今年も残り一ヶ月。
本格的な冬が迫る中、屋内プールに24人の選手が集まった。
観客席には、メダルの行方を見届けようとする者からヒマな野次馬まで大勢が詰めかけている。
「さて始めるよ! ドキッ、撃退士だらけの水上尻相撲! ポロリもあるよ♪」
左手に酒瓶、右手にマイクを握りながらノヴェラが開幕宣言した。
「第1試合! 選手入場! ちなみに組み合わせは僕が公正にクジで決めたよ♪」
プールサイドから、浮き橋を渡って選手が入場した。
闘いの舞台は直径5mの丸いステージ。大小の波が寄せて、かなり揺れている。
「なるほど、これはバランス感覚の鍛錬になりますわね。さすが先生ですわ」
まじめな顔で言うのは、斉凛(
ja6571)
衣装はいつものメイド服だ。
「大丈夫? 落ちたら台無しだよ?」
ノヴェラが訊ねた。
「落ちなければ良いのですわ。わたくしは戦場の薔薇になるのです」
さらっと答える凜。
だが相手は強敵ぞろいだ。
「ようするに相撲でしょ? さいきょーのあたいが負けるわけないわね!」
豪語するのは雪室チルル(
ja0220)
だが能力値の合計は全参加者中1、2を争う実力者だ。口だけではない。
フリフリの青い水着もキュート♪
「あ〜……バラエティで見たコトあるナ、コレ」
なにやらエロカッコイイ水着で周囲を見回すのは、狗月暁良(
ja8545)
ヒップとバストのサイズなら、予選突破確実だ。
「らーっはっはっは! この勝負、俺様がもらったー!」
高笑いするラファル A ユーティライネン(
jb4620)は、完全に普段着だった。
凜と同じく落ちる気はない。というか全身の8割が機械のラファルは、水没厳禁なのだ。とはいえ一応、落ちたとき用の対策はしてある。弱気!
「ええと、最初に質問があります」
水無瀬文歌(
jb7507)が手をあげた。
蒼を基調としたアイドル系ビキニがまぶしい。
「質問? いいよ」
「ルールだと、攻撃スキルと透過と飛行、水上歩行や召喚が禁止ですけど……つまりそれ以外のスキルはOKですよね?」
「うん。強化、移動、防御、回復とかは使っていいよ」
「歌やダンスも?」
「もちろん。ほかに質問がなければ始めるよ」
ピーッという笛で、試合が始まった。
水上の舞台で、5人の女子が睨みあう。
文歌は自前の歌と踊りで、波とリズムをあわせる作戦。
まず先手を打ったのは凜だ。
「提案がありますわ。どなたかわたくしと手を組んで、最初に強敵を排除しません?」
「はい、乗ります! 雪室さんを倒すんですね?」
文歌が賛同した。
「いいえ、まず撃滅すべきは……あの方ですわ!」
凜が指差したのは暁良だった。
「なんだァ? 恨みを買った覚えはナイぜぇ?」
「いいえ! その胸の存在は許せませんわ! 巨乳死すべし!」
「まァ、確かにスタイルなら負ける気はシねェけどナ」
「その口を今すぐ黙らせて差し上げます!」
闘気解放して襲いかかる凜。
「イイぜ、かかっテこい。正面から叩きツブしてヤル。勝つノは俺だ」
暁良も同じく闘気解放。
「私も手を……いえ、お尻を貸します!」
文歌がダンサブルな動きで凜と一緒に突っ込んだ。
安産型のお尻に、スラリと伸びた美脚がキラリ。
そして繰り出される、メイドとアイドルのWヒップアターック!
「ケッ、群れルのは好きじゃねェな」
暁良はクールに臀部を突き出して迎撃体勢をとった。
そのまま3人の尻が激しく衝突!
するかに見えた直前!
「おりゃあああああ!」
チルルが思いっきり足場を揺らし始めた。
しかも波に合わせている。体格では勝ち目ないからという、ずのうさくせんだ!
「そンな作戦まるッとお見通しだぜェー」
暁良は揺れにあわせて宙高く跳び上がり、チルルの頭上からヒップドロップ!
