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マスター:ガンマ
シナリオ形態:ショート
難易度:非常に難しい
形態:
参加人数:10人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/03/27


みんなの思い出



オープニング

●復活/覚醒
 かつて、アウル覚醒者からなる『恒久の聖女』という結社があった。
 アウル覚醒者は優等種で、非覚醒者は劣等種であるという過激な思想を掲げる彼等は【双蝕】と呼ばれる様々な事件を起こしたが、久遠ヶ原学園がこれを摘発し、事態は沈静化する。

 けれど、摘み取ったそれから零れた、種一つ。
 それはいつしか根を張り葉を広げ。
「我等の意思を摘み取られる事だけは避けなければならぬと聖女様は仰った。ならば、我等は“種”となり御崇高なる魂を引き継ぐのみ」
 ――今、開花の時を迎えていた。

 ざざ、ざざざ。

 ある日の出来事であった。
 茶の間で。街角で。テレビ画面にノイズが走る。
 巻き起こる砂嵐はやがて一人の少女を映し出した。彼女――京臣ゐのり、かつて『恒久の聖女』幹部であったその人物は、まるで夜影の様な笑みを浮かべると。

「我々は『恒久の聖女』。聖女ツェツィーリア様の御遺志を継ぎ、楽園へと導く者。全てのアウル覚醒者に告ぐ。我々は選ばれた存在であり、この世界の正当なる統治者である。自然淘汰の原則に基づき我々は今、解放されるのだ。力持たぬ者への服従の時代は終わりを告げた。劣等種は我等に何をした? 心の中では異形と罵り、化物と厭いながらも、利用する為に擦り寄って来る。従わなければ、思い通りにならなければそのマジョリティで魔女狩りを行うのが劣等種ではないか。目を醒ませ、我々は劣等種の道具ではない。我等の力は我等の為にこそあり、この事こそ人という種を守ることが出来る唯一無二の術なのだ。全てのアウル覚醒者よ、我等優等種の未来の為、世界の為、『恒久の聖女』と共に歩もう。全てのアウル覚醒者に告ぐ――」

 それはかつての『恒久の聖女』と同じ思想の、プロパガンダであった。


●スクールのルーム
「緊急事態だ!」
 慌しく、教師棄棄は教室に入るなり声を張った。
「『恒久の聖女』、ってのを覚えてるか? 過去、悪魔と手を組んで「アウル覚醒者こそ選ばれし存在で非覚醒者は劣等種」っつー過激思想を掲げてメチャクチャやった連中だ。学園が摘発し、一度は解体したんだが……」
 そう。それが、現れたのだ。
 かつて幹部であった京臣ゐのりをリーダーとし、再び。
「奴等、各地のテレビ局が襲撃して乗っ取ってプロパガンダを流してやがる」
 資料として流される、ゐのりの放送。淡々と語りかける声には――人間の覚醒者ならば感じただろう、何か、心にすとん滑り込んでくる、『正論』。間違っていると頭で理解しても心が納得してしまう何か。
「そう……妙なのは放送されているゐのりの『声』だ。形容するならば『常識を超えた何か』、だな。これはアウル覚醒者にだけ作用する、洗脳や催眠――というよりサブリミナル効果のような刷り込みじみた言葉の力によって『自然と』ゐのりに同意しちまうっつーヤバイ奴だ。
 滋賀県撃退士の情報によれば、大悪魔サマエルの権能の一つ『唆す力』と関連しているようだ。サマエルと外奪は繋がってて、外奪とゐのりは繋がってる。サマエルがゐのりに何かしらした可能性が濃い。
 だが安心したまえ! ゐのりの『声』は久遠ヶ原学園撃退士には効果が薄いらしいぜ。一度戦った経歴と、それから効果のない天魔・ハーフ天魔や、効果の薄いハーフ悪魔・天使が周囲にいるからだろう」
 だが、と棄棄は真剣な声で一同を見据える。
「他の者はそうではない。このままでは『恒久の聖女』に賛同する者が増え、再び悲劇が齎されるだろう。『我々の力は、われわれの為にある』――そう、今ある秩序を護る為、隣人を護る為にな。
 さぁ、一刻も早く混乱を沈める為に、撃退士諸君よ。出撃したまえ!」


●ニッと嗤え
 転移装置から降り立った後に待ち受けていた光景は衝撃的の一言であった。
 テレビ局であるビルに巻き付く巨大な蛇。
 入り口近くに積み上げられた、かつて人だったモノの残骸。
 一面に満ちる赤い色、血の臭い。

 酸鼻を極める空間であった。

「おー、来はった来はった」
 そこに似つかわしくない飄々とした関西弁。声は上空から。見遣れば、曇白の翼を広げた人物が降下して撃退士の正面に着地する。その男の身体はベッタリと返り血に塗れていた。
「久遠ヶ原学園やね。まぁ、特に何も言わんでええやろ。僕らが『恒久の聖女』ですわ」
 羽は肩こるわー、とへらついた笑いを浮かべながら男は首を鳴らした。彼の周囲には仲間であろう者達が武器を手に展開している。
 問答無用の状況。それ以上の言葉は不要だった。
 ゴキゴキゴキ。一歩前に出た半天使の男が、拳を鳴らして薄嗤う。
「まぁ、アレや。力ァあるモンがデカいツラして何が悪いんや? アカン言うんはザコの僻みちゃいますの? 力こそ正義や。文句あるならかかって来なはれ。僕は猛鉄兄ィの様にはいきまへんで」


