すまぬ……すまぬ……!
移動力を参照するなんて言わなければ……!
と反省してから、記述を始める。
その日。寒風吹き荒れる砂浜に、26人の撃退士が集まった。
いずれも寒中水泳大好きな、筋金入りの猛者どもだ。
いや嘘だった。単なるヒマ人どもだ。
「さすがアヤ。良い訓練だ。海に入るのが暖かい時期だけとは限らんからな」
リリィ・マーティン(
ja5014)が、まじめな顔で話しかけた。
水着ではなく、いつもの迷彩服だ。肩にはライフルをかついでいる。
「でしょ? 名案よね!」
「ところで、これも何かの縁だ。アヤに協力しよう。知ってのとおり私は海兵だ。利にならずとも害にはならんさ」
「ふーん。いいわよ」
「で、作戦はあるのか? なければ海岸で待ち伏せて、浮き輪を獲ってきた選手を狙撃しようと思うが」
「はぁぁ!? これは寒中水泳よ!?」
「ということは、作戦があるんだな?」
「当然!」
というわけで、リリィと亜矢は手を組むことに。
「しかし……なんでもありとは、また無茶な……。怪我人が出るのは当たり前でしょうね」
呆れ顔で呟いたのは、黒井明斗(
jb0525)
ウェットスーツをしっかり着込んで防寒対策した彼は、用意したゴムボートにライフガードチューブを満載している。
負傷者はまだしも死者を出すわけにはいくまいと、明斗はライフセーバーを買って出たのだ。
レースが開始されるまでは、入念に柔軟体操。いかにも明斗らしい。
セーバーは1人だけではなかった。
只野黒子(
ja0049)も明斗と同じくゴムボートを準備して、負傷者の対応をする予定だ。
おお、なんと優しい子だろうか。
けっして、寒いから泳ぎたくないとか、海が荒れてるから泳ぎたくないとか、そういうわけではない! ないったらない!
「お義父さん、みるくちゃんを僕にください!」
「そこまで言うなら仕方ない。この大会で優勝したら、交際を認めよう!」
「く……っ!」
藍那湊(
jc0170)は躊躇した。
というのも、彼はカナヅチなのだ。
無論、ヴァルヌス・ノーチェ(
jc0590)は承知の上。
しかし、引くわけにいかない湊。遺書と浮き輪を用意して、急遽参戦!
「わかりました。かならず優勝してみせます!」
「そうかそうか。今日の海は大荒れ……。非常に危険なレースだ。『 事 故 』には、くれぐれも気をつけてくれたまえよ!」
キュピーンと目を光らせながら、湊に激励を送る外道ロボ。
こうして湊は、決して負けられない戦いへ身を投じることに。
「……あれ? 湊くん泳げないのに参加するのです?」
事情をしらない胡桃みるく(
ja1252)は、不思議そうに訊ねた。
「うん。絶対に優勝してみせるから待っててね、みるくちゃん」
「それは楽しみです。浜辺で応援していますので、がんばってくださいね!」
無邪気に激励を送る、みるく。
こうして湊は、決して勝ち目のない戦いへ(ry
「立派な撃退士になるように頑張るです」
マリー・ゴールド(
jc1045)は、ガタガタ震えながらなけなしの気合を入れていた。
先日入学したばかりでバカなイベントを知らない彼女は、これも訓練の一環と超善意の解釈をして参加。おかげで、ひどい目に遭うハメになる。
しかも身につけているのは、悪魔の母から譲り受けた下乳ばっちりの悪魔式チューブトップビキニ!
「うぅ……恥ずかしいけど、戦士の衣装だから仕方ないです」
母からの間違った教えをしっかり実践してしまうマリー。
外見はふんわり乙女系だが、体の発育は十分だ! これなら勝つる!(
「恋音、寒中水泳というよりもディアボロ退治、気合を入れて頑張りましょう!」
沖合いから押し寄せてくる海産物軍団を眺めつつ、袋井雅人(
jb1469)は光纏した。
彼にとって、寒中水泳の勝ち負けなどどうでもいい。世界を脅かす天魔を倒すことこそ、撃退士の使命だ!
