その日。久遠ヶ原海岸にウニ型ディアボロが上陸したと通報を受けて、何人かの撃退士が駆けつけた。
「みなさんこんにちは〜! 私はァ! 学園に来たばかりの高坂椎菜ですぅ〜! 高い場所が大好きです〜! 今回はよろしくですぅ〜!」
海の家の屋根の上から拡声器で挨拶したのは、新入生の高坂椎菜(
jc2321)
彼女は今回が人生初の依頼だ。よりによって最初がこんな依頼とは災難すぎる。ほかのMSはマトモだから見限らないでね!
「おー、最近の子にしては珍しく礼儀正しいじゃねーか。挨拶は大事だよな。あとは菓子折でも持ってくれば完璧だった」
地回りの暴力系自由業みたいなことを言うのは、ラファル A ユーティライネン(
jb4620)
爆破オチに定評のある、全身機械の撃退士だ。今回は爆破することしか考えてないぜ!
「高坂ちゃんは依頼初めてですかぁ? では先輩のあたしがお手本を見せるのです。えっへん♪」
深森木葉(
jb1711)が、つるぺたの胸を得意げに張って見せた。
今日はウニの捕獲退治と聞いて、海女さんスタイルだ。
セクシーすぎるという批判で公認撤回された某海女ちゃんそっくり。
かわいいけど明日羽の餌食になる未来しか見えないよ!
「うに……じゅるり」
浜辺を見て、久遠ヶ原屈指のムッチリ系・満月美華(
jb6831)は涎をたらした。
今日は目にも眩しいビキニ姿だ! 誰得!
「食べ物あるところに私あり! さぁウニパーティーよ〜♪」
って、ちょい待て! これディアボロだから! 食べられないから!
と言ってるそばから、もうひとり。
「ウニですか……良いですね、カラごと焼いた焼きウニといったらもう……。ああ、ダメです。食べたいと思ったらもう止まれません! おいで、ソラ。私の力をブーストして!」
なんと、Rehni Nam(
ja5283)まで食欲の虜に!
ちなみにソラというのはモフモフサラサラの、赤い……金色のきつねだ。こんなことのために使われる召喚獣って悲しい。
「えとぉ……みなさん御存知と思いますが……ウニボロは、食べられませんよぉ……? でも平等院先輩から『巨大化実験で用済みになったウニを海岸に捨てた』という情報を聞いたので……もしかすると、食用になるウニがいるかも、ですねぇ……」
真剣な顔で月乃宮恋音(
jb1221)が告げた。
って強引すぎるぞ、このプレイング! たしかに『言ったもん勝ち』とは書いたけど、これじゃ平等院がただの馬鹿じゃないか……って、うん何も間違ってなかったわ。
というわけで恋音の無茶苦茶な主張により、ウニボロと混じって通常の(でかいだけの)ウニも砂浜に現れた! やったね!(ヤケクソ)
「さすがチチノミヤ教授魔神フィクサー! さっそくウニ狩り開始です!」
Rehniが包丁片手に走りだした。
「恋音、一緒にウニ食べよー!」
豊満な体をゆっさゆっさ揺らしながら、美華も大剣かついでウニ退治に。
「あのぉ……過去の経験からして、ウニボロには落とし穴が有効ですよぉ……みんなで掘りませんかぁ……?」
恋音の提案に何人かが頷いた。
こうして砂浜は落とし穴だらけに! 次々と二次被害を招く結果となった!
今回の恋音はキレてるな!
「それにしても大きいウニだなぁ……。よっしゃ! てっぺん取りにいっちゃうぞ!」
ふと思いついたように、椎菜はダッシュした。
そして捕獲したウニ(食用)に手をかけ、よじのぼる。
「なにやってんだ新入生」
意味不明な行動に、ラファルが問いかけた。
「はい先輩! せっかくなので上まで上りたいと思うんです!」
「大丈夫か? トゲだらけだしヌルヌルじゃねーか」
「大丈夫です! ヌルヌル上等ですから!」
「マジかよ……こいつはクレイジーだぜ」
ラファルにクレイジーとか言われるようじゃ相当だ。
じきにウニの脳天まで上りきった椎菜は、トゲの隙間を選んでナイフを突き立てる。
「てっぺんとったど〜〜!」
このキテレツな行動は、椎菜の依頼デビューを飾るに十分すぎた。
そんな騒ぎを知りもせず、鳳静矢(
ja3856)はラッコ姿で魚介類を獲っていた。
今回のは魔装の着ぐるみではない。携帯品の着ぐるみだ。
これならば、たとえ戦闘依頼と出発がかさなっても交換可能!
