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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2016/12/01


みんなの思い出



オープニング

※このシナリオは【KOB】連動シナリオです。優秀な成績をおさめたキャラクターには「メダル」が配付され、その数が多いキャラクターには、オリジナルの魔具が与えられるチャンスが与えられます。詳しいルールについては【KOB】特設ページをご確認ください。



「芸術の秋! スポーツの秋! 爆発の秋! 僕は全力でKOBを応援するよ♪」
 アーティスト科講師・小筆ノヴェラ(jz0377)は、今日もテンション高めだった。
 右手には撃退酒とテキーラのカクテル。いつもどおりの案配だ。
「まーた昼間から酔っぱらって……よくクビにならないわね」
 あきれたように言うのは矢吹亜矢。
 その隣には、三条絵夢が立っている。
「僕を解雇するほど学園上層部は無能じゃないさ。今日はKOBの新競技を考えたんだ。ぜひ矢吹君と三条君に人体実験……もといテストプレイをしてほしいと思ってね」
「……まぁいいけど。なんで今回の相手は絵夢なのよ。スポーツだったら、あたしの敵じゃないわよ?」
「それは私が説明します!」
 絵夢が勢いよく手をあげた。
 そして彼女が言うには……
「前回の地雷原壁割り競走、とても興味深く見学させてもらいました! そこで私もぜひ! 爆発したいと思ったんです!」
「ああ、うん、そういうことね……」
 亜矢は溜め息をついた。
 なにしろ絵夢は名前どおりの超絶ドM! 地雷を見つけたらハァハァ言いながら踏みに行く変態なのだ!
「というわけで会場に行こう。もう準備は整ってるよ♪」


 ノヴェラの案内で、亜矢と絵夢は見慣れたグラウンドに出てきた。
 周囲には『立ち入り禁止』のテープや看板。髑髏マークのついた『危険地帯!』の警告が生々しい。
「この警告から見て、また爆発競技をやるわけね……」
 さすがの亜矢も呆れるばかりだ。
「いつも言ってるように、爆発は芸術なんだよ。そしてスポーツには芸術性が求められるだろう? つまりそういうことだよ」と、ノヴェラ。
「なにが『つまりそういうこと』なのかわからないけど……まぁいいわよ。今回はどんな馬鹿げた競技なの? なんだか車がいっぱい置いてあるけど」
「あれはスクラップにする廃車だよ。今回の競技では、あれを壊してもらう」
「どこがスポーツなのよ……」
「話は最後まで聞いてほしい。まず選手は、このサークルの中に立ってもらう」
 ノヴェラが地面を指差すと、そこには直径5mほどの円が描かれていた。
 廃車の積みかさねられている辺りまでは、50mほどある。
「で、号砲と同時に選手めがけてミサイルが発射される」
「はァ!?」
「このミサイルをキャッチして投げ返し、廃車を破壊するっていう競技なんだ」
「言ってることおかしいでしょ!? だいたいミサイルって受け止められるものなの?」
「僕の尊敬する松田さんは、ミサイルどころかジャンボジェット機も素手で止めてたよ。大丈夫、矢吹君なら余裕で投げ返せるさ」
「その松田って人は知らないけど……まぁいいわよ、やってやろうじゃない!」
 なんだかんだ言いつつ、馬鹿げた競技に付き合う亜矢。
 かたや絵夢は、いそいそと廃車のほうに向かう。
「ちょっと、どこ行くのよアンタ」
「ええと……せっかくなら車ごと爆破してほしいと思うんです!」
「重症ね……」