リプレイ本文

●列記
 別段弔い合戦でもない。あの性格だ、兄は早く死ぬだろうと思っていたし、そもそも身勝手すぎる兄と己は、仲こそ悪くなかったけれど、交流は少なかった。それじゃあ何故? 『あの』兄が望み、そして死した楽園とやらを見てみたいと思ったから。きっとその楽園は、『ここ』よりは幾分かマシな世界を見せてくれるのだろう。


●力こそ正義ならば暴力に殉じよ
 血腥い。
 これが血腥くないのなら、一体何がそうなのか?
「なんて酷いことを……」
 思わず、と。鈴代 征治(ja1305)はその目に映った惨劇に言葉を漏らした。
「怒りで頭が冷えたのは、本当に久しぶりですよ」
 そう言う或瀬院 由真(ja1687)の表情は冷え研ぎ澄まされた刃の如く。
「人殺しの道具に成り下がった癖に、優等種気取りですか。……地獄ですら生温い」
「優等に劣等……そういう概念に囚われている時点で、さして変わらない気がするがね。不要ならば自然に淘汰されるだろうし、悪魔がバックにいる時点で実に陳腐に聞こえる」
 静かに、けれど確かに、瞳に敵意を滲ませた天風 静流(ja0373)が『恒久の聖女』を睨め付けた。
「……聖女様の教えとやらはただの選民思想だというに……図に乗るなよ、雑種共」
 獅子が如き威圧感。抜刀と共にフィオナ・ボールドウィン(ja2611)が言い放つ。
「撃退士らしい『模範解答』やねぇ。まぁ、ハナから君らと分かり合おうとは思ってへん」
 一方の辺枝折 烈鉄はへらへらと笑っていた。他の教徒も似たようなもので、まるで「こいつらは自分達の崇高な理念を理解できない愚かな存在だ」と言わんばかりである。
 そんな彼等に対しナナシ(jb3008)は思う。どんな思想でも人の心は自由であり、矯正するつもりはない、寧ろできれば共存を模索したい、と。

 けれど――

「貴方達が誰にどんな感情を抱いて世間に訴えても、それは貴方達の自由よ。けどね、どんな思想であっても、それを免罪符にして自らの欲望を正当化する者を……私は絶対に許さない!!」
 真っ直ぐ大きく張り上げたナナシの声。許さない。許せない。許せる筈がない――大炊御門 菫(ja0436)は唇を噛み締める。
(『武』とは強ければ何をしてもいいと言う事ではない)
 猛る焔が胸に宿る。怒りだ。まるでマントルを突き破るマグマのよう。怒りである。
 だが。だが。だが。目の前の惨劇を起した彼等を、――殺さない。絶対に。
「私の力は! 殺す為の力なんかじゃない……」
 彼女の『武』は活かす焔。創世の焔で在りたい。
「また人同士の争い……早く、何とかしないといけませんねー?」
「そうだね。まずは状況を終了させないと」
 櫟 諏訪(ja1215)の言葉に九鬼 龍磨(jb8028)が頷く。今は悲しみも怒りも後回しだ。
(……賢しらな下衆の臭いがするな、あいつ。気をつけないと)
 龍磨は気を引き締めると共に武器を握り、正面を見据える。
 くるり。ポップだが禍々しいという矛盾の破壊戦槌『原罪』を手の中で一つ回し、ナナシは一触即発の切先へ高らかに宣言した。

「来なさい、欲望に溺れた愚か者共。お祈りの時間くらいはくれてあげるわ」
「上等。ちょっとは楽しませて頂戴や?」

 ――戦いが始まる。


●殴打葬列
 大気を揺るがす鬨の声。
 最中にケケケと空中で笑う声はディアボロ『小悪魔★ヘルディーラー』。デフォルメ調の悪魔が笑い、『恒久の聖女』一同に強化のエンチャントを施した――瞬間、視界の隅より飛来する弾丸にさっと身を捻る、が、
「残念でしたー。命中、ですよー?」
 ニコヤカに、けれどしてやったりと笑んだのは諏訪だ。マーキング弾。掠りでもすれば、相手はもう彼の獲物<ターゲット>に成り下がる。ヘルディーラーはかなりの上空を飛んでおり、そして身のこなしも凄まじい。諏訪の超長射程、そして命中精度があってこその成果であった。

