ここは、とあるボクシングジム。
なぜか漂う磯の香りと、エビの匂い。
その正体は、八匹のシャコボクサー!
「突撃! となりのボクシングジム! とりあえず死ね!」
いきなり全力跳躍でカッ飛んできたのは、雪室チルル(
ja0220)
一匹のシャコサーが脳天からウェポンバッシュを浴びて真下に吹っ飛ばされ、グシャッとミンチに。
いきなり一匹しとめたチルルはそのまま飛んでゆき、壁に激突!
体力マイナス200ぐらいの判定を受けて、再起不能に!(冗談です)
チルルはオーラを放射しつつ、鼻血を流しながら大声を上げる。
「あんたたち! 海鮮挽肉になりたくなければ、ボクシングで勝負よ! あたいにウェポンバッシュされるか! ボクシングでウェポンバッシュされるか! 好きなほうを選べ!」
そんな脅迫しなくても、最初からボクシングしたかったシャコボロたち。汗を流しながら、必死でうなずくしかない。必要もなく挽肉にされたシャコ無惨!
そんなわけで、さっそく第一試合!
赤コーナーから入場は、暫定チャンピオンのガレージ・イナバ。
青コーナーからは、カーディス=キャットフィールド(
ja7927)。ギガントフィストという名のグローブを装着して、猫ぐるみ姿で登場だ!
その反則武器を目にして、震え上がるチャンピオン!
しかし抗議しようにも、レフェリーの姿はない!
問答無用でゴングが鳴り、ラウンド1開始!
なお、セコンドはカミル・ハルトシュラー(
jb6211)。実況解説(描写)は牛男爵MSでお送りします。
「シュッシュッにゃー! 私の肉球をお見舞いしてやるのです!」
かるくシャドーしながら、リング中央へ出てゆくカーディス。
言ってることはかわいいが、装備しているのはギガントフィスト。
食らえば一発KOなので、シャコは怯えている。
しかし、一撃必殺のパンチを持つのはシャコも同じ。見かけによらず侮れない相手だ。
カーディスは攻撃を食らわないよう、足を使いながらシャコの動きを見切る。リズム、間合い、足運び……すべてを把握してカウンターでの勝利を狙っているのだ。
ジャブで牽制しながら、じっくりとタイミングをはかるカーディス。
しかし、シャコは一発もパンチを打たない。おたがい、相手を観察しているのだ。
「なにをやっとる! シャコごとき、恐れるでないわ!」
カミルの怒声が飛んだ。
彼の服装は、Tシャツにジャージ。ハゲカツラをかぶって極太の眉毛を付け、首にはタオルを巻き、手には杖をにぎっている。
おお、これは伝説の名トレーナー、GK川の生き写し!
その声に押されて、カーディスが前に出た。
長い尻尾をフサフサさせて、華麗なステップが披露される。
そして両者はクロスレンジへ。
そのとき。シャコの右腕がピクッと動いた。
「いまなのです!」
クロスカウンター狙いで、カーディスは左フックを見舞っていった。
「唸って吼えろ! 黒猫肉球ぱーんち☆」
だが、シャコをなめてはいけない。
プロのボクサーが放つパンチでも、時速50kmには届かない。
対して、シャコのパンチは悠々と時速100kmを超える。しかも水の中で。
水の抵抗がない陸上で、人間サイズのシャコがパンチを放ったら、どうなるか──
ボゴギギャァアアッッン!
