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マスター:牛男爵
シナリオ形態:イベント
難易度:易しい
参加人数:25人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/09/18


みんなの思い出



オープニング


「あんた、犬と猫どっちが好き?」
 唐突にそんなことを問いかけたのは、毎度おさわがせニンジャの矢吹亜矢だった。
「なんだよ、いきなり。俺は猫のほうが好きだが? それがどうした?」
 と答えたのは、地獄のメタラー・チョッパー卍。
「え、あんた猫派なの? メタラーのくせに?」
「メタル関係ねぇだろ。そういうおまえはどうなんだよ」
「あたしも猫派だったけど、あんたと同じってのがムカつくから犬派に転向するわ」
「そうかよ。勝手に転向しとけ」
「くくく……っ。これで、あんたはあたしの敵になったわけよ!」
 大声を上げて、ビシッと指を突きつける亜矢。
 酔っぱらいみたいなテンションだが、大丈夫。『彼女は』酔っぱらってない。
「……おまえは何を言ってるんだ?」
「わからないの? あんたは猫派。あたしは犬派。さぁ勝負をつけようじゃない!」
「また、そういう流れか……。勝負は構わんが、おまえさっきまで猫派だったんだろ? それで勝てると思ってんのかよ」
「大丈夫! 味方を呼ぶから!」
「そういうイベントをやれば、猫が勝つに決まってんだろ。バカか、おまえ」
「ぷっ。あんた知らないの? だいぶ前に、ネットの調査で犬が圧勝したのよ?」
「ものを知らないおまえに教えてやる。犬を飼いたがるのは高収入のヤツだ。猫より維持費がかかるからな。……で、よく考えてみろ。この学園に高収入のヤツなんているか?」
「そ、そういう、理屈の問題じゃないのよ!」
「おまえが先に理屈を持ち出したんだろうが、このボンクラ」
「ボ、ボンクラとは何よ! とにかく勝負よ! 勝負しなさい!」
「おまえなぁ……パンで勝てないからって犬猫戦争かよ。そんなことより、コロッケパンのレベルを上げる作業に戻ったらどうだ?」
「よけいなお世話よ! とにかくやるって決めたんだから! 覚悟しなさい!」
 勝手に決めつけると、亜矢はイベントの許可を取るべく走って行くのだった。



リプレイ本文

 はじめるまえに言わせてほしい。
 ネコ強すぎ!
 あと、『猫犬隊』って!? これ、犬と猫の戦争ですよ!? イベントの目的を根本から否定されちゃったよ! 天魔退治の依頼出したら「べつに退治しなくてもいいんじゃね?」って返された感じですよ、これ!
 まぁいいや。結果は明白すぎるけど、とりあえず開戦。




「これはひどいっす……」
 いつものウサギ着ぐるみ姿で、大谷知夏(ja0041)は呟いた。
 なんせ、猫派は14人。犬派はたった4人で、あとはほとんどソロチーム。まともに戦ったら、各個撃破で即終了だ。ここまで人数が偏るとは、まるで予想しなかった。
 それはともかく。戦場となるグラウンド中央には、なぜかスカイツリーの模型が建てられていた。
 そこへ登場したのは、芋虫の着ぐるみに身をつつんだ緋打石(jb5225)
 ただの芋虫ではない。これは毛スラ! ゴ○ラに勝ったことで有名な大怪獣・毛スラだ! 著作権がうるさいから歌詞は書けないが、例の歌も忘れないぞ!
 緋打石はそのままツリーの頂上に登り、繭を製作。
『どうやって作ったの?』とか、『ツリーの頂上ってメチャとがってね?』とか、こまかいことは気にするな!
 とにかく繭を作った緋打石は、「チョーリキショーライ!」の掛け声とともに羽化。闇の翼でバサッと舞い上がる!
 いったい何人がこのネタわかるのかと思うが、そこへラテン・ロロウス(jb5646)がアルパカに乗って参上!
「愚かなり、緋打石! アルパカの世話をしたこともないくせに、毛スラが一番などと……説得力が足りぬ!」
「なにを言う。ロロウス殿はアルパカの外見に惑わされておるだけじゃ。古来より人類は外見に惑わされてきた。『男は外見より中身』などと言う女どもも、結局は外見と金。……だが大怪獣は違う! 外見ではなく、愛嬌のある仕草でファンをつかんできたのだ! しぐさとは、その人の内面がにじみ出るもの! つまり仕草がかわいい奴は、中身もああかわいい!」
「馬鹿なことを。はっきり言っておこう。我が愛パカは生活に欠かせぬ存在! 登下校はもちろん、依頼にも連れていくぞ! おかげで、私より活躍したことも数知れず!」
 得意げに自慢するラテンだが、自慢になってない。アルパカに負ける撃退士って……。
「行くぞ、ムサシ! ヒップアタックだ! 見ろ、この体毛の触感を! もう『モソファサァ』だぞ! この愛されボディに触れてみろ! わかるはずだ……尻が! 魅力がぁぁぁ!」
 酔っぱらいみたいにわめきながら、ラテンは意味不明にムーンウォークで特攻!
 でも相手は飛んでたので、手が出せないまま辻風を食らって終了!
「ふ。まずは一人」
 スタッと降り立つ緋打石。
 しかし、ラテンは終わってなかった。知夏が『神の兵士』をかけたのだ。
「ソロ同士で戦ってる場合じゃないっす! 団結して猫派に対抗っすよ!」
 知夏が叫んだ直後、ラテンの愛パカムサシは緋打石と背面衝突し、二人そろってリタイアしたのであった。
 猫派の人々は、この体を張ったコントを生暖かく見つめていたという。



