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マスター:ガンマ
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/10/20


みんなの思い出



オープニング

●スクールのルーム
「これが我々『より良い夢を見よう研究会』が長年の努力によって遂に作り上げた『見たい夢キャンデー』である!」
 テッテテー、なんて擬音が聞こえてきそうな感じで『より良い夢を見よう研究会』の部長は言い放つと共に『それ』を皆に見せた。
『それ』――可愛らしいビニール袋に包まれた飴玉。曰く、『見たい夢キャンデー』。キャンディではなくキャンデーだそうな。
「使い方はとっても簡単だ」

 1、見たい夢を思い描きながらこれを舐めます。
 2、寝ます。
 3、見たい夢が見れる!

「……という感じだ。ご理解頂けただろうか?
 そしてもう薄々気付いているだろうが、皆さんにはこの『見たい夢キャンデー』の実験に協力して貰いたい。なにせ昨日できたばっかりなのだからな。
 なに、飴を舐めて寝て夢を見るだけだ。構わんだろう? 是非とも感想が欲しい!」
 よりよい夢を見る為に!ガッツポーズの部長の声を聞きながら飴玉を手に取った。やれやれ、だが僅かながら謝礼も出る事だし――さて、自分はどんな夢を見ようか。


リプレイ本文

●夢の切符
「果たしてどんな夢が見られるのか、少しわくわくしますね」
「寝るのがお仕事とは……、本気の得意分野ですっ!」
 良い夢が見られると良いんですけど、と微笑する楊 玲花(ja0249)、普通のお仕事でもしばしば寝る事があるので問題なく寝れる筈、と意気込む氷月 はくあ(ja0811)。
「疑わしいですが……まぁ、面白そうですし」
「なんて胡散臭い。……本当にそんな効果があるんですか? そもそもどうやってこんな……吸うと捕まる怪しい草とか入っていませんよね?」
 柊 朔哉(ja2302)とフィオナ・アルマイヤー(ja9370)、共に訝しげな表情はあるものの。「夢はあまりありませんが、思いついたモノで宜しければ」と前者は頷き、「せ、専門分野の学業で一山当てる夢でも見るわよ」と後者は言葉とは裏腹に滾る興味ありますオーラがちょいちょい体の内側から零れている。
 因みに、フィオナが怪しんだ成分も鴉乃宮 歌音(ja0427)が『今は考えないでおく』と思った事(強制的に悪夢を見させる飴)もありえないのでご安心を。この研究会は皆の笑顔の為に頑張っているのだ。
「頑張れば共有等できるかもしれないね。デコを合わせるとか枕を一緒にするとか」
 歌音の言葉を熱心にメモる研究員達。
 さぁそんなこんなでそろそろ夢に往こうか。
「味は……うん、なかなかだねっ!」
 もごもご、早速口にしたはくあにぶくつさ言いながらも飴をなめるフィオナ。
(んー、どんな夢が良いかなぁ……宇宙遊泳とか楽しそう? 光る羽が生えて、飛んでって、星の海をふわふわと……)
 お布団に入りながら、はくはは一生懸命考える。飴が溶けてなくならない内に。
(太陽系も超えて超えて、銀河の果てまで飛んで行くのです。あ、でも一人は寂しいので仲間もいっぱいで……)
「はふ……もうそろそろ……限界かなぁ……。でも……折角だから欲張るのですー……」
 微睡む最中。色々な要素を混ぜ合わせ、そして……

●はくあの夢
 視界一杯に宇宙だった。そこを自分は飛んでいる。仲間と一緒に、光り輝く翼をはためかせて彗星と星の海を翔ける。どこまでも、どこまでも。
 その先にはくあが見たのは、地球に良く似た青い星だった。奇麗、と呟く。その視界の端に。ゴゴゴゴゴ。宇宙戦艦。なんかレーザーとか打ってきたけどはくあには全く効かない。何故なら彼女は『大きめ』だったからだ。具体的に言うと地球ぐらい。負けるのは嫌だね!だから武装もテンコモリです。量子砲とかバリアとかミサイルとか。
「障害が大きいほど、手にした時の喜びも大きいのです! はくあ、いきまーーす!」

 ちゅどどどーん。
 
「……綺麗な星……わたしの物なの……ですー……、んにー……」
 現実世界ではごろごろ寝返り、ベッドから落ちて芸術的なポーズになっているが眠り続けるはくあであった。

●cicero・catfield(ja6953)の夢
 闇夜に浮かぶ紅い月。巨大な時計塔の頂上に佇む青年はファントムマスクで覆われていない唯一の箇所である口唇に微笑を浮かべた。闇色の外套が靡く。
「何か面白い事、無いかなぁ〜」
 目を凝らし闇を見澄ます。その先に、少女の悲鳴。暗い路地、恐怖に見開かれたその目に映るは――ギラリと輝くナイフを持ち下卑た笑みを浮かべる男。
 振り上げた。その手。

