銃と魔法、どちらが強いのか?
そんな壮大かつ不毛なテーマに挑むべく、本日ここに24人の撃退士が集まった。(1人白紙!)
字数が厳しいので、さっそく恒例のメンバー紹介だ!
まずは銃チーム!
ひとりめは、いきなり第三陣営『近接武器チーム』を立ち上げてしまった雪室チルル(
ja0220)!
使った瞬間退場になっても知らないぞ!?
二番手、黒百合(
ja0422)は、かなりシビアに戦闘プレイングを書いてきた!
こんなに緻密なプレイング見たの、ボクはじめて! でもゴメン。コメディ戦闘なのコレ。
そして三人め。君田夢野(
ja0561)も、近接武器チームへの寝返りを表明!
フリーダムな人おおいな!
そして待ってました! 近接拳銃術の使い手、麻生遊夜(
ja1838)!
今回のシナリオは、あなたのような人のために書いたのです! 贔屓しちゃいますよ、お客さん!
さぁ五人め! クワガタっぽい仮面をかぶって参戦は、烏田仁(
ja4104)!
仮面に意識をのっとられた彼は、なにをしでかすかわからないぞ! 色々な意味で! 色々な意味でだ!
六人め! 近接拳銃術は正義! バルトロ・アンドレイニ(
ja7838)!
今回のシナリオは、あなたのような人のため以下略! 贔屓以下略!
さて、いきなり敵ボス亜矢を狙いに行く意思を表明したのは、リーリア・ニキフォロヴァ(
jb0747)!
アグレッシブなプレイングで勝負だ!
来崎麻夜(
jb0905)は、先輩の遊夜と共に行動!
ふつうに考えれば、ペアで行動するほうが有利なはずだ!
他人を重体にしないよう銃の威力にまで気を配るのは、いつも優しい袋井雅人(
jb1469)!
さすがの私も、こんなイベントで重体は出さないぞ! たぶん!
十人目! 銃でガンガン殴るぜ! 樋熊十郎太(
jb4528)!
その駄洒落を見た瞬間、キミの死は決まっていた!
そして最後のヘルマン・S・ウォルター(
jb5517)は、火炎放射器を銃と主張!
そういう強引な主張は大好きです! 汚物は消毒でございます!
以上、11名!
次は魔法チームだ!
己の武器を魔法剣と言い張り魔法チームに入ったのは、神喰茜(
ja0200)!
使った瞬間退場にならなければいいな!
ふたりめ! グラルス・ガリアクルーズ(
ja0505)は隙のない戦闘プレイングを提出!
ガチ戦闘でネタ戦闘に挑む! だがスマン、ガチでは生き残れないんだ!
逃げまくって第三陣営の勝利をめざすのは、龍崎海(
ja0565)!
はたして最後まで逃げ切れるのか!?
ビールで動くよ! 阿修羅のクセして魔法陣営に入ったのは、雀原麦子(
ja1553)!
最初から酔っぱらいテンションだ! 超同志!
策士の楯清十郎(
ja2990)は、魔法と知略で勝負をかける!
銃ではこんなに色々なことはできまい! いやいや、殴ったり叩いたり、どついたりできるよ!
生き残りをめざしてトイレに立てこもるのは、巫聖羅(
ja3916)!
さりげなく強力な戦術だ! でもどうなのコレ!
黒夜(
jb0668)は、さっさと勝負をつけるためなら味方を巻きこむことも辞さない覚悟!
やる気なさそうで実は一番やる気ありそうだ!
ヒャッハー! 拳は魔法! 彪姫千代(
jb0742)!
GJ! 今回のルールだと素手は反則じゃないぞ!
脳天気悪魔のルーガ・スレイアー(
jb2600)は、演出たっぷりに勝利を狙う!
どう考えても死亡フラグだが、彼女に明日はあるのか!?
十人め! 聖羅とともにトイレで立てこもるのは、小田切翠蓮(
jb2728)!
男子トイレか女子トイレか書いてほしかった!
