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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:2人
リプレイ完成日時:2013/06/18


みんなの思い出



オープニング

 昼休み。中等部の教室。
 ヒリュウのベリーベリーは机の上にちょこんと座り、抹茶アイスをかじっていた。
 主の新美新一は、アイスを食べさせながら満面の笑顔。
 一見すると女の子に見えるぐらいの顔だちだが、服装で男だとわかる。かなりの美少年だ。
「いーなー。あたしにも一口ちょうだい」
 隣の女子が、うらやましそうに言った。
「うん。いいよ」
 屈託なく答えて、新一はアイスを手渡そうとする。
「そうじゃなくて。あーん」
 顔を前に出して、口をあける少女。
「ええっ? しょうがないなぁ、もう」
 すこし顔を赤らめながら、新一はそっとアイスを差し出し──

「ちょっとちょっと! そういうのナシだから!」
 机の向かい側でメロンパンをかじっていた女子が、大声をあげた。
「はぁ? なんでよ。いいじゃん、べつに。ねぇ、新美君?」
「僕は別にいいんだけど……」
 おどおどしながら、新一は周囲を見回した。
 つい先刻まで仲良くランチタイムを楽しんでいたはずの女子十名ほどが、殺気をにじませた瞳で彼と隣の少女を睨みつけている。一触即発の状態だ。
「……わ、わかった。わかったから。アイスひとつで命とか落としたくないし」
 おとなしく諦めた少女を見て、新一はホッと息をついた。
 そして再び、なにごともなかったかのように和やかなランチタイムが再開される。

 ちなみに、グループの中で男子は新一だけだ。
 まわりはすべて女子。おそろしいモテっぷりである。
 それもこれも、彼がバハムートテイマーであることが大きい。
 もともと中性的な容貌の彼がヒリュウを召喚して和気藹々していると、ただそれだけで女子のハートをゲットしてしまうのだ。
 なんとも罪作りな中学生である。
 もっともその元凶は、ある先輩テイマーからのアドバイスによるものなのだが。

「そういえばさぁ。後輩にコレダーの子がいるんだけど、スキルの取りかたで迷ってるんだよね」
「え? なにそれ。コレダー?」
「ああ。アカシックレコーダーのこと。略してコレダー」
「ちょ、ちょっと待って。ふつうアカレコって言うでしょ?」
「伝わればいいじゃん。なんだって」
「伝わってなかったよ!?」
「まぁいいじゃん。とにかくコレダーのスキルなんだけどさぁ」
「なおす気ないのね……」

 そうしてアカシックコレダーのスキル談義がはじまり、やがて話は他のジョブにまで広がっていった。
 一見お気楽そうな学生たちとはいえ、彼女らは立派な撃退士。だれもがスキルに関しては一家言持っている。盛り上がらないはずがない。

「ねぇねぇ、もし好きなスキルをなんでも一つだけ身につけられるとしたら、何にする?」
「あたし『縮地』がほしいかも。便利よね、あれ」
「移動系なら『壁走り』のほうが良くない?」
「え? あれって何の役に立つの……?」
「役に立つじゃん! いろいろ!」
「コメディ的な意味で……?」
「ちがくて! だって壁を走れるんだよ? すごいじゃん。なんなら、いまここで見せてあげようか?」
「いや、何度も見たことあるし……」
「そういえば『読唇術』も、ほっとんど役に立たないよね。あたしの先輩、おぼえて損したって愚痴ってた」
「なんでニンジャをdisるのよ!」
「べつにdisってるわけじゃないけど……。なんかパッとしないよね、ニンジャって」
「なんてこと言うの! 見てよ、これを!」

 いきなり光纏して『ニンジャヒーロー』をブッぱなすクノイチ。
 たしかに、パッとしている。
 しているが……。

「そのスキルも、ぶっちゃけ役に立たないっていうか……。『タウント』のほうが良くない? みたいな……」
「ガーーーン!」

 崩れ落ちるニンジャ。
 その背中は、ヒーロー効果で無駄にキラキラしている。
 すると、あわれなクノイチの頭を新一が撫でた。

「僕はニンジャ強いと思うよ。昔は僕も憧れてたし」
「だ、だよね! 『縮地』より『壁走り』のほうが便利だよね!」
「くらべること自体が無意味っていうか不可能じゃないかなぁ……」
「じゃあ新一君は『縮地』と『壁走り』だったら、どっちを習得したい?」
「それは、まぁ……『縮地』だけど……」
「ガアアアアアアン!」