「おじさぁん、何してるの♪」

 を、ゴキリとへし折ったのは楽しげな声の『ダークヒーロー』。
「お、お前は……」
 そこまで言いかけた男の顔面を蹴り飛ばす。踏みつける。高笑いを響かせながら。
 彼こそはダークヒーロー。ずば抜けた身体能力と卓越した知能を持つ男。スリルと実験と猫を愛する男。悪人に見せる残酷さ故に裏社会では『変人』『極悪人』と名高い男。
「はは、今日も良い物理の実験日和だ」

 夜に手を広げ、嗤う。

●玲花の夢
 未来の世界。今より少しだけ大人になった自分。
「玲花」
 名前を呼ばれて振り返る。その先には、気が付いたらいつも傍にいた男。彼に特別な所は特にない。ただ、傍にいるととても安心できるのだ。そう、まるでずっと昔から知っていたように。
「玲花」
 そして、いつしか『彼』が隣にいるのは当たり前になって。
『彼』が居ないと不安で押し潰されそうになって。
『彼』に会えたら、それだけで世界が輝いて。
「愛してる」
 握られた手。自分をじっと見る瞳。
「貴方と共に歩んでいきたい。これからも――ずっと」
 求婚の言葉。玲花は溢れ出る嬉しさを隠そうとするが、嗚呼、一体どこに隠せばいい?深い海とてこの喜びは沈めきれまい。頬を薄紅に染めて、彼女は静かに頷いた。抱き締められた。抱き締め返す。抱きしめられたその腕の中が何よりも心地よくて。

「「愛してる」」

 結婚式当日。礼服に身を包み、二人は寄り添う。
「奇麗よ玲花――おめでとう、おめでとう」
「……幸せにな」
 満面の笑みを浮かべた母が、何処か寂しさの漂わせた父が。
「おめでとう!」
「お幸せに!」
 友人、知人、たくさんの祝福に包まれて、『彼』と玲花は神の御許へ進んでいく。
 誓いの言葉。誓いの口吻。わぁっと湧く祝福の声。母の笑顔。父の涙。
 嗚呼、私はこの人とこれからの人生を共に暮らすのだ。
 ごくごく当たり前の日々を『彼』と過ごし、分かち合い、そして二人にとっての宝物が授かって――愛する『彼』と、何者にも代え難い子供に囲まれて。
「玲花」
「お母さん!」
 抱き寄せる大きな手。抱きつく小さな手。それに手を回して、抱き締めて。

 ああ、わたしはなんて幸せなんだろう……

●歌音の夢
 その名はドクタークロウ。数ある悪の組織の一つ『イタズラカラス』その幹部にして怪人を造ったりするマッドなドクターだ!因みにイタズラカラスの創始者は彼だ!
「我等の目的!」
『世間に混乱を!』
「邪魔する者は!」
『力で解決!』
「警察に呼び止められたら!」
『コスプレですと言い張ります!』
 黒タイツとお面着用を義務付けられたりモヒカンだったりヒャッハーだったりする戦闘員達が、イカとかタコとかイカとかあとイカ的な怪人達が一斉に敬礼をする。

「仕入れましたー」
 主な活動は掲示板やSNSで国民の口コミで悪徳なお偉い方々の黒い噂を集めて身辺をハッキングとかで徹底的に調べ上げた挙句にヒャッハーな戦闘員や怪人を派遣して襲撃して証拠品や財産を押収して汚物は消毒だぁ〜!
「GOGOGO!」
「ブラック企業に死を!」
 勿論後始末も忘れない。メディアに黒い情報を流してスキャンダルして煙に巻くぞ!
「フフフ、また一歩世間が良くなった」
※でも対象以外は傷付けません

 当然、悪の組織の天敵である正義の味方達とは徹底抗争!目的達成まで粘ったらスタコラサッサだ!
「邪魔すんじゃねーし!」
「おぼえてろー」
 負けた様に見せるのはヒーローと僕らのお約束。
※こんなんでも悪の組織です

 普段はお年寄り助けたりゴミ拾ったり不良やDQNをボコったりデパートとかのヒーローショーでスタントやって資金集めに精を出すぞ!ドクタークロウは物事に動じない恐るべきカラス怪人役なのだ!
「ヒーローキーック!」
「ぐわーおぼえてろー」
※自給800円です

●エヴェリーン・フォングラネルト(ja1165)の夢
(猫又さんです猫又さんです! ジャパニーズモンスターな猫又さんなのです! 私は猫又さん! オトナな女の人もユメですけど、それは現実で実現させたいので背の高い男の猫又さんになるのです! 私は猫又さん! ふわふわ金髪にキツイ茶金色の瞳で背の高さは180くらいの男の猫又さん!)