人間の体が発したとは思えない音をたてて、カーディスはリングの外へ吹っ飛んでいった。
そのまま、窓ガラスをブチ破って外へ飛び出し──。道路に転がったところを消防車が撥ね飛ばした。
「んにゃぁあああぁーーっ!」
ちなみにボクシングのルールでは、リングアウトした場合20カウント以内にリングへ戻らないと反則負けになる。
無論、星になったカー○ィ……もといカーディスが戻れるはずはなかった。
さぁ、第二試合。
青コーナーに立つのは、ルナジョーカー(
jb2309)
「あー、うん。思ってたより、ちょっとだけ強そうだな」
カーディスの最期を目にして、すこし腰が引けてるルナ。
しかし他の撃退士(ボクサー)たちが見ている以上、逃げるわけにはいかない。
「重体くらったら恋人に怒られる……なんてことはない!」
なにやら余計な心配をしているルナ。どう見ても死亡フラグだ。
恋人だと? 重体どころか、再起不能をくれてやるわ!
カーン!
MSの嫉妬とともにゴングが鳴り、ルナはカーディス同様ジャブで牽制をはじめた。
いつもどおり緻密な戦術を練ってきたルナ。今日はコンビネーションパンチで勝利をもぎとる予定だ。
それはいい。それはいいんだが……。ちょっと、目を疑うような記述を前にして、いまMSの腹筋が十個ぐらいに割れそうになってるんだ……。
というのもだな。プレイングに、こう書いてあったんだ……。
ジャブ=J
ストレート=S
フック=H
アッパー=A
うぉぉい! アッパーの頭文字はAじゃない! Uだ!
大丈夫か、ルナ! 英語の授業ちゃんと受けてるか!? いや、これはもう授業とかいうレベルの話じゃないけど! ディスプレイに飲ませてしまったビールを返せ!
これは文句なしにMVP! ひとりにMVP三つ上げる機能がほしい!
は……っ! まさか狙って書いたのか!?
だとしたら最高のプレイングだが、素で間違ったんだろうな。だってルナンだし……。
まぁそれはともかく、試合のほうだ。
残念なことに、ルナもまた『カウンターを狙って』しまった。
言っておくべきだったかもしれないが、シャコボクサーのパンチはカウンターが取れる速度ではないのだ。
そういうわけで、描写もなしにルナはカーディスと同じ運命をたどった。
ちょっと違ったのは彼を轢いたのが霊柩車だったことぐらいだが、わざわざ書くようなことでもなかった。ナムアミダブツ!
いやマジで腹が痛いんですけど……。
「俺の相手はおまえか? 血が騒ぐ……さぁ、早くやろうぜ。勝敗はKOのみ……わかりやすいよなぁ?」
ケラケラと笑いながら登場したのは、ディザイア・シーカー(
jb5989)
若干表情が固いのは、カーディスとルナの無惨な最期を見てしまったせいかもしれない。軍人である彼は人の死など見慣れているが、シャコに殴られて死んだ人間は見たことがない。緊張するのも無理ない話だ。
対するガレージ・イナバは、二人抜きした自信からか妙にリラックスしている。
「緊張を解け! たいした相手ではないぞ!」
カミルの激励が飛んだ。
「ふ……。この俺が緊張? ありえんな……」
クールに言い放つディザイアだが、声が震えている。
そして打ち鳴らされるゴング。
ディザイアは軽快なステップで近付き、積極的に攻めていった。
ジャブで距離をはかり、体を左右へ揺らす。
右、左、右、左。
振り子のようなウィービングから連続フックが繰り出され、シャコボロはバックステップした。
ディザイアの攻撃は止まらず、そのままデンプシーロールへ移行。
カウンター上等の、力でねじ伏せる戦術だ。
そこへ、シャコの右ストレートが発射された。
「きたか……!」
果敢に攻撃していたディザイアだが、じつはクロスカウンターを狙っていたのだ。
ああ……。だから人間の反射速度でカウンターは取れないと言っているのに……。解説に書けば良かったな……。
そういうわけでシャコストレートが炸裂し、ディザイアはルナ&カーディスと同じく窓から飛び出して路上に投げだされ、三輪車に轢かれて死んだ。
さて、重体者三名を出しての第四試合。
青コーナーには、ラテン・ロロウス(
jb5646)
しかし、堕天使の彼は人間界のことをよく知らない。ボクシングのルールなんて知るはずもない。一応は本やネットで調べたのだが、民明書房っぽい百科事典やアンサイクロペディアっぽい何かを見てしまったため、彼のボクシング知識はカオス状態。
「では正々堂々と、綺麗なボクシングをやろうではないか」
ゴングが鳴ると同時に、四股を踏むラテン。
さらに塩をまき、柏手を打って、お辞儀する。
そして、なめらかな美声で国歌独唱。
そういうことは、ゴングが鳴る前にやるべきだと思う。(え?)
