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マスター:牛男爵
シナリオ形態:ショート
難易度:易しい
参加人数:8人
サポート:3人
リプレイ完成日時:2014/10/07


みんなの思い出



オープニング


 ここは、久遠ヶ原学園・屋外射撃場。
 在校生なら誰でも無料で利用できるため、放課後となれば結構な数の生徒が訪れる。
 当然のことだが、インフィルトレイターを専攻している者が多い。
 その日、15mレーンで訓練をはじめようとしている少年も、インフィルトレイターだった。
 ただし、入学してからまだ1週間あまり。インフィルトレイターの道を選んでからは3日ほど。実戦経験もなく、文字どおりの新米だ。

「さぁ、今日も練習練習……」
 少年は射座に立つと、ガンベルト状のヒヒイロカネから拳銃を抜き、両手で構えてターゲットを狙った。
 ブルズアイ(同心円状)ターゲットだ。
 リアサイトからフロントサイトを覗き、ターゲットの中心を狙って、慎重にトリガーを引く。

 パンッ!

 着弾を見ると、だいぶ下にずれていた。
 修正して、もう一発。
 だが、今度はもっと下にずれている。

「ヘッタクソねぇ、あんた」
 後ろから、黒髪ポニーテールの高校生が声をかけた。
 毎度おさわがせクノイチ、矢吹亜矢である。
「あ、このまえはどうも……」
 と言いながら、少年は頭を下げた。
「それ、このまえもらった拳銃?」
「はい、そうです」
 少年の手にあるのは、オートマチックS-01。
 先日、気前の良い先輩から譲り受けたものだ。
「ふーん。ゆがんでるんじゃないの、その銃身。なにしろ中古だし」
「そんなことありませんよ! ちゃんとメンテナンスしてもらいましたし!」
「あ、そう。じゃあやっぱり、あんたがヘタクソなんじゃない」
「それは……だって、まだ始めたばっかりですから……」
「それにさぁ、あんなゆっくり構えてたら実戦じゃ使いものにならないわよ。天魔だって、じっと待っててくれるワケじゃないんだから」
「でも、ちゃんと狙わないと当たらないし……」
「そんなもん、勘で撃てばいいのよ。ちょっと貸してみなさい」
 そう言うと、亜矢は少年の手から拳銃をひったくった。
 そして、ろくにターゲットも見ず無造作に発砲する。

 パパパッ!

 撃発音が、たてつづけに響いた。
 見れば、ターゲットには一発も当たってない。
「あのぉ……全部はずれてますけど……」
「どこ見てんの。あっちよ、あっち」
 亜矢が指差したのは、となりのレーンの標的だった。
 マンターゲットの心臓部に2発、頭部に1発、きれいに当たっている。

「なんで、となりのターゲットを……」
「人型のほうが、気分上がるでしょ?」
「いや、上がりませんけど……。でも、すごい腕前ですね。口だけじゃなかったんだ……」
「だれが口だけよ! あたしが本気出せば、これぐらい楽勝なの!」
「す、すみません!」
 ぺこぺこと頭を下げる新入生。
 だが、たしかに亜矢の射撃センスは素晴らしい。人格は最悪だけど。
 そこで、ふと何かを思いついたように亜矢はポンと手を叩いた。
「そうだ、いいこと考えついたわ。あんた、あたしの弟子になりなさい」
「は? え……?」
「ことわる理由ないでしょ? あたしのコーチを受ければ、一週間でビリー・ザ・キッドになれるわよ」
「だれですか、それ?」
「知らないの!? まぁそんなことはどうでもいいわ。そうと決まったら、さっさとインフィルなんか辞めて忍者に転職よ。善は急げ!」
 少年の手を引いて、無理やり連行しようとする亜矢。