 そんな暗示の甲斐あってか。

「ちゃんと成功したのですー♪」
 そこにいたのはふわふわ金髪にキツイ茶金色の瞳で背の高さは180くらいの男猫又だった。髪と良く似た長毛の猫耳と猫又尻尾がふりふり動く。声までイケメンのそれだ。でも中身が一緒なので無邪気に跳ねて喜んでいた。因みにごついプリンセスドレスだった。ギャップ萌()
「……はわー!? な、何になるかに一生懸命で、服装考えてなかったのです……」
 いきなりショボンとへたりこむ。耳と尻尾もへしゃげている。
「案内人さーん! 服揃えるとこないですか、服ーっ! はわわわわ、大慌てで用意ーなのですーっ! ごついプリンセスドレスの猫又男なんて誰得ー!? ですよ、ですよ!? えっちょっいきなり服がビリビリバリーンなったですよー!?」

〜しばらく美しい花々の映像をお楽しみ下さい〜

「ふぅ……やれやれなのです」
 山あり谷ありでしたが『負けません根性』で何とかなりました。やったね!そんあこんなで燕尾服の礼装姿(何故か花の装飾付)になったエヴェーリンはやっと一息。
「うぅ、視覚爆弾すみませんでしたのです」
 それはそうとアレだ、折角の夢の世界だ!さぁ出かけよう!エヴェーリンは走り出した!

 ゴッ。

 そしてドアから出ようとして頭をぶつけた!血が出た!しかしエヴェーリンは目をきらきら輝かせて喜んでいた!
「だって、いつもだったら背伸びしてやっと届く位置なのですよ?」
 颯爽と走り出す。色んな物がガスガス当たっているが、リィは元気です(ほほえみ

「いえーい! ヤッチマイナー!」

●フィオナの夢
 自分は普通の女子大生だった。
 面倒な実家のゴタゴタもなく、友達と遊んでバイトして大学に通って。そんな生活。普通の生活。

 だが、先程言った夢と内容が違うぞ?

(ええと、ほら。格好だっていつもは実用本位ですけど、こういうときくらいお洒落したっていいじゃないですか)
 何故なら彼女は同年代の他の普通の女の子達にこっそりと憧れを抱いていたからだ。彼女のイメージとは裏腹にイマドキ女子大生ファッションなのも、こっそりファッション雑誌を読み漁ったりしているから。
(あとは、その、ほら……か、彼氏とかっ!!)
 可愛い服で、素敵な彼とちょっとお洒落なカフェでお茶したり、とか、甘いものを食べたり、とか。
「美味しいね」
 なんて、彼氏に笑いかけたり、とか。帰りは一緒に手を繋いで、とか。ばいばいのちゅーとか。
(……えっ、普通の生活の夢じゃないか? い、いいじゃないですか!!)
 一日の終わりは、布団でごろごろしながら友達とメール。そんな日常、そんな夢。

●鳳 静矢(ja3856)の夢
 放課後、普段通りの町並みを歩く。夕紅。花咲く談笑。友人、知人、妻と共に。
 そして友と別れ、帰宅すれば夕食を作り終えた母親が出迎えて。挨拶もそこそこに自室に向かって、彼は荷物の片付けを済ませるとリビングに戻った。父親がテーブルに備え付けられた席に座っている。彼が来るのを待っていたようだ。両親、姉、妻。皆が揃えばいつもの様に夕食をとって、その後は各々が思う様に。
 ソファーに座りテレビを見る父親。食事の片付けをする母親。それを手伝う妻にテーブルを拭く姉。彼自身も椅子に座りつつテレビを見る。流れるのは平凡なニュースと毎日似たようなバラエティー番組やワイドショー。
 しばらく眺めたものの、飽きた。自室に戻る。日記帳をめくる。テストの結果、部活であった事あれこれ……平和な毎日……なんて退屈な日々だろうか。それでいて、なんとかけがえの無い平穏な日々であろうか。
 そこまで考えて。
 目が覚めた。

『天魔が現れなかった世界』だった。

「天魔の居ない世界……の夢を見た」
 息を吐く様に同行者に言う。するとその人は怪訝な顔で
「天魔? 何の事だ?」
 ハッとした。光纏できない、ヒヒイロカネも無い。嗚呼、嗚呼、なんだ。
「あぁ……ちょっと嫌な夢を見てな、天魔という存在がいる世界の夢で……」

