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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:難しい
形態:
参加人数:8人
サポート:1人
リプレイ完成日時:2015/02/23


みんなの思い出



オープニング


 ここは、とある小学校。
 平日の夕方。授業を終えた生徒たちが、ぞろぞろと校門から出てくる。
 その中、やけに身なりの良い少年がいた。
 身につけているのは高級ブランド服。ランドセルは本革製のオーダーメイドで、世界にひとつしかない代物だ。
 彼の名前は、鐘持猛。小学3年生。
 その後ろについてくるのは、弟の隼人。小学2年生。こちらもまた、全身ブランドものである。
 一見おぼっちゃん風の二人だが、こう見えて彼らはモトクロスの選手。しかも猛はかなりの実力を誇り、いくつものレースで入賞した実績を持っている。今日も、地元のチームメイトたちと練習の予定だ。


 そんな二人の後ろから、しずかに近寄る車があった。
 日本で一番売れているワゴン車だ。
 運転しているのは、30代後半の男。
 助手席には、やはり30代の男が陣取っている。
 どちらもサングラスにマスクという姿で、見るからに怪しい。
 じつは、この二人も兄弟なのだ。
 名前は一郎と二郎。
 ……え、テキトーすぎるって? 全国の一郎さんと二郎さんに謝れ!

 そんな風に親からの愛情をあんまり受けない環境で育った二人は立派に社会からドロップアウトし、いまここに誘拐犯デビューしようとしていた。
 実際、誘拐ほど成功率の低い犯罪もそうそうないのだが、そんなことを考えられる知能があれば社会の落ちこぼれになることもなかった。人間、明日の食いものにも困るほど落ちぶれると、なにを考え出すかわかったものではない。
 だが、彼らには勝算があった。
 なんと、この兄弟はアウル覚醒者なのだ。以前は久遠ヶ原学園に在籍していたこともある。
 しかし、勉強するのがイヤだとか、天魔と戦うのは怖いとか、焼きそばパン争奪戦に負けたとか、しょうもない理由で自主退学。以後は仕事もせず、酒びたりの生活をしているうちに現在の境遇になった次第。
 そんなとき、近所に物凄い金持ちの孫が暮らしていると知って、今日の犯行計画を思いついたのだ。

「ほ、ほんとうにやるのか、兄貴。うまくいくのか?」
「いまさらなに言ってんだ! 昨日一晩かけて、完璧な計画を立てたろうが!」
「あ、ああ……。でも途中から酔っぱらっちまって、よく覚えてないんだ」
「このバカが! いいか? おまえが『スリープミスト』でガキどもを眠らせる。俺が『縮地』で車に運ぶ。そのあと、ガキを貸倉庫に閉じこめて大金持ちの爺さんに脅迫電話をかける。噂じゃ、そのジジイは孫を溺愛してるらしいからな。こっちの言うとおりに金を払うはずさ。完璧じゃねえか」
「そ、そうだな。完璧だな。でも大丈夫かな。光纏するのなんて、一年ぶりぐらいだ。それに、もし『スリープミスト』が効かなかったら……」
「アホか! 相手は一般人のガキだぞ! 効かないワケねぇだろが! 俺たちは、元撃退士なんだぞ! しっかりしろ!」
「そ、そうか。……よし、腹をくくったぞ。やろう、兄貴」
「おう。アウルの力を見せてやれ!」

 ツッコミどころ満載な会話だが、ともあれ一郎と二郎は計画を実行した。
 天魔と戦うのが怖くて久遠ヶ原を退学した兄弟だが、さすがに一般人の小学生を連れ去るぐらいは出来たようだ。
 ぶっちゃけ、撃退士のスキルを使えばもっとリスクが低くて利益の大きい犯罪などいくらでもあるというのに、つくづくアタマの悪い兄弟である。



 2時間後。
 大富豪・鐘持邸の電話が鳴った。
 それを受けた女中さんは、大慌てで当主のもとへ。
「だ、旦那様! 猛ぼっちゃんと隼人ぼっちゃんが誘拐されました! この電話に、犯人が!」
「なんだと!?」
 立ち上がり、受話器をひったくる鐘持。
 すると、電話の向こうから一郎の声が。
「よお、爺さん。話は聞いたな? かわいい孫をふたり、あずからせてもらったぜ」
「きさまああああ! なにが目的だ! カネか!?」
「そのとおり。最初に言っておくが、俺は元撃退士だ。人の命を奪うぐらい、かんたんにできるぜ? というわけで、孫の命が惜しければ、そうだな……ひとり1000万で、2000万もってこい」
「ふざけるな! うちの孫が1000万だと! ひとり10億! ふたりで20億だ! くれてやるから、いますぐ孫をつれて取りにこい!」
「え? ええと……そんなにくれるんですか?」
「そのかわり、孫にカスリ傷ひとつでも負わせてみろ! 生まれてきたことを後悔するぐらいの目に遭わせてやるからな!」
「わ、わかりました。丁重に扱います。……そ、それで、金の受け渡しなんですが……」
 すっかり弱腰になりつつも、どうにかこうにか交渉を進める一郎。
 お察しのとおり、この鐘持老人はちょっと怖い人なのだ。
 下調べもせず思いつきで営利誘拐などすると、ロクな目にあわない。
 ともあれ、鐘持が気前良く身代金を払うことに同意したので、話はすぐにまとまった。