「まぁ矢吹さん。おちついてください」
 やってきたのは、神出鬼没の男、九鬼麗司だった。
「なによ、あんた。邪魔する気?」
「そちらの少年は、みずから望んでガンファイターの道を選んだのです。動機は少々不純なようにも見えましたが、その意思は尊重するべきでしょう」
「あたしの意思だって尊重するべきでしょ!」
「なるほど。しかし、その道理が通るのであれば、私の意思も尊重されるべきですね。……となれば、私がこの少年を弟子にとってもおかしくはありません。ちがいますか?」
「屁理屈よ、そんなの!」
 亜矢の言動は、どこまでも自己中心的だ。
 しかし、麗司は冷静に受け答える。
「では、どちらに弟子入りするか、少年に決めてもらいましょう。それが公正というものです」
「いや、あの、どちらにも弟子入りなんて……」
 勝手に話が進むのを見て、あわてふためく新入生。

「おっと、失念してました。決断の前に、私の実力を知らなければ正しい判断ができませんね。ごらんください、これが私の射撃能力です」
 言うや否や、麗司は光纏してドリル兵器を取り出した。
 おそろしく巨大な魔具だ。長さは4m以上、重量に至っては見当もつかない。まさに鉄の塊。圧倒的な質量感だ。とりあえず、駆け出しの撃退士が使いこなせる代物でないことは明白だった。
 その無茶苦茶な鈍器でどうするつもりかと少年が見守っていると、麗司はドリルの先端をターゲットに向けた。そして──
「ドリルミサイル発射!」
 まんますぎる技名と同時に、ドリルが先端から四つに割れた。
 そこから、格納されていたミサイルが雨あられと撃ち出される。

 ズドドドドドドド……!

 たちまち、射撃場は猛烈な爆風と爆煙に包まれた。
 ちっぽけなターゲットなど、まさに紙切れのごとく吹き飛ばされてしまう。
 騒動に慣れた久遠ヶ原生たちも、これには大騒ぎだ。

 地獄絵図と化したシューティングレンジを前に、さわやかな笑顔を見せる麗司。
「どうですか? これが私の提示する答えです。あなたはターゲットの中心を撃ち抜くことばかりに腐心していましたが、根本から発想を変えれば良いのです。ターゲットの中心が撃てないなら、ターゲットごと吹っ飛ばせば良いではありませんか。もっとも、このドリルは少しばかり装備コストが高くつきますが……一年ほど修行を積めば、どうにか使いこなせるようになるでしょう。女性の胸部になど気をとられず、漢の浪漫たるドリル道をはじめませんか?」
「いや、あの、その……」
 どこからつっこめば良いのかと、言葉に詰まる新入生。
 しかし、亜矢も黙ってはいない。
「そんな基地外じみた武器、素人に使いこなせるわけないでしょ! このまえも言ったとおり、刀で斬ればいいのよ! どうしてもっていうなら、銃の撃ちかたぐらい教えてあげるから! さぁ、あたしの舎弟になりなさい! そしてコロッケパンをおごりなさい!」
「だ、だれかぁぁぁ……!」
 困りはてて、助けを求める新入生。
 それを耳にした生徒たちが、なにごとかと集まってくる。
 こうして再び、かわいそうな少年をダシにしつつの話しあいが始まるのだった。



リプレイ本文



「どうした新兵、うまく当たらんのか?」
 見かねて、リリィ・マーティン(ja5014)が声をかけた。
 その軍人らしい外見に、少年の瞳が輝く。
 リリィは「ふ……」と微笑んで、右手を出した。
「リリィ・マーティンだ。以前は合衆国海兵隊にいた。会えて嬉しいよ」
「杜玲汰、小等部5年です!」
「レイターか。いい名だ」
 がっちりと握手しながら、リリィは続けた。
「どうやら射撃で悩んでいるようだ。よければ、私が少し教えよう」
「本当ですか。ぜひ!」
「とはいえ、私もまだV兵器には慣れてなくてな。教えるのは実銃の基礎になるが……知らないよりは良いだろう」
 そう言って、リリィはシルバーマグWEを抜いた。
「まずはグリップだ。私を手本に構えてみろ。内から外に絞りこむように握るんだ。雑巾を絞るようなイメージでな。足は肩幅に開け。それから、できるだけ全身の力を抜くんだ」
「はい!」
 玲汰は拳銃を握り、言われたとおり構えた。
「お、良いじゃないか! さまになってるぞ!」
「そうですか?」
「ああ、悪くない。だが、まだ力が入ってるな。反動に備えようとすると、無意識に銃口が下を向くぞ」
「はい!」
「よし、狙いをつけてトリガーを引け。ゆっくりとだ。徐々に引き絞って、自然に発射されるのを待て」

 パアアン!

