.


マスター:ガンマ
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2012/04/02


みんなの思い出



オープニング

●ZOMBI⇔ZONE
 良くある話。自殺の名所。死を食い止めんと励ましの看板、煤けたペンキの電話番号、TEL、TEL、ちょっと待ってよ大事な命。人は皆平等で命は尊いし自殺なんかしたら地獄に堕ちるんだからねと偉い人の常套句。アーメンソーメンビヤガーデン。神様が見てゐる。魔法を掛ける。たった一つの大事な命、延長戦の始まり始まり。終わらない終わらない終われない輪廻冒涜ラビリンス。おはよう、朝だ。永遠の。

●スクールのルーム
「俺だ」
 物凄い簡潔な挨拶、教師の棄棄(jz0064)が雑に扉を開けて教室にやって来た。教卓にどっかと腰を下ろした。
「自殺が良くある所……ってのは諸君もご存知の事だろう。
 で、とある『自殺が良くある所』で最近やったら自殺や行方不明が増えててよ」
 察しろと言わんばかりの眼差し。自分達撃退士に話が回ってきたという事は――
「ウム、悪魔の仕業だ。
 とある性悪なクソ悪魔――こいつに関しての情報は欠片も無いから色々と不明だ――が自殺した死体に魔法をかけて『ゾンビ』にしやがったのよね。
 そのゾンビが自殺しに来た人や肝試しとかに来た物好きを襲ってるって訳よ」
 諸君にゃこのゾンビをサーチアンドデストロイして貰うっつぇ。
 頷き卓上へ目を遣ればゾンビ達の写真、比較的『新しい者』から『古い者』まで……中々に生々しく、グロテスクだ。少なくともあまりじぃっと見つめていたいモノではない。
「で、こっから面倒なんだが……ゾンビは悪魔の魔法で身体能力が強化されてやがる。数も十体以上は居るだろう、ダリィな。
 だが、強化されてるとはいえ元が一般人だ。知性も零だしな、単体にそこまで苦戦する事ァねーだろう。
 倒せば魔法が解けて本当の『死体』に戻る。無限復活とかねーから、安心してな」
 それから現場について、と組んだ脚の爪先で写真と地図を示す。
 件の『自殺が良くある所』――木々が深く生い茂り、鬱々とした雰囲気を放つ山。苔や落ち葉に足下は覆われ、空は何枚もの葉々に隠されている。
 所々……枝にロープがぶら下がっているのが、何とも。
「一応封鎖してっから、一般人が迷い込んでたりノコノコやって来たりする事ァ無い。
 そうだな……、まぁ大体は見た通りだが、木の所為でちょっち射撃し難いかもにゃー」
 並ぶ木々、広がる枝。確かに教師の言う通りだろう、命中率に響きそうだ。
「因みに山の地図は諸君にも配布すっからな。
 まぁそんなこんなで説明はこんなもんだぜ。
 ……塵は塵に、土は土に、死体は死体に」
 もう眠らせてやっておくれな、と。


リプレイ本文

●森の昼の仄暗し
 草木を掻き分け薄暗し。爪先立ちの木々の影。
「よし、ここだね。皆、罠を仕掛けるから警戒よろしく……桜弥さん、背中は預けるからね」
「仕方ないわね……特別よ。ほら、早く終わらせなさい」
 ゾンビねぇ、まったくもう。
 周囲を見渡し警戒し権現堂 桜弥(ja4461)は鬱屈と息を吐いた。緑、緑、緑の色から視線を移した先には土方 勇(ja3751)が蹲って罠の設置を行っている。
 それにしても今回の任務のメンバーは大丈夫なのかと思う。彼に、しょっちゅう絶望している大学生に、『射撃は若干難しいやも』と告げられた任務と云うのに射手の多さよ。
 息を吐く。勇を急かす。了解〜と常のおっとりした声に余計気が立った。
「とりあえず、どんな状態の死体を見ても取り乱さないよう覚悟はしておこうかな」
 実戦も数度経験した勇には撃退士として戦う覚悟もそれなりに。全員無事帰還の祈りを草にて込めて引き結んだ。
 草をアーチ状に結ぶ罠、ワイヤーを木と木の低い位置に張る転倒狙いの罠、ブザーを使用しワイヤーに掛かると音が鳴る簡易警報。設置後は目印のバンダナを周囲の枝に。
 同じく常木 黎(ja0718)も罠の設置。立ち上がったその傍の枝、輪っかの縄が一縷。お気の毒様、と思う。私の趣味(戦争)と実益(報酬とキャリア)の為にもう一回死んで貰おうか。しかしそれだけでは悪いので、
「三途の川の渡し賃は立て替えてあげよう」
 但し鉛玉で、而して笑うはくつくつと。指先で弾いた縄が揺れる――それの輪を見澄まし、牧野 穂鳥(ja2029)は密やかに眉根を寄せた。
 自己憐憫は大嫌い。それでも被害者達の気持ちを理解できてしまうのは、第八保健部員として失格かもしれない。きっと怒られてしまうやも。
(死してなお与えられる苦しみからの開放を)
 緑に湿った空気を肺腑へ配布、手のスマートホンに目を落とした。GPS。撃退士は二つの班に分かれて任務に当たっていた。連絡は密に、然し警戒を怠る事無く地図に情報を書き込んでいく。綿密に定めた座標。リアルタイム。


