかし何故こんなにも色んな意味で目立つのに誰も気に留めなかったのか?
忍んでたからさ!(ドン★)
「ヤッ! セイッ! ハァッ!」
まるで舞うかのようにモップで汚れという名の敵を倒していけば、あっという間に教室はピッカピカ!
「私に敵(汚れ)なし! 我等が教室に一点のくもりなし!」
ででーん。
ドヤ顔で決めポージングをすれば、そのままピピーと笛を吹く。
「はい、解散です」
手をパンパン。本物のウサギ達がぴょんぴょん跳ねて退場してゆく。それらを穏やかな目で見送って、何事もなかったかの様に着席。モップ片手に。
「何がしたかったかと? ……掃除系ニンジャ兎ヒーローって斬新じゃないですか……」
もふもふ。ピッカピカになった窓を眺め、大満足。
「いや〜斬新でしたねー」
「お陰で教室もピカピカになったしな。……まぁ、この後の演技でまた汚れるとは思うが!」
「モフモフ&グレートなニンジャヒーローでしたね〜。うさぎさんかわゆい。もふりたい」
●柏木 優雨(
ja2101)のターン
「……」
目立つのはあまり得意じゃない。自分らしく決まればいいかな? と、深呼吸一つ。
そして放つのは煙幕手榴弾だ。濛々、白、その中から現れたのは氷の蝶――ひらひら、優雅に舞う。優雨がスキルによって作り出した蝶だ。
その翅は優しく光る淡い光球に照らされて、キラキラと反射して煌めいた。
幻想的な光景――その中央にて憂いを思わせる眼差しを中空に向けているのは優雨、黒い布地に雪の結晶が描かれた着物に、烏の濡羽色の長い髪は雪花の簪でとめて、口元は扇子で隠し。ミステリアスで、どこか妖艶。普段のおどおどした様子から打って変わって、雅やかな女性。
優雨は頑張って演じていた。雅過ぎて忍者じゃない気もするが、ニンジャだから問題ない! 背が低いのがアレだが、そこは演出で頑張る!
「綺麗ですねぇ」
「『派手』とはまた趣が異なった目立ち方だな……こういうニンジャヒーローもあるんですね、先生」
「ビューティホーで非常にグッドです」
●姉弟ニンジャのターン
設置されたラジカセから流れてきたのは、なんともジャポニズムでフジヤマゲイシャーなミュージックだった。
その後に何処からともなく現れたのは、スポットライトに照らされた緋伝 瀬兎(
ja0009)と緋伝 璃狗(
ja0014)の姉弟コンビ――遁甲の術によって身を潜めていたのだ。
キッと息を合わせて見得を切り、二人は朗々と名乗り上げる!
「人の世界を守るため」
「天魔覆滅志し」
「久遠ヶ原に降り立つは」
「忍びの業持つ二つの炎」
「緋伝 瀬兎!」
「緋伝 璃狗!」
「「さぁ、いざ尋常に勝負せよ!」」
瀬兎のニンジャブレード、璃狗の忍刀・雀蜂を交差させ、二人揃ってドドンとポーズ! それの直後にBGMの爆発音がド派手に彩り締め括った。
「決まったぁ〜ッ!」
見事なニンジャヒーローに実況の瑞樹も盛り上がる。
「うーんナイスでしたね! 姉弟ユニットってのも高得点です。息ぴったりでとってもイケイケでした!」
棄棄のコメントと拍手の中、瀬兎はカラカラ笑ってそれに応える。一方で璃狗は両手で顔を覆って絶望ポージング。
(……悪ノリし過ぎた)
元々目立つ事を好まない。先のノリだって、瀬兎のノリに引き摺られていただけだ。つまり恥ずかしい。超ハズい。
「あ、因みにこの口上は弟さんの璃狗君が考えたそうです」
(や、やめろぉぉぉぉぉ)
先生の容赦のない追い打ちに崩れ落ちる。
「ねー璃狗、なんで落ち込んでるのー?」
そんな弟の事など露知らず、瀬兎は楽しそうに、凹んでる弟の背中をバシバシ叩いているのであった。
●眼鏡とクノイチのターン
「忍者、忍ぶ者だね。忍ぶべき彼等が名乗りを上げる時とは……」
席の間をゆっくりと歩きクイン・V・リヒテンシュタイン(
ja8087)は眼鏡(相棒)をくいと擡げ、語り始める。
「何世代も目立たぬように忍んできた彼等――仲間や恋人を救うため? まさか彼等は全てを捨てて忍んでいる。名乗るからには相手を必ず仕留める覚悟だろう。
たとえ死地であろうと相手を仕留めなければならない。それでも名乗りを上げざるを得ないのはなぜか」
辿り着いたのは教卓の横、静かに眼鏡を外し間を作り――光纏。銀色の梵字が帯となり、足元からゆっくりと昇り巡り始める。
「――それは魂を揺るがすほどの感動を与えたもののため。忍び続けた魂を解放せしもの……」
そう、それは眼鏡っ!
スチャッと眼鏡を装着し、繰り出さんとするのはアッキヌフォート・ミラージュレイ――眼鏡光線!