 弾は正確に標的の中心を貫いた。
「ビューティフォ!」と、リリィ。
「やった!」
「余談だが、我々の間では真面目な人間ほど当たらず、適当な人間ほどよく当たると言われている。真面目なヤツは『当てよう』として力が入るからだ」
「あ。だから矢吹先輩は……」
「なんか言った?」
「あ、いえ」
 亜矢に睨まれて、玲汰は怯えた。



「やぁ、インフィルになったんだね」
 後ろから玲汰の頭をなでたのは、桜花(jb0392)
「あ、どうも……」
 玲汰は顔を赤くさせた。
「見てたけど、最初から15mはおすすめしないかな? 拳銃は本来、護身用の武器。プロでさえ50m先の静止目標に当てるのも苦労するぐらいだし、実戦で動きまわる相手なんか5mでも当たれば上等ってぐらいなんだよ?」
「そうなんですか」
「それと、私は敵を倒すためじゃなくて、いざってとき身を守れるようにと思って拳銃をあげたの。だから……まずは、こっちで練習しよ? 素早く抜いて当てる練習」
 桜花は5mのレーンに手招きした。
 しかし玲汰は動かない。
「すみません先輩。僕、15mでやりたいんです! 遠距離戦をメインにと思って……」
「えらい! もう自分の道を見つけたんだね! なら、お姉さんも協力するよ!」
「ありがとうございます!」
「遠くで当てるなら……まず姿勢が大事だよね。拳銃は照準の調節できないから、銃をあわせるより自分を銃にあわせないと。見てあげるから構えてみて」
「はい」
 玲汰は、リリィの助言どおり銃を構えた。
 その背後から、桜花が手をのばす。
「足はもう少し広げて……。右手はしっかり伸ばして、左手はこう、添えるように、ね?」
 と言いながら、玲汰の体をさわる桜花。
 背中に密着し、胸を押しつけながら拳銃に手を添える。
「引き金を引くときは力を抜いて、ね? 女の胸をさわるがごとく……って偉い人は言ってたから、私の胸で練習しようか」
「いや、あの、その……」



 そこへ颯爽と現れたのは、ラファル A ユーティライネン(jb4620)
 桜花の手から玲汰を奪還し、シャドーブレイドミサイルを発射する。
「「グワーッ!」」
 桜花と亜矢が吹っ飛んだ。
「おまえらの教育は、てんでなっちゃいねー! 俺様が久遠ヶ原式射撃術を叩きこんでやる! 新兵、おまえの名は?」
「杜玲汰です」
「ふざけるな! 大声出せ! 今日からおまえの名は印布射留・杜玲汰だ!」
「そ、そんな」
「口答えは許さん! いいか? どんな奴にも最初はある。初めから強い奴はいないし、弱いままの奴もいない。訓練さえしてればな!」
「はい!」
「おまえの装備を見せろ!」
「これです」
 玲汰は、何丁かの銃とアイテムを見せた。
「銃以外は売り払え! もらい物とはいえ、素人には宝の持ち腐れだ! その金で、『物理命中上昇』と『物理攻撃上昇』を手に入れろ!」
「もう身につけてます」
「なに! ビルドアップしてそれか! まぁいい。おまえには、これを進呈してやろう」
 ラファルは、アサルトライフルSB7を手渡した。
「銃の歴史を紐解けば、最初にできたのは拳銃ではなくライフル。軍隊でも主装備がライフルなのを見れば、どちらがより命中させやすいかは自明だ」
「はい!」
「よし撃て。なにごとも練習だ。基本動作を反復練習しろ」
 こうして、ラファル軍曹の指導が始まった。
 リリィも横から口を出し、桜花は隙あらば玲汰をいじろうとする。えらい騒ぎだ。