魔法忍軍の強さを知らしめるために参加! ナナシ(
jb3008)だ!
彼女の活躍次第で忍軍の地位も向上するかもしないかもしれない!
そして最後! 蒸姫ギア(
jb4049)は魔法陣営で蒸気機関の有用性を証明する!
よくわからない主張だが、勢いでGO!
以上、12名!
合計23名の撃退士たちが熱い戦いを……って、数があわないぞ!
なんと! よく見ればルーネ(
ja3012)は無所属! 最初から近接武器チームでの参加を表明! うおおい! いきなりルール無視ですか!? 無軌道すぎる! ほかの人は、建前だけでも銃か魔法か選んだのに!
というか、よく見たらルール違反の連中が多すぎるぞ!
まぁいいや。とりあえずスタート!
何人退場するかなーっと!(すてきな笑顔)
ゲームが始まったとき、無法者ルーネは教室の窓際に立っていた。
そこへ現れたのは、逃げる気も隠れる気もなく索敵しまくっていたバルトロ。
「よお。おまえ、敵だよな?」
「バレちゃ仕方ありませんね」
敵と気付かれなければスルーの予定だったルーネだが、いくらなんでも普通は開始前に自分のチームメンバーぐらい覚えておくだろう。必然的に両陣営から狙われるハメになったルーネ、いきなりのピンチである。
「それじゃあ、さっそくドンパチはじめようぜ?」
颯爽とクロスファイアを抜き放ち、光纏しつつ二挺拳銃をかまえるバルトロ。
対してルーネは、金色の火の粉に似たオーラをまきちらしながら、反則上等の決意で双剣を抜刀!
「うなれ! エーデルシュタイン!」
ピピーッ!
ホイッスルが鳴り、どこからともなく現れた係員に引きずられていくルーネ!
なんと、開始一分での退場処分! これは前代未聞の珍事! エクストリーム退場競技の新記録か!?
「あ、やっぱりダメだったみたい……?」
ダメだって言ったでしょ! 銃以外の武器は禁止だって! 退場にしないかもとは言ったけど、あくまで例外ですから! でも面白かったのでMVP! 毎度毎度ひどい評価基準だな、このMSは!
「……ある意味、賞賛だな」
出番のなかった拳銃をしまいながら、バルトロはルーネの消えていった廊下を見つめるだけだった。
「私、どうしてこんなことしてるんだろう……」
トイレの個室に篭もりながら、聖羅は自問した。
ラウンジでの騒ぎに巻きこまれて、いつのまにか戦いに参加していた彼女。しかし負けず嫌いなため、本気で勝ちに行こうとしている。
この作戦は、翠蓮が提案したものだ。
提案と言えば聞こえは良いが、なかば無理やりトイレに押し込まれた形である。
「怖いし暗いし狭いし汚いし……サイッテー!」
たしかに、あまり高尚な戦略とは言えない。
ただ、生き残ることだけを考えれば決して悪くない戦術だ。
一方、この作戦を立てた睡蓮はといえば、透過しながらトイレの周囲を索敵している。
が、だれも来ない。
まぁ廃校舎の汚いトイレにわざわざ足を運ぶ者は滅多にいないだろう。
はたして、彼らの作戦やいかに──?
「ふふぅ♪ 獲物がいっぱいだわー。おいしそー♪」
リーリアは、サイレントウォークと隠密スキルで敵を探していた。
彼女の狙いは、魔法チームのリーダー亜矢だ。
「ボスは落としておきたいわよねー」
願いが通じたのか、廊下の先からやってきたのは亜矢だ。
サッと身を隠し、ライフルをかまえるリーリア。
そして、悟られる前に発砲。
と同時に、ほかの方角からも銃弾が飛んできて、たちまち亜矢を蜂の巣にした。
見せ場もセリフもなく倒れる亜矢。
彼女の後ろから姿を見せたのは、遊夜と麻夜のコンビだ。さらに十郎太が後ろに控え、内蔵・リックも同道している。
五人ものガンマンから一斉に狙われてしまった亜矢、無惨。パン戦争で無茶しすぎたんだ。
それを物陰から見ていたのは、蒸姫ギア。
範囲攻撃があるとはいえ、さすがに五人を相手するのは無理と判断して、立ち去ろうとするところだ。
そのとき、ガンマンたちの中へ『クレセントサイス』がブチこまれた!