「こっちこそお見通しよ! ジャンピング・カウンター・ヒーーーップ!」
空中で暁良とチルルの尻が正面衝突……否、背面衝突した。
あまりの衝撃に、両者は激しく吹っ飛んでリングアウト!
どばしゃあああん!
真っ赤に腫れ上がった尻をさらしつつ、ふたりともプールに浮かぶのだった。
「忌まわしい乳は退場しましたわ。次はあなたを排除します」
凜がラファルを指差した。
「ようやく俺の出番かよ。忘れられてんのかと思ったぜ」
「あなたのような無法者を忘れるはずがありませんわ……覚悟!」
凜は身軽な動きで一気に間合いを詰めた。
そして玉繭を使いつつ、ラファルの下から尻を突き上げる。こうすることで、重い相手のバランスを崩せるのだ。
が、ラファルはこれを寸前で回避!
間髪入れず『六神分離合体』起動!
分裂した義体が凜と文歌に襲いかかる!
ばしゃーーん!
攻撃をスカされてよろけていた凜は、なにもできず落水。
一方、文歌はギリギリでドーマンセーマンを発動。間一髪でラファルを退けた。
「やるじゃねーか。でも発動中は、おまえも俺に近付けないぜ?」
「わかってます。これが切れた瞬間が勝負です」
その後、ラファルと文歌の壮絶な一騎打ちが始まった。
しかしラファルの回避力が凄まじく、文歌の尻は空を切るばかり。手足と違って尻を当てるのは難しい!
シールドリポストや『不動』を駆使して戦うも、回数切れに追い込まれた文歌はあえなく沈没。
第1試合勝者はラファル!
ステージが洗浄されて、次の試合の選手が入場してきた。
一人目は学園屈指の奇人! ラブリーパンダちゃん下妻笹緒(
ja0544)
二人目は、いつからか奇人になってしまった男! 全身ラッコの鳳静矢(
ja3856)
三人目には、謎のハマグリで女体化した長田・E・勇太(
jb9116)
四人目! 変化の術で美少女化した陽波透次(
ja0280)
変人ばかりだ!
よく見れば、どの試合も変人ばかりだけどな!
「私どうしてこんな競技に……」
華子=マーヴェリック(
jc0898)は、うつろな目で浮き橋を渡っていた。
対戦相手が変人ぞろいで茫然自失……というわけではない。
最近盛り上がってるKOBにチャレンジ! と思ってエントリーしたところ、まちがって予定と異なる競技に参加してしまったのだ。おかげでラーメン中毒の恋人ととはすれちがい。それでもエントリーした以上は最低限がんばろうと、考えなおす華子なのであった。
「終わったら、ごほうびにラーメンおごってもらっちゃお〜っと♪」
すでにイベント終了後のことを想像して、華子は微笑んだ。
最初から勝つ気はなし、メダルにも興味はない。
ただしポロリだけは絶対おことわりなので、水着が破れたりしないよう何重にも重ね着している。
おかげで胸が締めつけられ、歩くだけでも呼吸困難に。
「わわ、ゆゆ揺れる〜!?」
バッシャーン!
浮き橋を渡る途中、華子は意識を失って水面に転落した。
まさかの、試合開始前敗退!
というわけで、この試合は4人で行われることになった。
繰り返すけど、相手が変態ばかりで戦意喪失したわけじゃないよ!
「いきなり一名脱落だけど、質問とかある?」
ノヴェラが問いかけた。
すかさず笹緒が発言する。
「皆よく聞け。尻とは他者を攻撃するための道具か? 否、意味もなく人を傷つける尻はただの駄ケツだ。対戦相手をも魅了し、観客をも惹きつける尻こそが真の尻であり正尻!」
意味不明な主張に、観客がざわめいた。
だが鍛えられた学園生にとって、笹緒の演説など日常茶飯事!
