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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:7人
リプレイ完成日時:2013/06/25


みんなの思い出



オープニング

 晴れた空。静かな海。
 初夏の日差しの中、沖合に一隻のクルーザーが浮かんでいる。
 デッキには、ふたりの少女の姿。仲良くイスに並んで、釣りをたのしんでいる。
 髪の長いほうは、由利百合華。
 短いほうが、佐渡乃明日羽。
 どちらも、久遠ヶ原学園の高校生だ。

「釣れませんね……」
「不釣だね。ちょっと百合華、見てきてくれる?」
「見てくるって……なにをですか……?」
「ちょっと海に潜って、魚がいるかどうか確認してきて?」
「あの……水着とか持ってきてないんですけど……」
「そのままでいいんじゃない?」
 無理難題を言う明日羽。
 百合華の顔が引きつる。
 ちなみに彼女の服装は、Tシャツにハーフパンツという格好だ。
「ま、待ってください……! 冗談ですよね……?」
「冗談だけど、実行したらごほうび上げるよ?」
「ご、ごほうびって何ですか……?」
「百合華が悦ぶモノ」
「その……具体的に……」
「言っちゃったら面白くないでしょ?」
「そ、そうかもしれませんけど……」
 ごくりと唾を飲みこんで、百合華は自分の服装をたしかめた。
 その次に海面を見下ろして、「サメとかいませんよね……?」と訊ねる。
「サメに噛まれたとしても、治してあげるから大丈夫だよ?」
 明日羽は腕利きのアストラルヴァンガードなのだ。相当なケガを負っても、あっというまに全快させてしまう。
「でも、釣りの最中に海へ飛びこむって、聞いたことありません……」
「私もないけど、だからって飛びこまない理由にはならないよね?」
 独自の理屈をのべて獲物を追い込む明日羽。
 ──と、そのとき。
「キャアアアアアッ!」
 絹を引き裂くような悲鳴が聞こえた。
「あら……? なにかあったみたい?」
「行きましょう、先輩!」
 助かったようだと胸を撫で下ろし、颯爽と走りだす百合華。
 明日羽は少し残念そうな表情で後を追った。


 キャビンへ飛びこむと、そこには信じがたい光景が広がっていた。
 床一面に這いまわる、半透明の触手。
 ヌラヌラしたその器官は、どうやらクラゲの脚のようだ。
 操縦席で悲鳴を上げているのは、女性の操縦士。
 完全に動きを封じられ、イスに縛りつけられている。全身べっとりした液体にまみれ、裂けたシャツの隙間からは、真っ白な肌が覗いていた。
「た、たすけ……て……!」
 艶めかしい声で、操縦士が助けを求めた。
「こ、これは……! 天魔ですよ、先輩!」
 百合華は光纏し、両手に陰陽道の符を取り出した。
 同時に明日羽も光纏し、百合華を止めるように前へ出る。
「待って。うかつに攻撃すると巻きこんじゃうかもしれないでしょ?」
 言いながら、明日羽は操縦席へ近付いていった。
「た……っ、たすけて、くださいぃぃ……。明日羽さま……っ!」
 ぬるぬるした触手に全身をまさぐられながら、操縦士が訴えた。
 彼女は佐渡乃家で働くメイドであり、明日羽の世話係でもある。いわば、明日羽の奴隷みたいなものだ。
 その首筋を這いまわっている触手を一本つまんで、明日羽はしげしげと観察した。
「毒はないみたい? ねぇ、どう?」
「っ……。いや、あの……、毒とか、そういう問題では……ああッ!?」
 スカートの裾から、触手が入り込んだ。
 操縦士が身悶えし、ビクンと痙攣する。
「先輩! 早く倒さないと……!」
「大丈夫。私の見たところ、こいつは無害だから」
「ええ……っ!? どう見ても無害じゃありませんよ!? というか別の意味で有害ですよ、これ……」
「あら? 私の判断を疑うの?」
 言いながら、明日羽は指先につまんだ触手の先端を百合華の頬にこすりつけた。
 顔を歪めながらも、百合華は逃げようとしない。
「う、疑ってるわけじゃないですけど……!」
「だいたい、もし害があったとしても私が治せばいいだけの話だよね? ちがう?」
「そ、それはそうですけど……」
「納得した?」
「一応は……。でも、早く倒さないと……」
 百合華は顔を真っ赤にさせていた。
 なにしろ、触手に捕らわれた操縦士は全身を完全に拘束されて、ものすごいことになっている。
「じゃあ協力して倒そうか? こっちに来て?」
 明日羽が笑顔で手招きした。
 言われたとおりに近付いていく百合華。
 次の瞬間。明日羽は一抹の躊躇もなく、『シールゾーン』を百合華にぶちこんでいた。
 さらに『審判の鎖』で完全に動きを封じ込め、操縦席のほうへ蹴り飛ばす。
「な……っ!? せ、先輩……!?」
 なす術もなく吹っ飛び、操縦士にぶつかる百合華。
 そのふたりを、包みこむように触手が絡め取る。
「いやああああっ!」
 たちまち粘液まみれになった百合華の全身を触手がまさぐりはじめ──
「ああ、すごくイイ眺め……」
 うっとりした顔で、明日羽は自らの手をブラウスの隙間に入れた。