ハイド&シークで気配を断った黒夜による、奇襲の範囲攻撃だ。
不可視の刃が内蔵と十郎太を切り刻むが、どちらも倒れはしない。
「率先して戦う気はないが、降りかかった火の粉は払う主義だ」
反撃開始とばかりに走りだす内蔵。その場から撃てば良さそうなものだが、そういう常識は彼には──否、彼らには通じない! なぜなら彼らは近接拳銃術使いだからだ!
内蔵の後を追って走る、遊夜と麻夜。十郎太も拳銃を手に猛ダッシュ!
だれも一発も撃たない。射程内にも関わらずだ。異常な光景である。
「早く終わらせてーから、恨むなよ」
黒夜が棒読みで言いながら、二発目のクレセントサイスを発動した。
しかし当たらない。近接拳銃術は、敵に近付けば近付くほど回避力が上がるのだ!
そして、ここまで接近を許してしまった以上、ナイトウォーカーである黒夜に勝ち目はなかった。
──と、そこへギアの呪縛陣炸裂!
二対五では分が悪いが、彼には勝算があった。
先に不意打ちを仕掛けられる点で有利なのがひとつ。
ふたつめは、完全無欠たる蒸気機関魔法の存在だ!
そんなものは世界のどこにも存在しないが、想いの強さこそが力になるのだ! スチームパンクは人類最高の文化! おお、いまこそ蒸気のエンジンが敵を打ち砕く! なに言ってるんだか意味不明ですけど! そういうよくわからない主張は評価する主義です!
「万能蒸気の力、とくと味わうがいいよ」
スチーム式呪縛陣が麻夜を捕らえ、蒸気機関的に拘束した。
「く……っ。先輩には指一本触れさせない!」
束縛を受けながらも、遊夜をかばって仁王立ちになる麻夜。
その背後から、遊夜と十郎太が反撃の構えを見せる。
麻夜の動きが封じられたとはいえ、まだまだ銃陣営五人のほうが有利だ。
しかし、良いタイミングで階段を駆け下りてきたのは神喰茜。
そう、ギアは彼女の加勢を知ったうえで奇襲に出たのだ。
が──
「ひゃっはー! お祭りお祭りぃぃ! どいつもこいつも片っ端から撫で斬りだよ!」
茜のセリフを耳にした瞬間、ギアの背中を冷たい汗がスチームっぽく流れた。
まさか堂々と反則はしないよな? まさかな──?
そのまさかのとおり、茜は灰燼の書から炎の剣を呼び出して装備!
シャキーン!
ピピーッ!
はやくも本日二人目の反則!
「え!? これ魔法剣! 魔法だよ! 魔法だってばぁぁぁ!」
言いわけ虚しく、ずるずる引きずられていく茜。
その後、二対五の戦いを強いられたギアと黒夜は、銃(ガン)でガンガン殴られて癌になり雁首そろえて死んだそうな。ががーん!
わかりますか、樋熊さん。駄洒落をやるならコレぐらいやってください。駄洒落道は甘くないんだ!
おっと失礼。駄洒落のために癌にされてしまった二人ですが、もちろん冗談です。ご存知のとおり、銃で殴られても癌にはなりません。ちゃんと全身打撲で死んでますので、ご安心を!
さて、ガン癌患者二名が安らかに死んだころ、麦子は理科室で途方にくれていた。
つまみにスルメを持ってきたは良いのだが、火がないのだ。ががーん!