 暗転。

●朔哉の夢
 夕方の公園。子供達が遊んでいた。だが母親達に呼ばれれば、次々と帰路に就いて。
 そんな夕焼け色の景色の中。一人残る幼い少女。
 でも園子には母親らしき女が傍に居て。とても楽しそうに遊んでいて。
「佳奈子」
 ふと、柔らかな声。もうこの世に居る筈の無い声。
「おとうさん!」
「弘道さん」
 二人の笑顔。戦慄して凍りつく朔哉の傍を通り過ぎていく――自分の存在に気が付いていないかの様に。背後から楽しげな会話が聞こえてくる。遠ざかっていく。公園を出ているのだ、とようやっと振り返って知った。左に父、右に母、そして真ん中に子供。三人共輝かしいばかりの笑顔だった。

 朔哉が求めた『在る筈の未来』。

(どうして、この未来にならなかったのでしょうか)
 どうかあの子を幸せに。私のたった一人の愛娘。そう願って、歪んだ形で叶えられて、死んだ男。

 自分達が殺したのだ。

 あの結果に後悔はないけれど、せめて家族が引き裂かれる前の、幸せな光景を見たい。
 だけど。幸福な夢を願った故に、自分がした事への罪悪感が夢に現れて――気が付いたら戦った時の光景。血の色の公園、河川敷。血だらけの戦闘。
「あなたなんか、嫌い! どうしておとうさんをころしたの!? 嘘吐き、人殺し!」

 偽善者め。
 上っ面だけ聖女の振りして、この人殺し。
 その手で何を救えたのだ?
 嘘まで吐いて。
 お前が殺したんだ。
 お前が悪いんだ。

 叫んで、斧を振るった。そこに居たのは――弘道を護って立ち塞がった佳奈子。最悪の情景が。自分の斧が二人を。二人を、殺し、嗚呼、あああ、

 このひとごろし。

●おはよう
(……そうか)
 目覚めの微睡みの中、玲花は息を吐いた。思い描いたのは『幸せな未』――ただ、自分でもどういうモノが幸せな未来かは定まっていなかったのだけれども。
「やっぱり、わたしにとっては幸せの原点は父様と母様と家族なんだ。いつまでも仲良くて、子供達と居るときが何より幸せそうな二人がわたしも何よりも好きなんだ」
 多幸感を抱き締めて、家族を脳裏に描いて、柔らかに微笑んだ。

「後……もう後、3万光年進むまで待って下さ……うぅ、駄目ですか」
 ベッドから落ちて芸術的なポーズのまま、目覚めたはくあは些細な抵抗を試みていた。そのままの姿勢で研究員へ向き、ニッコリ笑って感想を。
「んー、なんていうか凄く混沌っ……でも、素敵な夢だったっ!」
「一緒の夢に行きたい人はどうしたらいいのかなーとか、キャンデーの形、切符みたいな感じにすると面白いかもです♪」
 エヴェーリンも割と真面目にコメントを。それに頷いた研究員は次いでフィオナへ。
「どんな夢を見たのかって? ……も、目的の夢は見れたような気はしますが、よく覚えていません」
 顔を逸らす。本当はバッチリ覚えてるけど、恥ずかしいから内緒。

 大丈夫ですか、と研究員が朔哉の背中を撫でている。彼女は絶叫と共に目覚めたのだ。「大丈夫です」と答えて、嗚呼夢だったんだと自覚して、溢れる涙が止まらなくって。
「来世では離れることなく、二人が幸せな家族でありますように……」
 神よ、どうか。どうか。嗚咽と共に、布団に顔を伏せた。

 二度目の覚醒で静矢は夢の終わりを知った。光纏もできる。ヒヒイロカネもある。夢だったのだ。
「……夢の中の夢、か」
 小さく、呟いた。



『了』


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

『九魔侵攻』参加撃退士・
楊 玲花(ja0249)

大学部6年110組 女 鬼道忍軍
ドクタークロウ・
鴉乃宮 歌音(ja0427)

卒業 男 インフィルトレイター
ヴァニタスも三舎を避ける・
氷月 はくあ(ja0811)

大学部2年2組 女 インフィルトレイター
For Memorabilia・
エヴェリーン・フォングラネルト(ja1165)

大学部1年239組 女 アストラルヴァンガード
茨の野を歩む者・
柊 朔哉(ja2302)

大学部5年228組 女 アストラルヴァンガード
撃退士・
鳳 静矢(ja3856)

卒業 男 ルインズブレイド
クオングレープ・
cicero・catfield(ja6953)

大学部4年229組 男 インフィルトレイター
お姫さま願望・
フィオナ・アルマイヤー(ja9370)

大学部9年99組 女 阿修羅