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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:普通
参加人数:7人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/04/14


みんなの思い出



オープニング


 それは前代未聞の依頼だった。
 というのも、よせられた派遣依頼書の『詳細』が白紙だったからだ。
 その依頼書には、ただこう書かれていた。

『撃退士数名を至急派遣されたし』

 そして派遣先の住所と連絡先が書かれてあり、規定どおりの報酬金も添えられていた。
 とはいえ、さすがに依頼内容がわからないのでは話にならない。担当官は依頼書に記された連絡先にコンタクトを取ろうとしたが、あいにく電話にもメールにも応答はなかった。
 連絡が取れないということは、ふつうに考えて天魔に襲われた見込みが高い。
 とはいえ、相手の正体もわからず──というより、天魔退治の依頼になるのかどうかもわからず、撃退士を派遣するわけにもいかない。
 しかし、このまま見過ごすこともできないのは確かだ。人命にかかわる危険性だってあるのだから。
 そこで担当官は、斡旋所にこういう依頼を出すことにした。

『どんな任務でも構わないという、命知らずの学生募集!』




リプレイ本文



 依頼の内容がわからない依頼。
 そんな珍妙かつ不安な任務を引き受けたのは、6人の学生たちだった。
『ひとり白紙プレか』と思った人。そうじゃない! そうじゃないんだ! たしかに約1名、白紙に見えるけど! ちゃんと出番があるんだ! ではリプレイをどうぞ!



● 染井桜花(ja4386)

 その日。謎の緊急依頼を受けた桜花は、戦闘バイクで現場へ急行した。
 向かう先は、大富豪・鐘持家の邸宅。
 そこで桜花を出迎えたのは、依頼人の孫である猛と隼人の兄弟だった。
「やった! おじいちゃんの言ったとおりだ! 桜花先生が来てくれた!」
 弟の隼人が、桜花に抱きついた。
「……あの……今日は、依頼を受けて……来たのですが……」
「そうそう大変なんだよ! 家政婦さんがさあ!」

 兄弟の話をまとめると、妊娠中の家政婦が急に産気づいたというのだ。ところが当人は大の病院嫌いで、自宅出産を希望。間の悪いことに助産婦にも連絡がつかず、藁にもすがる思いで久遠ヶ原に依頼を出したという。
「……私も経験はありませんが……どうにかしましょう」
 ことわることもできず、桜花はうなずいた。
 さいわいなことに、助産の本を読んだことはある。
 それに兄弟の家庭教師を務めた身としては、これほど有意義な人生勉強もあるまい。
「……では、案内してください」
「こっちだよ! こっち!」

 鐘持兄弟の案内で、桜花は寝室に通された。
 見れば布団には陣痛で苦しむ妊婦が寝かされ、ふだんは威厳のある鐘持老人も少々うろたえ気味だ。
 なぜか部屋の片隅に棺(jc1044)が置かれているのは、見なかったことにしよう。
「おお、きっとアンタが来てくれると思っていたぞ!」
 鐘持老人が桜花の手をにぎった。
「……一刻を争うようですね……まず、鋏を熱湯消毒……産湯もおねがいします」
 桜花は手早く出産の準備をととのえると、スマホで近所の産婦人科を検索し、救急車を要請しつつ対応の指示を聞いた。
 そして、言われたとおりに妊婦を看護する。
「……これは、特別授業です……見守ってあげてください」
 鐘持兄弟の目を見つめて、真剣な顔で言う桜花。
 兄弟は声も出せず、無言でうなずく。

 ──数分後、尽力の甲斐あって出産は無事成功。
 桜花はホッと息をつきながら、生まれたばかりの乳児を産湯で洗い、タオルで包んだ。
「……抱いてみて、ください」
「う、うん」
 言われたとおり、おそるおそる赤子を抱く猛と隼人。
「……それが命の重さ、です」

 こうして、特別授業は無事に終わった。
 だが、猛と隼人は簡単に桜花を帰さない。
 というわけで、なぜか用意されていたミニスカ芸者服に着替えて、ふたたび桜花先生の個別授業開始!
 その光景を、棺は部屋の片隅から見守るのであった。



● 天険突破(jb0947)

「ふ、詳細は言えないってことだろ。わかった、俺が必ず見つけてやる。なにしろ学園の存亡にすら関わるからな」
 謎の依頼を受けた突破は、ひとりで納得しはじめた。
 どうやら彼には、依頼の内容に見当がついたらしい。
「そうと決まったら、即行動だ。俺の考えだと、春の強風で飛んだかな。……ということは、ビルの隙間とか樹上の鳥の巣なんかが怪しいな」
 どこまでも独り合点しながら、手当たり次第に木登りする突破。
 いったい彼は、なにを探しているのか。