「こうなれば、火炎系の魔法を使える人さがすしかないよね」
理科室を出て少し歩くと、『視聴覚室』のプレートの上に『魔法部屋』と書かれた教室があった。渡りに船とばかりに中へ入ると、床には馬鹿でかい魔方陣。その周囲には蝋燭が灯り、なにやら得体の知れない曲が流れている。そして魔方陣の中央には、ナナシの姿。
「あ、丁度よかった。スルメ焼いてくれない?」
「それ分身よ?」
答えるナナシは、天井に張りついていた。
一瞬びっくりする麦子。しかし、彼女のマイペースぶりは崩れない。
「ねぇねぇ、火遁でスルメあぶってくれないかなぁ?」
「……まぁいいけど」
そうして、麦子の一人酒が始まった。
教室にスルメのスメルが立ちこめる。(ドヤ顔)
その香ばしい匂いに誘われたのか、やってきたのは烏田仁。
どういうわけか、ライダーっぽいような仮面っぽいようなものをかぶっている。
最初に紹介したとおり、彼は銃陣営だ。しかし一挺も銃を持ってない。ががーん!
ひとりぐらいやるかなと思ってたけど、本当にやっちゃいますか……。まさか装備をまちがえたとか言いませんよね……? プレイングには『間合いに入ったらP37に持ち替えて』などと書いてあるんですが……。持ってないものは装備できませんよ……? というか私の見間違いかと思って十回ぐらい装備欄チェックしてしまいましたよ……。
「うごくな! ノンストップ! 武器を捨てろ!」
ルールにのっとり、両手の指でP37を作って脅迫する仁。エアギターならぬ、エアガンだ! これはヤバイ! ヤバイ級のスタイリッシュ具合! スタイリッシュ指数100000オーバーだ!
ちなみに彼はレベル10のインフィル。麦子はレベル29の阿修羅。この近距離でシリアスにタイマンしたら破滅的なことになる。──が、これはコメディ! そう! コメディだ! ワンチャンあるぜ!? 指鉄砲だけど!
「捨てろって言われても……。武器持ってないよ?」と、麦子。
「その手にあるのは何だ!?」
「スルメとビールだよ? ふふっ……。そんなことよりさぁ……? いっしょに飲まない……?」
とろんとした瞳を向けながら、麦子はスルッと上着の肩口をずらした。
真っ白な肌があらわになり、ブラジャーの紐がチラリと覗く。
「ぐはっ!」
女性に免疫のない仁にとって、これは痛恨の一撃だった。
装備を忘れてきたうえに、このピンポイントお色気攻撃!
なすすべもなく敗れた仁は、全身の穴という穴から鼻血を噴き出して爆死した。サヨナラ!
……うん、とりあえずアレだ。出発前には装備チェックしてください! すごくMVPあげたいけど、どう見ても狙ったものではなく不慮の事故なのでアウト! ががーん!(しつこい)
プレイングで『作者の好きに使ってください』などと書くと、こういう目にあいます。
装備忘れのインパクトが強すぎて、好きにしようがなかったけどな!
さて、麦子のスルメがいい感じに焼けたころ、ヘルマンと千代は廊下で向かいあっていた。
「じーさん、俺のまほー受けてみるんだぞー!」
魔法陣営にも関わらず、拳で殴りかかるのは千代。
これは盲点だ。銃以外の武器は禁止だが、素手なら反則にならない。そこまで考えての行動なら、たいした知恵だ。拳が魔法だと言い張るのも、常人には理解できない天才的知略によるものなのだ。おそらく、ずのうしすう10000いじょうなのだぞー!
「おや……元気なお子ですね。上着がなくては寒くていらっしゃるでしょう。暖めさせていただきます」
ヘルマンはおだやかな笑みを浮かべたまま、火炎放射器を発射。ヒャッハーと叫びながら使うことが推奨されているが、彼は紳士なのでそんなことは口にしない。心の中では言ってるかもしれないけど。ふつう誰でも言うよね?
「○○○○○○○○○○○○○○○ー♪だぞー!」
著作権的に問題のある詠唱とともに、千代は火炎流を浴びながら一直線に突撃!
至近距離から拳を繰り出し、『冥虎』を発動!
闇から生まれた虎が、凶暴な牙を剥く!