「説明しよう! 眼鏡光線 (アッキヌフォート・ミラージュレイ)とは、クインの手により 炸裂掌に改良が加えられたスキルだ!
眼鏡のきらめきは天を廃し魔を駆逐する。そう眼鏡の素晴らしさは人類希望の光。きらりと眼鏡を光らせるとたちまちのうちにハートを打ち抜かれるだろう。この時眼鏡がずれるといけないので手で押さえておくことが重要――との事だ!」
「瑞樹ちゃん解説ありがとう!」
さてさてそんなこんなのクインだったが、ビームが出る寸前という所で――
「忍法ヘッドバットの術!!」
横合いから飛び込んで来た十八 九十七(
ja4233)のヘッドバットがクインの顔面に突き刺さる! クインと眼鏡がぶっ飛ぶ!
「ぐふっ……」
クインは朧な意識の中で吹っ飛んだ相棒に手を伸ばすが、それは九十七の演出による謎の爆発で哀れ無残。ダアトに容赦のない物理攻撃、九十七マジ九十七。因みにちょっとセクシーなくの一装束です。
そんな彼女は件の謎の爆発と共に飛び上がり空中でド派手に3回転を決めて着地するや、片手のニンジャブレードを構え決めポーズ!
「くの一九十七ちゃん、マジ参上!」
デデーン!
「依頼内で何時も妙な方向で目立つのもアレですし、此処は一つ、もっと女の武器を意識して……だそうです。如何ですか、棄棄先生」
「(//ゝ´)b. *」
おにいちゃんだいかんき!
因みに建前は名乗り口上の参考練習だそうです。かわいいね!
そんなこんなで九十七は殺陣とか立ち回ってみたりお色気的ピンチシーンを演じてみたりとノリノリである。きゅるんきゅるんである。絶壁無乳だけどオトメティックがトマラナイである。普段がアレだけに、もえもえきゅんだね!
「でもおにいちゃんはそんな妹ェの東尋坊が大好きです。いや全面的にらぶいです」
「棄棄先生、ガチの真顔ですよ」
曰く、九十七はクインの妙なノリに頭をヤられたそうです。これ、この日の晩にベッドに顔を埋めてゴロンゴロンする事確定だね! でもかわいいからゆるす
●獅堂 遥(
ja0190)のターン
盛り上がる最中、遥は解説役の棄棄の横に座していた。ニンジャヒーローというとメカニカルヒーローが浮かぶが、ここはダーティストイックなスタイリッシュアクションをイメージ。兜割りや鎖鎌と和装武器で忍っぽく、額当てとバイザー、黒メタリックコートで未来的ダークヒーロー。そして秀一と共に某ゲリオンポーズ。
「結局脳内で作りあげた方がらしくてオレウマーですよ? DVDとかだとプロが創りあげてますし……あ、ここで言う『プロ』とは裏方含めた作品に関わる人総てを指します」
教師に語りかける。シノビソムリエとして語りたい。その傍らにはデデンと歴史書や映画のDVDや小説やらエトセトラ。ヤダこの子ホンキだ。目がマジだ。
「忍英雄はジャパニメーション由来、ある意味ナポリタン誕生と雰囲気は同じ気はしますよね」
「お……おぅ……アイキャンスピークイングリッシュヴェリーウェル……」
(;//ゝ´)b <に、日本語でおk!
せんせいゎたくえつしたぎのうをもつるいんずぶれいどなので、にんじゃくわしくないです><。
「でもニンジャヒーローってすげーよなかっこいいよなーなんでオリスキ専用()とか言われるかなー」
「どっこい私は阿修羅なのでした」
「先生はルインズブレイドでした! てへぺろー!」
●黒田 圭(
ja0935)のターン
「くーるなNINJYA、ね」
圭は思う。忍ぶ事を捨てたのであれば、もう分身しかないだろう――それもLV1から使える『張りぼて』なんかと一緒にしちゃいけない。立体感のある本物の『分身』だ。
だが、でも、ちょっと、アウルの力で光の屈折率を変えて複数の分身体を出現させる……ってのは、大丈夫じゃない、問題だ。ごめんね。というわけで、棄棄先生とのトークタイムです。
「分身に攻撃が当たった時は、『ハズレだ』と何処からともなく声がして丸太に道着がゴロン、そんで大混乱で分身を斬りまくる相手の背後にに突然現れてKATANAを突き立てる。忍殺ってすげー……ってのを考え付いたんだけど、古いか」
「王道って素敵やん」
「あ、そうそう、赤くて長いマフラーはやっぱり必要だろうか?」
「じゃね? 赤い長マフラーは浪漫なのです」
●音羽 千速(
ja9066)と礼野 真夢紀(
jb1438)のターン
「使えないけど、一度やってみたかったのよー♪」
礼野 真夢紀(
jb1438)はワクワクとした気持ちで一杯だった。でも、本当なら大凧に乗って登場とか、一瞬でコンバットスーツに着替えとか、先制攻撃を『炎陣球』や『炸裂符』でやってみたかったのだが……手もアイテムも足りない。
だが友人なら居るぞ!