「キュゥ!」
ラッコが鳴いた。
その手にはホワイトボードが握られ、『シズラッコ、発泡スチロールの大地に立つ!』と書かれている。
「質問がなければ始めるよ。みんな位置について」
ノヴェラの指示で、4人はそれぞれ均等な距離になるようステージの端に立った。
冷静に見ると、パンダとラッコと女装男子2名というイカれた構図だ。
勇太は『知りあいに見られたくない』という理由での女装というか女体化だが、透次は特に理由なし。単なる趣味だ。
そんな久遠ヶ原を象徴するかのごとき舞台の中、開始のホイッスルが鳴った。
まずは透次が冷静に『壁走り』を発動。言うまでもないが、この競技では極悪級に強いスキルである。
しかも透次の回避力は、脅威の1033! おまけにプレイングは一分の隙もない超ガチ戦闘モード! おまえは人類の存亡をかけた最終戦争にでも行くつもりかというレベルでヤバい! 270本ぐらいシナリオ書いてきたけど、こんなガチなプレイングシート初めて見たよ!
だが、ここは久遠ヶ原。まじめに戦えば勝てるというものではない。
「キュゥ♪」
静矢はプラカードを振りまわしつつ、ステージ中央に陣取った。
これで容易には落下しないが、狙われやすくなるのは確かだ。
そこへ、パンダちゃんの軽やかなヒップが飛んでくる。
空中で『K』の尻文字を描くことで直線的かつ情熱的な一撃を実現した、笹緒独自の攻撃スキルだ。……うん、言ってることがよくわからん!
その一撃をラッコちゃんは冷静に回避。バランスを崩したパンダちゃんのお尻に、自らの尻をブチ当てる。
プラカードには『これぞ後の先!』という文字。
だが、そう簡単に仕留められる相手ではない。なにしろ体重140kg。静矢の倍近くある。この巨尻を動かすのは一苦労だ。
そんな哺乳類ふたりめがけて、勇太が一気に間合いを詰めた。
『逆風を行く者』を応用した、光速ヒップアタックだ。
「鉄山靠ネ。昔、軍の教官に教えてもらったことがあるヨ」
まとめて吹き飛ばされる、パンダとラッコ。
だがステージぎりぎりで踏みとどまる。
パンダちゃんのお尻が、幻惑の円である『O』を描き、そびえる二つの山である『B』を描いた。三位一体の尻文字が闘いを制する!
などと言ってる間に、透次が波にあわせてステージを揺らした。
パンダちゃんはコロコロ転がって落水!
ラッコちゃんは全力跳躍で落下を防ぐも、着地点に勇太の尻鉄山が炸裂!
その攻撃の隙をついて透次が尻で突撃し、ラクラクと突き落としたのであった。
「第2回戦、勝者は陽波君!」
ノヴェラのアナウンスが響いた。
「だれか嘘だと言ってくれ……この組み合わせはひどすぎる……」
第3試合。対戦相手を前に、浪風悠人(
ja3452)はビキニパンツ一丁で頭をかかえていた。
「ボクだって…こんな闘い…したく…ない…」
応じる浪風威鈴(
ja8371)は、黒の布地にワンポイントで薔薇の柄が入った水着。
弓をひいたり銃を使うこともあって、引き締まった桃尻である。
まさか学園でも有名なおしどり夫婦が、互いの尻で戦うハメになろうとはwwwwなんと残酷な運命wwwwwwまさに不憫wwwwww
それだけではない。
「私は息子の雄姿を見に来ただけなのに……」
動揺してるのは、鳴上公子(
jc1031)
彼女は悠人の実母(ストーカー)、まさか息子と戦うとは予想もしてなかった。
実年齢50オーバーのババ……貴婦人なのだが、天魔ハーフかつアウルパワーで二十歳ほどにしか見えない。そのため余裕のビキニ着用である。
そして4人目は九鬼龍磨(
jb8028)
謎ハマグリで女体化した彼は、ばいんばいんのヒマワリ娘でエントリー。
黙ってれば良いのに、「にっはっはー、クッキーちゃんだよー!」などと言うから正体丸バレだ。
きわどいブラジル水着は破壊力抜群! ポロリ不可避!