「む……」
完全に回避不能の一撃だったが、ヘルマンはそれでも微笑を崩さなかった。
なんという紳士力! ジェントル指数10000はある!
痛烈なダメージを受けて、どさりと倒れるヘルマン。
「勝ったんだぞー!」
千代が勝ち誇った直後、その頭部を銃弾が叩いていた。
射程ぎりぎりの距離から、黒百合が狙撃したのだ。
「ふふ……っ。隙だらけですよ……?」
スナイパーライフルを手に、黒百合は艶然と微笑んだ。
「うはー! もっと暴れたかったぞー!」
わりと最後まで元気なまま、千代は折りかさなるようにヘルマンの上へ倒れた。そのさまは、まるで遊び疲れた孫と祖父のようだった。
「銃? 魔法? 冗談じゃないよ。最強は間違いなく、剣とか槍とか拳とかの近接攻撃でしょ!」
妙に腹を立てているのはチルルだ。
じつは彼女、ラウンジでの騒ぎの際にプリンを火遁で燃やされてしまい、復讐を狙っているところ。
だが残念。プリンの仇である亜矢は、とっくに脱落済み。
そうとも知らず仇討ちの旅をつづけるチルルちゃん13歳。
その隣には、夢野が歩いている。
ふたりは友人同士。そして第三勢力『近接武器チーム』のメンバーだ。
「だよなあ。物理防御が強い敵には魔法。魔法防御が強い敵には銃。ひとつの手に固執するより多様な戦術をとったほうが状況に適応できるってもんだ」
同意する夢野の手には小銃が握られているが、両陣営の人数が減ればただちに大剣へ切り替える予定だ。
……なんなの、この退場フラグ。
そんな彼らの前に現れたのは、竜崎海。彼は魔法陣営だが、ひそかに近接武器チームに所属している。
「おや、偶然だね。こんな形で遭遇するとは」と、海が言った。
「だねー。せっかくだし、一緒に行動する?」
「それはやめておこう。一応は敵同士だからな。一緒にいるところを誰かに見られるとまずい」
「そっかー。たしかに味方に見られたらマズイよね」
うんうんと納得するチルル。敵に見られてもマズイことには気付いてなさそうだ。
「無論、旗揚げ後は合流する。それまでは互いの敵を消していこう。では健闘を」
クールに告げて、海は去っていった。ががーん!(使う場所まちがってます)
「馬鹿者めー! 魔法は演出がいかすのだぞー!」
ここは屋上。
闇の翼で舞い上がるのは、豊満な肢体の悪魔ルーガ。
ひらひらと黒い羽が舞い散る中、リブラシールドで守りを固めながら彼女は言い放つ。
「ふふふーん! 銃の弾なんて、盾でふさいじゃえば怖くないのだぞー!」
ルーガが相手にしているのは、遊夜、麻夜、十郎太、リーリア、内蔵の五人。
無謀きわまる挑戦だが、彼女に明日はあるのだろうか。
一方、彼女を見つめるガンマン五人の顔は、どこか悟りきっている。
ああ、こいつ今から死ぬんだな……という顔だ。
「さあ、おまちかね。魔法ターイム!」
わざわざ『これから攻撃しますよ』的なことを言って、これでもかとばかりに死亡フラグを立てまくるルーガ。
彼女は空中でググッと力をこめながら「こうやってー、ぐっと溜めてからのー、封砲をー、ビビビビームッと発射しちゃうのだぞー?」などと、懇切丁寧に解説した。いい人すぎる。悪魔なのに。
「あ、そーれ、いくのだぞー?」
その攻撃予告に対し、『もう撃っていいよな?』と目配せしあって、いっせいに発砲するガンマン&ガンウーマン。
ズガガガガ!
ドババババ!
「アバーッ!」
全身穴だらけになって、ルーガは校舎の外へ落ちていった。
しかし、その表情は持ちネタをやりとげたお笑い芸人のように満足げだったという。
なんだか、いつもひどい目にあってるな、この人……。ほんとうに悪魔なのかしら……。一応プロフには悪魔って書いてあるけど……。まちがってない……?