「ちょっと手とアイテム貸して!」
というわけで。
「引っ張ってこられました……」
音羽 千速(
ja9066)は項垂れた。ボクこの人には良いように使われているよなぁ、と思う。この人は先輩の妹だし、先輩姉妹に甘いし。
そんなこんなでレッツニンジャヒーロー。
「とうっ!」
真夢紀の身体が鮮やかに宙を舞った。靡くマフラー。彼女の背後に遁甲の術にて潜む千速の影手裏剣を回避し、或いは手にした太刀で弾き、軽やかに着地。儀礼服の上着の裾を左手で握って翻すや、右手で構えた太刀を正面に突きつける!
「過去未来、そして今も、天魔ある所討伐する撃退士は現れる……
覚悟しなさい天魔共、友と共にお前達を世界より滅する!!」
焚かれるフラッシュ、輝きの中で決めポーズ!
「決まったぁ〜!」
実況の瑞樹が盛り上がる中、真夢紀ははにかみ笑いと共にぺこりとお辞儀。
「以上、口上は対天魔バージョンでお送り致しましたー」
そんな彼女を、フラッシュ用のカメラを持った手を下ろしながら千速は見、呟いた。
「相変わらずノリと勢いの人だよね、真夢紀さん……」
「正義のニンジャヒーロー! 非常にクールでグッドでイケイケでしたね〜」
●笹本 遥夏(
jb2056)のターン
「よおっしゃあああ!! ついに! ウチの! 出番!」
ガタァと立ったは良いものの。良く考えたら自分は鬼道忍軍じゃなかった。
「陰陽師にもそんなスキルあってええんとちゃうん!?」
「オンミョウ☆ヒーローか……いいかもしれないね」
「くっ……よっしゃ、こうなったらスキルジャックや……うん、ホンマにジャックでけんのは解っとる」
勝手にオンミョウ☆ヒーローの想像をしている棄棄の一方で、遥夏はうぅんと考える。だって、乙女の胸に秘めるのはヒーロー願望。ヒーロー、ヒーロー、嗚呼ヒーロー。
(ヒーローを目指すウチは、忍者共に負ける訳にはいかんのやーーー!!)
そう、ヒーローは諦めないのだ!
そう言う訳で、彼女は積み上げた机の上に立つ。誰よりも高く、てっぺんに。
「やぁやぁ我こそは! 久遠ヶ原学園の陰陽師にしてヒーロー、笹本 遥夏や!
ええか、うちはこう思う……この際カッコ良さなど関係無いんや……一番の目的は目立つ事! ニンジャヒーローってそういうもんやろ!!」
ガガピピーと拡声器。声高々に自己主張。
その直後、せやぁっと華麗に大ジャンプ。着地地点に炸裂符を叩き込み、鮮やかに爆発エフェクト!
「オンミョウ☆ヒーロー、只今参上!!」
素敵な笑顔でサムアップ、決めポーズどかーん!
「ヒーローって皆の憧れよね。先生、夢を追っかけてる子って大好きです!」
●冬弥のターン
隠密技能と、ハイドアンドシークと、サイレントウォークのフル活用。しかもダンボールまでガッツリ被って気分は某メタル■アだ。
ごそごそ……そんなこんなでダンボールがこそこそ教卓の影からチラ見する。そしてちょーっとだけダンボールを持ち上げると、
「やあやあ、俺ちゃんこそは真なるダークニンジャヒーローなりー」
ダンボールパタン。そして魔を開けてからまたちょーっとだけダンボールを持ち上げて、
「声はすれども姿は見えず、名乗りはすれども影は掴ませないよー」
ダンボールパタン。そして以下略。
「え? 何? 趣旨が違う? でもさー俺ちゃん的にはこれが正統派だと思うのよー」
ダンボールパタン。忍ぶ事を意地でも捨てないスタイル。これはこれで目立っている。
が、窓から突然の風! イタズラな風さんが冬弥のダンボールをブワッサァと連れ去ってしまう!