「今日も今日とて、にぎやかだな。濃い連中に囲まれて、かわいそうに」
 ケラケラ笑いながら、麻生遊夜(ja1838)は呟いた。
 まぁ通りすがった以上は少し付き合うかと、玲汰たちへ近付く。
「よ、新入生。射撃訓練か?」
「はい。僕、インフィルになったばかりで……」
「なら俺の後輩だな。手本を見せてやんよ。俺も元々は映画やらに影響受けて専攻選んだくちだからな。我流になるが、まぁ参考にはなるだろ」
 そう言って、遊夜は両手に拳銃を抜いた。
 と同時に、左右の銃から放たれた弾丸が標的の中心を撃ち抜いている。
「おお……」
 感動の声をもらす玲汰。
「慣れれば、これぐらいはできるようになる。基礎はリリィさんの言ってるようにやるのが一番だ。……でまぁ、コツとしては勘を養うのが常道だな。勘ってのは経験から来るもんだ。どう撃てばどう飛んでいくかってのを体に刻み込み、ターゲットの距離や動きに合わせて調整するわけだな。なにごとも練習あるのみってのは、有名な話だぜ?」
 ケラケラと笑う遊夜。
 玲汰は真剣な顔で聞いている。
「慣れんうちの実戦では、ガトリングやショットガンで空間を制圧して、避ける隙間をなくすって手もあるな。……ま、とりあえず撃ってみようか」
 遊夜は、ショットガンを玲汰に手渡した。
 慣れない手つきで構え、発砲する玲汰。
 当然ながら、ターゲットは蜂の巣だ。
「これはラクですね」
「有用ではあるが、たよりすぎんようにな。場合によっちゃ味方まきこむからなぁ。……別の手段としては、当たらないなら当たる距離まで行けば良いってのもあるぜ?」
 悪党顔で微笑む遊夜。
「銃で接近戦ですか?」
「ああ。ちっと実演してやろう」
 言うが早いか、遊夜はレンジへ躍り出た。
 二丁の拳銃が赤黒い軌跡を描いたと見えた直後には、銃口がターゲットに突きつけられて火を噴いている。

「か、かっこいい……」
 呆然とする玲汰。
「これぞ、保身無き零距離射撃! さぁやってみろ!」
 遊夜の目は、なにかグルグルしていた。
「いや僕には……」
「やればできる! なぁに、失敗しても病院送りになるだけだ!」
「イヤですよぉぉ!」
 ごり押しする遊夜と、拒否する玲汰。


「麻生さん、無理強いはいけません」
 雫(ja1894)が止めた。
「俺は本人のためを思ってだな……」
「麻生さんの言うことは、よく理解できます。どんなに射撃がヘタでも、相手と密着すれば当たりますから」
「そう! そのとおりだ!」
 なにやら意気投合する二人。
 玲汰が不安げな顔になる。
 すると、雫は語りだした。
「いいですか、どんなに屈強な敵でも口の中や眼球に撃ち込まれれば大ダメージ確実です。その方法のひとつとして、相手の懐に潜り込んでのゼロ距離射撃は効果的と言えるでしょう」
「理屈はわかりますけど……」
「私と麻生さんがコーチしますよ?」
「ううん……」