「よし、話はまとまりましたね。いいですか、このことは警察に知らせないように。もし知らせた場合、お孫さんの命は
「話を聞いてなかったのか、貴様。孫にキズひとつ負わせてみろ。おまえを挽き肉にして豚に食わせてやるぞ!」
「す、すみませんでした! でも、あの、できれば警察には……」
「しつこいぞ! カネはくれてやる! 警察にも連絡せん! これでいいな!?」
「は、はい! では、よろしくおねがいします。ほんとうに」
「けっ、このチンピラが!」

 通話を切ると、鐘持はすぐに電話をかけた。
 無論、警察にではない。
 久遠ヶ原学園にだ。

「カネはやる……いくらでもくれてやるが、孫の夢をぶちこわしたのは許せん。犯人が元撃退士だと知ったら、久遠ヶ原学園に憧れている猛と隼人は一体どう思うことか……。ならばイメージ改善のため、働いてもらうぞ。久遠ヶ原の学生たちよ!」




リプレイ本文



● 受け渡し2日前・鐘持邸

「よく来てくれた。きみらが依頼を受けてくれた撃退士か」
 鐘持老人は、50畳ほどの和室で8人の撃退士を迎えた。
 その顔面に刻まれた古傷といい、床の間に飾られた日本刀といい、どう見ても尋常ではない。
「依頼書に書いたとおり、儂は身代金を払うことは何とも思わん。きみらがやるべきことは、孫を無事につれもどし、撃退士のイメージを回復することだ。そして万が一にも犯人どもが孫を傷つけていた場合は、決して逃がさんように。ただし殺してはいかん。意味はわかるな?」
 殺すのは自分の役目だと言わんばかりに、鐘持老人はギラリと双眸を光らせた。

「ようするに、猛くんたちの前でカッコよく犯人をつかまえればいいのよね?」
 雪室チルル(ja0220)が、簡単に言ってのけた。
「無論それが最善だが、孫を危険にさらすのは許さんぞ?」
「大丈夫よ! 大船に乗ったつもりでいて!」
「む……そうか」
 封砲で味方を巻きこむことに定評のあるチルルだが、今回は大丈夫だろうか。

「それにしても……元撃退士ともあろう者が、お金のために幼い子供を誘拐するなんて……それほど生活に困窮していたのでしょうか」
 理解できないという風に、ユウ(jb5639)は首をかしげた。
 鐘持老人は、いまいましげに吐き捨てる。
「犯人どもの事情など知らん。ヤツらはただのチンピラだ」
「そうですね。どんな事情があるにせよ、子供を狙う卑劣な愚行……お灸をすえなくてはいけません」

「たよりにしているぞ。……ところで、そっちの兄さんには見覚えがあるな」
 鐘持老人が、鳴海鏡花(jb2683)のほうを見た。
「いかにも。拙者は2年ほど前、鐘持殿の依頼でナマコ型天魔を退治した者のうちの一人でござる」
「おお、そうか! あれはよく覚えているぞ!」
「……しかし、ひとつ言わせてほしいでござる。拙者は『兄さん』ではなく『姉さん』でござるよ!」
「なんと。これは失礼した。しかし、あの一員とは驚いたな。ぜひ、あのときと同じように孫たちを喜ばせてやってくれ」
「承知したでござる」

「……で、具体的にどうするつもりだ?」
 鐘持老人の問いに、撃退士たちは一瞬顔を見合わせた。
 ここへ来るまでに、だいたいの方針は決めてある。
「では役割分担ですが……私が運転手役を務めます。制服があれば貸してください」
 ユウが答えた。
「とくに制服は決まってないが、黒のスーツを貸そう」

「……身代金受け渡しのお手伝い役は……私が」
 染井桜花(ja4386)は、鐘持老人の目をじっと見つめた。
「力仕事だぞ。やれるのか?」
「……一応、撃退士ですので……メイドという形で同行すれば、犯人も油断するかと……」
「なるほど。まぁ依頼した以上は任せよう」
「……犯人との取り引きの際は……不自然でないよう口裏あわせを、おねがいします……」
「ふむ、わかった。……ん? ちょっと待て! きみもナマコ退治のときにいなかったか?」
「ええ……まぁ、いましたが……」
「おお、これはすごい偶然だ!」
 ただそれだけのことで、鐘持老人は上機嫌だ。
 ゲンをかつぐタイプなのかもしれない。