 そのころ、雪風時雨(jb1445)は単身で猫派に挑んでいた。
 彼の言い分は、こうだ。
「この際、致命的なことを言ってやろう。猫とか犬とか、アイテムにもない。プレで書こうが描写で反映されん。つまり我ら(PL)にとって、存在しないも同然! その猫や犬や人間は実在しているか? 妄想の産物ではないか?」
 あいかわらず発言がメタい。
 たしかに、リプレイではペットを描写しないことが推奨されている。しかし禁止されているわけではないし、現にペットはリプレイに登場する。よって、彼の主張は通らない。
「さらに決定的なことに、ヒリュウは焼きそばもカレーパンも食べられる! 犬猫は無理だ、タマネギとか!」
 それは何かメリットになっているのだろうか……。
 ここで反論するのは、紅アリカ(jb1398)だ。
「……今回はあくまで犬と猫の論議であって、それ以外の動物を持ち出すのは筋違いじゃないかしら。しかも怪獣とか召喚獣とか、ましてや人間同士なんてここで話す意味すらないわ」
 愛猫わっふるをもふもふしながら、まっとうな主張をするアリカ。
 そしてルインズのお約束技、とりあえずコレ撃っとけばいいや的に封砲がぶっぱなされた。
「そんなもの、見慣れているわ!」
 すかさず和気藹々で対抗する時雨。
 封砲に対して和気藹々で立ち向かうのは冷静に考えて自殺行為だが、時雨の和気藹々はただの和気藹々ではない。なんと、その場をなごませるのだ!
「アバーッ!」
 周囲をなごませながら吹っ飛ぶ時雨。
 しかし、知夏の『神の兵士』が彼をささえた!


 そこへやってきたのは、カーディス=キャットフィールド(ja7927)
 もう名前から猫だし、外見も猫だし、猫すぎる。参加した時点で「はい無双しますよー」って言ってるようなもんだ。
 そして彼の演説が始まる。

 諸君 私は猫が好きだ!
 諸君 私は猫が好きだ!
 諸君 私は猫が大好きだ!

 日本猫が好きだ!
 アビニャンが好きだ!
 アメショーが好きだ!
 ヒマラニャンが好きだ!
 シャムが好きだ!
 以下略(延々と猫の種類が続く!

 平原で! 道路で!
 街角で! 草原で!
 塀上で! 窓辺で!
 凍土で! 砂漠で!
 森林で! 湿原で!
 出会う猫たち!
 この地上ありとあらゆる猫が好きだ!

 首輪をつけられても野生を忘れぬ家猫が好きだ!
 気高くも力強く生きる野生の猫が好きだ!

 (中略)

 第一次わんにゃん作戦 状況を開始せよ!
 征くぞ諸君!!!

 ズギャーンッ、と何故かJOJO風のSEを鳴らして、カーディスは手裏剣を投げた。
 それは、とっくに倒れていた時雨の眉間にサクッと刺さり、一瞬で状況を終わらせたのであった。
 オーバーキルすぎて、神の兵士も無効でしたよ……。そこまで本気出さなくても……。



 一方的な展開だが、ここで動いたのは犬派の一味。
 ドラグレイ・ミストダスト(ja0664)、静馬源一(jb2368)、秋桜(jb4208)、矢吹亜矢の4名である。
 一番手で犬のかわいさをアピールするのは、ドラグレイ。
「犬の良さは、その従順さ、誠実さ、忠実さです♪ 人なつっこくじゃれてくるのは本当に可愛らしいです♪ そして頭の良さ♪ しつけもできて、芸まで覚えますし、飲み込みも良いです♪ なにより、成功したときの『ほめて! ほめて!』という姿が可愛いのですよ〜♪ つまり犬は、人間との距離が近く親しみが湧くというわけです♪ そして、なにより! この可愛い姿! つぶらな瞳! 可愛らしい耳! ふわふわした尻尾! こんなにかわいい動物は他にいないのです!」
 犬耳カチューシャをぴこぴこさせながら、堂々の主張だ。

