「……ん。なにか。飲めると。聞いたので。来たよ」
例によって、最上憐(
jb1522)は依頼をよく見ずに教室へやってきた。
「では、好きな薬を飲みたまえ」
と、平等院。
机には、100本前後の試験管が並んでいる。
「……ん。では。これを。いただく」
無造作に1本えらんで、ぐっと一気飲み。
そのとたん、憐は豹変した。
彼女の選んだ薬は『残虐非道になり悪事の限りを尽くす』というものだったのだ。
「……ん。こうしては。いられない。おなかが。へった」
言うや否や、憐は教室を飛び出した。
全力疾走で向かう先は食堂だ。
そして、お得意のダークハンドを発動。客を片っ端から拘束し、料理をかっさらって飲み干していく。
狙うのは、おもにカレーライスだ。あとはカレーうどんとか、カレー餃子とか。とにかくカレーだ。あと、カレーじゃない料理も強奪している。ようするに、手当たり次第なんでも食ってる。
「……ん。食すのが。遅い。遅いと。腐る。なので。私が。かわりに。処理する」
などと言いながら、食堂を荒らしまわる憐。
えらい迷惑だが、久遠ヶ原ではよくある騒ぎだ。
それに、やってることは普段の憐と大差ない。
「……ん。手と。口が。すべって。偶然。料理を。食べてしまった。不幸な。事故だったね」
棒読みで言い残すと、憐は食堂を出て購買へ走った。
そして、ここでも食べ物を略奪。
完全に犯罪だが、未会計の商品は盗ってないので大丈夫!
憐の食欲はとどまるところを知らず、いつものように擬態と隠走を駆使して追っ手をまき、さらに腹を満たすべく菜園へ突撃。これまた片端から、野菜や果物を頂戴する。
「……ん。野菜が。地面に。落ちていたので。いただいただけ」
あらかた菜園を荒らし終えると、最後に『魔王参上!』と書き残して立ち去る憐であった。
「これは、いわゆる治験ってやつだな! つまり高額バイト! もう全財産5000久遠とか嘆かなくていいんだ! 待ってろセレブ生活!」
教室に駆け込んできたのは、伊藤辺木(
ja9371)
「しかし、あれだな。1本じゃそんなにお金もらえないよな。……よし、わかった。つまり、いっぱい飲めばいいんだ! 飲めば飲んだだけ、お金もらえるんだ! そうに違いない! 俺は詳しいんだ!」
「ちょっと落ち着け」と、平等院。
だが、辺木は止まらない。
「ヒャア! めんどくせぇ、そのへんの薬ぜんぶまとめてチャンポンだ! 俺知ってるよ! これビーカーって言うんだろ! こいつに、ありったけの薬を投入して! シェイクのち一気飲み!」
「お、おい」
平等院の制止も振り切って、言ったことを実行する辺木。
「ふぅ、ごちそうさん! たいへん無味無臭でございました! さあ、これでおいくら万円いただけるのでアババババ!!」
口からエンジンみたいな音を出すと、辺木は巨大化した。
全体的に四角っぽく、肌は金属質に、手足は車輪へと変化。
「 俺 が ト ラ ッ ク だ ! 」
トラックに変身する薬とは斬新だ。
平等院は何を考えて、こんな薬作ったんだろ。
「ふおおおおお! こうしちゃいられねぇ! ガソリンはどこだ! 俺はハイオクしか受け付けねぇぜ!」
ラリってるとしか思えない口調で叫びながら、校庭へ飛び出す辺木トラック。
「ヒャッハー! かつてないトラック一体感! 運送神とは……今の俺だったんだ! 足が勝手に動く! なんかすごい勢いで動く! と、止まれん! 脳内でスピーダッスピーダッとかエンドレスで! し、心臓がもたなアバーッ!?」
心臓マヒを起こした辺木は、そのまま壁に激突。大破炎上したのであった。
「栄養ドリンクをもらえるのはここか?」
強羅龍仁(
ja8161)は、なにか勘違いしながら教室に入ってきた。
「まぁそういうのもあるかもな」
平等院がニヤリと笑う。
「では1本いただこう」
なにしろ栄養ドリンクと勘違いしてるので、平然と飲み干す龍仁。
その結果──
「なんだ、なにも起こらな……んなっ!?」
自らの声がロリ幼女みたいになってることに気付き、龍仁は狼狽した。
しかし栄養ドリンクだと思ってるので、現実を認めない龍仁。
「とうとう、自分の声すら変に聞こえるようになったか……歳だな……」
独り言のように呟く声も、幼女ボイスである。
「すこし疲れているようだ。……よし、もう1本いこう(ロリ声)」
あくまでも栄養ドリンクだと思って2本目を飲む龍仁。
すると、みるみるうちに背が縮み、髪は伸びてゆき、顔の傷は綺麗に消えて──ぱっちり二重の、人形みたいな少女に変身!