 ともあれ競技(?)が始まった。
 亜矢がサークルの中心に立ち、ノヴェラは拳銃を掲げる。
「はじめるよ、ミサイルキャッチ&トス♪」
 パーンと号砲が鳴らされた。
 その瞬間、グラウンドの遥か遠くから黒煙が噴き上がり、SSM(地対地ミサイル)がマッハで飛んできた。
 全長約5m。重量約2t。
 いくら撃退士とはいえ人間ひとりを殺すにはオーバーキルすぎる兵器が、完全に亜矢をロックオンして襲いかかる。
「ちょ! ちょっと! あんなのどうやって受け止めるのよ!」
「大丈夫。火薬の量は並盛りにしておいたから」
「当然のように言わないで! 少なめでいいのに!」
「どうせ爆発するなら派手なほうが芸術的だよね? さあ来たよ」
「あーもー! こうなりゃ当たって砕けてやるわよ!」
 ミサイルが斜め45度の角度で亜矢の立つサークルに突入した。
 それを真っ正面から両手で受け止める亜矢。
 無茶なやりかただが、とりあえず弾頭の信管にさえ触れなければ爆発はしない。
「うりゃあああああ!」
 雄叫びを上げて、亜矢はミサイルの推進力を抑えようとする。
 が、踏ん張りきれずそのままサークルの外までズザーーーーッ!
「これムリ! 無理無理無理!」
 弱音を吐いたとたん、踵が小石にぶつかって亜矢は後ろ向きにひっくりかえった。

 \ ちゅどーーーーん! /

 演技失敗!
 もうもうと立ちこめる爆煙の中、クレーターの中心に倒れたまま亜矢は動かなかった。
「大丈夫かい矢吹君。救急車呼ぼうか? それとも佐渡乃君を呼ぶ?」
 ノヴェラが上から覗きこんだ。
「どっちもいらないわよ! なんなの、この殺人ショー!」
「ごめんごめん。ちゃんとグラウンドを整備しておけば良かったね。あんなところに石ころが落ちてるとは思わなかったよ」
「そういう問題じゃないから! いくらコメディだって、できることとできないことがあるのよ!」
「いやいや、コメディに不可能はないよ。いまのは矢吹君にも問題がある。馬鹿正直にミサイルを正面から受け止めようとするから……」
「じゃあどうしろってのよ!」
「そこはほら……色々あるだろ? 僕は思いつかないけど」
「自分にできないことを生徒にやらせるな!」
 こればかりは亜矢のほうが正論だった。
 しかしノヴェラは気にしない。爆破シーンさえ見られれば、それが生徒だろうと廃車だろうと何だろうと構わないのだ。
「まぁテストプレイは無事終わったし、あとは本番をやるだけだね」
「どこが無事なのよ!」
 ちなみにこの会話の間、絵夢はしょんぼりしながら廃車の前に佇んでいたという。




リプレイ本文




 その日。ミサイル投げという無謀な競技に挑むべく、8人の撃退士が集まった。
 一番手はAV男優・袋井雅人(jb1469)
『ウォールクラッシュ』では何もできず爆死したが、さて今回は?
「OK! OK! 改めて気合を入れていきましょう! 今度こそカッコイイところを見せますよ!」
 彼の注文した火薬量は『メガ盛り』
 火薬を増やせばいいわけじゃないって、前回言ったのに!
 まぁ報告書が公開される前だから仕方ない! みんな同じ条件だ!
「じゃあ始めるよ。ミサイル発射♪」
 酒をあおりながらノヴェラが言った。
 地平線の彼方から轟音が響き、巨大なミサイルが飛んでくる。
 雅人は直径5mのサークルに立ち、受け止めるべく身構えた。
「思った以上の圧力を感じますが、アスヴァンの防御力で耐えてみせますよ!」
『アウルの衣』で地味に魔法防御を上げ、正面からミサイルを受けようとする雅人。
 さすがに無謀なのは彼も承知してるので、『星の鎖』をミサイルに撃ちこむ。
「これで少しでも減速できればいいんですけどねー」
 \ ずどがああああん!! /
 鎖が弾頭に命中して、ミサイルは空中で爆発した。
 メガ盛り火薬が炸裂し、周囲の地面ごと雅人を吹き飛ばす。
 もうもうと立ちこめる爆煙。血と火薬の匂いが漂う。
 演技失敗! 雅人死亡確認!
「袋井君……普通にミサイルを迎撃したら爆発するよ?」
 さすがのノヴェラも呆れ顔だ。
 こうして最初の挑戦者は病院送りに。
 グラウンドが整備されて、次の選手が出てきた。