「ぅうう……。うぐ……っ」
 三十分後、百合華と女性操縦士はボロボロになって床に横たわっていた。
 粘液まみれで全身を赤く上気させたその姿は、ひどくエロティックだ。
「ああ、たのしかった……。百合華もたのしかったでしょう?」
 ドロドロに濡れた指を舐めながら、明日羽が問いかけた。
「たのしくなんかありませんよぉぉ……! それに、あの天魔も逃がしちゃったじゃないですかぁぁ……!」
 反論する百合華だが、もちろん明日羽には何もかもわかっている。
 この二人の間には、みごとなほどに需要と供給の関係が成り立っているのだ。
「べつに、わざと逃がしたわけじゃないよ? だって、ほら。私ひとりであんな化け物と戦えるはずないじゃない?」
「ウソですよ、それ……。あんなの、先輩だったら楽勝のはずです……っ!」
「買いかぶりだよ? それに、一般人もいるんだし? 戦闘に巻きこむわけにはいかないでしょ?」
「絶対にテキトーなこと言ってますよね、それ……」
「信じてくれないの? ……ああ、でもあの天魔を放置しておくわけにはいかないよね? 逃げられた責任をとって、私が依頼を出しておかないと。ね?」
「あああ……絶対に良からぬことを考えてる目ですよ、それ……」



リプレイ本文



 その日、ヨットハーバーに九人の撃退士が集まった。
 なぜか全員女性なのは、依頼人である佐渡乃明日羽が『女性優遇』と求人したためだ。
「こんにちは、みなさん。今日はつまらないディアボロ退治に手を貸してくださって、ありがとうございます」
 案外礼儀正しくあいさつする明日羽。一応上流階級の人間なので、最低限のマナーは心得ているのだ。
 真っ白なワンピースに身をつつんだ彼女は一見お嬢様風だが、その中身はといえば──

「あら? あなた、ケガしてるんじゃない? ちょっとこっちに来て?」
 明日羽が手招きした相手は、姫路明日奈(jb2281)
「にゃ、このまえ任務で失敗しちゃったんですよ〜」
「じゃあ無理しないで? 見てるだけでいいからね?」
 そう言って、明日羽は明日奈の頭を撫でた。
「は、はいっ」
「なんだか名前も似てるじゃない? 仲良くしようね?」
 髪を撫でた指がツツッと首筋をなぞり、明日奈はビクッと体を震わせた。
 よりによって重体の身で明日羽の依頼に参加してしまうとは、不幸きわまる。彼女は、弱っている女の子をいじめるのが趣味なのだ。
「じゃあ行こうか?」
 当然のように明日奈の手をにぎり、クルーザーへ乗りこむ明日羽。
 それを見つめる七人の女性たちは、自分も重体で来れば良かったと思ったり思わなかったりした。