いや確かに『あれ?』と思ったけど……コメディ依頼でそんな配慮必要ないぞ! 持ってない装備品だって持ってることにできるんだから! 桜花のジャンクV兵器とか、やりたい放題だぞ! なんだあれ!
まぁともかく、そんなわけで(どんなわけだ?)海へ漁に来ているラッコであった。完。
じゃなくて。
槍を使って順調に魚を獲っていた彼だが、気がつけばウニボロ騒ぎのおかげで魚はみんな逃げてしまっていた。
ここで野生の狩猟本能を邪魔されたラッコの怒りは有頂天に!
『あんたらなんばすっとね!?』
なぜか方言丸出しでホワイトボードに抗議を書きつつ、槍を捨てて上陸するラッコ(アラスカ出身)
そしてそこらへんに落ちてた杭を抱え、「キュゥゥゥ!」とか叫びながらウニボロに突進する。
おお、これはどこかの島では最強とされる究極兵器・THE丸太!
だが待て、ただの丸太は吸血鬼には刺さっても天魔には刺さらんぞ!
ばこーーーん!
「キュゥゥーー!?」
ウニに轢かれて吹っ飛ぶラッコ。
これはひどい……鳳静矢ともあろう者が、こんな凡ミスを……。
そしてこれを皮切りに、久遠ヶ原海岸ではウニボロ無双の地獄絵図が展開されるのであった。
その日、猫野・宮子(
ja0024)は水着姿で遊びに来ていた。
しかも『みやこ』というゼッケンをつけた白スク水である。正義!
「うん、この水着、今年も着れそうだね。今年は新しく買わないでも……って、なにごと!? ウニ!?」
突然襲いかかってきたウニボロに驚きながらも、冷静に身構える宮子。ja2桁台は伊達じゃないぜ!
「海で遊んでる皆を困らせる悪のウニボロは……魔法少女マジカル♪みゃーこが倒すにゃ!」
いざ魔法少女の出番と、猫耳猫尻尾をつけて変身!
手に持つのは、銘剣・冷刀マグロ!
「ボクのマグロが光って唸る! 必殺・マジカル♪ホームランにゃー!」
マグロをブンブンさせて、マジカルみゃーこは真正面からウニボロに立ち向かった。
そして転がってきたところを思いっきり振りかぶって──
グワァラゴワガキーーン!
すさまじい打球音とともに、みゃーこは吹っ飛んでいった。
「にゃにゃーーーー!?」
犠牲者第2号ホームラン!
でも安心してくれ。この依頼の参加者は1人を除いて漏れなく犠牲者になるから!
「ウニがいっぱいなのですぅ〜! 食べられるのを、この桶に……って、大きすぎですよぉ! 入らないのですぅ〜」
海女さん衣装で桶を抱え、浜辺をあたふた走りまわる木葉がいた。
後輩にカッコイイ姿を見せようとしてたのに、このザマである。
その背後から明日羽が問いかけた。
「ナニが大きすぎて、どこに入らないって?」
「はわぁ……っ!?」
硬直した木葉を、容赦なくウニボロが撥ね飛ばした。
どぉ〜〜ん!