「それから……現金はいくつかのバッグに詰めて運びますが、その中に私たち二人が隠れます」
 雫(ja1894)が突拍子もないことを言いだし、猫野・宮子(ja0024)がうなずいた。
 この提案には、鐘持老人も唖然だ。
「バッグの中に……!? たしかに、きみらは小さいが……危険すぎやしないか? 見つかったらどうする?」
「私たちは、そこそこ強いので……。それに、まさかバッグの中に人が隠れているとは思わないでしょう」
「かもしれんが……」
 不安げに首をひねる鐘持老人。
 そこへ、ヴァルヌス・ノーチェ(jc0590)が追い討ちをかける。

「残り4人は、取引現場で潜伏&追跡という感じで……僕はビデオ撮影を担当します」
「ビデオ撮影!?」
「はい。お孫さんに撃退士の活躍を見せたいんですよね? なら、これしかありません!」
「依頼した以上は任せる……任せるが……本当に大丈夫だろうな!?」
「もちろんです! タイタニックに乗ったつもりでいてください!」
 それ、乗ったらダメな船。

「ささやくんだべ、オラァの旦那様(ゴースト)が……」
 それまで黙っていた御供瞳(jb6018)が、唐突に意味不明なことを呟きだした。
 本人はかっこつけてるつもりなのだが、どう見ても深刻な厨二病。さすがは我らのイタコ(痛子)撃退士だ。
 じつは彼女、縛りのきつい営利誘拐事件を解決するべく旦那さまぁの残留思念に導かれて飛び入り参加した後家美少女でもある。……って、新ジャンルすぎるぞ。
 そんな一見ふざけて見える瞳だが、大事な肉親が危険にさらされることには彼女にも経験があるため依頼人には非常に同情的。ただなんとなく、この誘拐犯とのやりとりは孫たちの情操教育には良くないんじゃないかと首をひねってもいる次第だ。
「まぁとにかく……犯人をつかまえりゃいいんだべ?」
 思考回路が謎だが、発言は正しいので皆うんうんとうなずいた。



● 受け渡し当日・鐘持邸

 一郎から電話がかかってきたのは、正午過ぎだった。
 撃退士たちの見守る中、鐘持老人が受話器を取る。
「よお、じいさん。現金は用意できたか?」
「その口の利き方はなんだ? このチンピラ風情が」
「あ、すみません! それで、お金のほうは……」
「用意できたぞ。どこへ持っていけばいいんだ?」
「では、いまから言う場所へ……。前に言ったとおり、運転手と助手以外つれてきてはいけません。もしも警官がいた場合
「しつこいぞ! 警察には連絡してないと言ったろうが!」
「す、すみませんでした! えーと、では取り引きの手順ですが……」
 という次第で、人質との交換方法が伝えられた。

「じゃあ予定どおり、バッグに隠れるよ」
 宮子は猫みたいに体を丸くさせて、自らバッグの中へ潜りこんだ。
「さすがにちょっとせまいけど、猛くんたちを助けるためにはしょうがないよね」
 ちょっとどころではないように見えるが、大丈夫だろうか。
「たしかに、少々せまいですね……」
 と言いながら、雫も別のバッグに潜りこむ。
 宮子より少し背が低いぶんラクに見えるが、せまいのは変わりない。
 そしてバッグに隠れた二人の上に、ぎゅうぎゅうと札束を詰めこむ撃退士たち。わりと容赦ない。

「では……そろそろ、まいりましょう……」
 メイド服に身をつつんだ桜花が、鐘持老人の前に立った。
「おお、みごとだ。これなら撃退士には見えん」
「……ありがとうございます」
「いっそ撃退士なぞ辞めて、うちで働かんか?」
「……お誘い、ありがとうございます。……しかし、いまは任務に集中いたしましょう……」
 そう言うと、桜花は札束の詰まったバッグを10個ほど抱え上げた。
 これだけで10億。100kg以上ある。
「おお、さすが撃退士だ」
 と、鐘持老人。

「運転は私に任せてください」
 ユウはビシッと決まった黒スーツに身を固め、白い手袋をはめていた。
 搭乗するのは、黒塗りの高級外車。
 これがまた、異様に似合っている。
「ほう、これまたみごとだ。いっそ撃退士なぞ辞めて(略」

 ともあれ、ユウが運転席に、桜花が助手席に座り、鐘持老人は後部席に陣取った。
 宮子と雫は、バッグごとトランクに押し込まれている。
 ほかの4人は事前の取り決めどおり行動を開始しており、あとは受け渡し現場へ向かうだけだ。

「よし、車を出せ。孫を取り返すぞ!」
「はい」
 鐘持老人の指示で、ユウはアクセルを踏んだ。
 現場までの道はカーナビまかせだ。
 道はすいている。この様子なら、指定時刻どおり着くだろう。