「何だか本当にトレジャーハンターになった気分だぜ!」
 罠を仕掛け終わり一息、神鷹 鹿時(ja0217)は周囲を見渡した。陰鬱な、陰湿な、人が死んだ場所。自殺スポットでゾンビとは嫌なコンボだ、が。
「これぐらいで怖気ついちゃトレジャーハンターなんて夢のまた夢だからな!」
 目指すはゾンビ慣れ、グロ耐性会得。
「自殺の名所と肝試し、ね」
 麻生 遊夜(ja1838)は息を吐く。理解はできんが操られるのは本位ではあるまい――リボルバーを握り直す。死者達に安らかな眠りを。
「やれやれ……死んでからも使われるとはサービス残業もいいところだな」
 ここらでひとつ、骨休めして頂きますかね。加倉 一臣(ja5823)は片手にオートマチックを持ったまま連絡のやり取りを行うスマートホンから顔を上げた。ヒヤリと湿った空気が首の後ろを撫でて行く。彼方は薄暗い。
 一度ぐるっと360度を見、前へ戻す視線の先には夏野 雪(ja6883)が半身たる大楯を地面に立て瞑目している姿があった。最終確認。誓約。
「死者の冒涜……赦される事じゃない。この盾に誓って……いずれ、厳正なる裁きを悪魔に」
 暫しの後に目を開ければ専用ベルトを通して背中に担いだ。仲間へ振り返り、
「すいません……今、」
 行きます。と言いかけて。

 胡乱な気配。

 憚りもせず性急にやって来るその音達に振り返ったのは彼女だけでは無い、誰しもが思う。『来た』。
「周囲を警戒しつつ、私の後方へ!」
 斯くして盾を構えた雪が声を張り上げたのと、茂みから三体のゾンビが腐り裂けた口を開いて襲い掛かってきたのは同時。
「ぐ、グロい……。噛み付かれねぇように注意しねぇと……」
 鹿時の顔は蒼い。ゾンビの顔は赤黒い。寧ろ骨が蛆が白――ああこれ以上は見ないでおこう。せり上がりそうになった酸いのを嚥下し、壁となるべく先頭に立った雪の背を見つつ射手等と共に後退。
 がさがさがさ。枝葉に皮膚が裂けるのも構わず突っ込んでくる。が、内の二体が罠に掛かって転倒したのを見届けた。好機。ほぼ反射、灯った燭台を思わせる柔らかな色を纏った一臣は銃口を倒れた異形へ。
「ンもう、せっかちさんなんだから」
 タン。乾いた火薬音が森に響いて茂る葉を突き抜けてゾンビの腐肉を散らした。汚ぇ花火だ、なんて冗談を言っている場合でも無い。全く狙い難い事この上ない。二発目は枝にぶつかって軌道が逸れてしまった。
 警戒は緩めず、素早く周囲を見渡す――このまま緩やかに後退して視界の開けた場所に行ければ僥倖なのだが、等と浅く脳で思いつつ視界に収めるのは紅い目をした赤黒い襤褸の死神。鹿時の傍にて弾丸を放つ冷静な横顔。発砲音。
 年下と言えども戦歴は自分よりずっと上。同じインフィルトレイターの先輩として学べる事は惜しみなく学びたい。
 起き上がったゾンビと遊夜の視線が搗ち合う。紅の睥睨と濁った眼玉。開け放たれた口の奥、腐りきった臓物から吐瀉物が吐き出される――が。
「塵は塵に、土は土に、死体は死体に」
 攻撃予測線。視界の上の紅い軌道。
 弱点部位検索。視界の上に紅い×印。
 光纏の霧が銃口に集まる。全ては最良の一手の為に。