「はにゃぁぁ……っ!?」
体重が軽いので、紙切れみたいに吹っ飛ぶ木葉。
その着地点に明日羽が駆け寄って、華麗に受け止める。
「大変、木葉ちゃんケガしてるよ? なおしてあげるね?」
と言いながら、木葉の首筋を舐める明日羽。
彼女のヒールは、舐めることで発動するのだ。
「そ、そこはダメなのですぅぅ……!」
「そこってどこ?」
「はぅぅ……」
「ここがいいの?」
目を閉じてピクピク震える木葉の胸元に、明日羽の舌が入り込み(省略されました。すべてを読むには……
「浜辺でうに? ご冗談を。うには森に落ちてるものでしょう」
でかいウニが出たという騒ぎを聞いて、翡翠雪(
ja6883)は真顔で言った。
今日は翡翠龍斗(
ja7594)とのデートだ。
龍斗のほうは、『ウニボロ? そんなことより雪とイチャつくのが最優先だ!』という心構え。雪の水着姿にデレデレである。爆発しろ。
「雪、水着姿も可愛いです。そしてウニというのはディアボロらしいですよ」
「ディアボロ? なら納得です。しかし愚かな……うに魔人の祟りも恐れぬとは……」
なにそれコワイなことを真剣に言う雪。アトリエのやりすぎである。
そこへ、リア充死すべしと猛突進してくる巨大ウニ!
「これは危険ですね。いったん逃げましょう」
そう言うと、龍斗は雪をお嬢様だっこした。
そしてあわよくばラキスケを……などと考える龍斗だが、それと裏腹に雪は言う。
「逃げてはいけません、龍斗さま! あのうにを撃滅するのです!」
「いや、あんなのほっといてデートを……」
「いけません。まずはこの場をおさめることに専念しましょう。デートはそのあとです」
「そうか……そうだな。よしわかった」
色仕掛け云々を考えてた龍斗だが、雪のほうはコレっぽっちもそんな気ナシ!
ちょっと! 雪さーーん! 旦那さん泣いてますよーー!
ともあれ、ウニが転がってきた。
それぞれ得意の魔具を構え、迎撃体勢をとる龍斗と雪。
ふたりの間に『絆』が結ばれ、いつも以上の力が湧き上がる。
「龍斗さま、タイミングをあわせましょう!」
「わかった。一点集中攻撃で行こう」
「では行きます! 1、2! 絆・連想撃! シューートォッッッッ!」
どばああああん!
愛の力がウニを打ち砕いた。
バラバラになって飛び散る、トゲとカラ。そしてオレンジ色の中身。潮の香りが立ちこめる。
「これはまさか……ただの馬鹿でかいウニ!?」
四散したウニの残骸を見つめて、龍斗は呟いた。
「え。ディアボロではなくて、ですか?」
「ああ。どうやら……よくわからない事態が起きているようですね」
剣をおさめると、龍斗は片目を閉じて雪を見つめた。
そして、そっと雪の頭を撫でる。
「雪……髪に芋けんぴ……もといウニが付いてましたよ」
「髪にウニですか……」
「髪にウニです」
こうしてよくわからないノリのまま、ふたりはデートを再開するのだった。
「なにか騒がしいけどォ……今日は休暇だから、みんなで勝手に始末してねェ……?」
喧騒から離れた砂浜で、黒百合(
ja0422)はデッキチェアに寝そべりトロピカルカクテルを飲んでいた。
日焼けしないようビーチパラソルで日陰を作り、優雅に読書。
クーラーボックスには昼食用のサンドイッチが用意され、完全なバカンス状態だ。
が、そこへ転がってくる超巨大ウニボロ! 直径20mぐらいある! 対黒百合用の特別製だ!
「今日は休暇だって言ったでしょうォ……?」
黒百合は文庫本をサイドテーブルに置くと、ロンゴミニアトLV20!を抜いて身構えた。
そのままフルスイングでウニボロを水平線へ……と思った瞬間、黒百合の背中から鎖が絡みついた。
「あらァ……? これ、どういうことォ……?」
「ん? 身に覚えあるよね? 小町のこと覚えてるよね?」
答えたのはもちろん明日羽だ。
「意外ねェ……明日羽ちゃんって、そんな根に持つ人だったのォ……?」
「黒百合ちゃんに休暇なんて似合わないよ?」
「なにそれェ……すごく迷惑ゥ」
と言った直後、黒百合は身動きできないままウニボロに吹っ飛ばされたのであった。
ああ、落ち着いてバカンスもできないこんな世の中じゃポイズン!