● 受け渡し当日・郊外のパチンコ店駐車場

 そのころ。一郎は、サングラスにマスク姿でワゴン車を走らせていた。
 助手席には猛を乗せているが、とくに縛ったりはしていない。それでも猛が抵抗しないのは、隼人が倉庫に監禁されているためだ。
 だいいち、相手はアウル覚醒者。一般人の小学生にできることなど、なにもない。
「よお、猛クン。そろそろ家族に会えるぞ。よかったな」
「おじさん、何度も言うけど自首したほうがいいよ?」
「バカ言え。ここまできてやめられるか」
「死ぬよりひどい目にあっても?」
「お、脅かすなよ、ははははは」
 一郎にも、うすうす察しはついていた。自分たちは、とんでもない子供に手を出してしまったのだと。
 しかし、いまさら後には引けない。
「20億だ、20億……。絶対に成功させてやる……一生遊んで暮らすんだ……」
 震えながらこれを言ってるのだから、死亡フラグにもほどがある。
 じきに指定したパチンコ店へ近付くと、一郎は周囲を車で流して警官の有無をチェックした。
 どうやら安全そうだと判断して、駐車場へ。そのまま車内で待機する。



「そろそろ現場に到着します。気をつけてください」
 ハンドルをにぎりながら、ユウは意思疎通で宮子と雫に呼びかけた。
 受け取った二人は、さぁいよいよだと更に体を小さくさせる。
 そして車は駐車場へ。
 指定された場所に車をとめて、犯人からの指示を待つ。

 するとそこへ、一郎が無造作に近寄ってきた。
 後部席のウインドウをノックして、彼は言う。
「鐘持さんですね? カネを受け取りに来ました」
「猛と隼人はどこだ?」
「電話で言ったとおり、猛クンは連れてきました。今この場で、カネと交換です。隼人クンは別の場所にいるんで。俺たちが安全な所まで逃げたら、居場所を教えますよ」
「いいだろう。では猛をつれてこい」
「そのまえに、カネを見せてください」

 一郎の要求どおり、桜花は車を降りてトランクを開けた。
 そこには、札束の詰めこまれたバッグがギッチリ並んでいる。
「……20億あります。……かぞえますか?」
 まじめな顔で桜花が問いかけた。
「そんな時間あるか!」
 一郎は無作為にバッグを選んで中身を確認した。
 宮子と雫の隠れているバッグではない。中は札束でパンパンだ。
「よ、よし。このバッグぜんぶ、俺の車に運べ」
「……承知しました」
 一郎の指示どおり、桜花は両手にバッグを持って運びだした。
 あくまでもメイド役なので、撃退士の腕力は使わない。重いフリをしながら、慎重にワゴン車へ。

「……ええっ!?」
 その様子を見た猛が、高い声をあげた。
 桜花の顔に見覚えがあったのだ。
「……おむかえに参りました。猛様」
「おむかえって……おねえさん、たしか……!」
「……なんのことでしょう。……私は旦那様のご依頼で『派遣』された……ただのメイドですが?」
『派遣』の部分を強調して、意味ありげに微笑む桜花。
 状況を悟った猛は、無言でうなずいた。

 その間に、ヴァルヌスは行動を開始。
 まえもってドラム缶の中に潜んでスタンバっていた彼は、電磁迷彩で姿を消しつつ透過能力でドラム缶を脱出。姿が見えないのを利用して、一郎の車に堂々と発信器を取りつけた。
 宮子と雫が潜入するのだから無駄な行動にも見えるが、いざというときの備えだ。

 瞳はもっと大胆だった。
 彼女もまた、ヴァルヌスと同じく蜃気楼で姿を消して行動開始。忍び足でワゴン車に近付くと、屋根によじ登って腹ばいになった。これで蜃気楼が切れても見つからない! たぶん!
 なんだか宮子と雫の苦労がムダになってる気もするが、これぞ二重三重の安全策なのだ!
 しかも、瞳の打った手はこれだけではない。今日の受け渡しまで犯人側に手を出すことができないからと、丸2日かけて入念な準備をしてきたのだ。イタコとして、熱心に禊したり、水垢離したり、降霊したり、旦那様ぁにおうかがいを立てたり……って、なんの役に立つんだ、この準備!

 ともあれ、20億と引き替えに猛は解放された。
「おお、猛! 無事で良かった! ケガなどしとらんだろうな!?」
 鐘持老人が、おおげさに抱きついた。
「爺ちゃん、苦しいって。どこもケガしてないってば」
「そうかそうか! よかったよかった!」
「よくないよ。まだ隼人が捕まったままだ」
「おお、もちろん助けるとも!」

 そんな二人を横目に見ながら、ユウは一郎の前に立った。
「猛坊ちゃんは、たしかに返していただきました。……しかし、隼人坊ちゃんの姿が見えませんね。どうするおつもりですか?」
「聞いてなかったのかよ。いまは俺の弟と一緒にいる。俺たちが安全な場所まで逃げたら、電話で居場所を教えてやるよ」
「了解しました。では、さっさと逃げてください。一刻も早く保護したいので」
「お、おう。言われなくても逃げるぜ。……だが、そのまえに!」
 光纏すると、一郎は大剣を抜き放った。
 そして、ユウたちの乗ってきた外車のタイヤを突き刺してパンクさせる。
「へっ、これで尾行もできねぇだろ! んじゃあばよ!」
 すがすがしいまでに死亡フラグを立てると、一郎はワゴン車に乗って走り去った。