「……終わりの時間だ」

 引き金を引き撃ち出されるのは幾つもの鉄針。赤黒い軌跡。吐瀉物を撃ち抜き壊し、その奥の腐った口へ次々に突き刺さる。ぶち抜く。鋭く容赦なく鋭い一射。ゾンビの頭部に巨大な風穴。頽れる。
 ヒュウ、と鹿時は口笛を吹く。負けていられない。開く魔導書。文字を辿る。
「転べっ!」
 低い軌道の魔法弾はゾンビの脚を掠める――倒れた異形は二人の射手が仕留めてくれるだろう、前方の雪へ目を遣った。

(嫌な感じ……気ばかり滅入りそう)
 ボーラや罠で足止めをしつつとはいえ接敵は免れ得ない。零距離のゾンビから漂ってくる強烈な死臭に雪は微かに眉根を寄せるが。
「神に祈りは済ませた。……だから、容赦しない!」
 言葉の通り。『盾で以て征し、容赦なく殲滅せよ』。躊躇も慈悲も必要ない。喰らい付かんと飛び掛かって来たその顔面へ盾を突き付ければ腐肉が潰れる鈍い音と確かな手応え。
「どうした……! 私をそちら側に引き込んでみろ!」
 盾とは逆の手に刃。フェイントシールド。鋭い刺突がゾンビの胴に突き刺さる。抜き放つその勢いにてくるりと回るや、

「――尤も、この盾砕けぬならば到底無理な話だがな!」

 勢いに乗った横一文字の剣閃。死体の首を撥ね飛ばす。盾に死者の赤黒い体液が飛び散る。
 ふ、と息を吐いた。これで寄って来たのは仕留めたか……

 否。

 気付いた瞬間。振り返った瞬間。枝の上にて自殺縄を首に絡めた死体が、臓腑の底から吐き出して。
「くッ!」
 半身を焼く腐った胃液。盾を構えるのがあと一瞬遅れていたらもっと酷い目に遭っていただろう――燃える様な痛みに歯を噛み締める。そんな雪を追撃せんとゾンビが再び口を開けるが。

「攻撃させねぇぜ! 金貨の音がお前のレクイエムだ!」

 紅蓮に燃える光。鹿時の掌から迸る魔力の矢。ゾンビの胴を射抜いた刹那に金貨が地面に落ちた様な音、次いでゾンビが茂みへと落ちる音。恰好良い台詞が台無しにならなくって良かった、等と。
 そして気が付く。周囲。幾つかの胡乱な影。誰何の必要もない、明らかに。
 戦闘音に寄って来たか――不気味な唸り声へ、撃退士達は武器を向けた。

●死体ロンド
 それはB班から交戦連絡が入って間も無くの事であった。
「来たわよ……それもぞろぞろとね……」
 漂う死臭、視界に不気味、嫌悪感を辛うじて嚥下し桜弥はその身に帯電した黒い霧を纏った。ロッドを構える。
「死にたてとは違う意味でインパクトあるねぇ」
 くつりと唇にシニカル。黎もその手に拳銃を携えた。

 斯くして、現れたゾンビ達が牙を向いて殺意を向けて駆けて来る。

「くたば……って死んでるか」
 浮かべる苦笑、トリガーを引く。銃声と共に放たれた弾丸は部位狙いを試みるが――枝葉が邪魔をする以上、ピンポイントは難しいか。外れた弾丸を冷静に見届けて狙いを胴体へと変える。後衛職ばかりなチームの構成上寄せ付けない事が一番。次いで放たれた弾丸によって茂みに腐肉が飛び散った。
 あちこちから聞こえるゾンビの呻き声と戦闘音を聞きながらも穂鳥は周囲を警戒した。ガサリと葉擦れ。上だ。見遣った先の枝の上。その時にはスクロールを開き、仄暗緑の神秘の蔦をその身に纏わせ、放つ光。
 魔道が飛んで往くのを目で追いながら――穂鳥は自覚する。苛立っている己の心を。
(……、)
 自殺の森。自殺者達。