 反論するのは、蓮城真緋呂(jb6120)
「犬……それは行政に番号を振られて管理される、悲しい存在。登録手数料3000円、毎年の予防注射料2500円、さらには注射済票交付手数料500円を徴収される、哀れな生きものにゃ。そのお金があれば高級ペットフードが食べられるのに……そのさまは、まるで管理搾取されるジャパニーズビジネスマンのようにゃ」(注:金額は自治体により異なります)
 たしかに犬はカネがかかる。そこを突くとは、鬼のような作戦だ。
「そんな哀れな犬に比べて、お猫様は \フリーダム!/
 私は、そんなお猫様をチューするくらい愛すにゃー。短足マンチカンも可愛いし、ビッグでもふもふのメインクーンも、のしかかられたいくらいにゃん。……ツンデレなところが良い? のんのん! お猫様はツンツンにゃ! 退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! そんなお姿に痺れるにゃー!」

 それを受けて前に出たのは、秋桜。
「愛するものに金をかけるのは当然のこと。そもそも、犬か猫かなど、この国でそんな討論など愚の骨頂なり。忠義を命と同等に重んじるこの国で、犬以外にあるというのか。猫なんて、性のシンボルみたいなエロエロ淫獣じゃないかぉ。理解に苦しむわ。それに比べて、犬は素晴らしいぉ。どんなときでもすり寄ってくるし、裏切らんし。忠実だし。私が魔界にいたときも、よく母上の部屋から『この駄目犬っ!』って聞こえたりしたし。ワンワンとは違う鳴き声でしたけどね。ふひひwww」
 変態めいた笑い声を発しつつ、秋桜はゴーストアローを発射した。
 不可視の矢は真緋呂の胸に当たり、ポヨンと貫通。
 擬音がおかしいような気もするが、Gぐらいあれば撥ね返したかもしれない。


 ようやく1人脱落した猫派だが、ここで舞鶴鞠萌(jb5724)が登場。
「聞くが良い、私の持論を! 人類最高速が時速44km。イエネコは時速48km。イヌは時速20〜30km(一部の犬種には70kmのものもいる)。この時点でわかると思いますが、人よりも猫は速い。そして犬も速い。だからこそ、おたがいのことで喧嘩するなんて馬鹿げているのです! さぁ、問おう……目の前の敵は、犬? 猫? ……否、その他の派閥である!」
 謎の理論を展開させて、犬派と猫派を和解させようとする鞠萌。

「賛成!」
 声高く同意したのは、沙月子(ja1773)だ。
 胸には二匹の猫、まろとぷくを抱いている。
 見世物にするのはイヤだったが、猫たちが参加したいと訴えていたので連れてきたのである。
「見てのとおり、今日ここに集まった人はみんな動物好きであり、それを否定しあうような行為は必要ありません。しいて言うならば、ウチの子かウチの子でないかというだけの話です。手間と愛情をかけた家族である『ウチの子』が一番になるのは当然。ウチの子以外に一番はいないのです。そこから贔屓が発生するのも、またしかり」
 理路整然と述べて、月子は結論を口にする。
「犬か猫か? 愚かなことを……。ぜんぶ好きで、なにが悪いのですか。あなたたちが気にするべきは、人の目ではなく愛すべき対象の目でしょう?」

「まったく、そのとおりです!」
 と、Rehni Nam(ja5283)が支援する。
「私は猫が好きです。猫が大好きです。ふわもこ、毛無し。長尻尾に短尻尾。ふだんはツンと澄ましているのに、まれに甘えてくるお姫様タイプ。ふだんからゴロゴロなついてくれる、人なつこい庶民タイプ。機嫌が悪いと引っ掻いてくるのも愛おしく、手ずからやった餌を食べて指や手をペロペロしてくるのも愛おしい!」
 熱の篭もった口調は、かなりの猫狂いっぷりだ。
 その勢いのまま、Rehniは続ける。
「……ですが、そんな猫の愛らしさと犬の愛らしさは矛盾しないのです! たとえば、そう。イヌ科にもかかわらず習性としては猫に近い狐など、その様を体現していると言えるでしょう。だから、犬猫に別れての戦争など愚の骨頂! この世に存在していい戦争は、きのたけ戦争だけなのです!」
 その戦争やると、たいていキノコが蹂躙されて終わるんですけどね。ためしにやってみますか?