「うぅん……袋井先輩は失敗ですかぁ……残念ですぅ……」
 恋人の無念を晴らすべく、舞台に立つのは月乃宮恋音(jb1221)
 火薬は『ギガ盛り』だ。失敗すれば雅人よりひどい目にあう。
「月乃宮君は前回銀メダルだし期待してるよ♪」
 ノヴェラが言った。
 廃車群の中には絵夢が立ち、爆破を心待ちにしている。
「準備いいね? 発射♪」
 ノヴェラの合図でミサイルが飛んできた。
 恋音は冷静に構えつつ、胸の谷間から出した薬を次々と飲み干す。
 直後、特殊体質が発動!
 60m級の巨娘と化した恋音が、鉛筆みたいにミサイルを捕まえた。だがサークルは直径5m。片足がギリギリ入る程度の大きさだ。一本足ではバランスがとれない。あちこち肥大化してるしね!
「こ、これはまずいですねぇ……次の作戦に移行しますよぉ……!」
 方針を切り替えると、恋音は後方へミサイルを放り投げた。
 当然ミサイルは爆発。
 その爆風を利用して、気球のように肥大化した恋音は上空高く吹き飛ばされる。
 無茶苦茶だがフィニッシュはここからだ。廃車の上まで吹っ飛んできた恋音は、タイミングよくOP薬νを服用。巨大な肉塊と化して無数の廃車を押しつぶした。もちろん絵夢も巻き込んでる。
 ピピーーッ!
 ノヴェラが笛を鳴らした。
「サークルから出たら失格だよ? ルールに書いたよね?」
「もちろん、承知しておりますぅ……でも芸術点は、いただけますよねぇ……?」
「ダメダメ。競技のルールは守ろうね♪」
 ルールの穴をつくのは良いが、ルールを破るのはダメだぞ!




「私の番ですね! 全力で挑みます!」
 元気よく出てきたのは水無瀬文歌(jb7507)
 身につけているのは、ミスティローズ色のヒラヒラなアイドル衣装だ。
「意欲十分だね♪」と、ノヴェラ。
「アイドルは、いつ、いかなるときも、最高のライブ(試合)を見せるよう心がけているんです! あと私はマイミサイルを持参したので、そちらを使用させてもらいますね」
「マイミサイル!?」
 これには誰もが驚きだ。マイミサイルなんて言葉、初めて聞いたよ!
 ともあれ競技が始まった。
 文歌の歌声の中、彼女専用ミサイルが飛んでくる。
『みんなに届け、私の歌!』とデコってある以外は普通の競技用ミサイルだ。火薬は大盛り。
『競技用ミサイル』って言葉も初耳だ!
「来ましたね」
 文歌はマイク状の魔具を抜き放ち、『シールド』を発動させた。これは衝撃波への備えらしいのだが……認識を間違ってるので訂正しよう。音速以上で移動する物体からは衝撃波(ソニックブーム)が発生するが、原理上物体の前方には生じない。まぁシールド自体は有効なので問題ないが。
「いきます! 星の鎖!」
 突っ込んでくるミサイルめがけて、文歌は対空チェーンを投げた。信管を避けてミサイル胴体に鎖を巻きつけ、地面に落とさないようコントロール。そのままハンマー投げみたいにグルングルン振りまわす!
 あまりの猛回転でスカートがめくれ、ニーソとの間に生足絶対領域がチラリ♪ 芸術点獲得!
「みんな(廃車)に届け,私の歌ぁぁーー(物理)!」
 ブチッ!
 ひゅるるる……
 ちゅどーーん!
「「アバーーッ!?」」
 回転中に鎖が千切れて、ミサイルは観客席へ飛んでいった。
 残念! てか回しすぎ!
「嗚呼……事故とはいえファンの方々を爆破してしまうなんて……」
 うなだれる文歌。
 だがファンにとっては、わりとご褒美だったという。




