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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2013/07/01


みんなの思い出



オープニング

●目撃者Aの証言
 俺の親父は北海道で漁師をやってた。カニ漁さ。しかも、密漁のな。
 ちょっと荒れたら転覆しちまいそうなチンケな船で、真冬のオホーツクに向かってくんだぜ。馬鹿だろ。
 そんで、ロシアの領海ぎりぎりまで行ってカニをとってくるんだ。
 もちろん一匹も獲れない日だってある。
 それでも、毎日のように海へ出ていくんだ。
 命知らずとしか言いようがねぇよ。
 そんな親父も、十年前に死んじまった。
 あの馬鹿、はじめて大阪に来たとき、かに道楽の看板を見てな。
「うわあああ! カニの野郎が化けて出やがった!」
 とか何とか絶叫しながら走りまわって、あげくには道頓堀に落ちて死んだのさ。ああ、酔っぱらってたんだよ。まぁ自業自得ってやつだ。
 でもな、いまなら親父の気持ちがちょっとわかるぜ。
 まさか、ほんとうにカニが化けて出やがるなんてなぁ……。


●目撃者Bの証言
 あのとき俺たちはカニを食いながらデュエルしてたんだ。
 え? デュエルの意味がわからない? ぐぐれカス。
 まぁいい。教えてやる。デュエルってのはな、カードゲームの決闘のことだ。
 カニを食いながらカードゲームをやるってのは、なかなか背徳的な気分になれるぜ? 高級なカードを使ってるヤツらは、ぜったい俺には勝てない。俺のカードは拾ったもんばかりだから、いくら汚れたってかまわないのさ。くくくくく。
 で、まぁいつもどおりに勝負を決めてやろうと「召喚!」とか言ったとたん、ほんとうに召喚されやがったんだ、あのモンスターが。
 ったく、ああいう冗談は漫画かアニメの中だけにしてくれっての。


●目撃者Cの証言
 あー、おどろいた。
 だって、カニたこ焼き注文したら出てきたのアレだよ? しかも、壁ぶちやぶってジャジャーンだからね。そりゃ全力で逃げるっての。
 え? カニたこ焼き知らない? マジ? タコのかわりにカニが入ってるたこ焼きだよ。……うん、まぁ冷静に考えたら、それたこ焼きじゃないだろって話なんだけど。
 でも、たい焼きだって鯛は入ってないじゃん? それと同じだよね?
 たとえばさぁ、たい焼きの中にタコを入れたとするじゃん? それは、たこ焼きって呼ばないよね? おなじ理屈で、たこ焼きの中に鯛を入れても、たい焼きとは呼ばないわけじゃん? だから、たこ焼きにカニを入れてもカニ焼きとは呼ばないんだよ。
 つまり、たこ焼きの中には何が入っててもいいの! たこ焼きは宇宙!
 って、カニ来た! カニ! ぎゃあああああ!


●校内放送
 市街地に巨大なカニ型ディアボロが出現! 志願者はただちに集合せよ!
 カニ型にも色々あるが、本種はタラバガニ型! くりかえす、タラバガニ型! ちなみにタラバガニはカニではなくヤドカリの仲間だ! これトリビアな!
 ついでに言っておくと、和名は生息域がタラの漁場(鱈場[たらば])と重なることに由来し、古来「鱈場蟹」と呼ばれてきたものを本草学および

「チーフ! チーフ! ウィキペディア見てる場合じゃありません!」

 おっと、すまなかった学生諸君。ともかくタラバガニっぽいディアボロだ。映像で見ると、かなりの上物らしい。こいつは鍋にしたら酒が進むぞぉ。こう、昆布でダシをとったところに豆腐と長ネギと白菜を入れてだな、

「チーフ! チーフ! 必要な情報だけをアナウンスしてください! だいいちディアボロは食べられません! 不謹慎ですよ!」

 必要な情報? ああ、そうそう。本任務を成功させたあかつきには、依頼主『かにDo Luck』さまのご厚意によりカニ鍋フルコースが無料でふるまわれる。手元のパンフレットによると、通常おひとりさま14800円の特上コースだ。おまけにアルコール類も飲み放題。……あっ、この地酒うまそうじゃねぇか。おいちょっと見てみろよ。俺が行こうかな、この任務。

「オッサン! オッサン! ちゃんと仕事してくれ!」

 仕事してるじゃねぇか。必要な情報アナウンスしてるだろ。

「値段とか飲み放題とか、どうでもいいんですよ! それより敵の特徴や大きさをですね」

 だからタラバガニだって言ってるじゃねぇか。とにかく志願者は俺のところへ来い。ちゃんとパンフレット見せてやるから。

「そのパンフはどうでもいいんですってば!」

 うまいカニ鍋が待ってるぞぉー!