 ここでRehniの言葉に応えるのは、源一だ。
 ちなみに彼は、プロフだけなら犬派トップの実力を持つ豆柴ニンジャである。
「自分は動物全般どんな子でも好きで御座る。でも犬が特に好きなので犬派で御座る。犬は、どんな子もかわええので御座る! 犬は群れで生きてた仲間意識の強さや従順さがかわええので御座る! 猫は独立して生きてきた逞しさや、気分屋でツンツンしているところがかわええので御座る!」
 ごく自然に、犬猫隊に取り込まれてしまう源一。……って、おい。戦う気ナシかい。
 この時点で、わんにゃん戦争の本義は失われた。単独でカーディスに勝てそうなのは源一だけだったのに、その彼が猫派と手を組んでしまったのだから話にならない。

「犬に理解があるなら、猫派と和解するのもやぶさかではないのです。まぁ私は犬派ですが、猫も可愛いとは思いますし」
 と、ドラグレイもあっさり猫犬隊に。
「あー、あたしはもともと猫派だしねー」
 などと言いながら、亜矢はアリカのわっふるをモフモフしている。
 そんな流れで、たちまち犬派は秋桜ひとりに。
「さ、三人とも、私を裏切るのかぉ!? 猫と手を組むなんて、ありえないぉ!」
 必死に訴える秋桜。
「秋桜殿も、猫犬隊に入るで御座るよ」
「裏切り者の仲間になれというのか、静馬氏!」
「そんな大袈裟な話ではないので御座る。犬猫をモフって、心を落ち着かせるで御座るよ。なんなら、自分をモフれで御座る」
 ころんと地面に転がって、おなかを見せる源一。
「私もモフって良いのです!」
 ドラグレイも、犬耳をぷるぷるさせながら上目づかいで訴える。
「うぅ……っ。駄目だ、これは悪魔の誘惑! 猫派の奸計に他ならないぉ!」
 おもわず手を出しそうになり、あわてて引っこめる秋桜。
 このままでは彼女に勝ち目はないが、猫を『淫獣』とまで言ってしまった以上、和解するわけにいかなかった。まったくもってひどすぎる展開だが、最後まで猫派と戦いつづける犬派が1人しかいなかったという事実はMSとしても大変悲しい。

「にゃははははー! 猫は最強なのにゃ! ほかの動物もいいけど、猫が一番! ふわふわもこもこ! 寒い日に抱くと暖かいし、いっしょに寝ると暖房もいらないにゃー」
 崖っぷちに立たされた秋桜を容赦なく追い込むのは、姫路明日奈(jb2281)
 なんと、飼い猫16匹を引きつれての参戦だ。
「猫は耳もいいんだよ! どんな小さな音でも気付くから、ネズミとかGも捕まえちゃうにゃ。でも、これは犬にも言えるね。犬も暖かいし、耳もいいから番犬としても役に立つ! こんなに共通点持ってるんだから、犬と猫で争っても意味ないと思うんにゃ。それに、もとは同じネコ目で親戚だからね! そうとわかったら、秋桜ちゃんも猫犬派の一員になっちゃえばいいにゃ!」
「ノー! 私は断固拒否するぉ! 猫派なんて、非国民の集まりすぎてワロエナイ! 犬が人を裏切らないように、私も犬を裏切ったりはしないぉ! 犬とともに死ぬなら本望だぉ!」
 そう言い放つと、秋桜はヤケクソ気味にダークブロウを発動した。
 おお、このワンコ愛は見上げたもの!
 だが、しかし。
 次の瞬間、秋桜は猫犬連合から10発以上の集中砲火を受けて、景気よく轟沈したのであった。


 こうして犬派の急先鋒たる秋桜がリタイアすると、猫派と犬派はあっさり合流。総勢16人の大所帯となった。
 これに対抗するのは6人だけだが、だれも諦めてはいない。
 そう。当MSのコメディにおいては、うまいことプレイング書いて無双モードに突入すれば、1人で全員ブッ倒すのも不可能ではないのだ!


「よし、あたしが行くよ!」
 猫犬派の牙城を崩すべく、突撃するのはグリーンアイス(jb3053)
「そもそも、恋人を一人に決めようってのが無理だねー。……んで、さみしい夜に慰めてくれるのはペットじゃなくて人間だよ、諸君。人肌の温もりには、かなわないねー。猫よりネコだ、OK?」
 おお、だれか一人ぐらいやるだろうと思ったが、ここで百合プレイングが炸裂!
 そして猫派陣営に向けて撃ちこまれる炎陣球!
 と思ったが、彼女は炎陣球を覚えてなかった!
「う……っ。まさか、そのネタをひっぱるなんて……!」
 ええ、あんなおいしいネタをひっぱらない理由がないので。
 しかし、攻撃スキルなしでも百合プレイングは強いぞ! MSの趣味補正で!

