猛烈な日射しの中、撃退士たちがスクラップ工場に到着した。
迎え撃つのは、全身凶器と化した殺人カー!
「ナイト2000がモデルでしょうか」
敵の姿を見て、雫(
ja1894)が呟いた。
「なんだか、どこかで見たような敵ですわ。そのうち『トランス○ォーム!』とか叫んで変形したり……いえ、まさかね」
シェリア・ロウ・ド・ロンド(
jb3671)も、見当違いなことを口走っている。
ボンドカーって言ったのに!
「どんな車か興味があったが……なるほど、ああいうタイプか」
まじめな顔でうなずくのは、数李碑(
jb6449)
だが左手には水の入ったバケツを、右手にはスポンジを持っている。
まさか……いやまさかな……そんなアホなことするわけが……でもどう見ても洗車する格好だコレ……。
「よし、まずは戦闘前に撃退酒をイッキ飲みですよ! ングッ、ングッ、プハー、うめぇ!」
敵を前にして、袋井雅人(
jb1469)はいきなり撃退酒をあおりだした。
意味もなく飲んだわけではない。特殊体質の彼は、酔えば酔うほど真面目キャラになるのだ。
しかも今日はアスヴァン。支援に全力をつくす方針だ。
「正直アスヴァン時の自分は役立たず感が半端ないですが、気にしません! 全力でやらせてもらいます!」
正直ラブコメ仮面にチェンジするのが最善と思う。
ともあれ戦闘開始。
ちなみに黒百合(
ja0422)は、戦闘を放棄してスクラップ作業へ。
染井桜花(
ja4386)は、工場の隅で何かちまちま作ってる。
佐藤としお(
ja2489)にいたっては、ラーメン屋でバイト中。現場にすら来てない始末。
自由ダム!
なんか色々ひどいが、まずは数李碑のターン!
バケツとスポンジを手に、殺人カーへ跳びかかる!
「ふ……、トレンディな車の天魔さんよ……せっかくのボディが返り血まみれじゃ、恰好つかないぞ。ひとつ……洗ってくかい?」
意味不明なことを口走りつつ、泡立ったスポンジを敵の車体にこすりつけ──
ドグシャアアアッ!
「アバーッ!?」
真正面から撥ね飛ばされ、派手に吹っ飛ぶ数李碑。
はたから見ると、ただ轢かれるために突進した自殺志願者にしか見えない。
「回復はまかせてください!」
撃退酒片手に、雅人が駆けつけた。
「た、たのむ……俺に洗車をさせてくれ……!」
「大丈夫! 必ず治しますよ!」
「あ、ありがたい……」
この会話の間も、数李碑はバケツとスポンジを手放さなかった。
まさにGS店員の鑑!
そして雅人のアスヴァンが役に立ってる!
そんな二人をよそに、雫、シェリア、月乃宮恋音(
jb1221)の美少女トリオは真面目に戦っていた。
だが、時速100km超で暴走する車をとらえるのは難しい。おまけに、マシンガンやロケット砲が雨あられと飛んでくるのだ。
「面倒な敵ですね……。ならば、すれちがいざまに……地すり残月!」
雫の太陽剣が一閃し、三日月型の衝撃波が地面を走った。
しかし、特殊装甲板がこれをあっさり撥ね返す。
直後に飛んできたロケット弾によって、雫は吹き飛ばされたのであった。
「私にまかせてください! アスヴァンの私に!」
喜んで駆けつける雅人。
役に立ってる!
──という具合に戦闘をくりひろげる撃退士たちの背景では、黒百合がスクラップ作業に取りかかっていた。
「きゃはァ、暴れるだけの簡単なお仕事だわァ……」
とか物騒なこと言いながら、ロンゴミニアトLV19を取り出す黒百合。
ただでさえ恐ろしい攻撃力を持つその武器に、コンクリートブロックや鉄塊をくくりつけて更に破壊力をUP!