 ふたたび崩れ落ちるニンジャ。
 その背中は、いまだにヒーロー効果でキラキラしている。

「……わかった。僕が依頼を出して調べてくるよ」
「調べるって、なにを……?」
「『縮地』と『壁走り』の、どっちが人気あるか」
「そ、それは……」
「もしかすると残酷な結果になるかもしれないけれど……」
「やめてやめて! それで負けたら、あたしもう立ちなおれない!」
「そう? ……じゃあこうしよう。一番人気の高いスキルを調べてくるよ。それならどう?」
「あ、それなら面白いかも」
「よし、決まった。あとはまかせて!」

 力強く胸をたたく新一。
 見かけによらず行動力のある彼は、こうして依頼を提出することになったのであった。



リプレイ本文

「今日は集まっていただいて、ありがとうございます」
 顔をそろえた『先輩』たち八人に、新一はペコリと頭を下げた。
「ちょっと興味があるから来ちゃったけど、妙なこと考えるわねぇ、あんた」
 応じたのは、月丘結希(jb1914)
「いやあ話が盛り上がっちゃって、つい」
「依頼を出すのだって、ただじゃないってのに」
「うち、お金持ちなんです」
 さらっと言い切る新一。
 実際、セレブでなければこんな依頼は出せない。

「まぁ、たまには戦場を離れるのも悪くないねぇ」
 三毛猫ライムをつれて参加したのは九十九(ja1149)
 しかし、なぜか杖をついている。
「大丈夫ですか? ケガしてますけど」
「ちょっと任務で失敗してねぇ。……ま、しゃべるぐらい問題ないさ」
「無理しないでくださいね? ともかく座ってください。あ、ほかの皆さんも適当にイスを使ってくださいね? お茶とお菓子も用意してありますんで」

「お菓子なら、あたしも持ってきたよ」
 ユリア(jb2624)の手からドサッと置かれたのは、大量のスナック菓子やチョコレート。だがカレーパンが混じっているのは謎だ。
「あっ。私もお菓子持ってる!」
 負けじと両手いっぱいの菓子類を取り出したのは、高瀬里桜(ja0394)
 テーブルの上は、たちまちお菓子の山だ。
「……これは、壮観ですねぇ……」
 月乃宮恋音(jb1221)は、ぽかんと口をあけていた。
 おずおずと手をのばした彼女の横では、アイリス・レイバルド(jb1510)と鬼一凰賢(jb5988)が無表情にスナックを食べている。おいしくないものを無理に食べているかのような顔だが、本人たちはうまいと思っているのだろう。おそらく。



「よーし、あたしから始めちゃうよー?」
 結希が積極的に一番手を切った。
「『最強』のスキルと言っても、状況次第だよね。ひとつのスキルで全てに対応なんてできないし、だから撃退士はチームで動くわけよ。これはベテランも新人も同じ。ひとりでは限界があるってことね。以上を踏まえた上で、状況を選ばず安定して強いのは状態異常系スキルね」
「わかります。連続で状態異常を与えつづけて完封するんですよね」と、新一。
「そう。特に強力なのはスタンね。代表的なものだと『薙ぎ払い』かしら。アレ、凄く強いと思うのよ。スタン時間も簡単に強化できるみたいだし」
「それはよく耳にしますね。今日は阿修羅の人いませんけど」
「あと、石化も強力よ。あたしの場合Yin-Yang[Conversion] って技だけど」

「石化は私もよく使うのですワ!」
 話に入ってきたのは、結希と同じく陰陽師のミリオール=アステローザ(jb2746)だ。
「あれ便利だよねー」と、結希。
「石化一発で逆転とか、よくあるのですワぁー。でも私のおすすめは『吸魂符』なのですワ!」
「地味に便利だよね、あれも」
「そうなのですワ。すこし強化しただけで通常攻撃より強くなるし、射程もそこそこで、コストも軽くて負担かからないし……それに、取得するのがすごく簡単なんですワ! なにより、攻撃がそのまま回復になるのですから、それだけ長く戦い続けられるのですワっ! ……あれ? 私の言ってること、なにかおかしかったです?」
「なにもおかしくないよ。あたしも同意見。ただ、やっぱ地味だよねー」
「たしかに派手さはないのですが……えと、えと、便利なのですワっ!」
 そこでミリオールは新一のほうを見た。
 そして懐から札を取り出しつつ、問いかける。
「えとっ、あのっ……吸われてみます?」
 ぐにゃりと札の形が変わり、真っ黒な球体に変化した。
 ミリオールのオリジナル技、『吸引黒星(ブラックホールドレイン)』だ。
「え。ええ……っと」
 新一は答えに詰まった。
 無理もない。オリジナル技ということは、ダメージが予測できないのだ。