「この組み合わせには悪意を感じるわ。ほんまにクジで決めたんかい」
疑いの目を向けるのは、ゼロ=シュバイツァー(
jb7501)
「もちろん。偶然って怖いね」
ノヴェラはニッコリ微笑んだ。
こんな偶然あるわけねーだろと誰もが思うが、指摘しても意味がない。
「まぁええわ。俺は重体中の身やし、好きにやらせてもらう。どうせ女子が優勝するんやろ」
自分で言うとおり、ゼロは重体での参戦だった。
それでも回避力300以上。タダモノではない。
「そうですね……俺も腹をくくりました! 相手が誰だろうと本気で行きます!」
悠人は気を引き締めつつ、尻も引き締めた。
鍛えられた大臀筋が、キリッと輝く。
「ああ悠人……立派に育って……」
涙ぐむ公子だが、ステージにデジカメは持ち込めなかったので自らの網膜へ息子のケツを焼きつけるのに必死だ。
50過ぎの貴腐人なので、この競技はリアルタイムでTV視聴していた。趣旨は理解している。さすがに自らがポロリ担当になる気はなかったが。
「お尻…で戦うの…恥ずかしい…けど…頑張る」
威鈴も覚悟を決めたようだ。
メダルをめぐって、家族友人同士の仁義なき戦いが始まる!
まずは開始のホイッスル。
と同時に、ゼロがフィーバービートで、龍磨がシバルリー&玉繭で能力値を底上げした。
その間に悠人はステージ中央を占拠。
威鈴も状況を見て、有利な場所へ移動する。
ただ公子だけは何もせず場を見守っていた。というか悠人を凝視していた。
「な、なにか異様なオーラを感じる……」
あまりの熱視線に、鳥肌を立てる悠人。
だが今日の彼に恥じらいはない!
舞台中央に陣取った悠人は、尻を突き出して低く身構える。
「なぁクッキーちゃん、まずはゆーはんを片付けようや。俺は重体の身やし、最後にサシで戦っても勝てるやろ?」
ゼロが悪党っぽい笑顔で提案した。
「それはいいね〜。いっくよ〜♪」
そう言うと、龍磨は可愛らしいポーズで全身から友達汁を噴き出した。
でろでろテカテカ水着少女の姿に、観客からは拍手喝采だ。
「なんだかアウルの調整がうまくいかないよ〜」
もじもじしながら、両腕で胸をおさえ顔を赤らめる龍磨。
無論わざとだ。勝利のために男の矜持を捨てて愛嬌を振りまく作戦!……って意味あるのか、これ!
「意味不明な作戦やな。俺の策を見るとええわ」
ゼロが『風の揺り籠』を悠人に使った。
ふわりと悠人の体が浮き上がる。
「飛行は反則で即退場やったな? ってことでお疲れさん♪」
ゲス顔で微笑むゼロ。
だが──
「それは飛行じゃなくて浮遊だからOK♪」
というのがノヴェラの判断だった。
「はぁ!? そんなら自分に使えば……」
直後、動揺するゼロの横から威鈴が突っ込んできて彼を場外へ吹っ飛ばした。
「悠を…攻撃する者は…許さない…」
理不尽なことを言う威鈴。
だが今のはゼロの手口が卑劣すぎた! これ認めたら相手なにもできないよ!
「ええと……なんだか3対1になってるよ〜!?」
包囲された状況に気付いて、龍磨は仔猫みたいに震えだした。
そこへ威鈴と公子が襲いかかる。
鮮やかなツープラトンヒップアタックを前に、龍磨は慌てて『小天使の翼』を発動!
ピピーッ!
どぼーん!
反則の笛が鳴り、威鈴と公子は尻からプールにダイブ!
まさか飛行で回避されるとは思わず、攻撃の勢いそのままに落ちてしまったのだ。
「え……? 終わり……?」
ステージ中央で、出番のなかった尻を緩ませ立ちつくす悠人。
家族を犠牲にしての予選突破おめでとう!