「よお、そこのお嬢さん。例のアレを見かけなかったか?」
「え? ……ああ、例のアレね。見かけてないわ」
「そうか。俺も今あっちの木は全部見てきたが、見つからなかったぜ。このままじゃGWのイベントにも出られないからな、急がないと」
「そ、そうね。急がないと」
「しかし、ゴミ収集日をすぎてたらヤバイな。渡り鳥に持っていかれて海に流れたなんてことになってたら、おしまいだ。これはもう、本人に心当たりを聞いてみるか。いきなり行っても会ってくれないかもしれないが……」

 そう言うと、突破は学園長を探して歩きだした。
 途中、生徒や教師をつかまえては探しものに心当たりがないか訊ねるのも忘れない。
 だが、学園長には会えないし、例のブツは見つからないし、だれとも話が噛み合わないのだ。
 ついでに言うと、どこまで歩いても棺が背後についてくる。まるで国民的RPGの棺桶みたいに。
 やむなく突破は、いったん斡旋所へ戻ることにした。
 そこで、担当官に確認する。

「なぁ、依頼内容は『アレ』を見つけるってことでいいんだよな?」
「は……? アレと言いますと?」
「なに。まさか違うのか? あれだろ? つまり、てっぺんのてっぺんだよ。ちょっと前に学園入口で見かけて以来、学園長を見てないと思ってたんだ。そりゃそんな状態じゃ出てこれないよな」
「まったく話が見えませんが……」
「隠すなよ、俺には最初からわかってるんだ。これは学園長の髪(カツラ)を探せって依頼だろ? 依頼書には何も書いてないが間違いない」
「いえ、完全に間違ってますが……」
「え?」
「え?」

 こうして突破の行動は、すべて無駄に終わった。
 無念! 学園長を勝手にヅラ設定とか、一介のMSにそんな権限はないんだ!



● 八塚小萩(ja0676)&袋井雅人(jb1469)

 今回どういうわけか、雅人は小萩と行動をともにすることにした。
 どうやら彼は、小萩を前世の恋人だと思い込んでいるらしい。
 何故こんなド変態を恋人と思い込んだのか謎だが、よく考えれば現世の恋人も同じようなものだった。
「八塚さん、今回はよろしくおねがいしますね」
「こちらこそ、よろしくのう。では早速、依頼人のもとへ向かうのじゃ」
 さぁ、おまちかね! 小萩の変態ショーが始まるよ!
 って、この変態タッグ強力すぎんぞ!

 ともあれ、ふたりは依頼人を訪ねた。
 すると待っていたのは、小萩と背格好が同じぐらいの金髪ツインテJS(女子小学生)
 少女は、小萩そっくりの声で『依頼』の内容を告白した。
「じつは私、いっぱい悪いことしちゃって……それが全部ママにばれちゃったの! 学校から帰ったら、おしおきフルコースって言われた……。だから、おねがい! 身がわりになって! 撃退士なら痛いの慣れてるでしょ?」
「ふむ……たしかに妾たちは一般人より頑丈なのじゃ。それに、妾も同居中の女性によく仕置きされておるからのう……気持ちはわかるのじゃ」
「じゃあ引き受けてくれる?」
「よかろう。声も似ておるし、変化の術でごまかせよう。では、汝の身につけておる服を渡すのじゃ」

 話がまとまると、小萩とJSは物陰で服を交換した。
 ふたりとも、すべらかな幼い肢体を露わにして、下着から何から着衣一式を入れ替える。
「おお、日朝アニメの女児ぱんつか。穿き心地いいのう♪」
 などと言いながら、スカートをめくってみせる小萩。
 雅人は堂々と、それを凝視している。
「女児ぱんつ! いいですね! じつに趣がありますよ!」
 うんうんとうなずく雅人は、ごく自然な感じで女子用のパンツを頭にかぶっていた。

 こうして依頼人と入れ替わった小萩は、身がわりとして罰を受けるべく帰宅した。
 すると、庭には染みのついた布団が干されている。
「……他人とは思えぬな」
 と呟きつつ、玄関を開ける小萩。
 そこには既に、鬼の形相と化した母親が待ちかまえていた。
「ママ、ただいま……」
「おかえりなさい。……わかってるわね?」
「は、はい……」
「ところで、後ろのパンツ男はだれ?」
 母親が雅人に目をやった。
「はじめまして、私は袋井雅人と申します! わけあって(SMスキルを高めるため)お嬢さんと一緒におしおきを受けることにしました! どうかよろしくおねがいします!」
「ああ、マゾなのね」
「いいえ、私はサドですが、今日はマゾの心を学ぶために来ました! 存分に痛めつけてください!」
 おいおい。なんだか凄いことになってきちゃったぞ。
 もういちど言うが、なんで小萩と行動をともにした!?