「ふ……甘いわね! こんなこともあろうかと、かわりの車は用意済みよ!」
 姿を隠していたチルルが、ドヤ顔で登場した。
 駐車場のあちこちに停めてある車から、黒スーツの鐘持家SPが次々と出てくる。
「さあ追跡よ! バッグに隠れた二人とか、ワゴン車の屋根に張りついた仲間とか、あと車の底に仕掛けた発信器とかで、GPSを使えば犯人の居場所はわかるわ!」
 それって発信器だけで十分なような……いや気のせい、気のせいだ! バッグを開けたとたん美少女撃退士が飛び出してくるという、びっくり箱的なサプライズ要素がうんたらかんたらで……すべて必要なことだったんだ!

「では、鐘持様と猛さんは屋敷へお帰りください。あとは私たちが……」
 と、ユウが言ったとき。
 猛は猛烈な勢いで反対した。
「やだよ! 僕もつれてって!」
「いえ、大変危険なので……」
「おねえさんたち、撃退士だろ? それで、あの犯人つかまえるんだろ? 目の前で見たい! ケガしても文句言わないから!」
「しかたありませんね……そこまでの覚悟でしたら……」
「やった!」
「では行きましょう。犯人を捕まえた上で、隼人さんも必ず助け出します、約束です」



「やった! やったぞ二郎! 20億ゲットだぜ!」
 ワゴンを運転しながら、一郎は携帯電話に話しかけた。
「マジか! じゃあ予定どおり合流だな?」
「そうだ、すぐに来い! ガキはそこに置いとけ!」
「わかってる。今日はパーティーだな、兄貴!」
「おう! 焼肉パーティーだ!」
 20億持ってるのに焼肉というあたりが、彼らの生活レベルを示している。
 だが、それ以上ぜいたくな料理を思いつかないのだから仕方ない。
 はたして二人は、撃退士たちの追跡をふりきって焼肉パーティーにありつくことができるのか!
 ……言っててむなしくなるな、これ。



● 受け渡し当日・某焼肉チェーン駐車場

 2時間後。
 一郎と二郎は、焼肉JOJO亭の駐車場で落ち合った。
 いつかリッチになったらここで腹いっぱい焼肉を食べるのが、彼らの夢だったのだ。
「おお……すげえ、兄貴! 札束だらけだ!」
 回収した現金を前に、二郎は浮かれていた。
「おちつけ二郎。まずは腹ごしらえだ」
「あ、兄貴……特上カルビを食べてもいいか?」
「ああ……しっかり食え。おかわりもいいぞ」
「…………」
「どうした?」
「いや、こんなところで焼肉食ってていいのかなと……ふと思ったんだ」
「ふ……そこが俺の頭の良いところだ。あの爺さんの手下どもは、いまごろ俺たちが高飛びすると思って空港を張ってるに違いない。そこで裏をかいて、堂々と焼肉パーティーってワケさ」
「さすが兄貴!」
「さあ走ろうぜ、俺たちのウイニング焼肉ロードを……!」
 あらためて考えるに、こんな馬鹿兄弟が犯罪に手を出したのが間違いだった。

 次の瞬間。
 ふたりの頭上から、黒い人影が舞い降りてきた。
 ズシャアアッ!
 砂煙とともに地上へ降り立ったのは、片翼のハーフ天使・鏡花。
「正義の撃退士、架空戦隊ゲキタイジャー見参! いたいけな子供を誘拐した悪人は拙者が斬る!」
 ビシッと鉄扇を突きつけて、鏡花は正義のヒーローっぽくポーズを決めた。
 以前やってた、魔法少女みたいなポーズではない。これはカッコイイ!
「あのお兄さんも、見覚えある! ナマコ退治のとき、女の子向けアニメの主人公みたいなポーズとってた人だ!」
 いま思い出したとばかりに、猛がパンと手を叩いた。
「拙者はお姉さんでござる! そして、あのポーズのことは未来永劫忘れてほしいでござる!」
 泣きながらツッコミをいれる鏡花。
 無念。せっかくのカッコイイ登場シーンが!
「なに……! 撃退士だと!? どうしてこんな所に!?」
 この期に及んでも、一郎は状況を理解できてなかった。
「『どうしてこんな所に』とは、こちらのセリフでござる! 子供をさらって得た金で焼肉とは言語道断! 恥を知るでござる! 正義の鉄槌、もとい、鉄扇をくらうでござるよ!」
「く……っ、殺るぞ二郎! 2対1なら勝てる!」
 光纏して闘気解放する一郎。
 だが、そこへ──