「こんなときこそ、アスヴァンの出番!」
 里桜がチョコをかじりつつ元気よく手をあげた。
「新一君、こっちに来て。『アウルの鎧』をかけてあげるから」
「は、はい」
 断れる空気ではなさそうだと察して、新一は言われるままに。
『鎧』をかけたあとで、里桜は言う。
「これでもダメージは受けるだろうけど、『ライトヒール』で回復してあげる。だから安心して!」
「……わかりました」
 ケガはヒールで治るけど食らったときは痛いよなぁと思いながらも、しかたなく新一はミリオールの前へ。もしかすると、アスヴァンの多くの人は無自覚的にSなのかもしれない。
「では、いきますワっ!」
 容赦なく放たれる黒い球。
 イスや机を巻きこみながら吹っ飛ぶ新一。
「お、思った以上に痛いんですけど……」
「いま治してあげる! それっ、ライトヒール!」
 里桜が駆け寄り、新一の傷を治癒させた。
 みごとに完全回復だ。
「おお……。さすがですね」
「アスヴァンと言えばライトヒールだからね! 激戦のときほど回復が重要なんだよ!」
「わかります。アスヴァンがいなかったせいで任務失敗なんていうのも聞きますよね」
「うんうん。……私ね、なんでアスヴァンなんだろうって思ったときあったの。ルインズブレイドや阿修羅みたいに戦えればよかったのにって。皆が前に出て傷ついてるのに、後ろで回復してるだけの自分が悔しかった。でも『君のおかげで助かった』って仲間に言われて……あぁ私ちゃんと役に立ってるんだって実感したとき、涙が出るくらい嬉しかった」
 チョコをにぎりしめながら、里桜は感情たっぷりに力説した。
「……だから今は、自信をもってアスヴァンでよかったって言えるよ! 私は皆を守るために撃退士に、アスヴァンになったの。最強のスキルって、ひとつじゃないと思う。皆が皆、自分の最強をぶつけるから、私達は天魔相手に戦っていけるんだよ! 私にとっては回復と支援が最強!」
 手の中ではチョコが溶けてベトベトになっていた。



「あのぉ……皆さんもおっしゃっておりますけれどぉ……」
 前髪で隠れるように目を伏せながら、恋音は静かに話しだした。
「えとぉ……。これは、私の基準なのですけれど……『強いスキル』イコール『使用頻度の高いスキル』だと思うのですよぉ……。そう考えれば、『ライトヒール』は確実に『強いスキル』かと……」
「いいこと言うね! そう、ライトヒール最強!」
 里桜が、うんうんとうなずいた。
「そこで……私なりに、レポートをまとめてみたのですよぉ……」
 恋音は人数分のプリントを出し、一枚ずつ配っていった。
 そこには、以下のようなことが書かれている。

1:戦闘でも日常生活でも使用可能なこと。→ 結果的に、役立つ機会が多くなる。
2:取得レベルが低いこと。→ いかに強力でも、扱える者が少なければ使用される機会も少ない。
3:高レベルになっても使えること。→ 低レベルのうちしか役に立たないのでは強くなった時点で使用されず、総合的に使用頻度が下がる。
 以上の条件から『遁甲の術』『冥魔認識』を候補としてあげる。
 加えて、ややレベル帯は高いものの『生命探知』を推奨。
 また、現状使い手は少ないものの『炎焼』『先読み』にも期待。

 読み終えた者たちの間から、「ほぉ……」という声が漏れた。
「この条件で言うなら、『索敵』もいいんじゃないかねぇ」
 九十九が言った。
「……少々要求レベルが高いかなぁと……」
「ああ、そうか。10ねぇ……」
「『生命探知』は7ですので……」
「ねぇねぇ、『ハイド&シーク』は?」
 たずねたのはユリアだ。手にはカレーパン。
「『遁甲の術』と、ほぼ同じですけれど……使用回数が下回るので……。『潜行』に関しては『明鏡止水』も候補だったのですけれどぉ……やはり使用回数がネックになり……」
「あ、そうか。回数が違うんだ。よく調べてあるね、これ」
「いえ……それほどでは……」
 恥ずかしそうに顔を赤らめる恋音。
 実際、このプリントは参加者全員から高い評価を得たようだ。