 まぁなにを言っても手遅れなので、おしおきをはじめよう。
 まずは、縁側でお尻を丸出しにして百叩き♪
「ひああああっ!」
「ふおおおおっ!」
 いい鳴き声をあげる、小萩と雅人。
 つづいては両手足を縛り上げ、丸出しのお尻にお灸♪
「ごめんなさいいっ!」
「ぬふおおおおおっ!」
 絶叫する、小萩と雅人。
 小萩はともかく、雅人の絵面がヤバい。
「ちゃんと反省できるまで、何個でもお灸をすえますからね!」と、Sマザー。
「ごめんなさあああい!」
「んほおおおおっ!」
 何度も言うが、なぜ小萩と行動を(ry

 その後、反省の足りなかった二人は地下の特設おしおき部屋にブチこまれた。
 そこで二人そろってX字磔にされ、着衣をすべて切り裂かれたうえ、電極責め以下略!
「ひぎいいいっ!」
「あばばばば!」
「やだ、この二人。すごくたのしそう」
 とか言って電圧を上げる、超絶Sマザー。
 その背後には、地下の拷問室によく似合う一個の棺が!
 そこへ、依頼人のJSがボンデージ姿で登場した。
「ママ……うまくいったね♪ 一度、自分そっくりな子をいじめてみたかったんだ♪」
 鞭を手にして、うっとり微笑む変態小学生。
「ええ、最高よ♪ このまま私たちの専用奴隷にしましょう♪」
 変態母の手には、見るだけで背筋の凍る歯科ドリル!
「まさか……妾はだまされておったのか!?」
 驚愕の真実に、小萩は動揺を隠せなかった。
「んほおおおおっ!」
 雅人は人の言葉を忘れてしまったようだ。
「それならもう、妾は逃げるのじゃー! これ以上、変態どもにつきあっていられるかー!」
「んほおおおおっ!」
 その後ふたりが無事脱出できたか、さだかではない。
 っていうか雅人は大丈夫か。



● 月乃宮恋音(jb1221)&ティファーニア ネルスラーダ(jc0681)

 ふたりが向かった先は、学園近くの畑だった。
 一見ふつうの畑だが、彼女たちには見覚えがある。
「ここって、私と月乃宮さんが爆発して墜落した場所よね……あああ、思い出したくないいい!」
「お、おぉ……そうですねぇ……。あれは、ひどい事件でしたよぉぉ……」
 妙なことを言って、ぷるぷる震えだす二人。
 その背景には、カカシみたいに棺が立っている。

「おお、あんたらが依頼受けてくれた学生さん? 話を聞いてくれよ」
 依頼人の農夫が声をかけた。
 聞けば、彼の畑に何やら奇妙な作物ができているらしい。原因は不明だが、作物を食べると体に異常な変化が起きるのだとか。
「そ、そうですかぁ……一応、心当たりがあるのでぇ……この場は、おまかせくださいぃ……」
 体に異常な変化と聞いて、恋音はすぐさま正解にたどりついた。
 これはきっと、過去の依頼でまきちらされた薬品が植物に影響を与えたのだ。
「月乃宮さん……心当たりっていうと、やっぱりアレよね……?」
 ティファーニアは再び震えだした。
「そうですねぇ……。というわけで、原因は判明しましたけれどぉ……どうやって解決しましょうかぁ……」
「埋めたり燃やしたりしたら、被害が広がるかもしれないしね……。これはもう、薬をバラまいた私と月乃宮さんで責任もって、根こそぎ残さず全部! 食べるしかないじゃない!」
「ほ、本気ですかぁ……?」
「もちろん!」
 ドンと胸を叩いて応えるティファーニア。
 この広大な畑の作物を残さず食べるとは、とても正気とは思えないが……。
 どうやら既に作物の臭気にあてられて、正常な判断力を失っているようだ。