「おぉ……私も頑張りますよぉ……」
うなずいたのは、月乃宮恋音(
jb1221)
身につけているのは、牛柄のビキニだ。いつもどおり、胸のサイズがぱっつんぱっつん!
「うぅ……海の天魔には、ろくな記憶がありません……」
由利百合華は怯えていた。
こちらは地味なスク水だが、やはり胸がぱつんぱつん。
「そうですか? 私は海の天魔には良い思い出ばかりですよ!」
雅人が笑った。
その『良い思い出』の大半は、恋音の犠牲のもとに成り立っているわけだが。
「うぅん……イヤな予感がしますねぇ……。ともあれ、スタートを待ちましょうかぁ……」
さすが恋音。フラグを立てることに余念がない。
「これじゃねー、これじゃねーんだよ、もう。全員死ね」
ラファル A ユーティライネン(
jb4620)は、いつになく不機嫌だった。
初夢も早々に学園の技術者が開発してくれた、水陸両用義体。だがそれは、初夢と全く同じものであった。一言で言い表すなら、アッGUY。おせじにもカッコイイとは言えないフォルムだ。
しかしまぁせっかくなのでと、試運転も兼ねて『アッGUY+ラファル』の面白コラボ状態で参戦したのだが、虫の居所はかなり悪い。この様子だと、なにをしでかすか知れたものではない。
が、なにするかわからないのはいつものことだった。
どうせ爆破オチだよ、はっはっは。もう見慣れたわ。
さぁかかってこいラファル!(何の戦いだ
「訓練とはいえ寒いわねェ……さっさと終わらせて、海の幸でも食べて帰りましょうかァ……」
荒れる海を見て、黒百合(
ja0422)は溜め息をついた。
スク水姿がばっちり似合う彼女こそ、本大会の優勝筆頭候補だ。
なんせ、素の移動力が54!
これはもう、規格外というか、言語を絶するというか、アタマおかしいというか……完全にどうかしてる。移動力って、普通5〜7ぐらいだからね? おまけに飛行も水上歩行もできるし……。うん、だれかどうにかしてくれることを祈ろう。なぁに、いくら足が早くたって、ころころしてしまえば無意味さ! 黒百合をころころするほうが難しい気もするけどな!
「いいかね、ハラキリは文化だ。撃退士になると本当にジョークにできるから素晴らしい」
と言いつつ、鷺谷明(
ja0776)はいきなり切腹した。
無論、ただのドMというわけではない。これで生命力を25%以下にして、『生存本能(大逃走)』を使うのだ。さらに水上歩行を併用して、移動力53で海面を走る作戦。
みごとな策だが、ここまでしても黒百合の通常値に勝てないんだぜ……。おかしいだろ……。
ちなみに明って、全参加者中2番目の移動力だからね。どうしよう。
「よっしゃ、寒中水泳大会やな! 勝負事やったら負けへんでー!」
泣き言を言いはじめたMSを救うべく、黒神未来(
jb9907)が堂々の参戦!
黒ビキニ着用で、自慢のDカップを見せつけての登場だ!
「……って、なんや。ディアボロ出現してるやないの。そんならしゃあないな、うちはディアボロ退治に専念するで」
っておい! 方針転換早すぎ!
「ちゅーわけで、うちは海に入らず海岸線で待機や。ハイド&シークで隠れて、蛇眼や戒眼で敵の動きを止めて、闇討ちバックドロップで仕留めるで!」
いやいや、水泳大会水泳大会!
しかし、ここで未来が切り返す。
「……とでも言うと思ったか! うちの真の狙いは、浮き輪持って戻ってきた人を蛇眼、戒眼で拘束して、ハイド&シークの闇討ちで浮き輪を奪うことや! 卑怯? なに言うとるん。最後に勝ったもんがえらいんや!」
ドヤ顔でゲスなことを言い放つ未来。
まっとうにレースしたら黒百合に勝てるはずないので、これは名案だ。
もはやまったく水泳じゃないけどな!