「あんたたちの野望はここまでよ! あたい参上!」
 チルルがモトクロスバイクで突っ込んできて、一郎の背中に激突した。
「グワーッ!?」
 吹っ飛ぶ一郎。
「兄貴ィィッ!」
 叫ぶ二郎。
 これはもう、焼肉どころではない。
 しかし、なぜモトクロス? じつはチルルちゃん、鐘持兄弟がモトクロスの選手だと聞いて、モトクロスの可能性のような何かを見せたいと思ったのだ。一度も乗ったことはないが、たぶん自転車が勝手に動く系だと思ってるので問題はない。この2日間で、きっちり練習もしてきた。おかげで、元撃退士の背中に正面衝突するぐらいのスキルは手に入れた次第だ。
 でも結局、モトクロスの何を見せたいのかよくわからない。

「ん、合流地点についたのかな? それなら……変身だよっ!」
 外の騒ぎと焼肉の香ばしい匂いで、宮子はようやく状況に気付いた。
 ワゴン車のドアからバッグが転がってきて、すぱーんと口が開く。
 そこから飛び出したのは、猫耳&猫尻尾を付けた『猫のミャーコ』
 ミニスカをひらひらさせつつ、魔法少女っぽくポーズを決めて武器(マグナムナックル)をビシッと突きつける。
「そこまでにゃ! 子供を人質にとってお金を奪おうなんて、鬼畜のすることにゃ! そんな悪い人は、この僕……マジカル♪みゃーこが許さないにゃよ♪」
「ゲェーッ! マジカル!」
 妙な合いの手を入れる二郎。
 これはもう、焼肉どころでは。

「まさか、あのジジイ! 警察には通報してないけど久遠ヶ原に依頼したってのか!?」
 今ようやく真相に気付いた一郎。
「そのとおりです……。さあ……おしおきの時間ですよ」
 鮮血のようなオーラを散らしながら、よっこらしょと雫がバッグから出てきた。
 その表情は穏やかだが、背後には異形の羅刹が浮かんで見える。
「くっ! 逃げるぞ、二郎!」
「お、おう!」
 一郎は縮地を、二郎は瞬間移動を発動して逃げだした。
 が、すでに時おそし。

「……逃がすとでも?」
 全力跳躍で『飛行』してきた桜花が、勢いよく二人の前に着地した。
 と同時に、その手には刀が抜かれている。
 桜花はチャキッと刀を返すと、刃ではなく峰のほうを相手に向けた。
「……殺しはしない……だが……狼藉の報いは受けてもらおう」
「二郎、こっちだ!」
 踵を返して逃げようとする一郎。
 だが、その眼前に今度はユウが着地した。
 逃がすまいと、最初から上空に待機していたのだ。
 そのまま、ためらいなく『漆黒』を発動。強烈な一撃が、一郎を真っ黒に染め上げた。
「グワーッ!」
「兄貴ィィッ!」
 吹っ飛ぶ一郎&叫ぶ二郎。
 どうやら、焼肉パーチーは延期のようだ。

「フフ……娘のために鍛え上げた撮影技術を、披露するときがきたようですね!」
 と言いながらビデオカメラをまわしているのは、ヴァルヌス。
 戦う気は一切なく、ADみたいにカンペを出しながら『そこで決めポーズ!』とか『派手な必殺技よろしく!』などと、無茶振り放題だ。
「さぁさぁ、恥ずかしがらずに! DO IT! YOU キメちゃいなよ!」
「それなら……これにゃっ!」
 宮子が正義の魔法少女っぽくニンジャヒーローを決めた。
「ううっ、ついつい見てしまう!」
 二郎は宮子のミニスカから目を離せなかった。
 ニンジャヒーローじゃなくパンチラの力で注目あつめてないかコレ。
「くらうがいいにゃ! いまこそ、必殺! マジカル♪ムーンライトにゃ!」
 忍法月虹が炸裂し、宮子のマグナムナックルから七色の光が迸った。
「グワーッ!」
「二郎ォォッ!」
 この兄弟、段々かわいそうになってきた。
「これで締め、にゃね♪ そーしたら、あとは縛りあげてー……さて、それじゃあ隼人くんの居場所を教えてもらうにゃ♪ も・ち・ろ・ん、すなおに教えてくれるにゃよね?」
 二郎を縄で縛って、ニッコリ微笑む宮子。
「そんな脅しに屈する俺じゃない!」
「だったら丁度いいにゃー。少しぐらい、痛い目にあってもらわないとにゃ? 自分たちのしたことの愚かさ……身をもって知るといいにゃ!」
 バキイッ!
 笑顔で二郎をブン殴る宮子。

「いま助けるぞ、二郎!」
 自分だけ逃げたりしない一郎は、まさに兄貴の鑑だ!
「そうはいかんでござる」
 鏡花の鉄扇が、一郎の後頭部に叩きこまれた。
「グワーッ!」
「兄貴ィィッ!」
 こればっかりだな。

「こうなれば……最後の手段だ!」
 一郎は再び縮地を発動した。
 狙いは猛だ。うまく人質にできれば、どうにか脱出できるはず。
 だがそこへ、待ってましたとばかりに瞳が防壁陣で割り込んだ。
「そんなことはさせねぇだ」
「どけ、小娘!」
「オラァこう見えても後家さんだべ。小娘じゃねぇだよ」
「なにぃ!?」
「スキあり、だっぺ」
 瞳のアイビーウィップが一郎を捕らえ、瞬時に縛り上げた。
 これで、兄弟そろって捕縛完了。
「勝負ありっちゃ。おとなしく人質の居場所を吐くだよ」
「だれが言うか!」
「そんなら、ちょっとばかり痛い目にあってもらうしかねぇべ。あんたをいたぶれば、二郎が吐いてくれるかもしれねぇだな。血を分けた兄弟は大事だべ? でもそれは、猛と隼人も同じなんだべなー。そこんところを理解して、改心してくれたらええべなー……とか思うけど、そこまでは期待しないべ」
 瞳が珍しくマトモな発言を!