「次のゲームを始めるよ。選手入場ぉ♪」
美男美女の競演に、ノヴェラは上機嫌だった。
今回も5人の選手が、浮き橋で戦場へ向かう。
「この競技を考えた人は絶対に変態ですね」
無表情で呟く雫(
ja1894)は、普段どおりの戦闘服だ。
肌の露出を嫌う彼女は、基本的に水着など着ない。
「しっかし、ひどい競技だね。さすが噂に違わぬ変人魔境の久遠ヶ原」
あきれたように言いながらも、鬼塚刀夜(
jc2355)は爆笑していた。
いつもどおり般若の面をかぶり、身につけているのは競泳水着。スタイルは悪くない。というか大変よろしい。
「実際ひでえ競技だが、やるからには勝つぜ」
真剣な顔で言う向坂玲治(
ja6214)は、みごとな女装ぶりだ。
胸部や臀部に肉襦袢を盛り、女子用スク水を着用している。別に趣味ではない。たぶん。
「大きい人…多い…アンド…男の人…いる…これ…勝負…なる…?」
ベアトリーチェ・ヴォルピ(
jb9382)は、クラシックなデザインのワンピース水着だった。
たしかにこの競技は色々と大きいほうが有利だが、小柄な体格を活かした戦いかたもある。
「うぅ……何故こんなことに……」
恥ずかしそうにしながら、ザジテン・カロナール(
jc0759)は腕で胸元を隠していた。
今日は義姉と恩人の勇姿を撮影に来ただけなのだが、なぜか選手登録されていたのだ。
それでも参加した以上は戦うしかないということで、恩人である恋音から謎の蛤を借りて女体化している。さらに『白スク水+虹色パレオ+ハイビスカスの髪飾り』という本気衣装。胸も尻も小さいが士気は十分だ。
「じゃあみんな正々堂々と戦ってね。ゲームスタート♪」
ノヴェラの笛がプールにこだました。
「覚悟完了! 行きます!」
開始寸前まで赤くなっていたザジテンだが、試合が始まれば一転。華麗にパレオを脱ぎ捨てて光纏する。
「まずはこれですね」
雫は定石通りに闘気解放。
本職の阿修羅でないにもかかわらず、回避力は一番だ。
「まぁとりあえず、こいつだな」
玲治も開始と同時に『オーラ』を発動。
そのまま舞台中央に走る。
「優勝…めざして…牛乳…飲んで…ガンバルゾー…」
ベアトリーチェは牛乳瓶を取り出すと、腰に手を当てて一気飲みした。
すこしでも尻や胸が成長すれば……という願いをこめた、じつに戦略的な作戦だ!
「始まったか。だれでも遠慮せず来るといい。文字通り胸と、ついでに尻も貸すよ」
キリッと言い放ちつつ、刀夜は日本刀を抜いて『無幻』で構えた。
「では遠慮なく」
雫が縮地で突っ込んだ。
貧相な尻だが攻撃力は十分だ。
「相手にとって不足なし!」
刀夜の立派な尻が雫を受け止めた。
ただし正面からは受けず、絶妙な力加減で横へ受け流す。
雫の尻が滑り、バランスが崩れた。
そこへ刀夜の追撃!
雫はこれを横に転がって回避!
「いまです!」
この場で強敵を仕留めておこうと、ザジテンが雫を狙ってきた。
が、雫の背が極端に低いため、うまく攻撃が当たらない。
「背が低いことが役に立つとは……あまり嬉しくありませんね」
体勢を立てなおしつつ、雫は無表情で呟いた。
しかし息つく暇もなく、ベアトリーチェの攻撃!
「さりげなく…共闘…漁夫の利…」
「なぜ私ばかり……」
ぼやきながらも、雫はどうにかベアトリーチェの尻に耐えた。
こういう多人数戦では強い人が狙われるに決まってる。最後に雫とタイマンとか誰もやりたくないだろう。
「ならばいっそ、こうしましょう」
雫は尻相撲を放棄して床に寝転がった。
たしかにこれを尻で攻撃するのは難しい。
しかしベアトリーチェは背の低さを利用して攻撃。
さらにザジテンのヒット&アウェイによる一撃が入り、とどめに刀夜が狙いすましてヒップアタック!
「そこまで警戒されるほどですかねぇ……」
どぼーん!
