生暖かい雨の中、10人の撃退士がゲート前に集まった。
この異様なゲートを初めて見た者は、誰でも何か言わずにいられない。
「フオオオオッ! こんないやらしい穴を前にしたら、ラブコメ仮面全開で行くしかないですね!」
いきなり変身したのは袋井雅人(
jb1469)
ブリーフ一丁で女子用パンツをかぶる、いつものスタイルだ。
彼の興奮も無理はない。なんせゲートの入口が完全にアレなのだ。
くぱぁ……とかいって、トロトロの液体を垂れ流してるのだ。これはヤバい。
「なんてゲートだ。どこの変態が作ったか知らないが、ほうってはおけないな」
顔をしかめて呟くのは遠石一千風(
jb3845)
179cmのスラリとしたモデル体型を、競泳水着に包んでいる。
依頼書を見てヌルヌル地獄不可避と判断しての格好だ。賢い!
「ぬるぬるですねぇ……不気味ですねぇ……」
深森木葉(
jb1711)は震えていた。
着衣は襦袢一枚。一千風と同じく粘液対策だ。
身長90cmの木葉は、狭い空間の戦闘では有利! だといいね!
「なんだか面白そうなゲートなのだ♪ たのしみながら進めばいいのかな? かな?」
アトラクション気分満々なのは、脳天気少女の焔・楓(
ja7214 服はシャツと短パン。木葉に次ぐ小柄な体格で、狭い場所での行動は得意だ!
「こ……このゲートを作った天魔は誰ですのぉー!? 責任者は出てきなさいな! 卑猥な効果がないから健全だなんて、そんなわけないでしょう! これではまるで……あの中に入ってしまったら……!」
桜井・L・瑞穂(
ja0027)はゴクリと唾を飲みこみ、頬をひきつらせた。
今回は楓から話を聞いて、一刻も早くゲートを消滅させるべく参戦。いかなる犠牲も辞さない覚悟だ。
衣装は欧風貴族のように優雅だが、豊満な体型は隠せない。
「うぅん……このゲートは、天界勢と冥魔勢どちらでしょうねぇ……なんとなく冥魔勢という気が、しますけれどぉ……。羞恥心で、やる気を削ぐ狙いでしょうかぁ……」
月乃宮恋音(
jb1221)は、入口だけ見て偏見で判断した。
だが実際あたってる。こんなものを『作らせる』のは一人しかいない。
「……なにか臭そうなゲートですね」
雫(
ja1894)は普段どおり無表情だった。
依頼書でゲートの内部は把握しているが、露出は好まないため通常の戦闘着だ。
さすがLV50! と言いたいとこだが今日の雫は阿修羅ではない。
「残念だ……矢吹さんをつれてきたかった」
陽波透次(
ja0280)は、ゲートと無関係なことを呟いていた。
一人でも戦力を増やそうと、変化の術やコロッケパンを駆使して矢吹亜矢を連れ出そうとしたのだが、あっさり正体を見破られてしまったのだ。しかも『アンタは永遠にソロ焼肉してなさい!』という残酷な一言で。
「よし、行くぞ野郎ども!」
鮫嶋鏡子が拳を突き上げた。
その背後では、三条絵夢が見つめている。
ちなみに百合華は不参加。彼女の好みはSなのだ。恋音残念!
「それでは、鮫嶋さん、三条さん、よろしくお願いします」
雅人が二人に声をかけた。
が──
「近寄るな、変態!」
「アバーッ!?」
鏡子の喧嘩キックが炸裂して、雅人は転がっていった。
おま……外見自覚しろ!
「なんかベトベトなのだ。服が汚れると帰り困るし……なら最初から脱いじゃえばいいのだー♪」
周囲の目を気にせず、楓は服を脱ぎだした。
でも幼女体型なので問題はない……てことはない!