「おー、羊さん浮き輪ほしーのですよ♪ かわいいのです♪」
フリフリピンクのワンピース水着で登場したのは、江沢怕遊(
jb6968)
かわいいもの大好きな彼は、今回本気で優勝を狙っている。
だがしかし! 参加者が怖い! とくに一部の人が怖い! 具体的に言うと黒百合(ry
というわけで、怕遊は作戦を考えた。
いまはまだ言えないが、一発大逆転の奇策だ。うまくハマれば、優勝も十分ありえる!
亜矢と違って、じつは何も考えてないとかいうオチではないぞ!
くらって驚け、一部の怖い人!
具体的に言うと(ry
「さぁはじめるわよ! みんな位置について!」
亜矢が号砲を持って波打ち際に立った。
しかし、指示に従う者は数人しかいない。あとの人たちは、温かそうな中華まんとか中華スープとか食べてる。
これは一体?
「さぁさぁ遠慮なく食べてって〜。出張赤猫、開店ってね〜」
アメリア・カーラシア(
jb1391)が、手作り中華と点心をふるまっていた。
露出多めの真っ赤なミニスカチャイナドレスが、目にまぶしい。
手伝っているのは、真っ白なチャイナドレスに身を包んだユキメ・フローズン(
jb1388)
寒いだろうからと、ふたりは参加者のため炊き出しに来たのだ。
ちなみに赤猫というのは、アメリアの経営するチャイナカフェである。
「ちょっと! なにしてんのよ!」
亜矢が走ってきた。
「見てのとおり、炊き出しだよ〜?」
アメリアが陽気に応える。
「そんなことしてないで、水泳に参加しなさいよ!」
「そう怒らずにさ〜。ひとつ食べてみてよ〜」
アメリアが手渡したのは、特製中華スープと焼豚炒飯おにぎりだった。
「あんたねぇ、おにぎりごときでごまかされると思って………う、うまっ!」
一口食べて驚く亜矢。
実際おいしいと、参加者の間でも大好評だ。
「ち……っ。わかったわよ。好きにしなさい」
「そうさせてもらうよ〜。みんな〜、たくさんあるからおかわりしてってね〜。赤猫よろしくだよ〜」
料理と一緒に店のチラシを配るアメリアは、なかなかの宣伝上手だった。
その間も、ユキメは忙しく働いている。
しかし、ふだん和服が多い彼女には、チャイナドレスが気になるようだ。裾を気にしながら食事を給仕する姿は、妙に色っぽい。
「これ、着る必要あったのかしら……?」
そんなふうに溜め息をつく姿も、また色気があるのだった。
「さて、仕切りなおしてレース開始よ!」
右手に拳銃、左手におにぎりを持って、亜矢がスタートラインに立った。
相棒のリリィが隣に立ち、ほかの参加者たちも横一線に並ぶ。
完全に私服姿でまったく泳ぐ気のない者も多数いるが、とにかく始めなければわからない。
「じゃあ位置についてー! よーい、
ズ ド オ オ オ オ オ ン ン!!
号砲と呼ぶにはあまりに破壊的すぎる爆発音が、地面を揺らした。
なんということか。あたり一面は一瞬で火の海に覆われ、参加者全員真っ黒こげで倒れているではないか!
いったい誰がこんなことををを!(棒
「ラファルゥゥ! なにしてんのよぉぉ!」
自慢のポニーテールをアフロにしつつ、亜矢は爆破魔の胸倉をつかんだ。
「ん? 『なんでもアリ』なんだろ?」
「はじまる前に終わらせてどうすんの! みんなリタイアじゃない!」
「なら俺の優勝だな。さーて、悠々と浮き輪ゲットだぜー」
らっはっはーと大笑いしつつ、海へダイブするラファル。
こいつ、さりげなく移動力17もありやがる! こりゃ本当に優勝か!?
「ふ……甘いわね! コメディはねぇ、1ページめくったら全部リセットされるのよ!」
究極呪文『だってコメディだし』の一言で、いまの大爆発は何もなかったことになった!
