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マスター:御影堂
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2015/04/16


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオはエイプリルフール・シナリオです。
 オープニングは架空のものであり、ゲームの世界観に一切影響を与えません。


 断腸の思いとは――。
 子猿を連れ去られた船を追いかけた母猿が、飛び移ると同時に死んだ。
 母猿の腹を開けば、腸がずたずたに寸断していたという。
 この中国の故事に由来し、深い悲しみのことを例えるようになったという。

「一族郎党皆殺しとあっちゃ、断腸どころじゃねぇなぁ」
「信さん。やっぱり、間違いありません」
 薄暗い室内で、話し合う二人の武士がいた。
 ここは茸の乾物を取り扱う大店、宮田屋の一室である。
 しかし、乾物の芳しい匂いは今はなく、血生臭さだけが漂っていた。
 信さんと呼んだ武士が、一房の毛を差し渡す。
「白髪か……いや、白毛といったほうがいいかな」
「獣臭さが際立ってますからねぇ」
「そのくせ、人間くせェ真似もしやがる」
 堀の深い顔にシワを作り、信さんこと信衛門は呟く。
 視線を泳がせれば、壁に、床に、天井にさえ撒き散らかされた血の跡が見える。
 この部屋だけではない。屋敷の至るところで、惨劇の跡が残されていた。
「生存者は、やはりいないか」
 信衛門の言葉に、部下が頷く。
 江戸市中を騒がす、猿叫の盗賊のしわざに間違いなかった。
 一族郎党皆殺しにし、金目の物と食い物を総ざらいする。
 残されるのは、猿を思わせる抜け毛と無数の骸。
「盗賊、ましらと名付けられたようですね」
「ハッ! 大妖怪と同じ名前とは、大層なこった」
 吐き捨てるように信衛門が毒づく。
 これで三軒目の犯行である。立て続けに起こったとあれば、治安を預かる奉行所もきまりが悪い。
 その下につく信衛門たちはなおさらだ。
「しかし、本当に猿の妖怪とあっては……」
「俺達ではどうにもならんだろうな」
 がしがしと頭を掻きながら、信衛門はため息をついた。
 外に出れば野次馬の姿も見える。部下たちに払わせながら、道を行く。
「まったく……変な噂が立つ前に終わらせねばな」
 もうたっていますよという部下の言葉は、聞こえないことにした。
 こうなったら、アレに頼るしかない。
「お前、先に帰ってろ。俺は寄るところがある」
 なにかいいたりなさそうな部下を番屋へ戻し、踵を返す。
 向かう先は路地裏にひっそりと営まれる、かわら版屋であった。

 かわら版、あらた屋は表は雑多な情報を纏めただけのちり紙である。
 しかし、読むものが読めば多様な内容を摘み取れる。
「邪魔するぜ」
「邪魔するなら帰れっす」
「あいよー……って、上方じゃないんだから」
 軽口に、そんな会話を飛ばしながら敷居をまたぐ。
 かわら版屋の女主人、あらたが記事を認めているところだった。
「実入りはどうだい」
「なんだ、信さんっすか。何の用っすか?」
「盗賊団ましらの討伐を頼みたい」
 その噂はあらたも知っていた。
 金払いさえよければ、何でも引き受けるのが矜持だ。
 細やかな情報を聞いて、あらたは記事の内容を変更する。
「では、任せた」
 渋面を見せつけ、信衛門は外へ出る。
 まだ春先の空気は、冷たさをはらむことがある。
 猿の声が消える頃、冷えもなくなるのだろうか。