「かなり危険な競技ですが……参加した以上は全力で取り組みます」
 3人連続で記録を出せない中、ユウ(jb5639)の番が回ってきた。
 笑顔の素敵な少女だが、こう見えてかなりの実力派だ。
「じゃあ行くよ? 発射♪」
 ノヴェラの合図で、メガ盛りミサイルが飛んできた。
 しかしユウは冷静に物質透過を発動。この時点でミサイルは彼女に傷ひとつ与えられない。
 しかもサークルの前方ギリギリに陣取り、『変化』で全力解放!
『闇の翼』でバランスを制御しつつ、真っ正面からミサイルを受け止める!
 もちろん信管には触れない。ミサイル胴体を両手で押さえ込み、卓越した物理攻撃力と物理防御力で強引にねじふせる。
 しかし、これは無理やりすぎた。物理防御が1000ぐらいあれば行けたかもしれないが……
 \ ずどがああああん!! /
 やはり押さえ込みきれず、ミサイルは地表に落下して炸裂。
 爆風とともにキノコ雲が立ち上がり、ユウを中心にしたクレーターが穿たれる結果となった。
 といっても、彼女自身は透過で完全ノーダメージだ。砂埃さえ付いてない。
 改めて言うのも間抜けだが、透過強すぎ!
「さすがにミサイルの勢いをそのまま利用するのは、無茶が過ぎましたね」
 髪を撫でつけつつ、ユウはクールに呟いた。
「キミぐらいの実力があれば、ちょっとの工夫で投げ返せたよ」と、ノヴェラ。
「難しいですね……まぁ私の出番はここまでなので、あとはイベントの手伝いをしますね」
 こんな無茶苦茶な殺人競技より、人助けのほうがユウには似合う。




「失敗続きか……見た目どおり難しい競技だね」
 般若の面を斜めにかぶりつつ、登場したのは鬼塚刀夜(jc2355)
 名前どおり、鬼の血を引くと噂される剣豪だ。
 彼女は当然のように刀を抜き、サークルに入る。
「まさか、その日本刀でミサイルを迎え撃つの?」
 ノヴェラが問いかけた。
「さすがにそんな無茶はしないよ。技を使うのに必要なんだ」
「なるほど。うまく行くといいね」
「ああ、前の競技がダメだったから今回で取り返さないとね。自分だけの刀を作ってもらうためにも一位を狙うよ。ほかの人たちみたいに派手なことはできないけど……武術も極めれば芸術の一種。僕なりのパフォーマンスを披露するよ。名付けるなら無刀流……なんてね」
 そう言うと、刀夜は刀を持つ手をだらりと下げた。
 一見隙だらけの棒立ちだが、これぞ『無幻』
 構えのない構えなのだ。
「じゃあ行くよ? 大盛りミサイル発射♪」
 本日5発目のミサイルが飛んできた。
 すでに見慣れた感もあるが、冷静に考えるとイカれた競技だ。
「さて……うまくやれるかな」
 刀夜は冷静にミサイルの軌道を読み、弾頭を避けるように手をのばした。
 剣の術理を取り入れた体術で、全身のバネや柔軟性、バランス感覚をフル活用して円を描くようにミサイルの衝撃を受け流す。決して『受け止める』のではない。『受け流す』のが肝要だ。
 \ ずどばああああん!! /
 ミサイルは多少軌道をそらされたものの、そのまま地面に激突。大爆発とともに刀夜を吹き飛ばした。
「まだ修行が足りなかった、かな……」
 無念そうに呟いて、刀夜は倒れた。