 地上、先陣を切ったのは二人の鬼道忍軍、ナナシと教徒。後者が投擲するのは影手裏剣・烈、冥府の力を帯びた無数の影針が撃退士の真っ只中へと降り注ぐ。ナナシが防御に構えた腕にもそして身体にも何本かが突き刺さった。
 しかし彼女は怯まない。深い赤の瞳を、凛と前へ。
「『火』加減はしないわ」
 ナナシが前方へ掌を向けた。浮かぶのは火炎の魔方陣――聖霊降臨<ペンテコステ>。それは神の子復活の伝説。聖霊の祝福。灼熱を宿した真紅の薔薇吹雪が戦場に吹き荒び、舞い踊る。正真正銘の『大火力』攻撃。それは教徒の前衛であるディバインナイトとアストラルヴァンガードを定点に炸裂する。
 更に爆炎未だ収まらぬ中、影野 恭弥(ja0018)が由真の背後よりディバインナイトへ銃口を向けた。躊躇わず、無駄な言葉は発さず、表情も変えず。引き金を引けば隕鉄が如き腐敗弾がディバインナイトの鎧を穿ち、じゅうじゅうと溶かし始める。
 だが奇しくも、直後に動いたのも敵インフィルトレイターで、使用したもの同じ技、対象も同じディバインナイト――即ち由真へだ。
「痛くも、痒くも」
 一歩。装甲を溶かされつつも、由真はディバインナイトへ金剛布槍を鋭く振るった。

 状況は目まぐるしい。それらと同時進行で中後衛の陰陽師が四神結界を展開し、菫はアストラルヴァンガードの合間へ踏み込みつつ焔塵の槍を振り上げる――だが彼女が攻撃に移る前に、相手は天の翼を広げ上空へと。
「!」
 顔を上に、「残念だったな」と言わんばかりの表情を浮かべた相手を目で追った。
 瞬間である。
「控えよ下郎、頭が高い」
 二対四枚なる赤竜の翼<ア・ドライグ・アーダイン>を広げたフィオナが上空のアストラルヴァンガードへ肉薄する。殴る様にその頭を髪ごと掴み、押さえ付ける。
 教徒は苛付いた様子でフィオナの胸倉を掴み返すと、そのまま掌よりサジタリーアローを発射した。体勢故に回避も受けもままならないが、
「他愛もない」
 王は不敵に笑むと共に刃を一閃、斬り払う。

 一方、菫が槍の軽い一振りで『防御』すれば、教徒の魔矢は彼女の城砦が如き堅固に儚く散った。翼を持たぬ彼女はアストラルヴァンガードをフィオナに任せると、臨機応変にディバインナイトへ狙いを定める。それは丁度、由真が布槍を振るった直後。身を捻ろうとした教徒に対し、菫は退路を立つように槍を振るった。
 よろめく様に数歩後退したディバインナイト教徒は撃退士の狙いが己であると察知した。ならばと防御専念の作戦、1秒でも耐久して撃退士を疲弊させんとリジェネレーションを発動する。

「「聖女様に光あれ」」

 揃えられた狂信者共の言葉の中。
 響いたのは、殴打音。
 べちゃべちゃべちゃ、と血交じりの胃液が龍磨の足下に広がった。
「っ……ぶ、は」
 龍磨の瞳孔が体内の衝撃にブレる。揺らぐ視界、彼の目の前には拳を鳴らす烈鉄がいた。龍磨の防壁に対し、男が行ったのは力尽くのボディブロー。重い――きっと暴走する重機に撥ねられたらこんな感じなんだろう。
「お昼ご飯逆流してまっせにーちゃん、3秒ルールで食べぇや」
 頭に刺さった矢――龍磨と同じく烈鉄対応に向かった静流が放ったものだ――を平然とした顔で引っこ抜いて握り潰した烈鉄が鼻で笑う。龍磨は拳で口元を拭うと、男に対し笑い返してやった。
「弱者に威張るって、小物だよ。兄の方がまだ大物かな」
「アイツはホンマにな〜……図太いちゅぅかなんちゅぅか、あんなん僕ようやらんわ。しがないチンピラAやし」
「あっそう……あと、服似合ってないぞハゲ」
「ハゲちゃいますスキンヘッドですぅ〜あとスカジャンは風流です〜」
 中学生のように口を尖らせる烈鉄。明らかにおちょくっている。彼は兄にコンプレックスを抱いているのでは、という龍磨の予想は外れたようだ。そも、おそらくコイツ、気質的にのらりくらりと挑発をスルーするタイプで、単細胞馬鹿ではないらしい。
「見れば見るほど下衆だな」
 言い捨て、青き燐光の大薙刀を構えたのは静流。その身体中に真っ赤な紋様が浮かんでいた。一閃。烈鉄はそれを分厚い肩の筋肉で受け止める。が、鋭すぎる静流の刃は彼の肉をバターの様に裂いた。ガツンと止まった感触はおそらく骨だろう。
「想像以上に痛ぇー!」
 ウヒィと歯を剥きながら男が振りぬく無意識の反撃拳が彼女の横っ面に突き刺さった。
「っ……」
「マジ痛かった……。はぁ、二対一なら勝てるとでも?」
 切れた口内、垂れる鼻血。間合いを開く静流の眼前、奪った彼女の生命力で傷を治す烈鉄は首を鳴らす。血界を発動した静流の薙ぎ払いを受けてこれだけ平然としているとは、この男はバケモノか何かだろうか。
「でも残念、僕にも仲間がおるんやで」
 言下。敵陣最後衛にてビルにとぐろを巻いていたディアボロ『模造された赤い蛇』が、その巨大な口をがぱりと広げた。

 ――来る!