「では、ここでちょっと昔の話をしましょう」
 迎え撃つのは、どことなく猫っぽい姿のマオカッツェ・チャペマヤー(jb6675)
 じつは公認設定されてるほどの犬嫌いなのだが、勝利のために猫犬隊に入った彼女。勝つためなら手段を選ばない!
「昔、ミアキスという動物が森に住んでいました。およそ6000万年ほど前のことです。やがて、この動物が進化して……草原で成長したのが犬へと、森で成長したのが猫へと、姿を変えていったのです。森の中から勇気を出して外に出ていったのですから、犬は偉いですね」
 ほんとうに犬が嫌いなのかとツッコみたくなるセリフなんだが……。
 あと、『人界知らず』にしては詳しすぎやしないか……。
「そもそも、猫も犬も人間がいなくても生きていけたのです。一方、人間は自然を破壊しながら犬や猫を従えた気になっている。なんという傲慢……! こんな人類より、犬や猫のほうが好きなのは当然のことでしょう」
 なんとまっとうな主張!
 しかし、まっとうすぎてグリーンアイスの百合プレイには通用しない!
 いまだ、グリーン! 炎陣球を発動!
「え……、炎! 陣! 球!」
 よし、不発!

「おれにまかせろ! クリフを勝たしてやるんだからな!」
 強敵を前に猫犬陣営から飛び出したのは、ちまねこアダム(jb2614)
 そのあとを、世話係のクリフ・ロジャーズ(jb2560)が慌てて追いかける。
「ま、まってよ、アダムー!」
「おれはネコ……天使じゃなくてネコ! おれはネコにゃ!」
 クリフの制止も聞かず、湯上がりフカフカの格好で突進するアダム。策などない。ただ、てしてしっと猫パンチするだけだ。
 強!力!
 ちなみに、この二人。悪魔と天使である。とてもそうは見えないが、悪魔と天使なのである。信じがたい。
 追いついたクリフがひょいっとアダムを抱き上げて、主張する。
「ええと……猫のどこが可愛いかという話ですよね……? 俺も昔は犬猫どちらも同じぐらい好きだったんですが、この子と出会って猫派になりました。だって、こんなふかふかしたネコが外で寝転がってたら、拾って帰るしか……。たまに、ちょっと嫉妬深かったりしますが、それでもやっぱりかわいいんですよ」
 おお、ネコvsネコ!
 勢いよく走っていったはずのアダムは、クリフにだっこされながらピトッと貼りついている。
「くりふ〜くりふ〜」
 ころんころんとクリフの腕の中で転がるアダム。
 なんなの、このかわいい生きもの……って、まえにも言ったぞコレ!

「3対1なんて卑怯だよ!」
 ピンチに陥って、いまさらのように言いだすグリーン。
 まぁ開戦前からピンチだったので仕方ない。
 が、ここで袋井雅人(jb1469)と月乃宮恋音(jb1221)のカップルがグリーンを支援した。彼らは『恋人派』だが、広い目で見れば『人間派』でもある。
 というわけで、まず恋音の主張。
「……犬さんも猫さんも、ほかの動物さんも、みんなかわいいのですよぉ……。本当は、争う必要なんかないのです……。でも、どうしてもというのであれば……いちばんの愛情を注ぐことができるのは『恋人』だと思うのです……。それに、恋人と一緒に動物たちを愛でるのは、その可愛さをさらに引き出す有効な手段ではないでしょうかぁ……」

「……恋人? 恋人は大切で当然ですよ」
 と反論するのは、舞鶴希(jb5292)
「そんなことはわざわざアピールしたり確認したりする必要もないし、そもそもこれは動物のかわいさを競うイベントであって、人間を動物と言い張るのは無理がありますよね。……それでもあえて言わせてもらうなら、女性の可愛さと可憐さと、猫のような魅力的な部分……その両方をそなえている鞠萌さんこそ、ボクにとっては一番ですね♪」
「にゃ……っ!?」
 突然ののろけに、うろたえる鞠萌。
「ええと、その……。ま、鞠萌はかわいくなんてありませんよ……?」
「いいえ。鞠萌さんは世界で一番かわいいです。この事実は、鞠萌さん以外の全人類が知っていることですよ?」
 すごいセリフを、さらりと言ってのける希。
 このリア充どもめ!