「! あぁっ おのれ悪戯な風め!」
ダンボールを追いかけて、撃退士という国際陸上選手レベルな俊足を無駄に使って無駄に洗練された無駄のない無駄に速いスピードで――彼は教室から逃走した。
「彼はとってもシャイボーイね きっとダンボールには夢と希望とサムシングが詰まっているのよ うん」
●貴方とコンビにディバインナイト
「ニンジャヒーロー……女子の場合もヒーローなのでしょうか?」
かくりと首を傾げ、雪成 藤花(
ja0292)は隣の星杜 焔(
ja5378)に話しかけた。どうなんだろうねぇ〜と彼は常のニコニコ顔。そんな様子で、在り来たりで他愛も無い会話。それでもお砂糖がぼろぼろ零れ落ちているホンワカ空間。
「クッ……なんだこのスイート空間は!?」
「パターン青、リア充です!」
そんな解説二人。きっとこれが藤花にとってもニンジャヒーロー。ただしリア撲には凶悪な攻撃スキル。
というのも露知らず、藤花と焔は棄棄の下へやって来た。
「ごきげんよう〜」
「おっすほむほむに藤花ちゃん、元気そうだな」
「おかげさまで〜。先生、あの恋のオブジェ様本当に効きますね〜。お願いしてた事叶っちゃいました……よ?」
かなり長い間、夢オチではないかと疑っていたのだが……どうやら現実らしい。そりゃ何よりだ、と笑顔の教師に二人揃ってナデナデされながら、彼はいつもの表情で言う。ちょっとぷるぷるしながら。
「家族が欲しかったんですよね……先日ご両親にもご挨拶に行けましてね……」
先生のおかげですね、と。
「はは、そいつぁ教師冥利に尽きるぜ。幸せにな二人共!」
そんなホンワカ空間を、血涙を流して睨み付けている男が居た。
「ギギギギギギギ」
唇を噛み締める、彼の名前はラグナ・グラウシード(
ja3538)。焔がずっと彼女持ちだった事を今更知らされ、彼を激しく憎悪なうである。
「……ラグナさん、黒いオーラが出てますよ。非モテオーラにしておきましょうよ」
その隣、ラグナの肩をポンと叩いたのは若杉 英斗(
ja4230)、彼が焔によからぬ事を企んでいそうな雰囲気をぷんぷん感じたからだ。サラッと酷い事を言ったが、ラグナさんが星杜君と仲直りできればな、とちゃんと思っているのだ。本当だ。ディバインナイトウソツカナイ。
だが英斗の紳士的対応を以てしてもラグナの怒りはノンストップエクスプレス。サムズアップ。
「わー星杜焔のたうんとにひきつけられたー」
露骨な棒読みでぴょいーん。タウンとなら仕方ない、そんなフリをしてラグナは焔に襲い掛かる!
(あ、ラグナさんが襲いに来た……教室だし人多いし今回は銀の盾しとこう……)
なんて焔が思った、その直後!
「わあ、すごいや兄さん! コンビネーション技だね!?」
キラキラ〜でピュアピュア〜でイノセント〜な眼差し。感嘆の声。それはレグルス・グラウシード(
ja8064)、ラグナの実弟にしてお兄ちゃん大好き大好きなリア充中学生である。
「!?」
動揺するラグナ。レグルスは尊敬すべき兄がどんな技を魅せてくれるのかワクワクしていたのだ。そして焔に襲い掛かっている兄を見て『彼らが連携したニンジャヒーローをしようとしてるのだ!』と綺麗に勘違い。
(さすがに弟の前でリア充爆破はできぬ……!)
あのキラキラリスペクトな目を裏切る訳にはいかない。ラグナだって人の子だ。ただちょっと非モテ騎士なだけだ。
「そそそそうだ弟よ、これは三人で力を合わせより強力に敵の注目を引く技なのだぞ! カモン若杉!」
「本当の『カッコイイ』ってやつを魅せてやるっ! とーぅ! 合体!! ぴょん!!!」
「えっえっこれいいのかな……」
それはディバインナイトによる組み体操だった。ラグナが一番下で焔を支えてサボテンしている所に英斗がライドオン。これが俺達のサボテンだ!
「非モテ騎士(元含む)三人のコラボニンジャヒーロー……!」
「非モテ忍法! なんでモテなにいんじゃー!!」
語呂が無理矢理とか気にする子にはシールドバッシュな!
「みよ! この勇姿を!」
「あなたとコンビにディバインナイト……」
迸るタウント。無駄に洗練された無駄のない無駄なディバオーラ。すげぇ。注目せざるを得ない。180cm前後の野郎三人とか天井とかあの辺が色々ヤバイ。それでも焔はちょっと、いやかなり嬉しかったり。後が怖いけど。
(わぁ皆できゃっきゃ久しぶり嬉しい)
(く……こ、この機に乗じて始末する私の作戦が……ッ)
「ラグナさん、ぷるぷるしてる! もうちょっとがんばって!」
ラグナがぷるぷるしているのは支えてるのがしんどいからだけじゃない筈。
「すごいなあ……やっぱり兄さんはすごいよ!」
一片の曇りも無い真っ直ぐな瞳でレグルスは兄と愉快なディバ達の組み体操を見守り、爽やかな笑顔。おにいちゃん大好きフィルターに阻まれて真実は見えていないようです。
そんな彼らの謎行動を、藤花は呆然と眺めていて。それから苦笑、教師へ話を戻す。
「焔さんに聞いたオブジェ? あれのパワーすごいんですね」
「なに、アレは切欠に過ぎんさ」
「でも、おかげで、すごく幸せです」
「そりゃ何よりだ――目一杯、幸せになりなさいね」
優しい笑顔で、教師は生徒を見守った。
●最上 憐(
jb1522)のターン
光纏すると共に、躍り出た憐は教卓の上に仁王立った。青天の霹靂、そんな言葉通りの登場。ハイドアンドシークによって直前まで気配を殺していたのだ。
ぱん、ぱん――強めの拍手で注目を集める。何をするつもりか、皆が息を飲んで彼女を見守る。そんな中、彼女は徐に普段から纏っているマントの影からカレーを取り出した。
カレー。
カレーだ。
何故にカレー。
しかも大盛りのカレー。
等とざわつく皆に応える様、憐は一つ頷くと。
「……ん。カレーは。飲み物。飲む物。飲料」
光纏しているお陰でお腹が減りまくる。そしてカレーのにおいにヨダレが出まくる。足元が既に水たまり。という訳で、一呼吸の後に彼女は彼を一気に――『飲み干し』た!