 撃退士が身構えた瞬間。
 戦場に澱んだ光が荒れ狂った。腐毒の呪いが込められた光は何条も、全ての撃退士へと襲い掛かる。
 誰もが耳にする誰かの悲鳴。鼓膜を劈く衝撃音。
 だが大人しく攻撃されるのが撃退士ではない。
「タダで喰らうか……!」
 菫はすぐさま靄状のアウルを防壁と成す。白虹貫月。蛇の光線を歪め曲げるその様はさながら敵への逆行で。幻月環の如く煌き重なる光輪と、その中央にてしっかと前を見据える双眸は、菫の確かなる意思そのものである。
 諏訪はその身を腐毒の光に蝕まれながらも、足を踏ん張り歯を食いしばり引き金を引いた。殺すではなく生かす弾はナナシへ向かった光線の軌跡を歪め、彼女の回避を成功させる。
 由真と龍磨、二人のディバインナイトが広げたのは二つの翼、庇護の願い。由真は恭弥の、龍磨は静流のダメージをそれぞれ代わりにその身で受ける。自分達へ向いた光線も浴びる事になるが、なぁに、頑丈なのが取り柄である。
 そして禍々しい光が止んだ瞬間、次いで戦場に現れたのは破壊とは真逆の優しい光であった。

「回復はメイドにお任せくださいませ。皆様は速やかに敵の撃破を」

 純白無垢なメイド服を翻し、小春日の様な笑みを浮かべ。斉凛(ja6571)の手から降る癒しの光が、この場で最も手負いであった龍磨の傷を優しく拭う。
 彼女は癒し手。そしてメイド。前線で華々しく活躍するのは皆の役目、彼女の役目は彼等の行動を密かにかつ的確に遂行する事。でしゃばりなのはメイドにあらず。

 だが――それを敵が見逃す訳が無く。

「なぁ、あの子ぶっ潰しといて」
 烈鉄が斉凛を指差した。彼等は知能無きケダモノではない、人間だ。撃退士と同じように考え、行動する。そして勝利の為には最善手を。生命線など絶ってやる。
「潰してご覧あそばせですの。マナーの悪い畜生共にはオシオキですわよ?」
 斉凛はスカートを摘んで可愛くお辞儀をしてみせる。
(皆様の癒し手として、まず自分が倒れるわけにはいきませんわ)
 その為に彼女は味方の最後衛に位置していた。最後まで倒れない事を自らに誓っている。
 身構えた――蛇の攻撃は情報通り凄まじい射程で、これ以上下がろうにもそうすれば仲間への回復が届かない。斉凛の視線の先、フリーである鬼道忍軍とインフィルトレイターがそれぞれ撃退士を回り込む様に散開し、陰陽師は半悪魔の翼を広げ上空から彼女を狙わんと動き始めた。
「くっ……」
 自らに聖なる刻印を施した征治は状況に奥歯を噛み締めた。彼は次にアストラルヴァンガードとディバインナイトへコメットを撃つ心算であったが、どちらも仲間が接敵して戦いを繰り広げており、味方を巻き込まない事を優先すれば使用できない。ならばと手に光を灯す。聖なる刻印、ライトヒール。自分にはまだ出来る事があると奔走し始める。

 一方でヘルディーラーも『恒久の聖女』達へ回復の光を注がせていた。
 あれを放置しておけば敵はどんどん強化され、無尽蔵に回復される――けれど諏訪は蛇へと銃口を向けた。どれもこれも放っておけない厄介な相手だが、あれは後だ。
「お返しですよー?」
 腐毒に冒される彼が蛇へと放つ弾丸もまた、腐敗のアウルが込められた一撃。
 それと同時に再度、戦場を赤く染め上げたのはナナシが放つ灼熱の薔薇吹雪。出来るだけ巻き込みたい、が、斉凛<回復役>狙いでフリーの教徒三人が散開した為に範囲攻撃はディバインナイト、アストラルヴァンガードにしか当たらない。が、撃退士の最初の狙いはディバインナイトかアストラルヴァンガードを落とす事だ。致命的ミスではない。
 再び由真が得物を騎士へと振るうタイミングに合わせ、恭弥が銃を向けた。その髪が目が武器が防具が全て全て真っ黒い色に染まっている。それは彼が内に秘めし闇を開放する禁忌の技、覚醒「禁忌ノ闇」<ダークネスソウル>。放たれた弾丸が纏う黒き炎は、光を焼き尽くす狂気の闇。ディバインナイトの溶けた装甲に追撃を浴びせるそれはレート差も相俟って確かなる痛打となった。ごぼりと教徒が血反吐を吐く。が。
「聖女様に貴様等が味わわせた痛みに比べれば」
 狂信の言葉と堅実防御。鉄壁効果で腐敗を実質打消し、盾の教徒は完全なる防御姿勢。そうなってしまえば、如何に菫がフェイントも織り交ぜようとも効果を成さない。
 更に、フィオナの攻撃を大剣で防御しつつアストラルヴァンガードがディバインナイトへ回復技を。教徒の星前衛もまた狙われている事を自覚し――そして落ちる訳にはいかないので――徹底防戦に出たようだ。
 その間にも斉凛目掛けて、銃手のダークショット、悪魔顕現した陰陽師の炎陣球、忍軍の鎖鎌が三方から襲い掛かる。二度は龍磨が庇護の翼で防いだ。けれど回数が切れてしまえば、炎陣球が乙女を焼く。ここからはもう丸腰だ。
 撃退士は失念していたのかもしれない――自分達が動くように、敵も縦横無尽に動く。それも自らが有利な様に、即ち相手が嫌がるように。そして彼等は撃退士と同様に『作戦』をたて連携し協力するのだ。回復し支援し防御を行うのだ。
「それでも……癒し手として皆様をお守り致しますですの」
 何度でも。血に染まってゆく手で凛然と。癒しの光は自らの為ではなく、戦い続ける仲間の為に。

