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マスター:御影堂
シナリオ形態:ショート
難易度:やや易
参加人数:6人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2014/04/01


みんなの思い出



オープニング


新谷新は呻いていた。
己の前に置かれた、パソコンの画面の白さに呻いていた。
「春は恋の季節っすからねぇ」
 前号の予告にて、デート特集なるものを組んだはいいものの、筆が進まない。このままでは原稿が間に合わない可能性が大いにある。うんうんと呻ってみたところで、筆が進むわけではない。
 情報収集自体は、すでに終わっているしプランも練れていたのだった。
 ただ、
「インパクトが足りないんっすよね」
 というデートとは似つかわしくない理由がその原因であった。彼女の発刊する「あらた新報」は、エンターテインメント情報誌。エンターテインメント性を求めて彼女は考え続ける。
 が、詰まったときは詰まりっぱなしが常だ。
 ペンをいくら爪繰ろうと、取材ノートとにらめっこしようと動かないモノは動かない。
「こういうときは、いつもの手段っすね」
 さっぱりと意地の悪い笑顔を浮かべながら、新は部屋を出るのだった。


「これがうちの考えたデートプランっす」
 そういって、A4一枚のプラン内容を説明する。
 まずは駅前などの一般的でしゃれた場所で待ち合わせ、桜並木のある公園を散歩した後、最近巷で噂になりつつあるレストランでランチ。ウィンドウショッピングなどをしつつ、甘味処か喫茶店でお茶をしばく。
「うちも付き合ったことないからプランとしての実用性は……」
 遠い目をしながら、新は身の上を語ってみたり。
 お茶の後は、話題の映画あたりを見て夕方かいさーん。
「……なんっすか。一般的な理想の範疇だと思うんすけど、おかしいっすか?」
 少し自信なさげに、新はいう。
 そんな表情を払拭するように、一つ咳払い。
「と、とにかく、このデートプランを面白おかしくしたいんっすよ」
 そして、依頼内容を語る。
「まず、3組ほどカップルを募集するっす。もちろん、本物でもいいですが、偽カップルでも問題はないっすよ」
 そして、3組のカップルに実際にデートをしてもらうのだという。おおよそはプランに沿ってもらうが、何かしたいことがあればできる範囲で協力するとのこと。
「公序良俗に反しない範囲であれば、協力させていただくっすよ」
 にやっと笑いながら、依頼所を新は後にするのだった。


リプレイ本文


 今年の春、デートの待ち合わせ場所は、いつ誰が何のために作ったのか不明なモニュメントの前が定番です。痛々しい配色で、あなたのセンスも見事にごまかせます。
 このモニュメントの情報は、マリア(jb9408)さんよりいただきました。
 さて、今回は三組のカップルに寄り添いながら、このモニュメントを出発点としてデートプランをご紹介したいと思います。合言葉は、「気になるあの人にインパクト」です。
 
 待ち合わせは何分前に到着しますか?
 5分、10分?
 いいえ、恋する乙女は「4時間前集合」が原則です。
 前衛的すぎるモニュメントの前で、御堂島流紗(jb3866)は4時間も待ち続けていました。
 では、その頑張りはアピールするべきなのでしょうか。いえいえ、到着時間にスーツ姿でやってきた今本 頼博(jb8352)が、
「待った?」
 と尋ねれば、
「今、来たところだから大丈夫なんですぅ」
 流紗は、ぽやっと答えるでした。
 そんな二人が、端から見れば犯罪級。本日ご紹介するデートプランのサンプル一組目、流紗ちゃん&頼博くんの「愛があれば歳の差なんて!」カップルです。

 続いて二組目をご紹介しましょう。
 まずは、かわいらしいレースをあしらった春らしいワンピースによく似合う、乙女なヒールを履いた少女、菊開 すみれ(ja6392)さんです。
 そんな彼女に付き添うのは、中世の貴族風な男装でやってきたクリスティーナ アップルトン(ja9941)さんです。
「『久遠ヶ原の毒りんご姉妹』華麗に参上! ですわ」
 髪をさっとかき上げて、微笑むクリスティーナは人目を引くほどに絵になります。
 そんな格好をしているからではないのです。彼女だからこそです。
「今日のすみれは、一段と魅力的ですわね」
 自然に褒める様は、世の中の男子諸君に見習って欲しいものです。
 顔を少し上気させ、すみれは、
「そんなことないです」
 と答えていました。手を握りあいながら二人はモニュメントを後にします。
 デートであり、淑女レッスンと題する二人のプラン。追っていきたいと思います。