服は当然サイズがあわず、ひとり彼シャツ状態だ。
完璧な、つるぺたょぅι゛ょ(中身はオッサン)の完成である。
「これは……背が縮んだのか? こまったな、服がブカブカではないか。……なにか代わりになるものはないか?(ロリ声)」
鏡がないので、幼女になってる自覚なし。
──そこへ!
「きゃああああ! かわいいいい! あなたも依頼仲間だね! 仲良くしようね!」
桜花(
jb0392)が乱入してきて、龍仁(幼女)に頬ずりした。
「な、なんだ……!?」
あわてる龍仁。
実年齢40のオッサンが女子高生にカワイイと言われてハグされることなど、普通ない。
これは貴重な(遠慮したい)経験だ。
「まず落ち着け。マインドケア!(ロリ声)」
キュイーンという魔法少女的な効果音とともに、龍仁の手からヴァルキリージャベリンが発射された。
「アバーッ!?」
鼻血をまきちらして吹っ飛ぶ桜花。
「しまった、ついうっかり。……こういうときは失敗だにゃー(棒読み)というのだったか?(ロリ声)」
龍仁がスキルをまちがえるのは、天然だから仕方ない。
ドジっ娘(中身おっさん)だから仕方ない!
「これは……殺人現場ですか!?」
血まみれの教室を見て、袋井雅人(
jb1469)が叫んだ。
となりには、恋人の月乃宮恋音(
jb1221)
「うぅん……なにが起きたのか、だいたい予想はつきますねぇ……」
かわいい幼女と血まみれの桜花を見れば、状況は明白だった。
「ともあれ……薬をいただきましょう……」
まるで動じず、淡々と話を進める恋音。
この程度の事故など、日常茶飯事なのだ。
そして飲んだ薬は、『動物耳&尻尾が生える』というもの。
結果、恋音は牛娘に。耳と尻尾だけでなく、角も生えている。ついでに……というかコッチがメインなのだが、おっぱいが凄いことに!
「では私の番ですね。仕事なので文句は言いませんが……飲みやすい味だといいですね」
恋音に続いて、雅人も薬をあおった。
その表情が、たちまち引きつる。
「うっ! こ、これはっ!?」
雅人の背中から、人型のアウルが飛び出した。
外見は完全に雅人と同じだ。まるで分身の術である。
が、そうではない。このアウルは、雅人の変態成分を凝縮したものなのだ。
「恋音、今日は一段と素敵なおっぱいですね! よく揉んであげましょう!」
と言いながら、恋音の背後に回りこんで揉み揉みする変態雅人。
一方、変態成分を取り除かれた雅人本体は、撃退酒を飲んだとき以上の真面目キャラになっている。
「なんという破廉恥なことを! やめなさい!」
「うへへへ。自分の母乳でこんなドロドロになって……恋音は本当にいやらしい娘ですね」
さすが、雅人の変態成分濃縮版。人の言葉など聞いちゃいない。
「く……っ。今日という今日は、もう許せません! 私の中から、あなたという変態を殲滅します!」
「良いでしょう。私の中の中途半端な存在を消す、絶好の機会ですね。くっくっくっ、返り討ちにしてあげますよ!」
こうして、真面目雅人と変態雅人のガチバトルが始まった。
それぞれ別の薬を飲んだ結果、真面目な雅人は目から赤いビームを発射。変態な雅人は、へそから黄色いバリアを展開してビームを打ち消す。なにやら某アメコミキャラみたいな戦いだが、はたしてバトルの結末は──!?