その様子を階段の影からうかがっていたのは、清十郎。
「まずいですね、これは……」
そんな言葉が出るのも無理はない。五人もの銃士を相手に、単独で勝てるはずがないのだから。
「不本意ですが、こちらも固まるしかなさそうですね」
つぶやいて、清十郎は走りだした。
ここへ来る途中、『魔法部屋』と書かれた教室があったのを思い出したのだ。
そこへ行けば味方と合流できるかもしれない──
「いらっしゃーい♪」
迎えたのは酔っぱらいの麦子だった。ほかにも、ナナシとグラルスがいる。
すみっこで鼻血まみれになっているのは、烏田仁だ。死してもなお、両手は指鉄砲のままである。おお、かつてこれほどまでにスタイリッシュな死体があっただろうか! 多分ない!
しかしまぁ拳銃一挺わすれただけでココまでいじられるとは、むごい話だ。みなさんも気をつけましょう。いじってほしければ、わざと忘れてきてもいいんですよ?
「あの……。ついさっきのことなんですが……」
ジスー・セイゲンに配慮した清十郎は、なにも見なかったことにしてルーガの滑稽な……もとい無惨な死にざまを説明した。
「なるほど、五人組か。厄介だな……」
シリアスな顔で考えこむグラルス。
ちなみに魔法チームの生き残りは、この場の四人と、聖羅&睡蓮の便所引きこもりペア、竜崎海の七人。
対する銃チームは九人だ。
劣勢だが、まだ勝負はわからない。第三勢力の存在もあるのだ。
「ともかく残ったメンバーを集めて……」
グラルスが今後の方針を立てようとした、そのとき!
ドガッ、とドアを蹴り倒して突入してきたのは、二挺拳銃の遊夜!
その背中には麻夜がぴったり張りつき、完璧なフォロー体制をとっている。
「いざ、勝負ぜよ!」
赤黒い霧のような残像を描きながら、遊夜が魔法チームへ肉薄した。
接近するまであえて撃たないのは、それが彼の美学だからだ。これはマジでスタイリッシュ! 指鉄砲とは格が違う!
「ちっ。思った以上に早かったか……!」
グラルスの手に分厚い書物が開かれ、バラバラッとページがめくれた。
「黒玉の渦よ、すべてを……」
ドガアッ!
グラルスが詠唱を終えるより早く、もう一方のドアが蹴り破られて、十郎太が突っ込んできた。
その後ろには、バルトロの姿。彼もつい先刻、このグループに加わっていたのだ。
このコンビもまた、遊夜組と同じく発砲せずに突撃してゆく。
「ちょ……! これ、いま開けたばっかりなのにー!」
麦子は大慌てでビールをグビグビしながら、とりあえず縮地で間合いをとった。
さぁ本日のメインイベント! 四対四の近距離戦が開幕!
ギャギュゥゥゥン!(景気の良さそうなヘビメタっぽいBGMを脳内再生してください)
最初に炸裂したのは、ナナシの火遁『煌めく剣の炎』!
文字どおり巨大な剣の形をとった紅蓮の刃が、大気を焼き焦がしながらバルトロへ迫る!
「ひゅぅ。俺を狙ってくるか……!」
不敵な笑みを浮かべながら、バルトロは紙一重でこれを回避。
「はっ。当たらなけりゃどうってことねェおにゃ!」
実際のところ冷や汗ものだったバルトロ、おもわず語尾を噛んでしまう。
「か、噛んでないぞ! 次はこっちの番だ!」
ごまかすバルトロ。ナナシは天井に張りついているため、彼らのターゲットは清十郎だ。
「しかたない……。相手になりましょう」
冷静に応じる清十郎。その手には魔法書マビノギオンがあり、彼は開いたページから一振りの剣をスラリと抜き放つや否や──
ピピーッ!