 最後の組は……先に到着した指定の学生服に袖を通しているセレス・ダリエ(ja0189)さんです。
 物静かな雰囲気が、痛々しいモニュメントの前では映えて見えますね。落ち着きます。
 じっと待っているセレスの目を、ふっと誰かが隠しました。
「だ〜れだ?」
「……その声は……誰ですか?」
「うふふ、私よん」
 セレスの目に飛びこんできたのは、マリアでした。細マッチョに濃厚メイク、しゃらんとした服装が独特の雰囲気を醸し出しています。
「はい、お花。プレゼントよ」
 そういって差し出すのは、深紅に紫といったど派手な花束。何か、毒々……素敵な花束です。
 セレスは
「いただきます」
 といって受け取ると同時に、お返しと菓子折りを渡すのでした。
「中身は羊羹と色がとても綺麗なドーナツの詰合せです」
 開いてみれば、羊羹と蛍光色のドーナツ……蛍光色?
 マリアはお礼を笑顔でいいながら、セレスをエスコートしていくのでした。
 さて、三組揃いました。ここからがデート本番です。


 さて、桜並木の公園でゆっくり散歩……だけではない。
 今時乙女は激しく動くものなのです。
 クリスティーナとすみれは到着すると同時に、いそいそと着替え、レオタードを纏います。
 そして始まる軽快なリズム。
「撃退士として、美の女神として、日々の研鑚は欠かせませんわ」
 クリスティーナはレクチャーしつつ、すみれとエアロビクスを始めました。
 忘れないよういっておきますが、桜の木の下でエアロビクスをしているのです。
 すみれは、少し恥じらいながらも、クリスティーナについていきます。流石にこの衣装、体の線がはっきりとでてしまいますね。いい絵を頂きます。
「私を超える美を創造するには、私がいま以上に美しくなるしかありませんもの」
 等とクリスティーナはいっておりますが、ぼそりと
「セクシーさでは、すみれに一歩譲るかもしれないですわね」
 呟くのでした。

 一方では激しいサンバのミュージック。
「セレスちゃん、踊りましょう! そう、熱くサンバのリズムでっっ!!」
 激しく、美しく、しなやかに舞うのはマリアです。思わず散歩中の人たちも見ほれるほどに、踊ります。
 一緒に踊ることについては断りを入れたセレスは、
「流石マリアさん……華麗です……」
 との感想を漏らしつつ、淡い光球でマリアのサンバを演出します。
 さらに、セレスはペンライトを片手に、コンサートのようにもり立てます。
 舞い散る桜の花びらの中で、陽気なサンバのリズムをあなたも刻んでみませんか?

 とはいえ、静かな公園をしっとり歩くのも悪くないものです。
 頼博は流紗と仲睦まじい様子を見せつけるように歩いています。甘えるように腕を抱く流紗は、煌びやかな桜を楽しんでいるように見えます。その様子に頼博は、
「もっと近くで見てみない? 肩車しようか?」
 と目線を合わせて聞いてみました。
 どうしようか戸惑うような姿を見せる流紗に、にこやかに対応する頼博ですが……。
 ここで一つの事件が起こりました。通りすがりの風紀委員が、彼の肩を叩き、
「少し、お話聞かせて頂けますか?」
 と声をかけられました。
 毅然と、
「彼氏だ」
 と言い切りますが、信用されていない模様です。
 さらには、流紗がここで一言。
「えっと……これお仕事でやってるんです。一緒に楽しい時間過ごすお仕事なんで」
「やはり、詳しい話を聞かせてもらわないと」
 話がこじれだしたところで、ドッキリネタばらしよろしく、取材班がお話に……。

 そして、ご理解頂けたので次のプランへと移りましょう。


 誤解の解けた頼博と流紗は、「あらた新報」お勧めのおしゃれなレストランでランチに入っていきました。
 平日ランチには少し高めの1000円程度ですが、綺麗で明るい素敵なレストランです。
 席に座り、歓談する二人。
 端から見れば、完全にカップルです。
 頼博は、妹属性がないらしいので、演技でにやにやしていますが……にやにやしていたら変質者でしょうか。流紗は、のんびりまったりとした空気で美味しいランチを頂くのでした。