「これが『海』……。なんと広大なんでしょう……」
 指定水着を身につけて、デッキから水平線を見つめているのは、ステラ シアフィールド(jb3278)
「海は初めてですか?」
 明日羽が問いかけた。
 その横には、明日奈がくっついている。
「ええ、初めてですね。人間界のことは、よく知らないもので」
「では、存分に楽しんでくださいね?」
「……なにか、言外の意味があるように聞こえますが」
「そうですか?」
 くすっと明日羽が笑い、おなじようにステラも笑った。


「『初めて』と言えば、私はこれが初の任務なんですよ」
 そう言ったのは、パトリシア・キャリントン(jb5454)
 彼女も指定水着を着用しているが、あきらかにサイズが合ってない。胸はパツンパツンだし、尻は半分ぐらい露出している。
「サイズ合ってないよね?」と、明日羽。
「え。そうですか? 変ですか? ちょっと見てください」
 言いながら、パトリシアは尻を突き出した。
 その豊満なヒップを前にして、明日奈が顔を赤らめる。
 明日羽は顔色ひとつ変えず、「どう思う?」と明日奈に意見を求めた。
「にゅっ!? あの、その……似合ってると思います……」
 見当ちがいの答えを返して、明日奈は顔を真っ赤にさせた。
「でも、ほら? すこしめくれてるじゃない? なおしてあげて。ね?」
「にゃぇっ!?」
「できるよね?」
「で、できます、けど……」
「じゃあやってあげて?」
「にゅぅ〜」
 おずおずとパトリシアの水着に手をのばす明日奈。
 その表情を見て、明日羽は彼女の性癖を完全に把握したのだった。


 水着といえば、シャーロット・ルブラン(jb5683)は凄かった。
 なにしろ、ほとんどヒモみたいなスリングショットなのである。
「その格好で戦うんですか?」
 と、明日羽が訊ねた。
「ええ。水中での戦闘を考慮しまして」
「そんなので戦ったら、こぼれちゃいますよ?」
 明日羽が言うのも無理はない。なにしろ、その胸にはメロンみたいなものが二つ付いているのだ。歩いているだけでも危ないほどである。
「そうなったところで、なにか問題ありまして?」
 サファイアブルーの瞳で艶然と微笑むシャーロットは、まるで誘っているかのようだ。
 芸術品のような肢体と匂い立つフェロモンは、異性はもちろん同性をも惹きつけてやまない。
「ふふ……。なにも問題ありませんよ? たのしみですねぇ……?」
 明日羽もまた誘うように答えて、ゆっくりと唇を舐めた。


「それにしても、イヤな予感しかしないね……」
 だれにともなく呟いたのは、アニエス・ブランネージュ(ja8264)
 じつは彼女、触手やスライムなどの特殊な天魔と戦った経験が多く、ろくでもない記憶をいっぱい抱えているのである。ワンピース水着の上に白衣を羽織ったその姿は、どことなく怯えているようにも見える。
「……まったく、厄介な天魔もいたものですね」
 紅アリカ(jb1398)が相槌を打った。
 彼女の服装はTシャツにGパン。濡れてもいいように、下にはビキニを着けている。
 だが彼女は間違っていた。そこは『濡れてもいいように普通の下着をつける』のが正解だ。あるいは何も着けなくてもいい。これは重要なことなので覚えておいてほしい。
 そういう点で言うと、桜庭ひなみ(jb2471)も間違っていた。
 彼女は長袖にロングスカートをまとっているが、やはり下には水着。
 なんと残念な。みんな固定観念にとらわれすぎである。
 海だから水着? ちがうだろ。水着で濡れて、なにが楽しい? スーツとかセーラー服とか、そういうのを着てくるべきじゃないか? 次の機会のために、よく覚えておいてくれ。貴族との約束だぞ? べつに服フェチとか、そういうわけじゃないからな?