リプレイ本文


 真っ昼間の繁華街で、人食いクラブが暴れていた。
 襲われているのは、カニ料理屋を訪れていた客数名。カニを食いに来たのに逆にカニに食われるとはシュールすぎるが、笑いごとではない。人の命が懸かっているのだ。一応。
 そこへ颯爽と現れたのは、我らが撃退士!


「……ん。市街地の。カレー屋とか。飲食店とか。カレー屋は。私が。護る」
 タダ飯が食えると聞いて駆けつけた最上憐(jb1522)は、淡々とダークハンドを発動した。
 抵抗することもできず、いきなり束縛されるカニディアボロ。
 もう、この時点で勝敗は決まっていた。
「ほほほほ、あたいの酒の前に立ちふさがるものは、こうなるとよ!」
 高笑いとともにサンダーブレードを放つ桃香椿(jb6036)は、いつになく士気が高かった。
 彼女もまた、タダ飯──というよりタダ酒に釣られて参加したのだ。
 飲酒を邪魔する者には正義の鉄槌を! MSも応援します!
「……いつぞやはヒトデ。このまえはエビ。今回はカニ……。言いたいことは山ほどありますが、まぁイイでしょう。このあとのおたのしみを思えば気にならないのです」
 そう言って、沙夜(jb4635)はヒリュウを召喚。
 バサッと翼をひるがえしたヒリュウが顎を開き、疾風のような雷撃を叩きこむ。
「エビィィィッ!」


「……おぬしはカニじゃろが」
 謎の悲鳴をあげたカニボロに対して、ファタ・オルガナ(jb5699)はルキフグスの書で攻撃。生みだされたカード状の刃が、カニボロの関節部を切り刻む。
「あたいはあまり強くないから、攪乱要員かニャ〜?」
 闇の翼で空を飛びながら弱点をさがすのはアヤカ(jb2800)
 無論、カニの弱点は腹部に決まっている。そこを狙って、アヤカは拳銃を撃ちまくった。
 はじき返されるかと思いきや、あっさり食い込む弾丸。見かけ倒しにもほどがある。
「ふむ……。たしかにカニだ。見た目どおり鈍いな。さっさと片付けてカニ料理をたのしむとしよう」
 穂原多門(ja0895)は無意識に駄洒落を呟きながら、防壁陣をまといつつブラストクレイモアを振るっていた。
 さすがに背中の甲羅は硬く、まるで刃が通らないが、脚の関節部や腹部にはダメージが入る。
 実際問題、陸に上がったカニなど満足に動けやしないのだ。鈍重としか言いようのないカニボロに対して、多門の剣が叩きつけられ、薙ぎ払われる。
「……まぁ一応、戦闘に参加したそぶりぐらいは見せておかんとね」
 やる気なさそうに火炎放射器をヒャッハーしているのは、綿貫由太郎(ja3564)
 彼のアタマにあるのは、とっとと戦闘を終わらせて酒とカニ料理でフィーバーすることだけだ。いつもながらのマイペースぶりである。


「タラバガニ……それはカニの王。……そう、ヤドカリなのにカニの王様と呼ばれ、あまつさえ前にも進める奇行種。ヤドカリに王座を奪われた全カニの想いを背負い、私は敢えて横歩きで挑む!」
 わけのわからないことを真顔で言い放つ蓮城真緋呂(jb6120)は、宣言どおりカニ歩きで戦っていた。
 真剣な顔つきで反復横跳びしながら戦うその姿は、ちょっと、だいぶ、アレな感じだ。いや、見方によってはカワイイかもしれない。見方によっては!
「カニを食べるからには、カニへの敬意を払う……! 食らえ、プロレタリア魔法・蟹光線!」
 突き出された直刀が金色の輝きを放ち、刃と化した稲妻がカニボロの甲殻を貫いた。別名サンダーブレード!
「ィエヴィィィイッ!」
 妙に欧米人っぽい巻き舌で叫ぶと、カニボロは泡を吹いて倒れた。
 反撃なぞ一度もないまま、戦闘終了!
 麻痺とか束縛とか、強すぎるんだよ!