満足の行く調整を施したら、いざ実戦に。
「さてェ……お仕事開始よォ……」
操作補助用のスラスターを噴かして、ガバッと振りかぶる。
頂点まで持ち上げたら、スラスターを逆方向に噴射。
叩きつけられた車のボンネットは一発でひしゃげ、盛大に部品が飛び散った。
すかさずスラスターを噴射させ、ふたたび巨大槍を振りかぶる黒百合。
そしてまた同じように振り下ろす。
今度は車の屋根が陥没し、運転席のシートが根元から倒れた。
以下おなじ手順をくりかえして、10秒弱で車1台を鉄屑に変えてしまう黒百合。
「きゃはははハハハハァ! これいいわァ、物凄く楽しいわねェ〜♪」
高笑いしながら、黒百合は2台目の車もたちまち鉄塊にしてしまった。
さらには練気と乾坤一擲まで使って、物理攻撃1000で廃車を叩きまくる。
「でもこれ、実戦だと使いどころないわよねェ……無駄なターンも消費してスタンしちゃうしィ……」
片端から車をブン殴りつつ、溜め息をつく黒百合。
そんなの、1D6で6を出せば済む話じゃね?
「そうだ、いいことを思いつきましたわ!」
1人で6人分ぐらいの仕事をする黒百合を背景に、シェリアはパンと手を叩いた。
皆の注目が集まる中、彼女は言う。
「天魔にスクラップ作業を手伝ってもらいましょう。あれだけ多彩な装備なら廃車を木っ端微塵にするのも造作のないこと。廃車を巻き込みながら戦えば手間も省けて面倒がありません! さすが私♪ いつも以上に冴えておりますわ!」
堂々と自画自賛し、敵にファイヤーブレイクをぶちこむシェリア。
狙いどおり、敵は急ハンドルを切って彼女のほうへ突っ込んでくる。
「来ましたわね!」
計画どおりとばかりに、シェリアは廃車の陰に隠れた。
これを盾にすると同時にスクラップにしてもらう、一石二鳥の作戦だ。
が、しかし。
ズガアアアアンン!
高威力の徹甲弾が、車ごとシェリアを貫いた。
「考えが甘かった……?」
ばたりと倒れるシェリア。
「ご安心を! 私が癒しますよ!」
即座に雅人が走ってきた。
役に立ってる!(コピペ
「うぅん……これは、厄介な相手ですねぇ……」
仲間3人がやられたのを見て、恋音は少々考えた。
もしかすると敵の内部は攻撃が届かないぶん安全では──と。
そうと決まれば、さっそく『瞬間移動』で敵の運転席へフェードイン(古!
バコオオオオン!
「はわぁぁぁ……っ!?」
普通に撥ね飛ばされる恋音。
残念! 天魔の体内に瞬間移動とか無理だった!
「無事ですか恋音! すぐに治療しますよ!」と、雅人。
ふだんなら『ここですか? ここを●●してほしいんですか!?』などと言い出す彼だが、今日は真面目!
「いま見てましたが……敵の内部から破壊するのは、良い作戦だと思います」
雫が恋音に話しかけた。
「うぅ……しかし、結果はこのとおりに……」
「フロントガラスを破れば行けるのでは?」
「お、おぉ……?」
おもわぬ発想に驚く恋音。
今ここに、雫と恋音のタッグが結成された!
「では、いきますよぉ……?」
恋音の攻撃魔法が撃ち込まれ、狙いどおりにフロントガラスが砕けた。
すかさず瞬間移動で運転席に乗りこむ恋音。
雫は瞬間移動とか使えないので、普通に助手席へ飛び乗る。
その瞬間。触手みたいなシートベルトが二人をガッチリ拘束!
ハンドルをにぎると性格が変わる『スピード中毒』のバステが発動し、恋音と雫の瞳から光が消えた。
「「ふ……ふふふふ……」」
二人そろって不気味な笑みを浮かべると、明日なき暴走開始!
あれ? これヤバくね?
そこへ、としおが現れた。
工場のオッサンたちが出前を注文していたのだ。
「へい、ラーメンおまちどぉ……ぉおおおっ!?」
魔法や銃弾の雨が降ってきて、としおは慌てて逃げだした。
もちろんラーメン屋の誇りにかけて、岡持ちは手放さない。これぞラーメン屋の鑑!