「……舞鶴さんの主張は、とてもよくわかりました……でも、恋人を動物と言い張るのは無理がある、というのは……。はたして、そうでしょうかぁ……? いえ、そういう見方があることはわかります……が、ならば私は……この方のペットになることも辞さない覚悟です……っ!」
 とんでもないことを言いだす恋音。
 最近、なにか吹っ切れたようにフリーダムな彼女。悟りでも開きましたか。
「恋音、よくぞ言ってくれました! さあここに来て四つん這いになってください」
 チェーンの付いた首輪を持って、雅人が手招きする。
 言われたとおり雅人の前で四つん這いになって、首輪をはめられてしまう恋音。
 その年齢に見合わない豊満な体をなでまわしながら、雅人がキリッとした顔で言う。
「恋音はモフモフじゃなくてスベスベなのに、フワフワとやわらかくて最高にカワイイですねー」
「……ふあ……っ? そ、そこはぁ……も、もっとやさしくしてほしいのですよぉぉ……」
「んっ、ここですか? ここがいいんですか? では、もっと――」

 いやいや、まてまて。ナニをおっぱじめる気だ。
 ──よく見れば、雅人のプレイングにこう書いてある。
『牛男爵MS様、私達と一緒に蔵倫と戦いましょう!? このままでは猫派には敵わないので2人でネタに走っています』
 うぉぉい! 悪の道に引きずりこむのはやめてくれ! 俺はもう蔵倫と戦いたくないんだ!
 だいたい、『一緒に戦いましょう』とか言われても、実際戦うのはMSだけですからね!?
 そもそも、変態仮面のフンドシスナイパーにそんなこと言われても……。性転換しろとは言いませんが、せめて女装ぐらいしてきてください! 私の趣味は知ってるはずです! よろしくおねがいします!

 そんなこんなで非常に混沌とした流れだが、それをさらに加速させるべくワイルド・キャンディ(jb4330)が参戦。
「アタイは猫の悪魔にゃ! つまり猫派にゃ! アタイほど猫な奴はいないのにゃ! つまりアタイは猫のヒーロー! ヒーローは遅れてやってくるにゃ!」
 和服姿でやってきたワイルドは、袖の中から子猫をばらまいた。
 酔っぱらいみたいなテンションだが、実際酔っぱらってるので仕方ない。
 無論、酒に酔っているのではない。この世界では、未成年は飲酒禁止だからな!
 では何に酔っているのかと言えば、マタタビだ。
「みんにゃ子猫に癒されるがいいにゃ! 癒されるか死ぬか、究極の二択にゃ! でも気をつけろにゃ! 猫をランボーにしたらどうなるか……わかってるにゃ? そう! マシンガンを手にして暴れまわるにゃ! だからアタイも暴れまわるにゃ!」
 言ってることが支離滅裂だが、酔っぱらいだから仕方ない。
 当MSも今まで何百人とPCを担当してきましたが、登場する前から酔っぱらってた人は初めてです。まぁ飲まなくても酔っぱらってるみたいな人は何人か見てきましたけどね。
「さぁ猫パーティーにゃ! 猫サイキョー! すなわちアタイサイキョー!」
 謎のテンションで突撃しながら、すぽーんと服を脱ぎ飛ばすワイルド。
 完璧に全裸だが、全身もふもふなので大丈夫だ!
 そのまま恋音&雅人のペアに割って入り、もっふるもっふる♪
 ……うん。わけがわからない。


「恋人派がいることは、最初から理解している。……が、それを踏まえた上で私は猫派だ!」
 ズバーンと見開きページで登場したのは、姫路神楽(jb0862)
 その腕には、恋人の明日奈をかかえている。いわゆる、お姫様だっこだ。
「狐派と言ったが、アレは嘘だ!
 私は猫が好きだ!
 猫な明日奈が好きだ!
 愛くるしい動きをする猫が好きだ!
 尻尾などの愛情表現が好きだ!
 猫な明日奈が大好きだ!
 猫な明日奈が大好きだァァァッ!」
 高らかに宣言すると、神楽はビシッと手をあげて『薙ぎ払え!』的に号令を下した。
 明日奈の飼い猫16匹が、いっせいに突撃する。
 それを見た月子の飼い猫、まろとぷくも加勢し、アリカのわっふるも加わった。
「俺もいくぞーーー!」
 猫軍団と一緒に走っていくアダム。

                   \にゃーーー!/

 そんなわけで、グリーンアイス、恋音、雅人の3人は猫にモフられまくって倒れた。
 その顔は、じつに幸せそうだったという。
 ……うん、とりあえず、あれだ。グリーンアイスは架空でも何でもいいからパートナーをつれてきて百合プレイを実演するべきだった。
 ともかく、このリアル猫小隊による肉弾突撃で、猫犬派に抵抗する勢力は3人となった。