「やっと俺の出番だぜ。一丁ドカーンと派手に決めてやらあ」
 指をボキボキ鳴らしながら、鐘田将太郎(ja0114)がサークルに立った。
 身につけているのは、赤いシャツに黒のレザージャケット、黒のレザーズボン。黒手袋に黒ブーツ。とどめにレイ●ンのサングラス!
「それ松田さんのコスプレだね」
「ああ。小筆センセが尊敬してるっつーからよ。久遠ヶ原学園の松田に俺はなる!」
「いいね! その心意気を評価して芸術点10!」
 勝手すぎる採点に、観客からブーイングが湧いた。
 しかしノヴェラは「いんだよ、こまけぇことは!」と言い返す。
 その間に、将太郎はサークル内の足場を整えていた。松田のわりに行動がこまかい!
「よし、いいぜ。発射してくれ」
 即座にミサイルが飛んできた。
 火薬はメガ盛りだ。
「来やがれ、外道ーーっ!」
 将太郎は身構えつつ、外殻強化&闘気解放!
 さらに着弾寸前で『逆風を行く者』を発動し、ミサイルの側面から抱えこむように受け止めた。
 そのまま全身を反り返らせ、ミサイルの推進力を利用して豪快に投げ捨てバックドロップ!
「うぉりゃーー! 地獄に落ちろぉーー!」
 ミサイルはまっすぐ飛び、廃車を吹き飛ばした。
 演技は大成功!
 だが飛距離が伸びなかったのと火薬が多すぎたことで、予想以上の爆風が将太郎に襲いかかる!
「グワアアアーーッ!?」
 爆風がおさまったとき、彼は全身ボロボロになり直立不動で気絶していた。
 だが、その表情は全てをやりきったかのごとく満足げだ。
「ブラボー! おお……ブラボー!」
 なぜか背面飛行しながら拍手するノヴェラ。
 なにしろ酔っ払いのイタリア人だから仕方ない(意味不明
 ともあれ松田……もとい将太郎はノヴェラ大絶賛のもと演技を終えたのであった。




「ミサイルを投げ返すって……色々おかしいでしょ!」
 などと言いながらも、雪室チルル(ja0220)はウキウキ顔で現れた。
 彼女はハンマー投げ優勝の実力者。ミサイルを投げるのも同じようなものだ!
「まぁいいわ。さいきょー撃退士の名にかけて、核ミサイルでも投げ返してみせる!」
 豪語した直後、チルルめがけてミサイルが飛来した。
 火薬量は限界突破。環境に優しくないので核は搭載してない。
「来たわね! あたいさいきょおおおお!」
 気合の雄叫びとともに、ミサイルの真横からチルルは飛びついた。
 そのまま太陽剣で押さえ込み、『氷盾』で衝撃をやわらげる。防御力800超えの力ずくだが、さすがに正面からは受けない。チルルのちのうしすうはたかいからな! 正面から行ってしまった人たちは見習うといいぞ!
「よし、いけそうね! あとはハンマー投げと同じよ!」
 ミサイルの推進力を利用して、チルルはサークル中央で回転しはじめた。
 余裕の笑顔を振りまいて、芸術点もゲット。
 ものすごい速度で回転を加速させるその姿は、さながら巨大なコマのごとし。
 そして限界まで回転数を上げたところで全力跳躍!
 竜巻のように舞い上がり、『氷壊』とともに空中からミサイルを投擲!
 推進力×回転数×跳躍力×腕力−重量=飛距離!
「くらええええええ!! さいきょおおおおおおシューーーート!!」
 その掛け声で、飛距離が更に伸びる!
 ずどおおおおおおんん!!
 凄まじい爆発が地表に炸裂し、周囲のすべてを薙ぎ払った。
 飛距離は計測不能!
 おまけに遠くへ投げすぎて、廃車を飛び越えてしまっている!
「あたいとしたことが、つい本気を出しすぎたわね!」
「車は壊せなかったけど、これはミサイル投げの世界記録だよ」と、ノヴェラ。
 そんな競技は他で行われてないけどな。