 後日、配られた瓦版には裏稼業への言葉が紡がれていた。
「猿の声 今宵も高し 有害なれば 断腸こそ哀れなり」
 


リプレイ本文


 江戸は教育水準の高い町だといわれる。
 いくつもの寺小屋……手習指南所が存在していたからだ。
 ここは麻生 遊夜(ja1838)が、管理を務める指南所である。
「そろそろ来ると思ってたぜ……早いとこ始末せんとな」
 瓦版から顔をあげ、遊夜は階段を降りる。
 昼も過ぎ、子供たちの姿はない。そこには、見知った人影が二つ。
「麻夜、ヒビキ……仕事だ」
「はいはーい、お任せだよー」
「ん、私達の出番?」
 来崎 麻夜(jb0905)はくすくすと笑いながら答え、ヒビキ・ユーヤ(jb9420)は小首をかしげる。
 瓦版を遊夜が読み上げると、
「最近騒がしかったもんねぇ」
「ん、わかった。いつもどおり」
 口々にそう答えた。
「色々噂が飛び交ってるから、情報を集めるだけ集めて精査しなきゃだね」
 麻夜がいうように、この一件の情報は玉石混交と思われる。
 麻夜が同業者やご近所さんを中心に、
「ん、可愛い子供たちの情報網は、優秀」
 というヒビキは子供たちや出入りしている人たちから情報を集める。
 段取りを決めていると、寺小屋の扉ががらっと開けられた。
「よう、久しぶり。今日は新しいモン持ってきたぜ」
 姿を見せたのは、テト・シュタイナー(ja9202)。
 発明家を名乗る、渡来人である。
 江戸では、発明は取り締まりの対象にもなるのだが……。
「今回はこれ、螺旋巻き式納豆かき混ぜ機!」
 斜め上の発想で、取るに足らないと役人にも無視される始末であった。
 あからさまではないにしろ、不要なからくりに遊夜も苦笑いを浮かべる。
「……何だよ、その微妙なツラは」
 テトは嘆息混じりにいうと、風呂敷を取り出した。
「はいはい。分かってンよ、遊び道具だろ? ほれ、新型の喧嘩独楽」
 微妙な発明品と違い、テトの作る玩具は評判が良い。
 ヒビキは受け取ると、近所の子どもと遊んでみると告げて麻夜と出る。
 残された遊夜は、テトに例の瓦版を見せた。
「もう一つ、頼んでいる方も特急で頼んだぜ」
 瓦版を目で追ったテトはにやりと口を歪ませる。
「今回の獲物はましらか。なるほど、新装備を試すにはもってこいの相手だな」
 頼まれてた品も後で持ってくると述べ、テトも寺小屋を出る。
 道すがら、白髪を風になびかせる青年とすれ違う。
 青年、ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)……黒行慈羅も瓦版を手にしていた。

「まぁた厄介な妖さんが出たわね……そろそろ呼ばれる頃合いかしら」
 瓦版にすぅっと眼を細めるのは、月生田 杏(jb8049)である。
 そこへ「じゃまをするよ」と星を飛ばしながら、慈羅が入ってきた。
「噂をすればってところねぇ」
「あぁ、それね」と瓦版を呼びさして、慈羅は笑みを浮かべる。
「若いオナゴの居る家を狙う……猿には勿体無いね☆」
 冗談めかしていうが、憤りは感じているようだった。
 それを表に出さない辺りが、慈羅らしいと杏は思う。
「あなたも葛葉亭へ行くのかしら?」
「その前に情報収集を、廓でね」
 そういう名目で遊びたいだけではないかと、思ってしまう。
 慈羅は名家旗本の次男坊なのだが、色街通いで有名であった。
「これ手土産に貰って行くよ。また、後でね」
 お代を払い、去っていく背中を見送る。
「さて、あたしも仕事しなきゃ」
 杏の骨董屋には、依頼品とともに様々な噂が舞い込んでくる。
 世間話をあてに、被害にあった家のことも聞こえてくるかも知れなかった。


「お侍様でも歯が立たない盗賊団ですか……楽しみですねぇ」
「神雷ちゃん、声漏れとるで」
 瓦版を手に笑みを浮かべる神雷(jb6374)へ、葛葉アキラ(jb7705)がツッコむ。
 アキラはこの小料理屋、葛葉亭の娘である。
 神雷は近くにある商家の娘であるが、葛葉亭をよく利用していた。
 その訳は、一つである。
「物騒な世の中やわぁ。ま、やからこそ、うちらみたいなのが居るワケやけど」
 そう、葛葉亭は撃退士の話し合いの場として提供されているのだ。
 神雷も撃退士の一人。命がけの果たし合いを夢見る、うら若き乙女なのである。
「神雷ちゃんも外で物騒なことは、あまりいいなや?」
「いいませんよ。止められちゃいますし」
 と会話をしているうちに、杏が姿を現す。
「あら、早かったかしら?」
「そうでもないぜ」
 続いてテトも顔を出す。
 ほどなくして、全員が顔を揃えた。