 自殺など、嫌悪する。

 綺麗事だとは分かっているが、自ら命を絶つ事は今までに様々な形で奪ってきた命――例えば食事にしてもそう、間接的などとは関係なく――ひいては命そのものへの裏切りである、と穂鳥は思う。
 その一方で、彼女自身の過去の記憶。自殺に傾く弱さにどこか共感する部分も不本意ながら持っている。自覚している。知っている。だからこそ、相手と同じく自分を、弱さを、嫌悪する。
 噛み締めた歯がギリと音を立てて骨に響いた。嫌いだ――嫌悪。吐きそうな。それを振り払うかの様に魔法を放つ。もう一度殺す為に。自分の目の前から消す為に。

「あぁもう、鬱陶しいわね……!」
 前に出ている故か、桜弥の周りに寄って来るゾンビ達。その内一体へ手にしたロッドを轟と振るえば、腐った頭が吹き飛んで中身がべしゃりと自分にまで。腐臭に慣れた自分が嫌だ。だが冷静にならねばならぬ。無茶もいけない。杖を低く振るい、転倒した瞬間に「今よ」と声を張り上げた。そう言えば噛み付かれた肩が痛い――毒に冒されたかもしれない。されど脚には力を込め、後衛の皆を護るべく桜弥はロッドを振るう。
「近づかせない!」
 そんな彼女を護るべく、勇は鋼の弾丸を撃ち出した。回復技を持つ桜弥は正に生命線、その負担を最小限に抑える為に彼女を襲おうとするゾンビを最優先。引き金を引いた。
 護り手が護られる。なんだか、少し、不服。その鬱憤を晴らすべく、桜弥はロッドを握る手に力を込めた。

 放たれる吐瀉物。黎は木に隠れ回避した――背後で木の皮がぐずぐず解けていく音が聞こえる。直撃だけはしたくないものだ……身を出し銃を構える。が、彼女より一手早く穂鳥の魔法がゾンビを撃ち滅ぼしていた。
 さて、周りを見渡す。一旦は、こんなものか。
「行きましょう」
 スクロールを閉じ、穂鳥が皆へと声をかける。先の戦闘音でゾンビが集まって来る前に、罠を仕掛けたエリアへ。
 片割れの仲間へ連絡を入れる。

●サーチそしてデストロイ
 地図を、仲間との連絡を頼りに行軍する。戦闘する。
 B班。傷は遊夜が応急手当てで治し、罠を駆使し、殲滅を行う。
 されど誰しもが無傷という訳にはいかなかった。重傷まではいかないが、掠り傷などの浅い傷。

「私は盾……全てを征する、盾。奪ってみせろ。出来ないなら……私が奪う。全て!」

 轟然たる戦意、雪はゾンビの攻撃を受け止めるや息を吐く暇も与えず攻勢に転ずる。振るう一閃、斬り刎ねる。その横から襲い掛かったゾンビは鹿時のトレジャーアローが射抜いて沈めた。
 残るゾンビは僅か。なら、一気にケリを付けようか――遊夜と一臣の視線が搗ち合う。
「連携披露の機会であるな、さぁ派手に行こうか!」
「りょーかい!」
 駆け出し、布陣。背に護るは仲間二人。
 向ける銃口二つ。
 鳴り響く銃声何百。
 撃ちまくる。
 撃ち穿つ。
 銃火の弾幕。
 同じ個所を撃ち抜く事でより重大なダメージを。
 次々と倒れ伏す影。草葉に飛び散る死体の血。
「おやすみなさい、安らかに」
 遊夜の声と銃声を最後に、辺りに立つのは撃退士のみ。