「なんだ、このトランス■ォーマーな雰囲気! って、やめろ! アブねー、こっちくんなっ! ラーメンひっくり返ったらどうすんだっ!」
としおは頭のタオルをほどくと、謎のアウルパワーで硬質化させて斬りかかった。
「とりゃああああ!」
シュビィィィン!
「グワーッ!?」
殺人レーザーをくらって、倒れるとしお。
だが、日ごろ培ったラーメン力が彼を立ち上がらせる!
「なるほど、近付くのは難しいな……。ならば、この岡持ち型ミサイルポッドを受けてみろ!」
謎の兵器で謎の攻撃をくりだすとしお。
しゅぱぱぱぱー!とかいう音をたてて、花火みたいなミサイルが飛んでゆく。
でも残念! V兵器じゃないからノーダメージ!
すかさず殺人カーのターン!
火炎放射器の猛火が、としおに襲いかかる!
「反撃だと!? ここは、この器型シールドで!……って、中味がこぼれたじゃねーか!」
全身真っ黒焦げで頭もチリチリのアフロになってるとしおだが、彼にとってはラーメンのほうが大切なようだ。
「ちっくしょー、ラーメン屋ナメんなよ! こうなりゃ最後の手段! くらえ、つり銭型ハンドクラッカーからの……零距離岡持ちミサイル!」
言ったとおりのことを実行したとしおは、完全にスピード狂と化した雫の太陽剣でバッサリ斬り捨てられたのであった。
そもそもタオルとか岡持ちで戦うのは無理!
ここで満を持して登場したのは桜花。
いままで何をしてたのかというと、持ちこんだV兵器のジャンク品と工場内のスクラップなどを使って武器を自作していたのだ。
その名も、ロマンジャンクV兵器!
戦闘バイク『月華』にまたがり両手に謎兵器を抱えた姿は、『異様』の一語につきる。
「……遊ばせてもらう」
右手に大剣、左手に機関砲をひっさげて、桜花は氷の微笑を浮かべた。
だが、この大剣。刃がチェーンソーになっており、無数に並んだ鋸歯状の刃はムカデのようだ。
その名もずばり『大百足』
「……まいる!」
桜花は月華のアクセルをふかすと、大百足のブレードを回転させた。
そしてバイクの機動力を生かして砲弾をかいくぐり──敵の車体を大百足で豪快に斬り裂く!
ギャリギャリと、耳障りな金属音。
「……削り取る!」
車内で恋音と雫がズタズタにされてるけど、とくに問題ない!
「待った! 敵を倒す前に……俺に洗車させてくれ!」
復活した数李碑が、ふたたび天魔の前に立ちはだかった。
そして危険をかえりみず、突撃敢行!
「見てろ、天魔さんよ。洗車だけじゃない……オイルとウォッシャー液の交換……給油までサービスだ!」
徹頭徹尾、理解不能な策を打つ数李碑。
しかもオイルとかウォッシャー液とか言ってるが、中身は彼自身の血液だ。
これでウインドウォッシャーを作動させたとき、逆に視界がふさがれるという地味な嫌がらせ作戦!
そんな彼を、無数の銃弾と魔法がフルボッコにする。
「かえって好都合。手首を切る手間が省けた」
そう言うと、数李碑は敵の給油口(?)に血まみれの腕をつっこんだ。
「さぁ飲め、アウルの混じった血を。そしてエンストするがいい。300リットルぐらい飲ませてやる!」
こうして自ら大量出血した数李碑は、給油口に腕をつっこんだまま気絶した。
「……私は何も見なかった。ただ天魔を倒すのみ」
冷たく告げると、桜花は月華から飛び降りて左手の兵器をかまえた。
こちらは、試作型多銃身回転式機関砲『五月雨』
その名のとおり、雨のように大量の弾丸を浴びせるガトリング砲だ。
「……ぶっぱなす!」
銃身が回転し、猛烈な勢いで弾丸を吐き出した。
たちまち敵の車体に無数の穴が穿たれ、恋音と雫と数李碑も穴だらけに。
「走りの邪魔は、させませんよぉ……」
完全に瞳の色を失った恋音が、運転席から炸裂掌をぶちかました。
どぱああああん!