さっきまで焼死体みたいだった参加者たちも、生まれ変わったようにフレッシュだ。
「みんな、ラファルの優勝だけは阻止するのよ! よーいドン!」
今度はちゃんと号砲が鳴った。
瞬時に飛び出したのは、やはり黒百合だ。
『縮地』使用の移動力は、驚異の62!
これは時速約90キロ。100mを4秒で走り抜ける速度だ。しかも水の上を! 人間じゃねえ!
しかし、本能のまま走りだした明が後を追った。
ハラキリ・リチュアルで最高速度を得た彼は、まさにイダテンのごとし!
これはもしや、予想外の好レースか!?
と思いきや、明は10秒で失速。そのまま海に沈むと、走った勢いのまま沖へ流されていった。
なんという一発芸……。番組的に、一度やったネタを繰り返すのはNGだったようだ。
その後、沖へ流れていった明は消息を絶ち、見知らぬ海岸に漂着することに。
どう見ても日本じゃないが、なぁに撃退士なら何とかなる!
それに多分、明斗が助けてくれるよ!
「いくわよ、リリィ! ついてきなさい!」
号砲と同時に、亜矢は全力移動で走りだしていた。
実際かなりの速さだが、それでも黒百合に勝てるわけない。
「なんなの、あのチート野郎!」
「参加者を見た時点で予想できたはずだが……作戦はあるんだよな?」
リリィが訊ねた。
「と、当然でしょ!」
「では、それを実行しよう」
「そ、そうね! まずは突撃よ!」
と言って、海へ飛び込む亜矢。
やむなく後を追うリリィ。
「アヤ……本当に作戦はあるのか……?」
「当然よ!」
当然あるわけなかった。
「ひああ……っ!」
開始と同時に、マリーはスッ転んでいた。
しかしこれも訓練と、立ち上がって海へ飛び込む。
そして一生懸命泳ぐが、ダントツに遅い。
新入生では無理もないが、もしかすると胸にかかる水の抵抗が凄いのかも。
あっぷあっぷと、荒れた海の中を必死に泳ぐマリー。
そこへ、タコ型ディアボロの触手が!
しかしマリーは泳ぐのに精一杯で、まったく気付かない!
いかん! このままではマリーの貞操があああ!(喜
「あぶない!」
駆けつけたのは雅人だった。
そう、彼は最初からマリーを狙って……もとい見守っていたのだ。先輩として、巨乳娘……ではなく新入生を助けようと、スキルを駆使してストーキング……じゃなくて護衛していたのだよ!
「というわけで、助太刀させてもらいます!」
タコめがけて、躊躇なく暗黒破砕拳をぶちこむ雅人。
とどめはダンスマカブルだ!
そう、彼にとって寒中水泳などどうでもいい。重要なのは、ラキスケで誰かのおっぱいを揉めるかということだ!
てなわけで、どさくさにまぎれてマリーのおっぱいを──と思った直後。巨大な人食い鮫が雅人を襲い、一発リタイアさせたのであった。無念! ブツは目の前だったのに!