「ちょっと! お待ちなさい、楓! せめて水着にしなさいな!」
突撃しようとする楓の首根っこを、瑞穂がつかんだ。
さすがに全裸はNGなので、楓はしぶしぶスク水姿に。
「では行きましょう〜」
木葉は元気満々にゲートへ踏み込もうとした。
が、しかし。
「にゃっ!?」と悲鳴をあげて転んでしまう。
まだゲートに入ってない。普通の地面だ。
とはいえ雨天なので、思いきり水溜まりにダイブしてしまう。
「えううぅ……さすが不気味なゲート、よくすべるのですぅ……」
水溜まりに座りこんだまま、半泣きになる木葉。
「なにをしてるのですか……」
雫が手を差し伸べた。
が、木葉に引っ張られて雫も転んでしまう。
そのまま折りかさなって見つめあう二人。
この瞬間、木葉×雫の構図が!(カプの前後重要!
そんな騒ぎがありつつも、ともあれ一同はゲートに挿入……もとい突入した。
内部は異常に狭くて暑苦しく、床から天井までヌメヌメの肉壁で覆われている。
天井が低いため、まともに立てるのは木葉と雫と楓だけだ。あとは全員しゃがまないと歩けない。
「まるで巨大生物の体内か、想像以上にキツイな」
一千風は早くも汗まみれだった。
メンバーの中では最も背が高く、姿勢も苦しい。
ぽたぽた落ちてくる粘液がたちまち全身を濡らし、髪がベッタリと水着に張りつく。
その姿は、そこはかとなく……否、あからさまにエロい!
「弱音は聞かねーぞ! 突撃だ!」と、鏡子。
「待て。ここは慎重に進もう。なにが待ち構えてるかわからない。たとえば危険な罠とか、巨大寄生虫とか」
「妙なフラグ立てんな!」
「うぅん……私の経験だと、触手系の天魔が怖いですねぇ……」
フルフルしながら、恋音が『饅頭怖い』的なフラグを追加した。
「罠だろうと天魔だろうと……このわたくしに恐れるものはなくてよ! さぁどこからでもかかってきなさいな!」
威勢よく啖呵を切る瑞穗も表情はひきつっている。
無理もない。こんな淫猥なゲートは前代未聞だ。
「ぬるぬるぐねぐねで変な感じなのだ。何かこう……蛇か何かに食べられちゃったみたいな? まーとりあえず出発なのだ〜♪」
この異様なゲートの中でも、楓は普段どおりだった。
が、やはりマトモに歩けない。滑ったり転んだりで、たちまち粘液まみれだ。
「ふややっ!? これだけ滑るなら、むしろ滑って進むほうがいいのかな? かな?」
「お待ちなさい、楓! はしたないですわ!」
再び瑞穗が止めた。
「でもヌルヌルで立てないのだ〜」
「気合の問題ですわ! さぁ立ちなさいな!」
瑞穗が楓の腕を引っ張った。
そのとたん、お約束通り転ぶ瑞穗。
しかも楓が服の裾をつかんだせいで上着のボタンが飛んで、ブラが見えている。
おまけに立とうにも立てないので、グロテスクな肉の床にペタンと座るしかない。
「うぅぅ、なんという醜態……う、美しくありませんわぁ……」
涙目で全身を火照らせる瑞穗。
ある意味これは美しい。
そして周囲を見れば、みんな似たような状態だった。
恋音は胸の重さでバランス崩して四つん這いだし
木葉は必死に立とうとして生まれたての子鹿みたいになってるし
助けようとした雫も一緒に転んで木葉とグッチョリだし
雅人は最初から匍匐前進だし
一千風も鏡子も絵夢も、粘液ねとねと七転八倒。
立ってるのは水上歩行できる透次のみ! 忍者最強!
「これは厄介ですね。今後おなじゲートが現れたときのため、色々と試しておきましょう」
真剣な顔で言う雅人。
だが、ブリーフ一丁で顔面に女子用パンツをかぶりながらヌルヌルと匍匐前進する姿は、ヤバイ級の変態にしか見えない。
彼はナメクジみたいに這って行くと、急に動きを止めて立ち上がった。
「よし間違いない! ここがGスポット! 変な意味はありません! 『ゲート』の頭文字ですよ!」
言い放つや、雅人は凄い勢いでスクワットを始めた。
天井の肉襞に、何度も頭が打ちつけられる。
その意味不明な行動には、皆ポカーンとするばかりだ。
次の瞬間。
ゲート全体が収縮して、奥のほうから津波のように粘液が押し寄せてきた。
ブシュワァアアア!