「ココの煮しめが絶品でねぇ。江戸中探したってなかなかないよ」
 慈羅を始めとして、何人かは料理をつついていた。
「その上、きれいな店員さんが居るんだから、繁盛しないわけがないねぇ」
「おおきにさん」
 いつもの言葉に、いつものようにアキラは返す。
 一段落したところで、杏が箸を置く。
「さて……どう? そっちはなにか掴めた?」
「ん、敵拠点予測、次の予定標的、行動時間帯、数と武器……」
 こくりと頷いて洗うべき情報を、ヒビキが書き出す。
「今のところこんな感じだね、そっちはどう?」
「廓の噂では、御用商人かそれぐらいの商家らしいよ」
 麻夜の振りに、慈羅が答える。
「賽子で巻き上げた褌代わりの情報だし、信ぴょう性は微妙だけどねぇ」
 裏通りの情報も慈羅は語るが、肩をすくめる程度の確かさだった。
 杏や神雷もそれぞれ仕入れた情報を開示する。
「若い娘がいるのは、こことここですね」
「ほんで、今までのと同じ生食品を扱ってるのはこことここやね」
 そこへ仕入先から聞いた情報をアキラが加える。
「こことここは違うと思う……たぶんこの辺り」
「じゃ、こっちのが危なそう」
 麻夜と杏が詰め、最後に遊夜が指をさす。
「次、狙われるのは……ここ、か?」


「あ、コレ思ったより旨いな」
「これ美味しいね―。お土産に包めたりする?」
「かまへんけど……」
 煮物を器に移しながら、緊張感のない遊夜たちにアキラは苦笑する。
 作戦わかってるわよね、という杏にヒビキが頷く。
「敵拠点は、相手の領域……誘き出して、仕留める」
「敵数はどうかな?」
「相手は、お猿さん……6〜7匹」
「頭領は私が相手をしたいですよ」
 すかさず神雷が手を上げて主張する。
「雑魚を片付けたら、全員でかかるけどね」
 仕事優先だと慈羅が一応は釘を刺す。
 作戦会議という名の食事会が終わり、各々葛葉亭を後にした。

 その去り際、
「よう、遊夜。武装の調子はどうよ」
 テトは遊夜に声をかけ、その手にある双短銃と奇環砲を見やる。
「相変わらず良い腕だな、これなら仕留め切れるだろう」
 すでに試し撃ちを終えていた遊夜がにやりと笑う。
「俺様も新装備用意しておかないとな」
 何やら派手な一夜になりそうだと、天を仰ぐ遊夜だった。


 徳田屋は江戸でも五本の指に入る青果の商店である。
 立派な店構えに招かれるのは、口の肥えた客ばかりではない。
 粗暴な足音、低い唸り声……そして何かを引きずるような音が江戸に響く。
「そろそろ予定時刻……要注意」
 ヒビキがそういうのと、物音が被る。
 遊夜が立ち上がり、ヒビキと麻夜へ視線を送った。
「来たか。情報通りだな」
 パッと開け放された窓から月光が刺し込む。
 光に照らされたのは、紛れも無く猿の群れ。待ち構えていた撃退士を威嚇する。
「格の違い分からない?」
 赤黒い闘気を朧げに見せ、慈羅が後ろを塞ぐ。
 猿どもは、怯む様子を見せず歯茎を見せて唸る。
「これは……野生とは言えないねぇ」
 少し楽しげに慈羅は、直刀を掲げた。
 中には狼狽する猿もいたが、一際目立つましらが叫びを上げるとぴしりと隊列が整った。
「あれが、頭領ですねぇ」
 獲物を狙う武士の目で、神雷はその猿を見る。
 緊張感が走る中、戦端をひらいたのは一発の花火だった。
 撃ち放たれる一発の焔に、一匹の猿が半身を焦がす。
「ヒャッハー! 撃ち放題だ!」
「家は焦がさんといてや……」
 派手に大筒をぶっ放すテトに、アキラは呆れ顔で告げる。
 一つ咳払いをすると、アキラも猿どもに力強くいう。
「うちらの庭で悪さはさせへん、観念しぃやー」
 挨拶代わりと魔法陣で爆発を起こす。
 今度はテトが、
「アキラには言われたくないぜ」
 軽口を叩く余裕のある二人を越えて、麻夜がまずは跳び込む。
 犬のような耳と尻尾を生やした麻夜に、猿達は激しく吠えた。
「罪状、住居侵入及び余罪三件……判決、串刺しの刑に処す」
 それを無視するようにクスクスと笑いながら、麻夜は告げる。
 背中から生える翼が増幅し、猿達へと襲いかかる。気配を察した猿たちは、とっさに躱す。
 一匹だけ、テトの焔を受けた猿だけが逃れきれず処された。
「いらっしゃい、さようなら?」
 ヒビキが隊列を整え直そうとする雑魚へ銭を打ち放ち、けん制する。
「歓迎してやんぜ、盛大にな!」
 遊夜も二丁の銃を手に、敵中を駆ける。
 三人が頭領を足止めするのを、神雷は眺めつつ、距離を詰める。
「早いですねぇ」
 舌なめずりするような目つきで、頭領の動きを観察する。
 猿自身の身長と同等の太刀が放つ、一撃一撃が重たく見える。
「威力も見てみたいですが、流石に危ないでしょうか……」
 抑えきれない興奮に、楽しそうに口角を釣り上げる。
 肉薄した彼女へ降ろされる刀は、空を切った。
「一撃でも受けると、刀を折られそうですねぇ……いい業物です」
 地面を茶碗蒸しに突き立てる匙の如く、その刀は切っていた。
 相手の動きを予測し、避ける神雷の十八番だった。
「もう少し、見せてくださいねぇ」
 双剣を垂らし、神雷は頭領へと告げていた。