「ウニ型の天魔か……ふむ」
下妻笹緒(
ja0544)は真面目な顔で海岸を見つめていた。
「なるほど、一見するとウニ型ディアボロが砂浜を転がっている。……だが見る者が見れば、それは転がっているのではない。ただ転がされているだけだ、ということは明白。転がるという行為には自らの意志が必要であり、いかにして転がるか、どのコースを転がるか、見る者にどういう影響を与えるか。それら全てを考えて行わなければならない、知性ある者だけに許された運動なのだ。ただ速さと固さを頼みに美学なく転がされる様は、あまりに哀れ……」
だれにともなく呟く笹緒の主張は、いつも以上にいつも通りだった。
そして彼は結論する。
「よかろう、ここはこのパンダちゃんが真のローリングを見せてやろう。ひとたび回転すれば皆が歓声をあげて喜ぶ、ジャイアントパンダのローリングを!」
そう言うと、笹緒は砂浜の上でコロンとでんぐり返しした。
たしかにカワイイ。中身はちょっとアタマおかしいオッサンだが、パンダ着ぐるみの可愛さは強烈だ。
問題は、そんなもの見てる余裕は誰にもないってことだけど。
「皆もうすこし心に余裕を持つべきだ。こうして心おだやかにローリングをふををを……っ!?」
笹緒が踏んだのは、恋音の掘った落とし穴だった。
罠は計画的に作ろうぜ!
戦場でコロンコロンしてるパンダもおかしいけど!
「ん……? なにか騒がしくない?」
陽波透次(
ja0280)は、砂浜の片隅でソロ焼肉を満喫していた。
ただ食べているわけではない。焼肉部の一員としての自主練だ。
「よし、様子を見に行こう。精霊さんは背後を警戒してくれ」
まじめな顔で告げる透次だが、彼以外だれもいない。
最近の透次は焼肉愛をこじらせ……いや追及した結果、なんと『焼肉の精霊』と友達になることができてしまったのだ。
この可憐なる焼肉美少女精霊に背中を守ってもらえば、まさに百人力。
かねてから身につけていた焼肉補正を合わせれば、戦闘力は計り知れない!
「焼肉神と焼肉精霊の加護を得て……回避を極めた僕が全ての天魔を倒す!」
念のため言っておくが、神だの精霊だのは透次の妄想だ。
しかし妄想が力を生むこともある! 焼肉の美少女精霊ってのは少々どうかと思うけど!
ともあれ透次は、右手に箸、左手に黒毛和牛霜降り肉が入った木箱を持ち、炭焼きコンロを膝でリフティングしつつ現場へ向かった。
だいぶワケわからんが、これぞ焼肉部流エクストリーム焼肉!
焼肉の匂いで敵の興味を釘付けにし、隙をついて──
「アッーーー!?」
残念、透次は落とし穴に落ちてしまった!
いくら回避力あっても罠には無効!
焼肉力は万能だが全能ではない!
「じゃあーーん♪」
自前の登場SEとともに登場したのは、ユリア・スズノミヤ(
ja9826)
身につけているのは、黒のシースルーレースのフレアトップビキニだ。プロポーションは完璧である。
小脇にスイカをかかえ、右手には金属バット。
ソロスイカ割りに挑む構えなのは一目瞭然だ。……ってソロ焼肉よりハードル高いぞ!
「だいじょぶ、スイカなら山のように持ってきた。バットで割り放題食べ放題」
自信満々に言うユリアの背後には、八百屋のごとくスイカが山積みされている。
なにが『だいじょぶ』なのか不明だが、ともかくユリアは自分で目隠ししてスイカ割りを始めるのだった。
「……あれ? でもこれって、声かけてくれる人いないとどうなるの?」
金属バットを担いで首をかしげるユリア。
残念美人を通りこして、医者を呼ぶべきか。
「でもまぁ嗅覚で何とかなるはず。撃退士の力を見ろおおおりゃあああっ!」
ぱっかーーーん☆
とても良い音を響かせながら、ユリアは横から突っ込んできたウニボロに撥ね飛ばされ、恋音の掘った落とし穴にホールインワン!