ちなみにその間、マリーは何も気付かず泳いでたよ。
こうして波乱の中、寒中水泳大会は始まった。
一方、砂浜でも別の戦いが始まっている。
参加者名簿に黒百合の名前を見たからか、自力で浮き輪を獲りに行かず、浮き輪を獲って戻ってきた相手を待ち伏せする作戦を選んだ人が多いのだ。
中でも最有力候補は、雫(
ja1894)
上陸してくるディアボロさえ無視して、完全に浮き輪を横取りする構えだ。
無論、おなじ作戦の相手にも警戒を怠らない。
なんと救護班のふりをして、浮き輪には興味ありませんアピールだ。
そこへ、明斗が血まみれの雅人を搬送してきた。
「良い実験台……いえ、治療対象者が来ましたね」
と、妖しく瞳を輝かせる雫。
手にはメスと注射器を握っている。
「すみません。来るところを間違えました」
あわてて逃げようとする雅人。
「ご心配なく。きっちり治してあげますから」
「いえいえ、まっぴらごめんです!」
「遠慮は無用です」
「アバーッ!」
雅人、本日2度目のリタイア。
そんな光景を横目に、雪之丞(
jb9178)は誰かが浮き輪を持ってくるのを待ちかまえていた。
なるべく露出の少ない水着を選んできた彼女だが、やはり恥ずかしそうだ。
それはともかく、ふつうにディアボロと戦ってるけど大丈夫だろうか。
いや、撃退士として大切ですけどね。天魔退治。
浮き輪争奪バトルロイヤルが始まったとき、体力もつのかな。
さて、『浮き輪が来るまで待ってる♪』作戦を選んだ人。3人目は月詠神削(
ja5265)
目的のためなら手段を選ばない合理的暴力主義者である彼が、まっとうに寒中水泳などするはずもなかった。
これ、浮き輪を持って帰ってくる奴を待ち伏せて強奪するほうがよくね?
という考えに至るのは当然のこと。
もちろん、待ち伏せの間も油断はしない。ゴールから距離をおいて、しかるべき時が来るのをじっと待つ。
……え? ディアボロ退治? そんな目立つこと、するわけないだろ!
という具合に待ち伏せ作戦が横行する中。怕遊はとっておきの奇策を実行していた。
名付けて、偽ゴールゲート作戦!
説明しよう! 偽ゴールゲート作戦とは!
ニセモノのゴールを作って、浮き輪を獲ってきた人を誘導する作戦だ!
って、説明する必要なかったわ!
こんなトンデモ作戦が百戦錬磨の撃退士に通じるのか不安だが、なにごとも挑戦だ!
「なるほど。ニセモノのゴールか……」
鳳静矢(
ja3856)は、腕組みしながらバーベキューを焼いていた。
そう、怕遊の作戦の欠点は、浜辺にいる者にはバレてしまうということだ!
でも大丈夫! 浮き輪を獲ってきた人にはバレない! それ以前の問題のような気もするが、きっとバレないよ!
それはともかく、なんで泳ぎもせずにBBQしてるんだろう、この静矢さん。
と思ったら、『冬の海岸でBBQをやると聞いて参加』したらしい。
待て待て! そんなこと誰も言ってない! どういう空耳だよ!
「寒空の下のバーベキューも良いものだな……」
とか言ってるけど、完全にソロBBQだからね!?
まぁ、そんな砂浜待機組は置いといて。
そのころ湊は、浮き輪につかまりつつ大剣ディープフリーズをオール代わりにして、ボートを漕ぐように進んでいた。
ふるうだけでダイヤモンドダストが舞うというはた迷惑な武器だが、残念。寒いのは湊だけだ。
移動力15は悪くない数値だが、浮き輪の時点で結果はお察し(ry
ていうか、黒百合がいる時点でお察し(ry
しかも湊には、ディアボロ以外の敵がいた。
緑の悪魔ロボお義父さん、ヴァルヌスである。
透明化&飛行で先回りした彼は、海中で海藻に擬態して獲物を待ち伏せしていた。
そして湊が通りかかった瞬間、シザーアンカー発動!
チェーンが絡みつき、容赦なく湊を束縛する!
「ガボッ!?」
足を引っ張られて、溺れる湊。
「う、海坊主……いやお義父さんゴバァ!」
「ふ……なんとしても娘はやらん!」
こうして、みるくを賭けた戦いが始まった。
だがそこへ、当の本人が!
「みなとくぅん!」
野生のシャチ(ぇ)に乗ったみるくが、斧を振りまわして参上!
「いま助けます! 必殺オルカアタック!」
「いま必殺って……!?」
湊がツッコんだ。
「えっ!? あっ、そんな暴れたらボクま、らめぇっ!」
みごとに巻き込まれて、湊ともどもオルカアタックの餌食となるヴァルヌス。
そうして二人を仕留めた(ぇ)みるくは、悠々と犠牲者を回収して浜辺へ運ぶのだった。
しかし、岸にたどりついたとき。湊は息をしてなかった。
「大変! 湊くんの呼吸がッ!」
あわてて人工呼吸しようとする、みるく。
「まて! それは僕がやる!」
ヴァルヌスが止めた。
彼からすれば湊とキスなど冗談ではないが、みるくとキスされるのはもっと冗談ではない。
背に腹は代えられぬというわけで、やむなく人工呼吸だ!(それ口あるの?というツッコミはナシ!