「これはひどいっす……」
 わりと最初から頑張っていた知夏だが、数の暴力の前には立ち向かう術なしだった。
「うん。これは無理だね。でも最後まで戦うよ」
 ぐっと拳をにぎりしめるのは、鳥派のソフィア・ヴァレッティ(ja1133)
 そしてもう一人は、月詠神削(ja5265)だ。
 が、彼は特定の派閥には属していない。なんと神削は『強い動物が好きだ』という理由で、最後まで残った派閥につくことを公言していたのである。なんという日和見主義!
 したがって彼は、いまのところ猫犬派と戦う理由がない。
 つまり、知夏とソフィアは二人きりで戦うハメになっているのだ。
 まぁいまさら一人や二人増えたところで、この状況をひっくりかえせるはずもないが。


 ともあれ、鳥派とウサギ派の二人はダメモトで戦端を切った。
 ふたりとも言葉ではなく行動で愛を示す方針のため、よけい分が悪い。
「……あ? うさぎ? 目かわいい&鳴かないね……だけど、モノかじって吐きもどせないで死ぬとか笑えないことがよくあるから、好きではないかな……。鳥に至っては『空爆』よくあるし、羽とかのゴミをまきちらすから好きじゃないね」
 ざくざくと突き刺さるようなことを言い放つ神楽。
「く……っ。鳥は空を飛べるのよ! 犬や猫には決してマネできない、圧倒的なアドバンテージ! これが鳥の魅力よ!」
 ソフィアの反論は、いまひとつだった。鳥が空を飛べることは誰でも知っているわけで……。
「ウサギと鳥は、おいしいですね。脂も乗って、栄養満点。これが自然の摂理です」
 ごくりと喉を鳴らす、マオカッツェ。
「と、鳥を食べるなんて……。たしかに鶏肉はおいしいけど! でも、それを言うなら犬や猫だって……!」
 微妙なことを口走りそうになって、あわてて首を振るソフィア。
「いや……犬猫を食べることなんてできない……。でも、あたしは鳥が好きなの! 唐揚げもおいしいし、焼き鳥もおいしい。イタリア風にローストしてトマトソースをあえるのも絶品よ。このまえ作ったバジルソースのチキンステーキは最高だったし……」
 なぜか料理の話になってしまうソフィア。
 だが料理を趣味としている彼女にとって、これは自然な流れなのだ。
「料理の話をしてる場合じゃないっす!」と、知夏がつっこむ。
「は……っ。そうだった。これは戦争。チキンへの愛を証明するために、あたしは勝つのよ!」
「チキンじゃなくてバードっす!」
「そ、そうね。あたしのバード愛を乗せて、いまこそ発動! くらえ、究極破壊魔法・ラグナロク!」
 おおっ! 劣化版封砲と評判のラグナロク様だ! 発動した人、はじめて見た!
 いや待て。1ターンためないと発射されないんだった、これ。
 えーと、猫犬派の皆さん。1ターンだけ何もせず待機してくれますか?
「「無理」」
 まぁそうですよね。当たると痛いしね、ラグナロク。当たったの見たことないけど。
 というわけで、コレ撃っとけばいいや的にアリカの封砲が発射され、ソフィアは溜めながら倒れたのであった。
「立つっす! 立ってラグナロクっすよ!」
 知夏の神の兵士が展開していたが、あいにくとオーバーキルだった。
 ぶっちゃけ、ヴァルキリージャベリン投げたほうがいいと思うんですけどね……。
「こうなれば……シールゾーンっす!」
 知夏は、みごと猫犬派のスキルを封じることに成功。そのままアダム率いるニャンコ部隊によってモッサモッサにされ、戦闘不能になったのであった。