よし、次に行こう!
「むう、真珠と遊びに来たはいいが……なんだこれは」
海岸の惨状を見て、和泉大和(
jb9075)は呆然と呟いた。
「おっきいうにがあばれてるですにゃん! 大和くん! あのうにおいしいですにゃ? 食べていいですにゃ?」
じゅるりとよだれをたらすのは、露出多めなビキニ姿の真珠・ホワイトオデット(
jb9318)
彼女もまた、直径5mのウニに食欲を覚える奇人である。
「いや、あれを食べるのはまずい。とにかく……
「大和くん、うに狩りにいくですにゃん! にゃっふー! うにーー! うにうにーー!」
食物連鎖ぱわー全壊で、ウニボロへ襲いかかる真珠。
「待て、あれを止めるのは容易ではないぞ!」
「うにーー! うにどーーん! どどーーん!」
大和の制止も聞かず、真珠は太古の石版を振りまわしながら跳びかかっていった。
ダアトなのに石版で殴る気満々だ。たまに見かける殴りダアトか。
「待て、真珠! ここは俺に任せるんだ!」
彼女にケガをさせるわけには……と大和は走りだした。
しかし具体的にどうするか何も考えてない。とりあえず体当たりで止めてみようと、シールドを活性化させる大和。
「うおおーー! たとえ死んでも、真珠は俺が守るー!」
すぱこーーん!
「グワーーッ!」
「大和くーーん!」
無念、体当たりで止められる相手じゃなかった!
ウニボロに撥ね飛ばされ、血まみれで宙を舞う大和。
(ああ、俺は死ぬのかな……もし生きてたら、お目覚めは真珠の膝枕だといいな……)
心の遺書を残しつつ、大和は脳天から砂浜へ落下した。
上半身だけ砂浜に突き刺さった犬神家状態の彼を見て、真珠はハッと我に返る。
「大和くん! しっかりしてにゃーー!」
ウニ丼食べ放題の夢をあきらめて大和のもとへ駆け寄り、ズボッと引き抜く真珠。
そのまま心肺停止状態の大和に乳を押しつけ、思いきりギュムギュム!
「大和くん死なないでですにゃーん・゜・(ノД`)・゜・うにゃーー!」
こうして大和は望み通り、乳と膝に挟まれて窒息死したのであった。
おおかたの撃退士と同じく、アルティミシア(
jc1611)もたまたま海へ遊びに来ていた。
が、そこで遭遇したウニボロの姿を見た瞬間、彼女は豹変!
「ぴゃあああ! う、ウニが! なんでウニ!? ぃやー! このウニ頭! またボクを追い回す気ですか! くたばれウニヤロー! うわぁーん!」
意味不明なことを口走ると、アルティミシアは護身用の(?)ハンマーを振りかざしてウニボロに殴りかかった。
うん、女の子なら護身用のハンマーを持ち歩くのは当然だよね! 久遠ヶ原は天魔と変態でいっぱいだからね!
だが彼女が錯乱したのにはワケがある。かつてアルティミシアはストーカーじみたウニ男(髪型)に粘着された経験があり、ウニに対しては恐怖と恨みを持っているのだ。
「しねーー! しにやがれですーー! 破廉恥なウニ野郎はデストロイですーー!」
ばこーーん!
「ですぅぅぅ!?」
真っ正面からウニボロに激突したアルティミシアは、ハンマーを握ったまま海へ吹っ飛んでいった。
「あれはもう天魔ではなく、天災ですね」
海の家で焼きそばを食べつつ、雫(
ja1894)は呟いた。
野球中継でも見るような気楽さで砂浜の惨状を眺めながら、ソース焼きそばに舌鼓を打つ雫。
そこへ次々と負傷者が担ぎ込まれてくる。この海の家は救急避難所なのだ。救急員は雫だけだが。
「大和くんを助けてにゃあーー!」
泣きだしたのは真珠だった。
担架で運ばれてきたのは、全身鼻血まみれの大和。
「すこし待っててもらえます? 焼きそばが冷めるので先に食べちゃいます」
真顔で言いながら、雫は焼きそばに青のりをかけた。
「焼きそば食べてる場合じゃないですにゃーー!(ずるずる)」
「なるほど、心臓が止まってますね(ずるずる)」
動かない大和を前に、焼きそばをすする少女2名。
だが、そこへ! 壁をブチ破って飛び込んでくるウニボロ!