「こ、これはっ……!」
「ふむ、カレーイズ飲み物という事を知らしめに来たのか……! 恐ろしい子!」
でも実は、単純に準備資金でカレーをタダ食いする目的もあったりなかったり。予算3000久遠全て使い、学園を駆け巡り出来るだけ大盛りのカレーを用意してきたという徹底ぶり。
そんなこんなで憐は次々と大盛りカレーを飲んで飲んで、最後の一滴まで『飲んで』、口元を手の甲で拭うと、言い放った。
「……ん。カレーは。最強。主食だし。おかずだし。デザートだし。飲み物でもある」
ドヤァ。インド人もビックリダヨ!
「憐ちゃんはインド人なのだろうか。でもカレー美味しいよね! 先生は中辛派です」
●フェルルッチョのターン
自分がやるならこうしたいな、そんな妄想をお披露目だ!
「ひかえおロー!」
スッパーンと教室の戸を開け、いかにもな黒のヒーローマントを颯爽と靡かせフェルルッチョ入場! でも開けっ放しはアレだから開けたら閉めます。労う様に指先で撫でて、そっと優しく丁寧にカラカラカラ……パタン。
ふぅ……
「ミラノ生まれ般若心境育ち、紫狐のるっちょとはるっちょのことダー!」
デデーン。
「釜茹でアルデンテと首モッツァレラ、どっちがいいか選ばせてやろウ!」
ふぇるるっちょは ふしぎなおどりを おどった ! (With日本舞踊っぽいサムシング
「さぁ、神妙にお縄を頂戴したまえョ♪」
ドーン。決めポーズ。そしてアウトローを棄棄へと。彼は神妙な顔でこう問うた。
「ペンネは……ペンネは無いのか」
「ペンネは……家に置いてきタ!」
「なら仕方ないな 美味しいミカンをあげようね」
なんかミカン貰いました。アウトローのお陰かな! そんなこんなでカラフルな紙リボンと紙吹雪を手品で大量に出現させ――それに紛れてフェルルッチョは姿を消した。みかんもぐもぐ。
「アウトローって凄いのね、ホントにうひょってなるね。あとふしぎなおどりでMPが削れた子は……まぁ頑張れ!」
●佐藤 としお(
ja2489)のターン
「グフ、グフフフフ……」
不意に教室に響いたのは不敵な笑い声だった。
「あ……あれは!」
実況の瑞樹が指差した方向。それは何処からかかグラーダーで滑空して教室に吶喊してくるとしおの姿が!
高速で窓から侵入――した――けど勢い余って開けっ放しだった戸からスイーンと通り過ぎちゃって更に廊下の窓からスイーンと出ちゃって――
「ここで大技が出たーっ!」
「えっ今の大技だったの」
実況の二人はさて置き、遠くの方で『ドンガラガッシャーン』という音が聞こえた。
2分後
そこにはボロボロになりながらも教室に自力で戻ったとしおの姿が!
抱えたラジカセからは某黙示録のテーマミュージック。安全なんて飾りです、偉い人にはそれが分からんのです。
「アテンションッ!!!」
謎の爆発、教卓の上で決めポーズ!
「としお君!」
「はい棄棄先生!」
「とりあえず保健室いってこい!!」
「えっ」
鼻血とか出てますし眼鏡とか割れてますしおすし。クイン君が発狂しかねない。
そんなこんなで、『え? 目立てばいいんじゃないの?』という心意気がマッハなとしおの目論見はある意味で成功したともいえる。
●獣忍戦隊クオンニンジャー
「この世に蔓延り人々に仇為す天魔。だが光と闇の狭間を駆け、この世を護る者達が居た――」
煙幕の中。何処からともなくナレーション。
直後、煙幕を切り裂いて5つの人影が現れる!!
「おおっと、突然謎の集団が現れたー!」
「その一昔前のアメリカを横断したがる人々を彷彿とさせる煽りはどういう事だ、瑞樹」
プロレス風実況する瑞樹に、退いて媚びないけど顧みるスタイルでツッコミを行う秀一。その視線の先の5人はいずれも共通の装束を身に纏っていた。ヘルメット、手甲足甲、そして煌めくエンブレム!
「闇を裂き、地を駆ける牙! 黒忍! ハウンドニンジャー!」
どどん。犬と黒色をモチーフに、犬の牙の模様をヘルメットに飾った古代がヒュヒュンと刃を振るって黒の煙を切り裂いた。そして鮮やかに納刀を決める。
「風を巻いて、空翔る翼! 赤忍、イーグルニンジャー!」
飛び上がって空中回転、諸手を翼の如く広げて着地し、蛇腹剣と共に舞うのは千葉 真一(
ja0070)。納刀と同時に赤の煙幕を爆ぜさせる。
「静かに忍び寄り、そのお命頂きます! 銀忍 フォックスニンジャー!」
銀狐をモチーフに、尻尾を思わせる飾り紐を靡かせながら音もなく変幻自在に飛び回るのは玲花、最後にくるんと着地するや胡蝶扇で妖艶なポーズ。白銀の煙幕がその背を飾る。
「黄色き癒しの翼! 黄忍 パロットにんじゃー けんざんっす!