「あっ、クラゲ見つけた! あっちあっち!」
 いきなり騒ぎだしたのは、恵夢・S・インファネス(ja8446)
 指差す先には、ぷっかり浮かんだ巨大クラゲの姿が。
「では、早々に始末してしまいましょう」
 ステラが光纏し、霊符を取り出した。いきなり殺る気である。
 その背後から、当然のように『審判の鎖』がぶちこまれた。
「な……っ!?」
 がんじがらめになって、甲板に倒れるステラ。
 悪魔である彼女にとって、この攻撃は痛い。しかもこの『鎖』、滅茶苦茶レベルが高いのだ。
「あら……? ちょっと狙いが外れちゃったみたい?」
 明日羽がクスッと笑った。
 その瞬間、全員が理解した。
 絶対に、狙って当てたのだと。


「え? え……? 攻撃していいんだよね?」
 うろたえるように、恵夢は周囲を見回した。
「攻撃? してもいいよ?」
 答える明日羽の手には、妖しく光るヴァルキリーナイフ。
 それを見て、だれもが攻撃をためらってしまった。
 そうこうしている間に、透過した触手がデッキの下から突き抜けてくる。
「ひあッ!?」
 恵夢の脚に、触手が絡みついた。
 とっさにアイマスクを取り出し、装着する恵夢。
 意味不明な行動だが、これにはわけがある。
「殺傷能力のない敵なら、新しい戦法試すのにもってこいじゃん。ついでに感覚強化もしてきな」
 と、義姉たちに言われてきたのだ。
 だから、けっして何かのプレイとかではない! 素手で戦う技術を磨くための特訓なのだ! 特訓なのだよ!
「必殺! るゅーにあずふぃすとー!」
 フィストと言いながら跳び蹴りを放とうとする恵夢。
 しかし足首をつかまれていたため、ずてんと転んでしまう。
 たちまち触手が彼女の四肢を絡め取り、粘液まみれに。
「ひゃあああんん!」
 そして恵夢は甲板に張り付けにされたまま、あんなことやこんなことに!


「うわっ! 来るな! こっち来るな!」
 襲いかかる触手に対して、アニエスは散弾銃を撃ちまくっていた。
 所詮ただの触手なので、弾が当たれば簡単に消し飛ぶ。
 が、いかんせん数が多い。ふと見回せば、デッキはもちろん船の周囲も触手だらけだ。
「ちょ……っ! 嘘でしょ……!?」
 その背後から、ぬるっと触手がまとわりついてきた。
「キャアアアアッ!」
 恥も外聞もなく悲鳴をあげるアニエス。
 その首に巻きついた触手が、するっと白衣の内側へ入り込む。
 と同時に、足下から伸びてきた触手が足首に絡みつき、ナメクジのような粘液を引きながら、ふくらはぎ、ひざ、ふとももへと這い上がっていった。
「や、やめ……!」
 逃げようにも、脚が動かなかった。
 過去の記憶がフラッシュバックして、羞恥と恐怖でパニックに陥る。
 心臓が早鐘のように打ち、めまいが襲ってきて、視界が暗くなり──
 あとはご想像におまかせします!


「ひああああっ!」
 ひなみは触手を殲滅しようと、躍起になって拳銃を撃ちまくっていた。
 しかし、衆寡敵せず。この数は手の打ちようがない。
「わうっ!?」
 粘液で足をすべらせたひなみは、勢いよく海へ転落。
 服を着ているため、まともに泳げない。
 が、泳ぐどころの騒ぎではなかった。なにしろ、海面までもが触手で埋めつくされているのだ。
 獲物を見つけた触手が、ひなみに殺到する。
 すさまじい数である。まるで、アリにたかられた飴玉みたいだ。
「た、たすけ……わぷっ!」
 全身を覆いつくされてしまったひなみは、もう身動きもできず声も出せなかった。
 ついでに、描写もできなかった!