抗議しながら、雫はステージを滑って落水した。
「一人…排除…次…」
なんとなく共闘の空気を作りつつ、ベアトリーチェは玲治に向かった。
「3対1かよ、おい」
そう言いつつも、玲治は不敵に微笑んだ。
そして尻の肉襦袢を『盾』と言い張り、シールド発動!
正面からベアトリーチェの尻を受け止め、逆に押し返した。
だばーん!
なんと一撃! ベアトリーチェの尻が軽すぎた! 牛乳に相談だ!
そして、このあとの玲治は圧倒的だった。
ザジテンの尻をパリィで受け流し、刀夜の不意討ちおっぱい攻撃も『不動』で耐え、舞台中央から一歩も動かない。
安定した足腰から放たれる尻撃は強烈で、あっさりとザジテンを返り討ちに。
刀夜は善戦したものの、最終的に『不動』を崩すことができず敗れ去った。
「思ったんだけどよ、この競技で不動って無敵じゃね?」
淡々と感想を述べる玲治。
実際そのとおりだ! 禁止すべきだった! ノヴェラが悪いんだ!
「さて第5試合! 選手入場♪」
言いながら、ノヴェラは上着を脱いでステージに出てきた。
教師のくせにスク水着用。しかも似合ってる。
「おぉ……? 先生も出場ですかぁ……?」
と、月乃宮恋音(
jb1221)
「うん、人数調整ね」
「これは楽しみですね! 今回こそカッコイイ姿を見せますよ!」
袋井雅人(
jb1469)は、女装も女体化も封印して見苦しい男のまま褌一丁で登場。
「むむ……これは厳しい戦いになりそうなの、です」
パレオ付き水着に猫耳パーカーという格好で、華桜りりか(
jb6883)は身震いした。
恋音と雅人の実力は承知済み。ノヴェラは腐っても教師だ。実力は疑いない。
そして5人目の選手は、恵夢・S・インファネス(
ja8446)
目隠し状の仮面をかぶり、首輪を装備。水着は今にもポロリそうな紐ビキニだ。見た目のエロさでは完全優勝。悪魔モード『ルュエム』となった彼女は本気だ!
「今回は明日羽様の命令で参加しました。『ひみつのとっくん』の成果を……あふぅ♪」
なにやら妖しい声を出す恵夢。
明日羽の玩具として徹底的にトレーニング(拉致監禁調教)を受けた彼女は、万全の仕上がりだ。
「いいでしょう! 私もプロのAV男優として華麗な腰技を見せますよ!」
褌姿で張り切る雅人。
こんな変態大盛りつゆだくの試合に混じってしまった華桜りりか、マジ災難。
ピーッ♪
試合開始の笛が鳴った。
と同時に、恋音は後ろを向いて『薬』を服用!
15mの尻が全員を弾き飛ばし、ステージを粉砕して恋音も落水した。
ピピーッ!
当然反則である。
「ステージを壊すのはダメって言ったよね?」
ノヴェラがズブ濡れで注意した。
「うぅん……どうにか耐えてくれると、思ったのですけれどぉ……」
「コレただの発泡スチロールだよ!?」
ミサイル投げに続いて残念な結果になった恋音だが、攻める姿勢は評価したい。でもルールは守ろうぜ!
というわけで舞台を作りなおし、4名でゲーム再開。
「恋音の分も頑張りますよ! 見ててください!」
雅人は躊躇なく恵夢に向かっていった。
どう見たって彼女の臀部が一番である。AV男優として責めない手はない!
しかし恵夢はドレスミストで回避。
体勢を崩した雅人に、ノヴェラが横からヒップアターック!
「当たっておくほうが幸せだよ、袋井君♪」
「せっかくのお尻ですが、食らうわけにはいきません! 当たったほうが幸せなのは確かですけどね!」
今回の雅人は本気だった。しかも忍軍なので回避力は高い。
そこへ恵夢の巨尻が突っ込んでくる。
ステージの端っこで、三つ巴の戦いが始まった。
「この場は様子をうかがうのです」
りりかは堅実な勝利を狙って、敵の動きを観察する作戦だ。
回避力もなかなか高く、うまくやれば優勝も夢ではない。
「そんな所で見てないで、華桜君も戦おうよ♪」
ノヴェラが後ろ向きに突っ込んできた。
「う……そう甘くはないの、ですね……っ」
りりかは冷静に敵の動きを見て、尻で攻撃を受け流した。
絶妙な力加減で己の尻をコントロールしつつ、バランスを崩したノヴェラの尻を押す!