「こっちは任せて、みんなは攻撃に集中してちょうだい」
 猿の攻撃を受払いながら、杏が後ろのアキラたちへ告げる。
 紫電を纏い、一時的に防御を固めたのだ。
 加えて、前衛を担う慈羅に風の守りを授けていた。
「そっち、任せたわよ」
 時折、魔法弾を猿の足元に放っては動きを乱す。
「キミたちはボクと遊ぶんだよ☆」
 乱れたところへ、慈羅が肉薄する。
 優れた観察眼から放たれる剣撃は、胴を斬り伏せ動きを止める。
 彼の流派の剣術、涅槃である。
「派手なの行くぜ!」
 テトの声が聞こえ、距離を取ると同時に目の前の猿が螺旋機械に穿たれた。
「浪漫溢れる新装備ってヤツよ。イかすだろ?」
「もう少し静かだと、もっといいんだけどね」
 耳元で轟音を聞き、慈羅は苦笑する。
「ん? 何か言ったか?」
 鉄製の楔を打ち込んでいたテトが、振り向く。
 何でもないよ、と慈羅は肩をすくめる。
 テトが視線を戻すと同時に、蓄電機から放たれた電流が目の前の猿に襲いかかる。
「よし、これで残り二匹だ」
 痺れた身体を痙攣させ、猿は倒れる。
 見渡せば、戦場はすっきりしていた、物理的に。
 残る二匹も、杏の攻撃に誘われるように立ち並ぶ。
「ほな、燃えてんか」
 笑みを浮かべて、アキラが炎陣球を叩き込む。
 巻き込まれ、毛皮を焦がした臭いが充満する。
 それでもなお、いきり立つ一体を慈羅が袈裟斬りに伏す。
「ほな、次は……」
 符を入れ替え、アキラが見やる。
 頭領との一戦も終わりに向かおうとしていた。