「まったく……落ち着いて食事もできませんね(ずるずる)」
かったるそうに言うと、雫は手近の盾(大和)を拾ってウニボロへ投げつけた。
「これぞ撃退士バリア!」
攻撃は最大の防御と言うとおり、雫にとって『盾』はこうやって使うものなのだ。
もちろん大和は弾き返され、雫も真珠も他の負傷者たちも海の家ごと押しつぶされたのは言うまでもない。
「生体レンジ! 炎陣球ーっ!」
Rehniはウニ相手に八面六臂の戦いぶりを見せつけていた。
敵がウニボロなのか食用ウニなのか区別つかないため、まさに手当たり次第だ。
しかしウニボロに魔法はほとんど通じない。
それどころか『暴れるウニボロ』が引火して『暴れる“燃え上がる”ウニボロ』にグレードアップしてる。
「ひあああっ! 熱っ! 熱っつうう!」
ファイヤーウニボロに斬りかかって、炎が燃え移ってしまう美華。
脂肪たっぷりなので大変よく燃える。チャーシューにしたらおいしいだろう。
「おぉ……満月先輩、いま消しますよぉ……」
と言いながら恋音がぶっかけたのは、特別なミネラルウォーター。
というわけで、お約束通り肥大化した美華の腹が恋音を下敷きに! それだけでなく百合華と絵夢も押しつぶされてる。
そこへすかさず転がってくるファイヤーウニボロ!
どかーーーん♪
「「ひぎゃあああ!」」
「……大惨事ですね。てへぺろ。しーらない。ソラ、見なかったことにして帰りましょう」
血まみれで宙を舞う美華たちを見送って、Rehniは帰り支度を始めた。
──と見せかけてからの、ボディペイント→包丁一閃コンボ!
美華たちを吹っ飛ばして速度低下したウニボロめがけ……
「くらいなさい、掟破りのCR+4闇歩アターック!」
ばこーーーん!
「きゃあああ!?」
正面から戦ってもウニボロには勝てないぞ!
そのころ。袋井雅人(
jb1469)はマイペースに海産物を収獲していた。
魚や貝類、エビやカニなど豊漁だ。
彼にとって久遠ヶ原海岸は庭のようなもの。いままで何件の依頼をこの海で解決してきたことか。
「たくさんとったどー!」
ずどおおおおん!
獲物を振りかざした雅人の頭上から、恋音と美華と百合華と絵夢が落ちてきた。
「親方、空から女の子が!? な、なにごとですか!? ハッ、恋音!? 大丈夫ですか、まずは心臓マッサージですね!」
と言いながら、まじめな顔で豊胸マッサージをはじめる雅人。
「そ、それは結構ですぅぅ……!」
「いいえ、恋音の心臓は止まってます! すぐに処置しないと!」
「心臓が止まったら死んでますよぉぉ……!?」
「だから私がマッサージしてるんです!」
無茶苦茶なことを言う雅人だが、アドリブなので仕方ない。誕生日おめでとう。
「そんなのより、一発で体力回復する方法があるよ?」
明日羽がひょっこり顔を出した。
「おお、どんな方法ですか?」
「このウニボロのトゲを刺すの。やってみる?」
「いいですね! では恋音、股を開いてください!」
「あ、あのぉぉ……!?」
慌てて跳びのく恋音。
「ん? ウニボロのトゲを刺す実験やりたいんだよね?」
明日羽が問いかけた。
「たしかに、毒の効果を調べたいとは思いましたけれどぉ……ほんの軽く、ですよぉ……?」
「軽く、ね? 袋井君わかるよね? 軽くだよ? かるーくね?」
「もちろんわかってますとも! いきますよ恋音! フオオオオオッッ!」
両手に巨大なトゲを持って、ラブコメ仮面に変身する雅人。
その直後、恋音の絶叫が島全体に響きわたった。
「……皆、配置につけ」
砂浜を見下ろす安全な高台で、染井桜花(