 それを、遠くから見つめる男がいた。
 陽波透次(ja0280)だ。
(僕が新人だったころは、だれも構ってくれず何も教えてもらえなかったのに……なんという……なんという恵まれたリア充少年! 大勢の女子に囲まれて、手取り足取り……)
 耐えきれず、透次は走りだした。
 そして、玲汰の前にスライディング土下座を敢行!
「師匠! 僕を弟子にしてください! 僕に、リア充の、極意を……! 一体どうすれば、女の子に囲まれてウハウハできるんでしょうか! 教えてください! リア充師匠っ!」
「え……!?」
「これは失礼しました! 極意をただで教えてもらおうなど、虫の良すぎる話ですね。……では、僕のできるかぎりのアドバイスを。もし近接ガンマンになるのなら、反撃は確実ですから防御手段はあったほうが良いですね。一度アスヴァンあたりを経由して、シールドスキルを取るのが良いかもしれません。立派な盾を持ってるようですし、それを生かすためにも。インフィの目の良さは防御精度にも生かせますし……それより……どうすればリア充になれますか!?」
「僕はリア充では……」
「いいえ、見ればわかります! 噂によれば、師匠はおっぱい星人とのこと! ぱふぱふご奉仕するので、ぜひ極意を!」
 有無を言わせぬ勢いで、透次は変化の術を使った。
 現れたのは、亜矢のコピーだ。
「なんであたしなのよ!」
 亜矢が怒鳴った。
「矢吹さんのポニテが美しすぎるのがいけないんです! 矢吹さんのポニテが罪なんです!」
「な、なにそれ!」
「コロッケパンをおごりますから!」
「まぁそれなら……」
「ということで矢吹さんの了承も得ました。さぁ師匠! このおっぱいでぱふぱふ……ぱふp……で、できない!?」
 愕然とする透次。
 そう。亜矢はまな板なのだ!
「だれがまな板よ!」
「アバーッ!」
 亜矢の手から刀が飛び、透次の眉間に突き刺さった。



「騒がしいと思ったら、このまえの新入生か」
 川内日菜子(jb7813)がやってきた。
 偶然ではない。こっそりラファルをつけてきたのだ。
「このまえはどうも」
「話を聞いたが、慣れないうちは近接戦闘などやめておけ。まずは前衛と連携をとって、敵に近付かれない努力をしろ」
「ですよね」
「すなおだな。よし、このレガースをやろう。銃使いだからこそのレガースだ。両手が空くだろう?」
「でもこれ、格闘用ですよ?」
「ああ。インフィルの中には本職も真っ青になるほどの格闘術を持つ者もいるが、慣れないうちはあくまでも護身用の武器だ。ゼロ距離戦闘をやるなとは言わないが……何度も言うように、慣れないうちはやめておけ。このレガースは、敵に接近されてしまったときのための備えだ。これで敵が怯んだ隙に距離をとれ。このときおすすめなのが、阿修羅スキルの痛打だ。習い始めてすぐ習得できるから、覚えるのは簡単だろう」
「なるほど」
「相手が手持ちの武器を使っているなら、なんとか叩き落としたいところだな。それから、敵が銃を持っているなら出来るかぎりこちらへ銃口を向けさせないことだ」
「はい!」

「おいおいヒナちゃん。射撃のコーチになってねーじゃん」
 ラファルがつっこんだ。
「仕方ないだろ。私は阿修羅なんだ」
「銃を教えられないなら、訓練の標的になったほうが良くね? 防御高いし」
「標的、か……」
 ブルーな表情になる日菜子。
 ストーカーじみた行動の結果がコレである。


 ともあれ、訓練再開。
 逃げる日菜子を、玲汰が狙う。
「いいか、いまはあれを敵だと思って撃て。情けは無用だぜ」
 なぜか笑顔で言うラファル。
 玲汰に胸を押しつけてるけど、気付いてもらえないレベルで乳がない。無念。
 そして射撃開始。
 なんせコーチ陣が優秀なので、ビシビシ当たる。
「なぜ私がこんな目に……」
 呟いた直後、マグナム弾を顔面に食らって倒れる日菜子。
 立ち上がり、彼女は再び走りだす。
「こいつはヘヴィーだな……」



「せっかくですから、近距離射撃の訓練もしませんか?」
 日菜子がさんざん撃たれたあとで、雫が提案した。
「まぁ訓練なら……」と、玲汰。
「では練習相手は、亜矢さんに」
「あたし? まぁいいけど」
 ということで、近接射撃の訓練が始まった。
 しかし、実戦経験ゼロの玲汰が亜矢に近付けるはずもない。手裏剣や忍術でボコボコだ。
「無理ですよぉ、こんなの」
「がんばってください。難しくはありません。ただ、瞳を焼かれようが腹に穴を開けられようが、敵に近づいて撃つだけです」
「死んじゃいます!」
「大丈夫。私も天使級の使徒に切り刻まれたり、破壊的な魔法をくらっても、後遺症なく生きてますし」
「無茶ですよぉ!」
 玲汰には厳しすぎる訓練だった。
 が、雫は諦めない。
「こうなれば洗脳しか……」
 物騒なことを口走りながら、ランタンを取り出す雫。
 そうして、怪しい術が始まった。