「ではまず……このトマトから、いきましょうかぁ……」
 恋音の手にしたトマトには、皮に数字が刻まれていた。
 ひとつひとつ数は違うが、いずれも一桁の数字だ。
「イヤな予感しかないけど……」
 と、ティファーニア。
 そして彼女は『8』を、恋音は『4』を選んで口に入れた。
 直後、体内をめぐるアウルの力がアレコレどうにかなって、ティファーニアは8歳児に。恋音は4歳児の体型に変身!
「ふぅ、『200』とかじゃなくてよかったぁ」
「そう考えると……老衰で即死の可能性もある、おそろしい作物ですねぇ……」
 ヘタすれば死亡判定だったと気付き、震えだす恋音。

「じゃあ次は、かるくイチゴとか?」
「おぉ……無難ですねぇ……小さいですし……」
 というわけで、あまり警戒せずに二人はイチゴを実食。
 ボンッ!
 ふたりの体は一瞬で膨れあがり、着ているものは弾け飛んだ。
 どうやらこのイチゴ、たった1個で体重を5倍にするらしい。しかもティファーニアは以前の肥満経験によるリバウンドで、さらに5倍。つまりイチゴひとつで体重は25倍に!
 ……って、ちょ! おい! イチゴ1個でコレかよ! この畑にイチゴ何個あると思ってんだ!?

「これは……先が思いやられますねぇ……」
 ぶくぶくに太った4歳児のまま、地面をころがる恋音。
「私たちに『先』とかあるのかな……。いいえ、弱音を吐いたらダメね!」
 弱音とかいう問題ではないのだが、ふたりはまだ続けるようだ。
 そう。どちらも気付いてないが、これらの作物には麻薬そっくりの中毒効果があるのだ。
 おかげで、食べれば食べるほど中毒症状が増し、際限なく体重は増えてゆく。
 スイカとかサツマイモとか……なにを食べても太る! 太りつづける!

「がんばって! まだまだいけるいける!」
 恋音の口にホースをつっこみ、イチゴジュースを10リットルほど流し込むティファーニア。
 逆流したジュースが、恋音の鼻や耳から噴き出す。
「んぐふうううっ!?」
「わ、わたしもたべるから! 限界超えて食べるからうぷっ! くっ、くるひ……動けなひ……月乃宮さん、その特製胃腸薬を私にも……!」
 ある意味ここの作物よりヤバいブツを、あろうことか一気飲みするティファーニア。
 それでまた激太り。
 いやもう、太るとかじゃなくて単に肉の塊が増量してるだけだ!
 あれだ。海岸に打ち上げられた謎の巨大生物の死体みたいなことになってんぞ! なんだこれ!

 そこへ、変態マザーの手を逃れた雅人が駆けつけた。
「んほおおおおっ! 恋音! ティファーニアさん! どうしたんですかっ!? とりあえず、ふたりのオッパイをほおおおおっっ!」
 なにしに来たんだろう、この人。
 というか、この肉塊をどう見ればオッパイの位置がわかるんだ?
「ふおおおおっ! 私にはわかりますよ、恋音! ここがオッパアーーッ!?」
 無造作に近寄った雅人は、無惨にも二つの巨大な肉塊に押しつぶされた。
 そして動く者のいなくなった畑に、そっと佇む棺!
 ある意味、彼の行動が最も理解しがたい!




 このようにして、4件の白紙依頼はすべて解決された。
 中には明らかに解決されてないというか着手すらされてない依頼もあるが、いいんだ! 誠意を見せることが大切なんだ!
 ちなみに今回一連の依頼の結果、鐘持兄弟は芸者フェチになり、学園長にはヅラ疑惑が発生し、小萩のお尻はふたつに割れ、雅人はMの快楽に目覚め、恋音とティファーニアは体重が増え、棺は置物スキルが上昇したという。
 めでたしめでたし!




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:8人

●●大好き・
八塚 小萩(ja0676)

小等部2年2組 女 鬼道忍軍
花々に勝る華やかさ・
染井 桜花(ja4386)

大学部4年6組 女 ルインズブレイド
久遠ヶ原から愛をこめて・
天険 突破(jb0947)

卒業 男 阿修羅
大祭神乳神様・
月乃宮 恋音(jb1221)

大学部2年2組 女 ダアト
ラブコメ仮面・
袋井 雅人(jb1469)

大学部4年2組 男 ナイトウォーカー
大☆爆☆発・
ティファーニア ネルスラーダ(jc0681)

大学部2年207組 女 バハムートテイマー
こっそりとそこにいる・
棺(jc1044)

卒業 男 ナイトウォーカー