「痛っ! くっさ! ばっちい!」
 黎は腕に噛み付いたゾンビに顔を顰めつつ容赦無く蹴っ飛ばした。死体が蹌踉めいたその瞬間、その背後を取る。首に手を回す。
「Damn it!」
 英語なのは何となく。ゴキリと響く乾いた音はゾンビの首が折れた音。力の無くなったそれを蹴ってみれば力無く地面に頽れた。
「……消えて下さい」
 穂鳥の周囲、空間から咲いた鳳仙花。花から実へ、熟して果実。指を鳴らしたその刹那に弾けた種子が針となってゾンビの頭部を吹っ飛ばした。

 桜弥はそんな様子を見遣り思う――自分にはあの様な攻撃力は無い。だからこそ皆を護らないといけない。私が盾になってでも。勿論無理はしないし、させない。
「――それが私の役目」
 掌に灯す光が仲間の傷を奇麗に拭い去る。次の刹那、流れる様な動作で襲い掛かって来たゾンビをロッドで食い止めるや。
「勇!」
「任せて!」
 アイコンタクトも無駄な言葉も要らない。勇の返事が在った瞬間には彼が放ったストライクショットが死体の上半身を奇麗に吹き飛ばしてしまった。
 息を吐いてロッドを緩やかに下ろし光纏を解除する――のは、もう辺りにゾンビの気配が無いから。もう一方の班からも殲滅が終わった連絡が入ったから。任務を完了したから。終わったのだ。
「終わったのね? じゃあ……もういいのね……」
 見たくもないが分かっている。蒼褪めた顔は知っている。自分が返り血(それも腐ってる)塗れだという事に。
 ふぅ、と力が抜けて頽れる。桜弥は血が大の苦手なのだ。
「あれ、桜弥さん!? ちょ、大丈夫?」
 咄嗟に駆け寄ったのは勇、その身体を支え――安堵。気を失っただけ。やれやれ、ヨイショと背負った。
 その様子を見、黎も自分の身体を見遣ってみる。腐敗液まみれ。傷だらけ。腕に歯型。
「あぁ……すごい臭い」
 もう笑うっきゃない。

 設置した罠の除去を行う最中、やがてB班の面々もやって来る。

「ハァハァ……、自業自得だが今日は最低な1日だったぜ……」
 青い顔。げっそりやつれた鹿時の足元は覚束無い。やっぱりすぐにグロ耐性なんか付かなかった。吐き戻す姿を知り合いに見られなかっただけ良しとしよう。
 それにしてもB班の身形はそれなりに奇麗だった。遊夜が持って来たタオルと水で少し身体を拭いたからである。桜弥を拭いてあげようかなぁ、と勇が思ったその時。背中の桜弥が目を覚ます。
「な、何で私が!? ……ペットの癖に私の体に触れるなんて10年早いわ!」
 背中に肘鉄。そんな一方で穂鳥は無言でごしごし髪を拭いて居た。
「センセ、ちょいと相談なんだけどさ……」
 一臣は教師へと電話を。何だと訊いてきた彼に曰く、遺体の回収地点データを地元自治体へ提供したいと。必要があれば回収のサポートも行うと。
「ま、もし還る場所があるならゆっくり骨休みしてもらうかなって……そんだけなんだけどね」
『お前は優しいやっちゃのう』
 嫌いじゃないぜと教師は笑う。それから「思うようにすると良い」と。
「うん、ありがとセンセ」
 通話終了。

 顔を上げれば、木々の合間を縫って涼やかな風が頬を撫でた。



『了』


依頼結果

依頼成功度:普通
MVP: −
重体: −
面白かった!:11人

鷹狩(ハンターイーグル)・
神鷹 鹿時(ja0217)

大学部4年104組 男 インフィルトレイター
筧撃退士事務所就職内定・
常木 黎(ja0718)

卒業 女 インフィルトレイター
夜闇の眷属・
麻生 遊夜(ja1838)

大学部6年5組 男 インフィルトレイター
喪色の沙羅双樹・
牧野 穂鳥(ja2029)

大学部4年145組 女 ダアト
縁の下の力持ち・
土方 勇(ja3751)

大学部4年5組 男 インフィルトレイター
噂の『サヤ』・
権現堂 桜弥(ja4461)

大学部9年244組 女 アストラルヴァンガード
JOKER of JOKER・
加倉 一臣(ja5823)

卒業 男 インフィルトレイター
心の盾は砕けない・
翡翠 雪(ja6883)

卒業 女 アストラルヴァンガード