 結果、16人生存の猫犬派に対して、月詠神削ひとりが残された。
 彼は、残った派閥につくと宣言したことで、ここまで生き残ってきた。
 ──が、鬼畜策士の称号を持つ彼が、最後までそんなおとなしい顔をしているはずなどない。
 神削の狙いは、こうだ。
『最後まで残った派閥につくと宣言し、戦いから距離を置く。そして派閥が最後の一つになった瞬間、それまでの戦いで消耗しているはずのところを奇襲。打倒して俺が勝利の凱歌を上げる!』
 うん。いい作戦だ。
 ふつうに戦争が行われていれば、優勝をかっさらった可能性も高い。
 で、実際ふたを開けてみれば、消耗どころか16人全員無傷なわけだが……。
 どう考えても単なる自殺行為ですが、それでもやりますか? やっちゃいますか?
「ふ……。いまこそ明かそう。俺は最後に残ったチームに入ると言ったが、あれは嘘だ。俺の愛する動物を教えよう」
 ああ、はじめてしまった。
 彼にしてみれば完全に不測の事態だろうが、MSにとっても不測すぎる展開だったので、あきらめてほしい。
「彼らは、一見すると無害。虫も殺さないような顔をしている。しかし、その実。水中では獰猛に魚を狩り、羽による一撃は人間の骨など軽く粉砕する威力を秘めている……。その名は、ペンギン! そう、俺は本当は『ペンギン派』だ!」
 その直後。ド紫色のインコが神削を襲った。
 なんと、彼の飼っているペット、パタ丸ではないか。
「もっと、わしをかわいがらんかー!」
「おまえみたいな可愛げのない鳥など知るか!」
「かわいげないのは、どっちやねん! このアホ! 天誅や!」
 キリモミ飛行で突っ込んできたパタ丸は、ザクッと神削の眉間に突き刺さった。
 そのまま、血しぶきを噴き上げて倒れる神削。
 猫犬派の人々は、この体を張ったコントを生暖かく見つめていたという。




 第一次わんにゃん戦争は、こうして終結した。
 終わってみれば、予想どおり猫の圧勝である。
 なんせ、猫派で脱落したのは真緋呂だけ。その彼女も、もうすこし胸に脂肪があれば倒れずに済んだのだ。なんと一方的な戦争か。
 というわけで、第一次と銘打ったけど次はありません。
 とりあえず、みなさんのニャンコ愛は非常によく伝わりました。
 ワンコもカワイイと思うんですけどね……。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 釣りキチ・月詠 神削(ja5265)
 二月といえば海・カーディス=キャットフィールド(ja7927)
 狐っ娘(オス)・姫路 神楽(jb0862)
 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 戦場を駆けし俊足の蒼竜・雪風 時雨(jb1445)
 ラブコメ仮面・袋井 雅人(jb1469)
 くりふ〜くりふ〜・アダム(jb2614)
重体: −
面白かった!:13人

癒しのウサたん・
大谷 知夏(ja0041)

大学部1年68組 女 アストラルヴァンガード
知りて記して日々軒昂・
ドラグレイ・ミストダスト(ja0664)

大学部8年24組 男 鬼道忍軍
太陽の魔女・
ソフィア・ヴァレッティ(ja1133)

大学部4年230組 女 ダアト
エノコロマイスター・
沙 月子(ja1773)

大学部4年4組 女 ダアト
釣りキチ・
月詠 神削(ja5265)

大学部4年55組 男 ルインズブレイド
前を向いて、未来へ・
Rehni Nam(ja5283)

卒業 女 アストラルヴァンガード
二月といえば海・
カーディス=キャットフィールド(ja7927)

卒業 男 鬼道忍軍
狐っ娘(オス)・
姫路 神楽(jb0862)

高等部3年27組 男 陰陽師
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
佐渡乃明日羽のお友達・
紅 アリカ(jb1398)

大学部7年160組 女 ルインズブレイド
戦場を駆けし俊足の蒼竜・
雪風 時雨(jb1445)

大学部3年134組 男 バハムートテイマー
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
もふもふもふもふもふもふ・
伊座並 明日奈(jb2281)

大学部1年129組 女 ダアト
正義の忍者・
静馬 源一(jb2368)

高等部2年30組 男 鬼道忍軍
天と魔と人を繋ぐ・
クリフ・ロジャーズ(jb2560)

大学部8年6組 男 ナイトウォーカー
くりふ〜くりふ〜・
アダム(jb2614)

大学部3年212組 男 ルインズブレイド
2013ミス部門入賞・
グリーンアイス(jb3053)

大学部6年149組 女 陰陽師
エロ動画(未遂)・
秋桜(jb4208)

大学部7年105組 女 ナイトウォーカー
撃退士・
ワイルド・キャンディ(jb4330)

大学部6年180組 女 鬼道忍軍
新たなる風、巻き起こす翼・
緋打石(jb5225)

卒業 女 鬼道忍軍
にゃんこのともだち・
舞鶴 希(jb5292)

大学部2年173組 男 陰陽師
自爆マスター・
ラテン・ロロウス(jb5646)

大学部2年136組 男 アストラルヴァンガード
新世界への扉・
舞鶴 鞠萌(jb5724)

中等部3年5組 女 ダアト
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA
からめ手好き・
マオカッツェ・チャペマヤー(jb6675)

中等部3年8組 女 バハムートテイマー