オウムがモチーフのメットを被り、ニオ・ハスラー(
ja9093)は羽が飾られたスカートを翻して一回転、それと共にヒールによってキラキラ輝く。次いで杖を巧みに操り、黄色い煙幕を背景にビシッと決めポーズ!
「闇夜に紛れ、もふっと参上! 桃忍 キャットニンジャー!」
百烈猫パンチをしゅばばばばっと繰り出して、にゃ〜んとサーバルクロウを可愛く構えたのは朝宮 梨乃(
jb0950)、ピンクの煙幕がちゅどーん。
そしてニンジャフォースは息を合わせて、一歩前へ!
「我ら!」
「内なる獣の力に目覚めし正義の忍者ヒーロー!」
「その名も!」
「獣忍戦隊!」
「クオンニンジャー!!」
どどーーーーん!!
「決まったぁーー!」
「戦隊モノ! いや〜いいねぇ〜浪漫だねぇ〜先生ドキドキしちゃう!」
拍手喝采、戦隊モノはグレートです。
「ありがとな皆、楽しかった。またやろうな!」
ハウンドニンジャーこと古代は達成感の笑顔を浮かべ、皆に飲み物を配るのであった。
●藍 星露(
ja5127)のターン
(あたし的《ニンジャヒーロー》……)
柳眉を寄せて、星露は暫しの時間を思案に費やしていた。
さて、どうしよう。普通にやるのもアレだし、こういう状況で一番避けたいのはネタかぶりだし……
そして出した結論は、立ち上がると共に。
「――うん、歌うわ」
神妙な顔で頷き、一言。制服からミニスカくノ一装束に早変わり。手にはマイク。凛と正面を見澄ます瞳。
「ミュージックスタート!」
そんな掛け声と共に始まったのは――アニソンメドレー。某服部くんとか、某たま某太郎とか、某忍法帖某リスクとか、忍者モノ。くっ、お前等! 某ゲリオン然り、版権ネタは色々おっかないんだぞぅ! 伏せ方がアレだけど気にしないでね!
でも、あれだ。
(楽しいし、盛り上がるでしょ?)
その通りでござんす。そう言う訳で、星露はさすがの某飛や某ムイ伝の歌も歌う。
(こう考えると、忍者を題材にした作品が、アニメや映画になってるのって、多いなぁ)
忍者は日本の文化です。そして歌いながら思う、全部歌うと、他の皆がやる時間が無くなるかしら?と。
――でも、マイクを手離す気は無いわ。
●ジェラルド&ブラックパレード(
ja9284)のターン
濛々、と教室を包んだのは煙幕の白。その中から凛と現れたのは、張りぼての蝦蟇に乗ったニンジャだった。
朗々と詠う口上と共にバッと片手を掲げる、刹那。爆ぜるは花火、煌く光が彼をライトアップする!
「ミュージックスタート!」
鳴らす指と共に始まるは激しいロック調のBGM、ヘドバンしながらリズムに乗るや蝦蟇からジャンプし大回転――華麗に着地&荒ぶるジェラルドのポーズ!
「久遠ヶ原学園、忍、ジェラルド……推して参る!!」
堂々たる大見得。直後にハリボテ蝦蟇が爆発し、高笑いと共に煙幕が巻かれた。
そして、それが晴れた時に彼の姿はなく。
「……あの技は……!」
「知っているのか北条」
「必殺☆荒ぶる仕事ニンジャ」
「「成程な」」
秀一の言葉に、神妙に頷く棄棄と瑞樹でした。
「必殺☆荒ぶる仕事ニンジャ。ロックとニンジャの組み合わせがCOOOLでしたね」
●忍の美学
そこはとある忍の里。秘術を守り、過酷な鍛錬を以って歴史の裏に暗躍し生き残る忍一族の隠れ里。
全ての始まりは、『草』――何代も前から里に潜り込んだ他一族の密偵にして、跡目相続の機を狙い一族の弱体化・壊滅を図る定めを密かに負う梅ヶ枝 寿(
ja2303)の一言だった。
「クサおいしいです。もぐもぐ」
ではなく。
「お凛様が頭領の座を譲って、岡惚れしてる黒髪イケメンのために里を抜ける気だとかゆー噂が本当なら……秘術が外に漏れちまうくね?」
彼方此方に吹き込み、広げた綻び。
それはじわじわ、毒の様に広まって――
「見つけたぞ、ひなこ――その首貰い受けるのぜ!」
白い忍装束、靡くは真っ赤なマフラー。忍ばないスタイル。背中の大剣を抜き放ち、忍者道(ニンジャロード)の果てを目指す不良系シノビのギィネシアヌ(
ja5565)は不敵な笑みと共に相対する者へと切っ先を突き付けた。
「ギイネちゃん、あたしにはやらなくちゃいけないことがあるのっ! そこを通して!」
ギィネシアヌの視線の先、忍びの頭領、青木 凛子(
ja5657)の実の娘であり次期跡目候補である栗原 ひなこ(
ja3001)は悲痛な声で叫ぶ。だがギィネシアヌは「知らんな」と非情に返すのだ――ひなこを倒せば忍びの頭領の跡目争いは激化の一途を辿るだろう、だが、好敵手であるギィネシアヌからすれば寧ろ己が台頭する絶好の好機なのだ。