「え……? えぇっ!? これ反則なんですか!? たしかに武器ですけど! 魔法書から出したんですよ!? そんな! 聞いてませんよぉぉ……!」
茜と同じミスを犯してしまった清十郎、無念の退場!
「あらあら。これは本気出さないと負けちゃう系?」
あっというまに一缶あけた麦子は、阿修羅のくせにマジカルステッキを装備した。
「くらえ! 究極物理魔法!」
千代と同じようなことを言って、疾風のごとく殴りかかる麦子。
ピピーッ!
わかっててやってるよね、これ。
「あはははは。退場だってさ、私。あとは頑張ってねー」
新しい缶ビールをプシッと開けながら、ずるずる引きずられていく麦子。
呆然と見送る、グラルスとナナシ。
遊夜たちの殴り込みから、わずか十数秒のできごとである。
……あ、こういうタイミングで言うべきですね。ががーん!
「あの……。降伏してもいいんですよ?」
十郎太が提案すると、ナナシは怒りに肩を震わせた。
「だれが降参するもんですか! 忍者と魔法とが融合した魔法忍軍こそが! 銃使いや剣士を超える最強の戦士になるのよ!」
ゴォッ、と撃ち出された火炎の刃が、駄洒落のヘタな十郎太を焼きつくす!
「え……。もしかして、この状況から死んじゃうの?」
辞世の句を詠んで、ばたりと倒れる十郎太。
それを合図に、両チームの魔法と銃弾が雨あられと飛び交った。
騒ぎを聞きつけた黒百合と袋井雅人も加勢し、見張り役だったリーリアと内蔵も加わって、たちまち戦況は二対七に。
もちろん勝敗は言うまでもなく。
理不尽な戦いを押しつけられたナナシとグラルスは、銃(ガン)でガンガン殴られて癌になり雁首そろえて死んだそうな。ががーん!
これを天丼と言います。わかりましたか、樋熊さん。
あ、死んでましたね。ナムアミダブツ!
ナナシとグラルスも、ちゃんと全身打撲で死んでますから。癌の心配はありません。
にしても、この教室は死体だらけだな。まぁ一番かっこいいのはMr指鉄砲だけど。……あ、しまった。称号あげるの忘れた。また今度、拳銃わすれてきてください。できれば無意識で。(無茶ぶり)
「ちょっと、爺! だれも来ないじゃないのよ!」
ゲーム開始からずっとトイレに閉じこもっている聖羅は、とうとうヒステリーを起こしはじめた。
「なにを言う。だれも来ないほうがよかろう?」
睡蓮はどこまでも悠長だ。
「ああ、もう! 本当にこれで勝てるんでしょうね!?」
「くく……。わしの策に抜かりはない」
そのとき、トイレの外で携帯電話のアラームが鳴った。
「ねぇ、爺! なにか鳴ってるんだけど!?」
「おそらく罠であろうな」
その予想は正解だった。このアラームは黒百合の仕掛けたトラップ。彼女らのグループは既にチルルと夢野も合流し、『銃チーム』全員一丸となった九人体制が完成しているのだ。出ていけば銃弾のシャワーを浴びるのは確定的に明らか!
「なによ、罠って! ど、どうすんのよ!?」
「わしが透過で見てくるとしよう」
「大丈夫なんでしょうね!?」
「無論よ。大船に乗ったつもりでいると良い」
「この船、タイタニックじゃないでしょうね?」
「いや、もっと頑丈じゃのう。大和ぐらいはあろうか」
「どっちにしても沈むじゃないのよ!」
ズドガガガガガ!
ダダダダダ!
タタッ、タタッ、タタッ!
パーン!
チュイーン!