 諏訪が星前衛へ放ったアシッドショットはけれども、その教徒が行うクリアランスに掻き消され。敵騎士の腐敗もその抵抗に掻き消えてしまった。
 なかなか……攻めあぐねている状況。フィオナは星前衛へ剣を振るいつつ冷静にそう思った。状況は芳しくない。想像以上にこの二人に手古摺っている。もし教徒二人が防御のことなど一切考えていなければ、想定通り易々と落ちただろう。だが彼等は攻撃もかなぐり捨てて防戦に出た。
 然らば防御を上回る攻撃をするまで。
「どうした、攻めて来い怖じ気たか」
 空中。フィオナは物理的にも『上から』の目線で星前衛に挑発の言葉を放った。盾として構えた剣の奥で男は笑う。
「攻めるのは俺じゃない」
 刹那に再び、戦場を支配する蛇の反吐めいた腐毒光線。

 それを喰らい続けてはまずい事は自明の理であった。全体攻撃と言っても等しいそれは距離による逃げ場は無く、広範囲故に空蝉も使えず、庇護の翼では使用者が2回分のダメージを受けてしまう。更に、喰らえば蝕まれる腐敗と毒が厄介すぎる。腐敗で物理防御が、毒で生命力が、それぞれどんどん削れてゆく。

 まるで冷たい掌が徐々に首を絞めゆく様に……。


●正義の刃は電気椅子
 一瞬、自分の幼い頃の記憶が脳を過ぎった。山奥の寒村、平和な日常。
 それが走馬灯だったのだと、一歩遅れで龍磨は気が付く。自分が倒れていた事にも気が付く。折れた奥歯を血唾諸共プッと吐き、よろめきながらも立ち上がる。視線の先では静流が、薙刀を手に血だらけになりながらも烈鉄と攻勢を繰り広げていた。
 それは正に攻勢対攻勢、一撃一撃が超強撃、攻めの極地、阿修羅同士の一歩も譲らぬ戦いである。おそろしいのはどちらも一切防御せず、自らの全てを攻撃に次ぎ込んでいる所である。片や顔面に思い切り拳がヒットしようが薙刀を振るい、片や薙刀に肉を思い切り斬られても踏み込んで拳を突き出し。
「お゛い、ハゲ……!」
 血で掠れた声になりながら、殴られ続け腫れ上がった顔の龍磨は、しかし鏃の如く烈鉄を睨めた。
 魔法のように元通り、とはいかないが――並渦虫<プラナリア>。失った血肉を蘇らせながら彼は盾を構える。
「僕は未だ……死んでな゛いぞ……!」
 静流の一閃を後方に跳んでかわした烈鉄が龍磨の声に振り返った。先ずは驚き。それから歓喜。
「猛鉄兄ィみたいに頑丈やなぁ。楽しいわ。ええで、君名前は?」
「……九鬼龍磨」
「九鬼くんね。改めまして僕は辺枝折烈鉄……思ッきしいくでぇ!」
 血界発動。全力で叩き潰すと、振り被った拳は全身全霊。
(ここで真っ向から受けて立てばきっとかっこいいんだろうな)
 龍磨は思った。彼は限界だった。ただでさえ蛇の腐毒で蝕まれる中、烈鉄の凄まじい攻撃を受け続け、庇護の翼で仲間の攻撃を肩代わりし続けた彼の体はボロボロだった。
 だから作戦を一つ。もう駄目だと思ったら由真と交代を。

 ――そう、できたら良かったのだが。

 問題が一つ。
 烈鉄は目の前の標的が後退するのを黙って見逃す男ではなかった。ある種の不幸か、烈鉄は頑丈<遊んでも壊れ難い>な龍磨を気に入ってしまった。つまりは追撃、追ってきたのだ。追いつかれる。
 交代は……、無理だ。
(だったら、せめて)
 全力で意地を張ってやる。両の足を踏み縛り、真っ向から盾を構え、――