「最後は私ですね。この馬鹿げた競技を私の手で終わらせましょう」
 なにか怖いコトを言いながら、雫(ja1894)が舞台に出てきた。
「自信ありそうだね、これは楽しみ。ポチッとな♪」
 みんなの爆死を肴に酒を飲むノヴェラは、じつに満足げだ。
 雫は無表情でミサイルを待ちかまえ──タイミングよくダークハンドを発動!
 ミサイルの軌道をねじまげ、ノヴェラめがけてブチこんだ。
 ちゅどおおおおん!
「昼間から飲んだくれるな! この不良教師!」
「げほっ、ごほっ! いやいや雫くん? これは僕を殺す競技じゃないよ?」
「そんなことはわかってます。では二発目を発射してください」
「キミの演技は今ので終了だよ!?」
「演技が一度きりとは聞いてませんね。ルールで定められてない以上、何度でも挑戦できるはずです」
「そう来たか……わかった、いくらでも投げていいよ」
 これまた無法すぎるプレイングだな!
 書いてなくても一回だけって解釈するだろ、フツー!
 ともあれ二発目のミサイルが飛んできた。
 雫はこれを冷静にブレスシールドで受け止め、さきほどとは別の角度で軌道をそらす。
 どごおおおおん!
 今度は観客席にミサイルが飛び込んだ。
「おかしいですね。次こそはうまく投げますので、じゃんじゃん撃ってきてください」
 こうして阿鼻叫喚の地獄絵図が展開されることとなった。
 次々に撃ちこまれるミサイルが四方八方に投げ飛ばされ、あちこちで大爆発が起きる。
 もう競技どころではない。滅茶苦茶だ。
「死なばもろとも、すべて吹き飛ばしてノーゲームになれば良いんです!」
 ヤケクソの酔っ払いみたいなことを口走り、攻撃スキルも併用して破壊の限りをつくす雫。
 一体どうしたのかという暴れようだが、ノヴェラはもちろん他の生徒もやられてばかりではない。たちまち魔法や銃弾の集中砲火が浴びせられて、雫はブッ倒れた。


「雫さん、どうしてしまったんでしょう……」
 負傷者の手当てをしつつ、ユウは心配そうに言った。
「きっとアレよ! 中華まんの紙をはがすの失敗して不機嫌だったのよ!」
 チルルの発言は、恐らく自分の身に起きた不幸だろう。
「ああ、それでは全てを爆破したくなるのも当然ですね」
 なぜか納得する文歌。
「うぅん……それで結局、順位はどうなりますかぁ……?」
 恋音が訊ねた。
 ノヴェラは全身真っ黒焦げのアフロで答える。
「鐘田君は金メダル確定として……銀は雫くん、銅は雪室くんだね♪」
「あのぉ……聞きまちがいでしょうかぁ……」
 恋音が言うのも無理はない。
 なんせ雫は会場を爆破しただけだ。
「これは公正な審査だよ。ミサイルの飛距離も採点基準だからね。雫くんが投げたミサイルの合計飛距離は雪室くんを超えてる」
「おぉ……それは盲点でしたぁ……」
 あいかわらず無茶な審査だが、文句を言う者はいなかった。
 そう、ここは久遠ヶ原。無理を通して道理を引っ込ませる世界なのだ。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: いつか道標に・鐘田将太郎(ja0114)
重体: −
面白かった!:7人

いつか道標に・
鐘田将太郎(ja0114)

大学部6年4組 男 阿修羅
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
外交官ママドル・
水無瀬 文歌(jb7507)

卒業 女 陰陽師
戦場の紅鬼・
鬼塚 刀夜(jc2355)

卒業 女 阿修羅