「「さぁ、カニだ!!」」
 フルヒャッハー状態で『かにDo Luck』へ突撃する八人。
 もちろん真緋呂はカニ走りだ! 指をチョキチョキするのも忘れないぞ!
「おお。よくぞあの化け物を退治してくれました。お礼の席を設けましたので、どうぞこちらへ」
 RPGの村長みたいなことを言う店長はニコニコ顔だ。
「わーい、食べ放題! 食べ放題!」
 真緋呂が反復横跳びしながら全身で喜びを表現した。
「いえ、ご用意したのはフルコースです。食べ放題ではありません。ドリンク類はお酒も含めて飲み放題ですが」
「え……っ!? そんな、嘘よ……。嘘よね……?」
 反復横跳びをやめて、がっくり落ち込む真緋呂。
 その落ち込みようたるや、一億円当たった宝くじをヤギに食われてしまったほどのレベルだ。
「あの、フルコースでおなかいっぱいになるはずですので……」
「じゃあ、おなかいっぱいにならなかったら食べ放題にしてくれる?」
「そ、それはまぁ……」
「約束だよ? 食べ放題だよ?」
「は、はい」
「やったー! みんな、食べ放題になったよ!」
 作戦大成功!
 これには他のメンバーも大喜びだ!
 店長無惨!



 撃退士たちが通されたのは、広い和室だった。
 テーブル上には既にカニ刺しやカニ味噌が並べられ、たいへん食欲を刺激する眺めとなっている。
 そこへ、店長がじきじきにオーダーを取りにきた。
「では、ドリンク類のご注文をどうぞ」
「「とりあえず生中!」」
 多門とアヤカ、そして沙夜が声をそろえた。
「未成年は、お酒ダメニャよ☆」
「うふふ。冗談ですよ。とりあえずウーロン茶で」
 沙夜は笑ったが、じつはわりと本気だった。
 なんと彼女、未成年のくせに大酒呑みなのである。
 でもNGだから今回は我慢してね!
 お酒は二十歳から!(天魔は除く)


 そして次々と地酒が注文される中、憐の問題発言が飛び出した。
「……ん。カレーを。飲む」
「カレーは扱っておりませんが……」
 困惑する店長。
「……ん。カレーは。飲み物。今日は。飲み放題。つまり。カレーも。飲み放題」
「ええと……」
「……ん。プロなら。一度。口にしたことを。守るのが。基本」
「か、かしこまりました。すぐに作らせます」
 無茶苦茶な理屈に押し切られた店長は、やむなく店員をスーパーに走らせたという。



「んじゃまー、楽勝でカニ退治も終え、依頼主さんのご厚意でこうしてカニパーティーを開けたことに感謝して……乾杯!」
 由太郎が音頭を取って、全員が「乾杯!」と声をそろえた。
 八つのグラスやジョッキが一斉に打ちあわされ、カシッと音を立てる。
「よし、おかわり!」
 あっというまにジョッキをあけた多門は、さっそく二杯目をオーダー。
 負けじとアヤカが日本酒を飲み干し、椿も続く。みごとに大酒飲みがそろったようだ。
「いやいや、おっさん負けそうだよ……」
 そんなうわばみたちを横目に、由太郎はじっくりと地酒を堪能。
 芳醇かつキレのある純米大吟醸酒が味蕾を刺激し、五臓六腑に染みわたる。
 その余韻が残っている内に、カニ刺しを一口。酒の芳香とカニの甘みが渾然となって、えもいわれぬ味と香りのハーモニーを奏でる。
「くぅ〜。たまらんね……!」


「んふ。これはうまそうじゃのう」
 揚げたてのカニ天ぷらを箸で持ち上げながら、ファタは舌なめずりしていた。
 イギリス出身の彼女は、新鮮なカニを食べた経験が少ない。
 しかも、これほど高級店のカニ料理となれば、期待に胸が膨らむのも当然だ。
 足一本を豪快に丸揚げしたカニ天を、ワイルドにかぶりつくファタ。
 ザクッ
 半生状態のカニが舌の上で踊り、香ばしい衣がサクサクと音を立てる。
 そこへ、すかさず地酒を一口。
 淡麗辛口のスッキリした風味が、これまたカニ天と抜群の相性で──
「くぁ〜、たまらん!」
 期せずして由太郎と同じセリフを口にしてしまうファタ。
 しかし、うまいカニとうまい酒を前にして、これ以上のセリフがあろうか。
 真にうまい料理は、人間から言葉を奪い去るものなのだ。