「……じゃ、次はうちの番かねぇ」
 九十九が口を開いた。膝の上にはライムが丸くなっている。
「うちはインフィルトレイターだけど、あえて忍軍の『空蝉』を推してみようかねぇ」
「空蝉……。僕は実戦で見たことないんですけど、強いんですか?」
 新一の問いに、九十九は肩をすくめて「さぁねぇ」と答えた。自分の言ったことなのに、まるで他人事だ。
「強いかどうかはわからんさ。範囲攻撃には対応不可で、魔装品を代償にするってデメリットもある。しかし攻撃を完全に回避できるのは便利だと思うねぇ。局面によっては切り札にも成り得るさぁね。そしてうまく使えば相手の切り札を空振りさせることもできるわけで、『空蝉』を持った忍軍は、いるだけで相手にプレッシャーを与え得るって寸法さね」
「たしかに、敵の立場から見ると厄介そうですね」
「知り合いの忍軍から話も聞いてきた。ちょっと流してみようかね」
 九十九がICレコーダーの再生スイッチを押した。

「空蝉ですか? 本当にヤバイときは結構助かりますね。ただ、スクールジャケットが……」
「このまえ使ったんだけど、範囲攻撃だったもんだからジャケットごと火炙りになったよ」
「東北で戦ったときは、一回の依頼でジャケットが三枚なくなりましたね」

「やけにスクールジャケットの話が……」
 新一の指摘に、九十九がうなずいた。
「空蝉の替え玉にはジャケットてのが忍軍の常識らしいねぇ。そのせいだかどうだか、このまえスクールジャケットが化けて出たってな噂も流れてたさね」
「なんだか、おそろしい話ですね……」
「ほかにも二、三ほど推してみたいスキルがあるんだけどな、そのまえに他の連中の話を聞くとしようかねぇ。俺ばかりしゃべるわけにもいかんさぁね」
「あ、はい。じゃあユリアさん、おねがいします」



「ん!? んぐ……っ! あたし?」
 カレーパンをのどに詰まらせ、あわててカレージュースを飲むユリア。
 どれだけカレーが好きなのかと思うが、さすがは第一次パン戦争でカレーパン派を勝利に導いた勇者だ。
「都合が悪ければ後にしますが……」
「……ん。大丈夫。カレーパンはいつでもあたしを待っててくれるから」
「そ、そうですか」
「うん。……で、えぇとね、あたしの『推しスキ』は、この『翼』だよ」
 ユリアの背中から、いかにも悪魔らしい真っ黒な翼が広がった。
「天魔の翼なら長い時間飛べるし、高度も出せるから、ほかのスキルでは真似できないアドバンテージが得られるよ。もしも敵が遠距離攻撃を持ってなくて空も飛べない場合、上空から攻撃すれば一方的に殲滅できるしね」
「翼は便利なのですワぁ〜」
 ミリオールが同意し、オーロラ状の翼をパタパタさせた。
 ユリアがうなずき、話をつづける。
「あとは、足元が不安定だったり移動しにくい場所での行動や、素早く上下移動したい場合にも便利だね。スムーズに動けるし、鉄骨だらけのビルの中を上がっていく、なんてこともできるし。『壁走り』と違って、場所の制限がほとんどないのは大きいよ。それに、見た目にも翼って格好いいよね。戦闘には直接関係ないけど、こういうのも大事にしたほうがいいと思うんだ」
 パチパチとミリオールが拍手した。
「翼かぁ……。でもそればかりは僕たち人間には習得不可能なんですよね……」
 天魔ふたりの翼を見つめる新一の目は、羨ましそうだった。