「龍磨君!!」
 地面に叩きつけられた仲間の体。その名前を叫びつつ、静流は烈鉄へ黒き蝶の群れを飛ばした。現世と幽世を行き来するという黄泉蝶は纏わり付いた男から生命力を貪り喰らうと、静流へとその命を分け与える。烈鉄が2射程より離れれば反撃してこない事は既に学んだ事であった。
「イテテ……」
 静流へ振り返る男の傷は彼女よりも少ない。貪狼やメリケンサックによる自己回復に加え、ヘルディーラーが定期的に『恒久の聖女』へ降らせる回復の光によるものだ。
 さて、静流は薙刀を構える。金的や水月を狙おうにも、ただでさえ難しい部位狙いはこの男に対しては壮絶に厳しい事は既に分かった。そして百戦錬磨に積み重ねた彼女の戦闘経験を以てしても、烈鉄の動きにパターンはない。カンと本能と闘争心の塊とでも呼ぼうか。その動きを予測する事は、1000年後の天気を予想する事に等しい。
「――よくも」
 と、そこへ由真が、烈鉄を挟んで静流とは反対側、挟撃の陣形で現れる。
 烈鉄が二人を見比べた。どちらにしようかちょっと考え、
「ロリよかおねーさんの方が個人的に好き!」
 静流へ踏み込み振り上げられる拳。蛇の光線とタイミングを合わせて。


 撃退士のリズムは乱れがちになっていた。
 けれど、教徒と戦っていた撃退士は遂に教徒騎士を撃破する事に成功する。星前衛も回復が追いつかず弱っている状態だ。
 だが撃退士も同様に疲弊している。皆血だらけ、皆血みどろ。次にいつ誰が倒れてもおかしくはない。征治は必死に斉凛へライトヒールを送り、彼女は仲間へ有りっ丈の癒しを送る。
「お茶の用意が整いました。茶会を始めましょう」
 苦しくともメイドならば微笑を忘れるべからず。白よりも赤の比率が高くなった斉凛は幻想茶会<ワンダーランド・ティーパーティー>を発動する。華麗なメイド仕草で、死戦を繰り広げる静流に紅茶色のアウルを注入。ほっこり、温かなそれで傷を癒す。
 と、その時。距離にして6mほどの場所にいる烈鉄がギラッと斉凛を見遣った。彼は、回復手だから斉凛を潰してやろうと目論んでいる。だがそれは立ちはだかる由真と静流が進行を阻んで許さない。
「残念でしたですの」
 皮肉の笑み。あいつに構っている時間はない。斉凛は回復専念状態になっている。とてもではないが烈鉄へ援護射撃できる余裕はなさそうだ。それよりも降り続ける三教徒の攻撃が厄介すぎる。盾で防御をしながらとはいえ、下手をすれば次に倒れるのは自分になりかねない。
 と、三人の内忍軍の前へ颯爽と立ちはだかったのは、翼を広げたフィオナであった。
「少女相手に三対一とは、程度が知れるな」
 そのまま一気に低空飛行で距離を詰め、一閃――はせずに急上昇、上空より忍軍の死角を狙って剣を振るう。手応えは空蝉。それでいい、それを消費させるが為の戦法だ。反撃の鎖鎌を剣で弾き、金の髪と鎧とを陽光に煌かせるフィオナは言い放つ。
「我を落としたいなら、《光燐剣》アルリエル以上の速さで来るのだな」

 教徒達はいずれも一筋縄ではいかないが、彼等に与えるダメージは明らかに撃退士側が上回っている。

 星前衛教徒へ恭弥の覚醒「禁忌ノ闇」が襲い掛かる。強い天の力を持つ者に対してそれだけ凶悪さを増すその漆黒に、教徒が明らかな苦痛の声を歯列より漏らした。
 そこへ追い討つようナナシが氷の夜想曲を仕掛ける。手加減はしない。敢えて殺すつもりはないが、倒す気で。
 同族との戦い。気に病む者もいるだろう。だが天魔の自分にとっては今更で、悩む事でもない。だから攻撃は曇らない。
 菫も似た心境であった。殺害はせず、撃破をする。咽る様な血の臭いの中、飛べぬ故に星前衛ではなく忍軍へと槍を振るいつつ搾り出す様に呟いた。
「死なせたくないんだ」
 人の数だけ正義がある――とは、菫には言えない。
(しかし想いを通すのは何時も力有る者のみならば)
 あの時、彼女は「いつか彼等と共に歩む」と願った。その為に、殺さない。己が力は『創世の炎』だと。
「俺達だって殺したりしたくないさ」
 意外にも教徒から返ったのはそんな声だった。
「でも、俺達をこうまで追い詰めたのは一体何処の誰だ?」
 迫害した一般人。聖女と共に夢と居場所を潰した久遠ヶ原。教徒の目にあるのは憎悪、憤怒、相容れぬ。彼等とて人間だった。けれど外的要因が、彼らをここまで歪めてしまった。綻び腐った運命はもう、二度とは元に戻らない。
 忍軍から振るわれた怒りの一撃。菫はそれを往なす様に崩すと、返す刃で月輪が如き軌跡を描いて強かに打ち据える。
「技は繋ぐものだ。そして……お前達の言い分、其れは只の暴虐だ」
「……ふ。他人を悪者にするのは楽しいかい? 俺達とやってる事は一緒だよな、『お前が悪い』って」
「違う、私は、私達は――」
「いい子ちゃんぶってんじゃあねぇアバズレがッ! あの時、お前達は勝ったから上から目線が出来るのさ! だから今度は俺達が……」
 声を荒げる忍軍の言葉が終わる前に、何度目かの蛇の光線が戦場を奔る。
 かのディアボロの動向は皆常に意識に留めていた故に、視界外攻撃や不意打ちは防げているのが僥倖か。
「うぐぐっ……」
 回避の弾は既に尽きた。諏訪は眼前で交差させた腕で防御しつつ踏み留まり、光が消えるやすぐに空へと目を向けた。咳き込む吐息に血が混じるのは毒に蝕まれている証拠。