「なるほど、これが噂のサラダですか」
 お洒落なカフェの店内で、クリスティーナが感心したようにサラダを眺めていました。
 すみれの案内でやってきたこのカフェは、有機野菜をふんだんに使った健康的なランチが人気を浴びています。とりわけ、サラダは特製ドレッシングが美食家学生の間でも一品だといわれています。
 量は少なめなので、食べながらすみれが少し物足りなさげな顔をしてしまって、
「育ち盛りなすみれには、物足りない量かもしれませんわね」
 とからかわれていました。
「物足りなくなんてないよ!」
 すねたようにいうすみれに、クリスティーナは、
「少し気になりましたし、これを分けましょ」
 笑顔で量少なめにパスタを追加注文するのでした。

「ファーストフード店は如何ですか?」
 セレスは昼食について、そんな提案をしていました。しかし、デートでファーストフードはバラエティ番組でもNGとされているようです。
 そこに気付くのは、場数を踏んでいるマリア。ただし、お肌に悪いという理由でした。
「そうだ! この辺りで話題になってる印度カレーを食べましょうよ! 激辛に挑戦よ〜」
 意気揚々とカレー店に連れて行くマリアですが、刺激物はいいのでしょうかと思ってしまいます。
 さて、ここのカレー屋ですが本場印度を謳って独自のスパイス配合で話題になっています。印度の調度品で飾られた店内は、香辛料の匂いで満たされています。
「本当に、辛いわねぇ。代謝が良くなりそう」
 かしましく食べるマリアと、淡々と食べて、
「……辛いですね」
 と感想を述べるのだった。
 汗を掻いて綺麗になりたい女性なら、サラダとカレーは是非ともお勧めですよ。


 ランチを済ませれば、楽しい楽しいウィンドウショッピングです。
「セレスちゃん……制服じゃ面白くないわね……。折角の可愛さがだいなしよ」
 マリアはそんなことをいいながら、セレスを頭からつまさきまでくべなく見ていきます。
 そして、うんと頷き、
「あたしが見立ててあげるっ!」
 セレスは連れられるがまま、ギャル系の店に訪れてはいろいろな服を合わせられていきます。
 さながら、ちょっとしたファッションショー。清楚な感じから、少し派手目な服等々。
 なお、マリアさんお勧め春のコーディネートについてはリンクから参照してください。
「……こちらは如何ですか?」
 時にはセレスの方が、マリア以上に派手な服を持ってきて合わせていきます。自分で合わせるのもいい経験とマリアはいいつつ、あれやこれやとアドバイスをします。
 色合いや、上下のバランス、ワンポイントアクセ等々……気になる方はリンク先をチェックです!
 最終的に落ち着きつつも、軽やかな服装でこの後のプランに挑むようです。
 
「すみれはもっと自信をもっていいと思いますわ」
 クリスティーナは、優しく微笑み、すみれをドレスの専門店へと誘いました。こちらのドレス専門店は社交ダンス用からパーティドレス、自宅で気軽に着れるものまで様々に取りそろえています。
 圧倒的な品揃え。色とりどり、形も様々なドレスが立ち並ぶ中、すみれも目移りしてしまいます。
「なんで、こんなに派手なんだろう」
「すみれはセクシーですもの、こういうのはいかがですの?」
 クリスティーナが持ってきたのは、谷間を強調するようなドレスでした。なるほど、すみれにはよく似合いそうです。本人は顔を赤らめて、まじまじとドレスを見つめていました。
「では、こちらは?」
 続いて背中がぱっくりと開いたドレスです。どちらも店のイチオシです。
 すみれは、どちらのドレスも試着していましたが、やはり恥ずかしいようでした。
「でも、これ着たら私もちょっとモテるかな?」
「もちろんですわ」
 すみれの呟きに、クリスティーナはうんと頷くのでした。

 目的がなくとも、欲しいものは増えていくのがウィンドウショッピングです。
「えっと、あれが欲しいんですぅ〜」
 と上目遣いにお願いする流紗のように、みなさんも彼氏におねだりしてみましょう。
 あなたに首ったけなら、頼博のように、
「仕方ないなぁ」
 と買って貰えるでしょう。あくまで演出なので、あまり高い場合はお店の人には後でことわって返してますが……ということは記事には書いてません。
 彼氏の財布とあなたの魅力に相談しながら、是非ともほどよいショッピングを!