汚物みたいにゲートから押し流されてしまう撃退士たち。
言うまでもなく、みんな粘液まみれのデロデロだ。
「なにしてんだテメェー!」
「アバーッ!?」
鏡子の拳がブチこまれて、雅人は転がっていった。
「ああもう、変態はイヤだ……私は普通に依頼をこなしたいのに……」
全身の粘液を払い落としながら呟く一千風。
良家育ちの彼女に今回の依頼は厳しい……なんてことはない! これまでの学園生活で、彼女も鍛えられて来たのだ!
「きっとこれも己を高める修行! この依頼を成功させて……格闘王に、私はなる!」
「いい心構えだ! よしリベンジだぜ!」
鏡子が再びゲートに突撃して、ほかの面々が後に続いた。
そしてやはり、透次以外全員転んでしまう。
「うぅん……こうするしかないですねぇ……」
立つのを諦めて、恋音は四つん這いで進みだした。
「あたしもマネするですぅ〜」
木葉も腹這いになって、ペンギンみたいに滑ろうとする。
「………」
そんな仲間を雫は無言で見つめていた。
剣を床に突き刺して杖代わりにしている。
(まずいですね……なぜか湧き上がる衝動が抑えられません)
恋音の尻を見て、妙なS衝動に襲われる雫。
そこでふと彼女は気付いた。『尻を叩いて吹っ飛ばせばゲートの奥まで滑って行くのでは?』と。
思いついたら即実行!
闘気解放からの、太陽剣ゴルフスイング!
チャー、シュー、メーーン!(古!
スカーーン!
「あひィいいっ!?」
血と粘液をまきちらしながら転がってゆく恋音。
だがすぐさま壁に激突して、上半身がズップリ埋まってしまう。
肉の壁から下半身だけ突き出てる状態は、完全に何かのプレイだ。
「飛距離5ヤード……ちっ、阿修羅だったら神威から烈風突で、もっと奥へ押し込めたのに」
舌打ちする雫。
阿修羅でやってたら、恋音は痔で即死だ。
「恋音ちゃ〜ん! いま治癒膏かけますぅ〜!」
木葉がペンギン滑りで追いかけた。
しかし勢いつきすぎて、恋音の尻に顔面から激突!
「はぅぅ……っ!?」
恋音がビクンと震えた。
そのとたん、所持品の薬や飲料が散乱する。
「はわわ……っ!?」
いくつかの薬が混ざって木葉の体にかかった結果──
なんと彼女は幼稚園児に退行。しかも胸だけGカップのロリ巨乳と化してしまった!
襦袢は完全にはだけて、胸元が!胸元が!
「フオオオッ! マーヴェラスッ!」
雅人が匍匐前進でカメラを構えた。
「撮ってる場合か! いま助けるぞ!」
走るよりラクと判断して、一千風も腹這いで滑っていった。
が、木葉と同じパターンで恋音に衝突!
「ぁふう……っ!?」
上半身を肉壁に埋めたまま、痙攣する恋音。
「ああっ、そんなコト……私も挿れてください!」
絵夢が突撃して、自ら肉壁に埋まりに行った。
「お待ちなさい、皆さん! そういう汚れ役はわたくしの担当ですわ!」
負けじと瑞穗が後を追った。
可憐なお嬢様に見える彼女だが、じつは超絶むっつりスケベ!
しかも目立ちたがり屋なため、こんなおいしい場面は逃せない!