「こりゃあうまかとよ」
 椿はカニの足をほじりながら、ものすごいペースで飲んでいた。
 なにしろ彼女は、ふだんからヒマさえあれば一杯やっているほどの酒好き。無料で飲み放題など、まさに天からの福音だ。豊富に取りそろえられた地酒の数々を、片っ端から飲んで飲んで飲みまくる。
 最初はグラスを使っていた椿だが、もう既にラッパ飲みモード。
 だが、この程度ではまだ酔わない。あらゆる毒物に耐性がある撃退士は、ちょっとやそっとのアルコールでは何ともないのだ。酔っぱらうために酒を飲むタイプの撃退士にとっては悲劇だが、それでも超大量のアルコールを摂取すれば酔っぱらうのは間違いない。
 椿は今日、完全に酔っぱらうつもりで飲んでいる。
 乾杯から十五分で彼女が空けた一升瓶は五本。一般人なら急性アルコール中毒で死んでいるところだ。
 無論、こんなのは椿にとって序の口。相撲で言うなら塩をまいたぐらいの段階だ。勝負は始まってすらいない。


「……」
 真緋呂は全力でカニを堪能するべく、一心不乱にカニの足をほじっていた。
 痩せ形の彼女だが、じつはかなりの大食い。カニならいくらでも食べられる。
 オーバーしたカロリーは、すべて胸に行っているに違いない。
 だから、そんな立派な胸をサラシで隠しても駄目なのよ、真緋呂ェ門ちゃん。
「……」
 沙夜もまた、黙々とカニの足をつついたり、カニ爪を割って身をほぐしたりしていた。
 愛しのヒリュウは隣の座布団にチョコンと座り、沙夜の取り出したカニの身をモグモグしている。じつに微笑ましい光景だ。
「……」
 いつもカレーばかり食べている憐も、今日は珍しくカニを食べていた。
 無論、つけ汁はポン酢や醤油ダレなどではなくカレーだ。
 嗚呼、なんということを! 繊細なカニの風味を問答無用で破壊するカレーの暴圧!
 しかし、憐は満足げだ。カレーさえあれば彼女はいつでも幸せなのである。


 そして気がつけば、皆カニを食うことに必死で、座敷には沈黙が流れていた。
 事態に気付いた多門が、ハッと我に返って言う。
「みんな、任務のときより真剣じゃないか……? たしかに、カニを食べると静かになるものだが……」
 またしても無意識に駄洒落(しかもダブル!)を披露してしまうのだが、だれも気付かない。
「にゃはは。必死になってたニャ〜☆」
 アヤカが笑いながら杯を傾けた。
 しかし、それは普通のグラスやお猪口ではない。
「むっ? その杯は……?」
「カニの甲羅ニャよ? こうやって、カニ味噌を溶かしたところへ日本酒を……」
 甲羅の中へ味噌を入れ、酒を注ぎながら箸で掻き混ぜるアヤカ。
 おお、これは真の酒好きにしか思いつかない発想だ!
 しかし、こんなことでMVPを付与してしまうのは我ながらどうかと思うぞ!
「ほほう。それはいい。俺もご相伴にあずかろう」と、多門が乗り気になった。
「よし、おっさんもやってみようかね」
 由太郎も、手頃な甲羅を探しはじめる。
「ぬ? 甲羅酒とな……? それは是非とも試さねばのう」
「なんね? カニ味噌を日本酒に……? そりゃあうまかとやろ。あたいもマネしちゃる」
 ファタと椿も加わって、酒飲みたちによる甲羅争奪バトルが始まった。
 そしてカニ味噌甲羅酒を口にした四人は「「くぅ〜っ」」と口をそろえるのだった。



 そしていよいよ、本日のメインディッシュ!
 豪華カニ鍋がドーンと登場!
 エビにホタテ、鮭の切り身からイワシのつみれまで、海鮮素材がたっぷりと。そして、ネギ、白菜、豆腐、シイタケが彩りを添え、これでもかとばかりにカニが投入されている。食べる前から唾液の洪水ほとばしる、究極の一品だ。
「「ヒャッハー!」」
 目の色を変え、血をたぎらせる撃退士たち。
 もちろんカニ刺しやカニ天なども文句ない味だったのだが、やはり鍋はテンションが上がる。鍋は日本人の魂を揺り動かさずにはおかないのだ! ……まぁ日本人じゃないどころか、人類ですらない者も約一名いるのだが。それはそれ!