──数分後、湊は目をさました。
見れば、みるくが膝枕してくれているではないか。
「君が助けてくれたんだね……ありがとう」
夢か幻か、唇に残る感触を思い出して頬を染める湊。
なにか盛大に勘違いしてるわけだが、現実は非情だ。
が、湊はすぐに立ち上がる。
「まだだ……まだ終わりじゃない!」
浮き輪を手に、再び海へ走る湊。
そう、彼の戦いは続く。彼女(との交際を認めてもらう)のために!
以上! 第5話『禁断の恋! 義父と接吻!?』完!
次回、第6話『最終決戦! 半ズボン萌えVSうなじフェチ!』
この次も、サービスサービスぅ♪
「ふぅ……50km泳ぐのは、大変ですねぇ……」
新入生を助けに行った雅人とはぐれて、恋音は百合華と一緒に浮き輪をめざしていた。
体型上、二人とも浮くのは得意だが泳ぐのは遅い。
そんな彼女らへ、ヒョウモンダコ型の天魔が襲いかかる!
説明しよう! こいつの毒にやられると……
ぼんっ!
説明するより先に、結果が出た。
そう。お察しのとおり、胸が大きくなってしまったのだ!
これが二人共通の特異体質!
すっかり脂肪の塊のフローターと化した4つのおっぱいが、ぷかりぷかりと海面を漂う。
最終的に二人は明日羽のクルーザーに引き上げられ、そこでゴジ●型天魔が出撃するのを目撃するのであった。
「勝つ……! 今度こそ海鮮ディアボロに勝ってみせる! 私に秘策あり! ハァーハハハハ!」
高笑いすると、ラテン・ロロウス(
jb5646)は眼前の天魔にアンタレスを放った。
燃えさかる劫火が、タコ焼きディアボロを灰にする。
「先手必勝! フハハ! 海鮮鍋にしてくれるわ!」
タコ焼き入りの海鮮鍋ってイヤだな。
しかし、そのとき! 海底から忍び寄る影がラテンを襲った!
「グワーッ! ちくわ型ディアボロだと!?」
登場したのは、全長5mのちくわ!
胸から下を丸呑みにされて、もがくラテン!
ここで、ちくわが『意思疎通』した。
「目標距離50km。残り時間1時間ドスエ」
壊れたカーナビみたいな口調だ。
それと同時に、敵は無情にも竹輪カウントを開始!
「これは……直感的にわかる! 目標達成しなければ爆発する!」
さすが自爆マスター・ラテン! わけがわからん!
ともあれ、今ここに新型のディアボロもしくはUMAが誕生した!
泳げ、ラテン! マグロめいて泳げ! 命をかけた泳ぎが遅いはずがなし! ついでに浮き輪も持ち帰るんだ!
でも移動力6! 黒百合の1/10だ! 無理ゲーすぎる!
というわけで、ラテンはちくわごと爆発四散! ナムアミダブツ!
変人たちが退場したところで、浮き輪争奪戦に話をもどそう。
現在トップを行くのは、当然のように黒百合。
その後を追うのは……
お、追うのは……
だ、ダメだ。だれも追いつけっこねえ!