「面倒ですね……四の五の言わず、吐くまで痛めつければいいんですよ……」
 雫が太陽剣を抜いて、一郎の脳天を峰打ちにした。
 え? それは両刃の剣だって? 大丈夫大丈夫。峰打ち峰打ち。
「ちょ、ちょっと待て……こ、殺す気か……?」
 顔面血だらけで、一郎が声を震わせた。
「撃退士はこれぐらいで死にません。……でもまぁ、一応ヒールしてあげましょう」
 雫のヒールがかけられて、一郎の出血は止まった。
「た……助かった」
「では、もう一発」
 ふたたび容赦なくブッこまれる太陽剣。
「グワーッ!」
「兄貴ィィッ!」
 これはひどい。
「おや、また血が出てますね。……では、もう一度ヒールを」
「ざっけんなコラー!」
「そうですか。まだ強情を張りますか……。べつにいいんですよ? 回復の数は、たくさん残ってるんですからね」
「ぐぬうう……! 俺はしゃべらねぇぞぉぉ……!」
 無駄に根性を見せる一郎。
 ああ、だれかシンパシーを使えれば、こんな残酷ショーは避けられたのに!

「わかった、言う! 人質はここから車で1時間ぐらいの貸倉庫に監禁してある! 本当だ!」
 吐いたのは二郎だった。
「二郎! 勝手なことしやがって!」
「ごめん、兄貴。でも俺は、これ以上兄貴が酷い目にあうのを見てられない……!」
「く……っ。おまえに心配されるなんて……」
「うう……っ、兄貴ィ……」
 なにか勝手に兄弟愛で盛り上がる誘拐犯2名。

「カァーーット! よーし、いい画が撮れました!」
 ヴァルヌス監督がカチンコを鳴らした。
「撃退士たちの力によって、人間らしさを取りもどす凶悪な犯罪者たち……。これは感動を呼ぶこと確実です! ぜひ、現代社会を生きる少年少女たちに見ていただきたい! ……あ、一部バイオレンスな場面は、ちゃんと編集しますよ?」
 ごまかすように笑うヴァルヌス。
 戦闘シーンの大半はバイオレンスだったわけだが、どうやって編集するんだろう。

「ともあれ、隼人殿の居場所は判明したでござる。急いで救出に向かうでござるよ」
 鏡花の言葉に、一同はうなずいた。
「せっかくなので、鐘持殿と猛殿にも同行してほしいでござる。一刻も早く、隼人殿と再会したいでござろう」
「言われなくても行くよ。隼人が心配だし」と、猛。
 こちらの兄弟愛は、とても純粋だ。



● 受け渡し当日・貸倉庫

 というわけで、犯人たちを物理的に説得した撃退士たちは、一郎と二郎を拘束したまま2台の車に分乗して貸倉庫へ向かった。
 あの状況で二郎が嘘をつくはずもなく、自供どおりに隼人は貸倉庫内で発見。
「隼人ぉ!」
「にいちゃん!」
 みたいな、感動の再会となった。
 これもすべて、撃退士たちの活躍のおかげだ!

「見ろよ、隼人。久遠ヶ原の人たちが助けてくれたんだ。みんな、すげえ強かったぜ!」
「いいなあ。ぼくも見たかった」
 隼人は本気で羨ましそうだ。
 それを見た雫が、微笑みながら言う。
「ここに犯人をつれてきてますので……ご希望なら、少々痛めつけますよ……?」
「え、ほんと!?」
「「か、勘弁してくださいぃぃ……!」」
 一郎と二郎は土下座して泣きだした。
 ふたりにしてみれば、雫の存在自体がトラウマもんだ。