「これで作法は完璧だな。さて、まずはジャブで牽制するらしいな? いくぞ!」
洗剤とタワシを持って突撃するラテン。
いや確かに、ジャブって名前の洗剤あるけど……。なんというわかりにくいネタを……。
「くらえ! 貴様の汚れを落としてくれる!」
液体洗剤をピューピューするラテン。
シャコボロは華麗なステップで回避。
「やるな……! ならば次はフック……ぅおあッ!?」
洗剤で足を滑らせたラテンは、あざやかに転倒。
そこへ、シャコが襲いかかる!
言うまでもないが、ボクシングでは倒れた相手への攻撃は反則!
しかし、このリングにレフェリーはいない! ルール無用のデスマッチなのだ!
「立て! 立つんだ、ジョー!」
カミルが叫んだ。
まさかこんな場面でお約束が飛び出すとは、だれも予想しなかったはず。
「すべるよ! すっごいすべるよ!」
自分のまいた洗剤で、全身ぬるぬるのラテン。どうやっても立ち上がれない。
そこへ襲いかかる、シャコストレート!
「こうなれば、一撃必殺クロスカウンターだ!」
ラテンよ、おまえもか……。『クロスカウンター』って書いた人、多すぎるぞ……。これが男のロマンなのか……。
──で、もう言うまでもないが、カウンターは失敗。
ラテンは真正面からパンチを受けてリング上を転がり、ロープに撥ね返されてカーディスたちとは反対側の窓から外へ飛んでいった。
そこへ、偶然通りかかった自衛隊の戦車が!
こうしてラテンも帰らぬ人となった。
『ガレージとボクシング対決なう。四人重体なう ( ´∀`)』
ついった厨のルーガ・スレイアー(
jb2600)は、そんなことを書き込んでいた。
これまでの試合は全てスマホで動画撮影し、ネットに公開している。
『【世紀の対決】撃退士VSディアボロ・ルール無用のボクシングデスマッチ【タオルは無用】』
そんなタイトルの動画は、はやくも再生回数1000回を突破。うなぎのぼりに数字が増えてゆく。
「よーし! 華麗な戦いぶりを見せて、ランキング1位を狙うのだぞー!」
そう言って、ルーガはチルルにスマホを手渡した。
そして、宣言どおり華麗な身ごなしでロープをひらりと飛び越えてリングイン!
と思いきや、ロープに足を引っかけて豪快にスッ転びながらリングイン!
後頭部を打ち、そのまま帰らぬ人に──とはならなかったが、けっこう痛かった。
カーン!
第五試合開始。
チルルがリングサイドで撮影を始め、カミルは杖を振りまわしながら「ジム仲間の仇を討つんじゃー!」と叫ぶ。
そんな声援の中、ルーガはシャコの足腰の弱さに目をつけていた。
「バランスを崩せば勝てるのだぞー!」
ルーガは先制の一撃で勝負を決めてしまうべく、一気に突撃した。
そして偉大なる(?)先人の知恵にもとづき、カエル跳びアッパーを発動!
身をかがめてシャコの視界から消え、いま必殺のアッパーカァァット!(頭文字はA!)
スカッ!
なんと、その瞬間! シャコは二本足をやめて本来の姿勢にもどっていた!
おお、これはみごとなプレイング! 本日のMVPだ!(従って今回のMVPは二名だけです)
してやったりとばかりに、ニヤリと笑うシャコ。
その右腕から放たれるのは、強烈無比な殺人Apper Cut!