一応2位はラファルだけど、あっというまにブチ抜かれたあとは差を広げられる一方だ。
「さすが黒百合さん。しかし諦めませんよ」
現在3位のエイルズレトラ マステリオ(
ja2224)は、タキシード、シルクハットに分厚いコートという奇術師スタイルで空中を走っていた。
そう。水泳大会だからって、泳がなきゃならないなんて決まりはない。むしろ、泳いでる人のほうが少ないぐらいだ。
まじめに優勝を狙うエイルズだが、そこへフロートタイプのウニボロが転がってきた。
「きましたね」
目を輝かせて、すかさず『ショウタイム』で注目を集めるエイルズ。
当然、ウニボロが向かってくる。
「さぁこっちですよ」
エイルズはUターンすると、後続グループのほうへ走りだした。
これが彼の狙い。ウニボロを利用してライバルを蹴散らす作戦だ。しかし妙に楽しそうなのは何故だろう。
さて、現在4位につけているのは染井桜花(
ja4386)
紺のスクール水着という王道ファッションに身をつつんだ彼女は、野生の鮫や海産物ディアボロを踏み台にして因幡の白兎みたいに突き進んでいた。トップとはかなり差をあけられているが、勝利は諦めてない。
「……必ず泳げとは言われてない」
ぽつりと呟きつつ、全力跳躍で距離をかせぐ桜花。
そこへ、エイルズがウニボロをつれて走ってきた。
「……敵、接近」
桜花は距離をつめると、タイミングをはかって自分の後方へソニックブームを叩きこんだ。
その衝撃波で高速移動して回避!
と言いたいところだが、エイルズ&ウニボロのタッグ(?)は強すぎた!
ウニボロに轢き逃げされた桜花、あえなくリタイア。
次にエイルズが目をつけたのは、楯清十郎(
ja2990)だった。
参加した以上は全力で勝ちに行こうと、懸命に泳ぐ清十郎。
そこへ、ウニボロが襲いかかる!
これはヤバイ!
しかも、ここぞとばかりに秋姫・フローズン(
jb1390)が白スク水で乱入。
桜花と同じく因幡の白兎戦法で、清十郎の頭を踏み台にする。
「失礼……しますね……」
前方と頭上を完全に制圧されてしまった清十郎。これはチョー・ヤバイ!
しかし彼は冷静にタウントを発動。当然、標的は秋姫だ。
すると、エイルズを追っていたウニボロは方向転換して秋姫のほうへ。
清十郎、間一髪でセーフ!
「なにか……変なものが、ついてきましたね……」
強制的にウニボロを押しつけられた秋姫は、やむなく陽光の翼を展開した。
そして高速アクロバット飛行を見せながら、舞い踊るかのように──
その横を、黒百合が平然と走っていった。
小脇に抱えているのは、羊さん浮き輪。
そう、すでに回収して戻ってきたのだ。無茶苦茶すぎる。
わかりきったことだが、エイルズと秋姫には手の出しようがない。
だって、黒百合ってば1秒後には25m先にいるんだ。しかも戦う気がないから、本当にどうしようもない。
だが! 清十郎には打つ手があった!
「いまこそ好機!」
双剣を装備したまま、盾を緊急活性化!
意図的に生命力を減らしたところで、『大逃走』を発動!
さらに『全力移動』すれば、黒百合に追いつけるぜ! これで浮き輪を奪取!
と思って突撃したまではよかったが、あっさり空蝉で回避されて返り討ちに。
そして、血の匂いに誘われた人食い鮫に食べられてしまう清十郎なのであった。
でも大丈夫! アンパン持ってるし! アンパン吸えば……じゃなくて食べれば、回復するし!
まぁ清十郎には予想外すぎる展開になってしまったと思うが……俺だって予想外だったんだ……。ぜんぶ黒百合が悪いんだ……。
責任転嫁したところで、場面は砂浜へ。
まだ泳いでる人もいるけど、もどってくるヒマはない。ぜんぶ黒百合が(ry
それはともかく、浜辺はえらい騒ぎだった。
なんせディアボロは続々と上陸してくるし、明斗は次々と負傷者を運んでくる。
アメリアとユキメはカフェ赤猫の切り盛りで大忙しだし、静矢はバーベキューしてる。
「妙なディアボロが多いな……」
静矢が言うとおり、砂浜は鰻(蒲焼き)とか、蟹(鍋)とか、栄螺(主婦)みたいな天魔が跋扈していた。
BBQの串をかじりながら、浜辺の平和を守るべく戦う静矢。栄養補給は完璧だ!