 まずい、と思っている。

 何がと言うと、蛇から無尽蔵に放たれ続けるあの光だ。聖なる刻印や回復があるとはいえ、毎度毎度毒と腐敗を付与され続ければ生命力も物理防御力もジリ貧だ。そして回復は一人ずつしか行えず、数にも限りがあるだけでなく、敵が斉凛を集中狙いするという作戦に出た今は回復が途切れる危険性すらある。
 それからもう一つ、星前衛と神聖騎士に防御専念され想定外に時間を消費してしまったのが致命的だった。敵の構成上、時間がかかればかかるほど撃退士側が不利になる。

 早くこの戦いにピリオドを打つ為。空に目を走らせた諏訪の視線は迷う事無くマーキングした小悪魔へ。相も変わらず『恒久の聖女』へ回復や支援の光を注いでいる。あれがあれば、折角アシッドショットでつけた腐敗も意味がない。
 なので、諏訪は弾倉に光のアウルを強く込める。スコープを覗き込んだ。ひゅんひゅん飛び回る標的に狙いを定め――息を止め、引き金を。
 たぁん。銃声、彗星の軌跡を描くスターショットが小悪魔を撃ち抜く。「いっでぇーー!」と涙声。流石に一撃では仕留められないか、しかし痛打になった事は間違いない。
「調子の乗るのもそこまでだ!」
 それに続けと征治は星の鎖を投擲する。ギャグみたいにビュービュー血を流す小悪魔はムキーと不機嫌そうに歯を剥くとそれを必死に回避、そのままぴゅーと逃げ始める。
 逃げても無駄だ。諏訪にマーキングされた小悪魔の居場所など――
「……!? なっ、そこに隠れるなんて」
「うわぁー、本当に厭らしいですねー?」
 征治は目を剥き、諏訪は眉根を寄せた。小悪魔が隠れ盾にした場所、それは……蛇の身体。当初は外奪の厭らしさを鑑みて死体に隠れるだろうと予想した。だが外奪の厭らしさは想定を超えていた。
 十二翼の赤蛇<サマエルの偽者>に隠れた小悪魔<外奪の偽者>。模造されし大悪魔が嘲笑う様に不気味に唸った。

「面白い、想定外こそ盤上の支配者よ」
 そう言うフィオナは血みどろで、けれど少しも絶望や躊躇を見せず、楽しげな微笑を浮かべた。天と地、菫と共に振りぬいた斬撃で忍軍を斬り沈めると、今度は陰陽師へと翼を翻す。
「遅い弾だ。止まって見えるぞ」
 恭弥は銃器でインフィルトレイターの射撃を受け止め冷たく言った。彼の背後では、闇に頭部を撃ち抜かれた星前衛の首無し死体が転がっている。
「手加減するほどの慈悲は持ち合わせていない」
 向けた銃。腐り落ちろと引き金を引く。

 戦いは終わらない。
 願わくば良き終わりを――斉凛は祈りを込めて、その手に癒しの光を。


●折れないハートに朽ち逝くボディ
 何度目だろうか。
 烈鉄の拳が由真の身体を殴り飛ばす。防御した少女は折れた足で無理矢理踏み留まり、かかってこいと眼前へ立つ。肌も。髪も。服も。全て。真っ赤な色。痣まみれ、傷だらけ。視界がぐらつく。頭が痛いのは脳から血でも出ているんだろうか。リジェネレーションで身体を鼓舞し、意識をこの世に留め続ける。
 彼と壮絶な攻勢を繰り広げた静流は、遂に烈鉄の拳の前に倒れてしまった。けれど彼女の攻撃で烈鉄自身も無傷ではない。全身に刻まれた大量の傷が静流の大攻勢を物語る。
 由真はその手に碧色に輝く光の直刀を現した。心を顕す『心象剣』が一つ、災厄を退ける意思と記憶にある伝承の顕現『草薙剣』。

「――ぁあああああアアアアアッ!!!」

 修羅が如き咆哮。光渦巻くその刃で、由真は烈鉄を切り払う。その凄まじい衝撃を以て、吹き飛ばす。
「ぐっふぉ……しぶっといなぁ〜あのロリっ子。血界残しときゃ良かった」
 吹っ飛ばされた男の身体は蛇に叩きつけられた。そのまま冥魔に凭れて束の間の一休みをしつつ、烈鉄は状況を見る。