ウイニング・ザ・レインボー!!
「アバーッ!」
どこからか降ってきた虹を背景に、見開きページで吹っ飛ぶルーガ。
そして脳天からリング外へ墜落し、ドグシャアアアアッ!
その一部始終を、冷静に撮影するチルルちゃん。
カミルは杖をバキッとヘシ折り、「なにやっとるんじゃぁぁ!」と叫ぶのだった。
それにしても最近アバりすぎですよ、ルーガさん。今度アバったら称号あげますね。
さぁ、本日最後の試合。
挑戦者は、雁久良霧依(
jb0827)
なんと彼女はマイクロビキニで登場! 見えてはいけないポッチリ部分を隠すだけの小さな布切れ……というか、ほとんどヒモにしか見えない水着姿だ! 彼女の辞書に羞恥心という言葉はない!
あまりのエロさに、リング上のシャコは顔を赤くしている。
もちろん、リングサイドのシャコたちも同様だ。というか、ローアングルから見ると色々やばい。やばすぎる。見えちゃうよ! 見えちゃうってば! やめてください、霧依さん! 存在自体が蔵倫違反です!
そんな蔵倫ぎりぎりの中、ゴングが鳴った。
と同時に打って出る霧依。
軽やかなフットワークで、おっぱいが揺れまくる。
某格闘ゲーでもこんなには揺れないぞというぐらいの、ブルンブルン状態だ。
呆然として見つめる対戦相手。全身真っ赤の、茹でシャコみたいになっている。
そこへ、霧依のパンチが命中。
幸せそうな笑顔を見せながら、茹でシャコはリング外へ飛んでいった。
「さぁ、次は誰かしら?」
霧依が色っぽい視線を送ると、六匹のシャコたちは先を争ってリングに上ろうとした。
しまいには仲間割れが始まり、壮絶な殴りあいに発展。
そうして生き残った最強のボクサーが、鼻血を流しながらリングに上がった。もちろん、殴りあいで生じた鼻血ではない。
「あなたが相手? さぁかかってらっしゃいな」
挑発に乗って、バッと跳びかかるシャコ。
そのパンチが、勢いよく霧依の胸に!
いや、パンチっていうか、ただ手を出しただけだ! 気持ちはわかるぞ!
シャコの手がツンッと当たり、ポヨンと揺れるおっぱい。
その直後、シャコの頭部をカミルの銃弾が撃ち抜いて、すべてを終わらせた。
ルールどおり! 試合中の選手をセコンドが銃撃するのはルールブックで認められてるぞ!
っていうか、倫理的にも字数的にも、これ以上お見せできません!
こうしてシャコボロ退治は五人の犠牲者を出しつつ、無事終了。
「しかし、なかなか手強い相手じゃったのう」
G鴨川の口調をつづけながら、カミルが言った。
「そうかしら。私はもっと色々やりたいことがあったのに……」
エロテロリスト・霧依は、少々不満顔だ。
でも仕方ない。これはボクシングの試合なんだ。おっぱいをぶるんぶるんさせる試合ではない。いやまぁ、本来はボクシングではなく天魔退治のはずなんだが……。どうしてこうなった……。
「うわ、見て見て! 再生回数20000だって! 最後の試合アップしたら、ものすごい勢いでカウンターまわってるよ!」
ルーガのスマホを手に、チルルは大喜びだ。
コメントは『 ( ゜∀゜)o彡゜ おっぱい! おっぱい!』の嵐。
かりそめにもボクシングの動画で、これほど大量のおっぱいコメントがついた例はないだろう。これならば、ルーガも草葉の陰で喜んでいるに違いない。
「さて、白い灰になった四人を回収するとしよう。太平洋まで吹っ飛んでなければ良いのじゃが……」
そう言って、カミルは重い腰を上げるのだった。