「あれ……!?」
そのままノヴェラはドボン!
どう考えても酔っ払いの勝てる競技じゃなかった!
かたや、恵夢と雅人は互いのプライドを賭けたケッ闘に突入していた。
一方は『ご主人様への愛のため』
一方は『AV男優の誇りをかけて』
どちらもトチ狂ってるが、本人たちは真剣だ。
「どうですか、私の腰使いは! ガンガンお尻を責めちゃいますよ!」
「そ、そんな激しくしたら……漏れちゃううう!」
絶叫しながら謎の液体(友達汁)をまきちらす恵夢。
その汁で足をすべらせ、雅人は転倒。
「明日羽様のために、えむこは勝つ! AVに男など無用!」
恵夢の尻が雅人を突き飛ばした。
なすすべもなく、雅人はツルーーッと床を滑ってゆく。
この闘いは恵夢の勝利!
と思われたが、雅人はステージ側面に壁走りで張りついて転落を回避!
「すきあり、ですよ……っ!」
雅人を葬ったと思って油断した恵夢に、りりかが突撃した。
「はうっ!?」
ひみつ特訓を受けたとはいえ、恵夢の回避力は高くない。
りりかのケツ圧に押され、ステージ端までつんのめる恵夢。
「もはやこれまで……るゅにばーーす!」
土俵際で踏みとどまった恵夢は全力大跳躍!
超重量級のヒップドロップで、ステージが大きく傾いた。
恵夢はそのまま落水。
りりかも打つ手がなく、汁まみれのステージを転げ落ちた。
「見ましたか恋音! 私が予選突破ですよ!」
壁走りで悠々と難を逃れた雅人、決勝進出!
「さて決勝戦を始めるよ。予選を勝ち抜いた5人の選手の入場だー♪」
ノヴェラはノリノリだが、観客の反応はイマイチだった。
というのも、5人のうち4人が男子なのだ。
しかも唯一残った女子はラファル! 残念にもほどがある! これがバラエティ番組だったらチャンネル替えてるよ!
「待てコラ! チャンネルはそのままにしとけ! 俺様の優勝する場面を見逃したら損するぜー!」
地の文に抗議しつつ、ラファルは優勝宣言を言い放った。
「優勝するのは私です! 決勝戦でも激しい腰使いをごらんに入れますよ!」
対抗宣言するのは、ムサ苦しい褌一丁の雅人。
せめて女装しろよ! 視聴率考えろよ!
「なにか好き勝手なことを言ってる人がいますが……優勝するのは俺なので! 散っていった家族のためにも! 負けられないんです!」
大声を絞り上げる悠人は、なぜか半泣きだった。
しかも、これまたムサ苦しいビキニパンツ。
せめて女装(ry
「ははっ、ここまで来たら優勝したようなもんだな」
玲治も負けじとライバルたちを煽る方向だ。
予選での鉄壁ぶりはみごとだったが、決勝でも通じるのか?