「にゃ、クラゲさぁーん! 遊ぼー♪」
 制服姿で走りだそうとした明日奈の腕を、明日羽がつかんだ。
「あなたはケガしてるんだから、無理しちゃ駄目だよ? 遊びたいなら私が遊んであげるから。ね?」
 そう言って、明日羽はつかんだ腕を引き寄せた。
「にゃっ!?」
 明日奈が倒れこみ、抱きとめられる。
「いい匂いだね? それに、きれいな髪……」
 地面に触れそうなほど長い髪を、明日羽が撫でた。
 髪と一緒に、うなじや耳も撫でている。
「ひぅ……っ」
 耳に触れるたび、明日奈の体がピクッと震えた。
「ふふっ。かわいい。……ねぇ、そのケガなおしてあげようか?」
「え? でも……」
「私、治すの得意なんだよ?」
 明日羽は、じっくりと明日奈の首筋を舐め上げた。
「ひゃぅ……っ」
「どう? 気持ちいいでしょ?」
「んんん……っ!」
「声出していいんだよ……?」
「んぅ……っ」


「……なにをしてるの?」
 粘液まみれの刀を手に提げて、アリカが問いかけた。
「見てわかりません? ケガの治療ですよ?」
「……わからないから訊いたのよ。それより佐渡乃さん、戦う気はないの? 貴女一人では難しいから、私たちを呼んだのでしょう? 全員が捕えられてしまったら、二の舞になるわよ?」
 言いながら、襲いかかってきた触手を斬り伏せるアリカ。
 明日羽たちが戯れていられたのは、彼女が盾になっていたからである。
「二の舞? 全然かまいませんよ? その場合もういちど依頼を出すだけですから」
「……それじゃ困るのよ。私たちが任務失敗したことになるじゃない」
「依頼主の私が成功って報告すれば、問題ありませんよね?」
「……たしかに、そうかもしれないけど」
「まぁせっかくなんですから、もうすこし堪能しません? 明日奈だって、まだ満足してないよねぇ……?」
 問いかける明日羽の手は、しきりに明日奈の太腿を撫でている。
「んん……」
 明日奈は斜めに首をうなずかせた。
 否定とも肯定とも取れるような答えだ。
 無論、明日羽は肯定と解釈した。


「ほら、見て? なんて素敵な光景なの……?」
 くるりと明日奈の後ろに回って、明日羽は囁くように言った。
 彼女たちの眼前では、無数の触手と六人の美女たちによる嬌宴が繰り広げられている。
 恵夢とステラは甲板に拘束されて、以下略!
 アニエスとパトリシアは宙吊りにされ以下略!
 ひなみは海に落ちたまま以下略!
 そしてシャーロットは、何かに目覚めたかのように自ら以下略!
 なにひとつ書けないが、とにかく凄まじい状況だった。
「……これはこれで、いろんな意味で凄惨な光景ね。見ているこっちが逆に興奮するわ……」
 陶然とした表情で呟くアリカは、完全に息を乱していた。
「ふふ……。いい趣味ですね?」
 明日羽の手が伸びて、アリカの肩に触れた。
 いつのまに背後へ回ったのか、その指は肩から鎖骨をなぞって、胸のふくらみへ降りていく。
「……見境なしね」
「見境? ありますよ?」
「……あいにくだけど、私はやられっぱなしでいられるタチじゃないの」
 背中を向けたまま、アリカは明日羽の腰を撫で上げた。
 明日羽が満足げに微笑む。
「話が早いですね? そういうのは嫌いじゃありませんよ……?」
 明日羽の手がゆっくりと下へ降りてゆき、おかえしとばかりにアリカの手が──
「にゅ、にゅぁぁ……!」
 なだれこむように始まった行為を目の前にして、明日奈はうろたえるしかなかった。