まぁ、言うまでもなく変態雅人の圧勝なんで。
真面目な雅人wwなにそれwwwうけるwww
というわけで、恋音のおっぱいは変態雅人の手に!
いつもどおりじゃねーか!
「……はっ。いけない。こんなのでも、れっきとした依頼。最低限のノルマはこなさないと」
桜花が目をさました。
「ああ。最低でも1本は飲んでもらわんとな」
平等院がうなずく。
「お金がないから参加したけど……なにかあったら、責任とってくれるんだろうね?」
「馬鹿を言え。すべて自己責任だ」
「この、マッドサイエンティストめ……」
桜花は平等院をにらみつけると、試験管を手に取った。
そして一口。
ぼんっ!
おっぱいが、恋音並みに肥大化した。
それだけではない。なんと、性的趣向が正反対に。──つまり、オッサンオバサンが大好きに!
しかし残念! せっかくのオッサンは、いま幼女!
まぁそれならということで、雅人にすりよる桜花。
はちきれそうな制服の胸元をはだけながら、「なんだか胸が熱くて苦しいの……助けて……」などと誘惑にかかる。
「了解です! 私にまかせてください!」
躊躇なく胸に手をのばす雅人。
真面目成分を失った彼に、自制心はない。
……え? もともとなかった? そのとおりだな。
そんな騒ぎの中。ティファーニア ネルスラーダ(
jc0681)がやってきた。
「怪しい依頼だけど、おこづかいのため我慢我慢……だれか一緒に飲まない?」
と言いながら、試験管に刺したストローをくわえてプルプルするティファーニア。
しかし、雅人はおっぱいに夢中だし、恋音と桜花は揉まれてるし、龍仁は自らの姿に気付いてorz状態。
「だれもいないの? じゃあ一人で飲むよ。……い、いただきますっ!」
緊張のあまり、ティファーニアは一気に薬を吸ってしまった。
「……って、あわわ! 飲みすぎちゃったかも!」
その直後。彼女の体が、風船みたいに膨らみだした。
おっぱいだけではない。全身まんべなく巨大化……というか肥満化している。
「ひゃああ!? い、いやぁ! だ、だれか止めてぇえええ!」
当然ながら、止める手段などない。
そうこうしてる間にも、ティファーニアはどんどん大きくなっていく。
まじめな眼鏡っ娘委員長系女子が、見るも無惨な肉の塊に。服は弾け飛んで全裸状態だが、エロさのカケラもない。単なる肉塊だ。なぜか眼鏡だけは無事なのが不思議だが、女の子として色々終わってる。
「み、見ないでぇえええ!」
陽光の翼を広げて、窓から逃げようとするティファーニア。
「むぐぅ!?」
この大きさで窓を通り抜けるのは無理だった。
なにしろ、えらいことになってるし。
「ふぎゅぅぅぅ!」
窓につっかえたまま、さらに膨張するティファーニア。
やがて気球みたいに膨れあがった彼女は、窓を粉砕して空へ舞い上がった。
ぷっかりぷっかりと。
そして──
大 ☆ 爆 ☆ 発
降りそそぐ肉塊で、バイオハザード発生!
なんなの、この薬……。
さて、最後に教室を訪れたのは八種萌(
ja8157)
「胸が大きくなる薬は、ここですかー!」
萌は、めずらしく乱暴にドアを開けた。
どうやら、期待に興奮が隠せないようだ。
それを見て、桜花が表情を変えた。
そう。135cm36kgの少女である萌は、桜花にとってストライク!