「沈めっ!!」
 蛇へと歩を進めたナナシはその手に神封じの黒杭を顕現させた。蛇の身体に深々と打ち込まれたそれは、処刑されし神の子の手足を封じた伝説の如く蛇の動きを完全に封じ込める。
 その隙を狙い放たれる二条の光。諏訪が撃ったのはスターショット、恭弥が撃ったのは白銀の退魔弾<シルバーブレット>。伝説の狼男を倒せるとされた唯一の武器は全ての邪悪を滅する白銀の光。
 強い天の力に蛇の羽肉が殺がれ落ちる。更にそこへ、大きく跳躍し蛇へ肉薄していたのは、菫。足に収縮させた余剰アウルによるその踏み込みは音すらも置き去りにする。

「貫いてみせる――!」

 瞬間に再活性化する魔具。風の抵抗を受ける焔塵の槍はまるで生き物の様な不可解な軌跡を描き、蛇の肉に突き立てられた。愛逢月。人の身でいながら天使さながらの凄まじい力を持った一撃は冥魔の身体を貫通した。
 聴覚を絶する悲鳴――どろどろとしたヘドロめいた血を大量に散らす蛇が大きくのたうち、その巨体と長い長い尾を以て撃退士達を力尽くで叩き飛ばした。長く続きすぎた腐敗により物理防御力がほぼなくなっている撃退士には手痛すぎる一撃。
「っ、」
 蝕。月が影に喰われ月蝕となるように、冥魔の影響を受け入れ自らを蝕ませる事で菫はゼロのレートで一撃を受けた。瞬きをすれば、双眸は暗赤より元の色に戻る。
 その目で周囲を見遣ればもう――立っているのは菫と、恭弥、ナナシ、由真、諏訪の五人だけ。他は皆、続く戦いに倒れ伏してしまった。
 一方の『恒久の聖女』は、一休みが終わり由真へ笑いながら吶喊を仕掛ける烈鉄、蛇の身体に隠れそれに回復魔法を施す小悪魔、血を垂らしながら牙を剥く大蛇。教徒は全て撃破された。
 ふらつき、支え合いながら立ち上がる撃退士達。
 そこへ、蛇の口が大きく開く。また、アレが来る。

 ――駄目だ。もう駄目だ。

 防御も体力もほとんど溶けてしまった今の状況ではもう、もう、嬲り殺しにされてしまう。立っているのがやっとだった。
「……引きましょう」
 ナナシの絞り出す様な声。悔しくないと言えば嘘になる。けれど退却を。皆の命を護る為に。皆で生きて帰る為に。勝利よりも大切な物がある――前に彼等のアジトから撤退した際も同じ事を思ったと、思い出した。
 倒れた仲間を抱え上げ、撃退士達は全力移動で撤退する。ふらつく足にはもう感覚等なく、けれど心には敵への怒りに満ちていて。
 敵が追い討ちしてくる事は無かった。それが出来ないほど彼等を消耗させただけでも成果だろう。蛇の咆哮が、遠ざかる――。


●偽、戯、欺、擬、疑、犠
 阻止されなかった放送が、撃退士敗北のニュースも乗せて流れ続ける。風に乗る種の如く広がり続ける。

 これからどうなる?
 分からない。

 ギ曲の幕は、上がったばかり。



『了』


依頼結果

依頼成功度:失敗
MVP: −
重体: 撃退士・天風 静流(ja0373)
   <烈鉄より強打を受けた>という理由により『重体』となる
 最強の『普通』・鈴代 征治(ja1305)
   <敵の猛攻を受けた>という理由により『重体』となる
 『天』盟約の王・フィオナ・ボールドウィン(ja2611)
   <敵の猛攻を受けた>という理由により『重体』となる
 紅茶神・斉凛(ja6571)
   <敵の猛攻を受けた>という理由により『重体』となる
 圧し折れぬ者・九鬼 龍磨(jb8028)
   <烈鉄より全力強打を受けた>という理由により『重体』となる
面白かった!:6人

God of Snipe・
影野 恭弥(ja0018)

卒業 男 インフィルトレイター
撃退士・
天風 静流(ja0373)

卒業 女 阿修羅
創世の炎・
大炊御門 菫(ja0436)

卒業 女 ディバインナイト
二月といえば海・
櫟 諏訪(ja1215)

大学部5年4組 男 インフィルトレイター
最強の『普通』・
鈴代 征治(ja1305)

大学部4年5組 男 ルインズブレイド
揺るがぬ護壁・
橘 由真(ja1687)

大学部7年148組 女 ディバインナイト
『天』盟約の王・
フィオナ・ボールドウィン(ja2611)

大学部6年1組 女 ディバインナイト
紅茶神・
斉凛(ja6571)

卒業 女 インフィルトレイター
誓いを胸に・
ナナシ(jb3008)

卒業 女 鬼道忍軍
圧し折れぬ者・
九鬼 龍磨(jb8028)

卒業 男 ディバインナイト