 買い物をした後は、カフェで一息つきましょう。
 シックで雰囲気のあるカフェで、流砂と頼博は過ごします。
「いい香りだね」
「こちらも美味しいですぅ〜」
 頼博はオススメのコーヒーを、流紗はミックスジュースを飲んでいました。
 こちらのカフェは、ドリンクもさることながらケーキも美味しいです。
「シフォンケーキはおすすめですぉ〜」
「確かに美味しいね」
 端から見れば親戚のお兄ちゃんに連れてもらっている従姉妹のように見えますが……お互いに交換しながらケーキを食べるのでした。

「このお店の紅茶は、淹れる方がただ者ではありませんの」
 英国生まれのクリスティーナも御用達の喫茶店は、茶器も一品揃えです。
「紅茶にはうるさい私だけど、このアップルティーは美味しいなぁ……」
 香り華やぐ紅茶を飲みながら、すみれはホッと息を吐く。
 クリスティーナは微笑みながら、
「同じ茶葉を使っても、なかなかこうは淹れられないものでしょう。技術の賜物ですわね」
「このスコーンも美味しいよ」
 アンティークな食器の上に載せられたスコーンを、一口食べて、すみれはうんと頷く。満足した様子のすみれに、クリスティーナも満足するのでした。
 豪奢な雰囲気の中で味わう紅茶とスコーン。実はそれほど高いものではないので、少し背伸びしたい方はオススメいたします。

 洋があれば和も如何でしょうか。
 セレスの案内でマリアは、甘味処に通されました。二人とも外国から来ているので、どこか和のものは絵になります。
 セレスのおすすめする和のパフェは、抹茶とごまのアイスを中心に、わらび餅、白玉、小豆がもられています。最後に生クリームを添えた一品です。
 マリアは、クリームあんみつを頼み舌鼓をうちます。
「こんなの初めてっ……!」
 口の中でクリームと餡が混ざり合って絶妙のハーモニーを奏でます。そこを果物の涼感が一刻の風でさらっていくみたいとは、マリアのレポートです。
 和洋折衷な絶品の甘味を食べるなら、是非ともこちらのお店へお越しください。
 落ち着いた雰囲気の中で、お互いのをときには比べ合いつつまったりとした時間を過ごしていました。


 デートの最後は映画でしめましょう。
 今年は新作映画もそれなりに多いはず、好みの映画をお互いに知るいい機会になります。
「血の色と悲鳴がなかなか良かったです」
「うふふ、セレスちゃんと趣味が合って良かったわン」
 感想を述べつつセレスとマリアが出てきたのは、ホラー映画の劇場でした。
「やっぱりホラーよね〜」
 とてもつやつやとしたマリアと、無表情でうんと頷くセレス。趣味が合えば、どんな映画も面白さは倍増します。それが内蔵が飛び散り、頭がポンっとなるようなスプラッタホラーだったとしてもです。
 ただし、そういう趣味がない人を誘うのは絶対にやめましょう。絶対にです。

 年の差カップルならアニメ映画もいいかもしれません。
 日曜日の朝にやっている魔法少女の映画を頼博が選択し、流紗を案内します。彼女のためを思って……ということでしたが観客は大人の男と家族連れが大半でした。
「面白かったですぅ〜」
 外したかなと思っていた流紗はほんわかと感想を述べて、頼博を安心させていました。
 できる女はどんな状況でも、男を立てるのです。
「デートも終わりですし、お送りしますよ」
「終わりでしたら、大丈夫ですぅ。ありがとうございました」
 流紗の返事はさっぱりしたものでありました。

 さて、無難にいくのであれば恋愛ものでしょう。
「恋愛映画って自分を投影して、切なくなるよね」
 余韻に浸るすみれと淡々とみていたクリスティーナが出てきました。
 クリスティーナは、すみれに恋愛話を振りながら歩いて行きます。
「わたしもこんな恋愛したいなあ……なんてね」
 そういうすみれに、クリスティーナは、
「きっとできますわ」
 と励ましの言葉を贈るのでした。

 以上、春のデートプランをお届けいたしました。
 このインパクトあるデートで、相手のハートもブレイクしてくださいませ!
 お伝えは、新谷新でした。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 撃退士・セレス・ダリエ(ja0189)
 スプリング・インパクト・マリア(jb9408)
重体: −
面白かった!:2人

撃退士・
セレス・ダリエ(ja0189)

大学部4年120組 女 ダアト
リリカルヴァイオレット・
菊開 すみれ(ja6392)

大学部4年237組 女 インフィルトレイター
華麗に参上!・
クリスティーナ アップルトン(ja9941)

卒業 女 ルインズブレイド
ドォルと共にハロウィンを・
御堂島流紗(jb3866)

大学部2年31組 女 陰陽師
ふたつのこころ・
今本 頼博(jb8352)

大学部7年259組 男 ナイトウォーカー
スプリング・インパクト・
マリア(jb9408)

大学部7年46組 男 陰陽師