勢いよく恋音たちのもとに突撃し、派手に転んでロリ巨乳化する瑞穗。
おまけに薬と粘液が混ざった結果、謎の催淫効果や幻覚が引き起こされる。
「くぅ……! こ、これは……!?」
謎のロリ巨乳化で今にもはちきれそうな競泳水着の胸元を隠しながら、一千風は全身をヒクヒクさせた。
顔は紅潮し、発情した猫みたいになっている。
「なにか、とてもヘンな気持ちですぅ〜。恋音ちゃあ〜ん♪」
壁に埋まったままの恋音の太腿へ、木葉が頬をこすりつけた。
恋音は無抵抗のまま、さらにズブズブと壁の中へ押し込まれてしまう。
「あふぅぅ……これは、なんて素敵な……いえ手強いゲートですのぉぉ!? ああ、手が止まらない……い、いけませんわ♪ 見ないでくださいなぁっ♪ あはぁぁン♪」
スケスケの紐みたいな下着を露出させて、一人遊びをはじめる瑞穗。
ひどいありさまだが、まだ入口から5mだ。任務大丈夫か?
「こうなれば……水上歩行できる僕がやるしかない!」
透次が覚悟を決めて突撃した。
やがて彼の前に現れたのは、おなじゲートの中とは思えない広大な空間。焼肉ホールだ!
「こ、これは……焼肉パーティー会場だと……!? なに!? おなかいっぱいになるまで焼肉を食べないと先に進めない!? しかも、この空間では暴力が無効だと!? ……くっ、ならば……こんなときだが仕方ない! 焼肉パーティーだ!」
すると透次の前に、超絶美少女の天魔が出てきた。
彼女は笑顔で言う。
「ここはお肉のゲートなの。つまり
「わかった、皆まで言うな! 僕にはわかる! まさかゲート内で焼肉バトルとは……もしやキミもヤキニクストか!? ならば同じヤキニクストとして……この勝負絶対に負けられない!」
こうして至高のフードファイト・焼肉バトルが始まった。
説明しよう! 焼肉バトルとは! 以下略!
戦いは長く続いた。
10時間……20時間……
両者の胃袋は止まらない。
「やるじゃないか。だが僕の限界はまだだ……人間の力、可能性はこんなものじゃない……僕の焼肉への恩情は……この愛は……果てしなき疾走の調べと共に、人間火力発電所をオーバードライブ……ッ!」
こうして透次と少女は焼肉しつづけ、同時に倒れた。
勝負は引き分け。だが二人とも満足げな笑顔だ。
「ふ……良い勝負だった。僕の名は透次。キミは?」
「ロースよ」
二人は起き上がり、互いの拳を突き合わせた。
こうして透次に新たな好敵手(とも)が出来たのである。
なお全て薬物による幻覚の模様。
「おまえら、いい加減にしてください」
ずどーーん!
雫のアートが爆発して、情事に耽る変態どもを吹き飛ばした。
「は……っ、私は一体……!? って、うわああああ!?」
一千風は我に返ると、乱れきった自分の姿を見てパニックに陥った。
そのまま一目散に逃走……と思ったが、やはり転んでしまう。
「もうイヤだ、こんな依頼! 早く終わらせてシャワー浴びたいいい!」
「こうなれば最後の手段です」
雫は恋音の背中から氷の夜想曲をブチこんだ。
「な、なにをするんですかぁぁ!?」
「ちっ、うまく凍りませんね。まぁ構いません。よいしょっと」
恋音の足首をつかみ、ジャイアントスウィングで放り投げる雫。
すかさず背中に飛び乗って、サーフボードみたいに滑走する。
「はわぁぁぁ……っ!?」
「淫らな薬をばらまいた罰として働いてもらいましょう」
「わ、私のせいではありませんよぉぉ……!?」
本人は否定するが、99%恋音のせいだ。
「さすが雫ちゃん! 幼女撃退士憧れの的(勝手に決めた)ですぅ〜」
みごとなサーフィン技術に拍手を送る木葉。
コアまでの道中では触手とか寄生虫とか謎の体重計とか出てきたけど、ぜーんぶ雫が一刀両断にしました! 以上!
「よし、リベンジ終了!」(鏡子
「こ、これはひどい……」(一千風
「色々あったけど、たのしかったのだ♪ また来るのだ〜♪」(楓
「それはいいですね!」(雅人
「私は二度とゴメンですぅ……」(恋音
「ああ……まだ体が火照ってますわぁ♪」(瑞穗
「お姉様ぁ……♪」(絵夢
ともあれゲートは消滅した。
だが忘れてはいけない。
ゲートを作った張本人が普通に生きていることを──