「ところで、この犯人たちはどうするにゃ? このまま警察に突き出すかにゃ?」
 宮子が素朴な問いを口にした。
「警察など、なまぬるい。その2人は儂が預かろう」
 当然のように所有権を主張する鐘持老人。
 一郎も二郎も顔面蒼白で、震え上がるばかりだ。
 そこへ、ヴァルヌスが口をはさんだ。
「彼らの処遇は鐘持さんにゆだねますが……小麦をまけば小麦が育つように、愛情からは愛情が育つ。そして、その逆もしかり。……彼らがこのような犯罪に手を染めてしまったのも、正しく導いてくれる存在がなかったからではないでしょうか」
「なにが言いたい?」
「つまり……鐘持さん、彼らを雑用係として雇いませんか?」
「このチンピラどもをか?」
「ええ。あなたのように厳格な人のもとで、反省と更生を兼ねて再出発してくれたら……と思いまして。今回、彼らも身をもって学んだことでしょう。……まぁ万が一にも再び変な気を起こしたら、地獄すら生ぬるい目に遭わせるだけですし」
「ふむ……そこまで言うなら、ためしに使ってやっても良い」
「「ええ……っ!?」」
 一郎と二郎の顔色が、さらに青くなった。
「なんだ? 不満なら即座に始末してもいいんだぞ? 貴様らに選択権があると思うのか?」
「「あ、いえ……はい……」」
 選択権どころか、基本的人権すら彼らには与えられてないようだ。

「そういうことでしたら、私が調きょ……いえ、教育係になりましょう」
 今日の雫は、どこまでもハードモードだった。
「おお、そうか。では手を借りよう」
「まかせてください。腐った性根を叩きなおすため、地獄の海兵隊式訓練で立派な戦争の犬に仕立て上げてみせます」
 どこかの軍曹みたいな顔で微笑む雫。
「そうかそうか。うまく調教できたら鉄砲玉にしてやろう」
 当事者ふたりを完全無視して話を進める鬼畜2名。
「ええ……安心してください。……狂育が終わるころには、いっぱしの撃退士になってますから」
「「……」」
 もはや反論もできず、一郎と二郎は失禁しないようにするだけで精一杯だった。

「では、誘拐犯たちの処遇も決まったところで……」
 ヴァルヌスが話をまとめに入った。
「2日前に言ったとおり、僕は今回の戦闘をずっとビデオ撮影していました。ここへ来るまでのあいだに、映像も編集済みです。大迫力の撃退士バトルを、ぜひ堪能してください」
 と言いながら、ビデオを取り出すヴァルヌス。
 想像もしなかった展開に、猛と隼人は思わず顔を見合わせる。
 その二人の目の高さに合うよう腰をかがめながら、ヴァルヌスはビデオを差し出した。
「卑劣な犯罪に、よく耐えたね。これは頑張った二人へのごほうびだ」
「わあーーい!」
「すげえーー!」
 兄弟は大喜びだ。
 一部グロ動画になってないか、少々心配だが……。ヴァルヌスの倫理観を信じよう(

 というわけで。鐘持兄弟誘拐事件、これにて一件落着。



● 後日談・鐘持邸

 事件解決から数日後。
 桜花は、アフターケアとして鐘持兄弟のもとへ通っていた。
 基本的には、護身術のコーチ役だ。ついでに、勉学の家庭教師役も務めている。
 無給だが、こういうケアも撃退士の務めだ。
 とはいえ、おつきのメイドまで務めるのはやりすぎかもしれない。
 憧れの撃退士……しかも美人のメイドおねえさんが手取り足取り色々教えてくれるとなれば、それは血が滾るさ。だって男の子だもの。
「桜花先生、ここがわかりません!」
「桜花先生、ぼくもこれを教えてほしいです!」
 ほとんど奪い合いである。
 この兄弟、誘拐されて結果的に勝利だったのでは……。
 しかし、たのしい時間は長く続かない。
「……では、今日の授業はここまでです」
「ええー、もうすこしいいじゃん!」
「そうだよー!」
 桜花先生、大人気。


 一方そのころ。
 屋敷の裏庭では、雫教官による地獄の超狂訓練が行われていた。
「……さて、ウジ虫ども。今日の実戦訓練をはじめる」
「ぐええ……もうやめてくださいぃ……!」
「死ぬ……死んでしまいます……」
 血まみれ泥まみれで、地面に転がる元撃退士2人。
 だが、雫は無表情だ。
「死ぬだと? そんな言葉は実際に死んでから吐け。だが私も鬼ではない。この大剣で、念入りに『ヒール』してやろう」
「それって、悪役の意味……」
「なにか?」
 ドバシュウウウッ!
「「アバーッ!」」

 雫が殺人犯になる日は、きっと遠くない。




依頼結果

依頼成功度:成功
MVP: −
重体: −
面白かった!:7人

無念の褌大名・
猫野・宮子(ja0024)

大学部2年5組 女 鬼道忍軍
伝説の撃退士・
雪室 チルル(ja0220)

大学部1年4組 女 ルインズブレイド
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
花々に勝る華やかさ・
染井 桜花(ja4386)

大学部4年6組 女 ルインズブレイド
モフモフ王国建国予定・
鳴海 鏡花(jb2683)

大学部8年310組 女 陰陽師
優しき強さを抱く・
ユウ(jb5639)

大学部5年7組 女 阿修羅
モーレツ大旋風・
御供 瞳(jb6018)

高等部3年25組 女 アカシックレコーダー:タイプA
彩り豊かな世界を共に・
ヴァルヌス・ノーチェ(jc0590)

大学部7年318組 男 アカシックレコーダー:タイプA