救護班の黒子と明斗も、やむなく戦っていた。
最初は戦う予定ではなかったが、この状況ではそうも言ってられない。ほっといたら自分たちが死にそうだ。
しかし飽くまでも、基本は救助活動。
運びこまれた負傷者たちを守りつつ、珍妙な海産物軍団を迎撃する。
黒子のスナイパーライフルが火を噴き、明斗のコメットが天魔を打ちのめした。
しかし、倒しても倒してもキリがない。恐るべし、カナロアの海産物軍団!
そして、ある意味それより恐ろしい女が波を蹴立てて走ってきた。
黒百合様のご帰還である。
「おー、あと少しなのですよ♪ ここがゴールなのです♪ ファイトなのですよ♪」
怕遊がニセモノのゴールに誘導した。
きっちりゴールテープも張ってあり、一見ホンモノっぽい。
「あらァ……ご苦労様ァ」
だまされたのか、それともあえて乗ることにしたのか、黒百合は迷わず突撃してきた。
「おー、おめでとうなのですよ♪」
花束をかかえて駆け寄る怕遊。
そして、ありったけの攻撃スキルを一気に……
と思ったところで、雪之丞が立ちはだかった。
「ふふ……ここまでご苦労だったな」
クールに決めたつもりだが、寒さで震えている。
しかし、ゴール前に現れたのは彼女だけではない。
なんと静矢も、BBQ片手に乱入!
「あの浮き輪は、もしや父さんの形見……!?」
とか謎の言葉を口にしてるが、そんな父親はイヤだ。
ともあれ形見を奪い返そうと、静矢はクマの着ぐるみで登場。
「仮面ラッコ見参!」
いやラッコじゃねぇし。
最近この人、スキあらばネタをぶっこんでくるな。
だが次の瞬間。静矢の背中に『胡蝶』が命中した。
「すみません、回復職なので火力に不安があります。ゆえに不意打ちさせてもらいます」
なんと、雫がアスヴァンになってる!
「なんの! ルインズ最強!」
いきなり封砲をぶっぱなす静矢。
当然、怕遊と黒百合も巻きこんでるぜ。
「あらァ……早く帰りたいのにィ……」
黒百合からゴールまで、約100m。
1ターンで済む距離だ。負傷覚悟で突破できる。
そう判断して突っ込んだとき。ハイド&シークで身を隠していた未来が、闇討ちバックドロップを黒百合にかけ──ようとしたが、これは空蝉で悠々回避! 残念!
そこへすかさず、怕遊のストレイシオンが突撃。
雫と静矢のスキルが乱れ飛び、ゴール前の浮き輪争奪戦は壮絶な死闘と化した。
「いまこそアタシの出番よ! 作戦どおり!」
炸裂したのは、亜矢の影手裏剣・烈。
「そうか、これが作戦だったのか。すごいぞアヤ!」
リリィは完全に信じてる。
この人も最近アタマおかしい。
しかし、最後にすべてを一網打尽にしたのは、神削の『弐式《烈波・破軍》』だった。
このゴール前の戦いを最初から予想していた彼は、完璧なタイミングで奇襲することができたのだ。
結果、羊さん浮き輪を手にしたのは月詠神削!
だが、あとはゴールするだけだった彼を青白い放射熱戦が焼きつくした。
おお、見よ! 禍々しいBGMとともに海から姿を見せたのは、ゴジ●型ディアボロ!
ちなみにつれてきたのはエイルズだけど、彼はとっくに灰になってるよ!
──で、どうなったかというと。
あっというまに砂浜は焦土と化し、浮き輪は跡形もなくなり、寒中水泳大会は中止。
これぞエイルズの奥義・固有決壊『阿鼻叫喚』! 最初にくらったのは彼自身だ!
そして誰もいなくなったあと、自分で買ってきた羊さん浮き輪を持ったラファルが悠々とゴールイン!
亜矢の願いも虚しく、優勝の栄冠は爆破魔の手に落ちたのであった。