「せっかくだし、私たちも訓練しないか?」
 手持ちぶさたになったところで、リリィが提案した。
「よしやろうぜ。標的はヒナちゃんな」
 勝手に決めるラファル。
「待ってくれ。できれば、ヒナコにCQC(近接格闘)を教えてほしいんだ」
「格闘術か。ちゃんと習ったことないんだが……」
 と、日菜子。
「我流でも構わない。軍隊の格闘技は、対天魔など想定してないからな」
「それなら、できる範囲で教えよう」
「俺も、近接拳銃術を教えてやんよ」
 という次第で、日菜子と遊夜による白兵戦の授業が……

「え!? 日菜子が格闘の訓練してくれるの!?」
 ならば隙を見てセクハラするしかあるまいと、桜花が突撃してきた。
「ひなこぉぉ! 私と訓練訓練ンン!」
「ちょ、ま……」
 胴タックルで一気に押し倒されてしまう日菜子。
「どしたの日菜子? 敵が押し倒してこないとも限らないんだよ? 修行が足りないんじゃない?」
 などと言いながら、日菜子の体をまさぐる桜花。
 隙を見てセクハラ……??



「さて、洗脳終了です」
 雫がランタンを消した。
 玲汰は虚ろな顔で、なにかブツブツ言っている。
「では仕上げです。いいですか、このランタンが灯ると、あなたは痛みも恐怖も感じなくなる。無感情な戦闘機械と化すのです」
 ある程度距離をとったところで、雫はランタンを灯した。
 そのとたん、玲汰は瞳の色を失って一直線に走りだす。
「いいですね。その調子です」
 向かってくる玲汰に、雫は容赦なく発砲した。
 何発もの銃弾が命中するが、玲汰は止まらない。
 そのまま雫の懐に潜り込み、保身無き零距離射撃を

 ズドバアアアッ!

 雫の大剣が一閃して、玲汰はボロギレみたいに吹っ飛ばされた。
 いくら洗脳したって、元々の性能が違いすぎる!
「加減をまちがったでしょうか……生きてます?」
「うぅ……、僕は一体……?」
 よろよろ立ち上がる玲汰。
 雫はホッと胸を撫で下ろした。本気で死んだかと思ったのだ。

「よく立った。それでこそ俺たちの後輩だ」
 遊夜が玲汰の肩を叩いた。
「なんか、記憶が抜けてて……」
「気にするな、よくあることだ。そうそう、この散弾銃と握り鉄砲をくれてやんよ。練習用には十分だろ。よけりゃ今後も教えてやろうか? 俺の近接拳銃術を」
 ニヤリと微笑む遊夜。


 こうして、ひとりの少年が近接拳銃術に目覚めたのであった。
 頭に『特攻型』と付くのは、見ないことにしよう。




依頼結果

依頼成功度:大成功
MVP: 夜闇の眷属・麻生 遊夜(ja1838)
 歴戦の戦姫・不破 雫(ja1894)
重体: −
面白かった!:6人

未来へ・
陽波 透次(ja0280)

卒業 男 鬼道忍軍
万里を翔る音色・
九十九(ja1149)

大学部2年129組 男 インフィルトレイター
夜闇の眷属・
麻生 遊夜(ja1838)

大学部6年5組 男 インフィルトレイター
歴戦の戦姫・
不破 雫(ja1894)

中等部2年1組 女 阿修羅
鬼教官・
リリィ・マーティン(ja5014)

大学部1年13組 女 インフィルトレイター
肉欲の虜・
桜花(jb0392)

大学部2年129組 女 インフィルトレイター
ペンギン帽子の・
ラファル A ユーティライネン(jb4620)

卒業 女 鬼道忍軍
烈火の拳を振るう・
川内 日菜子(jb7813)

大学部2年2組 女 阿修羅