「まぁ誰が優勝するかは、すぐにわかります。始めてください、先生」
無駄な煽りあいには乗らず、透次は美少女化しつつ紳士的に告げた。
実際この競技は、長くても2〜3分で終わる。
「オッケー、始めよう。みんな位置について。決勝戦スタート♪」
最後の戦いが始まった。
まずは当然のように、透次、雅人、ラファルの忍軍3人が『壁走り』を起動。
玲治は『オーラ』を使いつつ、予選同様ステージ中央を狙う。
だが、その場所には既に悠人が陣取っていた。
「だれが相手だろうと、この場所は譲りません!」
引き締まった尻を突き出して重心低く構えつつ、悠人はケッ闘の姿勢をとった。
「いいぜ、どちらの尻が上か……勝負だ!」
玲治も同じく重心を落とし、後ろ向きに身構える。
リング中央をめぐっての、激しいバトルが始まった。
防御力で上回るディバイン玲治に対して、回避力で勝負するルインズ悠人。
どちらも防御スキルを惜しみなく使い、一歩も引かない。撃退士として鍛えてきた足腰の強靱さが試される。
やってることが尻相撲というのは少々アレだが、いまさら言っても仕方ない。
そのとき、大きい波ととともにステージが傾いた。
透次が波にあわせて揺らしたのだ。
一般人なら即転落、撃退士でも立っていられないほどの激しい揺れである。
玲治と悠人は、すかさず『不動』を発動。
だが壁走り発動中の忍軍たちは涼しい顔だ。
「いい作戦ですね! 私も協力しますよ!」
そう言うと、雅人は床に向かって腰を振りだした。
AV出演で培われた激しい腰使いが、ステージをさらに大きく揺らす。
「ちぃ……っ!」
不動の回数が切れた瞬間、玲治は倒れた。
「この競技、忍軍が優遇されすぎでは……!?」
悠人は予選で不動を使わなかった(というか尻を引き締めてただけだった)ぶんだけ耐えたものの、結果は同じだ。
実際『不動』は反則級に強いが、『壁走り』は反則そのものと言って良いほど強い。何故これを使用可にしたんだ、ノヴェラ先生!(責任回避!
結局、垂直に近いほどまで揺らされたステージにはしがみつくこともできず、玲治と悠人は仲良くドボン!
どちらの尻が上かを決める勝負は次回に持ち越されることとなった。(次回!?
「よーし、あとは最強の忍者を決めるだけだな! 優勝はもらったぜー!」
揺れの収まったステージ上で、ラファルは豪語した。
おたがい忍軍なので足場を揺らしても意味がないため、透次も作戦を切り替えて様子をうかがう。
「ラファルさん、ここはおたがい『ナイトウォーカーとして』手を組みませんか? 正直なところ私ひとりであの回避力に勝てる気がしません!」
雅人が堂々と結託を打診した。
「いいぜ。知らねー仲じゃねーしな」
ラファルが承諾し、ふたりはガシッと握手した。
ことの成り行きに、表情を曇らせる透次。
「では私が斬り込みます。まずはナイトミストからの……」
「隙だらけだぜー!」
油断した雅人の背後から、ラファルが思いきり臀部を叩きつけた。
まさか結託した直後に裏切られるとは思いもせず、まともに食らった雅人はもんどりうって水面へ転落!
どばしゃーん!
「らーっはっはっは! 俺様が誰かと手を組むと思ったか! 勝者は常に一人だぜー!」
色々と予想外の展開に、透次も驚愕だ。
観客からは大ブーイングである。
唯一残った女子がこれって……。
「では始めましょうか、尻相撲の頂点を決めるケッ闘を」
透次が舞台中央で尻を突き出した。
「いいぜ、相手になってやる。正々堂々とな!」
たったいま仲間を裏切ったばかりとは思えないセリフを吐くラファル。
こうして最終決戦が幕を開けた。
波に揺れるステージ上で、両者の尻が舞い、踊り、荒れ狂う!
それは久遠ヶ原尻相撲の横綱を決めるにふさわしい激戦だった。
字数がないので結果を言うと、透次の大勝利!
いや……なんなん、回避力1033って……プレイングもガチすぎるやろ……。
「色々あったけど優勝おめでとう陽波君」
「ありがとうございます」
透次の首に、ノヴェラの手から金メダルがかけられた。
「銀は最後の熱戦を見せてくれたラファル君に」
「おー、ありがたくもらっとくぜ」
メダルを受け取るラファルは、水陸両用のダサい義体だ。
「銅は迷ったけど……浪風君に進呈するよ。いいお尻だった。あと家族を大事にしてね♪」
「あ、はい……」
赤面する悠人に、銅メダルがかけられた。
こうしてKOB水上尻相撲は、拍手と歓声のなか無事に閉幕。
ポロリなんて最初からなかったんだ!