「皆、お勧め、色々。おー、違う方向、お勧め、する」
 独特の口調で話しだしたのは、凰賢。
『おー』の意味がわからなかった者たちが、首をかしげた。
 これは彼の一人称である。しかし凰賢は皆が首をひねっていることにも気付かずマイペースで話を進める。
「トーチ、トワイライト、その場に置いておける。陽動、可能」
「咆哮、気迫、超音波、一般人、ある程度誘導、可能。あと、知、ある敵、意識、向ける、できる」
「方位術、卜占、広域戦闘、重要。地形利用、戦況左右、大きい」
「悪魔の囁き、先読み、情報引き出す。読唇術、唇僅かな動き、見る。これ、わかりやすい奴、動揺、読み取れる」
「変化の術、囮。あと、敵、縁故、利用、可能」
 かなりの解読スキルが要求される話しかただった。
 ミリオールとユリアは、異世界の言語に触れたような顔になっている。
 しかし恋音はみごとに解読していた。
 しかも解読しただけでなく、凰賢の真意を瞬時に見抜いたのだ。
「なるほどぉ……。いまのはすべて、コストがゼロのスキルですねぇ……」
「そう、月乃宮、頭良い」
「いえ……たまたま、今日のために予習していただけで……」
「意味無いスキル、無い。全て使いよう、戦局、変える、できる。スキル、活きる、死ぬ、全部、使い手次第」
 そう言って、自分のターンは終わったとばかりにお茶をすする凰賢。
 どうにか彼の狙いは新一に伝わったが、コストゼロのスキルを推奨する理由についての説明はなかった。



「では最後に私の番だが……この場の全員に、先人の名言を聞いてもらいたい」
 そう言ってアイリスは立ち上がり、詩を吟じるように朗々と語りだした。

 つよいスキル
 よわいスキル
 そんなの、ひとのかって
 ほんとうにつよいブレイカーなら
 すきなスキルで
 かてるように、がんばるべき

「というわけなので、私は最強ではなく私個人のお勧めスキルを紹介しよう。そのスキルとは『コメット』だ。……が正直、範囲内を無差別に打ち据えるゆえ使いにくい。たとえば、こんな風に」
 アイリスは機械剣を抜き放ち、天高く突き上げると、いきなりコメットを発動した。
 降りそそぐ無数の流星が机やイスを吹っ飛ばし、床に突き刺さる。
 無論、アイリス自身も傷だらけだ。
「な……っ!? レイバルドさん、なにを……!?」
 新一が珍しく大声をあげた。
 しかし、発動してしまった魔法を止めることはできない。
 結局血まみれになったアイリスは、なにごともなかったかのように語りだした。
「このように、迂闊に使うと痛い目にあう。敵味方識別などという便利な機能はない。常にタイミングを意識する必要がある。力に溺れず、それを律する心構えが必要だ。だが使いにくいからこそ、使いこなしたときには大きな力へ変わる。初めから最強のスキルなどなく、使い手とスキルが共に高めあい最強へと昇華する……それが理想の関係ではないかな」
「アイリスちゃん! ヒール! ヒール!」
 あわてて駆け寄ろうとした里桜だが、アイリスもアスヴァンだったことに気付き、困惑しながら声をあげた。
「……そうか。回復せんとな」
 どこまでも無表情を貫くアイリスであった。




「最初からわかっていたことですが、やっぱり最強のスキルなんてないんですね」
 ひととおり話が終わったところで、結論するように新一が言った。
「ちがうよ。すべてのスキルが最強のスキルなの!」と、里桜。
「じゃあ僕にとって最強のスキルは『和気藹々』ですね」
 ヒリュウとモフモフする新一。
 先輩テイマーから教わったように、事実それは最強と呼ぶに値するスキルなのであった。


依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: 大祭神乳神様・月乃宮 恋音(jb1221)
 ファズラに新たな道を示す・ミリオール=アステローザ(jb2746)
重体: −
面白かった!:8人

『三界』討伐紫・
高瀬 里桜(ja0394)

大学部4年1組 女 アストラルヴァンガード
万里を翔る音色・
九十九(ja1149)

大学部2年129組 男 インフィルトレイター
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
深淵を開くもの・
アイリス・レイバルド(jb1510)

大学部4年147組 女 アストラルヴァンガード
こんな事もあろうかと・
月丘 結希(jb1914)

高等部3年10組 女 陰陽師
カレーパンマイスター・
ユリア(jb2624)

大学部5年165組 女 ナイトウォーカー
ファズラに新たな道を示す・
ミリオール=アステローザ(jb2746)

大学部3年148組 女 陰陽師
撃退士・
鬼一 凰賢(jb5988)

大学部4年91組 男 アカシックレコーダー:タイプB