ja4386)は指示を下した。
それに従って動くのは、チャイナカフェ赤猫の警備スタッフ50名。
しかも全員がピチピチのツナギを着た『やらないか?』みたいなのや、海パン一丁の特殊刑事みたいな、別の意味で鍛えられた男ばかりだ。
彼らは一斉に自転車型発電機にまたがると「……充電開始」という桜花の合図でペダルをまわし始めた。
言うのは簡単だが、冷静に見ると異様な光景だ。
彼らは試作型ジャンクV兵器・巨大冷凍レーザーキャノン『氷華』の電力を溜めているのだ。これは試射実験なのである。
やがて発射に十分な電力が蓄えられた。文字どおり自家発電した男たちは疲労困憊だ。ひと仕事終えた汁男優みたいになってる。
「……では……テスト開始」
海パンとツナギの男たち50人に見守られながら、桜花は『氷華』のトリガーに指をかけた。
眼下で暴れるウニボロをとらえ、神経を集中する。
「……氷華……発射!」
ズキュゥゥゥン!
だが、そのレーザーはウニボロの棘や殻に撥ね返されて四方八方に散乱し、二次被害を生むのだった。
「ほほう、ウニボロとはこれまた懐かしいのう。三年前に遭遇したものより、なんぞ進化しておる気がするが……」
感慨深げな口調で、小田切翠蓮(
jb2728)はニヤリと微笑んだ。
「以前のウニボロはシャコガイのウォータージェットで撃破したわけじゃが、同じ手が通じる相手でもあるまい。……さて、どうしたものか」
思案しつつ、翠蓮は闇の翼で飛び立った。
とにかく敵の動きを止めねばと、まずは阻霊符を発動。さらに30mの上空から、手当たり次第にファイアワークスを地上へ撃ち込む。それが切れれば炸裂符、ダークショット……と、連射乱射撃射!
ただでさえ大混乱の砂浜は、この無差別絨毯爆撃で更なる混乱に陥った。
なにしろファイヤーウニボロは縦横無尽に転げまわり、氷華のレーザー光線が乱反射しまくり、無数の落とし穴が撃退士を飲みこみ、上空からは雨あられと攻撃魔法が降ってくるのだ。これを地獄と言わずして何と言うのか。
「――おのれ、卑劣なるウニボロどもめ……! おんしらの尊い犠牲は忘れぬぞ」
無差別爆撃を続けながら、涙をぬぐう翠蓮。
だがそこへ、ウニボロの対空棘ミサイル(麻痺)が飛んできた。
「ウニの分際で飛び道具とな!?」
油断していた翠蓮にこれを避ける術はなく、無惨に墜落。お約束どおりウニボロに撥ね飛ばされてしまうのであった。
「それにしても敵多すぎよ! あちこち落とし穴だらけだし、空から攻撃してくる馬鹿はいるし、どこかから殺人レーザーが飛んでくるし! たよりになる味方いないの!?!」
雪室チルル(
ja0220)は、たまたま遊びに来てて騒ぎに巻き込まれた一人だった。
さっきから大剣ブンまわして脳筋スタイルで頑張ってるのだが、なんせ敵は硬い。味方もひどい。
「あっ、そこにいるのは明日羽ね! 手伝って!」
よりによって最悪の人に助けを求めてしまうチルル。
「ん? 私はタダじゃ動かないよ? わかってるよね?」
「お礼すればいいのよね? ただし今回、お礼は敵を全滅させてから! あたいも学んだのよ!」
「ふーん? 私は何をすればいいの?」
「そうね、鎖で敵を縛りつけて。そしたら、あたいがエイッってやっつけるから」
「こんな感じ?」
当然のごとく、明日羽の鎖がチルルを縛り上げた。
「そうじゃなくて! あたいじゃなくて! ウニのほう!」
「もういないよ?」
「そんな馬鹿な……って、えええっ!?」
明日羽の言うとおり、ウニボロは蜘蛛の子を散らすように去っていた。