正面から食らって吹っ飛ぶ桜花。
炸裂掌で味方を殺したの、これで何回目だ。
「思った以上の強敵ですわね……」
仲間の惨状を見下ろしながら、シェリアは積み上げられた廃車の頂上に立っていた。
ラーメンマンもロマンジャンクV兵器も敗れた。雅人は負傷者の手当てで精一杯だ。
恋音と雫と数李碑は、完全に敵と同化している。
「ですが……私にはこれがありますわ!」
シェリアが懐から抜いたのは、2本のフランスパン!
いや、フランスパン型のV兵器か?
そうだよな、ただのフランスパンで天魔に勝てるはずないもんな! 『さっき作業場で拾った』とか書いてあるけど、きっと逃げたオッサンの中にパン職人が……いや撃退士がいたんだ!
「では参りますわ。うなれ、フランスカリパーン!」
廃車の山からジャンプすると、シェリアは暴走する殺人カーの頭上から両手のフランスパンを突き下ろした。
「パンへの想いは特殊装甲板も貫くんですの! 喰らいなさい、我が信念のいちげきー!」
ザシュウウウウッ!
フランスパンはやすやすと車体を貫通し、ついでに恋音と雫も刺し貫いた。
直後、目もくらむ閃光と耳をつんざく爆発音。
この爆発によって、黒百合以外の全員が吹き飛ばされた。無論シェリア本人もだ。
「いやあ、激闘でしたね。では皆さん、こちらへどうぞ。この私が! アスヴァンの私が! 癒して差し上げます!」
やけにジョブを強調する雅人。
大丈夫、役に立ってるよ!
「私は自分でヒールできるので結構です。すぐスクラップ作業に移りましょう」
血まみれのまま、雫は廃車の山に向かって行った。
そして即座に闘気解放。HBショットガンを乱射しはじめる。
「スクラップには出来ましたが……鉄くずにしては大きすぎですね」
そう言うと、雫は次にオリハルコン製パイプを抜いて廃車をボコボコにしていった。
「さすがオリハルコン、私が全力で叩いても壊れないし、曲がっても……少しひん曲がったかな?」
次に雫が取り出したのは、愛剣ガラティン。
効率を上げるため、地すり斬月でまとめてスクラップだ。
「ふむ、日頃から愛用しているから扱いやすいですね。できあがった鉄くずも小さく運びやすい。うふふ……だんだん楽しくなってきました……」
なにやら暗い笑い声をあげながら、淡々と車を殴りつづける雫。
ほかのメンバーも、それぞれ作業に取りかかった。
OP薬を服用し、肥大化した胸で車をまとめて押しつぶす恋音。
フランスパン二刀流で車を切り刻むシェリア。
桜花も『大百足』と『五月雨』で次々と車を鉄屑へ変えてゆく。
雅人もランタンシールドで地味に車を叩いてるし、たぶん役に立ってる。
ちなみにとしおは血まみれのままラーメン屋に。数李碑は雅人の介護もむなしく病院へ搬送済み。
そんな彼らのもとへ、ドス黒いオーラをまきちらしながら巨大槍を振りまわして突進してくる黒百合。
どうやらテンションが上がりすぎて、理性を失ってるようだ。
「あはァ……みんなスクラップにしてあげるわァ……♪」
「おちついてください、黒百合さん! 私がマインドケアでばぁーーっ!?」
一撃で場外ホームランされてしまう雅人。
「私が止めますわ! フランスパン無双ぉぉぉっ!?」
リーチ差がありすぎて、一方的に吹っ飛ばされるシェリア。
おしい! フランスパンが7mぐらいあれば!
その後、おなじく理性を失った雫が黒百合とぶつかりあい、桜花の謎兵器が火を噴き、恋音のおっぱいが全てを押しつぶして事態を終結させたのであった。
以上! 状況終了!