 三十分後、すべてを終えた撃退士たちはキャビンでグッタリしていた。
「みなさん、おつかれですね? イチゴのスムージーを用意したので、どうぞ」
 ひとり明日羽だけは、出発前のテンションのままだ。
「ああ……。最初からイヤな予感がしてたんだよ……」
 グラスを受け取りながら、アニエスが溜め息をついた。
「また騙された……」と嘆息するのは、恵夢。いったい彼女は何回義姉たちに騙されれば目が醒めるのだろう。敵を目の前にしてアイマスクを装着したらどうなるか、考えるまでもなかろうに。ビジュアル的にはGJですけどね。
「一番ひどい目に遭ったのはわたくしですわ。まさか味方に撃たれるなんて……」
 ステラも負けじと溜め息をついた。
 明日羽はニッコリ笑って、「わざとじゃありませんよ?」などと言ってのける。
 無論、だれも信じてない。
「私は満喫しましたわ。退治してしまったのがもったいないぐらい」
 記憶を反芻しているのか、シャーロットの目はトロンと潤んでいた。あるいは、まだ物足りないのかもしれない。
 そしてひなみは、頭をかかえながら「ぁううう……」と震えていた。よほどショックだったのだろう。
「海に落ちたのは災難だったね?」
 カケラも災難だったとは思ってないような笑顔で、明日羽はひなみの頭を撫でた。


「あの、明日羽さん……」
 パトリシアは急に立ち上がり、明日羽の腕をギュッとつかんだ。
「どうしたの?」
「なにか変なんです、私……。体が熱くて……どうしたらいいでしょうか」
「あら? じゃあ鎮めかたを教えてあげるね?」
 明日羽はトレーに乗っていた細長いスプーンを手に取ると、それを使って──
「え……!? こんなところで……!? ああ……ッ!?」
「もう何も隠すことなんかないでしょ?」
「そっ、そんな……! ぅくう……っ!」
 一分たらずでパトリシアは意識を失った。


「さすがねぇ、明日羽さん」
 アリカが艶っぽい声で言った。
 いつのまにか、呼びかたが変わっている。
「ご希望なら、もう一戦やってもいいんですよ? お姉様?」
 濡れたスプーンを舐めながら、明日羽が問いかけた。
「ここで? それとも場所を変える?」
「ここで何か問題あります?」
「ないわね」
 周囲を置き去りして話を進める痴女ふたり。
 しかし、そこへ飛び入り参戦が。
「よかったら、私も仲間に入れてくれません?」
 言いだしたのはシャーロットだ。
「あら……。ではわたくしもご奉仕させていただきますわ」
 ステラも乗り気だった。
 そうしてキャビンでは、キャッキャウフフなアレコレが繰り広げられるのであった。



依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 佐渡乃明日羽のお友達・紅 アリカ(jb1398)
 もふもふもふもふもふもふ・伊座並 明日奈(jb2281)
 撃退士・パトリシア・キャリントン(jb5454)
重体: −
面白かった!:18人

冷静なる識・
アニエス・ブランネージュ(ja8264)

大学部9年317組 女 インフィルトレイター
妖艶なる三変化!・
恵夢・S・インファネス(ja8446)

卒業 女 ルインズブレイド
佐渡乃明日羽のお友達・
紅 アリカ(jb1398)

大学部7年160組 女 ルインズブレイド
もふもふもふもふもふもふ・
伊座並 明日奈(jb2281)

大学部1年129組 女 ダアト
雷蜘蛛を払いしモノ・
桜庭 ひなみ(jb2471)

高等部2年1組 女 インフィルトレイター
愛って何?・
ステラ シアフィールド(jb3278)

大学部1年124組 女 陰陽師
撃退士・
パトリシア・キャリントン(jb5454)

大学部4年300組 女 ディバインナイト
撃退士・
シャーロット・ルブラン(jb5683)

大学部7年194組 女 アストラルヴァンガード