壁越しに弾丸の雨が降ってきて、聖羅と睡蓮はボニーとクライドみたいな最期を遂げた。超弩級戦艦『大和』という名のトイレの中で。
身を隠してても大声出したら見つかるよね、という教訓である。
この時点で、魔法陣営は竜崎海を残すのみとなった。
もはや勝負は決したも同然だ。
九人もの撃退士を相手にして、逃げも隠れもできやしない。
あっというまに見つかり、包囲される海。
「もうやめませんか? こちらは九人、そちらは一人……。勝負になりません。みなさん、だいじな戦いが控えているわけですし……」
訴えかけたのは雅人だ。なんという平和主義者。この場の全員に爪の垢を煎じて飲ませてあげてください。力ずくで。
「たしかに、一人では勝ち目がないな」
ふ、と苦笑しながら、海は涼しげに応じた。
「では、こちらの勝ちということで良いですか?」
「いや……」
ははっと笑って、海は声を張り上げた。
「銃? 魔法? ……はっ! V兵器の主力は白兵武器だろ!」
ここぞとばかりに見得を切り、ぎらりと十字槍をきらめかせる海。
それに呼応して、夢野とチルルも武器を抜き放っている。
夢野が手にしたのは、大剣ツヴァイハンダー。
チルルが抜いた武器も、おなじくツヴァイハンダーだ。
「まさか裏切ると思わなかった? あははは。油断したね! あたいたちは近接武器チーム! いざ、尋常に勝負!」
ドヤ顔で言い放つチルルちゃん、カワイソカワユス。
「ああ……」と、雅人は眉間を指で押さえながら天をあおいだ。このコメディ劇の結末がわかってしまったのだ。
ピピピピピピーーーッッッ!!
係員の手で、まとめて連行されてゆく近接武器チーム。
「えっ!? なんで!? 反則してもいいって言ったよ!? 言ったじゃん! 嘘つきぃぃぃ! あたいのプリン! プリンの恨みぃぃぃ……!」
係員に引きずられ、半泣きで抗議しながらチルルはフェイドアウトしていった。
「まぁそんな予感はしてたよ……」と、夢野が悟ったようにうなずく。
海はクールな笑みを浮かべながら、「案外厳しいものだな……」と呟いていた。
こうして第三陣営『近接武器チーム』は、旗揚げと同時に消滅したのである。これもまた何かの新記録に違いない。『団体結成解散スピードチャレンジ選手権』みたいな。
ともあれ、これにて勝負は決着!
勝ったのは銃チーム!
「生き残ったのは七人……? 終わってみれば楽勝でしたねぇ」と言いながら、黒百合がショットガンをくるっと回した。
「魔法陣営には、退場させられた人が多かったようですからね……」
雅人は、しきりに溜め息をついている。
なにしろラストバトルで敵チーム全員が退場処分となってしまったため、彼らには今ひとつ勝利の実感がなかった。
そんな中、遊夜は迷いなく内蔵の前に立ち、すらりとツインクルセイダーを抜き放つ。
「このチャンスを逃す理由はないのぜ。内蔵さん、一丁お手合わせ頂きたく!」
「いいだろう。キミの戦いはずっと見せてもらった。おたがい学ぶところがありそうだ」
微笑を浮かべながら、内蔵も二挺拳銃を抜いた。
「おいおい。そんな面白そうなこと、俺もまぜてくれよ」
あわてて声をかけるバルトロもまた、両手に拳銃スタイル。
「あらぁ……? 私を抜きにして、そんなお遊びをするなんて……。もちろん私も入れてくれますよねぇ……?」
問いかける黒百合は、右手にアサルトライフル、左手にショットガンという世紀末的バイオレンス・スタイルだ。超クール!
「うちも当然仲間に入れてくれるわよね?」と、リーリアも参加を表明。
「じゃあせっかくだからボクも戦ってみようかな」
遊夜の戦いぶりを見学するつもりだった麻夜も、つられて参戦。
結局のところ、みんなお祭りが好きなのだ。
「みなさん、くれぐれも無茶はしないようにしてくださいね……?」
心配そうに言う雅人も、さりげなく拳銃を手にしていた。
そうして七人の銃士たちによる最後の祭りが始まり、それはそれは盛大に盛り上がったという。
……最後の一人まで書きたかったけど字数が尽きたとか言えない。ががーん!
こんなこと書いてるから字数が足りなくなるんだ! 次はEXでやるよ!