なのだが、いまの桜花は年増好きの反動でロリショタ嫌いになっていた。
「はぁ……子供って、マジうっとおしいよね。なんなの? いつもギャーギャーうるさいし、どこでも騒ぐし、背が低いから私の胸ガン見するし……。なんで私、あんなチビガキどもと付き合ってるんだか……。やっぱり男も女も、成熟してこそだよね! 男は渋く逞しく筋骨隆々に! 女は美しく、おっぱいとおしりはドーンと!」
徹底的に年下をdisる桜花。
しかし、しょんぼり顔の萌を見た瞬間。桜花はハッと我に返った。
「ああぁ……! やってしまったぁぁあ! クスリごときに流されて……! 私はあのとき、子供たちを守ると誓ったのに! 私は、ボクは、俺は……守るべきものを、傷つけてしまった……! もう生きていけない……! 自分で立てた誓いを破るなんて……死ぬしかない!」
錯乱して、桜花は刀を抜いた。
それを逆手に握りしめ、己の腹をカッさばく!
バシュゥゥゥッ!
こうして桜花は、自らの不始末にケジメをつけたのであった。
通常なら重体だよ、これ……。
いろいろカオスだが、ともあれ萌は飲む気満々だった。
どれが当たりかわからないので、目についた薬を適当にブレンド。
「これでいよいよ、貧乳ともおわかれ……」
「どうなっても知らんぞ?」と、平等院。
「止めないでください! 私は変わるんです!」
萌は一気に薬を飲み干した。
すると──貧しい乳が、だんだん大きく!
「やった! 成功です!」
しかし、よく見れば大きくなってるのは胸だけではない。全身が巨大化しているではないか。
あっというまに、服は破れて素っ裸。
さらに猫耳猫尻尾が生えて、手足は肉球つきの猫足に。
「にゃああああ!?」
どうやら、萌は猫と会話できるようになる薬が飲みたかったらしい。
それは奇跡的にうまくいったのだが、『にゃー』しか発音できないので人間と会話できない。
そして、ふと気付いた。
雅人たちに見られている!
「にゃああああ!?」
バシィィッ!
「アバーッ!」
メガトン猫パンチをくらって、雅人は割れた窓から吹っ飛んでいった。南無(
あと残ってるのは恋音と龍仁だが、二人とも女の子なのでギリセーフ。(注:一人は中身オッサン)
とにかく何とかしてくれにゃと、ジェスチャーで平等院に訴える萌。
「では、これだ」
平等院がくれた薬を飲むと、萌の体は透明になった。
「ふむ。狙いどおりだな」
消えた萌の尻を、平等院がペシペシたたいた。
「にゅああああっ!?」
ズドババババシィッ!
「アバーッ!」
ギガトン猫パンチラッシュを浴びて、平等院は雅人の後を追った。
その後、萌は羞恥心のあまり壁を破って逃走。
後日、透明な巨大猫天魔が現れたと話題になるのだった。(チーン♪)
「えとぉ……依頼人が消えてしまいましたねぇ……」
と言いながら、恋音は数種類の薬を混ぜていた。
じつはコッソリ飲んだ薬の効果で、無性にイタズラしたい気分なのだ。
特製カクテルを水鉄砲に詰めて、ロリ幼女(龍仁)に飲ませようと画策中の恋音。
だがしかし。カクテルが完成したところで、巨大化したミルクタンクのせいで転倒。全身にカクテルを浴びるハメに。
「うぅぅ……ほんのイタズラ心でしたのにぃ……」
ぶくぶくと、恋音の全身が膨らみだした。
ティファーニアと同じ薬を浴びてしまったのだ。
その末路も、彼女と同じ。
こうして野菜泥棒の汚名を着せられた恋音は、ティファーニアと一緒に病院へ送られた。
「それにしても、最近の栄養ドリンクは凄いな(ロリ声)」
ひとりきりになった教室で、つるぺた幼女龍仁は真剣に呟くのだった。