まぁこいつら最初から明日羽の手下だし。チルルちゃんをお持ち帰りできるなら収獲は十分だ。
「これでいいね? じゃあお礼もらうよ?」
「ちょ、ま!」
「今回は新しい所を開発しようね?」
「!?」
「ほら、力を抜いて?」
「ひにゃあああ……っ!?」
こうしてチルルの後ろの純潔と引き替えに、浜辺には平穏が取りもどされたのであった。
「おいコラ、ちょっと待てー! なんで勝手に平和になってんだ!」
予想外の展開に、ラファルが怒鳴り声を上げた。
なにしろ彼女の任務は最後に全てを爆破してオチをつけること。その仕事を完全に失ってしまったのだ。
「まぁいいじゃないのもぎゅもぎゅ。おかげでゆっくりウニが食べられるしむぐむぐ」
カチ割りにしたウニを抱えて、スプーンをくわえる美華。
「そうです。みんなで仲良くウニパですよ。焼きウニおいしい〜♪」
Rehniも素敵な笑顔でウニを満喫していた。
新入生の椎菜も満足げにウニを食べてるし、だれも異存はない。チルルのおかげでみんな満足だ。
「ざっけんなコラー! 俺は爆破無双しにきたんだー! アタマきたぜ、こうなりゃ何もかもを吹っ飛ばす! 全偽装解除! 全砲門開け!」
怒りのオーラとともに、ラファルの全火力が火を噴く!
という寸前で、美華のおっぱいビンタが炸裂した。
『攻撃力=質量×速度×魔乳力2乗!』
「アバーーーッ!?」
偽装解除したまま、ラファルは水平線の彼方まで飛んでいった。
たぶんウニボロに轢かれるよりダメージでかい。
「食事の邪魔をする者は許さないもぐ」
偉大なる食欲の前には友情など無力!
そんなわけで、ウニボロに吹っ飛ばされたり落とし穴に落ちたりした連中も集まってきて、平和なウニパーティーが始まった。
あ、ラファルとチルルはお察しください。
あと恋音と木葉も無事な体では済んでないと思うけど、優秀なアスヴァン(明日羽)がいるから治療は任せとけ!
そんなこんなでウニボロ騒動一件落着。
──のはずだったが、ここで月詠神削(
ja5265)が登場する。
この一連の騒ぎのあいだ彼はずっと海釣りに専念していたのだ。
「ウニボロとか知ったことか。一介の釣りキチとして、この広大な海を前に釣り糸を垂れない選択肢はないんだよっ!」
なにもこんなときにと思うが、誰も釣りイベント開催しないから神削はヤサぐれちゃってるんだ。反抗期なんだ。これ見たMSは釣りイベ開催してあげて!
「騒ぎのせいで魚が逃げそうだが……それでも釣り上げるのが腕の見せどころだ。さて、どうなる……?」
ここで唐突に始まるダイスロォール!
>牛男爵MSは1D6を振って下さい。それの出目で(略
1:活きのいい大物の魚をGET! やったぜ!
2:ウニボロを釣り上げる。お前じゃねぇぇ!
3:ウニボロにやられた撃退士を釣り上げる。リリース。
4:ゴ○ラを釣り上げる。ヤバい!?
5:佐渡乃明日羽の水着を釣り上げる。……わ、わざとじゃないよ?
6:爆破オチ用超高威力爆弾。
というわけで公正にダイスを振ったら4が出たよ!
信じて! 本当に振ったから! 4が出るまで振ったから! このオチはぜんぶ神削のせいだから!
ア ン ギ ャ ア ア ア ア ア ア !!
怪獣王の咆哮が海岸に響きわたった。
「よし逃げよう」と冷静に判断してトンズラする神削。これはひどい。
その直後、青白い放射火炎が砂浜を薙ぎ払い、すべてを焼きつくし吹き飛ばした。
今度こそ、完全に跡形もなく一件落着!
なおゴ○ラは海岸を焦土に変えると、そのまま海へ帰っていきましたとさ。めでたしめでたし。