「違うの、これは謀計なのよ! 頭領の……母様のマイブームは銀髪なんだからっ!」
「ふ、それがどうした! 俺は貴様を討つ! ――美薙、俺を止めてくれるなよ!」
「任せい! 見届けてやろうぞ」
答えたのはギィネシアヌの傍らに居た親友にしてお目付け役の鍔崎 美薙(
ja0028)、彼女は敢えて目立ち惹きつける事で仲間の手引き、下調べ、人心掌握する術に長けた忍である。髪は一つに纏め、着物の衣紋もがっつり抜いてある。
そしてギィネシアヌがひなこへ襲い掛かる。が――振り下ろされた刃を受け止めたのは、ひなこのお目付け役である如月 敦志(
ja0941)が構えた忍者刀。
「ひな様はお前達に構っている暇は無いとさ」
「割って入るかあちゅしめ……俺の輝かしい忍者道の邪魔をするのぜ!?」
「青いのぅ、いや頭ではないぞ? 忍たる者如何なる時も冷静な判断をせねばのぅ」
「知ったこっちゃないね。――ひな様! ココは俺に任せて寿を!」
「敦志くん、ごめんね……お願いッ」
ひなこは涙を堪えて走り出す――彼女は知っているのだ、寿が『犯人』である事を。葛藤。今まで過ごした日々の思い出と役目。「おひな様」と呼び妹の様に接してくれた彼。それでも討つ決意をしたのだ、もう後には戻れない。
「して、おぬしで我らを止められると思うたか? ならばその身を持って知るが良いぞ」
「忍道とは死ぬことと見つけたり!」
「よかろう、貴様から先にこの剣のサビにしてくれるのだ!」
大剣を構え吶喊するギィネシアヌ、短刀に見立てたヴァルキリーナイフを放つ美薙、敦志は色々間違いつつも立ち向かう。
そして激しい死闘(省略☆)の末――血糊を噴き出し、倒れたのはギィネシアヌ。バァーンと派手な効果音。
「ぐふっ……」
だが、それでも。ギィネシアヌは最後の力を振り絞って敦志の後頭部へダーツを投げた。
「あべし!」
ぶっ刺さった。
と思いきや起死回生で復活!
「行かせはせん! 行かせはせんぞ!」
だがその左胸に突き立てられたのは、美薙の短刀。某仕事人的に障子の影、シルエット。赤が飛び散る――
「真実? そんな物に興味はない……我が主の主命を果たすのみじゃ」
「ひな様……御武運を……ぐふ!」
美薙は頽れた敦志と、それからギィネシアヌを見遣り、憂いの溜息。瞳を沈鬱に伏せる。
「忍とは……悲しいものじゃのぉ。我が主を護る事はできなんだったか。だが、我が主の躯は誰にも穢させぬ……」
そっとギィネシアヌの骸を抱え、招炎の術――炎に包まれ、消えてゆく――
「情報に齟齬……?」
天井裏から出て来た書生服姿の遊夜は眉根を寄せた。彼は里の歴史を記録し続け頭領へ報告を行う役目を担う血筋の忍びである。そんな彼が見付けたのは、情報が意図的に改竄された痕跡。
故に彼は情報を洗い直し――そして気付いた。助手である麻夜の『違和感』に。
(それでも……失敗するわけにはいかないの)
町娘衣装を見に着けた麻夜は静かに遊夜を見遣った。彼女は寿の里から派遣された見届け役で、情報を改竄し撹乱を狙った犯人だったのである。
「これを、語り継いでもらっては困るのです……」
スルリ、上着を脱いで裏切りの誘い。篭絡を狙う、色香の眼差し。だが遊夜は欠片も動じず、浅い溜息を吐いた。
「いい加減長い付き合いだ。俺がどういう男か、分かっているだろう……麻夜?」
「分かっています、貴方のことは何でも……」
交渉は決裂。同時に光纏、一瞬で忍装束に変身し。手には刃。そして死闘――ぶつかり合う刃の玲瓏な音。飛び散る赤。
そして咲き誇る血華と共に倒れたのは麻夜だった。朧な意識、手を伸ばす。
「もっと違う形で出会いたかったです……遊夜様」
「ああ……俺もだよ」
パタン、と手が床に落ちる音に遊夜は目を伏せ、身体を引き摺り歩き出す。
「――報告を」
と。彼は、頭領に真実を告げた。
逆行と煙幕の中、湯浴みをしていた彼女が立ち上がる。濡れ髪が妖しく煌めく。そして扇で白煙を払えば――あでやかな装束を身に纏った凛子の姿が。
「……」
凛子は黙していた。厳しい戒律、実力がなければ死ぬ定め、深い一族への愛――雷の音を聞きながら。決意する。『真偽を見分けられぬ者など必要ない』と、里の為に強くあり敢えて見守る事を。全てを乗り越え新たな覚悟を決めた者達にならば跡目と秘術を譲る事を。
立ち止る足音。
振り返ったのは寿、視線の先にはひなこ。
「貴方は、一体……」
「どこのクサか? 教えるワケねーだろ」
「――……」
ひなこは視線を足元に落とした。零れる涙が、ぽたり、ぽたり。