「ああ……おいしいお鍋ですねぇ……」
 沙夜はハイペースでウーロン茶を飲みながら、カニ鍋を満喫していた。
 気のせいか頬が桜色になっているように見えるが、これは鍋が熱くて体温が上がっているため。彼女が飲んでいるのはウーロン茶だ。断じてウーロンハイなどではない。お酒は二十歳からと決まっている。法律を守らない撃退士など、決して許されるものではない!
「まさか、どさくさにまぎれてお酒飲んでニャいよね?」
 問いかけたのはアヤカだ。
「そんな、まさか。お酒なんて一滴も飲めませんから、私」
「でも、だれも注文してないはずの焼酎のボトルがあるニャよ」
「店員さんが間違えたんじゃありませんか?」
「そうかもしれニャいニャ!」
 納得してしまうアヤカ。
 彼女はあまりこまかいことを気にするタイプではないのだ。


「んふ。一杯どうじゃ?」
 鍋をつつく由太郎の横に、ファタがそっと腰を下ろした。手には一升瓶。
「おっと。これはありがたい。美人にお酌してもらうと、うまい酒がますますうまくなる」
「んふふふ。口がうまいのう」
「いやいや。おっさんはウソつかないよ?」
 そこへ乱入してきたのは、赤い顔をした椿。
「あたいの酒も飲めぇ〜」
 すっかり酔っぱらった彼女は着物の肩をはだけ、ゆたかな胸の谷間を大きく露出させていた。
 無論、由太郎はそんなことで心を乱されるような若造ではない。谷間ごとき、見慣れている。見慣れているぞ! しかし、それはそれ! これはこれ! せっかく目の前にあるものを見ない道理はない!
「あ〜、こまったな。おっさん、ちょっと心拍数が上がってきたぞ?」
 椿の胸がグイグイ腕に押しつけられて、挙動不審になる由太郎。
 美女ふたりをはべらせてタダ酒とは、うらやましいにもほどがある。



「さて、そろそろ雑炊に行っちゃいますか?」
 真緋呂が提案し、満場一致で可決された。
「締めは、やはりカニ雑炊だろう」と、多門。
「ああ、もちろん雑炊だ」
 由太郎はファタと椿に挟まれて、すっかり鼻の下が伸びている。
「……ん。カニカレー雑炊で。しめる」
 憐はどこまでもブレない。最初から最後までカレーだ。
 そして始まる雑炊パーティー。
 カニのダシがたっぷりの雑炊は、祭りの締めとして完璧な絶品だ。
 最終的に彼らは雑炊を三回もおかわりし、その間も酒を飲みまくって、最後にはデザートまで綺麗に完食。店側の受けた損害は、カニボロによるものより大きかったという。




「……ああ、おいしいお酒……じゃなくて、おいしいお料理でしたねぇ」
 店を出た沙夜は、いつになく上機嫌だった。
「うむ。良い店だった。プライベートでも来てみたいな」
 多門も、いささか饒舌になっている。
「でも、店長さん泣いてましたね。なんでだろ」
 しれっとした顔で言う真緋呂。
 彼女が食べ放題をゴリ押ししたせいなのだが、気付いてないらしい。
 ともあれ、カニと酒を腹いっぱい満喫した彼らは、真っ昼間から酒臭いオーラを発しつつ帰宅の途につくのであった。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: カレーは飲み物・最上 憐(jb1522)
 天魔アイドル、参上ニャ!・アヤカ(jb2800)
 あなたへの絆・蓮城 真緋呂(jb6120)
重体: −
面白かった!:9人

函館の思い出ひとつ・
穂原多門(ja0895)

大学部6年234組 男 ディバインナイト
不良中年・
綿貫 由太郎(ja3564)

大学部9年167組 男 インフィルトレイター
カレーは飲み物・
最上 憐(jb1522)

中等部3年6組 女 ナイトウォーカー
天魔アイドル、参上ニャ!・
アヤカ(jb2800)

卒業 女 アーティスト
夢幻の案内人・
沙夜(jb4635)

大学部3年102組 女 バハムートテイマー
目には目を・
ファタ・オルガナ(jb5699)

大学部7年10組 女 ダアト
釣りガール☆椿・
桃香 椿(jb6036)

大学部6年139組 女 アカシックレコーダー:タイプB
あなたへの絆・
蓮城 真緋呂(jb6120)

卒業 女 アカシックレコーダー:タイプA