「早いですねぇ。でも、遅いですねぇ」
 頭領の切っ先を避け、神雷が笑みを見せる。
 闘いに酔いしれた乙女の笑みだ。両手に提げた双剣を振るい上げる。
 親指を狙った刃は、わずかに逸れて腕を裂いた。
「避けるの少し早いですかぁ」
 予測していたよりも、足首の動きが早かった。
 くやしがるまもなく、頭領は刃を振り上げる。
「すまんが、俺らとも遊んでくれや」
 すかさず遊夜が弾丸を叩き込む。
 刃で防ぎながら、頭領は後退する。
「ハハ、逃さねぇぜ」
 壁を乗り越えないよう、壁を走り遊夜が回りこむ。
「ボクから、逃げられるかなぁ?」
 クスクスと笑い声を上げながら、麻夜も幻術で頭領の動きを縛りにかかる。
「ふふっ、うふふ、さぁ、遊ぼう?」
 今度はヒビキが防御を固めながら、肉薄する。
「初お披露目だぜ、光栄に思えよ?」
 にやりと口を歪ませ、遊夜が奇環砲を取り出す。
 麻夜の幻術で足が止まった猿は、ただの的だ。
「乱れ舞え、胡蝶!」
 蝶が奔り、頭領を穿つ。意識は朦朧とし、動きが精彩を欠く。
「ほいっと」
 神雷が狙い通りに親指をすっぱり切り落とす。
 刀が持てなくなり、大刀が地面に刺さる。
「ん、暴れん坊」
 なおも包囲網から逃れようと藻掻く猿の腕力は、かなり強い。
 一撃を見舞ったヒビキは、しかし、笑みを浮かべた。
「痛い、痛いの……ねぇ、貴方の、頂戴?」
 伸びた爪が頭領の毛皮に食い込む、魂を直接吸い上げる外法に足がよろめく。
 ぐいっと踏み込んだ神雷が、片腕を切り飛ばす。
 同時に、逆からヒビキが渾身一擲の一撃を叩き込む。
「全力で、行くわよ? 耐えられる? 耐えられるかしら?」
 首の後ろに叩きこまれ、嫌な音が響く。
「もう、あんたの郎党は終わりやで」
 倒れゆく身体へトドメとばかりに、鎌鼬が襲いかかる。
 雑魚を片付けたアキラが放ったのだ。
「これまでアンタらにズッタズタにされた人らの気持ちがわかるか?」
 猿どもをアキラがきっと睨みを利かす。
 答えが返ってくるわけがない、それらもズタボロになっているのだから。
「……って、あー……もうわからんわな。その状態じゃ」


「任務完了、これで静かになるな」
 銃を収め、周囲を見渡す遊夜。
 対照的に、テトは自身の武器を整備しながら天を仰ぐ。
「おうよ。今回も一件落着、後は地獄の閻魔様におまかせってな」
「閻魔様も大変ねぇ。こんなのが大挙して押し寄せるんだから」
 奉行から派遣された役人と話をしながら、杏が猿達を見やる。
 本当に猿ならば、公表のしようがないと役人は苦笑いしていた。
「これは……本当にいい業物ですよねぇ」
 ほれぼれとした表情で神雷は、猿の残した大太刀を眺める。
 質実剛健な無骨な作り、だが、波紋は美しい。
「高そうだよね?」
 くすくすと笑う麻夜の目の前で、慈羅が剣を抜き取る。
 転がっていた鞘に収め、持ち上げる。
「ボクの家で預かろう。これでも名家だしね」
 その刀を名残惜しそうに見る神雷の横で、ヒビキが東の空を見た。
「ん。朝日」
「ご来光……あ、支度しに行かな!」
 慌てて去っていくアキラの背中へ、
「また、食べに行くよ☆」
 慈羅が声をかける。
 夜は晴れ、朝日は登る。
 一日の始まりとともに、撃退士はそれぞれの日常へと舞い戻るのであった。

 時代劇「猿叫」
 これにて閉幕にございます。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 夜闇の眷属・麻生 遊夜(ja1838)
 爆発は芸術だ!・テト・シュタイナー(ja9202)
 永遠の十四歳・神雷(jb6374)
重体: −
面白かった!:4人

夜闇の眷属・
麻生 遊夜(ja1838)

大学部6年5組 男 インフィルトレイター
爆発は芸術だ!・
テト・シュタイナー(ja9202)

大学部5年18組 女 ダアト
ドS白狐・
ジェラルド&ブラックパレード(ja9284)

卒業 男 阿修羅
夜闇の眷属・
来崎 麻夜(jb0905)

大学部2年42組 女 ナイトウォーカー
永遠の十四歳・
神雷(jb6374)

大学部1年7組 女 アカシックレコーダー:タイプB
鬼!妖怪!料理人!・
葛葉アキラ(jb7705)

高等部3年14組 女 陰陽師
若旦那は曰くつき・
月生田 杏(jb8049)

大学部5年256組 男 アカシックレコーダー:タイプA
夜闇の眷属・
ヒビキ・ユーヤ(jb9420)

高等部1年30組 女 阿修羅