「ずっと兄様のように慕ってた……でも里と掟の為、あたしが引導を渡すわっ!」
顔を上げると同時、手には刀。鋭く彼を見澄まして。
「クノイチひなこ、参りますっ!」
地面を蹴る――だが彼女の刃が届く前に、寿は血を吹いて倒れて。
「!? まさか……」
実力差からひなこの手にかかる事は必須。捕らえられるよりは、と寿は歯に仕込んだ毒で自害したのだ。駆け寄る日名子の腕の中。一つ呟く。「所詮自分は駒の一つだったから」と。事切れた。全ては、妹のように接していたひなこの手を汚させぬ為だったという真実と共に――
「梅さん、どうしてこんなことを……うぅっ……」
止め処ない涙。天を仰ぐ瞳には、跡目を継ぐという悲壮の決意――輝きの中で。
廻り出した歯車は止まらない。
「そこをどいて!」
「誰に刃を向けたか分かってンだろうな……?」
戒とリュカ・アンティゼリ(
ja6460)の視線が搗ち合う。
前者は、寿の言葉に惑わされ、悲壮な決意で頭領凛子の命を狙う者。
後者は、幼少期に外見が奇怪だと迫害されていた所を凛子に拾われ、彼女が主と忠誠を誓う『狂犬』。
「主が里を裏切っていようと裏切っていまいと関係ない。俺は主を守る。刃向う奴ァ喰い殺すだけだ!」
女相手だろうが容赦なく叩き込む一撃。狂犬の名の通りに。
「頭領の気に入りのお前を手にかけりゃ、後で仕置きの一つでもされるだろうが……覚悟の上だ。頭領に刃向った罪、死んで詫びろ!」
あくまでも前進し、戒自慢の綱糸による格闘術を技と見に受け、流血しようがそのまま離さずに猛攻撃。血潮が飛び散る。満身創痍。
それでも、一瞬の隙を突いて戒はリュカの首に鋼糸を巻き付け絞め上げた。ひゅ、と呼吸の止まる音を聞きながら。嫣然と微笑む。顎を掬い上げて。
「気分は、どう……?」
「……三途の川で、この血を洗って待っててやるわ」
敗北を悟っても尚、口角を上げて。そして、事切れた。
そして戒は傷だらけの身体で、涙を湛えた瞳で、見遣る。静かに見守っていた凛子へと。
「お命頂戴……!」
走り出そうとした、刹那。
「七種さん――!」
戒の背後に現れた遊夜が、言う。本当の事を。驚き、止まる刃。戒はわなわなと黙したままの凛子と見遣った。
「そんな……私は、何てことを」
騙されていた。踊らされていた――そう悟るや、自らの命を絶たんと。
「貴女様に刃を向けるなど……どうして生きていられましょう!」
「待て」
「!?」
「里がまた揺れるような事あらば……ひなであろうと全て滅ぼす。戒、それまで傍におれ」
「……っ!」
歩み寄る二人。絡める指。見つめ合う瞳。
「お凛様……いえ、お凛。生涯、貴女を守り抜きましょう」
「任せたぞ、戒」
そんなこんなで、らぶらぶ駆け落ち百合の花。
――完。
「壮絶な運命を生きる忍の美学を表した劇、見事でしたね〜!」
「圧倒的でしたね。先生、どう思いますか」
「先生、マジ、まさかここまで仕上げてくるとは、って戦慄してます。ブラボー!」
拍手の中、演出協力担当だった敦志はむくりと起き上がって共に拍手。
「ニンジャヒーロー関係なかったけどいい出来だったんじゃね?」
額にダーツが刺さったまま、満足そうに頷き一つ。
一方で麻夜は、遊夜との共演で内心テンション振り切れ寸前だった。実は色仕掛けは結構本気だったり……なんて。
「囮するなら一番良いスキルだと思ってるけど、習得するのが怖い今日この頃です……」
全てを見終わり、千速はそんな一言を漏らした。
●感動のフィナーレ
「さて先生、どうでしたか今回のニンジャヒーローは」
「そうだね瑞樹ちゃん、どのニンジャヒーローもグレートだったな! どの子も素晴らしくって、優劣つけ難いね。
ピックアップするなら、萌々佳ちゃんはマジヒロインで超キュートだった色んな意味で。
卯月君のは斬新だったねー。としおくんもバイオレンス過ぎて印象が強いな。あと憐ちゃんのカレー。
緋伝姉弟のコンビネーションも良かったし、あ、コンビネーションといえば、ディバインナイト達による組み体操は個人的に大好きです。
獣忍戦隊クオンニンジャーも最高にクールだったね! 凄いのは忍の美学だな、スゲー重厚でマジグレートだったぜ!!」
「成程な、皆、お疲れ様だ」
「瑞樹ちゃんと北条くんも、解説実況おっかれちゃん! テトちゃんは爆発演出ありがとな!
そんじゃ〜以上をもちましてニンジャヒーロー大会終了だ! 諸君、これからも心にニンジャヒーローだぜーーーーっ!!」
そんなこんな、拍手に包まれ、ニンジャヒーロー大会は幕を下ろす。
『了』